DISC REVIEW
-
-
私立恵比寿中学
トーキョーズ・ウェイ!
TVアニメ"マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編"のEDテーマに起用された表題曲「トーキョーズ・ウェイ!」は、新宿、原宿、渋谷、グループのお膝元である恵比寿など、東京の地名が散りばめられた歌詞がスタイリッシュなサウンドに良くマッチした楽曲だ。あらゆる人種、性別、年齢の人々がカオスに行き交う東京で、自分だけの道をマイペースに探していこうと歌う少女たちの姿は、明確な応援歌ではなくとも背中を押される感覚がある。カップリングは、フランス出身のプロデューサー/DJとして活躍するMoe Shopによる表題曲のリミックス・バージョン。クラブ・シーンに合う形で楽曲の新たな魅力が引き出された。オリジナルでもリミックスでも合いの手で叫ぶ心の"ウェイ!"の声が止まらない。ウェイ!
-
-
THE VACCINES
Pick-Up Full Of Pink Carnations
アルバム名は間違って記憶していたDon McLeanの「American Pie」の歌詞に由来するそうだが、喪失を歌った名曲をタイトルに用いたことは本作にとって最適だったと言える。創設メンバー Freddie Cowan(Gt)の脱退を経たTHE VACCINES通算6作目のアルバムは、ノスタルジックなギター・サウンドと切ないメロディで夢の終焉や失恋などの喪失感を描きながら、それらを乗り越え日々を生きていくための前向きさにも満ちた楽曲が並んでいる。キャッチーを発揮したTrack.4、甘酸っぱいメロディで失恋を歌うTrack.6、キーボードが哀愁を誘うTrack.9など、珠玉のポップ・ソングが満載で、これから訪れる出会いと別れの季節にも寄り添ってくれることだろう。
-
-
SANDAL TELEPHONE
SHUTDOWN→REBOOT
フル・アルバムから約1年4ヶ月で到着の2ndミニ・アルバム。キレ味の鋭いエレクトロ・ナンバー「SHUTDOWN→REBOOT」に始まり、ダークな空気を纏いながら疾走していく「Allegro」、デジタル・ファンクな「悲喜劇的アイロニー」といった、よりクールで、よりスタイリッシュなサウンドを提示しつつ、ポップに弾けるドラムンベースの「UnLucky」など、ライヴを熱く盛り上げる楽曲群も収録。中でも「Sparkle」は、彼女たちのグループ・コンセプトである"音楽で世界を笑わせたい、泣かせたい、踊らせたい"に相応しい、ハッピーながらもエモーショナルな空気が涙腺を刺激する仕上がり。アンニュイな歌声とキュートさもある電気グルーヴの「Shangri-La」カバーも収められている。
-
-
そこに鳴る
相聞詩
『啓蒙して、尋常に』以来1年5ヶ月ぶりのリリースとなるフィジカルは、表題曲に加え、同曲の"TV Size"、"instrumental"、さらに新曲「綻んで爆ぜれば」の計4曲を収録。TVアニメ"魔女と野獣"のオープニング・テーマとして書き下ろした表題曲は、アクロバティックな超絶テクニックは控えめながら、ピアノとストリングスを使ったゴシック・ロマン的なアレンジが聴きどころ。それもまた、そこに鳴るの持ち味だろう。一方、「綻んで爆ぜれば」はそこに鳴るが本来持つロック・バンドとしての魅力をストレート且つ存分にアピール。その意味では、彼らが持つ振り幅を楽しめる1枚と言えそうだ。フル・バージョンとのアレンジの違いが作り手のこだわりを窺わせるという意味で、"TV Size"も聴き逃せない。
-
-
BOYGENIUS
The Record
グラミー賞3部門を受賞したBOYGENIUSのデビュー・アルバム。それぞれソロでも活躍するJulien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Dacusという才能豊かな女性アーティストが集結し、見事な化学反応を起こした今作は、デビュー・アルバムながらある種の落ち着きや完成度を感じさせる、しなやかで強固な意志の集合体だ。親しみやすいソフトなインディ・ロックから、90年代初期エモのような内に秘めた激しさを感じる楽曲まで、多彩なアプローチでそれぞれの個性的な世界観を生かしつつ、楽曲ごとに浮いた感じもしないという絶妙な仕上がりを見せてくれている。メッセージ性の強いファッションを披露したかと思えば、少女のような素朴さも見せる不思議なこの3人組からまだしばらくは目が離せない。
-
-
DEAD POET SOCIETY
Fission
デビュー・アルバム『-!-』(2021年)が高く評価されたオルタナティヴ・ロック・バンドの2ndアルバム。名門バークリー音楽大学在学中に結成し、今はロサンゼルスを拠点に活躍している彼らは、"死せる詩人の会"というバンド名がしっくりくる、詩的でインテリジェントな魅力を持ったバンドだ。激しいサウンドを鳴らしながらも緻密で芸術性の高い音作りを感じる曲の数々。荒々しいギターと、高音のファルセットも用いた繊細なヴォーカルの対比も心地よい。本作はインダストリアル・ロックやガレージ・ロック・テイストのダークな響きを持った楽曲もあれば、COLDPLAYのようなスタジアム・ロックの爽やかなスケール感を持った楽曲もあり、才能豊かなバンドの有り余る表現欲を浴びるように楽しめるアルバム。
-
-
Lym
torch
収録曲に共通するテーマは"夜"。冒頭のアルペジオが冬の空気を連れてくる「シリウス」然り、"音で情景を描く"ということを丁寧に行っているバンドで、その情景に自分の心情を重ねながらの歌詞表現も印象的。R&B/ヒップホップ的なフィールの「ペトリコール」からは新たなトライに前向きな姿勢が、歌詞の表記にも工夫がある「period。」からは細部まで表現を怠らない姿勢が読み取れた。ロマンチックな歌詞表現と"君"の主人公になれない現実の対比が切ない男性目線の曲「選ばれない恋」のあとに、"焦がれたヒロインにはなれないこと分かってるよ"と歌う女性目線の曲「Pupa」が来る流れも秀逸。ラストの「灯し、君へ」には、聴き手に対するバンドの想いが託されている。
-
-
超☆社会的サンダル
漂☆流
天才ソングライター オニザワマシロ(Gt/Vo)の独創的な世界観に、身長180センチ、平均体重100キロの巨漢メンバーの強靭なサウンド。SNS全盛のZ世代の音楽シーンが生み出した超☆新星、超☆社会的サンダルの1stミニ・アルバムには、SNSで話題を集めた「可愛いユナちゃん」、先行配信シングルとしてリリースされた「魚を追いかけて」を含む全7曲が収録。小学生みたいなピュアさを持ち合わせたオニザワのワード・センスが光る、正直すぎる歌詞と純度の高い歌声、センス抜群のメロディ。めちゃくちゃキャッチーなのに、滲み出る恐怖と狂気を感じた「可愛いユナちゃん」を聴いてぶっ飛んだが、それに限らず、本作収録のひと筋縄ではいかない楽曲はどれも最高! ライヴハウスを騒がす、令和のサブカル・スターの爆誕です!!
-
-
ネクライトーキー
TORCH
前作『FREAK』から約2年9ヶ月ぶり、フル・アルバムとしては通算4作目。古くは(!?)2021年リリースの「ふざけてないぜ」から、EP『踊れ!ランバダ』収録の「ランバダ・ワンダラン」、「あべこべ」やNetflixシリーズ"スコット・ピルグリム テイクス・オフ"OPテーマ「bloom」も収録しているが、これらの楽曲が世に出た際のフックの強さすら凌駕するような個性のあるアルバム曲が居並んでいるのが単純にすごい。エフェクティヴなギター・サウンドがそのまま擬音化したようなリード曲「ちょうぐにゃぐにゃ」やゲーム音楽をバンドで再構築したような「浪漫てっくもんすたあ」など怒濤の構成を持つ曲、普遍性や骨太な良さが印象的な「あべこべ」や、もっさ(Vo/Gt)作の「だから、」などバンドの前向きな転換点となる作品と言えそう。
-
-
KULA SHAKER
Natural Magick
今作は、再結成時に参加できなかったオリジナル・メンバー Jay Darlington(Org/Key)の、実に25年ぶりの復帰作ということで話題となっているが、注目したいのはなんと言ってもそのエネルギッシュなサウンドだ。ライヴ・パフォーマンスを意識したキャッチーな踊れるサウンド、ボリウッドのノリとサイケ・ロックのグルーヴ感、アーティスティックでユーモアのあるスパイス的要素、シンプルにやりたいことが凝縮されたコンパクトな仕上がり、そのすべてが絶妙に調和している。青春時代を一緒に過ごして、人生と音楽経験を共に積み上げてきたメンバーたちが、その再会を喜び合うように共鳴し作り上げられたサウンド。感動すら覚える、この祝福されたサウンドはぜひライヴでも体感すべきだろう。
-
-
キタニタツヤ
ROUNDABOUT
2023年を彩ったヒット曲「青のすみか」で"NHK紅白歌合戦"への出場も果たしたキタニタツヤ。タイアップ曲満載の前作『BIPOLAR』から強めた大衆へのアプローチが見事に結実した今、約1年半ぶりとなる待望のアルバムをリリースした。絶望に寄り添いながらも生きていてほしいと願いリスナーと固い約束を交わす「私が明日死ぬなら」を筆頭に、死を意識することで生への希望を見いだしていくような楽曲たちは、注目を集める今だからこそこれまで以上の訴求力をもってより多くの人々を救うことだろう。また「Moonthief」といった挑戦的な楽曲からは、まだまだ進化を止めない彼の計り知れない可能性が感じられる。そしてヒリつくエンディング・ナンバー「大人になっても」では本音を曝け出し、終幕を飾る強烈な捨て台詞がぶっ刺さる。
-
-
ヒグチアイ
未成線上
「悪魔の子」がSpotifyで1億再生を突破し、この曲の人間の深淵を覗き込むような表現力と映画的なトラックが彼女のイメージとして定着しつつあるが、ヒグチアイのベーシックは誤解を恐れず言えばラヴ・ソングの様々な形なのだと思う。アルバムとしては5作目を数える本作でも数多い映画やドラマへの書き下ろし曲が収録されているが、アルバムとして曲が並んだ際の「このホシよ」での恋の狂気と「恋の色」での叶わない恋の経験でむしろ自分を見つけるところや、サスペンスフルな「誰でもない街」と普遍性をアンサンブルでも紡ぐ「この退屈な日々を」といった対照性。だが、どちらも同じ人間の心から生まれた気持ちなのだ。特徴的な声質だが、自分が見えているという意味で誠実な歌声が、共感の解像度を上げる。
-
-
Myuk
Arcana
ブレス多めで甘さと芯の強さを併せ持つ声が魅力のMyukの名刺代わりとなる1stアルバム。ネット・ミュージックのクリエイションとの親和性を証明したEve作の「魔法」、ポップなソウルやシティ・ポップのニュアンスで冴えを見せる作曲家 大久保友裕によるスウィートな「Snow」、tofubeats作のピアノ・リフが印象的なテクノ・ポップ「Gift」など、タイトル"Arcana"の"Arca"=容れ物/方舟が象徴するように、どんなジャンルでも消化する彼女の器の大きさを実感。中でも若手クリエーター Guianoによる「Arcana」のソリッドなファンタジーや漢字多めの歌詞の押韻、同じく彼作の「愛の唄」の鋭いトラック、ササノマリイ(ねこぼーろ)による「encore bremen」のエレクトロとジャズの邂逅に乗る歌唱はかなりの中毒性の高さ。
-
-
愛はズボーン
MIRACLE MILK
テーマは"ミラクル"、"マジカル"、"ケミカル"の3ワードという、愛はズボーンの4thフル・アルバム。まさに、それらの感覚が全12曲を通して散りばめられた1枚になっている。赤ちゃんの泣き声や牛の鳴き声を交えながら"また1日が始まる"と切り出す「IN OUT YOU~Good Introduction~」から、言葉遊びと音遊びが炸裂。とはいえ、ぶっ飛んでいるだけではなく、"ヒーローは遅れて現れる/それが愛はズボーン式/スーパーエンターテイメント"という歌詞の通りのストレートな勢いを感じることもできる。ラップと歌を行き来する声に秘めたグッド・メロディと極彩色の音色が描く、混沌としたポップな世界観。皮肉も熱情も真実も溶かした心地いいミルクを飲めば、明日からも踊りながら生きていける。
-
-
め組
七変化
約2年ぶりのパッケージ作品は、4枚目となるミニ・アルバム。キャッチーなワードを盛り込みながら、憤りをポジティヴに爆発させる「咲きたい」や、力強いバンド・サウンドで瑞々しさを放ちつつも、どこか寂しげな「さたやみ」、ストリングスと跳ねるビートが胸を締めつける「ストレージ」など、日常の様々な場面から生まれてきた決して明るくはない感情が綴られた楽曲たちがずらりと並んでいる。また、ダンサブルなエレクトロ・ミュージックの意匠を施しつつも、歌詞の内容はかなり重苦しい「(I am)キッチンドリンカーズハイ」のような、バンドにとってトライな部分もありつつ、それらをラスト・ナンバーの「It's a 大愛万国博覧会」できっちり回収していくようなドラマチックな流れが見事。
-
-
アンと私
FALL DOWN 2
自称"どうせ裏アカでしか呟かれないバンド"、アンと私。どこを切り取ってもインパクトのある生々しい歌詞が並び、そのキャッチーさも相まってTikTokとの相性は抜群。バンド始動から早々にバイラル・ヒットを生んだのももはや必然に思える。そんな彼らの初CD作品は、EP『FALL DOWN』に初期の名曲の再録や新曲を追加し、ここまでの活動の充実度を物語る1stフル・アルバムにしてベスト盤と言える1枚となった。その振り切った歌詞に注目が集まりがちだが、ヘヴィでソリッドな「FALL DOWN」から「Tinder」のような爽やかなロック・チューン、「クソラスト」のようなフロアを無条件に躍らせる四つ打ち曲など、2010年代邦ロックを醸すサウンドの多彩さも秀逸。SNSからライヴハウスまでを席巻していくことだろう。
-
-
群咲
お先☆真っ眩
群咲にとって初の全国流通となる2ndミニ・アルバム。グルーヴィなサウンドで身体を強く揺さぶってくる「ただ、灰に塗れる」に始まり、耳にこびりついて離れなくなる強烈なリフレインを擁した、超アッパーな「一般ピポピポ」、自身の経験をもとに怒りの感情を殴り書いた「模造生活」に近しい雰囲気がありつつも、時折飛び出す痛烈な言葉を荒々しくも艶のある声で歌うダンサブルな「他問他答」など、全6曲を収録。どの楽曲にも、日常生活で感じる息苦しさが通底しているところは、なんともこのユニットらしいところだが、柔らかな歌声とハーモニーで"はじまり"を綴ったスロウ・ナンバー「いつかさよならのためのうた」は、応援歌のようにも響く形になっていて、また新たな表情を見せる楽曲に仕上がった。
-
-
SUIREN
Reverse
TVアニメ"キングダム"第4シリーズOPテーマに「黎-ray-」を書き下ろし、脚光を浴びたSUIRENがメジャー1st EPを完成。モダン・ヘヴィ・ロックやマスロック的な構築美で聴かせつつ、このユニットの本質はSuiの歌とRenのピアノで成立するメロディと骨格の強さにあることを思い知る。ゲーム"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"メイン・テーマでもある代表曲「stella」の高音ロング・トーンで際立つSuiのジェンダーレスなヴォーカルが虚無や宇宙を感じる空間をギター、ピアノ、ストリングスの洪水のようなアンサンブルの中でも鮮明に聴こえるカタルシス。インストの「白雨」からラストの「Squalling」に接続する物語性も聴き応え十分。ひとりで物事を真剣に考えるときの脳内を映すような言葉と音像も見事だ。
-
-
DIALOGUE+
イージー?ハード?しかして進めっ!
田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が音楽プロデューサーを務める女性声優8人組のアーティスト・ユニット、DIALOGUE+の10thシングルは、アニメ"弱キャラ友崎くん 2nd STAGE"のOP&EDテーマをW収録。田淵が作詞作曲、編曲を伊藤 翼が手掛けたOPテーマ「イージー?ハード?しかして進めっ!」は、電子音を効果的に挟み込みつつ、圧倒的なポップさと瑞々しさを振り撒きながら賑やかに駆け抜けていくアップチューン。EDテーマの「誰かじゃないから」は、歌詞を大胡田なつき、作曲を成田ハネダと、パスピエのふたりが担当。ストリングスが流麗に鳴り響く、洒脱でダンサブルなポップ・ナンバーになっている。これまでも良曲を送り出し続けているグループなだけあって、音楽ファンも激しく唸らせる仕上がり。
-
-
ukka
青春小節~音楽紀行~
ukkaがメジャー1stフル・アルバム『青春小節~音楽紀行~』をリリースした。結成から約7年、2022年11月にメジャー・デビューを果たした彼女たちの待望のフル・アルバムは、"音楽紀行"をキーワードに人生(ストーリー)経験を辿るような様々なサウンド/音楽要素を取り入れた1枚に。ライヴのSEとしてもお馴染みのオーバーチュアを皮切りに、爽快なロック・ナンバー「Rising dream」、ukka流ニュートロとも言える「don't say Love」、EDMテイストに仕上げた「コズミック・フロート」、そして昨年をもって卒業したメンバー 川瀬あやめの想いが歌詞とリンクするリード曲「つなぐ」など全12曲を収録。グループとしてひとつの節目を迎えた彼女たちが見せる多彩な音楽性と表現力が凝縮されている。
-
-
MAPA
Snowbud / BIGHOUSE
MAPAの現体制ラスト・シングル。その1曲目「Snowbud」は、ポエトリーと歌唱が行き来するバラード・ナンバーだ。これまでMAPAの音楽プロデュースを務めてきた大森靖子に加えて、グループを率いる古正寺恵巳が制作に参加した歌詞と、メンバーのシリアスな歌唱、そして楽曲を支える四天王バンドが織りなすサウンドスケープは、厳しくも美しい雪景色を思わせ、聴いていて胸をギュッと締めつけられる。もう1曲はジェットコースター的な曲展開が楽しい「BIGHOUSE」。彼女たちのホームであるライヴハウスをテーマにしたハートフルな楽曲で、ところどころでクスッと笑える歌詞と、ハイテンションで楽しそうな4人の歌声が心を解してくれる。冬の魅力、ライヴハウスの魅力を再認識させてくれたシングルだ。
-
-
MGMT
Loss Of Life
MGMTが、約6年ぶり5枚目となる新作を発表した。原点回帰を果たした前作『Little Dark Age』は表題曲がTikTokで人気を集め、新たな層からの支持も得つつある彼らだが、本作では新たなフェーズのポップへの探求へと歩み出したようだ。前半ではOASISを彷彿させるギター・ロックのTrack.2、女性Voとのハーモニーが美しいTrack.3など、バンド・サウンドを軸に普遍的なポップネスを展開。後半ではエクスペリメンタルな側面が顔を覗かせていて、サイケの海に沈みゆくようなTrack.8、グリッチ・サウンドの中で幽玄なヴォーカルが漂うTrack.10と、摩訶不思議だが温かみのある世界へと変化していく様が心地よい。大衆性と実験性を高次元で両立させた意欲作だ。
-
-
THE KILLERS
Rebel Diamonds
THE KILLERSのデビュー作『Hot Fuss』からなんと今年で20年。日本でもクラブ・ヒットした「Mr. Brightside」や「Somebody Told Me」など、すこぶるキャッチーな名曲を収録した同作を聴いて、彼らが一発屋になるんじゃないかと心配した方も多いんじゃなかろうか。ところが彼らはその後20年近く、順調に質を落とさぬポップさと、玄人好みのインディー感も併せ持った不思議な魅力でヒットを飛ばし続けた。このベスト盤は、そんな彼らのすべてのアルバムから、それぞれの作品を代表する粒揃いのダイヤモンドのように煌びやかな楽曲を集めた、美しいジュエリー・ボックスのような1枚。新曲3曲も、懐かしさのあるシンセと伸びやかなメロディが響く、新たなフェス・アンセムとして定着しそうな、これまた名曲だ。
-
-
POP MARSHAL
Rejoice!
2022年、その活動にひと区切りをつけたHEADSPARKS。来日ツアーを行うなど、ここ日本でもUKメロディック・ファンの間で愛されていたそのバンドのメンバーが、POP MARSHALとして再始動。メンバーを変えると、長年愛されたバンドから印象を変えることを目指すバンドも多いが、彼らはあくまで自分たちが積み上げてきたものを上手く生かし、ファンの期待に応えるものを作り上げた。特に、中心メンバーのAndy Barnardは、90年代から様々なバンドでシーンを支えてきた実力派だけあって、安定したメロディメーカーとしての才能を存分に発揮している。耳に残るギター・フレーズ、口ずさみやすいメロディ、ワクワクするようなテンションのリズム、これぞ愛すべきメロディック・パンクだ。
LIVE INFO
- 2025.04.24
- 2025.04.25
- 2025.04.26
- 2025.04.27
- 2025.04.28
- 2025.04.29
- 2025.04.30
- 2025.05.01
- 2025.05.02
RELEASE INFO
- 2025.04.25
- 2025.04.26
- 2025.05.14
- 2025.05.16
- 2025.06.18
- 2025.06.25
- 2025.07.08
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号