DISC REVIEW
ハ
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フラスコテーション
呼吸の景色
年間100本以上ものライヴを重ねる神戸の若手バンド フラスコテーションが、結成4年目にして1stアルバムをついにリリースする。新曲+過去曲の再録の全15曲からなる、約1時間のフル・ボリュームの本作。新曲は、佐藤摩実(Vo/Gt)の性格や意志がより表れるようになり、今まで以上に聴き手の感情に訴え掛けるものになっているし、過去作から今聴いてほしいものや思い入れの強いものを厳選したという楽曲たちは、バンドの世界観を強めている。さらには、佐藤以外の3人のメンバーがそれぞれ手掛けたナンバーも収録と、初アルバムにしてバンドの成長と今できる最大限をこれでもかとアピールする、気合充分の15曲が揃った。そんな前のめりな意気込みが表現された、こだわりのジャケ写にも注目してほしい。
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フラスコテーション
人の為の愛、人の憂いに謳う
2017年に神戸で結成されてから、ぐんぐんと頭角を現している男女混成4ピース。このたびリリースされた3rd EPには、ソングライティングも手掛ける佐藤摩実(Vo/Gt)のポエティックな世界観と、それをポップに昇華するメンバーの技量を知らしめる3曲を収録している。特に「泣いてしまえば」は、"月"と"太陽"、"夜"と"朝"という対照的な言葉を配置し、さらに"光"という言葉を散りばめることによって1曲に芯を通し、誰もが感じられるような歌詞に仕上げている。かと思えば、"ゴミ捨て場"、"グチャグチャ"、"うるさいな"などの激しい言葉が並ぶ(でも聴き心地は爽やかな)「spark」もあり。これから、どんなバンドになっていくのか? 楽しみになる。(高橋 美穂)
前作から約1年ぶりのリリースとなる、神戸の4人組 フラスコテーションの3rd EP。タイトルの"人の為の愛、人の憂いに謳う"は、人の為と書いて"偽"と読み、人の憂いと書いて"優"と読む、という組み合わせで意味が様変わりする漢字に、人の心情の複雑さを重ねているようなところが面白い。それぞれ色の違うエモーショナルなギター・ロック・ナンバーを3曲収録した今作には、爽やかさの中にどこか憂いや寂しさのようなものが漂っているように思えるが、そこには強く生きようという確かな意志や、闇を照らすような光を感じることができる。突き抜けるようなギターの音、佐藤摩実(Vo/Gt)の澄んだ歌声はもちろん、輪郭のはっきりとした存在感のあるベースと、タイトなリズムがエモいドラムのサウンドも聴きどころだ。
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フラスコテーション
儚心劇化
兵庫県在住、"音楽を科学する"男女混合3ピース・ロック・バンドによる4曲入り1st EP。"人の夢や心は劇と化す"という意味を込めた造語をタイトルに冠し、現役女子高生、佐藤摩実(Vo/Gt)が透明感のある切実な歌声で、今抱える苛立ちや葛藤を放つ。作品の幕開けを飾る「vivid」で最初に聴こえてくる声は、歌ではなく語り。そして今作収録曲の主人公たちが抱える苦悩は、外への怒りというより内省的なものが多い。"尖っていたい"自分と、相反する"うまくやっていきたい"自分との乖離に基づくジレンマが、10代という敏感な年齢の視点で描かれているのだ。活動開始からまだ1年も経っていないという彼女たちの、今はただ勢いのまま鳴らしていたいという初期衝動が横溢している。
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フラワーカンパニーズ
36.2℃
屈指のライヴ・バンドがライヴできない1年。でも、フラカンはいつでも準備はOK、体調万全、平熱の36.2℃ってことだと思う。ローファイなサウンドスケープが今年できた曲の録りたて感を増幅するし、相変わらず鈴木圭介(Vo)の言葉は経験に則ったうえで青さもまだあったりで冴えまくり。強いグルーヴと生々しいギター、思いの外明るい「揺れる火」のオープニングに驚き、生楽器だけで浮遊感を醸し出す「こちら東京」の超越したセンスに驚き、すでに名曲の誉れ高い「履歴書」は、実は最後の"誰かを好きになれたら"のくだりこそ最高だと震え、LED ZEPPELIN的なサイケが今のニュアンスで昇華された「A-HA-HA」にまた驚いたり。コロナ禍を言い訳にしてる場合じゃない。その程度なのかと問われてる気がする。
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フラワーカンパニーズ
50×4
メンバーが全員50歳を迎える今年。彼らが鳴らすのはフラットなスタンスが現れた比較的ドライなサウンドのロックンロールやカントリー/ブルースだった。アフロビートな「Eeyo」のサウンドに現役感を見つけ歓喜し、続く「DIE OR JUMP」で竹安堅一のハード・ドライヴィンなギターとマンチェ・ビート(どちらかというとTHE ROLLING STONES由来かも)のセンスにニヤニヤ、臆面もなく"ロックンロールバンド"と題した曲の60年代R&R的なスウィートさに半泣きになり、今感じていることに向き合い続ける孤独のアンセム「いましか」に泣き、風通しのいいカントリー風の「見晴らしのいい場所」で深呼吸。ヘヴィな作品並みの深度がありつつ印象は軽快。フラカンは未だ変化の途上にいる。
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フラワーカンパニーズ
夢のおかわり
Track.6「Good Morning This New World」において、その陽気なマーチング・バンド風のサウンドと裏腹に歌われるのは、"楽しい未来の事しか考えない"、しかし"貧しい未来の事しか考えられない"という、決して楽観視できない"今"の姿。だが、続くラスト・トラック「無敵の人」で"頑張ってる人は それだけで未来だ"――つまり、未来を作り生きるために"頑張れ!"と、重くストレートな次世代へのエールを送る現在のフラカンは、26年というキャリアに溺れることなく、受け継がれてきたもの、そして受け継ぐべきものを見据えている。過去から今、そして未来へ――この大いなる時の流れを見つめる眼差しは、実は誰よりも貪欲に未来を求め、夢をおかわりし続けてきたフラカンだからこそ持ち得たものであることは間違いない。
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フラワーカンパニーズ
Stayin' Alive
結成25周年イヤーの中で作られた、15枚目のフル・アルバム。一聴すると、ここ数作――特に震災を挟んで制作された前作『ハッピーエンド』が持っていたヘヴィネスやメランコリーは鳴りを潜めた、軽やかでストレートなフラカンが鳴っている。しかし、この軽やかさの裏には、重たく、そして複雑に絡み合った生と死を巡る問答が隠されているのだと、聴き込むほどに感じずにはいられない。ロックンロール、オペラ・ロック、パンク、フォーク・ロック、60年代ポップスなど、曲ごとに様々な音楽性を横断する雑多なサウンドは、それ自体がまるで喜びも悲しみも、孤独も希望も絶望も内包する僕らの人生そのもの。ロックンロールとはひとつの死生観であることを証明する、フラカンにしか作り得ない怪物アルバム。
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フラワーカンパニーズ
新・フラカン入門(2008-2013)
"明日"を歌うことが困難な時代である。誰かに踊らされ、階段を上らされた先が楽園とは限らない。そもそも、ずっと続くと思っていた日常にすら終わりが来てしまう可能性を見せつけられた私たちに、描ける"明日"はあるのか?――そんな疑問符が頭を過ぎる時、フラワーカンパニーズの音楽はひとつの大きな指針になる。2008年のメジャー復帰から現在までの代表曲を集めたベスト盤『新・フラカン入門』。ここには、どれだけ絶望に打ちひしがれる夜があっても、どれだけ先の見えない暗闇が目の前に広がろうと、または、どれだけ明日なんか来てほしくないと願っても、夜は明けて朝は来るのだという確信が刻まれている。多くの"昨日"と"明日"を経験してきたバンドだからこその圧倒的なリアリティと説得力が宿った、15曲の未来。
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フラワーカンパニーズ
夜空の太陽
結成から24年、今、フラカンの放つ音楽とメッセージは完全に時代と合致している。2013年の日本がフラカンを求めていると言ってもいいだろう。だからこそ、朝の情報番組で「深夜高速」を演奏することも、タイアップ・ソングが連続してシングル・リリースされることも、必然と言える。新曲「夜空の太陽」は、アニメ『宇宙兄弟』のEDテーマだ。1月にリリースされた前シングル曲「ビューティフル・ドリーマー」がそうであったように、この曲においてもフラカンは"夢"を歌っている。"夢の始まりはきっと 涙がたどりついたところ"、と。本来、若いバンドが口にしそうなこの言葉を苦節20年以上のバンドが歌う。この説得力こそ、今の私たちに必要なものだ。本気で夢や未来を語るために、僕らがフラカンから学ぶことは多い。
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フラワーカンパニーズ
@WWW 2013.1.23 Premium Live "Beautiful Dreamer"
フラワーカンパニーズの15枚目となるニュー・アルバムは、1月に行なったプレミアム・ライヴの模様を収録した実に贅沢な1枚。20年以上の長いバンド活動歴にして初めて、ストリングスや鍵盤、女性ヴォーカルを入れてリアレンジして披露したライヴは、豊かな音色が新鮮でありつつ、それでもやっぱりフラカンはフラカンなのはさすがだ。エネルギッシュで骨太で肉厚なサウンドに、ハスキーな鈴木圭介(Vo)の歌声は、20年以上かけて築いてきたバンドの生き様がひしひし伝わってきくる。シンプルかつ新鮮さに溢れた最新シングル「ビューティフルドリーマー」は哀愁が漂い、名曲「深夜高速」は、ピアノを軸に繊細な音が美しく重なり心の琴線にふれる。ベテランだからなし得る生命力に満ちた音の力を、ぜひ聴いて感じてみて欲しい。
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フラワーカンパニーズ
ビューティフルドリーマー
フラカンの今年1発目の音源は、TV東京系ドラマ24"まほろ駅前番外地"のオープニング・テーマ曲を表題曲に置いたシングル。アルバム『ハッピーエンド』で見せた混乱や苦悩の尾を引くように、ゆったりとしたビートで淡々と進む「ビューティフルドリーマー」は、まるで何の解決も見出せないまま続く私たちの日常のように不穏な空気を漂わせるが、だからと言って安易な妄想や幻想に惑わされないようにと、ダイナミックなサビと力強いコーラスが小さくても確かな希望を響かせる。フラカンだからこそ鳴らすことのできる、地に足の着いた日々のためのメッセージ・ソングだ。そしてカップリングの「心の氷」、「この胸の中だけ」のサ上とロ吉によるリミックスも素晴らしい。ここから始まるフラカンの2013年が楽しみだ。
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フリージアン
FREESIAN
神戸発の4ピース・バンド、フリージアンの初のフル・アルバム。最新曲はもちろん、前身バンド時代やそれ以前から温めてきた曲も収録。セルフタイトルに相応しい、メンバー4人の音楽人生が凝縮された作品となった。カントリーの匂いを纏いながら疾走するオープニングの「イエスタデイワンスモア」から、みんなで歌いたくなるメロディと抜群に気持ちの良いヴォーカルというこのバンドの魅力をダイレクトに堪能できるだろう。ガンガン前に出てくるギターも、独特な軌道を描くベース&コーラスのラインも、楽曲の魅力を加速させるドラムもとにかく爽快&痛快で、12曲があっという間。豊富な楽曲バリエーションから、"メンバー全員セカンド(サード)キャリア"だからこその深みも感じられる。
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フリージアン
ウィンターランド
関西のライヴハウス・シーンを中心に注目を集めるバンド フリージアンが、初のクリスマス・ソングを誕生させた。聖夜の煌びやかな情景を描き出すような壮大なアレンジは影を潜め、あくまでマエダカズシの歌を中心に据えるかたちで練られたサウンドメイクが潔い。"サブスクでギター・ソロが飛ばされる時代"に抗うように大サビ前で轟くエッジーなギター・サウンドには、彼らが数々のステージで放ってきたとびきりの熱量と勇敢さが滲む。表題曲では"光の差す場所"、カップリング曲「ムーンパレス」では"光は射して"と共通して"光"という単語が登場。何より"希望"に目を向けポジティヴに歌う、求心力に長けたバンドなのだろう。寒い冬は続くが、ド直球な歌声とバンド・サウンドが聴く者の鼓動を加速させ、身体の芯まで温めてくれそうだ。
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古川本舗
Hail against the barn door
バンド・メンバーと共同で作り上げた古川本舗4枚目のアルバムは、彼が長年籠っていた自身の殻、その扉(=barn door)を叩き破り、リスナーと彼自身をまだ見ぬ世界へと連れ出すための雹(=Hail)となる作品。ヴォーカリストには3rdアルバムを共同制作したキクチリョウタ、ちびた、そして古川本人が起用されている。切々と染み込むミディアム・ナンバーには演者の息遣いを感じるほどの体温があり、それは心そのもののように揺らめきを持つ。彼は物語とパーソナルを巧みに操る表現者だが、そのふたつの境目がより淡くなり、よりフラットな彼の世界に触れているような感覚になる。浮遊と沈没。切なさと心地よさ。幸福と哀愁。彼は相反する感情や情景を混在させ、美しく描き、我々の感情を揺さぶる。
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奮酉
エモーション-モーション
ふたりにしかできない、ふたりでしかできない音楽を自由奔放に追求する2ピース・ツイン・ヴォーカル・バンド、奮酉による1年ぶりのEP。1st EPの時点で彼女たちのユニークさは際立っていたが、さらにひと皮剥けた印象があるのは、前作からの1年、成長を含む様々な変化があったからだろう。オルタナ調のギター・ロックから、ゆるラップまで、ファンキーだったり、アーバンだったりする曲の多彩さは前作同様だが、演奏、歌詞共に生々しさがより剥き出しになったところが大きな聴きどころだ。レコーディング、サウンド・プロデュースを益子 樹(ROVO/Syn)が担当。彼との出会いも大きかったという。サウンドの面白さもさることながら、何よりも歌としてぐっと胸に響くようになったところがいい。
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フレデリック
フレデリズム3
前作から約3年ぶりのフル・アルバム。和田アキ子への提供楽曲「YONA YONA DANCE」のセルフ・カバーや、須田景凪との共作「ANSWER」をはじめ、電子ドラムを導入した実験色の強い「Wake Me Up」、三原康司(Ba)がヴォーカルを務めた「YOU RAY」、昨年2021年の日本武道館公演で初披露された「名悪役」など、バラエティに富んだ全14曲が並ぶ。驚くのはこれだけジャンルレスな楽曲群をフレデリックのサウンドとして昇華させている点だ。これまでファンク、ディスコ、モータウンなど様々なダンス・ミュージックの形を、記名性の高いサウンドとフレーズをもって提示してきた彼ら。本作は、フレデリックがデビュー当時から標榜してきたそんな"フレデリズム"の堂々たる総決算と言える。
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フレデリック
ASOVIVA
今なお多くの制約を強いるコロナウイルスは、かえってフレデリックの闘争心に火を点けたのかもしれない。いち早くリモート制作の体制を整え、従来の音楽性を踏襲しながらもEDMに突き抜けた「されどBGM」を7月に先行配信。次いで、得意とする緻密な音遊びが光る「Wake Me Up」、ファンキーな中にポリティカルな主張も連想させる「正偽」、青春も熱狂も失ってしまった今夏に対して歌う「SENTIMENTAL SUMMER」の計4つの新曲をリモートで制作。そこには変わらず、むしろ凄みを増して滾る人間臭さがあり、且つそれらをまるっと包んでしまえるポップネスな力もある。どんな状況下でも、我らが"遊び場"を取り戻す日まで、音を鳴らすことをやめない。今作はそんな決意表明だ。
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フレデリック
飄々とエモーション
前作『TOGENKYO』のリリースから、海外公演、初のアリーナ公演を経て、バンド史上最もエモーショナルな作品が産み落とされた。前作で彼らの"桃源郷"は完成したかのように思えたが、疾走感溢れる表題曲は、それではまだ足りず、"僕のさいはて"にリスナーを連れていきたいという貪欲なアリーナ・ロック。またライヴで披露されていた新曲「シンセンス」、三原健司(Vo/Gt)、康司(Ba)兄弟の妖艶な歌声が絶妙に溶け合う「NEON PICNIC」に加え、誰もが知っているCMソングを"フレデリック・サウンド"にリメイクした「シントウメイ」を収録。さらに、彼らの分岐点と言えるアリーナ公演の熱気、興奮を閉じ込めたライヴ音源も必聴だ。フレデリック第2章の幕開けに、聴けばきっと踊り出してしまうだろう。
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フレデリック
フレデリズム
"踊る世界平和"----それぐらいフレデリックの踊るビートに対する真摯さは曲や歌詞に表れる。フックのある一見ネガティヴなワードを肯定的にひっくり返すオセロ的リリックに決意を込めた「オンリーワンダー」を皮切りに、四つ打ち以外にも力技のハイパー・ブラック・コンテンポラリーと呼べそうなグルーヴにチャレンジした「KITAKU BEATS」や「CYNICALTURE」。グッとBPMを落としたサンバ・テイストの「サービスナーバス」やサイコビリーな「バジルの宴」など、音楽ジャンルもリリックも情報量は過積載気味。だが、それが消化不良を起こさないのはフレデリックのメンタリティがある種、清潔ですらあるからじゃないだろうか。"戦わない戦い方を僕たちは知ってるはず"と歌うラスト・ナンバーの真剣さに、明らかに次のステージが見えた。
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フレデリック
オンリーワンダー
メジャー・デビュー盤収録の「オドループ」で独特のビートと中毒性たっぷりのメロディと、ユーモアある言葉遊びでフレデリック・サウンドを確立。そしてそのサウンドを、新作を以って、アップデート。改めて"名刺代わりの1枚"と言えるフレデリック初のシングル作が届いた。"みんなちがってみんな優勝"、"オンリーワンなんだ"と、頑張る人を認めてくれるようなメッセージと三原健司のエモーショナルな歌声が背中を後押ししてくれる表題曲。さらに、CD化されていなかったライヴの定番曲「プロレスごっこのフラフープ」もようやく収録。そして、緩やかなビートを刻む「みつめるみつあみ」では、憂いを帯びたグルーヴでフレデリックの裏の顔も覗かせる。もしかしたら今作にはフレデリック"三種の神器"が揃っているのかもしれない。
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フレデリック
OTOTUNE
ドラマー脱退後の3人体制初となる作品は過去最高にバンドが裸だと思う。フレデリックの音源と言えばユーモアのかたまりともいうべき様々なギミックとリフレインによって中毒性を生み、リスナーを奇妙な世界へと誘うような楽曲が多かった。だが今作は歌謡曲テイストのメロディと80sライクなシンセ・ポップが融合し、カラフルなセンチメントが終始美しく花開く。そこに乗る言葉は"会いに行くよ""君と涙コミュニケーション""ハローグッバイ""だから本心に触って"など、聴き手へまっすぐ語りかけるものばかりだ。コーラス・ワークもシンボリックなミディアム・ナンバー「USO」は三原健司のヴォーカルにも含みがあり、新たな魅力が輝く。洗練された音楽性と物悲しさの作る余韻が、心を捕まえて離さない。
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フレデリック
OWARASE NIGHT
フレデリックは斜めだな、と思う。斜に構えているという意味ではなく、ものすごいカーブを描いて、むしろ途中で消えたり止まったり彷徨ったりして最終的にど真ん中に入るような、抜群かつ不可思議なコントロール・センスを持つ。それが彼らにとってのストレートなのだ。メジャー・デビュー盤『oddloop』から約7ヶ月振りの新作、テーマは"終わり"と"はじまり"。進み出すために作られた作品とのことだ。リフレインする歌詞が彼らを語るうえで欠かせない"中毒性"の要素のひとつだが、今作は言葉にとても深い意味が感じられ、その奥を追求したくなる。へんてこでありながら伸びやかで陰のあるポップなサウンド、じっくりタメを用い歌い上げるヴォーカルも効果的。最後まで煙に巻かれ翻弄される感覚すらも愉快だ。
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フレデリック
oddloop
回文のような三原康司(Ba/Cho)の書く歌詞は相変わらずメロディと同時に降りてくるのだろうし、それを歌う双子の健司(Vo/Gt)の中性的でわずかに粘着する声と歌いまわしの高度さが耳に残りまくる2ndミニ・アルバムにしてメジャー・デビュー盤。前作ではいわゆるダンス・ロック的なトレンドとは一線を画す楽曲を提示したフレデリックだが、今回はタイトル・チューン「オドループ」で彼らならではの"踊れる音楽"の更新版を回答した印象。さらにいえば去年のDAFT PUNK以降のディスコ・ファンク的な潮流に対しても、勝手に"これがひとつのジャパン・オリジナルです"と紹介したくなる(本人たちには迷惑かもしれないが)。ジャンルの背景より、物理的な面白さを直感で捉え表現できるセンスは学習だけじゃ得られない。怪作にして快作。
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フレデリック
うちゅうにむちゅう
なんだ、このあまりに不可思議なポップは。神戸発、双子の兄弟が中心となって結成された4ピース・バンドによる、初の全国流通盤。ジャズやヒップホップ、ファンクなどを消化したしっかりとした肉体的かつ骨太なグルーヴ感がありつつも、曲全体の印象は、まるで海底に棲む謎の軟体生物。この謎の存在感を決定づけているのは、脱臼しつつもポップなフックを外さないメロディと歌声、そして強いメッセージ性を秘めながらもそれを感じさせないシュールでナンセンスな歌詞だ。なんと言うか、70年代のノーウェーヴ・バンドが、90年代USインディーと関西ゼロ世代を主食にして、おやつにJ-POPまでいただいちゃったような感じ。ほんと不思議で唐突なアウトサイダー・ポップ。本作のプロデュースは現Polaris、元FISHMANSの柏原譲。間違いなく、大器だと思う。
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フレンズ
SOLAR
フレンズの新体制初アルバム『SOLAR』。タイトルどおり、なかなか気分が晴れ渡らない日々を明るく照らす"太陽"のような本作。多数のタイアップ曲に加え、新境地を見せるメロウで心地よいリード曲「東京今夜」、ロックなサウンドとエッジの効いた歌声が刺さる「海のSHE」、音楽を心から楽しむ姿が目に浮かぶカントリー調の1曲「元気D.C.T~No at all~」、夏への期待感の中に切なさが混じるメロディが胸を締めつける「8月31日の行方」など、楽曲ごとにまったく異なる表情を見せる。さらに、"Special Rare Track"として、アコースティック・アレンジ・バージョンの「NIGHT TOWN(神泉Ver.)」も収録された、聴きごたえ十分なアルバムに仕上がった。
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フレンズ
あくびをすれば
フレンズが5周イヤーの最初に届けるシングルは、国民的なTVアニメ"ハクション大魔王2020"のエンディング・テーマのために書き下ろした曲。派手なディスコでも洒落たスムースなヒップポップでも、何をやってもどんなときでも、聴く者のライフを明るく照らすようなフレンズ節はさすが。そのなかで今回は、キャリア中最もシンプルでオーセンティックなバンド・サウンドとなった。カントリー調で足取りの軽いビートに、えみそん(Vo)がアニメ内のキャラクター アクビちゃんの立場から書いた前向きな言葉が乗った、夏にかけてのナイス・アンセムだ。カップリングにはさらにほのぼのしたアレンジの効いたバージョンを収録。東京ドームの夢に向かう重要な局面で、引き算で攻めてきたフレンズの今後から目が離せない。
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フレンズ
HEARTS GIRL
東京ドーム公演を目標に掲げるフレンズの2ndプチ・アルバム。サブスクリプションの再生回数時代と逆行した、90年代のヒット・チャートを思わせる、これまでのフレンズにはなかった6分間のビッグなバラード「12月のブルー」、三浦太郎(Gt)が作曲を手掛け、ビートに幅のある低音を効かせた現代的なアレンジに、ひろせひろせ(MC/Key)がトラップ調のラップを披露し、関口 塁(Dr)がリード・ヴォーカルをとる「0:25」など、タイトルを"HEARTS GIRL=発芽"としたのも納得だ。各メンバーの個性を生かし切った新たなチャレンジが、持ち前のポップな輝きを次なる次元に押し上げた全6曲となっている。その光が東京ドームにまで届く日は、そう遠くないのかもしれない。
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フレンズ
楽しもう/iをyou
フレンズ初のシングル(会場限定盤を除く)が到着した。モータウン調の「楽しもう」は、篠原涼子主演映画"今日も嫌がらせ弁当"の主題歌。母から娘への独特で不変の愛情を描く物語に寄り添う、心温まる曲になった。また、「iをyou」はドラマ"きのう何食べた?"のEDテーマ。こちらは結成直後のシティ・ポップのムードも感じさせる、憂いを帯びたミドル・チューンだ。おかもとえみ(Vo)、ひろせひろせ(MC/Key)がニッポン放送の大ファンであることから担当した"ラジオパーク in 日比谷 2019"のテーマ「おいでよラジオパーク~どっちかならYES!~」は、アニメ・キャラのようなひろせの歌声も人懐っこく、子供も一緒に歌えそう。幅広いサウンドでバンドの間口の広さをアピールする1枚。
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フレンズ
コン・パーチ!
"コンパチ"。それは相撲用語で、髷を結えるようになった力士が挨拶回りをする習慣のこと。シティ・ポップやスウィートなダンス・ナンバーなども提示してきた彼らの初フル・アルバムは、気持ちいいくらいキャッチーに振り切った1枚だ。ハロー!プロジェクト所属アーティストなどを手掛けるアレンジャー、大久保 薫を編曲に迎えた「常夏ヴァカンス」、遊び心溢れる賑やかな台詞が多幸感を煽るhummelタイアップ・ソング「Hello New Me!」など、Voふたりのみならず、三浦太郎(Gt)のハイトーンも随所に冴えわたりいいアクセントになっている。ライヴハウスでその名を轟かせ自分たちのポップスを手に入れた彼らは、平成最後の夏にハッピーなフレンズ旋風を巻き起こし、全国のフェス、そしてお茶の間まで挨拶して回る気だ。
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フレンズ
ベッドサイドミュージックep
夜のわくわくをきらきらと描くフレンズの始まりの歌。ライヴではよく披露されており、この曲が作り出すときめきにうっとりする人続出の定番曲が、即完売したデモ音源のリテイクでついにリリース。長島涼平による、マイルドながらも、ここからだというしっかりとした想いのこもった冒頭のベースが印象的。そして、ひろせひろせが優しい声で、華やかな都会の夜に置いてけぼりになったような寂しさを、対しておかもとえみが強く伸びやかな美声で、そんな夜に負けまいとかすかな光を追うはやる気持ちを歌い、バンドがそれらをひたすらピュアに彩る。おかもとソロ時の楽曲をひろせがアレンジした「喧噪」、DJ松永(Creepy Nuts)が00年代日本語ラップ風にリミックスした「夜にダンス」も面白い。
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フーバーオーバー
夜明けの晩
ファン待望の6枚目となるフル・アルバム。今作にはレトロな雰囲気も漂うポップなサウンドと、キュートで言葉遊びのように軽やかな岩沢正美(Vo/Gt)の心地よいヴォーカルとメロディが存分に詰まっている。どこか一筋縄ではいかない独特なソング・ライティングなのに王道な展開も十分に楽しめる、なんとも不思議な世界感に病みつきになることだろう。収録曲も「北緯38度」の物憂げな心情を表現した曲や「カレンダー」のように疾走感に溢れた曲などヴァリエーション豊富。あっという間に作品を聴き終えてしまうアレンジは流石といえるし、どこかポップでロック= POP’N ROCKバンド、フーバーオーバーの集大成のような高みすら垣間見えた気がした。彼らの音楽と出会う最高のキッカケを約束してくれる名盤。
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ブランデー戦記
悪夢のような1週間
2022年結成、大阪発の3ピース・バンド ブランデー戦記。2nd EPとなる本作は、バンドの魅力を色濃く醸し出すと同時に、早耳の音楽リスナーから注目を集めている彼らの現在地を表した。ザラつきのあるノイジーな音像で構成された「Coming-of-age Story」では、情報社会における無味な拡散、無数の評価が付き纏う匿名社会の素性を覗かせる。リズミカルなカッティングやスラップ・ベースが80年代の歌謡曲を彷彿とさせる「悪夢のような」、彼らのブレない歩調を思わせる「Twin Ray」など、憧れを詰め込む一方、冷静にバンドの現状を見つめた本作。「ストックホルムの箱」に内包された愚かさは、祈りを込めた告白へと姿形を変え、その純粋さが輝きを放っている。
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ブランデー戦記
人類滅亡ワンダーランド
2022年8月結成の3ピース・バンド、ブランデー戦記。初のミュージック・ビデオ「Musica」が300万回再生を突破するなど話題のルーキーが、1st EPをリリース。同曲で一気に注目を集め期待値が高まるなか、その期待を優に超えてくる本作で、すでに確立されたバンドの個性と確かな将来性を見せつけた。TikTokなど若い世代の間で昭和の名曲がリバイバル・ヒットするなか、そんな昭和歌謡ブームとも共鳴する歌謡曲テイストなメロディが粗削りなロック・サウンドの上に乗り、懐かしさと新しさが共存する絶妙な空気感を醸す。J-POPの中にフォークのエッセンスを感じさせるあいみょんの楽曲が若者から親世代までの心を掴んだように、ブランデー戦記の哀愁漂うサウンドもきっと全世代に刺さるはず。
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プピリットパロ
パロイズムチルドレン
2010年に結成されたTheチーズから改名を経て活動する3人編成の男女ツイン・ヴォーカル・バンドの2ndミニ・アルバム。強烈なギター・リフで疾走する「B」、牧歌的なフォーク・ソング「キッズリターンマーチ」やダンサブルな「ドランクモンキー」、最後はメランコリックなポップ・ロック「ふたりきりの世界」でグッと感動的にアルバムを締めくくるなど、ツイン・ヴォーカルとキャッチーなメロディ、多彩なアレンジで最初から最後まで様々な表現力を持った楽曲たちで楽しませてくれる。そしてなんといっても"DB芸人"とコラボしたMVも話題の「サバイバルエリート」がアルバムの目玉。思わず"ファイナルフラッシュ!"と声を出したくなること間違いなし。これが"踊り狂い化けロック!名付けて「パロイズム!」"。
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プププランド
Wake Up & The Light My Fire
爽快なR&Rサウンドの上で"Don't stop music!"と繰り返す青春感たっぷりの「MUSIC」で幕を開けるこの2ndフル・アルバム。フォーク、カントリーをベースに時々ガレージ感を弾けさせつつ、グッド・メロディに甘酸っぱい歌を乗せるというプププランド節は1ミリもブレず、自分たちの愛する音楽をなんのてらいもなく純粋に鳴らしているのがわかる。THE BEACH BOYS的な作風と昭和歌謡ばりの歌がたまらない懐かしさを呼ぶ「太陽」、田中隆之介(Ba)がリード・ヴォーカルを取った渋みのある「東京トワイライト」、ここまでの力の抜けたテンションを一蹴するかのように攻めるラストの表題曲など、個性的な楽曲が目白押し。西村竜哉(Vo/Gt)描き下ろしによる、THE BEATLESの『Revolver』を彷彿させる味わい深いジャケットにも注目したい。
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プププランド
BYE!BYE!BYE!
現在、関西の音楽シーンで最も注目すべき新人といっても過言ではない神戸出身の4人組"プププランド"。キュウソネコカミを輩出したことでも知られる"EXXENTRIC RECORDS"からリリースされる、初の全国流通盤『BYE!BYE!BYE!』は期待を遥かに超えるとんでもないアルバムではないだろうか。油断していると夕飯の匂いがしてきそうなほどノスタルジックで人懐っこいのに、どこか神戸特有の"ハイソ"感が彼らの音楽にはある。OASISやスピッツを彷彿させるコード感やメロディ、サウンド的にはandymoriに通じるものがあるのだが、それだけに終始しない力強いバンドの地力があるように思う。奇をてらわず、ひたすらグッド・メロディで勝負する心意気が素晴らしい。
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プラグラムハッチ
CITY WAVE
5年間の活動休止期間を経て、"CITY POP×NEW WAVE"というコンセプトを掲げてカムバックしたプラグラムハッチによる再始動後初のアルバム『CITY WAVE』。洒脱でロマンチックな「青山Dancing物語」や、美麗なコーラスが感傷性を高める「Goodbye Rainy Bay」、虚無感に包まれた「ジオラマ都市」をはじめ、コンセプトから連想される洗練されたポップスという印象はありつつも、その奥底では、人間が音を鳴らすというエモーショナルな部分が強く渦巻いている。また様々なオマージュを入れながらも、"令和の80s"、"2080年のサウンド"と謳っている通り、決して懐古趣味的なものではない、今のバンドのモードを感じ取れる1枚。
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プラグラムハッチ
YUCARI
結成10周年を記念してリリースされる初のフル・アルバム。とはいえ決して集大成的なテンションではなく、既存曲(再録)+未発表の新曲という内容でバンドの"今"を強調している印象だ。歌謡曲、ディスコ・パンク、ニュー・ウェイヴなど様々なジャンルが混ざったサウンド、独特なこぶしの効いた相澤瞬(Vo/Gt)の歌、言葉遊びの面白い歌詞など、一筋縄ではいかない要素ももちろん彼らの大きな特徴のひとつ。しかし、自分の内側を曝すこ とによって、あなたが今抱く感情や目前に広がる景色を全肯定する強さを見逃さないで欲しい。そのまっすぐさこそが、"ヘンテコ"の皮を被ったバンドの本質であろう。それを鮮やかに暴きながら、じっくりと起承転結を描く全12曲の流れが素晴らしい。
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プラグラムハッチ
感受色ドロップス
SEKAI NO OWARI、スネオヘアー、パスピエら様々なアーティストと共演を果たし、注目を集める紅一点4ピース、プラグラムハッチの1stミニ・アルバム。収録されている6曲ともに、レトロな雰囲気漂う懐かしいメロディが昭和の歌謡曲を思わせる。しかし古臭さを感じないのは、リヴァーブの効いたギター・サウンドにノスタルジックなキーボードの音色、メロディアスなベースと多彩なドラムが今時のポップさを醸しているからだろう。また、相澤 瞬(Vo/Gt)の芯が太く中性的な歌声も変声期前の少年のようで印象的。コミカルなMVで話題を呼んだリード・トラック「涙のレイテンシ」から、センチメンタルなラスト・ナンバー「君にうつつ」まで、彼らの世界観にどっぷり浸かってしまう1枚。
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プリメケロン
アイソーマイビー
北海道札幌を中心に活動中の3ピース・ピアノ・ロック・バンド、プリメケロンがリリースする初の全国流通盤。独特のコブシの効いた阿部さとみ(Vo/Key)の力強い歌声と、どこか捻くれているがカラフルなサウンドによるアンサンブルは、あたたかくて人懐こい。恋にときめく女性が勇気を振り絞る瞬間をコミカルに描いたTrack.1「かかと先生!」を始めとした全8曲は、ひとりの女性の人生を時系列で追いかけるようなストーリーになっていて、バンドの根幹にある"聴いてくれる方の渡世をお手伝いします"というスタンスがよく表れている。喜びや楽しさだけでなく、生活の中の悲しみや怒りをも音楽に変えていくんだという、彼らならではのミュージシャン・シップが打ち出された作品だ。
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