DISC REVIEW
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Hakubi
throw
片桐(Vo/Gt)が紡ぐ真正直な言葉と、美しくリアルで切実な歌声。歌に乗せた想いや感情を丁寧になぞる、ヤスカワアル(Ba)、マツイユウキ(Dr)の構築する独創的な楽曲世界。バンドの振り幅を大きく広げた2ndフル・アルバム『Eye』を経ての今作は、"自分にしかできない表現"に立ち返った原点回帰的な気持ちと、ここまで培ったキャリアやスキルを存分に発揮した高い表現力から生まれた、Hakubiならではの世界観を堪能させてくれる。自分の言葉かのように深く胸に突き刺さる、片桐のパーソナル且つネガティヴなワード。誰にも言えない想いが音楽と共に昇華されて、少しだけ気持ちが楽になる。眠れない夜、今作にひとりどっぷり浸るのもいいが、「Decadance」、「Heart Beat」といったライヴ仕様の楽曲を生で体感するのもオススメです!(フジジュン)
救いを求める情景が鮮明な2ndフル・アルバム『Eye』と地続きにある印象のミニ・アルバム『throw』。しかし今作では自身を内省した先にある"空虚"への解像度がこれまで以上に高く、形容し難い感情を真正面からパワフルに歌い上げた全7曲が収録される。エモーショナルな片桐(Vo/Gt)のヴォーカルと感情を吐露する歌詞に加え、アップビートな疾走感溢れる「Heart Beat」やピアノ・アレンジが染みるバラード「拝啓」など、幅広いアプローチで構成された叙情的なサウンドは、孤独や焦燥を抱えた"心"そのものを映す。一人称ベースの詞世界が聴き手の心にも向き合うのは、心情を描いたテーマのみならず、バンドとして前進してきた過去があるからだろう。ふたつとない未来への舵を切っていくHakubiの原点回帰的アルバムとなりそうだ。
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MYTH & ROID
VERDE
"彫刻をめぐる物語"を展開する連作コンセプト・ミニ・アルバムの後編。ひとつの島が海に沈んだ前編から、後編では画家の少女を中心にストーリーが進んでいく。絵を描きたいというピュアな衝動を、ダークながらもダンサブルなサウンドに乗せて炸裂させる「Palette of Passion」や、理不尽な規則に湧き上がる葛藤や怒りを叫ぶ「DiLeMMa」、柔らかな手触りの中にも悲しみや儚さが漂う「Dizzy, Giddy」に、透明感のある美しいコーラスを湛えたホーリーな「Whiter-than-white」など、現実世界の出来事を自ずと想起させながらも、MYTH & ROIDらしいスタイリッシュなサウンドで繰り広げられる音物語は、とにかく凄まじい没入感。聴き終えたあと、温かな光が胸に宿るような感覚を覚える。
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SODA KIT
ロングラン
"群像劇"というテーマによって、メンバー全員の個性が炸裂し、さらに新たなる挑戦もちりばめられた2ndミニ・アルバム。メンバーひとりひとりが喜怒哀楽、ひとつひとつの感情を表現した楽曲の主人公となっており、「ナッチャッタ!」はYupsilonが主人公として喜を表現したキャッチーなナンバー。「徒然論怒」はMugeiが主人公として怒を表現した、攻撃的なラップ・ソング。「カゲボウシ」はFigaroが主人公として哀を表現した、切なすぎるラヴ・バラード。「一刀両断」はRasetsuが主人公として楽を表現した、ライヴ映え必至のパーティー・チューン。そして、喜怒哀楽すべての感情を集約させた表題曲「ロングラン」は、FAKE TYPE.が楽曲提供! SODA KITの声の力、グループの可能性が発揮されている。
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有馬元気
not end
メジャー・デビューから約1年、3枚目のシングル。ピアノのイントロと出だしのフレーズからその世界へと一気に惹き込む表題曲は、残酷なほどの絶望のなか、最後に伸ばした手だけが唯一の救いとなる、彼にしか書けない希望の物語。1番と2番とで話す人物が変わる仕掛けのせいか、いろんな場面のいろんな感情に自分を重ねてしまう。バンド・サウンド全開の楽曲に乗せ、叶わぬ恋をユーモアたっぷりに描いた「裸」、限られた命を、細やかで壮大なアレンジで優しく、美しく表現した「あと少し」。三種三様の物語にひとつだけ共通点があるとしたら、それは有馬元気の寄り添いたい、伝えたいという強い想いだけ。それぞれの主人公に自分を重ねながら、誰かを重ねながら、泣いたり笑ったりして、その想いを受け取ってほしい。
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SAKANAMON
liverally.ep
ストリングス入り編成に初挑戦した7thフル・アルバム『HAKKOH』、フィーチャリング・ゲストを迎えた配信シングル"PLUS ONE"シリーズを経て、今改めて放つ剥き身の3ピース・サウンド。歌や各楽器がかち合っては全力疾走しているほか、"どうしてそうなる?"的な捻りを効かせたワールド全開の展開も満載。リード曲の「おつかれさま」からは結成17年目を迎えた今だからこその温かい眼差しが感じられる曲で、総じて、現在進行形のバンドの魅力を真空パックしたような作品だ。お題があるからこそ自由になれる大喜利と同じ原理で、ライヴをテーマにした藤森元生(Vo/Gt)のソングライティングは抜群の仕上がり。15周年ツアー・ファイナルのライヴ音源も収録されている。
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綾野ましろ
FLAVOR.
アニソン・シンガーとして多数の作品に携わり、2021年より活動休止していた綾野ましろが本EPで活動を再開する。今作では、和楽器バンドのベーシストでボカロPの亜沙がプロデュースを手掛け、また綾野自身で作詞やジャケット・アートワーク、ヴィジュアル面も担当。ロックで伸びやかなヴォーカルによる表現に加え、リード曲「FLAVOR.(GUM)」ではキュートさや毒っぽい雰囲気も交え、アップダウンするメロディやラップ的なノリを軽々と乗りこなして自由に歌う。休止中は様々な歌唱のスタイルに挑戦して、その引き出しを増やすこともしていたという。正統派としてのこれまでのまっすぐさ、真面目さも垣間見せつつ、より楽しみながらヴォーカルの可能性を広げているようで、その声は開放的。そんな始まりの晴れやかさがある。
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Laughing Hick
カフェオレ
昨年ベースのあかりを正式メンバーに迎え、それ以降デジタル・シングルのリリース、各地ライヴ・サーキットへの出演、リリース・ライヴなど、精力的に活動を続けてきたLaughing Hickの今年初となる作品。様々な恋愛模様をテーマに、それぞれの主人公が奔放に、それでいてまっすぐに自分を生き切る様を描いた全4曲は、このバンドならではという物語の仕上がりに。ストリングスを取り入れた表題曲「カフェオレ」から、すべてを全力で振り切ったダンサブルな「休憩と宿泊」まで、そこには楽曲に対する自信と信頼がひたすらみなぎり、そのうえで丁寧に重ねた新たな挑戦には、たくましさと頼もしさが感じられる。自らの強みを知り、その強みを迷いなく出し切ることで辿りついたバンド史上最高地点。間違いなくバンド史上最高の1枚。
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AKUMATICA
MEGATON PUNCH!!!
"悪魔的な中毒性を武器に、混沌たるこの世界に風穴を!!"というキャッチフレーズを掲げ、2023年2月に始動した女性3人組グループによる初のアルバム。2ビートでパワフルに突き進んでいく「未完成MONSTER」に始まり、デジタル・ハードコア的な「AKUMATIC RESISTANCE」やシリアスな「ギィーク セット ガニナ?」、感傷的な空気を纏った「僕が僕じゃないみたいな青い春」、「ふたつ星。」に、グループの代表曲であり、青空が目に浮かんでくるような爽快感のある「瞬間アンビシャス」など、全10曲を収録。どれも骨太なバンド・サウンドを軸にしつつもメロディアスで、聴き手を選ばずするりと入ってくるキャッチーさ、親しみやすさがあるものばかり。
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Mr.ふぉるて
音生 -onsei-
"その涙の行方を僕の親指に/託してくれないかい?"と歌う「涙の行方」で始まり、"笑わせてみせるよ"と歌う「Chaplin」、そしてインスト曲である表題曲で締めくくられる2ndフル・アルバム。コロナ禍でのデビュー、メンバーの病気療養などこのバンドには紆余曲折あったが、だからこそ、生きづらさを抱えながらも、"生きたい"という本能と共に壁をなんとか乗り越えようとする人の心に寄り添うことができる。ストレートなロックを鳴らしながら勇気あるメッセージを発したり、あえてポップなサウンドに悲哀の詞を乗せたり、寂しげなピアノ・リフと共に物思いに沈んだり......と、愛し愛されることを諦めきれない人間の性(さが)を、様々なカラーで表現するバンドの手腕は見事だ。
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ヤングスキニー
不器用な私だから
全国ツアーを開催すれば軒並みソールド・アウト、今勢いに乗るヤングスキニーのメジャー2nd EP。忘れられない匂いを軸に未練を歌う「雪月花」や、失恋のその先を描くポジティヴ・ソング「恋は盲目」など、4人だけで鳴らす原点回帰的なサウンドを中心に収録し、誰がなんと言おうと"ロックだ うるせえ"と叫ぶ「精神ロック」なんかは最高にロックだが、そんななかで戦慄かなのを迎えたデュエット曲「ベランダ feat.戦慄かなの」が異彩を放つ。女性目線が多いヤングスキニーの歌詞はよりリアリティを増し、さらにラップも取り入れ新境地のチルなメロウ・チューンに仕上がっている。ラストには、キーを上げ爽やかなポップ・ロックに生まれ変わった「別れ話」の再録版を収録。ロック・バンドとしてのプライドをもってJ-POPシーンに挑む彼らのスタンスが窺える。
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OKAMOTO'S
この愛に敵うもんはない
戸塚慶文原作の人気漫画"アンデッドアンラック"がアニメ化、その第2クールのエンディング・テーマに書き下ろした「この愛に敵うもんはない」。原作のファンだというオカモトショウ(Vo)が、主人公ふたりがリアルの世界に生きていると想定して書いたという歌詞は、愛する相手の悲しみや苦しみすべてを引き受けるという、原作に通じるもの。特異なストーリーがストレートなラヴ・ソングを生む好例だ。ドライヴするユニークなギター・サウンドをフックに開かれたR&Rに落とし込んでいるのも、何周か回って十八番を堂々と鳴らしている印象。2曲目の「カーニバル」はオカモトコウキ(Gt)の作詞作曲。彼の作風には珍しいオーセンティックなフォーク・ロックで、ナチュラルな音像だが、知らないどこかを夢想しているような新鮮な1曲。
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ポップしなないで
DOKI
キャッチーなメロディと歌詞で聴き手の心を掴んで離さないポップしなないで。現行ポップスを高く再現したメジャー2ndフル・アルバム『DOKI』もまた中毒性が全開だ。疾走するリード曲「魔王様」の冒頭から一気に別世界へと惹き込まれ、TVアニメ"ニンジャラ"タイアップ曲「白昼きみとドロン」ではメロディの変化が放つ多彩な色合いに心躍らされる。言葉遊びが光る「Virtual Daydreamer」やダンサブルで癖になる「春よ続け」、物語の終盤を迎えるバラード「落chill」など自由自在に姿を変えるポップスが詰め込まれた本作。鬱屈する社会、退屈な現実世界から軽やかに逃避する11曲は、ピアノの繊細且つ大胆な旋律に乗って、今日を必死に生きる現代人との架け橋を結ぶ。ドキドキの止まらない、まるで白昼夢を見ているかのような40分間だ。
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挫・人間
銀河絶叫
下川リヲ(Vo/Gt)、マジル声児(Ba/Cho)の体制となり、昨年は「下川くんにであえてよかった」や「夏・天使」などの配信リリース、ライヴを行ってきた挫・人間。精力的な活動やクリエイティヴの充実のその先にあるのが、7thアルバム『銀河絶叫』。その絶叫は冒頭から凄まじい。配信時とは別Verの「セイント・ギロチン(Scream Ver.)」の耳をつんざく大絶叫で始まって、今作は鋭利な凶器のようなリフやビートがアルバム中を縦横無尽に駆け巡り、ヒリヒリとした緊張感が露わになっている。アレンジの妙味や、キャッチーさと人を食ったような毒が混じるポップ性といったならではの部分も持ちながら、さらにひとつ、またひとつとリミッターを解除して、脈打つ衝動をやその鮮烈さを突きつける。その生々しさにまず打ちのめされる。
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Bray me
DUH
4人組ガールズ・ロック・バンド、Bray meの1stフル・アルバム。昨年リリースのシングル「サイダー」や、ライヴ定番曲「エビデンスロード」、代表曲「魔法のように」といった、これまで大事に育ててきた名曲たちに新曲5曲を加えた、全14曲収録。強さとたくましさ、切なさと美しさを併せ持つこたに(Vo/Gt)の歌声と、パワフルでストレートなロック・サウンドが胸に迫る楽曲たち。"人間らしさを込めた音楽"を意味する"DUH"をタイトルに冠するように、嘘のないリアルなメッセージもロック・バンドとしての誇りを感じる。個人的にはバンドの最新型であり、現在のリアルを歌った「30's」や「SEEKER」、今作を締める「SING TO MYSELF」にグッときた。カッコいい!
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入江 陽
恋愛
映画音楽家やメディアでの文筆業、プロデューサーなど多方面でマルチな才能を発揮するシンガー・ソングライター 入江 陽が、7年ぶりとなるオリジナル・アルバム『恋愛』を発表した。アルバム名の通り"恋愛"をテーマにしたという本作は、ドラマ/映画への提供楽曲のオリジナル・バージョンをはじめ、Mario Caldato Jr.、ラブリーサマーちゃん、sugar meらをゲストに迎えたナンバーなど全11曲を収録。今の寒い季節にぴったりのメロウ・ナンバー「ごめんね」や、少しメランコリックな男女のヴォーカルと打ち込みのビートが心地よく絡み合う「海に来たのに feat.ラブリーサマーちゃん」など聴き応えは十分。故意なのか偶然なのかは定かでないが、本作のリリース日がバレンタイン・デーという点も実に粋。
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DeNeel
導火 / ブラックアウト
今年1月に初ワンマンを終えたばかりの4人組バンド、DeNeelからシングルが到着。アニメ"キングダム"第5シリーズOPテーマとドラマ"彼女と彼氏の明るい未来"主題歌を収録、という情報からもバンドの勢いは伝わるだろう。オリエンタルなイントロからリスナーを一気に世界観へ引き込む「導火」は、メタルのような重厚感を湛えたバンド・サウンドで戦の厳しさと激しさを表現。クリアなヴォーカルが戦う人の強い意志を象徴しているようだ。対して、キャッチーなギター・リフから始まる「ブラックアウト」は踊れるロック。バンドの得意とする歌謡曲調のメロディに乗せて、恋に翻弄される心を歌いつつ、調や拍子、ダイナミクスの操作などによって、言葉の奥にあるものを描いている。
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白昼堂々踊レ人類
真打
落語×ファンク×ソウルフルな"イッツKENZENエンターテインメント"! ファンク・サウンドをベースに、古今東西のジャパニーズ・カルチャーをオルタナティヴにミックスする、白昼堂々踊レ人類。キャリア初の全国流通盤となる今作は、色物バンドでは? という予想を見事に裏切る、本格オルタナ・ファンク・サウンドで聴く者を魅了。高い演奏力で聴かせるグルーヴィなサウンドも、ゴリ(Vo)のパワフルなヴォーカルも極上。よっ、真打ち! 落語を題材とした「まんじゅうこわい」や「死神」のファンク解釈は斬新すぎるし、ステージに立つ覚悟を込めた「真打 in the House」は楽しくも緊迫感ある歌と演奏にドキドキが止まらない。寄席に見立てた、笑いあり切なさあり、ダンスありというライヴもぜひ観たい!!
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私立恵比寿中学
トーキョーズ・ウェイ!
TVアニメ"マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編"のEDテーマに起用された表題曲「トーキョーズ・ウェイ!」は、新宿、原宿、渋谷、グループのお膝元である恵比寿など、東京の地名が散りばめられた歌詞がスタイリッシュなサウンドに良くマッチした楽曲だ。あらゆる人種、性別、年齢の人々がカオスに行き交う東京で、自分だけの道をマイペースに探していこうと歌う少女たちの姿は、明確な応援歌ではなくとも背中を押される感覚がある。カップリングは、フランス出身のプロデューサー/DJとして活躍するMoe Shopによる表題曲のリミックス・バージョン。クラブ・シーンに合う形で楽曲の新たな魅力が引き出された。オリジナルでもリミックスでも合いの手で叫ぶ心の"ウェイ!"の声が止まらない。ウェイ!
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SANDAL TELEPHONE
SHUTDOWN→REBOOT
フル・アルバムから約1年4ヶ月で到着の2ndミニ・アルバム。キレ味の鋭いエレクトロ・ナンバー「SHUTDOWN→REBOOT」に始まり、ダークな空気を纏いながら疾走していく「Allegro」、デジタル・ファンクな「悲喜劇的アイロニー」といった、よりクールで、よりスタイリッシュなサウンドを提示しつつ、ポップに弾けるドラムンベースの「UnLucky」など、ライヴを熱く盛り上げる楽曲群も収録。中でも「Sparkle」は、彼女たちのグループ・コンセプトである"音楽で世界を笑わせたい、泣かせたい、踊らせたい"に相応しい、ハッピーながらもエモーショナルな空気が涙腺を刺激する仕上がり。アンニュイな歌声とキュートさもある電気グルーヴの「Shangri-La」カバーも収められている。
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そこに鳴る
相聞詩
『啓蒙して、尋常に』以来1年5ヶ月ぶりのリリースとなるフィジカルは、表題曲に加え、同曲の"TV Size"、"instrumental"、さらに新曲「綻んで爆ぜれば」の計4曲を収録。TVアニメ"魔女と野獣"のオープニング・テーマとして書き下ろした表題曲は、アクロバティックな超絶テクニックは控えめながら、ピアノとストリングスを使ったゴシック・ロマン的なアレンジが聴きどころ。それもまた、そこに鳴るの持ち味だろう。一方、「綻んで爆ぜれば」はそこに鳴るが本来持つロック・バンドとしての魅力をストレート且つ存分にアピール。その意味では、彼らが持つ振り幅を楽しめる1枚と言えそうだ。フル・バージョンとのアレンジの違いが作り手のこだわりを窺わせるという意味で、"TV Size"も聴き逃せない。
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Lym
torch
収録曲に共通するテーマは"夜"。冒頭のアルペジオが冬の空気を連れてくる「シリウス」然り、"音で情景を描く"ということを丁寧に行っているバンドで、その情景に自分の心情を重ねながらの歌詞表現も印象的。R&B/ヒップホップ的なフィールの「ペトリコール」からは新たなトライに前向きな姿勢が、歌詞の表記にも工夫がある「period。」からは細部まで表現を怠らない姿勢が読み取れた。ロマンチックな歌詞表現と"君"の主人公になれない現実の対比が切ない男性目線の曲「選ばれない恋」のあとに、"焦がれたヒロインにはなれないこと分かってるよ"と歌う女性目線の曲「Pupa」が来る流れも秀逸。ラストの「灯し、君へ」には、聴き手に対するバンドの想いが託されている。
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超☆社会的サンダル
漂☆流
天才ソングライター オニザワマシロ(Gt/Vo)の独創的な世界観に、身長180センチ、平均体重100キロの巨漢メンバーの強靭なサウンド。SNS全盛のZ世代の音楽シーンが生み出した超☆新星、超☆社会的サンダルの1stミニ・アルバムには、SNSで話題を集めた「可愛いユナちゃん」、先行配信シングルとしてリリースされた「魚を追いかけて」を含む全7曲が収録。小学生みたいなピュアさを持ち合わせたオニザワのワード・センスが光る、正直すぎる歌詞と純度の高い歌声、センス抜群のメロディ。めちゃくちゃキャッチーなのに、滲み出る恐怖と狂気を感じた「可愛いユナちゃん」を聴いてぶっ飛んだが、それに限らず、本作収録のひと筋縄ではいかない楽曲はどれも最高! ライヴハウスを騒がす、令和のサブカル・スターの爆誕です!!
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ネクライトーキー
TORCH
前作『FREAK』から約2年9ヶ月ぶり、フル・アルバムとしては通算4作目。古くは(!?)2021年リリースの「ふざけてないぜ」から、EP『踊れ!ランバダ』収録の「ランバダ・ワンダラン」、「あべこべ」やNetflixシリーズ"スコット・ピルグリム テイクス・オフ"OPテーマ「bloom」も収録しているが、これらの楽曲が世に出た際のフックの強さすら凌駕するような個性のあるアルバム曲が居並んでいるのが単純にすごい。エフェクティヴなギター・サウンドがそのまま擬音化したようなリード曲「ちょうぐにゃぐにゃ」やゲーム音楽をバンドで再構築したような「浪漫てっくもんすたあ」など怒濤の構成を持つ曲、普遍性や骨太な良さが印象的な「あべこべ」や、もっさ(Vo/Gt)作の「だから、」などバンドの前向きな転換点となる作品と言えそう。
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キタニタツヤ
ROUNDABOUT
2023年を彩ったヒット曲「青のすみか」で"NHK紅白歌合戦"への出場も果たしたキタニタツヤ。タイアップ曲満載の前作『BIPOLAR』から強めた大衆へのアプローチが見事に結実した今、約1年半ぶりとなる待望のアルバムをリリースした。絶望に寄り添いながらも生きていてほしいと願いリスナーと固い約束を交わす「私が明日死ぬなら」を筆頭に、死を意識することで生への希望を見いだしていくような楽曲たちは、注目を集める今だからこそこれまで以上の訴求力をもってより多くの人々を救うことだろう。また「Moonthief」といった挑戦的な楽曲からは、まだまだ進化を止めない彼の計り知れない可能性が感じられる。そしてヒリつくエンディング・ナンバー「大人になっても」では本音を曝け出し、終幕を飾る強烈な捨て台詞がぶっ刺さる。
LIVE INFO
- 2025.04.19
- 2025.04.20
- 2025.04.21
- 2025.04.22
- 2025.04.23
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RELEASE INFO
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