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DISC REVIEW

Leaving Meaning.

SWANS

Leaving Meaning.

NYエクスペリメンタル・ロックの重鎮による15thアルバム。2010年の再結成以降の活動スタイルであった6人編成を、前作『The Glowing Man』をもって解散させたSWANSだが、今作ではフロントマンのMichael Giraを中心に、エレクトロ・ノイズの鬼才 Ben Frostや、豪州の即興演奏バンド THE NECKS、さらには元メンバーなど、Giraが性格面まで考慮して選んだという30名以上のアーティストが参加している。近作に比べるとポスト・ロック的な轟音ノイズはやや控えられ、ネオ・フォーク/ゴシックのオーガニックな質感が増しているが、Giraの呪文のような歌唱と、反復しながら展開していく暗黒のグルーヴは実にSWANSらしい。美と混沌を湛えた、奥深い1枚。

Lilac

THE EARLY NOVEMBER

Lilac

THE EARLY NOVEMBERと言えば、90~00年代に多くのポップ・パンク/エモ・バンドを輩出したDrive-Thru Records全盛期のバンド(そのシーンの衰退と共に活動を休止)というイメージが大きいが、実は2011年に復活を果たしている。Rise Recordsと契約し、復活3作目となる今作は、彼らの持ち味であるエモーショナルなメロディはそのままに、しっとりとした大人の魅力も加わり、バンドの成長と成熟が感じられる。厚みを増してスケール感のアップしたサウンドも、バンドの実力を表しているだけでなく、今っぽさがあっていい。また、女性受けのいいAce Endersの爽やかで甘い歌声も、表現力がアップし、リスナーの心をグッと掴む強力な武器となっている。

You Deserve Love

WHITE REAPER

You Deserve Love

アメリカ ケンタッキー州ルイビルを拠点に活動しているガレージ・パンク・バンド、WHITE REAPERの3枚目のフル・アルバム。もともとは3ピースだったが、『White Reaper Does It Again』(2015年)はキーボードを迎えた4人編成でリリースし、今作ではさらに5人になってパワーアップした姿でのリリースとなる。今作では、よりキーボードの存在感も増し、パワー・ポップ的な軽やかさが加わっている。ロックンロール・リヴァイヴァル系のバンドの裾野あたりから、さらに踏み込んだアプローチで広いリスナー層に受け入れられるサウンドに進化したが、決して日和見なわけではなく、シンプルな音作りと粗削りな部分を残した彼ららしいスタイルには好感が持てる。

Miracle Pill

GOO GOO DOLLS

Miracle Pill

"アメリカン・ロックの良心"ことGOO GOO DOLLSの12作目となるフル・アルバム。30年以上活躍しているバンドだというのに、オヤジ臭さがまったくないのが本当にすごい。暑苦しさ、説教臭さなど皆無のポジティヴ・ポップ・ロック。GOO GOO DOLLSと言えば、ちょっと切ないロック・バラードやエッジの効いたオルタナティヴ・ロックというイメージも強いが、今作は、30周年を記念した前作のシンセやコーラスを使った豪華な音作りを踏襲しつつ、さらにポップな圧倒的光属性へと進化。軽やかで優しいメロディは、気負わず耳を傾けることができ、爽やかな新緑の香りを運んでくれる初夏の風のよう。まさにタイトルの通り、聴く者の荒れた心や疲れを癒してくれる"奇跡の薬"だ。

Under Your Sky

THE SHERLOCKS

Under Your Sky

Crook、Davidsonの2組の兄弟で構成されたUKシェフィールド発の4人組バンドが、2ndアルバムをリリース。同郷ARCTIC MONKEYSの後継者とも目されたデビュー作から約2年、プロデューサーにJames Skelly(THE CORAL/Vo/Gt)を迎えた今作では、前作の衝動こそ薄れているものの、そのぶん一歩成熟したサウンドを展開している。歌メロに寄り添うようなフレーズのTrack.2、スリリングなリフが印象的なTrack.4など、直球のギター・ロックがベースだが、ソフトな空気感が心地いいTrack.5や、壮大なサウンドスケープを描くTrack.11など、持ち味であるグッド・メロディをさらに生かすアレンジが秀逸。着実なスケール・アップを感じさせる。

Surviving

JIMMY EAT WORLD

Surviving

エモの代名詞としてシーンを牽引してきたJIMMY EAT WORLDが、ついに今年デビュー25周年を迎えた。四半世紀という年月は、デビュー当時に生まれた赤ちゃんが、もう立派に社会人していて、なんなら子供がいてもおかしくないほどの長い年月だが、このJIMMY EAT WORLDというバンドの瑞々しさはどうだろう!? ほとんど奇跡に近いんじゃないか。10枚目となる今作は、様々なチャレンジを見せた前作と比べ、ストレートなロック・ソングが多く、ファンを驚喜させるJEW節のキャッチーでピュアなメロディが満載。さらに、人生経験を積んだ彼らにしか描けないメッセージや、音楽的ギミックも伴って、変わらぬスタンスで輝き続けるバンドの実力を再確認させられる作品となった。

Six60

SIX60

Six60

母国ニュージーランドでのシングル・セールスがこれまでに100万枚を超え、全世界での総ストリーミング数は2億を突破している、まさに同国を代表するロック・バンドによる3rdアルバム。R&Bやポップ、エレクトロ、レゲエなど多彩なジャンルを飲み込んだバンド・アンサンブルに乗せ、フロントマン Matiu Waltersが親しみやすいグッド・メロディをソウルフルに歌い上げる楽曲は、即効性抜群の普遍的な心地よさで、年代や国境を超えた幅広い層に支持されるのも納得。現行音楽シーンのトレンドをキャッチアップしつつ、マオリの民族楽器をモダナイズして用いた、洗練されたアレンジも印象的。アルバム全体でチルな雰囲気を湛えつつも、世界に自らのルーツを知らしめるような野心的な1枚だ。

The Blue EP

DEATH CAB FOR CUTIE

The Blue EP

7月に行われた"フジロック"では豪雨の中でのパフォーマンスで観客を魅了したデスキャブが、新体制初のアルバムとなった前作『Thank You For Today』から約1年ぶりの音源となるEPをリリースした。前作で見せた生バンドとエレクトロニクスの融合を保ちつつ、より深い憂いを湛えた5曲を収録。ダイナミックなビートとフィードバック・サウンドが印象的なTrack.1、1999年に地元ワシントン州ベリンガムで起きた爆発事故で亡くなった少年たちを偲ぶ、ポップだが陰のあるTrack.2と、冒頭から癖のある楽曲が並び、バンドのプロデュースによるバラードのTrack.3、ドリーミーなクローザーのTrack.5と、約20分の中に魅力を凝縮。現体制での充実した創作意欲が垣間見える1枚だ。

Bones UK

BONES UK

Bones UK

あの天才ギタリスト Jeff Beckが認めたシンデレラ・ガールズということで、大注目の女性オルタナティヴ・ロック・デュオ BONES UKがデビュー作となるフル・アルバムをリリースした。世の中のトレンドなどまったく眼中にないような、我が道を行くスタイルで、ヘヴィでダークなインダストリアル・ロックをかき鳴らす。ポップな要素もあるが、エッジの効いたブルージーなギターやRosie Bonesの気だるい歌声など、泥臭いロックンロールが色濃く出ているため、打ち込みのビートをふんだんに使っていても、彼女たちはエレクトロ・デュオではなく、ロック・バンドなんだなと納得できる。中性的でロック・スターっぽい、尖ったファッションや佇まいも、堂々としていてクールだ。

K-12

Melanie Martinez

K-12

タレント発掘番組"The Voice"への出演をきっかけに、前作『Cry Baby』(2015年)でデビューした、シンガー・ソングライターのMelanie Martinez。お人形のようなルックスと、おもちゃの楽器などを使用したアーティスティックなポップ・サウンドに加え、少し毒のある"本当は怖い童話"的なほの暗い世界観で、"グロかわ"などとも表現された彼女だが、2作目となる今作でもその方向性は貫いている。ヒップホップやR&B的表現も、ソウルフルというよりは夜空に浮遊する魂というようなフワフワした感触だ。ドリーミーなのにそれでいて描いているのは現実の暗闇なのだから、これはまた多くのティーンエイジャーを闇に突き落としそうな、甘い甘い毒入り綿菓子だ。

Wallop

!!!

Wallop

お馴染みニョーヨークが誇るディスコ・パンク・バンド、!!!が通算8枚目となるニュー・アルバムをドロップ。前作『Shake The Shudder』で推し進められたダンス・ミュージックへのアプローチは、今作ではさらに強化された印象だ。80年代ポップを思わせるキャッチーなTrack.5やファンクネスが光るTrack.9から、エレクトロ・ハウスのニュアンスが垣間見えるTrack.1、トラップを思わせるブラス使いが印象的なTrack.11まで、多様なスタイルを咀嚼した、これまで以上にバリエーションに富んだ作品に仕上がっている。エネルギッシュなフロアの熱量も、チルなムードも併せ持った本作がライヴでどう披露されるのか、10月から行われるジャパン・ツアーにも期待が持てそうだ。

This Is Not A Safe Place

RIDE

This Is Not A Safe Place

2014年に19年ぶりの再結成、進化を証明した復活作『Weather Diaries』、復活後日本で最初のステージとなった"フジロック"でも、"90年代シューゲイズ・バンドの代表格"をアップデートし、現役感を証明したRIDE。今作には、メランコリックなギター・アンサンブルと美しいハーモニーのRIDE節なTrack.2やTrack.5もあれば、中期YMOを解釈した感の生音によるテクノ・フレーバーなTrack.3(メンバーによるとバスキア展からのインスパイアだそう)や、ソリッドなポスト・パンクのTrack.4、サイケデリックなアシッド・フォークのTrack.9など尽きることのない表現欲に驚く。タイトルは"ここは安全じゃない"の意だが、この音像は筆舌に尽くしがたく心地よい。

How Do You Love?

THE REGRETTES

How Do You Love?

顔がいい! センスいい! そしてめちゃくちゃ若い! 1st EPでメジャー・レーベルの目に留まったのも納得の次世代ガールズ・パンクの星 THE REGRETTESの2ndアルバムがこちら。「California Friends」や「I Dare You」のMVを観てもわかるけど、メンバーみんな仲が良さそうだし、本当に楽しそう。ローファイ・インディー・ロック、サーフ・ロック、70'sパンク、パワー・ポップ......ノスタルジックなのにとってもイマドキ。ファッション・アイコンとしても注目のフロントマン Lydia Nightのスモーキーで大人っぽい歌声とかわいらしい見た目とのギャップも最強! 日常にエネルギーを吸い取られてカラカラの大人たちも、瑞々しい彼女たちの夏の贈り物を受け取って、心を潤して。

No.6 Collaborations Project

Ed Sheeran

No.6 Collaborations Project

Ed Sheeranは時代の空気を読むのがうまい。というか彼自身がもはや時代の空気そのものなのかも。2011年の『No.5 Collaborations Project』リリース時は、ADELEなど歌唱力の高いSSWが台頭すると同時に、ヒップホップやEDM系の尖ったアーティストたちがヒットを飛ばしていたが、彼はそんなトレンドに片足引っ掛けながらも大衆に媚びすぎない音楽で支持された。そして今作。Justin BieberやBrunoMarsをはじめとしたスーパー・スターを迎えてはいるが、売れ線コテコテのいやらしさはなく、自然体な姿勢が見て取れる。この10年で音楽の消費のされ方は劇的に変化したが、そんななか気軽に消費される完璧なシングル曲を集めて、語り継がれるアルバムを作るというのは奇跡だ。

∑(No,12k,Lg,17Mif)

NEW ORDER

∑(No,12k,Lg,17Mif)

前身バンドであるJOY DIVISIONの結成40周年を迎えようとしている17年7月、そのJOY DIVISIONがレコード・デビューするきっかけを掴んだとも言える地元マンチェスターのスタジオで、NEW ORDERが行ったライヴを収録した2枚組ライヴ・アルバム。ライヴでは30年以上演奏することがなかったJOY DIVISION時代の「Disorder」を始め、全キャリアから選曲した曲を新たなアレンジで披露している。多くのメディアから大歓迎されたメモリアル・ライヴを追体験しながら、ゴシックでインダストリアルでディスコ・ポップな、ポスト・パンク/ニュー・ウェーヴの先駆者の真骨頂を堪能できるという意味で、聴き応えは満点。危なげない演奏にバンドの円熟を改めて感じられる。

Let's Rock

THE BLACK KEYS

Let's Rock

ロックは流行らないと言われて久しいアメリカの音楽シーンにおいて、爆発的ヒットを飛ばし続ける稀有な存在、THE BLACK KEYS。アメリカの田舎によくいそうなくたびれたおじさんふたり組なのに、ぶっ飛んだロック魂とセンスの持ち主で、そのギャップもまたいい。今作は、ブルージー且つ軽やかなギター・サウンドで、古き良きロックに回帰した趣を前面に出しつつ、独特のウィットに富んだポップネスも混ぜてタイムレスな作品に仕上げている。簡潔で遊び心があり、飽きの来ないサウンドというのは、主義主張が強すぎてもなさすぎても作れない。そんな絶妙なバランス感覚でシーンを俯瞰する現代のロック・スターは、人々に忘れ去られた音楽の楽しみを"Let's Rock"と言って無造作に投げて寄こすのだ。

By Night

PLAGUE VENDOR

By Night

パンク・シーンの名門 Epitaph Recordsから、正統派パンクと名高いPLAGUEVENDORのニュー・アルバムがリリース。衝動的で攻撃的なスタイルで人気の彼らだが、今作はそんな彼ららしさがよく表現されている。ST. VINCENTの作品も手掛けたJohn Congletonをプロデューサーに迎え、外部を遮断したスタジオにこもってレコーディングした今作。ノイズの生々しい質感や轟音の荒々しさまで見事に生きた音作りが実現した。そして、なんと言ってもフロントマン、Brandon Blaineの存在感がすごい! アンダーグラウンドな香りのするサウンドはもちろん魅力的だが、こういう危うい雰囲気を纏ったパンク・ロック・スターは今、絶滅危惧種なので今後も要注目だ。

Don't Wait 'Til Tomorrow

YONAKA

Don't Wait 'Til Tomorrow

この"YONAKA"という日本語のバンド名が気になって聴いてみたって方も多いのではないか。たしかに"夜中"っぽいしっとりとした暗さや澄んだ空気感が、彼らのメロディにはある。ダークでポップな要素もあるオルタナティヴ・ロックということで、QUEENS OF THE STONE AGEの影響も感じるが、ズバ抜けた歌唱力のあるTheresa Jarvisの、ジャンルにとらわれない表現力のあるヴォーカルは、今よりロックだった頃のPARAMOREのHayley Williamsを少し彷彿させる。流行り廃りのなさそうなエモくて激しいサウンドも悪くない。モデルのようなルックスのTheresaをはじめ見た目もイケてるメンバーが揃っているので、日本でもこれから人気に火がつくかも!?

Chon

CHON

Chon

マス・ロックやメタルを土台にしつつ、ジャズやフュージョン、さらにはトリップ・ホップやエレクトロまで取り入れた、テクニカルながらクリーンなサウンドで人気を博す、アメリカは西海岸サンディエゴ出身のインスト・バンドによる3rdアルバム。前作『Homey』のヒットを受け、"Coachella"や"フジロック"など大型フェスへ出演を果たすようになった彼らは、大観衆の前でプレイすることを念頭に置いて今作を制作したとのことで、過去作に比べるとよりシンプルで明快なサウンドに変化している。とはいえ、バンドの持ち味でもある多彩な表現力や、フレーズから伝わってくるエモーションは健在。圧倒的なテクニックから生み出される爽やかなグルーヴの波に身を任せたくなる、この夏におすすめの1枚だ。

Syml

SYML

Syml

シアトルのインディー・ロック・バンド BARCELONAのフロントマン、Brian Fennellによるソロ・プロジェクト SYMLが、初のフル・アルバムをリリースした。バンドとしてのアプローチや個人名義でのアプローチとも違う、SYML名義ならではのシンプル且つエレクトロニカをふんだんに用いた表現で、センスの良さが光る。アップテンポでちょっとレトロなインディー・ロック臭のするTrack.1「Clean Eyes」はキャッチーな掴みで、全体的には、ゆったりとしたテンポ感でアンニュイなサウンドが漂う。囁くようなBrianのヴォーカルも心地いい。シンガー・ソングライターで、マルチ・プレイヤーで、プロデューサーというBrianの才能が凝縮された1枚。

Living Mirage

THE HEAD AND THE HEART

Living Mirage

2016年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『Signs Of Light』がUSビルボード・チャートでトップ5に入るという大ヒットを飛ばした、シアトルのフォーク・ロック・バンド、THE HEAD AND THE HEARTによる最新作。シンプルなピアノとギターで綴るメロディの美しさとキャッチーなコーラスが際立つ、フォーク・ロックらしい楽曲ももちろん素晴らしいが、重低音が響くグルーヴ感たっぷりの楽曲やシンセで装飾された楽曲には、ポップスとしても楽しめる大衆性がある。THE FRAYやTHE SCRIPTなどの美メロ系オルタナティヴ・ロック・バンドが好きな方、男女ツイン・ヴォーカル、ソフト・ロック好きな方など、幅広いリスナーに聴いてもらいたい。

Spinn

SPINN

Spinn

母国イギリスで高い評価を受け、ここ日本でも2018年10月に初ライヴを行い早耳リスナーから注目を集る、リヴァプール出身の4人組インディー・ロック・バンドが待望の1stフル・アルバムをリリース。あどけなさの残る歌声にドリーミーなシンセとコーラスを絡めた、甘酸っぱさを纏ったギター・ポップは、UKロック・ファンの琴線に触れるサウンドに仕上がっている。踊ってしまうようなビートにキャッチーなフレーズが心地よい「Bliss」や「Sunshine」、歌うようなベース・ラインの「Shallow」など、メロディ・センスの良さも垣間見えるし、アコギに乗せて"君は天からの贈り物だ"と切なく歌い上げる「Heaven Sent」も秀逸。これからの躍進に期待できそうな1枚だ。

Social Cues

CAGE THE ELEPHANT

Social Cues

USケンタッキー発の6人組、CAGE THE ELEPHANTによる約3年ぶり通算5作目のフル・アルバム。グラミー賞の最優秀ロック・アルバム賞に輝いた前作『Tell Me I'm Pretty』は60~70年代のヴィンテージ・ロックに接近していたが、今作ではそこに彼らの持ち味であるガレージ・ロック・サウンドも組み合わせ、さらに奥行きのある作品を作り上げた。BECKがゲスト参加しているTrack.4ではレゲエ調のトラックに挑戦した一方で、オーケストラを携えじっくりと聴かせるTrack.8や、アルバムを締めくくるバラードのTrack.13など、静と動の二面性がエモーショナルに表現されている。デビューから10年以上を経たバンドの円熟味を堪能できる作品だ。

Nothing Happens

WALLOWS

Nothing Happens

俳優としても活動するDylan Minnette(Vo/Gt)を中心とした、南カリフォルニア出身の3人組インディー・ロック・バンド、WALLOWS。2017年にリリースしたシングルがバイラル・チャートでヒットし、注目を集めていた彼らが、待望の1stアルバムを完成させた。ポスト・パンクの影響が垣間見えるビートに、気だるげな歌声とドリーミーなシンセ、そして青春の甘酸っぱさを具現化したような衝動と混沌がミックスされたサウンドは、独特の雰囲気がある。女性SSWのCLAIROをフィーチャーしたTrack.4、歌うようなベース・ラインが際立つTrack.9、壮大なサウンドスケープを描くTrack.11と引き出しの多さも感じられ、これからの活躍にも期待が持てそうだ。