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DISC REVIEW

未成線上

ヒグチアイ

未成線上

「悪魔の子」がSpotifyで1億再生を突破し、この曲の人間の深淵を覗き込むような表現力と映画的なトラックが彼女のイメージとして定着しつつあるが、ヒグチアイのベーシックは誤解を恐れず言えばラヴ・ソングの様々な形なのだと思う。アルバムとしては5作目を数える本作でも数多い映画やドラマへの書き下ろし曲が収録されているが、アルバムとして曲が並んだ際の「このホシよ」での恋の狂気と「恋の色」での叶わない恋の経験でむしろ自分を見つけるところや、サスペンスフルな「誰でもない街」と普遍性をアンサンブルでも紡ぐ「この退屈な日々を」といった対照性。だが、どちらも同じ人間の心から生まれた気持ちなのだ。特徴的な声質だが、自分が見えているという意味で誠実な歌声が、共感の解像度を上げる。

Arcana

Myuk

Arcana

ブレス多めで甘さと芯の強さを併せ持つ声が魅力のMyukの名刺代わりとなる1stアルバム。ネット・ミュージックのクリエイションとの親和性を証明したEve作の「魔法」、ポップなソウルやシティ・ポップのニュアンスで冴えを見せる作曲家 大久保友裕によるスウィートな「Snow」、tofubeats作のピアノ・リフが印象的なテクノ・ポップ「Gift」など、タイトル"Arcana"の"Arca"=容れ物/方舟が象徴するように、どんなジャンルでも消化する彼女の器の大きさを実感。中でも若手クリエーター Guianoによる「Arcana」のソリッドなファンタジーや漢字多めの歌詞の押韻、同じく彼作の「愛の唄」の鋭いトラック、ササノマリイ(ねこぼーろ)による「encore bremen」のエレクトロとジャズの邂逅に乗る歌唱はかなりの中毒性の高さ。

MIRACLE MILK

愛はズボーン

MIRACLE MILK

テーマは"ミラクル"、"マジカル"、"ケミカル"の3ワードという、愛はズボーンの4thフル・アルバム。まさに、それらの感覚が全12曲を通して散りばめられた1枚になっている。赤ちゃんの泣き声や牛の鳴き声を交えながら"また1日が始まる"と切り出す「IN OUT YOU~Good Introduction~」から、言葉遊びと音遊びが炸裂。とはいえ、ぶっ飛んでいるだけではなく、"ヒーローは遅れて現れる/それが愛はズボーン式/スーパーエンターテイメント"という歌詞の通りのストレートな勢いを感じることもできる。ラップと歌を行き来する声に秘めたグッド・メロディと極彩色の音色が描く、混沌としたポップな世界観。皮肉も熱情も真実も溶かした心地いいミルクを飲めば、明日からも踊りながら生きていける。

七変化

め組

七変化

約2年ぶりのパッケージ作品は、4枚目となるミニ・アルバム。キャッチーなワードを盛り込みながら、憤りをポジティヴに爆発させる「咲きたい」や、力強いバンド・サウンドで瑞々しさを放ちつつも、どこか寂しげな「さたやみ」、ストリングスと跳ねるビートが胸を締めつける「ストレージ」など、日常の様々な場面から生まれてきた決して明るくはない感情が綴られた楽曲たちがずらりと並んでいる。また、ダンサブルなエレクトロ・ミュージックの意匠を施しつつも、歌詞の内容はかなり重苦しい「(I am)キッチンドリンカーズハイ」のような、バンドにとってトライな部分もありつつ、それらをラスト・ナンバーの「It's a 大愛万国博覧会」できっちり回収していくようなドラマチックな流れが見事。

FALL DOWN 2

アンと私

FALL DOWN 2

自称"どうせ裏アカでしか呟かれないバンド"、アンと私。どこを切り取ってもインパクトのある生々しい歌詞が並び、そのキャッチーさも相まってTikTokとの相性は抜群。バンド始動から早々にバイラル・ヒットを生んだのももはや必然に思える。そんな彼らの初CD作品は、EP『FALL DOWN』に初期の名曲の再録や新曲を追加し、ここまでの活動の充実度を物語る1stフル・アルバムにしてベスト盤と言える1枚となった。その振り切った歌詞に注目が集まりがちだが、ヘヴィでソリッドな「FALL DOWN」から「Tinder」のような爽やかなロック・チューン、「クソラスト」のようなフロアを無条件に躍らせる四つ打ち曲など、2010年代邦ロックを醸すサウンドの多彩さも秀逸。SNSからライヴハウスまでを席巻していくことだろう。

お先☆真っ眩

群咲

お先☆真っ眩

群咲にとって初の全国流通となる2ndミニ・アルバム。グルーヴィなサウンドで身体を強く揺さぶってくる「ただ、灰に塗れる」に始まり、耳にこびりついて離れなくなる強烈なリフレインを擁した、超アッパーな「一般ピポピポ」、自身の経験をもとに怒りの感情を殴り書いた「模造生活」に近しい雰囲気がありつつも、時折飛び出す痛烈な言葉を荒々しくも艶のある声で歌うダンサブルな「他問他答」など、全6曲を収録。どの楽曲にも、日常生活で感じる息苦しさが通底しているところは、なんともこのユニットらしいところだが、柔らかな歌声とハーモニーで"はじまり"を綴ったスロウ・ナンバー「いつかさよならのためのうた」は、応援歌のようにも響く形になっていて、また新たな表情を見せる楽曲に仕上がった。

Reverse

SUIREN

Reverse

TVアニメ"キングダム"第4シリーズOPテーマに「黎-ray-」を書き下ろし、脚光を浴びたSUIRENがメジャー1st EPを完成。モダン・ヘヴィ・ロックやマスロック的な構築美で聴かせつつ、このユニットの本質はSuiの歌とRenのピアノで成立するメロディと骨格の強さにあることを思い知る。ゲーム"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"メイン・テーマでもある代表曲「stella」の高音ロング・トーンで際立つSuiのジェンダーレスなヴォーカルが虚無や宇宙を感じる空間をギター、ピアノ、ストリングスの洪水のようなアンサンブルの中でも鮮明に聴こえるカタルシス。インストの「白雨」からラストの「Squalling」に接続する物語性も聴き応え十分。ひとりで物事を真剣に考えるときの脳内を映すような言葉と音像も見事だ。

イージー?ハード?しかして進めっ!

DIALOGUE+

イージー?ハード?しかして進めっ!

田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が音楽プロデューサーを務める女性声優8人組のアーティスト・ユニット、DIALOGUE+の10thシングルは、アニメ"弱キャラ友崎くん 2nd STAGE"のOP&EDテーマをW収録。田淵が作詞作曲、編曲を伊藤 翼が手掛けたOPテーマ「イージー?ハード?しかして進めっ!」は、電子音を効果的に挟み込みつつ、圧倒的なポップさと瑞々しさを振り撒きながら賑やかに駆け抜けていくアップチューン。EDテーマの「誰かじゃないから」は、歌詞を大胡田なつき、作曲を成田ハネダと、パスピエのふたりが担当。ストリングスが流麗に鳴り響く、洒脱でダンサブルなポップ・ナンバーになっている。これまでも良曲を送り出し続けているグループなだけあって、音楽ファンも激しく唸らせる仕上がり。

青春小節~音楽紀行~

ukka

青春小節~音楽紀行~

ukkaがメジャー1stフル・アルバム『青春小節~音楽紀行~』をリリースした。結成から約7年、2022年11月にメジャー・デビューを果たした彼女たちの待望のフル・アルバムは、"音楽紀行"をキーワードに人生(ストーリー)経験を辿るような様々なサウンド/音楽要素を取り入れた1枚に。ライヴのSEとしてもお馴染みのオーバーチュアを皮切りに、爽快なロック・ナンバー「Rising dream」、ukka流ニュートロとも言える「don't say Love」、EDMテイストに仕上げた「コズミック・フロート」、そして昨年をもって卒業したメンバー 川瀬あやめの想いが歌詞とリンクするリード曲「つなぐ」など全12曲を収録。グループとしてひとつの節目を迎えた彼女たちが見せる多彩な音楽性と表現力が凝縮されている。

Snowbud / BIGHOUSE

MAPA

Snowbud / BIGHOUSE

MAPAの現体制ラスト・シングル。その1曲目「Snowbud」は、ポエトリーと歌唱が行き来するバラード・ナンバーだ。これまでMAPAの音楽プロデュースを務めてきた大森靖子に加えて、グループを率いる古正寺恵巳が制作に参加した歌詞と、メンバーのシリアスな歌唱、そして楽曲を支える四天王バンドが織りなすサウンドスケープは、厳しくも美しい雪景色を思わせ、聴いていて胸をギュッと締めつけられる。もう1曲はジェットコースター的な曲展開が楽しい「BIGHOUSE」。彼女たちのホームであるライヴハウスをテーマにしたハートフルな楽曲で、ところどころでクスッと笑える歌詞と、ハイテンションで楽しそうな4人の歌声が心を解してくれる。冬の魅力、ライヴハウスの魅力を再認識させてくれたシングルだ。

12 hugs (like butterflies)

羊文学

12 hugs (like butterflies)

TVCMや話題のアニメとのタイアップなど着実にその名を広め、この1年でぐっとファン層を拡大した羊文学。海外公演の成功に、初の横浜アリーナワンマン決定など勢いに乗る今、躍進の2023年を締めくくる1枚が到着した。命の灯をそっと手で包み込むような「Hug.m4a」から、クラブ・ミュージック風の四つ打ちが生む推進力と力強い歌詞が背中を押す「more than words」、サウンドの透明感と大切な人を守りたいという想いが眩しい「永遠のブルー」、無自覚に傷ついていく心の奥に秘めた本音を解放する「honestly」など、弱さと向き合い前に進むための12曲が聴く者を優しく抱きしめ癒していく。洗練された空気感はさらに研ぎ澄まされながら、より彩り豊かに。明度を上げさらなる存在感を放つ羊文学に期待。

花束

Lenny code fiction

花束

約5年ぶりのアルバム『ハッピーエンドを始めたい』を今年7月に発売、同作を引っ提げたリリース・ツアーを現在開催中のLenny code fictionから、早くもニュー・シングルが到着。TVアニメ"新しい上司はど天然"のEDテーマに起用されている表題曲「花束」は、前述したアルバムの世界観と地続きながらも、80'sテイストのシンセはレニーのアンサンブルに心地よい浮遊感と耳新しさを与えている。また、c/wには夜が似合う打ち込みが印象的な「チープナイト」と、ストレートなバンド・サウンドを湛えた「それぞれの青」という、表題曲とは趣向を変えた2曲を収録。片桐 航(Vo/Gt)が自身と向き合うことで生まれた2ndアルバムを経て、今作で綴られた"今贈りたい歌詞"をあなたも受け取ってみては。

再定義 E.P

PK shampoo

再定義 E.P

圧倒的な熱量で鳴らすバンド・サウンドと荒々しくも繊細なヴォーカル、綴られた言葉に滲む物語と心揺さぶるグッド・メロディ。2018年の結成以来、各地のライヴハウスを沸かせてきたPK shampooがついにメジャー進出した。過去曲「君の秘密になりたい」から引用された歌詞がロマンチックに響く「死がふたりを分かつまで」、メロコア要素を盛り込んだファスト・チューン「あきらめのすべて」、ヤマトパンクス(Vo/Gt)のソロ曲がよりエモーショナルに生まれ変わった「第三種接近遭遇」、曲の持つエネルギーは残しつつ洗練された名曲「神崎川」の再録と、バンドを"再定義"するための4曲。さらに初回盤には大阪城音楽堂をライヴハウスに変えたあの熱狂のワンマンも収録、メジャー・シーンにその名を轟かしていくであろう彼らの名刺代わりの1枚だ。

遥か

清 竜人

遥か

TVアニメ"Dr.STONE NEW WORLD"第2クールOPテーマとして反響を呼んでいる「遥か」。儚さを内包しながらも力強く歌い上げるヴォーカルに、爽快なギター、重厚感のあるストリングスが押し寄せるグルーヴはアニメの壮大な世界観とリンクする。アニメ主題歌書き下ろしは自身2作目とのことだが、これほど自然に物語との親和性を引き出せるのは、多彩なアプローチで磨かれたポップ・センスと比類なきキャリアによるものだろう。またDVDに収録のMVでは、神聖な世界でひたむきに生きる巫女の姿が描かれており、期待と失望のなかで前を向いて生きる等身大の詞世界が美しさとともに浸透している。遥か先でも歌い続けるという強い意志と素朴な優しさが紡がれた本楽曲は、アニメ・ファンのみならず多くの人に勇気を届けるポップ・ソングだ。

Steal your heart

a子

Steal your heart

生きることがしんどそうなのは誰より常識に違和感を抱いているからで、そのことを自分なりの言葉とメロディと声で表現すると必然的に歪なポップになる。しかもa子はリスナーとして70年代プログレから椎名林檎から、Billie Eilish、MEN I TRUSTなど、いい意味で雑食。それらのエレメントがこの3rd EPではひとまとまりのニュアンスを生んでいる。初のドラマ・タイアップ曲「あたしの全部を愛せない」に始まり、コラボも実現した佐藤千亜妃が"関ジャム 完全燃SHOW"で取り上げた「太陽」まで全5曲を収録した本作は全編で、よりコケティッシュでセンシュアルな側面を加味した独特のウィスパーとエキゾチックなメロディが、淡いイメージであるにもかかわらず挑発的。生音が混じりながら密室的な音像もユニークだ。

白猫浪漫

ももすももす

白猫浪漫

ももすももすが、ソニー・ミュージックレーベルズ移籍後初となるニュー・アルバム『白猫浪漫』をリリースした。アルバムには、TVアニメ"魔王学院の不適合者 Ⅱ ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~"EDテーマ「エソア」や同曲のバラードver.、TVアニメ"帰還者の魔法は特別です"EDテーマ"6を撫でる"、読売テレビ"川島・山内のマンガ沼"EDテーマなど多数のタイアップ曲を含む全13曲を収録。バラエティに富んだ作品に仕上がっている印象を受けるが、本作で窺えるサウンドの幅広さは、真部脩一(ex-相対性理論/Ba)や、ナカシマ(おいしくるメロンパン/Vo/Gt)といった参加ミュージシャンたちの存在によるところも大きいのだろう。シンガー・ソングライターとして新たなスタートを感じる意欲作。

白雨の下

宮下 遊

白雨の下

ネット・シーンを中心に活動するマルチ・クリエイター 宮下 遊。シンガー、イラストレーターとして、また作詞作曲/編曲のほか、ミックス、マスタリング、またアニメーションMVの制作などの裏方として、その活動は多岐にわたる。今回リリースされる5thアルバムも、シンプルに"音楽"という箱に収まり切らない表現に誘われる、壮大な作品になっている。それを形作るべく、入口となる1曲目の、ばぶちゃん作詞作曲による「夜の積み木部屋」から、多彩なクリエイターが参加。皮肉やユーモアを交えつつ、死生観が覗く歌詞の世界も聴きどころで、自身が作詞作曲/編曲を手掛けた、様々な声色と曲調で物語を紡ぎながら"私 ここが死に場所だった"と締めくくる「白炎」は、物語に潜む本音が見えるようだ。

冠波心掴

QUEENS

冠波心掴

QUEENSの冠を掲げ、新たな波を起こし、ファンの心を動かして、未来をがっちり掴む。そんな意味を含む、グループの決意表明となる造語をタイトルに掲げ、"次のステージに進むための挑戦"をテーマに完成させた、アイドル・グループ QUEENSの1年3ヶ月ぶりとなるシングル。不穏なイントロSEから始まる新曲「WAVE」は、"踊れるロックアイドル"の原点を思わせるストレートなロック・チューンに、ヒップホップ調のラップ・パート、さらにEDM調のエレクトロ・サウンドへと展開。QUEENSの魅力てんこ盛りといった感のある、独創的活動を展開するグループの最新型を具現化した楽曲だ。勢いと壮大さを併せ持つ「Bullet」、パリピ感ある「ANNIVERSARY」と、クセ強な楽曲たちが、次のステージへの無限の可能性を感じさせてくれる。

SURVIVE

キングサリ

SURVIVE

"生きる、活きる、イキる、熱きる、射切る"という、5つの"いきる"をコンセプトに活動しているキングサリが、Noisy IDOLからアルバムをリリース。MOSHIMOの岩淵紗貴(Vo/Gt)と一瀬貴之(Gt)、岡田典之(空想委員会/Ba)、松永天馬(アーバンギャルド/Vo)といった、彼女たちにとってお馴染みの作家陣は本作でも手腕を振るっていて、立ちはだかるものをすべて蹴散らして突き進んでいく姿を彷彿とさせる「王様デスゲーム」、強烈なまでにエモーショナルな「一矢報いて」、血気盛んな祭囃子や口上が飛び出す「金愚上等」といったロック・ナンバーや、新規軸となるクールで清涼感のあるEDM「Cuteness Nemesis」など、全12曲を収録。また、デビュー作『I KILL』収録の4曲も再録され、これまでとこれからが凝縮された1枚に仕上がった。

Beautiful Dreamer

fhána

Beautiful Dreamer

2023年にメジャー・デビュー10周年を迎え、春には日本コロムビアに移籍したfhánaの最新EPは、"夢"、"ドリーマー"がテーマとなった。1曲目「夢」はtowana(Vo)のポエトリー・リーディングでスタートする。誰かの夢、誰かの心にシンクロして静かに呼び掛けていくイマジネイティヴな始まりから、ポップで華やかな曲、メランコリーを帯びた曲が展開していく。日常の心の機微、あるいはめまぐるしく変化する世の中や、流れの速さに気持ちが追いつかないまま置いていかれてしまうやり場のない思いに寄り添って、もう一度夢見ることの尊さを掘り起こしてくれる、そんな6曲が並ぶ。その構築的なサウンドでまばゆく、優しい光を作り出していくような、fhánaというバンドの持つ世界観が凝縮された1枚。

Forbidden Fruit -1st piece-

East Of Eden

Forbidden Fruit -1st piece-

ヴァイオリニスト Ayasaが共演を熱望し、集結した湊 あかね(Vo)、Yuki(Gt)、わかざえもん(Ba)、MIZUKI(Dr)によるロック・バンド East Of Edenのメジャー1stミニ・アルバム。経験豊かなプレイヤーによるテクニカルな演奏と歌唱力抜群の迫力あるヴォーカルは圧倒的で、さらにはバラエティに富んだ楽曲群も秀逸、聴けば聴くほどバンド・アンサンブルの美しさと楽しさに惹き込まれる。8月8日に配信したデビュー曲「Evolve」から、バンドの姿をそのまま表したかのような潔さが爽快な「花美」まで、とても全5曲とは思えないほどの充実感に驚かされるが、この密度の濃さも彼女たちの武器のひとつ。王道ロックからキャッチーなナンバーまでライヴ感溢れる1枚だ。それぞれの持つ力を惜しみなく出し切り、勝負に挑む姿が頼もしい。

〇

いきものがかり

ふたり体制になったいきものがかりの10枚目のアルバムは、タイトルが示す通り、どんな自分にも"〇"(まる)をつけることの大切さを教えてくれる。あれがない、これがない、あれができない、これができないと何かと理由をつけては自分を減点することに慣れてしまっている私たち。そんな人間が自分に"〇"をつけるだなんて、そう簡単なことではない。それでも、それすら踏まえたうえで"〇"をつけていくことでしか、人はこの先の未来へと進んでいくことはできない。あれがない私も"〇"、これができない私も"〇"。ひとつずつでいい、ゆっくりでいい。すべてを抱きしめたとき、信じられないほどの力が湧いてくるから。そのときにしか見えない景色と、本当の意味での勇気が、このアルバムには描かれている。

OZ three

MIGMA SHELTER

OZ three

ミミミユが卒業し7人組になったMIGMA SHELTER。彼女たちによる"オズの魔法使い"×"サイケデリック・トランス"の3部作シングルが本作で完結した。「Brave」はバキバキに攻めたパートとじっくり聴かせるパートの緩急が印象的な1曲。オズで"Brave"="勇気"というと臆病なライオンをイメージさせるが、本楽曲はライオンをフィルターとしてMIGMA SHELTER自身のことを歌っているようにも思える。真偽のほどは定かではないが、いろいろと考察できる楽曲には間違いない。「Any Colours」はめまぐるしい展開に合わせて歌唱、ラップ、語りと様々な声の表現が盛り込まれているところが個性的。3部作の完結に相応しく、ドロシーと物語を総括するような歌詞も注目ポイントだ。

The Pages

町田ちま

The Pages

"にじさんじ"所属のVTuberユニット Nornisとして戌亥とことタッグを組んでいる町田ちまが、このたびソロで1stミニ・アルバムを完成させた。錚々たるクリエイターが紡いだ5つの"物語"を、しなやかにハイトーン・ヴォイスを使いこなしながら歌い上げている。なきそ作詞作曲の「背後に注意」は、"背後に注意"、"吐いたらご自由に"という小気味良くもドキドキするリフレインが、町田がピュアに歌うことによって、より印象的な仕上がりになっている。かと思えば、ひろき(リリィ、さよなら。)作詞作曲の「つぎはぎどうし」は、シンプルなバラードで、疲弊した心身にじんわり染みわたるような温かさがある。まるで短編小説を読んでいるような曲ごとの鮮やかな変化に、町田の表現力が感じられる佳作。