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DISC REVIEW

うたうように、ほがらかに

詩羽

うたうように、ほがらかに

水曜日のカンパネラの2代目主演/歌唱担当 詩羽がソロ名義で初のアルバムをリリース。水カンとは一味違う、詩羽の感情がギュッと濃縮された本作は、毒々しさとキュートさが混同する色とりどりなポップネスが全8曲それぞれで発揮される。自身が手掛けたという歌詞では、皮肉めいた独特なフレーズをちりばめたり、画一的な解釈を避けるように表現の幅を利かせたりと、アップテンポで明るいサウンドとは対象的に、白黒付けたがる世の中への疑問が潜む。ソロ・プロジェクト始動の意思と呼応する力強さや、丸みを帯びた優しさが聴こえる自己紹介的アルバムでありながら、要所に仕込まれたポップ且つロックな淡い毒にハッとさせられる1枚。

悪夢のような1週間

ブランデー戦記

悪夢のような1週間

2022年結成、大阪発の3ピース・バンド ブランデー戦記。2nd EPとなる本作は、バンドの魅力を色濃く醸し出すと同時に、早耳の音楽リスナーから注目を集めている彼らの現在地を表した。ザラつきのあるノイジーな音像で構成された「Coming-of-age Story」では、情報社会における無味な拡散、無数の評価が付き纏う匿名社会の素性を覗かせる。リズミカルなカッティングやスラップ・ベースが80年代の歌謡曲を彷彿とさせる「悪夢のような」、彼らのブレない歩調を思わせる「Twin Ray」など、憧れを詰め込む一方、冷静にバンドの現状を見つめた本作。「ストックホルムの箱」に内包された愚かさは、祈りを込めた告白へと姿形を変え、その純粋さが輝きを放っている。

ふたりでいたい。

なきごと

ふたりでいたい。

東京発2人組ロック・バンド なきごとが、約1年半ぶりとなるフル・アルバム『ふたりでいたい。』をリリースした。本作には、オープニングを飾る激しいロック・チューン「sniper」、揺れる心情を透明感のある歌声とサウンドに託した「ゆらゆら」といった新曲4曲、そして昨年リリースしたデジタル・シングル『君と暮らしの真ん中で』、『素直になれたら』からの6曲を追加した全10曲を収録。前作のボリューム感(2枚組/全22曲入り!)を思うとずいぶんコンパクトに収まった印象を受けるが、その分彼女たちの魅力がダイレクトに伝わる作品に。また初回限定盤付属のDVDには、今年4月に行われたZepp Shinjuku (TOKYO)公演のライヴ映像が収録されているので、こちらも必見。

Charm

CLAIRO

Charm

ベッドルーム・ポップ・シーンの新星が、3rdアルバムで満を持して日本デビュー。心地よいウィスパー・ヴォイス、シンプルなメロディ、お洒落なコード運び......派手さや強烈な個性はないが、聴く者を選ばない優等生な作風は好感度◎。今作はもはやローファイやベッドルーム・ポップとは言えない、作り込まれた精緻なサウンドメイクになっており、華やかな装飾も満載、シンガー・ソングライターとしてネクスト・ステージに進んだ印象だ。とはいえ管楽器やパーカッションを用いたジャジーなアレンジも、各楽器が主張しすぎず、マイルドに自然体で浸透しているなど、彼女の控えめで優しい世界観を壊さない工夫がされており、プロデューサーの手腕が見て取れる。

L.A. Times

TRAVIS

L.A. Times

2022年には名盤『The Invisible Band』の再現ライヴで来日し、変わらぬ人気ぶりを示したTRAVIS。10作目のアルバムは、フロントマンのFran Healy(Vo/Gt)が生活の拠点を置くロサンゼルスをタイトルに掲げた作品となった。彼が通ったNYのバーを騒々しく偲ぶTrack.2「Raze The Bar」、別れた妻に捧げるTrack.3「Live It All Again」、友人との死別を反映し生きる意味を改めて見つめ直すTrack.5「Alive」などパーソナルな内容だが、彼ららしい美しいメロディと優しくも切ないアンサンブルに昇華されたメッセージは、リスナーの心にも染み入ることだろう。ラップ調のVoを取り入れたTrack.10「L.A. Times」や、DX版のアコースティック音源も妙味がある。

Happenings

KASABIAN

Happenings

先行シングル「Call」は、攻撃性を内包したダークな世界観と中毒性のあるリフが耳に残る"これぞ、まさしく新時代のKASABIANビート!"という楽曲。2022年にリリースした前作『The Alchemist's Euphoria』では、Serge Pizzorno(Vo)にフロントマンが変わったことで、いい意味でも悪い意味でもどこかトゲが抜け落ちたような印象があったが、今作は本当に解放感のある自由なロック魂に満ちていて、ギラギラとしたアグレッションもある。もちろんヘヴィなビートに振り切った楽曲ばかりではなく、UKオルタナ、ギター・ロックの魅力を引き継いだメロディアスな楽曲もあり、これまでの彼らの百戦錬磨のライヴ猛者っぷりがわかる作品に仕上がった。

蓮華粧

ぜんぶ君のせいだ。

蓮華粧

目標であった武道館公演から1年を経た今年3月15日に如月愛海、メイユイメイ、寝こもち、そして新メンバーとしてむく、煌乃光、己涙々らてが加わり再始動したぜんぶ君のせいだ。(その後己涙々らてが契約解除)が、5人の新体制で初シングルをリリース。表題曲「蓮華粧」は作詞をGESSHI類、作曲&アレンジが有感覚、スーパーヴァイズにみきとPという布陣で、新たなスタートを描いた。目まぐるしいサウンドで、狂気的とも言える独占欲を歌うヘヴィな曲を、5人の声色がポップに彩る。c/wには1stデジタル・シングル「ねおじぇらす✡めろかおす」と「唯君論」というぜん君。の精神たる2曲を新体制verで収録。新たなファンにも呼び掛ける一枚。

ultimate confirmation

THE BOHEMIANS

ultimate confirmation

幕開けの「the earnest」のイントロ、陽性のオルガンとギター・リフや軽やかに高鳴るキックから、今作が心躍る最高の旅になることを約束してくれる。このキャッチーで高揚感たっぷりのロックンロールに続く「火薬!火薬!火薬!」は爆裂なアンサンブルが炸裂! さらに「ロックンロールジェントルメン」ではスピード感に溢れながらも洒脱な香りを纏ったロックンロールが、甘美な世界へと誘う。酸いも甘いも噛み分けた大人の余裕が漂い、毒っ気や皮肉をよりポップに、スマートに練り込んだそのサウンドは、噛む程に刺激や味わいが濃いものとなった。前作から約3年の時を経て、いい大人の尖りや遊び方を身に付けたバンドの最新形が詰まっている。

勇者の剣

有馬元気

勇者の剣

これまでとは真逆の方向へと全てを振り切り、自身の新たな側面を見せた4thメジャー・シングル。ドラマ"サバエとヤッたら終わる"のED主題歌となる表題曲は、初となる電波ソングでコミカルな印象もあるが、有馬が大切にする"弱さは強さ"がしっかりと根底にあり、あと少し勇気が必要な心を奮い立たせる。カップリングの「夏空」ではシティ・ポップに彼らしい優しさと切なさを乗せ、傷付いた心を掬い上げる。弱さもネガティヴも、さらにはコンプレックスまでもを大切に抱き締め、力に変えた今作。芯の強さ、自分を信じ抜く勇気、原作やドラマ、そこに関わる人たちへの深い想いを終結させた1枚。有馬元気の可能性がここには満ち溢れている。

Forbidden Fruit -2nd piece-

East Of Eden

Forbidden Fruit -2nd piece-

昨年デビューした5人組、East Of Edenの2枚目となるミニ・アルバム。シンガー・ソングライターの草野華余子とタッグを組んだ「Judgement Syndrome」、1stワンマン・ライヴでも披露された「Chasing The Moon」を含む全5曲は、メンバーそれぞれのテクニカルな演奏はもちろんのこと、そこに込められたエネルギーが凄まじく、まるで目の前でパフォーマンスされているかの如く圧倒される。こんなにも凄まじい音の中でも、軸になっているのはどの曲もメロディとヴォーカルで、歌に焦点を合わせ、歌を大切にするバンドの意思が伝わった。この5人でしか放つことができないエネルギー。"このバンド、世界基準。"――この言葉が決して大袈裟でないことは、このアルバムを聴けば、そしてライヴを観ればすぐにわかるだろう。

Newspeak

Newspeak

Newspeak

2022年にメジャー・デビューして以降、シングルの発表を重ねつつ制作をじっくり続けてきたアルバムがついに完成。"もし恐れるものがなかったとしたら、君はどうする?(和訳)"そんな問い掛けから始まる、ミドル・テンポのオーセンティックなインディー・ロック「White Lies」をリード曲に堂々と据えたのも彼ららしい。疾走感のある「Leviathan」、ダンス・チューン「Alcatraz」、「Bleed」にバラード「Be Nothing」、ロマンチックなラヴ・ソング「Blue Monday」、繊細な歌声も新鮮で抒情的な「Tokyo」、「Nokoribi」とハリウッド映画の劇中音楽にも似合うスケール感のあるロックを響かせる。今のNewspeakを味わい尽くせる、セルフタイトルに相応しい1枚。

Unchain×Unchain

Amber's

Unchain×Unchain

表題曲は、TVアニメ"黄昏アウトフォーカス"のエンディング・テーマ。"ルールなんてもういらない"と感情を爆発させていて、毒々しさやヒリついた空気が漂うギター・リフやビート感には、00年代のガレージ・ロック・リヴァイヴァルを彷彿とさせるところも。中盤にはエスニックなパートも飛び出し、怪しげで攻撃的な手触りもあるのだが、それでいて万人の心に滑り込ませるポップ・センスを見せつけてくるところはさすが。カップリングの「25時間」では、彼らのルーツにあるファンクをフィーチャーしていて、"当たり前のことが当たり前にあることが嬉しい"と、日常の何気ない景色がパッと鮮やかに色づく1曲。曲頭から響かせる豊島こうき(Vo/Gt)の伸びやかなハイトーンはもちろん、グルーヴを増幅させるブレスも聴きどころ。

POP STAR

パーカーズ

POP STAR

TikTokでも話題となった「運命の人」をはじめ、キャッチーなメロディとピュアでまっすぐな想いを乗せた歌詞で、SNS世代を中心に聴く人の心を掴む人気急上昇中のパーカーズ。これまでの集大成となる1stフル・アルバム『POP STAR』は、"POPS日本代表"を謳う彼らの飛躍が期待できる1枚となった。「地獄ランデブー」や「ナンバーワン」を筆頭に、一度聴いたら頭から離れないヴォーカルやギター・リフが印象的な新曲も多数収録。楽曲によって一人称の視点が変化する本作は、自分自身を投影させて聴くような恋愛ソングにとどまらず、パーカーズからの応援歌とも呼べる「少年少女よ」など、夢に向かって挑戦する若者を勇気づける力強い楽曲も存在感を見せる。本作が放つ瑞々しさは、青春真っ只中の若者の心に浸透するだろう。

青写真は褪せない

クジラ夜の街

青写真は褪せない

"音楽の歴史"をテーマにした「Saisei」で始まる本作は、その膨大な歴史の1ページに刻むという明確な意志を感じさせる、通称"青盤"。ラップを織り交ぜたグルーヴィな1曲目に対し、"別れ話のための喫茶店"を舞台に繰り広げる「失恋喫茶」はユニークでポップな仕上がりに。シャッター音が響くインタールードを挟むと、自己愛を描いたバラード「美女と野獣」ではエモーショナルなストリングスが広がり、アイリッシュ調の「祝祭は遠く」ではマーチング風のドラムに混声合唱と、ミュージカルのフィナーレのごとく本作を締めくくる。音楽史を旅するような多彩でファンタジックな楽曲群だ。千年先も残る音楽――遥か未来を見据え描く彼らの"青写真"は色褪せることなく、音楽というタタイム・カプセルの中で生き続けるだろう。そんな壮大な物語が広がる。

おおぞらクルージング

超能力戦士ドリアン

おおぞらクルージング

超能力戦士ドリアンの約2年ぶりの新音源。この2年間ライヴに力を入れてきた印象のある彼らが自身のレーベルから発表するミニ・アルバムは、本誌読者ならあるあるだろう「被りまくりタイムテーブル」や、ライヴ定番曲であり"〇〇と同じ"シリーズの新作「ヤバイTシャツ屋さんと同じ人数」(本家を意識したと思われる高音ヴォーカルも入った仕上がり)などを収録した。「ドラゴンの裁縫セット(笑)」は、懐かしい小学校時代の裁縫セットをテーマにしたナンバー。目のつけどころのユニークさに加え、言いすぎだしリズムにハマっているのも含めて笑ってしまう彼ららしさが今回も炸裂しているが、新鮮な驚きは「寝るまでは今日」だ。お洒落なダンス・ミュージックにいい声の低音ラップまで披露しており、作品のアクセントになっている。

Serotonin

シンガーズハイ

Serotonin

初のZeppワンマンはソールド・アウト、名だたる大型フェスに引っ張りだこと、ロック・シーンのど真ん中を突き進むシンガーズハイの新作は、アニメ主題歌を含む6曲入り。1曲目「STRAIGHT FLUSH」からボルテージMAXで、近年のギター・ソロ不要論に真っ向から立ち向かうようなアグレッシヴなギターが刺さる。続くバラード「紫」での立ち回りも素晴らしい。耳を劈くようなハイトーン・ヴォイスが魅力だが、それを抑えたメロウなナンバー「SENTI」はまさに新境地。軽やかに歌い上げられた内省的な歌詞が沁みる。最後はストレートに放つ"愛している"が印象的な爽やかな1曲「エイトビート」。本楽曲、そしてこのアルバムを締めくくる"やっと歌にできた"という言葉からも窺える、ひと皮むけたバンドの新フェーズを感じさせる1枚だ。

開眼証明

そこに鳴る

開眼証明

約4年ぶりとなるフル・アルバムは、カノン・ロック風の疾走感あるギター・リフが特徴的な「拝啓、黎明を知って」で幕を開ける。国内外問わず活動してきた彼らの歩みを表すような詞も印象深い本楽曲は、"開眼証明"というアルバム・タイトルへの期待感を見事に膨ませる。地を這うグルーヴと突き刺すギターが絡み合い、緻密なアンサンブルが展開する「in birth」など、そこに鳴るのテクニカル重厚サウンドが土台にありながら、初のアニメ・タイアップ曲「相聞詩」ではストリングスやピアノを取り入れていたりと、一辺倒ではないバンド・サウンドが発揮される本作。サビに向かって畳み掛ける切迫感は、ファンの期待と高揚する感情を連れていくかのよう。現状にとらわれず、さらなる高みを目指す彼らの闘争心が炸裂する1枚に思わず胸が躍る。

MEMETIC WORLD

ミームトーキョー

MEMETIC WORLD

今年3月にグループ初のZeppワンマン公演を成功させた6人組女性ユニット、ミームトーキョーから約1年ぶりとなるニューEP『MEMETIC WORLD』が届いた。本EPには、TRFが約30年前に発表した名曲「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」のカバーをはじめ、chelmicoらが手掛けたドープなトラックが中毒性抜群の「AGAIN AND AGAIN」、ボカロPのSTEAKA提供の楽曲「CUTE TURN」、二転三転する曲調がクセになる、メンバー全員が作詞作曲を務めた自己紹介ソング「MEME THE WORLD」など全6曲をコンパイル。"全てがリードとなり得る楽曲が1枚となったミームトーキョーが満載の作品"という触れ込み通り、EPだからこその高密度で一気に駆け抜ける1枚。

JELEE BOX

JELEE

JELEE BOX

オリジナルTVアニメーション"夜のクラゲは泳げない"に登場する匿名アーティスト JELEEの楽曲を収録したミニ・アルバム『JELEE BOX』がリリースされた。本作では山ノ内花音役の高橋李依が歌唱、人気ボカロPの40mPが作詞作曲を担当。JELEEが初めて創り上げた楽曲「最強ガール」をオープナーに据え、物語の舞台である渋谷をテーマにした「渋谷アクアリウム」や、ED主題歌「1日は25時間。」のカバーなどが収められている。また、花音がかつて所属していたアイドル・グループの楽曲であり、物語が動き出すきっかけになる1曲「カラフルムーンライト」の弾き語りver.が、(インストを除けば)実質的な本作の最終トラックとして収録されているのも"ヨルクラ"ファンには堪らないだろう。

愛楼

MINA

愛楼

次世代アーティスト MINAが1st EP『愛楼(読み:めろう)』を発表した。2016年にGIRLFRIENDのベーシストとしてメジャー・デビューし、現在はベース・ヴォーカル動画などでSNSを中心に活動する彼女。初のCD作品となる本作は、そんな彼女の真骨頂であるスラップ奏法が炸裂するデビュー曲「天上天下唯我独尊」で勢い良く幕開け。ちなみに本人による"弾いてみた"動画がYouTubeにて公開されているのでこちらも要チェック。ほかにも、SNS上の投稿を巡る"狂愛"を描いた「君がいいねした」など、ベーシストならではのグルーヴ感で聴かせる全5曲を収録。様々な形の"愛"を注いだ作品とのことで、かわいらしい曲調も相まって多くのティーンエイジャーに刺さりそう。