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DISC REVIEW

Overseas

Days

REAL ESTATE

Days

瞼の裏に浮かぶは、澄んだ空気に満ちた森の中でのジャム・セッション。キラキラとした木漏れ日はまるでライティングのように照らされ、気心知れたメンバーのアンサンブルは上品で優しく、かつ甘酸っぱい蒼さもあり、親密に奏でる楽しさに溢れている――そんなイメージを抱かせたのはデビュー・アルバム『Real Estate』だった。"USインディの良心"と謳われ、一躍シーンの最前線に躍り出た3ピースから待望の新作が届けられた。ディストーション皆無なクリア・トーンで貫かれたサウンド、浮遊感ある囁き声は前作の系譜にあるが、さらに磨きをかけ軽やかにしたような仕上がりだ。一見シンプル過ぎて平凡に感じるかもしれないが、耳をすましてこのメロディに泳いで欲しい。微睡むほどの心地良さがクセになるだろう。

Ritual Union

LITTLE DRAGON

Ritual Union

日系スウェーデン人のYukimi Naganoは、SBTRKTやGORILLAZの楽曲に参加する売れっ子アーティストだ。そんな彼女のけだるいヴォーカルで幻想的な世界を描いてきた、Nagano率いるプロジェクト、LITTLE DRAGON。3rdアルバム『Ritual Union』では、非常に意欲的な境地に足を踏み入れ、80年代を彷彿とさせるチープなエレクトロ・サウンドを基軸に、さまざまな毛色の音を入れ込み、より実験的に仕上げた。北欧のドリーミー・サウンドを奏でるバンドと言うとMUMが真っ先に思い浮かぶのだが、LITTLE DRAGONはこれまでの"ドリーミー"とは一線を画している。不思議な中毒性を持ったNaganoのヴォーカルは、前2作と比較して艶が増し、非常にソウルフルで生き生きとした呼吸を感じさせる。既成概念にとらわれない夢のようでいながら"生きた音"として音像を再現するのだ。内から湧き出る感情が鮮やかに迸る。"結婚式"なんてタイトルも実に小粋だよね。

Komba

BURAKA SOM SISTEMA

Komba

M.I.A.が参加したデビュー作で強烈な印象を残したポルトガル出身のダンス・ユニットBURAKA SOM SISTEMAの新作が登場。09年センセーションを起こしたアフリカのアンゴラから発生した新ジャンル “クドゥル”の代表格として注目を集めた彼らは、最新のベース・ミュージックやエレクトロをも取り込み、新たなダンス・ミュージックを展開させた。今作もその方向性は変わっておらず、エネルギッシュなヴォーカルに刺激的でファンキーなビートで溢れている。先行シングルである「Hangover(BaBaBa)」は彼らの破天荒な魅力が爆発したパーティー・チューン。ダブステップなどを吸収した新機軸もあり、ただただ踊れて最高に楽しいBURAKA流の最新ビートを楽しんで欲しい。

K〜15周年記念エディション

KULA SHAKER

K〜15周年記念エディション

BULRやPULP、SUEDE等が相次いで再結成、活動 を再開しブリット・ポップ・ムーブメントが再燃される中、KULA SHAKERの強烈なデビュー作がリマスタリング、そして未発表曲を含めた豪華版としてリリースされた。95年当時異彩な魅力を放っていたKULA SHAKERの作品を改めて聴き直すと、彼らが独自の方向性を持っていたバンドだと言うことがわかる。そのグルーヴィで肉体的なサウンドは今聴いても錆び付いていない。EPとベストでしか聴けなかった「Hush」が収録されているのも嬉しいところ。限定BOXに収録されているライヴ音源は当時の熱気がしっかりとパッケージングされている。

The Year Of Hibernation

YOUTH LAGOON

The Year Of Hibernation

驚くべき才能が現れた。米アイダホ出身、弱冠22歳のマルチ・インストゥルメンタリストTrevor Powersのソロ・プロジェクト、YOUTH LAGOON。高校時代に様々なバンドを渡り歩く中でこのプロジェクトをスタートさせ、以降ライヴ活動やネットでの評判が噂を呼び、複数レーベルの激しい争奪戦の末、名門FAT POSSUMと契約し本作が届けられた。Trevorのベッド・ルームで制作されたというドリーミーなトラックに、蜘蛛の糸の如くか細い歌声が鳴り響くその世界観は、自身にある“極度の不安”がベースになっているという。その詳細は不明だが、カウンセリングを受けるのも中断し音楽に込めたものは、胸が締め付けられるほど美しい生のドキュメント。Hibernation(冬眠)から覚めるように自室を飛び出したこの音楽が、あなたの特別な存在になることを祈っている。

Inni

SIGUR RÓS

Inni

シンプルに伝えたい。とにかく聴いて、見て、心の深い部分で感じて欲しい。アイスランド語で"inni"とは英語の"inside"を指すのだ。圧倒的な音響も、モノクロで統一されたノスタルジックな映像美も、音楽のマジカルな幸福が宿る場所へインナー・トリップさせるから。世界最高峰の音響叙情派バンドといって過言ではない、SIGUR RÓSから活動休止直前に行われたロンドンはアレクサンドラ・パレスの2公演を収めた音源&映像集が届けられた。そのパフォーマンスは、この上なく繊細で美しい綴れ織りから壮大で壮絶なアンサンブル・カオスまで、まるで何かを掴まんとする叙情性に溢れ、感動的で、神秘的で、深意に唯一無二の世界である。いよいよ、これは来るべき活動再開のシグナルとなるのだろうか?今後の動向にも注目だ。

Access OK

THE KOXX

Access OK

韓国出身といえばK-POPが日本でも社会現象になっているが、バンド・シーンもハイ・レベル。韓国ではすでにチケットが入手困難となっており、日本でもNANO-MUGEN CIRCUITやSUMMER SONIC 2011に出演し注目を集めている5ピース・バンド、THE KOXX。エモーショナルなギターとシンセが絡み合う踊れるナンバーに歯切れの良い語感が新鮮。ほとばしる衝動と卓越したセンスの狭間に見え隠れする知性が光るサウンドの重なりも面白い。11月から来日ツアーがあるとの情報も。フロアで踊らない手はない! それにしても、台湾の透明雑誌や韓国のTHE KOXXが現すように、アジアの国々にはまだ見ぬ良質な音がたくさんあるに違いない。

Camp

CHILDISH GAMBINO

Camp

俳優、ライター、コメディアン、そしてミュージシャンと様々な顔を持つDonald Glover。彼による新音楽プロジェクトがこのCHILDISH GAMBINO。過去にも同名義で数枚アルバムをリリースしているが、今年アメリカの名門レーベルGlassnote Recordsと契約し、本格的なCDデビューとなる。DJやプロデューサーとしての経歴を生かし、ヒップ・ホップをベースに様々なジャンルの音を融合させ、個性的な音楽を作り上げている。歌詞の題材は家族の問題、イジメ、男女関係、自殺願望やアルコール問題など、ありがちといえばそうだが、彼の声にはその歌詞がスッと心に入り込んでくるような力があり、時に激しく語り、時に繊細に歌い上げている。叙情的なUKバンドの楽曲を聴いているような哀愁も感じられ、多彩な楽曲が収録された宝箱のようなアルバムだ。

Black Rainbows

BRETT ANDERSON

Black Rainbows

英バンドSUEDEのヴォーカル、Brett Andersonがソロ・アルバム第4作『Black Rainbows』をリリースした。SUMMER SONIC 2011での圧巻のパフォーマンスが記憶に新しい彼。アコースティックな前作から一転、ロック・サウンドの中で耽美的な世界が広がり、新たな表情を見せてくれる。“矛盾”や“二元性”をイメージしたというタイトル通り、ノイジーなギターと落ち着いたヴォーカルが丸みのある広がりを持って響き、奇妙な躍動感を生んだ。楽曲の完成度は予想通り高く、アダルトなサウンドが心地良い。ただ、まとまりが良くなりすぎてしまったのか、Brettの歌う“熱情”の昂りが薄れてしまっている点がひとつ惜しいところではある。しかし、衝動の中に身を置くだけが音の魅力ではない。その根底に息づく、燃え盛るような思いを、丹念に辿ることで見える美しさもあるのだ。

Audio, Video, Disco

JUSTICE

Audio, Video, Disco

フランスのエレクトロ・デュオJUSTICEが4年振りに新作をリリース! 前作同様、今作も全ての制作をセルフで行っている。3人のヴォーカリストを招き、インスト曲とヴォーカル曲どちらも収録。曲によって、美しくセクシーなヴォーカルが入り、メタルのようなギター・リフが入り、80'sを彷彿させるポップ感もあり、シンプルでありつつも複雑なプログレ感もあり......二人の持つ音楽に対するいい意味でのやりたい放題感に終始翻弄されっぱなしだ。それと同時に、音楽は自由であるべきものなのだと痛感した。全体的にスロー・テンポな楽曲が多く、それがまた楽曲の持つ華と彼らの自信を際立たせている。音楽に強い愛情を持ち、小細工無しで真っ向勝負を挑んだ、非常にエネルギッシュな1枚。

Torches

FOSTER THE PEOPLE

Torches

英NME誌による2010年のベスト新人50にランク・インし、この夏日本でもシングルである「Pumped Up Kicks」がクラブ・アンセムとして定着したLA出身のFOSTER THE PEOPLE。彼らの日本盤がいよいよ登場。PASSION PITをダンス・フィールド寄りにしたようなお洒落な感覚。そして、そのポップ感と少しのユルさが絶妙なバランスで成り立っているのが彼らの最大の魅力だ。シンガロング必死な「Call It What You Want」や極上のシンセ・ポップ「Houdini」など、アルバム全体としても楽曲は粒ぞろい。まだまだシングル・ヒットがここから生まれるだろう。日本盤のみに収録されている、KNOCKSなどの注目アーティストが手掛けたリミックスも聴き応え抜群だ。

Cults

CULTS

Cults

NYから突如現れたドリーミー・サイケ・ポップ・デュオ、CULTSのデビュー作。BEST COASTを彷彿とさせるビンテージなサーフ・ロックや甘いガールズ・ポップを奏でる彼らだが、シンセ・サウンドを取り入れるなど今のシーンと共鳴しながら、楽曲の良さは勿論、バラエティに富んだ楽曲が並んでいる。60年代風のサウンドが彼らの持ち味とも言えるが、ヴォーカルMadelineの甘い歌声が彼らの作り出す唯一無二の世界感を決定付けている。結成から1年余りというスピードと言い、Lily Alenが設立したレーベルの最初の契約アーティストとなったことと言い、CULTSは少し飛び抜けた存在であると言えるのかも。これからが本当に楽しみなバンドだ。

TKOL RMX 1 2 3 4 5 6 7

RADIOHEAD

TKOL RMX 1 2 3 4 5 6 7

今年2月に発表されたRADIOHEADの8thアルバム『The King Of Limbs』。そのリミックス・シリーズが完全生産限定12インチ・アナログ・シングルでリリースされ、即完売していた。だが今回そんなリミックス・シリーズが、2枚組アルバムとしてリリースされることに急遽決定。Four Tet、CARIBOUなどクラブ・シーンで活躍する人物や、NATHAN FAKEやSBTRKTなど今日のミュージック・シーンを盛り上げるアーティストまで幅広いリミキサーが揃っている。「Bloom」は5種類のリミックスが収録されているが、原曲を生かしたアレンジ、原曲を一切無視し楽曲のとある箇所だけをフィーチャーしたアレンジなどなど、手掛ける人物によってまったく違う側面を切り出してくる。これぞリミックスの醍醐味だ。

The Whole Love

WILCO

The Whole Love

オルタナ・カントリーという音楽基盤を持ちながらも実験的な試みを繰り返し、知性溢れる良質な楽曲を生み続けるアメリカ、ポスト・ロック界の至宝WILCO。ベスト・アクトとの呼び声高いFUJI ROCKでのライヴが記憶に新しい彼らだが、その時、披露された「I Might」や「Dawned On Me」といった歌心溢れるライヴ・ナンバーも収録された今作は、新たに設立された彼らのレーベルdBpm Recordsからの初作品。メンバー個々の確かな技能によるバンド・アンサンブルが美しい構成を成し、随所に配された音楽IQの高さが伺えるアイデアに二ヤリとさせられる。豊潤な音の実りを感じさせる今作は、全音楽ファン必聴の内容だ。国内盤には、秋よりツアーを共にするあのNick Loweのカヴァーが収録(涙)!

Seasons On Earth

Meg Baird

Seasons On Earth

フィラデルフィアのフォーク・グループESPERSのヴォーカルでもある歌姫Meg Bairdのセカンド・ソロアルバム。70年代にタイムスリップしたかのようなフォーク系の音で、ギター1本の弾き語りの曲が中心だが、どこか新鮮にも聞こえるのは彼女の歌声の存在感が大きいかもしれない。ソフトすぎずシャープすぎずで、歌声というよりは楽器の一部のように周りの音と驚くぐらい同調している。とにかくシンプルで心地の良いサウンドなので、幅広い層に受け入れられるんじゃないかと思う。しかしこの清涼感はなんだろう。高原の朝の空気とどっちが爽やかか競えるぐらい気持ちが良い。アルバム・タイトルがぴったりで、四季の変化を一枚のアルバムを通して聴いているような気分になり、とてもリラックスできる一枚。

Great Barrier Grief

OH MERCY

Great Barrier Grief

オーストラリアのメルボルンを中心に活動する4人組ロック・バンド、OH MERCY。多彩な音色のポップ・ロックをたっぷり詰め込んだアルバムを引っ提げて日本デビュー!グロッケンスピールやピアノを取り入れたアコースティックな伴奏にAlexの甘いヴォーカルが紡ぐ良質のメロディは必聴。どこか懐かしいギターの音色に思わずほっとする「Stay, Please Stay」に始まり、モダンで若者らしいユニークなアレンジが耳に残る「Let Me Go」、透明感に溢れた「Blue Lagoon」、かすれたヴォーカルが切なさを誘う「Doldrums」まで、スローでメロウな彼らの音楽にどっぷり浸ってみて欲しい。彼らの故郷、オーストラリアの広い大地をのんびりと歩いているような気分になれるだろう。

We'll Right It Make

WE'LL MAKE IT RIGHT

We'll Right It Make

オランダのDox Recordsに所属するポップの才人Benny Singsを中心としたRoos Jonker、Dean Tippet、Bart Suer、Extraa、Les Frogsの総勢6名のミュージシャン、プロデューサー、アーティストによるプロジェクト。再び“心を落ち着かせる音楽”を制作することをテーマに集結! 2010 年の秋にベルギーのアルデンヌの森に集まって作られた今作もリラックスした温かな雰囲気の楽曲揃い。「Maite」の無邪気な子供のあどけない声を聞いた途端、ふっと肩の力が抜けて、日常の喧騒を忘れられるに違いない。あとは優しい歌声に導かれるままに最後の「Mr & Mrs Woodman」まで、ソファに座って珈琲でも飲みながらゆったりと楽しんでいただきたい。

This Modern Glitch

THE WOMBATS

This Modern Glitch

英リバプール出身のバンドのセカンド・アルバム。前作は本国でプラチナ・アルバムに輝き、今作も全英チャート3位を獲得している。前作を聴いたことのある人はこの豹変ぶりに少し驚くかもしれないが私もその一人だ。こんなにシンセサイザーを多用しているとは思わなかったし、こんなに勢いで突っ走っていく楽曲が並ぶとは思わなかった。少し間違えれば今の流行りを取り入れただけの薄っぺらなサウンドになってしまうが、彼らはそれだけで終わらない。全曲シングル・カットできるほどにめちゃくちゃポップなサウンドがベースになっているが、所々にひねくれたサウンドと歌詞が見え隠れして、異彩を放っている。インディー・ポップと呼べた前作と比べるなら、今作は敢えてメジャー・ポップと呼びたいと思う。

The Years

MEMORYHOUSE

The Years

カナダのトロント出身のドリーム・ポップ・デュオMEMORYHOUSE。本作は昨年リリースしたEP『The Years』を再録音し、新曲を2曲追加したもの。幻想的でどこか物悲しいシンセ・ポップに柔らかな女性ヴォーカルが自然に溶け合い、無限の海の中を漂っているような気持ちにさせてくれる。人工的な音の中に自然的な要素もあり、冷たい音の中に温かみもあって、相反する2つの要素が上手く融合されているように思う。眠る前に聴いたら絶対良い夢を見ることが出来そうだと思うけれど、個人的には全曲聞き終わると思わずまたリピートしてしまうほど中毒性があるので逆に眠れないかも。容姿も音楽もアートワークもとにかく優美で、来年リリース予定のフル・アルバムにもますます期待が高まる魅力的な一枚。

Adventures

THE MARZIPAN MAN

Adventures

自国スペインではパフォーマンス等で話題のポップ・シンガー・ソング・ライター、Jordi Herreraのソロ・プロジェクト。2ndアルバムである今作にて、とうとう日本デビューを果たす。少年のような柔らかい歌声は、聴く者をおとぎの国に誘うような催眠効果がある。サウンドの基盤はフォークなのだが、アコースティック・ギター以外にも様々な楽器を駆使しており、一筋縄ではいかない独特のサイケデリックな空気感。こりゃ何だ? と動揺していても、彼の不安定ながらも人懐っこい歌声が、有無も言わさずリスナーを摩訶不思議な世界へとずるずる引きずりこみ離さない。Jordiの小粋な魔法が掛かった、ちょっぴり不思議な夢と優しさ溢れるサイケ・ワールド。既存の世界に飽き飽きしてる方々に、是非。