DISC REVIEW
ヤ
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やくしまるえつこ
X次元へようこそ/絶対ムッシュ制
昨年はソロで『RADIO ONSEN UTOPIA』、相対性理論で『TOWN AGE』と2枚のアルバムをリリースし、その存在感の大きさを示したやくしまるえつこ。本作は彼女の7枚目のソロ・シングル。「X次元へようこそ」は躍動感のある流麗なストリングスやムーディなブラスをフィーチャーした、肉体的で甘美な魅力を持ったシティ・ポップ風の楽曲で、"にゃんにゃんにゃんにゃにゃにゃん"と囁く彼女のヴォーカルは、"萌え"よりは"エロ"のほうがしっくりくる妖艶さを孕んでいる。「絶対ムッシュ制」はミニマムなバンド・サウンドの上を流れる煌びやかなシンセと、最後にバーストするギターが印象的なポップ・チューン。「X次元へようこそ」の編曲は菅野よう子が、全曲マスタリングはグラミー賞受賞の経歴も持つTed Jensenが担当している。
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やけのはら
Sunny New Life
前作『This Night Is Still Young』から約2年半振りとなる待望のニュー・アルバムが到着。前作では時代を代表するアンセムとなった七尾旅人との「Rollin' Rollin'」が収録されていたりと、これまでの活動を集めた集大成的なアルバムで夏の夜を感じるとても素敵な作品だった。ウクレレの音色で始まる今作はより開放的でリラックスした夏を感じさせてくれる。ドリーミーで洗練された美しいトラックにやけのはらの独特のタイム感あるラップが乗る。日常を映し出したその言葉1つ1つがぐっと胸に残る。参加アーティストもVIDEOTAPEMUSICやCEROの高城晶平など今作も豪華。シティ・ポップとヒップホップとユーモアを詰め込んだ美しく、そしてずっと聴いていたくなるアルバムだ。
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やけのはら
This Night Is Still Young
ここ数年、DJとして全国各地のパーティを沸かせ続け、様々なアーティストとのコラボレーションやYounGsoundsとしての活動など、多岐に渡って活躍を続ける、やけのはら待望のソロ・アルバム。パーティが終った後に迎える、どうしようもなくて、愛おしい朝の景色。都会の雑踏に溢れかえる無数の名もない人生の数々。温かく、愛情に満ちたリリックから思い出すのは、例えばそんなことだ。ドリアンやBUSHUMINDといったツワモノが参加し、スタイルに捕らわれることのないトラックは、多彩でありながら、彼の持つ空気感がアルバムを一つの世界観に染め上げている。夢や幻想かもしれない、でも信じられる儚くも強固な「何か」。「Summer Never End / まだ寝ません」このうだるような暑さの夏が愛おしい記憶に変わる時、そのサウンドトラックは、きっとこのアルバムだ。
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矢沢洋子
ROUTE 405
the generous、矢沢洋子と2つの名義を経て、辿り着いたのはバンド・サウンドであり、THE PLASMARSという強力な仲間だった。Track.1の「ROSY」はニューロティカのKATARUの楽曲提供、突き抜けた爽快さとポップネスに満ちたロック・チューンから始まり、Suzi Quatroのカヴァー「THE WILD ONE」まで間に今作唯一のバラード・ナンバーである「moon light shadow」を挟みながらも一気に駆け抜ける。矢沢洋子の名前は刻印されているが、今作がこの"バンド"の1stアルバムと言えるくらいの瑞々しい衝動に満ちた快作だ。今後このバンドがどう転がっていくのかは未知数だが、Suzi Quatroも真っ青なロック・アイコンに化けてくれることを期待。
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ヤなことそっとミュート
Beyond The Blue
メジャー・デビュー・イヤーを締めくくったアルバムは、会心作と言っていい出来栄えだ。マスロックを思わせる開幕の「最果ての海」は、5拍子を中心にサビでは拍子チェンジが織り込まれ、且つ複雑なメロディ展開もありと、ひと癖もふた癖もある曲。これらの要素が、いい意味での緊張感を生んでいて、一聴して痺れた。厳しい冬景色が情景として浮かぶ「結晶世界」や、ヤナミューを体現している曲だという「遮塔の東」など、新曲がとにかく粒揃い。音源化されていなかった「D.O.A」の満を持しての収録も嬉しい。初回限定盤にはインディーズ時代の曲からアンセムを中心にセレクトして現体制によるヴォーカルを再録した"Re-vocal Edition"を収録。ヤナミューへの入り口のひとつとしてお薦めしたい。
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ヤなことそっとミュート
フィラメント
"ヤナミュー"こと"ヤなことそっとミュート"のメジャー2ndシングル。表題曲は、人と人との繋がりを電球のフィラメントになぞらえた、まさに白熱電球の明かりのように温かみのあるロック・バラードに仕上がった。この曲で届けたい言葉、そして想いを乗せたエモーショナルで包み込むような歌声を、ヤナミューらしい歪んだロック・サウンドで足腰強く支えているような印象だ。c/wの「Passenger」は、曲が進行していくにつれて音数が増え、だんだんと力強さを増していく様が実にドラマチック。爽やかながらも、鬱屈とした空気を吹き飛ばすような力強さも感じさせる1曲だ。この2曲こそがコロナ禍によって"ヤなこと"だらけになってしまった現在の世界に対する、ヤナミューなりのアンサー・ソングなのだろう。
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家主
石のような自由
2023年12月に配信リリースした3rdアルバムにCDだけのボーナス・トラック3曲を加えたフィジカル版。メンバーのうち3人が作詞作曲し、担当した曲のヴォーカルをとるスタイルならではの、ひとつのバンドの世界観と曲の多彩さ。登場当時からそうだが、例えば、今THE BEATLESを初めて聴いてもおそらくカッコいいとかメロディが素晴らしいとか感じるのに近い感動をもたらすこの奇跡のバンド。しかも本作で録り音やミックスの解像度が上がり、聴くことのカタルシスも増したのは嬉しい限り。名前の付かない感情にフォーカスする歌詞の的を射た表現も、絡まった気持ちを解してくれたり、少し前を向けたりするのもいい。普遍的だが、それはしっかり現代の悩みや喜びを描いているからにほかならない。呼吸が深くなる。
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ヤバイTシャツ屋さん
Tank-top Flower for Friends
その類まれなセンスに磨きがかかったヤバT渾身の1枚が到着。モチーフにしたであろうバンドが浮かぶ"バンドあるある"的なコード、曲構成、展開が散りばめられ、思わずクスっと笑ってしまうが、クオリティの高さやメロディの良さ、そして時代を反映した深い歌詞に、ただのおふざけで終わらない絶妙なバランス感覚が光る。中でも特筆したいのは、正体を隠し別名義で配信していた「dabscription」。流行りのメロウ・チューンに乗せてこっそり毒を吐きながらも、後半にはロック・バンドの悲痛な叫びと覚悟が。BGMとして消費されがちなチル系プレイリストに紛れ込みリスナーの度肝を抜いてほしい名曲だ。パンクからシティ・ポップ、教育番組風のピアノ曲、初挑戦の合唱曲、さらには岡崎体育とのコラボ曲まで、とにかくバラエティ豊かな力作揃い。
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ヤバイTシャツ屋さん
ひまわりコンテスト
ヤバT初の夏ソング「ちらばれ!サマーピーポー」をリード曲とした本作。どこか耳なじみのあるこのタイトルからしてヤバT節が炸裂しているが、やはり彼らに"アンチ陽キャ"ソングを作らせたら天下一品だ。夏に浮かれる人々を斜に見る歌詞もその語感の良さでポップに昇華され、シンセサイザーやブラスを取り入れたアレンジにより、歌詞とは裏腹な夏全開のアッパー・チューンに仕上がっているのが面白い。加えて、"たしかに"と唸ってしまうバンドマンあるあるから派生した「まじで2分で作った曲」や、"コンプラギリギリ"な遊びを題材にした「コンプライアンス」、まさにタイトル通りの誰もが歌える1曲「もももで歌うよどこまでも」、そして岡崎体育によるリード曲のリミックスを収録。朋友同士のおふざけ感満載なコラボにも注目だ。
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ヤバイTシャツ屋さん
こうえんデビュー
新曲を耳にすると、"こんな曲名を付けるのはあとにも先にもヤバTしかいない"と思うのはもはや毎度のことだが、"くそ現代っ子ごみかす20代"はさすがに衝撃を受けた。自身だけでなくファンのメイン層も含む20代というあまりにも大きな対象を、"ごみかす"と称するのはいかがなものかとも思うが、いざ聴いてみるとそんな自虐も一転、今の時代にマッチした自己肯定ソングとなっているんだから、本当に彼らには何度も驚かされる。また、初のドラマ主題歌でもある「Bluetooth Love」は得意のメロコア・サウンドで魅せつつも、主人公の名前をちゃっかり歌詞に交える遊び心も忘れていない。加えて2021年はうるう年ではないのに、いや、だからこそ「2月29日」を歌うのもヤバTらしい。
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ヤバイTシャツ屋さん
You need the Tank-top
挫折しても諦めない心が大事だと歌うモチーフに珪藻土マットを用いるソングライターは、世界中探してもきっとこやまたくや(Gt/Vo)しかいない。"さすがにふざけすぎでは!?"と思う歌詞が頻発しながらも、良質なメロディや堂々たるメロコアの音圧、時に哀愁を孕んだラップも飛び出すハイブリッド&ハイクオリティな楽曲の前では、もう大人しく笑わされるのがいい。それでいて、"とにかくみんな生きてほしい"という想いをストレートに歌った「寿命で死ぬまで」では、バンドの芯にある良識もきちんと窺え、彼らがお茶の間をも席巻している理由がわかる。手を替え品を替え、絶えずリスナーの予想の斜め上を急角度で突き抜け、否応なしに楽しませる。唯一無二のヤバT節が隅から隅まで行きわたった13曲。
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ヤバイTシャツ屋さん
うなぎのぼり
全5曲を収録した盛りだくさんの9thシングル。ヘヴィに幕を開けつつポップなサビへとなだれ込む「泡 Our Music」は、シャンプーのCMソング。華麗にタイアップを乗りこなすスキルが大いに発揮されている。もちろん、聴きどころは1曲目だけではない。2曲目で曲名に取り上げられているのは"創英角ポップ体"......なんのこっちゃ? と思う人も多いかもしれないが、フォントの名前である。聴けば聴くほど、このフォントの絶妙な親しみやすさとおしゃれさを表現した楽曲だと思わずにはいられない......が、なぜこのことを歌ったのか? まぁ、そのナンセンス感も含めてヤバTらしさ満点だ。そして、関西のローカル番組"ちちんぷいぷい"の20周年記念ソング「はたちのうた」も勢いが漲っている。
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ヤバイTシャツ屋さん
げんきいっぱい
NHKとのコラボレーションなどで世間を驚かせ、完全にお茶の間の人気者となりつつあるヤバイTシャツ屋さんの、自主制作盤から数え通算6枚目のシングル。今回もジャケットには3人のタンクトップくんが登場し、新曲3曲と岡崎体育によるTrack.1のリミックスが収録されている。Track.1はタイトルのとおり正統派のパンク・サウンド。キュート且つ毒もある歌詞は彼らのメンタリティやキャラクターをクリーンに映し出している。Track.2は琴線に触れるメロディとエモーショナルなヴォーカル、ラストのシンガロング・パートにフロアの拳上げも必至で、Track.3は語感もノリも抜群。3人が鳴らす楽器の音で構成されたシンプルなバンド・サウンドでここまでカラフルに見せられるバンド、実はなかなか稀有なのでは。
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ヤバイTシャツ屋さん
Galaxy of the Tank-top
2ndフル・アルバムで手堅く1stフル・アルバムを超え、且つ伸びしろを残すという知能犯っぷり。それも全部"楽しい"を突き詰めたゆえの行動なのだろう。ミクスチャー・ロック、ホーンを用いたダンス・ナンバー、アコースティック、豪華ストリングスなど、アレンジのバリエーションやギミックを広げていることはもちろん、ストレートすぎるほどのメロコア・サウンドはさらにエモーショナルでフレッシュに。音域が違う3人による楽曲に合ったカラフルなヴォーカル・ワーク、琴線に触れる人懐こいメロディも歌心を際立たせる。悔しい気持ちを抱えながらも、自分たちが面白いと思うことをひたすら追い掛けてきたサークル・バンドの青春感――彼らの音楽が全世代に響いている理由の根源はその青さかもしれない。
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ヤバイTシャツ屋さん
パイナップルせんぱい
ヤバTの新作リリースのたびに"笑ってたまるか"と思うが、今回も一本取られてしまった。飲み会並のコール、驚きを通り越して呆気に取られるくらいのサビの出だしとそのオチ、突然の転調など仕掛けが多数の「ハッピーウェディング前ソング」は彼ら史上最も享楽的。まさしくハッピーに振り切れたライヴ向きの曲である。ロッテ"キシリトールガム"20周年プロジェクト・ソングの「とりあえず噛む」はポジティヴなメッセージが綴られた正統派メロコア・ナンバー。「眠いオブザイヤー受賞」はラテン・テイストのトラック×ラップありという90年代顔負けのミクスチャーなアプローチで、彼らの持ち味のひとつである日本人の琴線に触れるセンチメンタルなメロディが炸裂。サウンドに合ったムードのあるヴォーカルも光る。
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ヤバイTシャツ屋さん
どうぶつえんツアー
メジャー1stシングルであり、自主制作盤も含めると4thシングルとなる今作。ジャケットや収録内容など、これまでのシングルのコンセプトを受け継ぎながら、新しい挑戦も多々見える。特に「ヤバみ」は、ギミックが増えてパワーアップした演奏もさることながら、読み解き方次第で風刺的でシニカルな歌詞としても、時代性を肯定する歌詞としても受け取れる作詞センスには舌を巻いた。メッセージ性だけでなく語感重視のセクションを織り交ぜたり、それをアッパーで中毒性のある楽曲に乗せるところもソングライター こやまたくや(Gt/Vo)の遊び心だろうか。暗号のように交錯する言葉と音のロジックが痛快だ。ザ・ヤバT的なメロコア・ナンバー「寝んでもいける」、ミディアム・テンポに挑戦した「肩 have a good day」とカップリングも充実。
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ヤバイTシャツ屋さん
We love Tank-top
2015年から快進撃を続ける3人組が、初の全国流通盤となるメジャー・デビュー・アルバムをリリース。大阪の大学生のあるあるネタなどを綴った歌詞が注目されがちな彼らだが、魅力はなんと言っても楽曲の良さ。例えば「無線LANばり便利」は、90年代的な直球メロコアやミクスチャー・センスを継承しながらも、そこに2010年代の若者ならではの価値観の歌詞、琴線に触れるメロディ、男女ツイン・ヴォーカルを乗せている。過去の焼き増しにならない革新性が彼らの強力なオリジナリティだ。新録された既発曲はアレンジもマイナー・チェンジし音も厚く進化。ミュージカル風の楽曲、おしゃれギター・ロック×キーボード、ラウド・ナンバーなど、3ピースの常識をぶっ壊す痛快なサウンド・アプローチはエネルギーに満ちている。
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山内彰馬
muse
2018年8月に解散したShout it Outの山内彰馬より1stミニ・アルバムが到着。新たなバンド"mother"での活動も発表した彼だが、ソロ作としての初音源となる今作は、弾き語りを軸に自らの想いを力の限り広く届けようとした1枚だ。プロテスト・ソング的な「1969」をはじめとしたフォーク調の曲の数々や、ピアノをバックに、女性目線で描いた詞を優しい歌い口で歌う「故郷」は、前バンドの頃とはいささか違った印象を与えつつも、"友"という言葉が繰り返し歌われる部分には、彼らしさを感じた。そして、ラスト・ソングは明るく軽やかなバンド・サウンドで締めくくる。彼がこれまで向き合ってきた"大人になること"に足を踏み入れかけている、今の山内彰馬から見える世界が窺える作品。
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山本彩
ドラマチックに乾杯
作品をリリースするたびに新たな自分を開拓し続ける山本彩。ドラマ"その女、ジルバ"主題歌となった5thシングルの表題曲「ドラマチックに乾杯」は、初めて全面的にホーン・セクションを迎えたラテン・テイストのロック・ナンバー。女性らしい言葉遣いで綴られる歌詞はドラマのテーマに寄り添い、心のままに人生を謳歌したいとタフなメッセージを放つ。カップリングには、おもちゃ目線で"おもちゃ離れ"する持ち主との別れを描いた、切ないポップ・ソング「ぼくはおもちゃ」を収録。SHE'Sの井上竜馬(Key/Vo)がプロデュース、バンドが演奏を担当したエキゾチックな「oasis」では、荒涼した心の渇望を切々と歌い上げる。幸福なタイアップ&コラボを味方につけ、山本彩が見せる三者三様の顔に翻弄される1枚。
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山本彩
ゼロ ユニバース
ドラマ"あのコの夢を見たんです。"EDテーマの表題曲は、理想が現実になったらという想いと、その気持ちを実現していく意志を歌った浮遊感のあるナンバー。芯の強さを感じさせながらも、包み込むような歌声が沁みた。c/wの「愛なんていらない」では、"愛なんていらない 心が削れるだけだ/今更誰かがいなくても生きていける"と自立した女性の気持ちを歌い、大人になった山本彩の等身大が表現されている。通常盤のみ収録の「against」は、"ニッセイ青春エールプロジェクト"のテーマ・ソング。この企画に寄せられたキーワードやエピソードをもとに山本彩が書き下ろし、エネルギッシュな歌唱とロック・サウンドでコロナ禍を乗り越えていこうと背中を押す1曲に。現在地点の山本彩がギュッと詰まったシングルだ。
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山本彩
追憶の光
2019年3枚目のシングル。小林武史をプロデューサーに迎えた表題曲は、失恋の悲しみに暮れる女性の心情を細やかに伝える冬のバラード。ストリングスと優しいタッチのバンド・サウンド、切ない心情を切々と歌い上げる憂いのある歌声が、募る想いをクリアに表現している。c/wにはMori Zentaroプロデュースのもと"ありのまま"や"素直でいる"というテーマを綴ったクールでラフなムードのあるミッド・ナンバー「stay free」、通常盤のみライヴ・バンド・メンバーでレコーディングした爽快なポップ・ロック・ナンバー「Weeeekend☆」を収録。サウンドのカラーに合う楽曲を作るソングライティング力、無理なく歌いこなすヴォーカリゼーションなど、アーティスト 山本彩のバランス感覚を再確認する。
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山本彩
α
グループ卒業後初のアルバムは全曲山本の作詞作曲。しかも9人のアレンジャー&プロデューサーを迎えるというSSWならではの挑戦を見せる。そもそも同じ時期のアーティストが、根岸孝旨プロデュースでドラムにCrossfaithのTatsuyaを迎えた、ヘヴィ&ラウドな「棘」から、LUCKY TAPESのKai Takahashiが手掛けた、チルなオルタナティヴ・ソウル「feel the night」まで、幅広い楽曲を違和感なくまとめられることが驚異的。加えてアレンジも演奏もACIDMANによる「TRUE BLUE」や、素朴なフォーク・テイストの「君とフィルムカメラ」など、同じ顔の山本彩はいない。それでも作品が成立しているのは揺るぎない音楽への誠意があるからではないだろうか。
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山本彩
棘
表題曲は彼女の核にある強い意志と本音が表れた、焼きつけるような熱さを孕むミドル・テンポのロック・ナンバー。プロデューサーの根岸孝旨を筆頭にCrossfaithのTatsuya(Dr)や本間昭光など、ロック・シーンとポップ・シーンの豪華メンバーによる音像も、彼女の硬派な一面を鮮やかに描く。Track.2はLUCKY TAPESのKai Takahashiをフィーチャリングし、余韻のあるヴォーカルとチル・アウトできるトラックでアーバンな仕上がり。通常盤のTrack.3はヴァイオリンの優雅さとバンドのグルーヴによる、可憐ながら堂々としたサウンドが、ダイナミック且つ爽快だ。人間性や美学だけでなく、新しい挑戦でソングライターとしての可能性も感じさせた充実作。
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山本彩
イチリンソウ
2016年にソロ・デビューを果たし2枚のフル・アルバムをリリースした山本彩が、NMB48卒業後初作品となる1stシングルをリリース。収録曲すべてを山本が作詞作曲している。表題曲は新しいスタートを踏み出す人間の切なさ、不安、力強さ、希望といった胸に渦巻くすべての感情を落とし込んだミドル・ナンバー。「君とフィルムカメラ」では20代女子の健気でセンチメンタルな恋心を軽やかに歌い上げ、ツアー中に制作したという「Are you ready?」(※通常盤のみ収録)はサウンドも歌詞もエネルギッシュなロック・チューン。どの楽曲も等身大の彼女の素直なスタンスや心情が反映されたもので、3曲ながらバラエティがあり、同時に山本彩という人間性を感じ取れる名刺代わりと言える作品となった。
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ヤミアガリ
眼ニテ云フ
"ヤミアガリ"というバンド名からして掴みどころがない(おまけにバンド名に特に意味はないらしい)。ヴォーカル、打ち込み、キーボード、ベースを基調とした島根出身の男女2人組による2ndミニ・アルバム。サウンドはエレクトロに分類されることが多いが、エレポップ以外にポスト・ロック的アプローチのものや、ベースとキーボードで作った楽曲、アコギを入れた楽曲など、打ち込みを用いず制作されたものもある。"ふたり"という最少のバンド編成を活かした自由度の高いサウンドだ。夢の中のような浮遊感のある心地よい音と、淡々としつつ強い意志が通うヴォーカルや深い情念が込められた歌詞が作るコントラストに滲むそこはかとない狂気。タイトル通り、どの曲にも人間の視線や眼に宿る心の内面を強く感じる。
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ヤング
サマータウンとアドベンチャー
ほぼ日刊イトイ新聞、東急ハンズのウェブCMへの楽曲提供や、FUJI ROCK FESTIVALをはじめとするフェス出演でコアな音楽ファンの間で知名度を上げている、伊豆の山奥にある"かわいい女の子スタジオ"を拠点に活動するバンド、ヤングのTOWER RECORDS限定両A面シングル。両A面とはいえ3曲目まであり、cero、片想い、ザ・なつやすみバンドをサポートする今や東京の音楽シーンには欠かせないMC.sirafuが参加したインスト曲を収録。伊豆の山奥でRECされたという先入観のせいかもしれないが、楽曲は子どもたちがいつまでも自然の中で遊んでいるような夏休みムード満点。そこに感じるのは夏が終わる切なさではなく、永遠に胸に宿した瑞々しさと力強さだ。
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ヤングスキニー
BOY & GIRLS
前作から1年半ぶり、メジャー2作目となるフル・アルバム『BOY & GIRLS』。タイアップ曲やヴァイラル・ヒットとなった話題曲「ベランダ feat. 戦慄かなの」が収められた今作は、さらなる飛躍を遂げたヤングスキニーの充実の1年半を物語る。それでいて大衆に迎合することなく、より破天荒に鳴らされた青春パンクの数々が爆発している。コンプライアンスに雁字搦めの世の中で、この振り切ったクズっぷりや赤裸々でパンチの効いた歌詞をメジャー・シーンに解き放てるのは、きっと今かやゆー(Vo/Gt)だけなのでは。また今作で唯一ゴンザレス(Gt)が作曲を手掛けた「ハナイチモンメ」では、ソリッドなギター・リフが突き刺さりバンドの新たな一面を引き出している。
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ヤングスキニー
不器用な私だから
全国ツアーを開催すれば軒並みソールド・アウト、今勢いに乗るヤングスキニーのメジャー2nd EP。忘れられない匂いを軸に未練を歌う「雪月花」や、失恋のその先を描くポジティヴ・ソング「恋は盲目」など、4人だけで鳴らす原点回帰的なサウンドを中心に収録し、誰がなんと言おうと"ロックだ うるせえ"と叫ぶ「精神ロック」なんかは最高にロックだが、そんななかで戦慄かなのを迎えたデュエット曲「ベランダ feat.戦慄かなの」が異彩を放つ。女性目線が多いヤングスキニーの歌詞はよりリアリティを増し、さらにラップも取り入れ新境地のチルなメロウ・チューンに仕上がっている。ラストには、キーを上げ爽やかなポップ・ロックに生まれ変わった「別れ話」の再録版を収録。ロック・バンドとしてのプライドをもってJ-POPシーンに挑む彼らのスタンスが窺える。
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ヤングスキニー
どんなことにでも幸せを感じることができたなら
ヤングスキニーがメジャー1st EP『どんなことにでも幸せを感じることができたなら』をリリースする。本EPには、ABEMAオリジナル恋愛番組"恋する♥週末ホームステイ 2023夏"OPテーマのサマー・チューン「君の街まで」や、江崎グリコ"セブンティーンアイス"キャンペーン・ソング「愛すべき日々よ」などタイアップ・ソングのほか、ピアノを軸にしたアンサンブルのクリアさに惹き込まれる「君じゃなくても別によかったのかもしれない」、"ヤングスキニー史上最もアッパーなロック・チューン"という触れ込みも納得の「愛の乾燥機」、そしてインディーズ時代の再録楽曲「8月の夜 (2023 ver.)」という全5曲を収録。初回限定盤には約120分のライヴDVDも付属とのことで、こちらも要チェック。
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ヤングスキニー
歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた
TikTok発バイラル・ヒット曲「本当はね、」も収録された、"嘘だらけで、矛盾だらけな日常を歌う"ヤングスキニーの名刺代わりとも言えるアルバムが完成。"ヒモ"なりの愛を歌う「ヒモと愛」や"騙されたあなたが悪いんだよ"と歌う「ゴミ人間、俺」など、いわゆる"クズっぽさ"を前面に出す歌詞や歌声は、かやゆー(Vo/Gt)が憧れているというクリープハイプの影響が大きいだろう。その中でも、"嘘だらけ"な日常を"ありのまま"に綴るまっすぐさは、バンドのひとつの個性になっていきそうだ。さらにメジャー・デビュー・シングルとなった「らしく」では、"いつか僕は誰もが/羨むバンドになってやる"というストレートな決意の言葉も。濁りのないメッセージが詰まった純度の高さ、若さが眩しい、新時代のギター・ロック・バンドに注目。
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ヤーチャイカ
さいあく
KOGA RECORDSからの2ndミニ・アルバム『ふぁるすふろむあばゔ』(2013年)以来の新作は、自身のレーベル Harbor Lightからリリース。最新作であり、活動休止中の4人の新たな試みも形にした野心たっぷりのアルバムだ。それでいてタイトルは"さいあく"という、何回転かの捻りがあるのがヤーチャイカらしさでもある。迷宮的な、一筋縄ではいかないアンサンブルや、なんだか懐かしい旋律だなと物思いにふけっていると、いつの間にか途方もない場所へと辿り着いてしまう奇想天外なサウンドなど、4人の濃さが存分に味わえる。しかしどれも、愉快犯的にキャッチーだ。ポップな口当たりで、容赦なくサイケな音を原液で注がれるような、厄介なアルバムである。
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ヤーチャイカ
ふぁるすふろむあばゔ
2008年結成、都内を中心に活動中の4人組バンド、ヤーチャイカの約1年振りの新作。タイトルの"ふぁるすふろむあばゔ"には"過ちや馬鹿馬鹿しさが空から降ってくる"という意味が込められており、その要素を音と言葉で様々な部分に散りばめ、フロントマンのニシハラシュンペイはそれを"暗号"だと言う。謎解きとはスリリングでありながらもエンタテインメント性があるもの。まさしく彼らの音楽もそうで、歌詞を読めば読むほど、音を聴けば聴くほど新たな発見があるためかなり中毒性が高い。ノスタルジックな雰囲気を醸す緻密かつ爆発的なアンサンブル、あどけなさのあるヴォーカル、絵のように鮮やかで文学的な歌詞、鳴り響く音全てが一歩も引かない。突き付けるようなエネルギーに翻弄される。
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ユアネス
6 case
音や言葉に何層も仕掛けや遊び心を編み込んだ楽曲は何度聴いても新しい発見がある。そんなユアネスが完成させた初のフル・アルバムは、過去に発表してきた作品のタイトルの頭文字を繋ぎ合わせて"6 case"と名付けた、文字通り現時点での集大成と呼べる1枚だろう。疾走感のあるロック・ナンバー「アミュレット」、繊細な音像が浮遊感を生む「日照雨」、黒川侑司(Vo/Gt)の息遣いすら聞こえるピアノ1台での歌い出しに、衝動的なバンド・サウンドが加わる「Layer」、ドラマチックな別れのバラード「「私の最後の日」」。既出曲のアレンジVer.に新曲を織り交ぜたアルバムが浮き彫りにするもの、そのひとつの解釈を書くことを許されるなら、昨日から明日へ繋いでゆく"命の意味"のようなものだろうか。
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ユアネス
BE ALL LIE
1年ぶりのCDリリースとなる3rd EPは、これまで同様、女性のセリフから始まる全5曲を収録。お互いに想い合っているのに、なぜ別れなければいけないのかというある意味、普遍的な問いに対する逡巡をメランコリックに歌いながら、ピアノ・バラードとシーケンスも使ったテクニカルなロック・ナンバーを並べ、バンドのポテンシャルをアピール。そこから浮かび上がるのは、TVアニメの主題歌や他アーティストへの楽曲提供を経験して、自分たちの世界から一歩外に踏み出したバンドのスケールアップだ。それが最も感じられるのが、太陽に向かうという意味を持つTrack.5「ヘリオトロープ」。大人っぽさという新たな魅力がユアネスに加わった。オルタナとフュージョン両方の要素を持つギターの音色が不思議な響きを放つ。
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ユアネス
ES
"死生観"、"人は花のよう"というコンセプトを持つ1年ぶり2枚目のEP。前2作と同じように次の作品と2部作になるという。加えてセリフだけのトラックやインタールード的なインストも含む物語性を重視した構成や、ピアノを使うなど、世界観を作るため基本編成に縛られないアレンジからは、自分たちの表現に対するこだわりが感じられる。そのこだわりは信念と言い換えてもいい。いい曲を作ることはもちろんだが、それだけでは満足できないのだろう。「CAPS LOCK」ではファンク・サウンドも鳴るが、バラードこそが他のバンドにはない自分たちの武器と考えている節もある。ライヴ・シーンで注目を集める一方で、作品をリリースするたびごとにユアネスは、着々と唯一無二のスタイルを確かなものにしている。
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ユアネス
Shift
今年3月、全8曲を収録した1stミニ・アルバム『Ctrl+Z』で全国デビューを果たしたことをきっかけに、注目度がぐんと上がった福岡で結成された4ピース・バンドが、初めてのEPをリリース。前作と2枚でひとつになるという位置づけの本EPには、Track.2「凩」(読み:こがらし)のイントロとも言える、男女のセリフからなる「変化に気づかない」を含む全6曲を収録した。ファンの間で音源化が待ち望まれていた「凩」をはじめ、エモーショナル且つドラマチックなギター・ロックという、バンド本来の魅力を改めてアピールする一方で、バラードの「夜中に」とじっくりと聴かせる「日々、月を見る」の2曲では、ピアノの音色を使って新たなアンサンブルにもアプローチ。冒頭で再会した男女の交差する想いを情感豊かに描き出している。
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ユアネス
Ctrl+Z
福岡を拠点にしながら、早耳リスナーをはじめ、ライヴハウス・シーンですでに注目を集め始めている4人組がユアネスだ。期待の高さを物語るように、2018年2月に彼らが東京で初開催した自主企画はソールド・アウト。満を持してリリースする初の全国流通盤となるこのミニ・アルバムをきっかけに、ポスト・ロック的なギター・サウンドに乗せて、ヒリヒリとした感情とともに青春の鬱屈を歌う彼らの存在は、さらに多くの人に知られることになるだろう。"雨の通り道"と題した1曲目がSEと女性のナレーションだけというところからは、曲の寄せ集めではなく、1個の作品、さらに言えば、ひとつの世界観を作り上げようという意欲が感じられる。激情エモから弾き語り、アーバンなサウンドまで、曲調は思いの外幅広い。
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ゆいにしお
She is Feelin' Good
音楽レーベル主催のオーディションで最終審査を通過し、注目を集めるSSW ゆいにしおの2ndミニ・アルバム。天才的としか言いようのないワード・センスとシティ・ポップがはじけるナンバー「スカイツリー」、ボサノヴァ調のリズムでチルアウトする「フレンド」など全7曲を収録。それぞれに気持ちのいいビートを持った楽曲へ、澄み渡る心地のいい歌声が重なれば、まさに"Feelin' Good"......なのだが、リリックに耳を傾けてみると順風満帆なストーリーというわけではなさそうだ。とはいえ、そんな恋模様を嘆くわけでもなく、かといって強がるわけでもなく、絶妙な温度感と肌触りの生ぬるい日常が流れていく。痛いところに引っ掛かる、身に覚えのある一文が、誰にとってもきっとあるだろう。
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結城綾香
instant hope
進学を機に福岡から上京後、ライヴハウスを中心に修行を積むつもりで歌い続けてきたシンガー・ソングライター 結城綾香による初の全国流通盤は、彼女の代表曲と言ってもいいTrack.1「ビニール傘」ほか計3曲を収録。サイケデリック、あるいはアシッド・フォーキーな魅力もある「ビニール傘」、グルーヴィなリズムに歯切れのいいギターのカッティングが絡むTrack.2「狛江通り」はシンガー・ソングライターという言葉から多くの人が想像するステレオタイプに収まりきらない個性もアピール。切実な想いを歌う一方では、言葉遊びやリズミカルな語感を楽しんでいるようなところも極めてユニーク。弾き語りのTrack.3「yes or no」は彼女の真骨頂。倍音を効かせたアコギの響きが耳に残る。
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夕暮レトロニカ
夜が明ける
過去を思い返したとき“あの頃はどうしようもないことしてたなぁ”と思うことがある。でもそういう思い出が、自分にとっての“とっておきの青春”だったりする。夕暮レトロニカの2年半振りの新作は“さえない気持ち”に焦点を定めたとのことで、恥ずかしくなるくらい赤裸々で生々しい青春模様が鮮やかに弾ける作品だ。夜中に芽生えがちな悶々とした気持ち、行き場のない思いが詰め込まれた歌と音色。ストレートなギター・ロックと明瞭な言葉が、あの時抱いた感情をリアルに蘇らせる。サンバ的なリズムを用いたTrack.1、スパニッシュ・テイストなサウンドと歌詞が痛快なTrack.5、ホーン・セクションが心地よいTrack.6など、ギミックも満載。再スタートに相応しい迷いの一切ない1枚だ。
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- 2025.04.03
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