DISC REVIEW
ナ
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中嶋イッキュウ
LOVE
ソロ第1弾『DEAD』から短いスパンで発表した2ndミニ・アルバム。熟達のメンバーによる包容力のあるオルタナティヴ・ロックだった1stから一転。アブストラクトなトラックで意表を突く本作にはtricotファンであることをきっかけにコラボが実現したCwondo(近藤大彗/No Buses)をはじめ、中尾憲太郎(NUMBER GIRL)+ビートさとし(skillkills)+Acidclank、そしてキダ モティフォ(tricot)+西野恵未の3チームが参加した、それぞれ異なる色が自ずと表出した5曲を収録。クラスの中で浮きがちな個性を若干の諦念と達観で描く表題曲が、情念を超えたユニークさで響くのはCwondoとのコラボゆえだろうし、「未成年」が女性のチームなのも納得。中嶋のプロデュース力が冴える。
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中嶋イッキュウ
DEAD
女性の持つ執着心や独占欲などを時にホラー寸前、時にとても甘やかに描く、中嶋イッキュウの作家性が際立つソロ作。ドロドロした愛憎や欲望が軸にありつつ、どこか潔いまでに突き詰めた音楽性がテーマを陳腐化させないのは参加メンバーである山本幹宗(Gt/好芻)、佐藤征史(Ba/くるり)、あらきゆうこ(Dr)、新垣 隆(Pf/ジェニーハイ)の曲への深い理解とスキルのなせる技だろう。甘くレイジーなムードのオルタナ・ナンバー「DEAD」に始まり、in the blue shirtのリミックスがアンビエントなムードの「甘口 -DEAD remix-」、ナイヤビンギ風のトラックが新鮮な「哀願」、新垣の狂おしいピアノの旋律がドラマチックな「マンション」、シンプルで哀切なメロディと厚いアンサンブルの「MILK」と、いずれも中嶋の作家性と声の表現力を存分に満喫できる。
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中島 愛
ワタシノセカイ
2008年にTVアニメ"マクロス"シリーズのヒロインとしてデビューし、声優/歌手として活動を続けてきた中島 愛。2013年12月には歌手としての無期限活動休止を発表していたが、そこから約3年、このシングルで復帰を果たす。「ワタシノセカイ」はTVアニメ"風夏"のエンディング・テーマであり、歌詞はアニメの原作者・瀬尾公治が手掛けるが、夢を追う人の背中を優しく見守るその歌は、自身の復帰の心境とも重なったと語り、エモーショナルな歌に反映された。今回はカップリング曲含め、そうした歌、歌うこと、歌に込める思いを意識して、制作にはシンガー・ソングライターら豪華作家陣を起用。歌に向かう繊細な心と、中島 愛の歌い手としてのパワー、声質を汲んだ、ウェルメイドなポップスに仕上がっている。
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中條有紀
sun pillar
新潟在住のシンガー・ソングライター中條有紀の1stミニ・アルバム。プロデューサーは、ZEPPET STOREのギタリストであり、以前中條とシューゲイザー・バンド“sphere”で活動を共にしていた五味誠。ピアノ、バイオリン、シンセの音色、そっと歌われる中條の歌声とメロディは、クールで儚い印象がありつつもどこかやさしい。そして寒い地域の厳冬の時期に起きる自然現象という“sun pillar”をタイトルにしたことからも、新潟在住の中條の感性と生き様を感じられる実に蜜の濃い内容となっている。五味が“彼女の声を感じるだけで風景が浮かぶ”というに納得の、幻想的な世界とストレートに胸の奥まで響くサウンド。癒されること間違いなしの1枚だ。
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中ノ森文子
flower
中ノ森文子の2ndシングル『flower』は、TVアニメのエンディング・テーマとして書き下ろされた。始動したばかりのニコ動発4人組バンド、&COREをバック・バンドに迎えたコラボ作でもある。バンドからソロになって、自分自身が選択をした素敵な人たちと自信を持った作品を作っていきたいと、以前語っていた彼女。今回のタッグには、新たな試みに臆せずに飛び込んで、ワクワクしながら新しい景色を見たいと進むパワーが詰まっている。歌の内容はアニメ作品に拠ったものであるけれど、彼女自身の今の気分がオーバーラップしていく、晴れやかなロック・チューンになった。そしてカップリング曲「music」は、キュートなヴォーカルが映える四つ打ちのエレクトロ・ポップ曲。今回もまた振り切った内容ゆえ、これからへの期待値が上がる。
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中ノ森文子
Get the glory
タイトル曲「Get the glory」は爽快でバンド感のあるロック・チューン、カップリング曲「ROLL INTO YOU」はインディーズ時代にリリースした楽曲たちの流れも汲んだポップなエレクトロ・チューンで、初の英語詞に挑戦という、タイプの異なる2曲が収録された。ソロ作ではキュートでカラフルなポップ・サウンドや、アコースティック・ギターを基調としたほっこりとしたポップスなども多かったので、パワフルに歌いあげるタイトル曲のような曲は久々だったというが、パンチのある、アグレッシヴなヴォーカルがしっくりとはまった。今回はアニメのタイアップ曲ということもあってより明快でキャッチーな曲となったけれど、バンド・サウンドでのゴリっと骨太な曲をもっと聴いてみたいところ。
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長靴をはいた猫
仄明かりに溺れる
女性ヴォーカルを擁する4ピース・バンド、長靴をはいた猫による2nd EP。インスト・トラック「澱」の温度感を引き継いで始まる「水槽」は、あえてジャンル分けするならばポスト・ロックだろうか。不穏な雰囲気を漂わせるイントロのベース・ラインの上に、歌声や楽器の音色が重なり、次第に大きな渦を生み出していく。大きな振れ幅で、しかし呼吸するように自然と静と動を行き来するサウンドは、狂おしくも美しいもの。共依存的な関係性を連想させる歌詞も独特の香りを放つ。そして「暗夜光路」は疾走感のあるアッパー・チューンで、活動開始から1年強かけて鍛えたアンサンブルの熱量が反映されている。縁日の光景を描く歌詞や和情緒あるギターのフレーズはこれから訪れる季節にも似合う。
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永原真夏
オーロラの国
ポエトリー・リーディングと歌メロで構築された寓話的な詞世界がラヴ&ピースなメッセージを放つ、元SEBASTIAN Xの永原真夏によるニューEP。"あたらしい国をつくろう"というセリフから幕を開けるストーリーに乗せて、国境も民族も言語も宗教も超えて、まったくのゼロ地点から、音楽のかけがえのない尊さを歌い上げる。永原独特の奔放で人懐こい歌声を支えるバンド・メンバー=SUPER GOOD BANDは、新ドラマーとしてイシヅカタケマルを迎えた新編成。カオスの果ての光をエモーショナルに描き出した。カップリングにはイベントの共演をきっかけにLUCKY TAPESの高橋 海を作曲/編曲に迎えた初のバラード・ナンバー「真夏の星座」も収録。ソロ始動からの1年の進化を刻む永原の新境地となった。
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永原真夏
バイオロジー
"全にして一、一にして全"――この宇宙規模の真理がひとりのちっちゃな人間の心から溢れ出し、紡がれた言葉とメロディによって形を与えられたミニ・アルバム『バイオロジー』は"表現者・永原真夏"による最初の足跡。ここにある、あなただけに向けた究極にパーソナルなメッセージは、そのまま普遍的な愛の言葉になる。この音楽は他の誰でもない"あなた(=一)"を対象にしながら、過去・現在・未来、国境、思想や概念を......いや、もっともっと大きな枠組みを超えた"全"、つまりこの大地に息づく、かつて息づいたありとあらゆる生命に向けられる。永原がブラス隊も引き連れたバックバンドとともに鳴り響かせた"ソウル"に耳を傾けてほしい。――もしこの作品を他の言語に訳することができるとしたら、僕はそこにただひと言、"音楽=Music"という言葉を冠してあげたい。
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永原真夏
青い空
活動休止したSEBASTIAN Xの永原真夏が、写真集Z I N Eとソロ初音源を同時リリースした。サポート・メンバーと共に結成した"永原真夏+SUPER GOOD BAND"は7人組のビッグ・バンド。「青い空」はストンプ&クラップで幕を開ける、新たなスタートを踏み出した彼女に相応しい風通しのいいミディアム・テンポの楽曲で、そこには"命がけで遊ぼう"と"ばかみたいに青い空"の下を勇敢に歩く彼女の姿が刻まれている。彼女の歌も、これからの自分に不安がないわけではないが、それよりもこの先に待ち受けるいろいろなことにわくわくが止められないと言わんばかりだ。新たな旅に出た彼女はこれからも、青い空を凌ぐほどの、涙を吹き飛ばすほどの眩しい笑顔で、この荒野を転がり続けるのだろう。
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SEBASTIAN X
こころ
僕らが愛を感じるとき。それは決して"愛してる"という言葉を交わし合う瞬間などではなく、家族と食卓を囲むような日常の些細な出来事の中だったりする。僕らが言葉にできないほどの豊かな想いに満たされるとき。それは何気ない言葉を交わし合う会話の中だったりする。"心"は形のないものではない。"心"は、"生きること"によって立派に形作られるものだ。SEBASTIAN Xは、それを証明するために「こころ」という名曲を作り、「たばこをプカプカ」や「感受性に直行」という素晴らしい曲たちを作り、そして、ひとまずの終焉を迎えるのだろう。だが、営みは人々が言葉や肌を重ね合わせることで生まれ、音楽もリズムやメロディやハーモニーが重ね合わさることで生まれる。それが続く限り、"心"は生み出され続ける。
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SEBASTIAN X
イェーイ
この仕事をしていると、"音楽を言語化なんてできるの?"と訊かれることがあるけど、音楽批評は"音楽の言語化"とはまったく別物だよ。そもそも、音楽は音符ですら説明しきれないものなのだよ。でも、今の僕らは音楽を言語化/可視化できると思い込んでいるフシがある。SEBASTIAN Xの記念すべきメジャー・デビュー作は、その名も『イェーイ』。たとえ"イェーイ"と歌ったところで、それを歌詞カードに載せるミュージシャンは少ない。でも、SEBASTIAN Xは"イェーイ"と言葉にしなければならなかった。きっと永原真夏にとっては、この"イェーイ"という言葉すらもどかしいのだろう。言語化/可視化できない音楽の"根っこ"に掴みかかる。それをメジャーというフィールドでやろうとしている。SEBASTIAN X、この先も断固支持。
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音沙汰
SUPER GOOD+
太陽は人を照らすが、では太陽を誰が照らしてくれるのだろうか。人は母なる海へと帰っていくが、では海はどこへ帰ればいいのか。星空は僕らの哀しみを癒すが、星々の涙は誰が拭うのか。大きいものはそれだけで優しくて、だからこそ孤独でもある。SEBASTIAN Xの永原真夏という人は、そんな大きなものの孤独と哀しみを知っているからこそ、ステージの上であれだけ強く美しく輝いていられるのかもしれないと、この工藤歩里とのユニット=音沙汰の初音源を聴いていると思う。ここには、歌とピアノというシンプルな編成によって紡がれた、まるで太陽や海や星空のように大きくて優しくて孤独な曲が並んでいる。帰る場所を持たない子供たちと、届くことのない"I love you"のための音楽。「ホームレス銀河」とSuiseiNoboAzの名曲「64」のカバーが特に素晴らしい。
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SEBASTIAN X
POWER OF NOISE
初期SEBASTIAN Xにあった向こう見ずな多幸感、パワフルさは、"今、この瞬間を謳歌しよう"という刹那性によるものだった。故に、当時の彼らの表現は、自分たちもいつかは"過去"となり消え去ってしまうという切迫感を孕んでいたのも事実だ。しかし、DAFT PUNKの新作が証明してみせたように、未来とは過去があるからこそ作られる。記憶は、人が未来へと歩むための最も大きな武器だ。『POWER OF NOISE』は、とても真摯に永原真夏が過去を肯定したアルバムだ。彼女は、パンク少女だった頃の自分を見つめながら、過ぎ去る時間の中で、それでも残るものを未来へ繋げようとする。「DNA」で彼女は歌う。"友達よ 恋人よ 同じ気持ちでいられるなら 血は必ず繋がっていく"――このアルバムは、音楽という魂の連帯と連鎖を強く祝福する。
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SEBASTIAN X
ヒバリオペラ
SEBASTIAN X初のフィジカル・シングル・リリースとなる本作。タイトル曲「ヒバリオペラ」の主人公は、男の子に恋に落ち、まだ恋人関係になる前にもかかわらずベッドを共にし、<本気になるつもりじゃなかったの>と心の中で呟いてみせる、どこにでもいるような女の子だ。しかし、そんな女の子の中に、SEBASTIAN Xは生命の輝きを見出してみせる。机上の空論よりも、若者たちのリアルな生活の中にある喜びと悲しみを何よりも敏感に感知し、そこに向けて歌ってきたバンドだからこその説得力。去年のミニ・アルバム『ひなぎくと怪獣』を経て、SEBASTIAN Xは自分たちの届けるべき音と言葉を見定め始めたのだろう。自分の輝き方は自分自身で決めることができるのだということを、この曲はとても鮮やかに伝えている。
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SEBASTIAN X
ひなぎくと怪獣 (初回限定盤のみDVD付2枚組仕様)
今までのSEBASTIAN Xの音楽に常に根付いていた感覚―それは、"私たちはいつか死ぬ"という、人間が唯一知ることのできる真理に他ならない。彼女たちは、その圧倒的な事実に絶望し、だからこそ、"今"を何よりも謳歌するための音楽を鳴らしてきた。だが、このミニ・アルバム『ひなぎくと怪獣』は、今までの作品とは少しばかり様相が異なる。本作において、彼女たちは"衝動"という普遍的なテーマを掲げることで、"死"や"過去"といった自らを捕らえて離さなかった呪縛を解き放つことに成功している。その結果、今までのどの作品よりも聴き手に対する訴求力を持つメッセージ・アルバムになった本作は、SEBASTIAN Xの今後を左右するターニング・ポイントとなる1枚だろう。
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SEBASTIAN X
僕らのファンタジー
08年結成の男女4人組 SEBASTIAN Xの2ndミニ・アルバム。"ぼくらのファンタジー"とは、あくまでも永原真夏(Vo)の"ぼくら"であり、このファンタジーに足を踏み入れることは、彼女の世界に触れることを意味する。それほどに、作中の彼女の存在は圧倒的だ。笛とアコーディオンの音が印象的なアイリッシュ調の冒頭曲「フェスティバル」で、"音楽は続くだろう" と高らかに歌い上げ、冒険の幕開けを告げる。船出したその先にあるのは、アコーディオン、ホーン隊、バイオリン、スティールパン、多くの楽器を鳴らした、まるでカーニバルのような賑やかな世界。その中心にはやはり彼女がいる。自由気ままに、踊るように歌いながら、ひとつひとつの音に命を与えてまわっていくその姿、音と言葉を解放していくその様は、まさにファンタジーだ。
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なきごと
ふたりでいたい。
東京発2人組ロック・バンド なきごとが、約1年半ぶりとなるフル・アルバム『ふたりでいたい。』をリリースした。本作には、オープニングを飾る激しいロック・チューン「sniper」、揺れる心情を透明感のある歌声とサウンドに託した「ゆらゆら」といった新曲4曲、そして昨年リリースしたデジタル・シングル『君と暮らしの真ん中で』、『素直になれたら』からの6曲を追加した全10曲を収録。前作のボリューム感(2枚組/全22曲入り!)を思うとずいぶんコンパクトに収まった印象を受けるが、その分彼女たちの魅力がダイレクトに伝わる作品に。また初回限定盤付属のDVDには、今年4月に行われたZepp Shinjuku (TOKYO)公演のライヴ映像が収録されているので、こちらも必見。
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名古屋ギター女子部
Re:POP 2 ~春のゆくえ~
名古屋ギター女子部によるJ-POPリメイク作品第2弾。今回はスピッツ、松たか子、荒井由実、サスケ、FUNKY MONKEY BABYSの"春"曲カバーで、メンバーも言う通り希望や期待と儚さや寂しさの両方が入り混じる、繊細な気持ちに寄り添う1枚になった。アレンジは、アコギとキーボードをメインにした透明感や清涼感に溢れるものが貫かれつつも、リズムのメリハリや、原曲にはない彼女たちが楽曲から感じたイメージを膨らませたコーラスなど、一辺倒には聴こえないような工夫がなされている。5人の成長が表れたインディーズ時代のオリジナル曲「青春セレナーデ」、「早春賦」の再録も含め、聴く者を選ばない彼女たちの歌は、世代を問わず、多くの人にとって心を重ねられる瞬間がありそう。
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ザ・なつやすみバンド
パラード
"毎日が夏休みであれ!"という信念のもと2008年4月に結成され、東京インディー・シーンで話題を呼んでいたザ・なつやすみバンドがついにメジャー進出。デビュー作のタイトル"パラード"とはバレエの演目らしいが、表題曲はそれに相応しく、思わず踊りだしたくなるような軽やかなリズムが印象的。スティールパンの瑞々しいサウンドと、中川理沙(Vo/Pf)の透き通った伸びやかな歌声がバンド・サウンドと絶妙に絡み合い、そのアンサンブルに身を任せていると、あっという間に11曲聴き終えてしまった。夏休みのワクワク感のように、あっけないほどすぐに過ぎ去ってしまうのだ。だからついついリピート・ボタンを押してしまう。スピーカーの前で聴き続け、気づけば10時間以上経っているではないか。ザ・なつやすみバンド、恐るべし。
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ナナヲアカリ
七転七起
前作『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』以来約2年ぶりの実質"メジャー1stフル・アルバム"とも言えるアルバムが到着した。表題曲はDECO*27×ナナヲアカリの共作。タイトルに"七転八起"ではなく、"七転七起"="七回転んだら、七回だけ起きてみよう"と、肩の力を抜いてリスナーを肯定するメッセージを込めるあたりは、実に彼女らしい。これまでに抜群の相性の良さを見せていたボカロPからの提供曲はもちろん、山内総一郎(フジファブリック/Vo/Gt)、橋本絵莉子(ex-チャットモンチー)といった、ロック畑の作家陣からの提供曲も表情を変えて器用に歌いこなす、彼女の手腕には舌を巻いた。ファンにはもちろん、ボカロ好き、ロック好きなど広い層にオススメしたい。
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ナナヲアカリ
フライングベスト~知らないの? 巷で噂のダメ天使~
"社会不適合系ダメポップ"を提唱するナナヲアカリの名刺代わりの1stフル・アルバム。本作にはいわゆる自己紹介ソング「ダダダダ天使」をはじめとしたボカロP陣による曲のほか、OKAMOTO'Sのオカモトショウ(Vo)とオカモトコウキ(Gt)による「なんとかなるくない?」など歴代の人気曲が揃う。新曲には、もはや清々しいほどにダメ人間らしさ全開のポップ・ソング「お釈迦になる」や、緩急のあるロック・ナンバー「妄想ハッピーエンド」のように作品を盛り上げるアップテンポな曲もあれば、自虐的な詞を呟くように歌う自身の書き下ろし曲「kidding」、けだるさの中でもがき苦しむような「ひとりごと」と、作品の中でアクセントになる曲も収録。未来の代表曲を先取る"フライングベスト"な1枚となった。
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ナノウ
UNSUNG
ロック・バンドLyu:Lyuのヴォーカルであり、ニコニコ動画上ではボカロPとして支持を集めるナノウが、無人のコンサート・ホールで一人きりのレコーディングを行った弾き語りアルバム。CoccoやRADIOHEAD、他のボカロP楽曲などのカヴァーを中心に収録。YouTubeへの投稿動画がきっかけでデビューした山根万理奈や、ナノウと同じようにボカロPとしての顔も持つ米津玄師が注目されるなど、もはやライヴハウスや路上よりも、ネットが若者たちの内面的な表現の場として最も機能しているのは確かだ。しかし本作の、震えるほどの痛みに満ちた歌声を聴いていると、表現の場や手法は変わっても、若者たちが抱える思いはいつの時代も変わらないのだとわかる。ずっと昔から、100年後もきっと、音楽は膝を抱えた魂に突き刺さる。
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成山 剛
novelette
フラっとやって来ては、いつの間にかどこかへ去ってしまうスナフキンのような魅力を持ったsleepy.abのフロントマン、成山 剛が初のソロ作を届けてくれた。独特な譜割りが印象的なsleepy.ab「エトピリカ」のセルフ・カバーを含む全8曲を収録。ソロ活動として行っている弾き語りライヴを彷彿とさせるアコギと彼の掴めそうで掴めないスモーキーな声を中心に、ウワモノはsleepy.abの山内がギターやカリンバ、ピアノなどで参加しバンドとは少し違う音の世界を魅せてくれる。やけに3拍子が多い今作は、BPMの早い楽曲は一切なし。生き急ぐことのない彼の時間軸をそのまま収めたような奥行きある1枚だ。メランコリックな夜に微睡みの中で聴いてほしい。異世界へ誘うようなサウンドスケープに塗れて気持ちよく眠れるはず。※ヘッドフォン推奨
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鳴ル銅鑼
汎神論
フロントマンの三輪和也(唄/六弦)が"徹底的に媚びずぶれず、まっすぐに自分がかっこいいと思うことを、自分たちに嘘をつかずにやりきった"と語るとおり、彼らの2ndフル・アルバムはエネルギッシュでありながら自然体の作品に仕上がった。メンバー4人で作るアンサンブルの空気感やグルーヴもより濃密に。ロック・ナンバーから彼ら流のダンス・ナンバー、歌謡ジャズ、バラード、ロジックのように構築された楽曲、そしてストレートでエモーショナルなものまで、多彩な楽曲群はどれも鋭さとポップ・センスを兼ね備え、少年性と艶を併せ持つ三輪の歌声も鮮やかに響く。特にTrack.1「兆シ」の晴れやかさと、最後を飾る「DUNE」の壮大な包容力は新機軸。過去の集大成的作品であり、詞、音共により自由になった飛躍作と言っていい。
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鳴ル銅鑼
極彩色
2014年に"RO69 JACK"優勝、2015年に初の全国流通盤『無知』をリリースした岐阜出身4ピースの1stフル・アルバム。『無知』が妖艶でクールな空気にダンスの要素やキャッチーさを加えた、バンドの個性をきれいに整えた名刺代わりの作品なら、今作はその基礎体力を持ったまま音楽に体当たりする感情的な作品だ。バンド名、日本語の響きを重んじた歌詞などを見ると和のイメージが強いかもしれないが、音の礎はブルースやロックンロール。時代も洋楽邦楽も関係なく巻き込んだ音楽性と存在感のある歌は、老若男女幅広い層に響きそうだ。映画に出てくる謎めいた主人公に翻弄されるような感覚を味わえる前作も趣があるが、より体温が伝わる今作には前作にない情熱や高揚がある。様々な色合いを持つ濃密な浪漫に身を任せてみては。
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鳴ル銅鑼
無知
ニヤリと妖艶に笑った顔が浮かび上がる。岐阜出身の4人組バンド、鳴ル銅鑼の1stミニ・アルバム『無知』はそれぐらい自信を持ってリリースされるはずだ。マスタリングには、前作EP『電波』でもタッグを組んだPEACE MUSICの中村宗一郎を起用。前作に比べてまとまり良く、整理された印象のある今作は音の輪郭がはっきりとしていて完成度の高さが窺える。キレのあるビートやベースのうねり、ギターの音色が意思を持って鳴っているようだ。もちろん三輪和也(Vo/Gt)の艶っぽい歌声も健在。それどころかどんどん魅力を増している。"映画ぐらい特別な世界観のあるバンドでありたい"とメンバー自身が語るように、鳴ル銅鑼ならではの独特な妖しい世界へあっという間に引きずり込まれていく。
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鳴ル銅鑼
電波
岐阜を拠点として活動している4ピース・ロック・バンド、鳴ル銅鑼(ナルドラ)が新作をiTunes限定でリリースする。彼らはRO69JACK 2014入賞という実力を持ち、今作はピース・ミュージックの中村宗一郎がマスタリングを手掛けたとのこと。疾走感溢れるグルーヴィーなロック・ナンバーに、ジャズや"和"の要素を取り入れたサウンドは、鳴ル銅鑼の個性が爆発した聴き応えのある仕上がりだ。日本語の響きにこだわりを持つという三輪和也(Vo/Gt)の艶のある歌声には思わず身震いしてしまうほどの魅力が詰まっている。その妖艶さは「御祭騒ぎ」冒頭の"鳴ル銅鑼、開演"という彼の囁きを聴いてもらえばお分かりいただけるだろう。この今後どんな風に化けていくのか楽しみで仕方がない。
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ナードマグネット
アイム・スティル・ヒア
昨年2021年6月に新メンバー さえこ(Ba/Cho)が加入し、それに伴って過去のリリース作品を"総復習"するという壮大なコンセプトを掲げたツアーを全国9都市で開催するなど、精力的な活動を行ってきたナードマグネットが、3rdフル・アルバム『アイム・スティル・ヒア』を発表した。本作にはバンドの勢いを丸ごとパッケージングしたようなオープニング・チューン「YOUR NEW FAVORITE BAND」、さえこの歌声をフィーチャーした「全部だいなし!」、「アナザーラウンド」、須田亮太(Vo/Gt)のWEEZER愛を前面に押し出した「キャロライン」など全11曲を収録。バンドとしての進化と回帰が同居するような"新生ナードマグネット"を堪能することができる作品に仕上がった。
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ナードマグネット
透明になったあなたへ
"和製WEEZER"と言われ、それを自覚していたナードマグネットが新たなフェーズへ。BLINK-182やJIMMY EAT WORLDをオマージュし、BLACK KIDSのカバーにNIRVANAを混ぜ込み、UKのギター・バンドばりに12弦ギターを鳴らし、パワー・ポップの世界を押し広げ、そのポテンシャルを存分に示す。そして生活の中で孤独も不安も不満も葛藤もすべてぶちまけた言葉とメロディがドライヴし、あなたが透明になったとて、自分らしくいることの意義を照らし、"一生が青春"であることを実感させてくれる物語の世界へようこそ。この13曲に何を思ったのかぶつけ合うも良し、ひとりでこっそり楽しむも良し。いずれにせよ、ライヴハウスに足を運んでみてはいかがでしょうか。
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ナードマグネット
FREAKS & GEEKS / THE GREAT ESCAPE
"両A面シングル"というリリース形態は決して珍しくはないが、2曲で畳み掛けようとする強い意志を、ここまでダイレクトに感じることのできるそれは滅多にない。切れ味鋭いハード・ロッキンなギター・リフと、持ち前のメロディ・センスを大胆に振りかざす「FREAKS & GEEKS」、ミドル・テンポから2番では速度を倍に上げ疾走し高揚感を煽る「THE GREAT ESCAPE」。全国の"ギーク"で"フリーク"で周囲に馴染めない人々に大脱走を呼び掛け、ナードマグネットという自由の地を開放するかの如き熱いメッセージと、ド迫力のサウンドとのマッチングは、パワー・ポップの王道を貫きながらも、そのジャンルをネクスト・ステージに押し上げるようなエネルギーに満ちている。
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ナードマグネット
MISS YOU
ありそうでなかった日本語のパワー・ポップが歓迎され、じわじわと全国にファンを増やしている大阪の4人組、ナードマグネット。そんな追い風を感じながら1年ぶりにリリースする6曲入りのミニ・アルバム。表題曲は、メンバーたちが大好きだったというHOLIDAYS OF SEVENTEENの元フロントマン、三浦太郎(現フレンズ)と須田亮太(Vo/Gt)の共作が実現。共に愛するWEEZERへのオマージュが溢れた曲ができたことから、HOLIDAYS OF SEVENTEENへのオマージュを込めた「DUMB SONG」、GOING UNDER GROUNDの「グラフティー」のカバーも加え、今一度、バンドの原点を見つめ直したような作品に発展したという。その一方では、新たな曲作りに挑んだ「海辺のルーシー」も収録され、原点回帰と同時に今後の展開も予感させる聴き応えある1枚になっている。
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ナードマグネット
CRAZY, STUPID, LOVE
結成から10年のキャリアを持ち、KANA-BOONなど同郷・大阪の後輩バンドからリスペクトを集める存在のナードマグネットが、満を持してリリースする初の全国流通盤。"ラブ・アゲイン"というラヴ・コメディ映画の原題から引用したタイトルを冠した今作の収録内容は、"はたから見たらバカみたいな恋愛の歌ばっかりだった"と須田亮太(Vo/Gt)が自ら語るラインナップ。たしかに、蓋を開けてみたら"こんなはずじゃなかった"、"あの子は確かにここにいたんだ/さえない僕の隣に"と本当にちょっと残念な男性像が次々と描かれていた。でもそれがこのバンドの愛すべきところで、USパワー・ポップ由来の突き抜けるようなメロディ、ポジティヴなギター・ロック・サウンドと相まって、青春のような甘酸っぱさを味わわせてくれるのだ。
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新山詩織
I'm Here
凛とした軸とフラジャイルな感覚を併せ持つ新山詩織の歌の魅力を、主に同世代のミュージシャンとともに、インディー・ポップやオーガニック、時にジャズの自由度も取り入れたアレンジで昇華した復活作にして傑作。1曲目の「Smile for you」がアカペラ始まりでピアノ伴奏のみで進行していくことに決意を感じるし、ドラムレスでパーカッションを入れることで隙間の多いアレンジを実現した「New」と「ミルクティー」で際立つ声の魅力、シューゲイザーでありつつ、ビートは控えめな「帰り道」の音像の新鮮さ、アコギとエレキのみでオルタナティヴ・フォーク感を浮かび上がらせる「ワンルーム」、浮遊感のあるモダンなサウンドの「Do you love me?」。素直な心の内がシンプルな音像にマッチして心に浸透する。
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ニガミ17才
ニガミ17才o
彼らの名を知らしめ、"おしゃれ且つ変態"な音楽と衝撃の出会いを果たしたリスナーも多いであろう傑作『ニガミ17才b』から2年半。本作は待望の新作に高まった期待を別角度から愉快気に壊して超えるような、異能っぷりがはじけた1枚であることを1曲目「Jimmy Perkins」から確信した。ジャジーなリズム隊にミュージカル風の岩下優介と平沢あくびのヴォーカルの掛け合い。音に身を任せるのも最高だが、歌詞を読むとその物語性にも心躍らされるというのはまさに奇術のよう。存在感を増したベースのグルーヴが引っ張るダンス・ミュージック「こいつらあいてる」、お得意の変拍子と病みつきになる言葉選びが光る「オフィシャル・スポンサー」を筆頭に、全曲聴きどころ満載で、最後の最後までドキドキしっぱなしだ。
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ニガミ17才
ニガミ17才b
元嘘つきバービーの岩下優介を中心に結成されたバンド、ニガミ17才による2ndミニ・アルバム。岩下らしい、前のめりで予測不能な曲の展開力はそのままに、メンバーが変われば方向性もメンタリティも変わる。自由奔放なドラマー 小銭喜剛、ファンキーなベーシスト イザキタツル、鍵盤初心者でありながら、元役者という豊かな表現力と合わせて、岩下と並んでバンドの顔となっている平沢あくび。4人の個性が絶妙に絡み合ったファンキーなサウンドはさらに洗練され、そこに宿っていたポップで開けた魅力が大きく開花。どちらかというとカルトなイメージの強い岩下が本誌インタビューで"目標は「紅白」"と本気で言っていた。これが情報に溢れた時代のネオJ-POPスタイルなのか? とにかく、強い。
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西片梨帆
まどろみのひかり
音楽を軸にしながら、執筆活動やデザイン、舞台の脚本も手掛ける"表現家"西片梨帆による初フル・アルバム。言葉を大切に紡ぐ彼女の歌はするりと心の隙間に入り込み、自分だけが感じていると思っていた小さな気持ちも拾い上げる。優しい慈しみを柔らかなアコギと詩的なリリックに乗せた表題曲、全部がうまくはいかなかったけれど、大事な人と交わした会話を"おまもり"に生きる姿を描く「白昼夢」、負った傷のわけを理解し前を向くその瞬間に寄り添う「桜上水で」、また言葉にこだわる彼女が、友人との会話をきっかけにあえてシンプルなワードで綴った「まちのなか」など、正直な筆致に愛を込めた11曲。弾き語りだけでなく青春パンク的なナンバーから、USインディー風味、ヒップホップと豊かなサウンドも含め飽きのこない仕上がりだ。
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にせんねんもんだい
#N/A
トラッシーなノイズに始まり、年々ミニマル化していく、にせんねんもんだいの音楽的変化は、言うなればMC5からデトロイト・テクノへの変化と同義である。MC5にもDerrick Mayにも、原風景にはデトロイトというディストピアの存在があったが、にせんねんもんだいの根底にも、"表現のディストピア"化する世界に対する苛立ちがあり、それを打ち砕く理想主義がある。現実を知り、悲観せず、未来を描く。ポスト・パンク世代のレゲエ/ダブ界の重鎮(つまり、70年代末~80年代前半におけるトップランナー)、Adrian Sherwoodと共に作り上げられた本作にも、そのポジティヴな志向性はみなぎっている。これは、ゆらゆら帝国の子供世代が作り上げた『ナマで踊ろう』に対する回答であり、どこまでも無邪気で力強い未来へのヴィジョンである。
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日食なつこ
逆鱗マニア
日食なつこの作品は聴くたびにピアノがどれだけ楽しい楽器なのかを思い出させてくれる。約1年ぶりのリリースとなる4thミニ・アルバム『逆鱗マニア』もその感じは同様だ。初のセルフ・プロデュースとなる今作は、ジャズ、ファンク、ソウル、ロックなどジャンルの壁をぶっ壊し、ひとつとして似ていない楽曲を、感情をえぐるような歌声で一本筋を通したかのような1枚。唯一フル・バンドで収録されたというキレて大泣きしたかのようなTrack.1、マーチングがなぜか不安感を誘うTrack.2、EDMをベースにしたTrack.3、ブラス・バンドを起用し新しいイメージを植えつけられたTrack.4、"はないちもんめ"をモチーフにした身の毛がよだつTrack.7など、新たな音像を切り拓いた8つの表現が収録されている。
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日食なつこ
逆光で見えない
彼女が17歳のころ"日食なつこ"として活動をスタート。あれから7年の時を経て、生楽器に徹底的にこだわり抜いた渾身の1stフル・アルバムをリリース。わがままの限りを尽くして濃密な存在感をこの作品に持たせたいという目的からクラウドファンディング・プロジェクトを実施したことで話題になっていたが、それよりも収録されている楽曲に注目して欲しい。予想をはるかに超え、密度の濃さが際立っている今作は、新旧の名作といくつかの新曲を収録したベスト的な1枚。立ち向かう勇気や、逃げ出してしまう人間の生々しさをピアノの力強さや繊細な音色に文学的な言葉を乗せて綴っている。ピアノに近づく足音、鍵盤を叩く音、息遣い。その質感は手に取るように聴こえてくる。すぐ隣で歌っているかのような、湿度ある豊潤な作品をぜひヘッドフォンで。
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