DISC REVIEW
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カミツキ
Xgate
ヘヴィ・ロックmeetsポップ・サウンド×エレクトロという基本路線は変わらない。しかし、四つ打ちのリズムも大胆に使いながらストレートでポップな魅力を打ち出した今回は、覚醒をテーマにした前作以上にカミツキの覚醒が感じられる。目の前に立ちふさがる門をこじ開け、前進することをテーマにした全5曲。物語は前3作からの続きではあるものの、歌詞からは、等身大のMiZUKi(Vo)が感じられる。そんなところもストレートでポップ。これまで以上に多くのリスナーに歓迎されるに違いない。新加入のHAGI(Gt)がアコースティック・ギターを軽快に鳴らす「Shine In the Darkness」には、ラテン・テイストという新機軸も。カミツキの活動はここからさらに加速していきそうだ。
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juJoe
juJoe
2018年に解散した元QOOLANDの平井拓郎(Vo/Gt)と菅 ひであき(Ba/Cho)に、佐藤ユウスケ(Dr/Cho)を加えたjuJoeによる1stフル・アルバム。誰かに聞かせるつもりもなく、バランスをとることもせずに完成させたという衝動的な全7曲には、"生きたい"と"死にたい"の狭間で揺れる不安定な感情が、えぐるような言葉で綴られている。"人間に慣れないまま三十路になっていく"と、自身の生きづらさを吐露する「三十路」や、"お前はそんなに立派で清潔なのか"と、何かと物申したい社会の風潮への怒りをぶちまける「石」。それらは共感すら求めず、ただ生み落とされただけの無骨で歪な歌ばかり。だが、だからこそ同じような苦しさを抱える誰かの救いになるのではないだろうか。
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岸田教団&THE明星ロケッツ
nameless story
好きこそものの上手なれ。ひと口にアニソンと言っても、世の中には様々な生い立ちを持ったものがあるのも事実だろう。その点、今シングル表題曲は岸田教団&THE明星ロケッツが、アニメ"とある科学の超電磁砲T"への限りないリスペクトを音にも詞にも全力で込めたものになるという。と同時にこの曲は、LiSAの「紅蓮華」を作ったことでも知られる、草野華余子とのコライトというプロセスを経ての制作が行われたという点も、一大トピックスではあるが、アニソン文化を愛するロック・バンドだからこそ作り上げることができるこの音世界の有り様は、極めて鮮やかのひと言。なお、c/wの「暁のカレイドブラッド」はアニメ"ストライク・ザ・ブラッドIV"OP曲。すなわち、これは極めてヲタクみの濃い1枚なのだ。
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PAN
ベスト盤°2
新体制となったPANが、結成25周年を記念しリリースする『ベスト盤°2』。初回盤には廃盤となった作品から、再録8曲も含め計10曲収録の"廃盤ベスト"も付属する。PANと言えば20周年のタイミングでもベスト・アルバムをリリースしたが、もちろん今回は名曲「想像だけで素晴らしいんだ」や、今やライヴに欠かせない「ギョウザ食べチャイナ」などの前回ベスト以降に生まれた曲や、過去作からチョイスされた楽曲も再録されてパッケージ(なんと新ドラマーのタツヤいわく1日で13曲レコーディングしたとのこと!)され、7割以上別モノとなっているので、どちらもコレクトしておきたい。ジャケットも1枚目と比べてパンの山が増えているという遊び心もあり、単純明快にリスナーを楽しませる彼ららしい。
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阿部真央
まだいけます
10周年を終えてその次に進んだ作品のタイトルとして、前向きさと俯瞰の目線を感じるが、多彩な11曲を通して聴くと、このタイトルが示唆する今の彼女のスタンスがニュートラルなことがわかる。冒頭から激しくアコギをかき鳴らし、勝手なイメージで縛ろうとする対象を断罪。攻めのモードが続き、少しセクシーな隠喩も含むタイトル・チューンを挟んで、お茶の間に浸透した「どうしますか、あなたなら」で軽やかに転じる。恋愛系でも異なる2曲「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」、名匠 笹路正徳のアレンジによる「今夜は眠るまで」を経て、ラウドな「答」でフックを作り、シングル曲「君の唄(キミノウタ)」も浮くことがない。痛快で繊細な阿部真央の個性はそのままに、音もスタンスもアップデート。
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Base Ball Bear
C3
2010年代になぜヒップホップが覇権を握ったのかと言えば、ジャンル内ゲームから抜け出し自由に外側と接続することで、メタモルフォーゼを遂げていったからである。"ヒップホップだけど、ヒップホップじゃない"からこその面白味が、YouTube/SNS時代以降のジャンルレスな感覚とシンクロしたとも言える。そう考えると(特に日本の)ロック・バンドはいつからか、"ロック・フェス"という内々のゲームに拘泥してしまっていたように思えてならない。そして、それに対して常にラディカルな抵抗を見せてきたBase Ball Bearは、本作において"どうしようもなくロック・バンドなのに、これまでのロック・バンドとは明らかに違う"という境地に辿り着いた。新たなディケイドの幕開けに相応しい。
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雨のパレード
BORDERLESS
"スタジオで演奏しながら曲を作っていたバンドが、DTMと向き合い、人力では手数の足りない音を許容したことで、制作とライヴの自由度が広がった"という話は、昨今珍しいことではない。しかし、雨のパレードの場合はひと味違う。"人力で現行のポップ・シーンにある主流と共鳴する"ことに取り組んできた、すなわちデスクトップの自由度は重々踏まえたうえで、楽器やハードと向き合ってきたからこその、制約から解放されたときに起こる、内燃していたエネルギーの爆発は半端ではない。雨のパレードは、本作『BORDERLESS』を起点にして、2020年代という新たなディケイドに、バンドならびにポップ・ソング全体レベルで、大きな旗を掲げる存在になっていくのかもしれない。
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コレサワ
失恋スクラップ
"女子の味方"コレサワの全曲失恋ソングのコンセプト・ミニ・アルバム。代表曲「たばこ」の主人公に対し、相手目線で書いた話題のアンサー・ソング「恋人失格」のセルフ・カバーをはじめ、コレサワならではの、きれいごとではないハッとするような詞が織り込まれた全7曲には、本気で相手を想った気持ちが滲む。しかし、痛々しかったり悲しかったりするだけではなく、聴き進めるうちに徐々に気持ちが整理されて、感謝の気持ちへと変わっていくような展開には、彼女の信念とも言えそうな、"過去を受け入れて保存する"気持ちが託されているように思う。サウンド的にはこれまで関わりのあった人物を新たにアレンジャーとして迎え、打ち込みやギターレスなトラックにも挑戦しており、"らしさ"と"新鮮さ"を同時に味わえる1枚になった。
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CY8ER
東京
満を持してのメジャー・デビュー・アルバム。"2020年の東京系ネオKawaii"をコンセプトとし、渋谷のクラブ・カルチャー、秋葉原の萌え/オタク・カルチャー、原宿のKawaiiカルチャーを網羅したという本作は、CY8ERと、中田ヤスタカら8人の先鋭プロデューサー陣による多様な化学反応を味わうことができる1枚に。中田節全開の「恋愛リアリティー症 (feat.中田ヤスタカ)」や、数多くのCY8ERの曲を手掛けてきたYunomiらしい和テイストのEDMナンバー「東京ラットシティ」など、新たな門出を祝うに相応しい、色とりどりで華やかな作品に仕上がった。2020年までに横浜アリーナでのワンマン・ライヴ成功という、大きな目標へ加速するための起爆剤となるか。2020年要注目。
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ニノミヤユイ
愛とか感情
声優として活躍する"二ノ宮ゆい"がアーティスト"ニノミヤユイ"としてリリースするデビュー・アルバム。本作には、佐藤純一(fhána)やカノエラナなど気鋭の作家陣がニノミヤユイと向き合い、"陰キャのカリスマ"を目指す彼女の内に秘めた"陰"と"反骨精神"を個性豊かに表現した全10曲が収録されている。とりわけ衝撃を受けたのは、欅坂46の「サイレントマジョリティー」や「不協和音」で知られるバグベアが手掛けた、オープニング・チューンにして表題曲の「愛とか感情」。言葉を詰め込みまくった譜割りや、乱高下するメロディが与えるいい意味での違和感が曲の世界に引き込み、心に"ニノミヤユイ"への深い印象を植えつける怪作だ。彼女のファンだけでなく、多くの"陰キャ"やロック好きに届いてほしい1枚。
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バンドハラスメント
一目惚れ
一時はあわや解散か? という事態にまで陥っていたという彼らがこのたび心機一転を図り制作に臨んだという、このシングルが具現化した意味はあまりにも大きい。そして、その表題曲がTVアニメ"ちはやふる3"のEDとして起用されたことも、バンドハラスメントの認知度をここから上げていくという意味では、重要な出来事だと言えるだろう。2020年は勝負を賭ける! と明言するだけあって実際に今作の充実度はなかなかのもの。卓越したポップ・センスを発揮したダンス・ロック・チューン「Fifty」、約2年半前にリリースされた名曲をリビルドした「大人になるために(2020 ver.)」も、すこぶる垢抜けた仕上がりだ。混迷の時を経ながらも、前進することを選んだ彼らの成長っぷりがここからは感じられる。
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FAITH
Capture it
軽快で、リラックスしたギターのカッティングと気持ち良く身体を揺らすようなビート&コーラスの「Party All Night」でスタートし、19歳の現在のリアルな心境を綴った伸びやかなポップ・チューン「19」や、アコースティックからパンキッシュな曲、Akari Dritschlerによる内なるエモーションを自由に解き放っていくヴォーカルが冴える「Caught Up in Time」など幅広い曲が揃う。メジャー初アルバムの今作は、高校生の頃から5人で育んできたキャッチーでポップなロック・サウンドを、さらに一歩推し進めて繊細なアレンジを施し、今の想いをエヴァーグリーンなメロディとサウンドで包み込んでいる。メンバー全員が20歳になる2020年。その記念碑的な美しくまばゆいアルバムだ。
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LONGMAN
Just A Boy
愛媛発のLONGMANが、メジャー1stアルバム『Just A Boy』をリリース。今作は、メロディック・サウンドと、哀愁感がほどよく混じってブライトさが際立ったメロディ・ライン、心をダイレクトに貫いていくひらい(Gt/Vo)とさわ(Vo/Ba)の男女ヴォーカルという、彼らの武器が惜しみなく発揮された。たくさんの曲からベストなものを選んだという選りすぐりの作品で、十八番的な曲を磨くだけでなくスウィングしたビートの曲や試みのあるリズムも導入し、LONGMANとして昇華。ひらいのヴォーカル・パートが増え、より男女の声のコントラストが強化され、またサビで極上のふたりのハーモニーを聴かせるなど、丹念に曲を磨いていることがわかる。"1st"アルバムに相応しい力作だ。
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ネクライトーキー
ZOO!!
現メンバーでライヴを重ね、アンサンブルのスキルやアイディアが磨かれてきたことが明らかに反映されたアルバム。ファンクなAメロから急転直下、QUEEN的なロック・オペラ感に転じる先行配信曲「ぽんぽこ節」、コミカルなのに洒脱なコードで捻りの効いた「夢みるドブネズミ」、淡々としたムードの演奏の中に乾いた諦観と少しの前向きさが描かれる「深夜とコンビニ」、エレクトロからグランジまで、サウンドとアレンジがシュールに変化していく「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」、唯一のもっさ(Vo/Gt)作詞作曲の「夏の暮れに」の、ギター・バンドらしいストレートな曲の良さ。11曲が別の方向を目指した多彩なアルバムだが、歌詞には大人になって気づくことから去来する寂しさがどこか共通して現れている。
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20/Around
HEAVY
九州限定オーディション"Born to 九州 2019"で審査員特別賞を受賞した、福岡のハード・ロック・バンドによるミニ・アルバム。OP「Rock Addiction」から、YosuKe(Vo)のルーツである70'sハード・ロック・サウンドを、二十歳過ぎの彼らがこれでもかとストレートに鳴らす。それが逆に新鮮みがあり、ガツンとしたインパクトを与えている。また表題曲は、短い楽曲ながら各パートで様々な音色が味わえる仕上がり。今作では"ヘヴィ"を軸にしつつも、ダンス・ビートやラップ・メタル的な要素も盛り込まれているが、ジャンルを絞らず、いろんなものを自分たちなりにアウトプットしていくのが、20/Aroundのスタイルだという。演奏クオリティが高いだけに、今後の挑戦も楽しみ。
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MISS ME
空想カブリオレ
"ライヴハウスから野外フェスへ"を目標に結成された8人組の音楽ユニット、MISS MEの1stシングル。表題曲「空想カブリオレ」は、つらい現実から逃れつつもまた現実に立ち向かえるようにと、そっと背中を押してくれるような応援歌。耳なじみのいいメロディは、幅広い層に支持されるポテンシャルを秘めている。A、B、Cの形態に応じて異なるカップリングは、MISS MEと怪盗との戦いを描いたストーリー性の高い「怪盗グレイ」、失恋ソングを大人っぽく歌い上げた「終電トラブル」、ソロ・パートが多く個々の歌唱を堪能することができる「Kite」と、いずれも個性的で粒ぞろいだ。表題曲を含め、ロック・サウンドという1本の芯が通っていることからも、これからの可能性を感じた作品。
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Who-ya Extended
Q-vism
純然たるバンドではないアーティストにここまでやられてしまうと、もう並のロック・バンドでは太刀打ちできる余地があまりない。今作でメジャー・デビューを果たしたWho-ya Extendedは、弱冠20歳のヴォーカリスト Who-yaを中心としたクリエイターズ・ユニット。TVアニメ"PSYCHO-PASS サイコパス 3"のOPに起用されている表題曲「Q-vism」の持つ鋭利さと中毒性フルゲージ加減は、憎らしいほどにカッコ良さが満載で一切の隙なし。かと思えば、c/w「S-cape 2 the abs」で聴ける爽快さを漂わせたギター・ロック然とした音像とWho-yaの伸びやかな歌声は、聴き手を癒したりもする。公式サイトにはまだ情報らしいものがほぼ見当たらない。いったい何者だ!?
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The 3 minutes
シュレディンガーの女
いわゆる陽キャにはなりきれないものの、かといってつまらない陰キャに甘んじているわけでもない。今作に収録されている計4曲においてThe 3 minutesが描いてみせるのは、それぞれにいい意味で無キャでモブな"どこにでもいる誰か"の物語たちであるように感じる。中でも、表題曲は最近何かと話題の量子力学をモチーフにしながらSNS世代ならではの機微を描いた歌詞が印象的な恋愛劇で、音楽的には近年のボカロ文化からの影響も感じる過密型ポップ・サウンドが満載。はたまた「そいえば」で繰り出されるアオハル全開な恋模様と、切なげな情緒をたたえたメロディ・ラインもなかなかに味わい深く、つまるところ自称 名古屋発"純情/妄想ミクスチャー"シンセ・ポップ・ロック・バンドの名は伊達ではないと言えよう。
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時速36km
最低のずっと手前の方で
2016年結成、昨年初めて全国流通を果たした4人組が店舗/会場&通販限定EPを同時発売した。その内店舗販売となる今作収録曲は、一貫して夜道を歩きながら頭の中を巡る思いがありのまま吐き出されたような歌詞で、それを轟かせる仲川慎之介(Vo/Gt)の声がこれまた質朴。と言ってもむやみに泥臭いわけでも厭世的なわけでもない。ただひたすら飾らない言葉と声だからこそ現実的で、感情を煽るのだ。煩悶する思いに対し"まともな夜明けだ"と俯瞰しながらも、"誰にだってあることだからって苦しくないわけじゃないでしょう"と寄り添う「銀河鉄道の夜明け」。歌と共に徐々に扇情的になるギターも印象的な「真面」。「素晴らしい日々」は後半のコーラスがいいアクセントで、ライヴで一緒に歌ってみたくなる。
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cOups.
BE THE ONE
2018年5月にライヴ・デビューした平均年齢20歳のオルタナ・バンドが残響recordからリリースする1stフル・アルバム。それぞれに幅広いバックグラウンドを持つメンバーが、Sean(Vo)が作ってきた曲に対してアイディアをぶつけながら、バンドが進む道を探ってきたという、その彼らがとりあえず出した答えがここに収録されている全11曲。ひと言で言えば、ダンサブルなロックということになるが、キャッチーなシンセの音色も交えながらグルーヴで聴かせるポップな前半と、轟音で鳴らすリフで聴かせるファンキーな後半で、ガラリと印象が変わる振り幅がバンド名にクーデターを掲げる彼らの可能性なのだろう。英語で歌いながら、突然、日本語を閃かせる歌も鮮烈な印象を残すという意味でキャッチーだ。
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