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DISC REVIEW

私は怒りでできている

惑星アブノーマル

私は怒りでできている

縦横無尽で自由自在な音楽を奏でる女性2人組ユニット、惑星アブノーマルによる新作は、すべての作詞作曲を手掛けるTANEKO(Vo)の変態的なワード&ソングライティング・センスが光る全12曲入りの1stフル・アルバム。1曲目の「怠惰」から疾走感のあるサウンドをベースに、スリリングなヴォーカルと、突飛だけれど心地いいコーラス("広東ソバ食べたいな"なんて普通は思いつかない!)で彼女たちの世界観を見せつける。続く「痴話喧嘩」ではダークな曲調にラップを乗せたかと思えば、エモーショナルなメロディや力強いがなり声も入りやみつきに。全体を通して奇天烈なサウンドに注目しがちだが、力強く歌いこなすハイトーンや、創造性に富んだキーボード・プレイなど、ふたりの確かなスキルにも着目したい1枚だ。

VIVI de VAVI de LOVE

惑星アブノーマル

VIVI de VAVI de LOVE

「LET IT DIE ~時をかける殺し屋~」では、ポップなSF感のあるシンセ・サウンドにシアトリカルなヴォーカルや、早口でまくしたてる歌が乗る。過激でパンチのある内容もユーモラスに響かせてしまうこの曲を筆頭に、全6曲+リミックス2曲ともにボリューム満点の4thミニ・アルバム。ラヴ・ソング一本勝負となった今作は、恋にのぼせた、ちょっと素っ頓狂な状況を描いている。過剰な甘さも、どこかかわいらしい。映画"(500)日のサマー"で主人公が突如踊り出すシーンのような、あのワクワクした気分が、極彩色のシンセやバンド・サウンドで表現された。前作『ココロココニ』で初めてタッグを組んだアレンジャーの鈴木Daichi秀行との作業も深化を遂げて、惑星アブノーマルの尖ったポップ感がより際立っている。

ココロココニ

惑星アブノーマル

ココロココニ

ままならない感情や女心をシアトリカルに表現するアレックスたねこと、たねこの激情を鍵盤で翻訳するテナ・オンディーヌによる、惑星アブノーマルの3作目のミニ・アルバムが完成した。前2作は言うなれば生々しいデッサンのようにソリッドで、移ろう心をプログレッシヴなピアノで表現されていたサウンドが、今作で猛烈にカラフルになり、多彩な色彩がうねるように躍動している。グッと湿度が上がるような感覚を味わい、歌謡性の高いメロディやポップな音の遊び心やリズム遊びもふんだんで、力強く聴き手を飲み込んでいく。ふたりの持つ高いポップ性やポテンシャルを引き出したのは、感性がマッチしたというアレンジャーの鈴木Daichi秀行。このバンドの毒やえぐみ、可愛らしさや美しさや狂気を内包した、物語性のある構築的なアレンジと歌はかつてなく濃厚だ。

アナタソナタ

惑星アブノーマル

アナタソナタ

今年3月に『何でも無い凶器』で全国デビューをした女子2人組の2ndミニ・アルバムが早くもリリース。前作は倉橋ヨエコや初期の椎名林檎の影響が色濃く出た猟奇的でエキセントリックな作品だったが、今作はそのニュアンスを含ませつつポップに昇華した飛躍作だ。余裕の見えるサウンドはより彼女たちの心情を豊かに伝えてくれるし、アレックスたねこの歌もまっすぐ耳と心に飛び込んでくる。個人的におすすめしたいのはヴァイオリンを用いた「臆病者ラプソディー」。弦と鍵盤が織りなす繊細なサウンド・メイクと、息遣いまでも情熱的なたねこの歌声の見せる景色は、満開の桜吹雪のような果敢無さと美しさだ。フル・アルバム的なアプローチが光るトラック並びといい、彼女たちのポテンシャルを感じさせる。

何でも無い凶器

惑星アブノーマル

何でも無い凶器

平均年齢21歳の女子2人、アレックスたねこ(歌)とテナ・オンディーヌ(Syn/Key)のユニット“惑星アブノーマル”。乱暴に言えば、倉橋ヨエコと初期の椎名林檎が融合し、tricotとねごとに憑依してぐちゃぐちゃになって、はちゃめちゃに猟奇的になった感じのアバンギャルドでエキセントリックな音だ。1曲の中での展開も凄まじく、これでもかと様々な仕掛けを詰め込んでくる。それはきっと“面白い音楽を貪欲に求める”という、アブノーマルなユーモア・センスと探究心からくるものだろう。アレックスたねこのヴォーカルはそれを象徴するようで、遊び心たっぷりに聴き手の鼓膜へまとわりつく。アグレッシヴに攻め続けるが、ポップであることは忘れない。6曲全てが初期衝動そのものと言ってもいい。

いいひとどまり / スマートなんかなりたくない

忘れらんねえよ

いいひとどまり / スマートなんかなりたくない

初のダブルAサイド・シングル。男性でも引きそうなひがみ、恨みは影を潜めつつ、実はそうした破壊衝動を押さえ込んで自分と戦いながらも、それこそ"いいひとどまり"と自覚する切なさは過去最強。しかしそこはメロディを磨き込んだことで、むしろ柴田隆浩(Vo/Gt)の力の限りの正直さと誠実さが違和感なく耳に入る仕上がりに。一方、相変わらず被害妄想一歩手前の自尊心で"スマートなんかなりたくない"と歌う怖がりの側面も健在。が、ドライヴする音像は案外スマートだったりして、音楽的進化を忍ばせるあたりがいかにも柴田隆浩である。そして「スマートなんかなりたくない」のCMエディションに柴田が思う"そんなことはスマートじゃない"が明確なので併せて聴いてほしい。このシングルがどこまで届くか? 節目になりそう。

俺よ届け

忘れらんねえよ

俺よ届け

以前のグランジ・テイストのささくれた音像にも説得力があったが、柴田隆浩、梅津拓也の新体制"忘れらんねえよ"が打ち出してきたのは、意外にもハイファイで音圧もあるストロング・スタイル。しかも1曲ごとにカラーは異なり、思い込み満載の男が、吠えるだけでなくそのままの"俺よ届け"と歌う表題曲でのタフになったヴォーカルはまっすぐ刺さる。対照的に、そんな自分を俯瞰しつつ想いを寄せる人の幸せを願う「うつくしいひと」の切なさと清々しさは新しい。また、全曲でサポート・メンバーのマシータがドラムを演奏している中でも、そのスキルが光るハイパー・ラウドで重厚な「俺の中のドラゴン」のバカバカしさも忘れらんねえよならではだ。開き直りでも逆ギレでもなく、俺全開なのに暑苦しくないバランスに見事に着地。

忘れらんねえよのこれまでと、これから。

忘れらんねえよ

忘れらんねえよのこれまでと、これから。

例えば忘れらんねえよの柴田に、クリープハイプの尾崎世界観のようなロック詩人としての才能があったら、例えばバンドにフラワーカンパニーズのような艱難辛苦を乗り越えたキャリアがあったら、それはそれで"尊敬"の対象になってしまうだろう。ドラムの酒井が脱退するバンドの節目に、新たな決意を込めたこのベスト・アルバムには、冒頭から酒井への手紙のように受け取れる「別れの歌」が淡々と、しかし熱く綴られる。他にも新曲2曲を含め、今1番新しい忘れらんねえよからスタートし『犬にしてくれ』、『あの娘のメルアド予想する』、『空を見上げても空しかねえよ』、『忘れらんねえよ』から19曲の代表曲をセレクト。バカで被害妄想で、でも誰よりあなたを笑顔にさせたい。限りなく我々の隣で戦う男たちの真実の記念碑だ。

犬にしてくれ

忘れらんねえよ

犬にしてくれ

アルバム・タイトルが発表されたとき、いわゆるR&R往年の負けの美学や危うい内容をイメージしたのだが、違った。タイトル・チューンでその意味がわかるのだが、誰のどういう状況で犬になりたいのかは、ぜひあなたの耳で確かめて欲しい。おそらく相当意表を突かれるはずだから。サウンドは「ここじゃないけどいまなんだ」で次のフェーズを示唆した通り、ささくれだったグランジが、考えても悩んでも仕方ないのに未だ卑屈になったり嫉妬に苛まれる心情にハマりすぎていて泣ける。そして作品としての完成度の高さがキャラとしての忘れらんねえよ好き以外に十分訴求する力を持ったことで、潜在的なあらゆる切実さを抱えた誰かに届く可能性を感じる。異彩を放つシンセ・ポップも1曲だけ収録されていて、その美しさも意義深い。

ばかもののすべて

忘れらんねえよ

ばかもののすべて

テレビ・ドラマを発端に"こじらせ男子バンド"としてバズを起こすなど、前作『あの娘のメルアド予想する』で再びダメな部分を吐露して以降、焦点が定まった今、投下されるのはタイトル通り、何度こけても好きなことに向かっていく"ばかもの"の歌ばかりだ。一聴、青春パンクみたいなシンプルさだが、その実、シンプルなサウンドで成立するだけのリアルな思いが詰まったタイトル・チューンや「俺達の日々」。この2曲には"世界を変えんのは優等生じゃない ばかみたいに泣いてコケにされて見下されたやつさ"という同じ歌詞が登場する意味も大きい。そして歌い始めたばかりの10代の如き柴田の声に心震える「今夜いますぐに」、殺伐と真実がせめぎ合う切実な「ここじゃないけどいまなんだ」。一塊の意志に満ちた強烈なシングル。

あの娘のメルアド予想する

忘れらんねえよ

あの娘のメルアド予想する

タイトルからして痛いし怖い。しかもこのご時世に"メルアド"である。でも、肝心なのは妄想や恋そのものじゃない。リード曲「ばかばっか」では絆ソングに涙する薄っぺらいヤツらを唾棄しながら、好きな女の子は知らない男のものであり、自分は好きでもない女で童貞を捨てる。でも自暴自棄になる理由の核心には必ず恐ろしく純粋な思いが存在することは多くの人が共感するところだろう。本音しかない言葉と研ぎ澄まされた3ピースのアンサンブルが刺さりまくる。かと思えばWiennersの玉屋2060%とMAXが参加したダンス・チューン「体内ラブ~大腸と小腸の恋~」のグルーヴ感の新鮮さも伺える。そして人気曲を収めたライヴ音源の生々しい音像、これも今の彼らの意志表明だ。

空を見上げても空しかねえよ

忘れらんねえよ

空を見上げても空しかねえよ

数々のフェス出演等、精力的なライヴ活動で、その名のごとく一度見れば忘れられない強烈な印象を残してきた3ピース・ロック・バンド、"忘れらんねえよ"の1年7ヶ月振りの2ndアルバム。1stの特徴であった柴田隆浩(Vo/Gt)の"可笑しくもやがて悲しき"個人的葛藤を歌う世界は若干影を潜め、より力強く包容力を見にまとったことにより、柴田自身の心情の変化とバンドの成長を感じさせる。先行シングル曲「この高鳴りをなんと呼ぶ」「僕らパンクロックで生きていくんだ」で聴かせたクオリティの高い粒揃いの楽曲たちをたっぷり堪能できる名盤だ。マイナビCM曲、アニメ「はじめの一歩 Rising」OPテーマ曲収録、BEAMSとのコラボ等タイアップの話題について柴田は"手段であって目的じゃない"とはいうものの、これまで応援してきたファンにとってこれらは忘れらんねえよからの回答であり、大きなプレゼントだ。

MorroW SoundS

渡會将士

MorroW SoundS

brainchild'sのフロントマンとしての活躍でもお馴染みの渡會将士のソロ4thアルバム。FoZZtoneでのキャリアのスタートから数えて20周年にあたる2024年にリリースする本作では、ロックやファンク、カントリー等幅広い音楽的レンジを背景に持つシンガー・ソングライターとして、ある種原点に立ち返った表現を聴かせる。アコースティック・ギターで作るグルーヴ、DTMメインでありながら有機的で隙間の多い音像で、ルッキズムにも通じる現代の問題意識を盛り込んだ「写真はイメージです」、夏の爽快さと陰鬱さが共存する「Daybreaker」、少年性が際立つ「Wake me up(Re-Mix)」や「タイガーリリー」等、様々な主題をばらけることなく束ねた1つの到達点だ。

写真はイメージです

渡會将士

写真はイメージです

誰もがちょっとした違和感を抱きつつも受け入れてしまっている"写真はイメージです"という注意書きをテーマに書き下ろした渡會将士のニュー・シングルが面白い。"イメージ"に支配されがちな人間の性や現代社会を皮肉を込めて描き、このタイトルの一節を様々に言い換えていくという1曲なのだが、実に独特のユーモアに溢れているのだ。軽やかに聴けるのに味わい深く、聴き手がクスッとしながらも想いを巡らせることもできるという絶妙なバランス、そして歌詞表記やMVにも渡會将士のクリエイティヴィティが発揮されているので併せて楽しんでみてほしい。20周年イヤーの幕開けにこのナンバーを堂々発表するというのも彼ならではで興味深く、渡會将士が長年シーンで愛されてきた理由が十分に伝わる1枚になっただろう。

ウォーク アンド フーズ

渡會将士

ウォーク アンド フーズ

"散歩と食べ物"というタイトルからもわかるように、渡會将士のソロ4作目となるミニ・アルバム『ウォーク アンド フーズ』は、誰もが泣き笑いしながら生きる日常の風景を飾らないままに切り取った1枚だ。特筆すべきは、これまでのソロ・ワークスでバンド時代とは異なる音楽性へと舵を切ってきたアプローチから一転、バンドとソロの区別を取っ払い、これまで培ってきた経験やスキルを全開放して作品作りに臨んだこと。結果、今作には渡會将士という稀代のソングライターが持つ先鋭的なアイディア、ルーツ・ミュージックへの愛情、ユーモアが随所に溢れている。アコースティックな手触りに乗せて自身の原風景を綴った「カントリーロードアゲイン」は秀逸。こんなソロ作品を待っていた。

PEOPLE

渡會将士

PEOPLE

FoZZtoneの活動休止以降3作目となるソロ作品。"どの曲も自分が日曜日に聴ける音楽にしたかった"と本人が語るとおり、フォーク、ソウル、ヒップホップなどを融合させたポップネス溢れる楽曲群は、すべて同じメンバーで録音をしたことも影響してか、非常にグルーヴィな作品に仕上がっている。音楽活動を存分に楽しんでいることが音にも歌詞にも表れているTrack.1、歌がリズムに特化した軽快なTrack.2など、明朗なポップ・ソングだけでなく、自主制作盤に収録していたものの再録であるTrack.5や、広大なイメージを与えるTrack.6など、アルバムが進むごとに深い音像を体感できる。夏も姿を消した秋の夜中に、明るくもどこかセンチメンタルなサウンドを、お酒片手に楽しんでみてはいかがだろうか。

東京ブルー

渡watary

東京ブルー

風味堂のピアノ・ヴォーカルを務める渡和久初のソロ・アルバム。風味堂結成10周年を機にメンバーそれぞれが自分の可能性を広げる為にと始められたという今回のソロ・プロジェクトだが、今作は渡和久の優しい歌声や音楽性の飛躍をグッと凝縮させたような充実した作品になっている。渡自身が感じた事を日記のように描いた楽曲を集めたという今作はリラックスした雰囲気を持ちながらも外へ広がるようなエネルギーも込められている。「歌い続けるのさ」という一歩一歩踏みしめていくようなナンバーではじまり、ファンキーで心躍る「Hurry up!」やしっとりと聴かせるナンバーもあり楽曲のバリエーションも豊かで聴き応えたっぷり。渡和久の歌への情熱が溢れたとてもソウルフルなアルバム。

W.Z.

ワッツーシゾンビ

W.Z.

奈良県出身のロック・バンド、ワッツーシゾンビのニュー・アルバム。再生ボタンを押した途端の大音量。そして、ヴォーカルが叫ぶ!叫ぶ!叫ぶ!のっけから熱量は最大。そして、その熱も冷めやらぬうちにTrack.3に収録されているのは電気グルーヴの名曲「N.O.」のカバーだ。最初の3曲で完全に持っていかれてしまった。ライヴで観ていたら、思わず前に突っ込んで、飛び跳ねて、モッシュして、もみくちゃになって楽しんでしまうに違いない。そんな想像がありありと頭に浮かぶ。ライヴ・アルバムではないのだが、まるでライヴをそのまま切り取ったかのような今作。これを聴いたら大人しくなどしていられない。部屋でヘッドフォンをかけて楽しむのも良いけれど、ロック好き仲間を集めてDJパーティーなんていかがだろうか。

The Singularity is Near

ヲドルマヨナカ

The Singularity is Near

この原稿を書くに当たって本作のインストア・ライヴを観に行ったのだが、狭いステージで15人がきれいなフォーメーションを組み、歌い踊る姿には感動したし、各々の個性弾けるステージは目移りするほどで見応え十分。"Funny Dance Rock"と名付けられたキャッチーでノリのいい楽曲たちは自然と身体が踊り出す軽快さがあり、短時間ながら満足度の高いライヴだった。その後改めて聴いた本作は、「故に僕は望む」や「高く跳べ」といった躍動感ある曲がライヴを想起させ、「ノア」や「改心テンプテーション」はギター・ロックを土台とした楽曲のカッコ良さを再確認させ、「クラン」や「フェアリーダンス」は型にハマらない魅力を感じさせ、より彼女らを深く知ることができた。音源とライヴを併せて楽しんで、ヲドルマヨナカにどっぷりハマってほしい。