DISC REVIEW
-
SWANKY DOGS
ショートシーン
繊細にきらめくギター・アルペジオに乗せて、そこにいる誰かに"声を聞かせて"と語り掛けていく「hope」で始まるミニ・アルバムは、日々の何気ない瞬間や、沸き起こる感情のうねり、見上げた美しい景気や俯いた足元の不透明さ、あるいは遠くに思いを馳せる想像力など、様々なシーンを通した日常が綴られた。バンドの15周年を締めくくる作品にもなり、衝動的に叫ぶような初期作品「Raysman」の再録バージョンから、ソングライター 洞口隆志(Vo/Gt)の打ち込みのアレンジを生かした軽やかでノリのある「MTMY」など、新たなタッチの曲もパッケージされた。オーセンティックな3ピース・ロックの良さはもちろん、時を重ねた今の3人だからこその自由度の高さで、曲に息を吹き込んでいる。その呼吸の心地よさを感じる作品だ。(吉羽 さおり)
-
ヲドルマヨナカ
The Singularity is Near
この原稿を書くに当たって本作のインストア・ライヴを観に行ったのだが、狭いステージで15人がきれいなフォーメーションを組み、歌い踊る姿には感動したし、各々の個性弾けるステージは目移りするほどで見応え十分。"Funny Dance Rock"と名付けられたキャッチーでノリのいい楽曲たちは自然と身体が踊り出す軽快さがあり、短時間ながら満足度の高いライヴだった。その後改めて聴いた本作は、「故に僕は望む」や「高く跳べ」といった躍動感ある曲がライヴを想起させ、「ノア」や「改心テンプテーション」はギター・ロックを土台とした楽曲のカッコ良さを再確認させ、「クラン」や「フェアリーダンス」は型にハマらない魅力を感じさせ、より彼女らを深く知ることができた。音源とライヴを併せて楽しんで、ヲドルマヨナカにどっぷりハマってほしい。
-
Appare!
Summer spit!/ゴールデンタイム
Appare!が夏の目玉のひとつとしてリリースしたニュー・シングルは、作家陣がとにかく豪華だ。SNSで大バズりした「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」をグループへ提供した玉屋2060%(Wienners/Vo/Gt)による「Summer spit!」は、暑くて熱い夏を超特急で駆け抜けるアッパーチューン。楽曲から放出される情報量の多さが凄まじく、終始圧倒された。谷口 鮪(KANA-BOON/Vo/Gt)提供の「ゴールデンタイム」は、アイドルの刹那的な美しさと青春感を音楽に昇華したロック・ナンバーで、楽曲に触発されてエモーショナルな歌唱で魅せる7人の歌声がいい。さらにナナホシ管弦楽団によるカラフルなポップ・ソング「なんとかなーれファンファーレ」も収められ、粒揃いな1枚に仕上がった。
-
碧海祐人
光を浴びて
「秋霖」(2019年)で初めてサブスクに音源を解禁してからの碧海の音楽のイメージは、ローファイ・ヒップホップからネオ・ソウルに至るまで、ブラック・ミュージック・フィールと容易く理解できない心象風景が描かれた歌詞が特徴的だった。また、DTMで作られる作品に生音が加わったのはアルバム『表象の庭で』の何曲かに石若 駿が参加したことが発端だ。が、この新曲ではオルタナティヴなフォーク・ロック、ギター・サウンドの端々にはうっすらシューゲイザーの匂いすらある新しい世界を創出している。ドラムにex-Yogee New Wavesの粕谷哲司、ベースにジャズ・シーンやシンリズムのサポートなども行う今野颯平、パーカッションにエクスペリメンタル・クラシック・バンド Khamai Leonの赤瀬楓雅が参加していることに膝を打つ仕上がり。
-
World's End Super Nova
EHON
2015年に活動開始したバンド、World's End Super Novaの初の全国流通作品。初期曲から新曲まで計8曲を収録することで、バンドの過去、未来、現在を感じさせる名刺代わりの作品に仕上げた。今作で初めてこのバンドを知るリスナーも、冒頭3曲を聴けば、彼らがライヴ・バンドであることを一発で理解できるだろう。ミドル~スロー・テンポのバラードを中心とした4曲目以降は、愛情について歌った歌詞や温かな曲調に反映されているツモトアキ(Vo/Gt)の心の変化にも注目して聴いてみてほしい。ラストは、疾走感溢れる「夜の歌」。コロナ禍に自身を鼓舞するために発した"暗くても暗くても手を伸ばしたんだ"という言葉が、今はバンドとリスナーの未来を照らす言葉として響いている。
-
岡崎体育
OT WORKS Ⅲ
今作のトラックリストを見て、"知らず知らずのうちに、こんなにもお茶の間で岡崎体育の楽曲を聴いていたのか!"と思う人も多いかもしれない。こんなにも幅広いジャンルの楽曲を、ひとつひとつのジャンルにリスペクトを込めながら、彼らしいウィットに富んだ解釈と、音楽や対象に向けた研鑽を積むことで、岡崎体育のハンコを捺すように仕上げていくスキルにも舌を巻く。そのリスペクトは対峙するタイアップ先やコラボレートするアーティスト、そして子供たちも含めた年齢も趣向も問わないリスナーにも向いており、しかも上から目線でも下手に出るでもなく、常に同じ目線。だからこそ、彼の楽曲はタイアップが多くても、オマージュが感じられても、いやらしくないし、むしろ求められるのだと思う。
-
brainchild’s
brainchild's "sail to the coordinate SIX" Live at Nakano Sunplaza
brainchild'sの6thアルバム・リリース後のホール・ツアーから中野サンプラザ公演をMC以外、コンプリート収録した映像作品。始まるや否やその音質の良さ、5人の楽器のバランスの良さにぶっ飛ばされる。現場でライヴも観たが、このバンドの生楽器で織りなすアンサンブルのすごみをクリアでダイナミックな音で再び視聴できることの喜びは格別だ。菊地英昭のギター・プレイやフライングV、レスポール、SGなどそれぞれのギターの個性を味わえるのはもちろん、すべての楽器の音の再現性はリアルではむしろ聴こえない。世界でも稀有なロック・バンド且つ常にアップデートされる音楽性に打たれる。特典映像として["ALIVE SERIES" 21-22 Limited 66]の東京、大阪、愛知公演より1曲ずつ収録。
-
HATE and TEARS
Make a Change REMIX
名古屋で結成されたエレクトロポップ・ユニット、HATE and TEARSによるメジャー初のパッケージ作。タイトル曲は、クールなサウンドの楽曲が多い彼女たちの中では珍しい、青い空が目に浮かぶ爽快感溢れる仕上がりに。また、センチメンタルな「Mirror」(TYPE-A 収録)や、キュートながらも影がある「invisible strawberry」(TYPE-B収録)、サマー・チューンの「Light up my luv」(TYPE-C収録)に、アンニュイな空気が漂いながらも力強いビートが身体を揺らす「AFTER SUMMER」など、トータル全5曲を収録。グループ結成初期に生まれたものもあり、ライヴでファンと育てて上げてきた楽曲を詰め込んだところからも、彼女たちのメッセージを感じ取れる1枚。
-
RAY
Camellia
"『アイドル×????』による異分野融合"と"圧倒的ソロ性"を掲げるアイドル・グループ RAYによる、現体制からの楽曲のみで構成された3rdアルバム。本作では、グループの代名詞とも言えるシューゲイズに変拍子を取り入れた「読書日記」や、初のシューゲイズ・バラード「ため息をさがして」などで、これまでのRAYの世界観をさらに深化させている。その一方で、ダンサブルなエレクトロの「フロンティア」、青木ロビン(downy/zezeco)が制作し、中尾憲太郎(Crypt City/勃殺戒洞/ex-NUMBER GIRL)、BOBO、ケンゴマツモト(THE NOVEMBERS)という豪華な演奏陣を迎えたオルタナティヴ・ロックの「火曜日の雨」ほかで新境地も見せた。音楽好きに長く愛されていきそうな名盤の誕生だ。
-
KEYTALK
DANCEJILLION
"ダンス"を追求し続けてきたKEYTALKが、改めて"ダンス"と向き合ったアルバム。1曲目の「ハコワレサマー」が八木優樹(Dr/Cho)の書いた曲であるように、誰がメインで誰がオルタナティヴではなく、ソングライターとしてもプレイヤーとしても4人揃ってド真ん中を狙う姿勢。そしてKEYTALKがKEYTALKであるために4人が身につけた"王道"は、外から見ると"異様"であり、とんでもないスゴ技であることが今作を聴くとよくわかる。山場だらけのメロディ。突然の転調。それを見事に乗りこなすツイン・ヴォーカル。不思議な軌道を描くギター。様々なリズム・パターンを繰り出すドラム。これだけいろいろやっているのにどこかケロッとしているのは、重ねた歳月によるところが大きいのだろう。
-
KANA-BOON
ソングオブザデッド
捲し立てるラップ調のパートで焚きつけ、パッと開けるキャッチーなサビで躍らせる。そんなアッパーチューン「ソングオブザデッド」は、ゾンビ・パンデミックによりブラック企業から解放された主人公の"ゾンビになるまでにしたい100のこと"を描くアニメを盛り上げる人生讃歌。"遊び疲れるまで生きてみようぜ"と歌うこの表題曲に対し、カップリングに収録されたのはその名も「ソングオブザデッド 2」、「ソングオブザデッド 3」と早速遊び心が。10周年を迎えたバンドのいい意味で肩の力が抜けた余裕が垣間見える。アニメのテーマにとことん寄り沿った一貫性を持つ本作は、ゾンビとコロナウイルス、状況は違えどパンデミックに陥り混沌とした日々を生き抜いてきた我々にも通ずる、シリアスな世の中もポジティヴに照らす1枚だ。
-
BLUE ENCOUNT
アマリリス
TVアニメ"MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~"のために書き下ろされた表題曲「アマリリス」。爽やかながらどこか儚げなサウンドは、アニメで描かれる青春にぴったりのエモさを演出、まだまだ暑さの残るこの夏の終わりを瑞々しく彩る。またその仲間や大切な人を想う姿は、紆余曲折ありながらも肩を並べ共に歩んできたメンバー4人の姿にも重なり、美しくたくましい。そんな4人の絆を感じられるハートフルなミュージック・ビデオにも注目だ。一方カップリングの「ghosted」は全編英語詞のブルエン流メロディック・パンク。音数を絞ったシンプルな構成に、グッド・メロディと軽やかなコーラスがポップさを印象づけるが、歌詞は皮肉混じりに未練を歌う失恋ソングに仕上がっていて味わい深い。
-
ヤングスキニー
どんなことにでも幸せを感じることができたなら
ヤングスキニーがメジャー1st EP『どんなことにでも幸せを感じることができたなら』をリリースする。本EPには、ABEMAオリジナル恋愛番組"恋する♥週末ホームステイ 2023夏"OPテーマのサマー・チューン「君の街まで」や、江崎グリコ"セブンティーンアイス"キャンペーン・ソング「愛すべき日々よ」などタイアップ・ソングのほか、ピアノを軸にしたアンサンブルのクリアさに惹き込まれる「君じゃなくても別によかったのかもしれない」、"ヤングスキニー史上最もアッパーなロック・チューン"という触れ込みも納得の「愛の乾燥機」、そしてインディーズ時代の再録楽曲「8月の夜 (2023 ver.)」という全5曲を収録。初回限定盤には約120分のライヴDVDも付属とのことで、こちらも要チェック。
-
Omoinotake
Ammolite
名刺代わりのメジャー1stアルバム。「EVERBLUE」、「One Day」、「心音」など代表曲が網羅されているため、Omoinotake入門編として聴ける、リスナー・フレンドリーな作品だ。同時に、2000~2023年という濃い3年のワークスがまとめられているため、現行のトレンドを研究しては自らの表現に落とし込み、J-POPとして響かせようとトライを重ねてきた、彼らの戦いの歴史に触れられる作品でもある。3人の音楽家としての実績は、もっと多くの人に称賛されるべきだろう。新曲も素晴らしく、サウンドのみならず精神性からゴスペルに接近した「Blessing」が1曲目に配置されているのは自信の表れか。「渦幕」におけるドリルのビートの導入も非常に意義深い。
-
神山羊
Endroll
アルバム『CLOSET』以来となるフィジカル・リリースは、すでにTVアニメ"BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-"EDテーマとして話題集中の「Endroll」。ヒトリエのメンバーを迎え、打ち込みと生演奏両方のブレイクビーツが交差するアイディアが、人間の生身のパワーを拡張するイメージに接続し痛快だ。歌詞も演じることや仲間の存在を想起させ、原作とのさり気ないリンクを実現している。カップリングは"Qoo10"の新TV-CM"メガ割ナイトルーティン"篇に書き下ろした「ナイトスイミー」。淡いエレクトロニック・サウンドと泡の効果音などで作り出す浮遊感いっぱいの音像はまるでバスルーム。本当の自分を探しながらも、押し寄せる情報も無視できないガールズ・ライフに寄り添ってくれるような優しい1曲だ。
-
Mori Calliope
JIGOKU 6
VTuberのラッパー、Mori Calliopeのメジャー2nd EP。前作『SINDERELLA』で表現された"罪"を犯したあとに辿る"地獄"をテーマにした作品で、新曲6曲が収録されている。「虚像のCarousel」の作詞/歌はReol、「未来島 ~Future Island~」の作詞作曲はケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、「Black Sheep」のプロデュース/作曲は蔦谷好位置、「six feet under」の作詞作曲はTK(凛として時雨/Vo/Gt)と、ジャンルを越えた幅広いアーティストが集結。彼らが参加した個性の強い楽曲を、Mori Calliopeはなんなく乗りこなし、特に「six feet under」では高速ラップを披露。その実力を遺憾なく発揮している。
-
斉藤和義
斉藤和義 弾き語りツアー「十二月~2022」Live at 日本武道館 2022.12.21
弾き語りもバンド・スタイルもどちらも真骨頂と言える完成度とすごみを湛える現在。デビュー30周年アニバーサリーのバンドでの一発録音アルバムに続いて全国25ヶ所27公演にわたる弾き語りツアーの日本武道館公演を完全収録した映像作品の発売は必然的だ。新旧広範囲なレパートリーからの選曲はその音楽性の幅の広さを歌とギターという最小編成に凝縮した原点且つ完成した表現で届けられる。今回の見どころはひとりっきりで歌と対峙する前半だけでなく、中盤には沖 祐市(Key/東京スカパラダイスオーケストラ)とふたりで「Over the Season」、「泣いてたまるか」の2曲、後半はバンドのギタリストでもある真壁陽平も参加して、2本のギターの豊潤な絡みも堪能できること。歌を生み出し続ける彼の根底にある魂の強さに打たれる。
-
CYNHN
アウフヘーベン
9月に百瀬 怜が卒業し、綾瀬志希、月雲ねる、青柳 透、昨年加入した広瀬みのりの体制となってのEP。今回では、CYNHNと初タッグを組むアーティスト、水槽、理姫(アカシック)、威戸れもね。らが参加した。これまでは浮遊感のあるメロディや、変拍子やポリリズムを多用し幻想的な雰囲気を纏った曲が多かったが、今作ではそのCYNHN印にロックでエネルギッシュな曲も加わった。4声が溶け合った透明感から、4声がそれぞれの個性やエモーションを際立たせ、ぶつけ合うからこそ成り立つ曲など、4人の歌声やキャラクターが立体的に迫る感覚が新鮮だ。複雑な世界を揺蕩っていた思いが、時に内省的に思考を深め、時に大胆に叫びを上げ個々の"声"を発する。CYNHNの今が見える1枚になっている。
-
METAMUSEMAPA
いちご完全犯罪/猫の国
大森靖子率いるTOKYO PINKに所属するアイドル・グループ、METAMUSEとMAPAの総勢10名による超強力スプリット作品。METAMUSEの発起人且つメンバーであり、MAPAのプロデューサーである大森靖子がヴィジュアル面から作詞作曲まで手掛けた今作。アッパーなダンス・ビートに乗せたキュートな歌声で"アイドルだってうそっぱちの歌じゃ/救えない"とリアルを突きつける「いちご完全犯罪」、にゃあにゃあとかわいい猫の手を借りたメッセージ・ソング「猫の国」と、10人の個性や魅力を最大限に生かしつつ、圧倒的なかわいさやたくましさや狂気やエロスといった女の子の魅力も存分に引き出した楽曲に、大森の高いプロデュース能力とセンスがキラリ光る。10人揃っての生パフォーマンスが観たい、切に!
-
Conton Candy
charm
2nd EP『angel』から約1年2ヶ月ぶりとなるEPは、精力的なライヴ活動で培ったエネルギッシュなサウンドで、現在のバンドの着地点を証明する1枚に。シンプルに歌に寄り添う愛情たっぷりのフレーズ、この3人ならではの見事なコーラス・ワーク、ノイジーなギター、等身大の想いを飾ることなくそのまま描いた歌詞、そのどれもが自信と共に凄まじくレベルアップし、このバンドの確固たる強みとなっている。SNSを中心に話題を呼び、バンドの新境地ともなったシングル「ファジーネーブル」の甘酸っぱさ、初期の楽曲で人気も高い「リップシンク」の不安定さ、先行配信された「baby blue eyes」の儚さとどの曲もギュッと抱きしめたくなってしまうのは、3人のリアルが色鮮やかに輝いているから。愛おしくて仕方がない。
-
阿部真央
Acoustic -Self Cover Album-
阿部真央が新たに設立したプライベート・レーベル"KAGAYAKI RECORDS"の第1弾作品はセルフカバー・アルバム。全曲アコースティックとなる本作だが、音数は減っても聴き応えは十分。むしろ歌の持つパワーが原曲以上にダイレクトに響き心を揺さぶる。質のいい食材は素材本来の旨味だけで十分などとよく言うが、磨き上げられた歌声も同様、余計な調味料(アレンジ)は不要ということだろう。最小限のアレンジで引き立てられた圧巻の歌唱は鳥肌ものだ。世代を超え愛される名曲たちに加え、新曲「I've Got the Power」のアコースティック・バージョンも収録。デビューから約15年、その経験の中で得た強さをもって歌い上げる決意表明だ。これまで築いてきた自信とこれからへの覚悟を胸に、本作で新たな1歩を踏み出す。
-
ドレスコーズ
式日散花
前作『戀愛大全』が架空の夏の若いおバカな恋を描出していたことと対になるように、この『式日散花』はそのあとに遭遇する様々な別れを1曲ごとに封じ込めている。しかも、1曲ごとにかなりJ-POPやJ-ROCKのある時代の象徴的なサウンドを伴って。モータウン調のリズムを持った「少年セゾン」で振り返る刹那の恋、ネオアコの煌めきに閉じ込めた逃避的な恋の終わりを歌う「若葉のころ」、悲劇的な結末を迎えそうな共犯関係を思わせる「襲撃」はREBECCAなどの90年代バンド・サウンドを想起させるし、「最低なともだち」は"きみとぼくだけに なるような"無敵感を抱ける誰かを失う不安をフレンチ・ポップ歌謡っぽいメロディとサウンドで。誰かを失って気づくことという意味で、2023年に必然的に生まれた作品でもある。
-
虎の子ラミー
DRIP OF RAMMY
至極痛快なり。始動から10年目での満を持した初フル・アルバムにおいて、彼女たちはその類まれなるケダモノぶりをフルに発揮しているのだ。ノークリックで録ったという激烈な「限界突破(2023ver.)」、パクチーに対するヘイトをファンキーに綴った「ゲゲゲのパクチー(2023ver.)」、BMI 25以上の民たちから熱い共感を得るに違いない「バイバイポムニィ~デブよ大志を抱け~」、失恋女子への応援歌「くだらない男に捨てられたくらいで落ち込まないで」、奇想天外な斬新トリッキー・チューン「異世界転生バンドマン」、バンドのリアルを歌った「虎の娘、名はラミー」。そして、彼女たちのこれまでを描いた「歩み」と、これからを託した「パレードはつづく」。全編聴きどころしかない1枚かと!
-
有馬元気
宿命
前作『フィルター』より約半年ぶりとなる1stアルバム。タイトルとへヴィなバンド・サウンドが印象的な「挫折」で幕を明け、2023年1月に上京した際に書いたというラスト「憧れをずっと追いかけた」まで全力を出し切り、今の有馬元気が全開となった全11曲。ポップでかわいくてついついクスッとしてしまう「ワガママ」、元気いっぱいの「愛なんです」といった遊び心も交えつつ、未来のない恋愛を美しく描いた「黙ったまま」、生きることの意味を自らに問う「この世界に」など深いテーマも彼らしいサウンドと視点で描く。ポジティヴもネガティヴもすべてがリアルに聴こえるのは、どの曲にも彼の命が注がれているからで、だからこそより伝わるものがある。妥協なしの1枚、その自信と本気の想いを受け取ってほしい。
LIVE INFO
- 2025.01.19
- 2025.01.20
- 2025.01.21
- 2025.01.22
- 2025.01.23
- 2025.01.24
- 2025.01.25
- 2025.01.26
- 2025.01.27
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号