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DISC REVIEW

Ha Ha Heartbreak

WARHAUS

Ha Ha Heartbreak

ベルギーの国民的インディー・ロック・バンド BALTHAZARのフロントマン、Maarten Devoldereによるソロ・プロジェクトが約5年ぶりの新作となる3枚目のアルバムを発表した。Leonard CohenやTom Waitsからの影響を公言するとおり、アルバム全編にわたってダンディな低音ヴォイスを生かしたスムースでスウィートなポップ/ソウルが展開され、しなやかなストリングスと、官能的なコーラスが彩りと、時には緊張感を与えている。ファルセットというよりシャウトを交え失恋を嘆くTrack.6、カッティングが耳を惹くTrack.9など、実験性を増した後半も魅力的。ARCTIC MONKEYSの『The Car』を聴いてアダルトなサウンドに興味が湧いた、という人にもおすすめ。

RADIO SONGS

Dave Rowntree

RADIO SONGS

90年代に一世を風靡し、今も熱狂的なファンを世界中に持つBLUR。そのドラマーにして、パイロット、政治家、弁護士など多方面でその才能を発揮してきたDave Rowntreeが、満を持してソロ・デビュー・アルバムをリリース。ミュージシャンとしてもマルチ・プレイヤーであるだけでなく、バンド活動以外にも映画やドラマなどの劇伴を手掛け、作曲家としての評価も高い彼だけに、今作はその幅広い経験すべてが糧となって消化されたような作品となっている。ゆったりした大人な雰囲気のエレクトリック・サウンドをベースに、主張しすぎないオーケストレーションの巧みな演出、そしてBLURで培われたポップ・センス。Dave Rowntree自身の優し気なヴォーカルも楽曲に溶け込むようにマッチしていて魅力的だ。

Alpha Zulu

PHOENIX

Alpha Zulu

グラミー受賞のインディー・バンド、PHOENIXの約5年ぶりの新作となる7thアルバム。長年のコラボレーターで2019年に亡くなったPhilippe Zdarにインスパイアされ、ロックダウン期間にルーヴル宮内の美術館でレコーディングが行われたという異色のバックグラウンドを持つ作品は、PHOENIXらしい多幸感の中にどこか寂寞とした雰囲気が漂っている。きらびやかなシンセ・ポップを聴かせる「Alpha Zulu」、VAMPIRE WEEKENDのEzra Koenig(Vo/Gt)をフィーチャーし切ないメロディが心地よい「Tonight」、重心を落としたエレクトロ・サウンドを展開する「All Eyes On Me」など、甘酸っぱさとほろ苦さが同居する、グッと洗練されたポップスが奏でられている。

Profound Mysteries III

RÖYKSOPP

Profound Mysteries III

20年以上のキャリアを誇る北欧ノルウェーのエレクトロ・デュオが、約1年をかけ楽曲や映像作品などを発表する壮大でコンセプチュアルなプロジェクト"Profound Mysteries"の第3弾にして完結編をリリースした。全体としてダークで内省的なトーンにまとめられているが、陶酔感あるニュー・ウェーヴの中でメロディ・センスが光る「Me&Youphoria」、Susanne Sundførをフィーチャーしたエレポップの「Stay Awhile」、アトモスフェリックな長尺曲「Speed King」など、多彩で幽玄な表現が詰まっている。プロジェクトを締めくくる楽曲でありながら突き放すようなニヒリズムを湛えた「Like An Old Dog」まで、徹底した美学が貫かれた作品。

Alive And Unwell

Leah Kate

Alive And Unwell

SNSで火がつき、遅咲きのポップ・スターとして一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたLeah Kate。そんな彼女のヒット曲を収めたEPは、世界へ大きく羽ばたく彼女の名刺代わりの1枚となっている。彼女のルーツでもある2000年周辺のポップ・パンクやポップスの影響、そして音楽一家で育ったという恵まれた環境を感じさせる、幅広いジャンルから吸収されたエッセンスが独特のセンスとなって表現されている。また、リスナーが共感しやすいキャッチーなフレーズが用いられた歌詞も秀逸で、SNS文化との相性もバツグン。表舞台に出ずに創作活動を続けていた時期の長かったアーティストだからこそ、秘められた創造性が爆発したのかもしれない。Leah Kateの今後の輝きにも注目!

The Car

ARCTIC MONKEYS

The Car

月面のホテルをテーマにした前作『Tranquility Base Hotel & Casino』を経た、約4年ぶり7枚目のスタジオ・アルバム。きらびやかなストリングス、ファンキーなギターやコンガが踊るオーガニックなサウンドの上で、Alex Turnerがファルセットを多用した芳醇なヴォーカルを披露する、渋さと甘さ、レトロとモダンが調和した作品だ。余白を巧みに用いて緻密に計算された音像は豪華だが決して派手ではなく、工業製品のような、地に足のついた機能的な美しさを放っている。不穏なシンセ・ベースが響くTrack.3や、大々的なストリングスでクライマックスを飾るTrack.10といった楽曲の、いい意味での違和感も心地よい。上質な革靴のように、聴けば聴くほど身体になじんでくる作品だ。

Charlie

Charlie Puth

Charlie

US音楽シーンを代表するヒット・メーカーが、自身の名"Charlie"を冠したアルバムをリリース。タイトル通り過去最高にパーソナルな1枚となった本作では、彼が抱えた失恋の痛みも、そこから立ち直ろうともがく姿も、すべて正直に曝け出している。しかしそのサウンドは皮肉なほどに明るく軽やかだ。"Charlie Be Quiet!"と女性に対し前のめりな様を自嘲したり、照明のスイッチ音を曲に組み込んでみたりと、ユーモアを散りばめポップな仕上がりに。またJung Kook(BTS)とのコラボ曲を収録し、さらに収録曲の制作段階をTikTokで公開するなど話題性も抜群。今までの虚勢を脱ぎ捨てた彼は、ナイーヴな内面を映す歌詞とユニークなキャラクターで、飾らない新たなポップ・スター像を築き上げている。

Fever Dream

PALAYE ROYALE

Fever Dream

3兄弟からなるロサンゼルスのトリオ・バンド PALAYE ROYALE。2022年夏にはKORN、EVANESCENCEとの北米ツアーも実施し勢いに乗る彼らが発表した4thアルバムは、これまで彼らの中核を成していた、グラム・ロックの枠外へとポジティヴに1歩を踏み出した革新的な作品になっている。個性的なRemington Leithの歌声を中心に、オルタナやブリット・ポップなどをより色濃く反映したアレンジ、重厚なコーラスや豪勢なオーケストレーション、そしてモダンな質感を加えた楽曲は、着実なスケールアップを感じさせる。オールド・ロックから近年のラウドロックのファンまで虜にする魅力を持った作品だと言えるし、まずは壮大なロック・オペラを奏でる表題曲からでもチェックしていただきたい。

Fossora

Björk

Fossora

10作目のアルバムでBjörkが示したのは、母なる自然に溶け込むような透明感、そしてパワフルな生命力を感じさせるサウンドだ。幸福感や不安な気持ちなど様々な感情を呼び起こす多彩なコーラスのハーモニー、そして大地への畏敬と共に人の営みにも優しい眼差しを向ける美しく調和した電子音、厳かな響きのアイスランド語、管楽器の楽し気な音が散りばめられた楽曲、舞台演出のように示唆的に鳴るストリングスの響き。ミュージカルみたいにシアトリカルでありながら、答えのないアブストラクティヴな今作は、まさに彼女の神秘性と独創性がひとつの空間に結実したような作品だ。複雑で厄介なこの時代に、プリミティヴな生命の賛歌を紡ぎ、ひとつの表現として世に生み出したBjörkの偉大さを感じる。

Asphalt Meadows

DEATH CAB FOR CUTIE

Asphalt Meadows

アルバムとしては約4年ぶり10作目となる、デスキャブの最新作。近作は美メロを生かしたソフトで落ち着いた印象の作品が多かったが、本作ではいきなり強烈なパンチを食らわせる「I Don't Know How I Survive」を筆頭に、ザラついたラウド・サウンドが際立っている。ストレートなロック・ナンバーの「Roman Candles」や、スポークン・ワードとともに雄大なサウンドスケープを描く「Foxglove Through The Clearcut」、アッパー・チューンの「I Miss Strangers」から叙情的なメロディを奏でる「Wheat Like Waves」と、楽曲単体のみならずアルバム全体に静と動のコントラストを纏った、美しくも力強い楽曲が並ぶ。実験的でありながら往年のファンをも唸らせるであろう、結成25周年を迎えた彼らの革新性が光る。

Here Is Everything

THE BIG MOON

Here Is Everything

UKロンドンの4人組女性ロック・バンド、THE BIG MOONが3rdアルバムを発表。ヴォーカルのJuliette Jacksonの出産を経てリリースされる本作は、パンデミックやロックダウンによる重圧や、母親となり感じた興奮や不安といった様々な感情が反映されたものに。美しいハーモニーで奏でられるインディー・ロック・サウンドを軸に、叙情的な調べが胸を打つ「Wide Eyes」、ドリーミーな世界へと誘う「Daydreaming」、軽快なビートを鳴らす「Trouble」など、今だからこそのピュアな優しさを湛えた楽曲群で聴く者を包み込んでくれる。エモーショナルなコーラスが映える「High & Low」、素朴なラスト・トラック「Satellites」も秀逸で、物思いにふける秋にぴったりな作品だ。

The Alchemist's Euphoria

KASABIAN

The Alchemist's Euphoria

Tom Meighan(Vo)脱退後、初のフル・アルバムとなる本作。新たに外部からヴォーカルを招くことなく、メンバーのSerge Pizzorno(Gt/Vo)がリード・ヴォーカルも務めたことにより、KASABIANのKASABIANたる要素が欠けることなく、うまく前に進めた印象だ。サウンドにはまとまりがあるし、それでいて常に現状打破というかチャレンジングな姿勢を崩さないところはさすが。モダンなエレクトロ・サウンドを意識したアレンジもあって、パンチの効いた激し目の楽曲もトゲトゲしくなく、とても洗練されている。初期には初期の、これまでの彼らには作品ごとの魅力があるのはもちろんだが、いい方向に変化と前進を受け入れていく彼らのポジティヴな魅力が感じられる。

Viva Las Vengeance

PANIC! AT THE DISCO

Viva Las Vengeance

P!ATD=Brendon Urieのルーツとも言える、ラスベガスをテーマとしたパーソナルな内容のアルバム。今作は、前作『Pray For The Wicked』(2018年)の派手に作り込んだファンキーでダイナミックな雰囲気とは少し変わって、親しみやすいポップ・サウンドが特徴的。ロック色が強く、生音感、バンド感の前面に出たサウンド面でもルーツに挑戦する内容となっている。QUEENを彷彿とさせるドラマチックなロック・オペラには、ピュアに全力で音楽を楽しむBrendon Urieの姿勢が見て取れる。エネルギッシュで繊細な感情表現もあるヴォーカル・ワークも相まって、彼のポップ・センスが存分に発揮された、シンプルに楽しめる楽曲が並んだ痛快なアルバムだ。

SZNZ: Summer

WEEZER

SZNZ: Summer

四季の節目に合わせた4枚のEPシリーズ"SZNZ"の第2弾が到着。今回は夏がテーマだが、夏と聞いてパッと頭に浮かぶ陽気さや開放感からは対極とも言える、ヘヴィ且つハードな作品だ。ヴィヴァルディを引用しながら大仰なイントロダクションを奏でるTrack.1に始まり、RIHANNAやNIRVANAの名を挙げながら脳内で鳴り止まない音楽への愛を叫ぶTrack.2、ポップとダークを併せ持ったTrack.5、WEEZER版ロック・オペラと言うべき多彩な展開を見せるTrack.7など、パワー・ポップにいくつもひねりを加えたサウンドは今のWEEZERならでは。まるで青春時代の衝動を大人になってふと思い出したかのような、エモーショナルで情熱的な楽曲は、やっぱり夏に相応しい。

Will Of The People

MUSE

Will Of The People

2000年代以降のロック史に燦然と輝く3ピース・バンド、MUSE。そんな彼らの9作目のアルバムとなる今作は、パンデミックや環境問題、不安定な世界情勢といった暗いニュースにフォーカスした重いテーマを扱いながらも、非常にエンターテイメント性の高い作品となった。メタリックなギター・プレイと、'80sのキラキラ感があるキーボード、ミュージカルのように語り掛けるメロディ。スケール感のあるサウンドで、ダンサブルにもヘヴィにも感情揺さぶるバラードにも振り切った楽曲の数々には、それぞれドラマ性があり、その世界観へとグイグイ引き込まれていく。そんなテクニックだけでは描けない、生命力溢れるストーリーは、MUSEというバンドの持つ音楽への情熱を象徴しているようだ。

SZNZ: Spring

WEEZER

SZNZ: Spring

コロナ禍でも精力的な作品リリースを続けるWEEZERが、四季の節目に合わせた4枚のEPシリーズ"SZNZ"を始動。その第1弾である"Spring"は、柔らかで優しいロック・サウンドで、春のそよ風やうららかな日差しをイメージさせるにはもってこいの作品に仕上がっている。ファンタジー映画の音楽のようにフォーキーでオーガニックな楽器と、ほど良く歪んだギターが織りなすメロディは懐かしくも心地よく、実にキャッチー。ヴィヴァルディを引用したTrack.1や、ソフトな出だしから広がりを持って展開していくTrack.3、童謡とハード・ロックのヴァイブをブレンドしたTrack.6など、粒ぞろいの楽曲を収録。夏、秋、冬と続く"SZNZ"の続編にも必然と期待を持ってしまう作品だ。

Entering Heaven Alive

Jack White

Entering Heaven Alive

"FUJI ROCK FESTIVAL '22"にヘッドライナーとして出演したJack White。今年は、すでにアルバム『Fear Of The Dawn』を発表しており、今作は2022年2作目のアルバムになる。前作とは本来同時リリース予定だったらしいが、生産事情により発売時期がずれたようだ。それにしても、2作のギャップがすごい。ラップを入れたり、ポスト・パンク的なちょっと尖った90年代インディー、オルタナ臭を放っていたりした前作とは打って変わって、今作はブルース、ジャズの香りを残した古き良きロックを展開。それでいてどちらもJack Whiteらしさ全開なのだから脱帽だ。器用なソングライターの面と、自己プロデュース力のハンパなさが為せる業。本当に楽しませてくれるアーティストだ。

10 Tracks To Echo In The Dark

THE KOOKS

10 Tracks To Echo In The Dark

独特のグルーヴ感とポップ・センスで、根強い人気を誇るTHE KOOKS。6枚目のアルバムとなる今作は、80年代インディー・バンドのテイストを取り込んだちょっぴりレトロな雰囲気も漂う、遊び心のあるアルバムとなった。全体的に、シンセ・サウンドを大胆に取り入れたポップ・サウンドを展開。前作『Let's Go Sunshine』で表現した王道感のあるギター・ロックを、ポップなメロディで中和しながら、4thアルバム『Listen』とはまた違ったアプローチで、THE KOOKS流のダンス・ナンバーを追求した意欲作だ。結成15年を超えてなお、まだまだこんなにも爽やかでフレッシュなサウンドを生み出せる、THE KOOKSというバンドのピュアな魅力に触れることができた気がする。

Dropout Boogie

THE BLACK KEYS

Dropout Boogie

現行アメリカン・ロックの代表格として名を馳せるTHE BLACK KEYSが、通算11作目となるスタジオ・アルバムを発表した。バンドの音楽的ルーツである楽曲をカバーした前作『Delta Kream』を経た本アルバムでは、グッと渋さを増したブルージーなロックンロールを披露。ザラついた泥臭いギター・リフに、どっしりと響くドラムが生み出すうねるようなグルーヴは極めてシンプルながら痛快で、ファンキーなリフで初っ端から派手にかますTrack.1(遊び心に満ちたMVもクール)、ZZ TOPのフロントマン Billy F Gibbonsも参加したTrack.5、メロウなパートから疾走感溢れるサウンドになだれ込むTrack.9と、普遍的なロックの魅力を詰め込んだ快作に仕上がっている。

Twelve Carat Toothache

Post Malone

Twelve Carat Toothache

"SUMMER SONIC 2022"でヘッドライナーを務めるPost Maloneの、3年ぶりとなる最新作。過去作よりもさらに彼の歌メロを引き立たせた作風に仕上がっていて、ピアノの伴奏とともに名声の代償を歌うTrack.1、アコギにスモーキーな歌声が合ったTrack.3などエモーショナルな楽曲に、DOJA CATを迎えたTrack.5のようなポップ・サウンドが交ざり合い、揺れ動く感情のように悲喜のグラデーションが生まれている。酒での失敗談をドラマチックに仕立てたTrack.8はFLEET FOXESがコーラスを奏で、クライマックスに配されたTrack.13はTHE WEEKNDとのデュエットと、ゲストも豪華。スーパー・スターでありながらどこか親しみの持てる、パーソナルな部分が発揮されたアルバムだ。

A Light For Attracting Attention

THE SMILE

A Light For Attracting Attention

RADIOHEADのThom YorkeとJonny Greenwood、ドラマーのTom Skinner(SONS OF KEMET)による新バンド、THE SMILEのデビュー・アルバム。RADIOHEADの作品同様変拍子が多用されているなど実験的なアプローチの楽曲が並ぶが、ひと味違ったグルーヴ感があるのがTHE SMILEの特徴だろう。そのへんはジャズ・シーンで活躍してきたTom Skinnerの手腕が生きているところだ。そして、トリッキーだがすんなりと耳に入り、ポジティヴな表現ではないが聴く者の心にしっかりと寄り添うThom Yorkeの音楽性が、コロナ禍を経て疲れ切った人々の心に沁み渡る。テッド・ヒューズの詩からとったバンド名もあり、音で詩を描くというのはこういうことなのかと納得させられる作品だ。

1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs

KULA SHAKER

1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs

独特の美学を持ったサウンドで、熱狂的なファンの多いKULA SHAKER。その活動はマイ・ペースではあるが、それだけに、ひとつひとつの作品が彼らのターニング・ポイントとも言えるような重要性があるのではないかと思う。前作『K 2.0』はデビュー作から20年という節目でもあって、初期の冒険心溢れるサウンドを進化させたような、文字通りデビュー作の"2.0"なつくりだったが、今作は世の中の変化やメンバーそれぞれの変化/進化を反映した、彼らの"今"を表現するアルバムとなった。神話に基づく壮大なテーマがパーソナルな感情と結びつき、サイケデリック・ロックの浮遊感と肉体的なアナログ・サウンドの高揚感に溢れている。KULA SHAKERという不思議な魅力を持ったバンドの再評価にも繋がるだろう。

Life Is Yours

FOALS

Life Is Yours

前作『Everything Not Saved Will Be Lost』2部作は、Part 1が踊れるロック、Part 2が骨太なロックと、持てる技を全部見せつけるような、バンドとしての集大成的アルバムだった。そして、そんなすべてを出し切った前作を経て、さらに閉塞感のある世の中の空気とも重なり、今作では新機軸となるような、突き抜けて明るいポップ路線を打ち出している。直感的に踊りだしたくなるような、軽快なギター・カッティング、ファンキーなドラム、浮遊感のあるシンセ・サウンド。どこを切っても輝きに満ちた幸福感のあるサウンドで、音楽を聴いてこんなに"眩しい!"と感じることがあるなんて。日常の鬱屈した感情や面倒事がぶっ飛ぶ、FOALS流非日常ポップでひと足早い夏を楽しんで。

We

ARCADE FIRE

We

RADIOHEADとの長年のコラボレーションで知られるNigel Godrichを共同プロデューサーに迎えた、約5年ぶりのニュー・アルバム。"I"と"We"の2部構成からなり、前半ではソーシャル・メディアや政治的対立、パンデミックなどによって生じた孤立への恐れや寂しさを、内省的でどこか冷ややかなサウンドで表現する。後半では他者との繋がりによって広がる、希望に満ちた世界をドラマチックに奏でていて、強烈なカタルシスを生む「The Lightning I, II」は圧巻。「Unconditional II (Race And Religion)」での、バンドの影響元のひとつと言えるPeter Gabrielの客演も絶妙だ。彼らなりのロック・オペラで現代を描き出す傑作。