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DISC REVIEW

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Ed Sheeran

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10年にわたりリリースしてきた"マスマティックス・プロジェクト"の最終作『-』。妊娠中の妻のガン発覚、親友の急逝、盗作疑惑による裁判と、世界的スターに襲い掛かった数々の苦難は、想像もできないほどの大きな不安や悲しみと同時に、かすかな希望を灯す温かな楽曲たちを生み出した。Aaron Dessner(THE NATIONAL/Gt/Key)とタッグを組み制作された本作は、切実な言葉たちを際立たせるように全体的にシンプルな仕上がりに。柔らかなコーラスやオーケストラによるアレンジは、聴く者の心を浄化するように染み入る。彼自身を救うために曲の中で打ち明けられた苦しみや葛藤。乗り越えようとするのではなく、マイナスな感情も包み込むように抱き共に生きていく、そんな様々な経験を経た彼が行き着いた答えが刻まれている。

Heavy Hymnal

VINTAGE TROUBLE

Heavy Hymnal

ソウル・ミュージック界隈だけでなく、ロック・シーンでも熱視線を浴びるバンド、VINTAGE TROUBLEの3rdアルバム。ノリやすいファンキーなサウンドに、ライヴ感のある躍動的な演奏スタイル、リード・シンガー Ty Taylorの柔軟性のある歌声が特徴的だ。思わず聴き入ってしまうようなバラードも、自然と身体が動くファンキーでノリノリな楽曲も、伝統的なソウル・サウンドを大切にしつつ、フレッシュ感のある音作りが光り、聴きやすくアレンジされている。また、ゲスト・ヴォーカルとして参加しているLAのソウル・シンガー LADY BLACKBIRDのスモーキー且つソウルフルな歌声は、VINTAGE TROUBLEのブルージーで温かみのあるサウンドとも相性バツグン。

First Two Pages Of Frankenstein

THE NATIONAL

First Two Pages Of Frankenstein

USインディー・シーンでもっとも愛されているバンドのひとつ、THE NATIONALの通算9作目となるアルバム。嫌味のないソフトなメロディと、透き通るように繊細なハーモニーなど、独特の儚げな響きにはあまりの美しさに胸がギュッと締めつけられる。また、インディー・ロック職人のこだわりが感じられる、耳に残るようなアナログ感のある音作りが、楽曲に深みを与えている。さらに、今作にはゲスト・アーティストとして、幅広い世代から愛されるポップ・アイコン Taylor Swiftや、インディー・ロック・シーンの新星 Phoebe Bridgers、過去にも共演しているSufjan Stevensといった、新旧の盟友たちが参加。多くのミュージシャンから敬愛されるTHE NATIONALならではの豪華な顔ぶれだ。

Plastic Eternity

MUDHONEY

Plastic Eternity

グランジの先駆的存在であり、Sub Popの看板バンドのひとつでもある、MUDHONEY。そんな彼らの11枚目のアルバムは、絶好調にアングラで尖っていて、最高にアグレッシヴだ。洗練されすぎない泥臭さのあるサウンドと、メンバーそれぞれ40年近くの音楽活動歴を持つベテランならではの安定感のある演奏が、絶妙な世界観を生み出している。オルタナというジャンルが古臭く聴こえるような昨今でさえ、Mark Armの吐き捨てるようなヴォーカルやMUDHONEYの叩きつけるような演奏には、衰退したカルチャーの響きはなく、我が道を行く存在としての輝きが見える。むしろ、今作のように純粋な本能で作られた音楽こそ、怒りや感情の爆発を抑え込んでしまっている現代の若者に必要な音楽なんじゃないか。

How To Let Go(Japan Edition)

SIGRID

How To Let Go(Japan Edition)

世界を魅了するモダン・ポップスの潮流がノルウェーから日本へ。ヒット曲をふんだんに詰め込んだ今作で、SIGRIDがついに日本デビューを果たした。本国ノルウェーはもちろん、UKを中心にヨーロッパで高く評価されている、キャッチーな音楽性と清涼感のあるヴォーカル。ワンフレーズ聴けば一瞬で"これは好きなやつ!"と即答できそうなくらいに心地よい。普遍性のある都会的なポップスでありながら、北欧の大自然の空気を感じる、この爽やかさ。さらにBRING ME THE HORIZONとコラボしたエモーショナルな楽曲も。飾らないひとりの女性の等身大の気持ちが描かれたリリックもあいまって、肩肘張らずにリラックスして聴くことができる。よく晴れた日にビール片手に聴くのに最適な1枚。

Superglue

JOAN

Superglue

80年代エレポップを基調とした楽曲が本国のみならずアジア圏でも話題を集め、2022年11月には初来日公演を開催したUSオルタナティヴ・ポップ・デュオのJOAN。彼らの初となるアルバムは、親しみやすいソフトなメロディという持ち味はそのままに、進化と成熟も垣間見える作品になっている。サウンドもさらなる広がりを見せ、00年代のポップ・パンクを思わせる「Loner」や、アコギとストリングスのアレンジが沁みる「Monsters」、甘酸っぱく切ない「Flowers」など粒揃いの楽曲を収録している。メンバーそれぞれが父親になった経験を反映した、壮大なラスト・ナンバー「Superglue」は白眉だ。この普遍的なポップ・サウンドは、洋楽ボーイズ・グループをよく聴いていたという人にもおすすめしたい。

So Much (For) Stardust

FALL OUT BOY

So Much (For) Stardust

ロック・シーンの最前線を走り続けてきたFOBが、ついに今年デビュー20周年を迎える。今作は、そんなアニバーサリーに相応しく原点である古巣 Fueled By Ramenに帰還し、さらには初期の3作品を手掛けたNeal Avronをプロデューサーに迎えて制作された。そんな経緯もあって、前作『M A N I A』(2018年)のようなEDMを強く意識したアプローチは少し抑えめに、どちらかと言えば『Infinity On High』(2007年)や『Folie À Deux』(2008年)あたりのような、バンド演奏に主軸を置いたグルーヴィでダンサブルなロックを貫いている。加えてシンセ・アレンジや壮大なオーケストレーションを盛り込むことで、アップデートされたFOBを印象づける作品となった。

How Many Dreams?

DMA’S

How Many Dreams?

幸福感溢れるシャイニーなギター&エレクトロの洪水の中で、"How many dreams"のリフレインが響くタイトル曲で始まる、豪州発バンド DMA'Sの4thアルバム。90年代UKロック、シューゲイザーなどをルーツにし、ブリットポップの再来と評されたそのサウンドが磨かれたのはもちろん、甘めのメロディ&歌や曲を印象づけるリフの存在感、キャッチーさが際立っている。その骨格が美しいからこそ、どんな装飾やアレンジも映える。Rich Costey(SIGUR RÓS/MUSE etc.)とKonstantin Kersting(TONES AND I etc.)がプロデュースしたシングル「I Don't Need To Hide」での、ミニマルで恍惚感のあるダンサブルなサウンドから、OASIS直系の「Forever」、ポップでサイケデリックな「De Carle」など、新しさとどこか懐かしさがある、いい香りがする作品。

Cracker Island

GORILLAZ

Cracker Island

通算8作目となるGORILLAZのフル・アルバムは、リアルと虚構が錯綜する浮遊感、幸福と哀しみがミックスされたような世界観で、時代が求める甘い救いとビターな代償が音楽で表現されている。時代を先取りしてきたバーチャル・バンドという存在である彼らが描くことによって、それらはより意味深いものになるだろう。フックのあるファンキーなシンセ・ポップも、トロピカルなラテンのビートも、肉感的にならないギリギリのラインでGORILLAZ的な未来感のあるサウンドに仕立てている。今作でももちろん、THUNDERCATやStevie Nicks、TAME IMPALA、BECKなどといった数多くの人気アーティストがゲスト参加し、物語性のあるそれぞれの楽曲に個性際立つ印象を残している。

Trustfall

P!NK

Trustfall

世界中の女性を励まし続けるディーヴァ、P!NKが9枚目のフル・アルバムをリリースした。今作でも、自身の身を切るようなファイト・スタイルもとい、音楽スタイルで心揺さぶる人生賛歌をぶつけてきたP!NK姐さん。特にシングル・カットされた「Never Gonna Not Dance Again」は本当にもう、サイコーのひと言だ。"何を奪われてもかまわないけど、ダンス・シューズを手放すのだけは絶対にイヤ!"という彼女らしい、強烈な"いたしません"ムーヴが最高に痛快でスカッとする。もちろんポップ・ミュージックの煌びやかさとP!NK節の超パワフルなヴォーカルがあってこその、強さと自由のポジティヴな表現になっているわけなので、ほかの誰かがマネできるものではない。元気になりたい人、必聴。

High Drama

Adam Lambert

High Drama

人気オーディション番組"アメリカン・アイドル"で全米を虜にし、その圧倒的な歌唱力とミュージカルで鍛えられた表現力で、スターダムを駆け上がってきたAdam Lambert。現在はQUEENのヴォーカリストとしても活躍する彼が、自身のルーツとも言えるようなアーティストや、共感するアーティストの楽曲をカバーし、1枚のアルバムに仕上げたものがこちら。Adamのパワフルな声量を生かした派手なヴォーカル・ワークはもちろんのこと、中性的なファルセットや、しっとりとした静かな楽曲の中にも、まったくつけ入る隙のない本物の上手さがあり、ただただ脱帽するしかない。各楽曲には大胆なアレンジもあり、懐かしの名曲が斬新なダンス・ポップとして現代に蘇ったという意味でも、非常に音楽的価値のある作品だと思う。

Cuts & Bruises

INHALER

Cuts & Bruises

MÅNESKINらとともに新世代のロックを担う存在として注目されている、INHALER。そんな彼らの2ndアルバムは、誰もが胸を熱くするキャッチーなギター・ロックと、アンニュイなポスト・ロックのエッセンスが、今っぽいスタイリッシュなサウンドに進化したものとなった。ブルージーで骨太なサウンドを奏でても、マッチョでも泥臭くもないのは、声量はあるのに力の入りすぎないElijah Hewsonの味のあるヴォーカルのせいか、それとも軽やかな鍵盤の音がポイントになっているのか。とにかく、すでに大物の貫禄ある堂々たる演奏、直球でわかりやすい音楽性でありながら作り込まれたカラフルなアレンジには、素直に魅了される。"SUMMER SONIC 2023"での来日も要チェックだ。

SZNZ: Winter

WEEZER

SZNZ: Winter

2022年にWEEZERが1年を通して手掛けたプロジェクト"SZNZ"が、ついに完結。ヴィヴァルディの「四季」からインスピレーションを受けたという4枚のEPのラストを飾るこちらの『SZNZ: Winter』は、管弦楽器を用いて壮大に仕上げつつ、WEEZERらしい親しみやすさのあるグッド・メロディが心に沁みる作品となっている。さながらギター協奏曲とも言えるコンセプチュアルな展開で物語を紡いだ本作。ドラマチックに盛り上げる「I Want A Dog」に始まり、テルミンやストリングスを大胆に用いた「Sheraton Commander」で大きく展開、再び訪れる春へと希望を残すように、軽快なロック・ナンバー「The Deep And Dreamless Sleep」で締めくくられている。

Late Developers

BELLE AND SEBASTIAN

Late Developers

今作は、昨年リリースされた前作『A Bit Of Previous』制作時に同時にレコーディングされていたということで、2作品は対をなすような位置づけになっているとのこと。2枚組ではなく、あえて時間を空けてリリースしたのにはいろいろ事情があるのかもしれないが、ファンにとっては嬉しいサプライズ・プレゼントとなった。地元グラスゴーでのレコーディングということで、全体的にリラックスしたトーンで描かれ、バンドが本当にやりたい音楽を詰め込んだというようなワクワク感もある。多彩な楽器の音色とお洒落なレトロ感、国際的で雑多な不思議かわいい雑貨屋さんを覗いたようなハッピーな気持ち。人生の悲哀を歌いながらもそんな人生を否定しない、聴く者の心に寄り添う姿勢が独特のポップネスとなっている。

Never Going Under

CIRCA WAVES

Never Going Under

2020年の前作『Sad Happy』がUKチャートの4位を記録し人気ギター・ロック・バンドの地位を確かなものにした、リヴァプールの4人組 CIRCA WAVES。彼らの5枚目となるアルバムは、"私たちが現在感じている恐怖と、それを乗り越えるために必要な回復力のスナップショットだ"とフロントマンのKieran Shudallが語るとおり、ポジティヴでエネルギーに満ちた快作だ。キャッチーに口火を切る表題曲から、アンセミックな歌メロが躍動するTrack.5、壮大なサウンドスケープを見せるTrack.6、ハネたピアノのリフが心地いいTrack.8、ドリーミーなリード・フレーズが光るTrack.9など、地に足をつけながら確実な前進を遂げていることが伝わってくる。

Ha Ha Heartbreak

WARHAUS

Ha Ha Heartbreak

ベルギーの国民的インディー・ロック・バンド BALTHAZARのフロントマン、Maarten Devoldereによるソロ・プロジェクトが約5年ぶりの新作となる3枚目のアルバムを発表した。Leonard CohenやTom Waitsからの影響を公言するとおり、アルバム全編にわたってダンディな低音ヴォイスを生かしたスムースでスウィートなポップ/ソウルが展開され、しなやかなストリングスと、官能的なコーラスが彩りと、時には緊張感を与えている。ファルセットというよりシャウトを交え失恋を嘆くTrack.6、カッティングが耳を惹くTrack.9など、実験性を増した後半も魅力的。ARCTIC MONKEYSの『The Car』を聴いてアダルトなサウンドに興味が湧いた、という人にもおすすめ。

RADIO SONGS

Dave Rowntree

RADIO SONGS

90年代に一世を風靡し、今も熱狂的なファンを世界中に持つBLUR。そのドラマーにして、パイロット、政治家、弁護士など多方面でその才能を発揮してきたDave Rowntreeが、満を持してソロ・デビュー・アルバムをリリース。ミュージシャンとしてもマルチ・プレイヤーであるだけでなく、バンド活動以外にも映画やドラマなどの劇伴を手掛け、作曲家としての評価も高い彼だけに、今作はその幅広い経験すべてが糧となって消化されたような作品となっている。ゆったりした大人な雰囲気のエレクトリック・サウンドをベースに、主張しすぎないオーケストレーションの巧みな演出、そしてBLURで培われたポップ・センス。Dave Rowntree自身の優し気なヴォーカルも楽曲に溶け込むようにマッチしていて魅力的だ。

Alpha Zulu

PHOENIX

Alpha Zulu

グラミー受賞のインディー・バンド、PHOENIXの約5年ぶりの新作となる7thアルバム。長年のコラボレーターで2019年に亡くなったPhilippe Zdarにインスパイアされ、ロックダウン期間にルーヴル宮内の美術館でレコーディングが行われたという異色のバックグラウンドを持つ作品は、PHOENIXらしい多幸感の中にどこか寂寞とした雰囲気が漂っている。きらびやかなシンセ・ポップを聴かせる「Alpha Zulu」、VAMPIRE WEEKENDのEzra Koenig(Vo/Gt)をフィーチャーし切ないメロディが心地よい「Tonight」、重心を落としたエレクトロ・サウンドを展開する「All Eyes On Me」など、甘酸っぱさとほろ苦さが同居する、グッと洗練されたポップスが奏でられている。

Profound Mysteries III

RÖYKSOPP

Profound Mysteries III

20年以上のキャリアを誇る北欧ノルウェーのエレクトロ・デュオが、約1年をかけ楽曲や映像作品などを発表する壮大でコンセプチュアルなプロジェクト"Profound Mysteries"の第3弾にして完結編をリリースした。全体としてダークで内省的なトーンにまとめられているが、陶酔感あるニュー・ウェーヴの中でメロディ・センスが光る「Me&Youphoria」、Susanne Sundførをフィーチャーしたエレポップの「Stay Awhile」、アトモスフェリックな長尺曲「Speed King」など、多彩で幽玄な表現が詰まっている。プロジェクトを締めくくる楽曲でありながら突き放すようなニヒリズムを湛えた「Like An Old Dog」まで、徹底した美学が貫かれた作品。

Alive And Unwell

Leah Kate

Alive And Unwell

SNSで火がつき、遅咲きのポップ・スターとして一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたLeah Kate。そんな彼女のヒット曲を収めたEPは、世界へ大きく羽ばたく彼女の名刺代わりの1枚となっている。彼女のルーツでもある2000年周辺のポップ・パンクやポップスの影響、そして音楽一家で育ったという恵まれた環境を感じさせる、幅広いジャンルから吸収されたエッセンスが独特のセンスとなって表現されている。また、リスナーが共感しやすいキャッチーなフレーズが用いられた歌詞も秀逸で、SNS文化との相性もバツグン。表舞台に出ずに創作活動を続けていた時期の長かったアーティストだからこそ、秘められた創造性が爆発したのかもしれない。Leah Kateの今後の輝きにも注目!

The Car

ARCTIC MONKEYS

The Car

月面のホテルをテーマにした前作『Tranquility Base Hotel & Casino』を経た、約4年ぶり7枚目のスタジオ・アルバム。きらびやかなストリングス、ファンキーなギターやコンガが踊るオーガニックなサウンドの上で、Alex Turnerがファルセットを多用した芳醇なヴォーカルを披露する、渋さと甘さ、レトロとモダンが調和した作品だ。余白を巧みに用いて緻密に計算された音像は豪華だが決して派手ではなく、工業製品のような、地に足のついた機能的な美しさを放っている。不穏なシンセ・ベースが響くTrack.3や、大々的なストリングスでクライマックスを飾るTrack.10といった楽曲の、いい意味での違和感も心地よい。上質な革靴のように、聴けば聴くほど身体になじんでくる作品だ。

Charlie

Charlie Puth

Charlie

US音楽シーンを代表するヒット・メーカーが、自身の名"Charlie"を冠したアルバムをリリース。タイトル通り過去最高にパーソナルな1枚となった本作では、彼が抱えた失恋の痛みも、そこから立ち直ろうともがく姿も、すべて正直に曝け出している。しかしそのサウンドは皮肉なほどに明るく軽やかだ。"Charlie Be Quiet!"と女性に対し前のめりな様を自嘲したり、照明のスイッチ音を曲に組み込んでみたりと、ユーモアを散りばめポップな仕上がりに。またJung Kook(BTS)とのコラボ曲を収録し、さらに収録曲の制作段階をTikTokで公開するなど話題性も抜群。今までの虚勢を脱ぎ捨てた彼は、ナイーヴな内面を映す歌詞とユニークなキャラクターで、飾らない新たなポップ・スター像を築き上げている。

Fever Dream

PALAYE ROYALE

Fever Dream

3兄弟からなるロサンゼルスのトリオ・バンド PALAYE ROYALE。2022年夏にはKORN、EVANESCENCEとの北米ツアーも実施し勢いに乗る彼らが発表した4thアルバムは、これまで彼らの中核を成していた、グラム・ロックの枠外へとポジティヴに1歩を踏み出した革新的な作品になっている。個性的なRemington Leithの歌声を中心に、オルタナやブリット・ポップなどをより色濃く反映したアレンジ、重厚なコーラスや豪勢なオーケストレーション、そしてモダンな質感を加えた楽曲は、着実なスケールアップを感じさせる。オールド・ロックから近年のラウドロックのファンまで虜にする魅力を持った作品だと言えるし、まずは壮大なロック・オペラを奏でる表題曲からでもチェックしていただきたい。

Fossora

Björk

Fossora

10作目のアルバムでBjörkが示したのは、母なる自然に溶け込むような透明感、そしてパワフルな生命力を感じさせるサウンドだ。幸福感や不安な気持ちなど様々な感情を呼び起こす多彩なコーラスのハーモニー、そして大地への畏敬と共に人の営みにも優しい眼差しを向ける美しく調和した電子音、厳かな響きのアイスランド語、管楽器の楽し気な音が散りばめられた楽曲、舞台演出のように示唆的に鳴るストリングスの響き。ミュージカルみたいにシアトリカルでありながら、答えのないアブストラクティヴな今作は、まさに彼女の神秘性と独創性がひとつの空間に結実したような作品だ。複雑で厄介なこの時代に、プリミティヴな生命の賛歌を紡ぎ、ひとつの表現として世に生み出したBjörkの偉大さを感じる。