DISC REVIEW
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ザ・クロマニヨンズ
ドライブ GO!
"SIX KICKS ROCK&ROLL"と銘打った6ヶ月連続リリース企画の第1弾。疾走感あふれる表題曲「ドライブ GO!」では、1音目から薫る古き良きロックンロール臭に心を奪われる。間奏やアウトロのライヴ感もたまらない。続く「千円ボウズ」は、繰り返される"どうでもいいぜ 千円くれ"という無骨なワードが強烈なインパクトを残す1曲だ。悩みごとが絶えない昨今。悩みなど"どうでもいい"と言い放ち、聴いているときだけは忘れさせてくれる、そんな痛快な音楽こそ、この息の詰まる日々には必要なのだろう。世界が大きく変わってしまっても、ザ・クロマニヨンズ節は不変だ。音楽を純粋に楽しみ続ける彼らが6ヶ月連続で放つロックンロールは、世の中に漂う閉塞感をぶっ飛ばしてくれるに違いない。
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LEGO BIG MORL
愛を食べた
まず、タイトルがいい。"愛を食べた"だ。愛するという行為を、命がけのテーマとして捉えるのではなく、あくまでも日常の一部に溶け込ませ、それでいてヒトの生業に必要不可欠な要素であるという価値観。それを生々しくポップに伝える絶妙な表現だ。バンド結成から15年。メンバーも30代半ばを過ぎたLEGO BIG MORLが、今だからこそ歌える、生活に深く根づいたラヴ・ソングであり、人生讃歌だと思う。前作アルバム『気配』に続き辻村有記(ex-HaKU/Vo/Gt)をアレンジャーに迎え、サウンドはポップに仕上げつつ、随所に散らしたギミックにロック・バンドらしい気概も光る。c/wには、歌手のこゑだに提供した「ピーポーピーポー」のセルフ・カバーを、安原兵衛のアレンジで収録。こちらはレゴらしいのひと言。
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Bentham
3650
バンド結成10周年を記念した、2年ぶりのアルバム『3650』。今作はオゼキタツヤ(Vo/Gt)書き下ろしの新曲6曲に加え、「TONIGHT」のアザー・アレンジ再録と、4月に行った配信ライヴの音源3曲を収めた全10曲入りとなっている。新曲はBenthamの10年の軌跡、感謝や愛、ここから続いていく未来への想いなど、様々な感情が溢れている気がする。一歩一歩を確かに踏みしめながら駆けていくサウンドにバンドの意志を感じる「マーガレット」、どこか懐かしく温かい、誠実なバラードであるリード曲「アルルの夜」、また他の収録曲とは毛色の異なる、ネオンの光を思わせる音色が都会的な「NUDE」。Benthamの10年=3650日を辿りつつ、現在のバンドの音楽に対する意欲も感じられる作品だ。
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PELICAN FANCLUB
Who are you? / 星座して二人
エンドウアンリ(Gt/Vo)のひとつの夢だったというアニメ"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のテーマ曲となった、サビの開放感が印象的な「Who are you?」と、yonigeの牛丸ありさ(Vo/Gt)を迎えた、ダークな雰囲気を醸す「星座して二人」のダブルAサイド・シングル。期間限定盤に収録されたKANA-BOONの楽曲「シルエット」のカバーは、リスペクトを込め原曲を再現しつつ、彼ららしい浮遊感のあるサウンドに仕上がっている。前身アニメ"NARUTO-ナルト- 疾風伝"のテーマ曲ということもあり、夢の実現に花を添える1曲となった。また通常盤には、Kabanaguによる「星座して二人」のリミックスを収録。彼ら独自の繋がりが窺える1枚だ。
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羊文学
you love
"おかえり"の言葉から始まる、"家"、"帰る場所"がテーマのEP。冒頭曲「マヨイガ」は映画"岬のマヨイガ"の主題歌で、居場所はここにあるのだから行ってきなさいと外の世界へ送り出す、ふくよかで力強い母の如き愛情に溢れた、安心感のある塩塚モエカの歌声にもマッチしたナンバーだ。また、前向きな言葉をどっしりしたロック・サウンドに乗せた爽快な「あの街に風吹けば」、甘くふわりとした中に儚さが滲む「なつのせいです」、環境音の中でギターを紡ぎ歌う低音のヴォーカルが物憂げな「白河夜船」、羊文学らしいシューゲイザーっぽさが突き抜けた「夜を越えて」と、各主人公が目に浮かぶ、音と詞の収まりの良さが心地いい。ラストの蓮沼執太フィルとのコラボ版「マヨイガ」はよりモダンな空気で、1曲目と聴き比べて楽しめる。
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ササノマリイ
空と虚
自身が大ファンであり、表題曲「空と虚」がオープニング・テーマを務めるアニメ"ヴァニタスの手記"からインスパイアされた7曲を収録したミニ・アルバム。"ヴァニタス"がラテン語で"空虚"を意味することから"空と虚"と名付けられた本作は、一貫して透明感のある洗練された音作りが印象的だが、そのまっさらな世界の中に歌声や歌詞の儚さがにじみ、どこか虚しさが漂う。無機質なリズムに乗せた、"機械仕掛け"など"ヴァニタスの手記"を彷彿とさせる言葉が、登場人物の心情を映しアニメの世界観とリンク。そしてアルバム後半になるにつれ、視界が開けるように生き生きと華やかさを増していく。最後に収録された「雪花の庭」で描かれる儚くも大きな愛が、作品全体を包み込む1枚。
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BanG Dream!
Live Beyond!!
ポピパらしいきらめきを放つ全5曲が収録されたミニ・アルバム。スマートフォン向けゲーム"バンドリ! ガールズバンドパーティ!"のPoppin'Partyバンド・ストーリー3章に合わせて書き下ろされた表題曲は、音楽の力や夢を信じる想い、大切な人への気持ちをまっすぐに届ける楽曲で、"一秒で繋がるよ Distance"といった今の時代に当てはまる、希望に溢れた言葉にも勇気を貰える。何かが始まりそうなポジティヴなパワーが漲る"バンドリ! ガールズバンドパーティ! for Nintendo Switch"の主題歌「キミが始まる!」、かっこいいポピパを堪能できるエモーショナルなバンド・サウンドの「Moonlight Walk」など、多彩な収録曲で聴く者を魅了する1枚。
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ビッケブランカ
FATE
約1年半ぶり4作目となるアルバム。既発のシングル「ミラージュ」やビッケブランカ流J-POP「ポニーテイル」も収録となりこれまで以上に幅広い内容になるだろうと予想されたが、今作はそこにプラスしてソングライター、クリエイターとしての探究心や進化が形になった。ミニマムなトラックの中にも、遊び心や細やかな音の采配で耳をくすぐり、歌を最大限に引き立てる仕掛けにもなっている。一方で懐かしさを覚える旋律や、季節の情緒や風を感じさせる旋律や柔らかな歌の手触りがフレンドリーで、この歌の心地よさでまず、するりとアルバムに入り込んでしまう。そしてどんどん、様々な音の重なりやリズムの響きが立体的となって、新しい発見や味わいに触れていく作品になっている。エッジィでエヴァーグリーンなアルバムだ。
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B.O.L.T
Attitude
各曲に身体のパーツや動きがテーマとして割り振られた2ndアルバム。Misaki(SpecialThanks)提供の「スマイルフラワー」、SHANKの松崎兵太は「まわりみち」、「未完成呼吸」の2曲、TOTALFATからShunとJoseがそれぞれ1曲ずつなど、楽曲を提供したアーティストには強力なライヴ・バンドの面々が名を連ねた。中学生になったばかりの青山菜花と白浜あや、20歳付近で大人になった内藤るなと高井千帆、双方の歌声が絡み合い、各作家の個性が発揮された曲を歌い上げる。今の彼女たちにしか作れない作品と言えるだろう。タイトル"Attitude"は"姿勢"などの意味を持つが、本作を経た4人がアーティストとしてどんな姿勢を見せてくれるのか、彼女たちの今後も楽しみだ。
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KEYTALK
ACTION!
思えばコロナ禍以前にリリースした「サンライズ」が、彼らには珍しいファストなポップ・パンクだったのも、バンドが初期衝動に満ちていた予兆だったのかも。何度も更新されてきたKEYTALK流カーニバル・ソングは、「宴はヨイヨイ恋しぐれ」でゴリゴリした感触さえ残すし、前作以降、冴えを見せる首藤義勝のファルセットは奇妙なメロの「大脱走」で映えているし、EDM路線でありつつドラムは生音がタフな「ラグエモーション」、16ビートの中にハード・ロック・テイストが否応なしに滲む「不死鳥」は、小野武正のギターあってこそ。終盤は首藤のソロ・ヴォーカル曲「あなたは十六夜」、「愛文」、寺中友将の「照れ隠し」が並ぶことで、自然体の歌詞の強さも伝わる。結成12年にしてこの飽くなき好奇心と振り幅が彼ららしい。
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私立恵比寿中学
FAMIEN'21 L.P.
7年ぶりに新メンバー3名(桜木心菜、小久保柚乃、風見和香)が加入し、休養中だった安本彩花が復帰。新たな9人体制となった私立恵比寿中学が、その初作品として夏の恒例イベント"ファミえん"のベスト曲集をリリースした。新メンバーがレコーディングに参加したことはもちろん、「ご存知! エビ中音頭」をはじめとする初期、中期の曲は再レコーディングされており、新メンバーが吹かせる新しい風と、既存メンバーの成長を存分に堪能することができる。新曲は「イヤフォン・ライオット」。何かとフラストレーションが溜まりやすいこの時勢に、イヤホンで聴いて心の中で暴動を引き起こす、そんな1曲だ。残念ながら今年2021年の"ファミえん"は中止になってしまったが、本作を聴き倒して次回の開催を待ちたい。
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キタニタツヤ
聖者の行進
"ノイタミナ"枠のTVアニメ"平穏世代の韋駄天達"のOPテーマとして、キタニタツヤが初めてタイアップに書き下ろしたニュー・シングル。無感情に列をなす不穏なパレードを想像させるダークなサウンドにのせて、無慈悲に生かされる人間の弱さと、それでも"幸福の種"に縋りたい儚さを鋭い言葉で歌い上げる。デビューから一貫して、厭世的に世界を捉え、そこでいかに生きるかを歌い続けてきたキタニのクリエイティヴが、アニメ・タイアップという機会を得て強い訴求力を伴って結実した。カップリングには、今年配信リリースされ、ALIがアレンジを手掛けた「Ghost!?」をキタニ自身がリアレンジした、"Bad Mood Junkie ver."などを収録。全3曲でキタニタツヤという才能を多面的に伝える1枚。
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BiSH
GOiNG TO DESTRUCTiON
ケースにヒビ割れの特殊加工を施した"破壊盤"でも話題の、メジャー4thアルバム。"GOiNG TO DESTRUCTiON"のタイトルにも表れている通り、本作のキーワードは"破壊"。ひと言で"破壊"と言っても、迷いや焦燥感に立ち向かって内外の壁を壊して進んでいく意志だったり、新たな創造のための破壊だったり、様々な解釈で捉えられた"破壊"が本作に潜んでいるように思えてならない。BiSH節全開の「CAN WE STiLL BE??」から始まり、アユニ・Dが作詞した、人肌のような温かみを持つ「STAR」で締めくくるまで、全14曲の重厚な1枚に仕上がった。メンバーの個性を生かしたソロ活動も増え、たくさんの刺激を貰ってアーティストとして成長をしていった個々の表現力にも注目。
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フレンズ
SOLAR
フレンズの新体制初アルバム『SOLAR』。タイトルどおり、なかなか気分が晴れ渡らない日々を明るく照らす"太陽"のような本作。多数のタイアップ曲に加え、新境地を見せるメロウで心地よいリード曲「東京今夜」、ロックなサウンドとエッジの効いた歌声が刺さる「海のSHE」、音楽を心から楽しむ姿が目に浮かぶカントリー調の1曲「元気D.C.T~No at all~」、夏への期待感の中に切なさが混じるメロディが胸を締めつける「8月31日の行方」など、楽曲ごとにまったく異なる表情を見せる。さらに、"Special Rare Track"として、アコースティック・アレンジ・バージョンの「NIGHT TOWN(神泉Ver.)」も収録された、聴きごたえ十分なアルバムに仕上がった。
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サンサーラブコールズ
8dayHz
男女混成のヴォーカル・ワークを生かしつつ、骨太なバンド・サウンドを豪快に叩きつけていくラップ・メタル然とした「Who I Am」に始まり、目まぐるしい展開で突き進んでいくデジタル・ハードコアな「コンクリートユートピア」といった、フロアを強襲するストロング・スタイルなものだけでなく、R&Bテイストのメロウな「世界の端っこ」でトレンドも押さえたり、ドラマチックに展開していく「ストロベリキャンディー」で普遍的なミディアム・ロックを高鳴らしたりと、実に変幻自在なミクスチャー・スタイルを提示。そんな多彩な楽曲ゆえに、多様性を謳ったアルバム・コンセプトに辿り着いたのは必然かもしれない。圧倒的な野心と愛に満ちた、強烈すぎる1stミニ・アルバム。
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ネクライトーキー
ふざけてないぜ
荒唐無稽だけど、どこかほっこりする漫画原作のアニメ"カノジョも彼女"に書き下ろした新曲。原作に沿っているようで恋愛もしくはバンドについて歌っているようにも受け取れる歌詞、何より面白くてキャッチーと称されつつ、メンバーはストイックそのものなスタンスが、曲タイトルにも表れていると言ったら朝日(Gt)は笑うだろうか。表になったり裏になったり不意打ちを喰らうビートの面白さ、5人の音の抜き差しを計算し尽くし、音数少なめでも快楽指数高めのアレンジが癖になる。c/wは"徒然なるトリビュート -徒然草の再解釈-"企画の参加曲「波のある生活」。マーチング・リズムやアイリッシュ風なメロディでありつつ、ごく日本的に聴こえるのは「続・かえるくんの冒険」のサビにも通じるニュアンスだ。
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MOSHIMO
化かし愛
MOSHIMOがアルバム『化かし愛』でメジャー・デビュー! 今作は、これからの活動に勝負をかけるバンドの決意が窺える1枚であり、常に物事に対してまっすぐにぶつかっていくバンドの魅力がギュっと詰まった作品だ。キャッチーな言葉遊びも面白い「化かし愛のうた」、思わずバットを振る真似をしたくなる野球にまつわるフレーズ満載の「獅子奮迅フルスイング」、大切だった日々を回顧し切ない思いを吐露する「蜂蜜ピザ」、アグレッシヴなサウンドに乗せて未練に踏ん切りをつけようとする「断捨離 NIGHT」など全12曲。恋愛や日常の様々なことが描かれているが、葛藤しながらもいつだって全力な姿を見せてくれる岩淵紗貴が歌うからこそ、胸に響いてくるものがある。今作の曲たちがライヴでどう化けるのかも楽しみだ。
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ハンブレッダーズ
ワールドイズマイン
ノイジーなギターと爽快に駆け上がっていくメロディで、止まっていた日常を大胆に色づけていくような1stシングル「COLORS」に続くシングル。今回は縦ノリの疾走感に加えてダンサブルなノリが軽やかなステップを呼び起こす。「COLORS」で開いた世界に臆せず飛び込ませてくれるエネルギーほとばしる曲になった。頭でっかちだったり、ひねくれた妄想や想像だったりでつい思考の寄り道をしてしまうこともあるけれど、勢いやリズムに乗って君を迎えにいくという一筋縄でいかないところはハンブレらしい。でも、完全無欠のヒーローじゃない、いつだってリスナーの隣にいて語り掛ける存在が彼らの音楽。そして、ド派手なギター・ソロをきっかけに、"僕らの世界"にまばゆいスポットライトを浴びせていくアンセム感が最高だ。
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I Don't Like Mondays.
Black Humor
人生を謳歌するパーティー・チューンを放ってきたバンドが、社会的なことや人間の本能を表現することでリスナーに引かれるとか、そういう意識やレベルにはすでにいない、成長とリアリティを存分に発揮してくれた。2019年11月の「gift」から直近の「馬鹿」まで約1年半に渡り配信リリースしてきた12曲に、新曲をプラス。コロナ禍で誰しもが陥った孤独や非現実感が色濃い前半から、次第に物理的に遠くても近くても離れがたい存在に想いを馳せ、未来のことも想像できるようになっていくアルバムとしての流れも、結果的なものだとしても素晴らしい。そつなく生きる都会の男性の内面の痛みや切なさ。それらを圧も特定のジャンル感も抑え、洗練された音像に落とし込んだのも見事だ。まだ続くこの日常の隣に置きたい。
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マハラージャン
僕のスピな☆ムン太郎
スーツにターバン姿という強烈なヴィジュアルから放たれる洗練されたサウンドが話題のマハラージャンが、ついにメジャー1stアルバムをリリース。今まで作詞、作曲、編曲、演奏すべてを自身で手掛けてきたその圧倒的な楽曲センスはそのままに、本作ではハマ・オカモト(OKAMOTO'S/Ba)や石若 駿など豪華ミュージシャンが参加しさらにパワーアップ。会社員時代の経験をもとにしたシニカルな歌詞と、グルーヴィでダンサブルな楽曲に乗せて、社会人の"あるある"をポップに笑い飛ばす心地よさがクセになる。また「セーラ☆ムン太郎」ではEric Claptonの「Layla」をオマージュするなど、スパイスの効いた遊び心も。そんな彼が描く"デカいビジョン"に確実に近づく大きな一歩となる作品だ。
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