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渋谷eggmanを拠点に活動するBLAUER MONDAYの初の全国流通盤。結成からここまでの間にはバンドにとってヘヴィな時期があり、解散の危機もあったようだ。再び息を吹き返したという"再生"の意味も込めて、この"reincarnation"というタイトルがつけられた。サウンドは海外のエモやメロコア直系だが、メロディは海外のそれというよりは繊細なJ-POPの妙がある。この混じり気のないグッド・メロディはロック・リスナー以外も魅了するだろう。激情を抱え、ひたすら一点に向かって突っ走り、まっすぐな言葉をまっすぐ届ける、彼らの音楽は澄んだ青だ。一面に広がるその青の中に、BLAUER MONDAYだからこその何かが生まれたとき、バンドは大きく飛躍を遂げるだろう。
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朝は残酷なほどに爽やかだ。"このルーティン・ワークが明日からも続くのか"、"今自分が営んでいる生活の先に未来はあるのか"。深夜に眠れなくなって、来る朝がどうしても怖くなってしまうという経験が誰しもあると思う。拭っても拭ってもまとわりつく閉塞感と不安を抱えた人々を、このChapter lineというバンドはひとりぼっちにはさせないだろう。初の全国流通音源にて、前へ前へと進み続けるバンドのサウンドとブルース色の濃いヴォーカルにこもっているのは、"変わりたい"というエネルギー。自分らしさを殺さずに生きるのが難しい時代だからこそ"変わる"にはエネルギーが必要なのだ、そして"変わる"のは代わりのいないあなたであり今しかないのだ、と彼らは叫び続ける。
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東京を中心に活動する3ピース・バンドの1stシングル。店舗でリリースされる作品としてはデビュー作だというのに決して華々しいものではなく、そこで歌われているのは、動き出せない自分と"変わりたい"という想いとの内なる葛藤。弱さと強さの境目で揺れる姿。しかしそれらこそが彼らをバンドという表現へと突き動かす根源のように思えるし、だからこそ聴き手の胸を抉るものがある。叫ぶように歌うやや無骨なヴォーカルと、焦燥感を駆り立てるサウンドで、どうしても諦めることのできない人間のカッコ悪さと美しさを同時に体現していく4分弱。ラストに"今を越える 心をさらけ出してくれ"と渾身の叫びをかますサマは非常に痛快だ。TOWER RECORDS店舗限定&1000枚限定販売なのでチェックはお早めに。
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カフカから"KFK"に改名した4人組が完成させたアルバム。改名は決してきまぐれじゃない。ちゃんと意味がある。オルタナティヴなギター・ロックに回帰しながらもアーバンなサウンドにも急接近していた志向が、以前から追求していたエレクトロなサウンドとともに今作で一気に開花。収録された全6曲は、EDMとヒップホップを掛け合わせた「せたがや・とわいらいと」をはじめ、なかなか幅広い。Kouta Kaneko(Vo/Gt)は大半の曲でポエトリー・リーディング・ラップを披露している。"カフカ"という名前から解き放たれ、彼らはここからもっと自由になっていくのだろう。そんなことを思いながら、不意に聴こえる"らしい"言葉遣いや節回しに懐かしさを感じたりもした。それもまたひとつの聴きどころだ。
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"絶対的、鍵盤系ドラマチックポップバンド"を掲げる男女3人組の3rdシングルは、愛をテーマにした表題曲とカップリングの「アイノウ」の2曲を収録。森 彩乃(Vo/Key)が"何をするにも結局は「愛」だよなあ!"と感じているなか、愛する中華料理をテーマにしたTVアニメ"真・中華一番!"のオープニング主題歌のタイアップが決定。そして、書き下ろしたのがポジティヴな意志を歌い上げる表題曲なんだそう。疾走感溢れる音数を削ぎ落した演奏の中で、クアイフらしいアクロバティックなプログレ感覚が炸裂する。そして、バンドの地元である愛知をテーマとタイトルにした「アイノウ」は、ストリングスもフィーチャーした王道のバラードと思わせ、最後はシンガロングとともにアンセミックに盛り上がる。
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"URAUE"="裏表"という言葉の背景には、本当は隠しておきたい感情をも曝してしまおうという想いがあったらしく、かなり大胆な本作。例えば、「いたいよ」のヴォーカルは一瞬森 彩乃ではないみたいに聴こえるし、「クレオパトラ」はテーマからして斬新だ。新機軸を打ち出す作品ではあるが、これまでを捨てたわけではないというのも特筆すべきポイントだ。「Parasite」の音像はギターレス編成を生かしたものだし、メジャー・デビュー以降の"誰にでも届くポップ・ソングを"という姿勢は、「桜通り」の美しさに反映されている。一通り聴いたあと「337km」に戻るのもおすすめ。新東名を疾走し、朝焼けを迎えにいく描写は、変わらずに変わることを選んだバンドの姿そのものだ。
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2017年11月にメジャー・デビューをした愛知県出身の"絶対的、鍵盤系ドラマチックポップバンド"が2枚のシングルを経てリリースするメジャー1stアルバム。公式コメントで"「あなたの一部になる」ということにすべてを捧げた作品"と語っているとおり、現代を生きる人々のささやかな日常や、胸に湧き起こった感情を鮮やかに色づける楽曲が揃った。様々なアレンジャーと手を組んだことにより、ホーンやストリングスを用いたアレンジや、バラードからアップ・チューンまで幅広いサウンド・アプローチに成功している。特に「こだまして」の各楽器のリズムを生かした細やかなアンサンブルは秀逸だ。感傷的な楽曲をほのかな湿度を残したうえで爽やか且つ力強く歌い上げるヴォーカルに、バンドの持つ優しさが滲む。
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表題曲の「ワタシフルデイズ」もカップリングの「未来emotion」もいわゆる応援ソングであり華やかなアッパー・チューン。よくよく聴くと歪なコード進行をしている箇所があるのが面白い前者と、シーンを切り替えるように転調を重ねる展開が疾走感を演出する後者。聴いたときの感触は両者で大きく異なるが、どちらも歌詞で描かれている"これまでの自分自身を信じて未来を切り拓いていこう"というメッセージとリンクするような、サウンド面での工夫がなされている点は共通だ。昨年11月にリリースしたメジャー・デビュー・シングルに表れていた"誰にでも届くポップ・ソングを"という姿勢は2ndシングルである本作でも健在。この路線で戦っていくことが、彼らの選んだ道なのだろう。
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名古屋発の3ピースが本作でメジャー・デビュー。表題曲は、煌びやかだが音の隙間を際立たせたアレンジで凛と張り詰めた空気を演出。"大切な人に本当に伝えたいこと"という奥の深いテーマに挑戦した内田旭彦(Ba/Cho/Prog)と森 彩乃(Vo/Key)共作の歌詞も注目の1曲だ。そしてカップリングの「セツナロマンチック」は造語の語感とリズムを活かした疾走感溢れるナンバー。前作収録の「snow traveler」同様の冬ソングだが、その印象は大きく異なる。メジャー進出を機に"絶対的、鍵盤系ドラマチック・ポップ・バンド"と名乗っているが、いい意味で鍵盤にこだわりすぎている印象は薄く、アプローチの幅広さは健在。ピアノを含めた各楽器が互いの歌心を引き立てるために働いているような印象だ。
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今年4月にリリースした2ndミニ・アルバムで音楽的アプローチを広げたQaijffが、さらに新境地を開拓した。表題曲となるTrack.1は切ない冬を彩る、Qaijff初の具体的なストーリーが綴られた失恋ソング。チャペルやウインドチャイム、ソフトなコーラスなど、クリスマスを彷彿させるサウンドと、ピアノというウワモノが煌びやかで、白い吐息の温もりのような包容力のある女性らしいヴォーカルも耳心地がいい。Track.2は前作の延長とも言える、力強くスケールのある楽曲。バンド史上初のツイン・ペダルが導入されるなど、前作以上に各メンバーの個性が反映されたものになった。ドラムのヘッドが揺れる音やペダルを踏む音なども聞こえる録音も、楽曲の持つ温もりを増幅させている。
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2012年、音大クラシック・ピアノ科出身の森 彩乃を中心に結成された愛知県出身の3ピースによる2ndミニ・アルバム。前作『organism』から格段に情感やギミック豊かになった、ふくよかさを感じさせる作品だ。テクニカルで迫力あるリズム隊と優雅なピアノ、しなやかなヴォーカルと煌びやかなプログラミングで力強く突き抜けるQaijff印の楽曲を、さらに進化させたTrack.2はバンドの遊び心が加速した新機軸。柔らかい印象の上モノと緊迫感のあるドラムのコントラストが効果的なTrack.3、ライヴのシンガロングも想像できるコーラス・パートも壮大なTrack.4、美しい海の中を漂うような浮遊感が心地いいTrack.5と、どの曲にも母性に近い温もりがある。バンドの武器を最大限に磨いた意欲作。
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THURSDAY'S YOUTHが5年ぶりの流通盤となるEPをリリース。"6 Bagatelles(=つまらないもの、些細な事柄)"というタイトルが印象的だが、"つまらないものですが"なんて言いながら至高の6曲が並べられた。篠山浩生(Vo/Gt)の人生観や喪失感を色濃く映す歌詞は、時に鋭く強い言葉を綴りながらも、琴線に触れる繊細な歌声、軽やかに韻を踏んでいく心地よさ、温かく包み込むコーラスによって柔らかに響く。その言葉たちを粒立たせるように、無駄のない洗練されたサウンドは緻密に構築され、要所要所で楽曲をドラマチックに盛り上げている。差別、多様性などにも触れ世の中の空気感を反映しつつ、独自の視点で人生を諦観する本作。正解を突きつけるのではなく気づきをもたらす、そんな心揺さぶる歌に救われる。
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活動休止期間を経て、改名後初のリリースとなった1stアルバム。生きる意味を強く歌った「さよなら」と「はなやぐロックスター」を始め、彼らの再出発として相応しい全15曲を収録。そのすべての楽曲に生きることへの想いが散りばめられ、それに対応する日常が刻み込まれている。今作のタイトルでもある「東京」ではせわしない都会の中で"生きる"日常が切り取られ、リズミカルな曲調に言葉のリフレインがクセになる「這う廊」では、最初のドアを開ける生活音と最後の"今日もゴミに出す 僕の明日を"というフレーズがリンクし、生きなければならない毎日を歌い上げている。1枚を通して穏やかな曲調であるが、"生きること=日常"に視点を置き、心が揺さぶられるような衝動も感じられる作品となった。
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昨年12月から活動休止をしていたSuck a Stew Dryが脱退したフセタツアキを除いたメンバー4人のまま改名してバンドを再スタート。サック時代の曲名から受け継いだTHURSDAY'S YOUTH(読み:サーズデイズユース)として、再始動のEP『さよなら、はなやぐロックスター』をリリースする。これまでのカラフルなサウンドは影を潜め、篠山浩生(Vo/Gt)が胸に抱えるやるせない感情を飾らない音像で届ける全4曲。過去の自分にけじめをつけて前へ進んでゆくための決意を感じる「さよなら」や「ぼくの失敗」、どう転んでも自分以外の自分にはなれないということを嘆きながらも受け入れる「はなやぐロックスター」や「タイムシグナル」は、どの曲もいまのバンドの心情とリンクしているように感じるのは、決して深読みではないと思う。
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人の弱さ、愚かさを暴くかのような強い歌と演奏に注目が集まっているSuck a Stew Dry。今年3月に新ベーシストが加入し、より活発な活動を展開する彼らの初EP。タイトル・トラック「世界に一人ぼっち」を含めたスタジオ・レコーディングの4曲が収録された今作も、シノヤマコウセイらしいシニカルな歌詞が光る。それとは裏腹に、爽やかで軽快なメロディが、全体的に明るくポップな印象を与える。特に「カラフル」や「ヒーロー」は優しく透明感のある歌声が心地よく、音源化の要望が高かったのも頷ける。また、自殺者へ語りかけるように歌われる「七階」は対比的にシノヤマの生への執着が伺える。この他に2曲のライヴ音源が収録されるとのことで、この1枚だけでも十分にSuckの世界観を楽しめるだろう。
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話題の若手5人組ロック・バンドSuck a Stew Dryの2ndミニ・アルバム。どこか熱い気持ちを内に秘めたような鼻にかかるシノヤマコウヘイ(Vo/Gt)のヴォーカルと、一聴しただけで心に染み渡っていくメロディが非常に秀逸な作品である。特に「ないものねだり」での跳ねたリズムに絡む哀愁のあるメロディにはグッと胸を締めつけられたし、続く「傘」での衝撃すら受けた生々しい歌詞からは純粋なまでの不器用な愛を感じとることができるだろう。そのメロディを最大限に活かしているバンド・サウンドは決して聴く者を圧倒するものではなく、むしろ必死に気持ちを伝えるために辿りついた轟音。そんなメンバーの人間性から紡がれたリアルな感情に触れてほしい。
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久しぶりに脱力してしまった。一言一言の痛々しさに胸が締め付けられ、気が付けば楽曲に同調し、立ちすくんでいた。漫然と日々を過ごしていたシノヤマコウセイ (Vo&Gt) の紡ぐ言葉は、世界とのつながり方がそのまま"生"を思わせる。 その派生としての"自己"に対する想い。何者でもない自分への憤り。深く枯渇した感情が溢れ出す。シノヤマの歌詞にノイズのようなサウンドを被せるSuck a Stew Dry は、2009年に結成し、翌年から活動を開始した非常に若い5ピースのバンドだ。息苦しいほどの気だるさの中 "誰でもない自分"を求めるが故の苦しさを歌う。壁を作って心を押し殺しながら、一方では心を追い求める。太宰 治が描くような不完全な歪さが、インクのような感染力を持つのだ。彼らが"帰ろう"とする場所は、過去かまだ見ぬ未来か。すべてはこれからだ。
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新ヴィジュアルとして公開されたユニークなアーティスト写真を見て、"あれ、fifiってこういう感じだったっけ?"と思っていたのだが、このシングルを聴いて驚いた。てっきりコミカルな方向性に進むのかと思いきや、率直に言って"かっこいい"のだ。ベースの思い切った音飾にヴォコーダーを使って、ダンサブルに仕上げたTrack.1「メランコリック・キラーステップ」は、彼らの新境地といえる名曲。そして、もうひとつのタイトル・トラック「思い出を絵に描いて」では、アップ・テンポな2ビートにのせて"ワンモアタイム"と叫ぶように歌う。TOWER RECORDS限定でのリリースなんて、ちょっともったいないのでは?と感じてしまうほど、どちらも今後のライヴ・アンセムになりそうな名曲。
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これまで5作品をリリースしている2009年結成の4ピース・ロック・バンド、fifiが自身のバンド名の語源となる"first finder"を掲げた1stフル・アルバムを完成させた。ポスト・ロック、ハードコアなどの要素を昇華したエモ・サウンドはテクニカルかつ衝動的。その中心で輝くのが透明感のある2人のヴォーカルと心を高揚させるメロディだ。彼らのツイン・ヴォーカルにはどれだけ各々の楽器の主張が強くとも、それを集約させてしまうほどの強さと美しさを持つ。その逆ベクトルとも言える、坪井敦史(Ba)のシャウトで貫かれる「傍観者は綴る」は、バンドの狂気をよりリアルに突きつける楽曲。バンドのポテンシャルと気概を感じさせる粗削りな音像と言葉――今後の飛躍と動向が楽しみなバンドである。
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2009年東京で結成したツイン・ヴォーカルとテクニカルでエモーショナルなギター・サウンドを武器に着実にスケール感を増しつつある4人組バンドfifiの1stシングル。表題曲「約束」はイントロのミュートされて刻まれるギターが一気にはじけた瞬間から心をが侵食されるかの如く、凄まじい瞬発力をもって広がっていく。彼らのメロディは一聴するとキャッチーなのだが一癖も二癖もあり非常に中毒性があるのもまた魅力だろう。Track.2の「Dreaming Hero」は壮大なサウンドスケープを尖ったギター・アプローチと柔らかなヴォーカルがエモーショナルに響く楽曲、ライヴでもきっとアクセントになるだろう。3月には初のワンマンを開催。今年大きな飛躍が期待されるバンドのその期待を裏切らない作品だ。
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09年、東京にて結成された4ピース・バンドfifi(フィフィ)の2ndミニ・アルバム。日本人独特の楽曲展開と楽曲構成、そしてメロディや、随所にパンチの効いた気持ちの良いリフが入ってくるあたりからも、ドラマチックでメロディアスなギター・ロックといった印象を受けた。それとともに、楽曲によってはスクリーム・パートもあったりと、時折かなりヘヴィなアプローチがあるために“エモさ”も際立つ。第一印象では、無色透明の優しく丸みのある声が爽やかに駆け抜けるのだが、気持ちが高まって胸が切なくなってくる頃に、それだけでは言いようのない想いを嘔吐するようなスクリーム入れてくるツイン・ヴォーカルが絶妙で、さらに情熱的な雰囲気やや切なさを煽る。言うなれば、冷静と情熱、優しさとエモが同居しているといったところ。
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2022年にギタリストとベーシストが脱退し、志水美日(Key/Cho)を迎えて3ピースになったpollyの新体制初EP。前作同様"別れと再会"をテーマにしつつ、前作よりも"別れのあとの自分のリアルタイムな想い"にフォーカスしたという本作は、引き続きシューゲイズ・サウンドを基調にしつつ、「ごめんね」に顕著な、地声に近い歌声をあえて使うといったヴォーカリゼイションの変化があり、「Snow/Sunset」では女性コーラスの新規参入により物語性の奥行きも増していて、新たなpollyのシューゲイズが感じられる仕上がりになっている。特に「K」は越雲龍馬(Vo/Gt/Prog)が初めて母への気持ちを歌にした温かなナンバーで、歌心がこもった近作の彼らのひとつの到達点のように感じられる。
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自主レーベル"14HOUSE."設立後初のアルバム。シューゲイザーなどの影響を色濃く映す、浮遊感あるサウンドのイメージが強いバンドだが、一歩深く踏み込めばそこにあるのは、優しいだけではない音の濁流だ。カオティックなサイケ・サウンドから、恐怖を感じるほどのアンビエント的な音の奔流まで――脳髄に直接作用するようにじわじわと胸がざわめくが、クライマックスの「言葉は風船 (hope)」や「点と線」の、唱歌的なメロディと絹のように滑らかな越雲龍馬のヴォーカルには、まるで鎮魂歌のような途方もない優しさと郷愁が満ちている。「狂おしい (corruption)」、「刹那 (canon)」など既発楽曲のリアレンジ4曲も収録された、pollyというバンドの奥行きを存分に感じられる1枚。
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残響shop labelリリース第3弾は、2011年結成の大阪出身5ピース、tayutaのミニ・アルバム。彼らの音楽は残響所属バンドがお好きな方なら間違いなく刺さるポスト・ロック/マス・ロックだ。そんな彼らの個性のひとつはヴォーカル。この手の音だとヴォーカルがギターをかき鳴らして歌うイメージも強いが、このバンドのフロントマン、東 規行はヴォーカルだけに徹している。それゆえか、サウンドとヴォーカル・メロディは2本の虹のように美しい平行線を描く。これは東が体ひとつで音像の海に飛び込み、ヴォーカルに集中しているからこそ描ける線。4人の作る音を足場に、豊潤なファルセットを使いこなして歌い上げる彼の声の威力は大きい。各楽器のフレーズも挑戦的で、今後の動向が気になるバンドのひとつである。
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約4年ぶりとなるフル・アルバムは、カノン・ロック風の疾走感あるギター・リフが特徴的な「拝啓、黎明を知って」で幕を開ける。国内外問わず活動してきた彼らの歩みを表すような詞も印象深い本楽曲は、"開眼証明"というアルバム・タイトルへの期待感を見事に膨ませる。地を這うグルーヴと突き刺すギターが絡み合い、緻密なアンサンブルが展開する「in birth」など、そこに鳴るのテクニカル重厚サウンドが土台にありながら、初のアニメ・タイアップ曲「相聞詩」ではストリングスやピアノを取り入れていたりと、一辺倒ではないバンド・サウンドが発揮される本作。サビに向かって畳み掛ける切迫感は、ファンの期待と高揚する感情を連れていくかのよう。現状にとらわれず、さらなる高みを目指す彼らの闘争心が炸裂する1枚に思わず胸が躍る。
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『啓蒙して、尋常に』以来1年5ヶ月ぶりのリリースとなるフィジカルは、表題曲に加え、同曲の"TV Size"、"instrumental"、さらに新曲「綻んで爆ぜれば」の計4曲を収録。TVアニメ"魔女と野獣"のオープニング・テーマとして書き下ろした表題曲は、アクロバティックな超絶テクニックは控えめながら、ピアノとストリングスを使ったゴシック・ロマン的なアレンジが聴きどころ。それもまた、そこに鳴るの持ち味だろう。一方、「綻んで爆ぜれば」はそこに鳴るが本来持つロック・バンドとしての魅力をストレート且つ存分にアピール。その意味では、彼らが持つ振り幅を楽しめる1枚と言えそうだ。フル・バージョンとのアレンジの違いが作り手のこだわりを窺わせるという意味で、"TV Size"も聴き逃せない。
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歌えるドラマー、斎藤翔斗を正規メンバーに迎え、3声のコーラスを本格的に追求した6thミニ・アルバム。ラストを締めくくる表題曲、トップを飾る「暁を担う」をはじめ、これまで通り超絶テクニックに裏打ちされたエクストリーム・サウンドを鳴らしながら、ポップスとしてアピールする力が増した印象があるのは、メンバーによると、3声のコーラスによるところが大きいそうだ。その他、打ち込みのサウンドを使いながら、ダンサブルなビートや我流のラップにアプローチしたサウンドが斬新な「bad blood」を含む全6曲に、10周年アニバーサリー・ライヴの模様を収録したDVDをカップリング。さらなる飛躍に向かう新たな起点となる作品とメンバーたちは考えているようだ。
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"7 ultimate materials"はそこに鳴るが7週連続で「vermisst」、「VortEx」、「渇望の日」、「恣意的三分間」、「回帰」、「雨に消えて」、「brilliant city」の7曲をCDシングルとしてリリースする結成10周年記念企画だ。結成10年目にリリースした1stフル・アルバム『超越』の成熟から今一度、そこに鳴るらしさに回帰するという大きなテーマのもと、超絶テクニカルなサウンドを極限まで鳴らす一方で、歌モノとしての魅力をさらに磨きあげながら、曲ごとにバンドが持つ可能性を追求している。男女ツイン・ヴォーカルを軸にしながら、ハーモニー・ワークにさらに力を入れるという新たな挑戦も。それは7曲に共通する聴きどころとなっている。
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破壊的な「Lament Moment」以下、そこに鳴るならではの魅力を全9曲約30分にぎゅっと凝縮した1stフル・アルバム。超絶テクニカル・サウンドと男女ヴォーカルの掛け合いという超個性を持つ歌モノのギター・ロックの可能性を、曲ごとに趣向を凝らしたアプローチで追求するという意味では、これまでの集大成とも言えるが、デビューから5年の活動で彼らが研ぎ澄ましてきた感性が、極めて鋭いものになっていることを感じ取りたい。そして、その感性が冒頭に書いた破壊的な方向にもポップな方向にも思いっきり振れることを! 聴き手を選ばないラヴ・ソングの「white for」はまさに後者の成果。女性ヴォーカルのバラードとしてJ-POPシーンでも勝負できるそのクオリティは、大きな聴きどころと言えるだろう。
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これまで以上に男女ツイン・ヴォーカルのスタイルを前面に出しながら、さらなる可能性を追求した3曲を収録。イントロのギター・リフがちょっとフラメンコにも聴こえる表題曲、ベースがジャズっぽいウォーキング・フレーズを奏でる「枷の先で」、キャッチーなギター・リフが、曲が持つ哀愁を際立たせる「孤高」――どの曲も爆裂するそこに鳴るサウンドを、これでもかと鳴らしながら、新境地をアピールしている。通常盤にはライヴDVD付きの初回限定盤に収録されないボーナス・トラック2曲を追加。どちらも初期に制作された曲の新録だそうだが、シンプルなアレンジで疾走感を追求したオルタナ・ロックの「善略」、メタルの影響が窺える「迷い子」ともに、彼らの王道からちょっと外れる魅力が聴きどころになっている。
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メタル、プログレ、和メロ。これまでにそこに鳴るが示してきた方向性から、さらに一歩踏み込んだような今作。7曲というコンパクトなボリュームのミニ・アルバムながら、一曲一曲がものすごい情報量で、畳み掛けるように聴く者に訴え掛けてくるサウンドは、まるで嵐のようだ。きめ細やかでテクニカルなギター・プレイや、ときに激しく主張するベースの重みなど、ショーアップされた見せ方は、ライヴで培ってきた感覚によるものだろう。ゴリゴリに暴れ回る楽曲も、繊細なハーモニーを奏でる楽曲も、自分たちの内から湧き上がる感情が迸っている。シーンにその存在感を示してきた今だからこそ、リスナーを裏切らない突き詰め方で進化を見せつけたふたりには、まだ彼らにしか見えないその先があるのだろう。
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要素のひとつとして持っていたメタルに彼ららしいやり方でアプローチした前作から約1年3ヶ月というペースで、そこに鳴るが完成させた4作目のミニ・アルバム。前2作で新たなサウンドに挑んできた彼らは、ここでいかに作為なく本来のそこに鳴るらしさを表現するかに挑んでいるが、原点回帰とも言えるその挑戦が、そこに鳴るというバンドの新たな基準になったところに大きな意味がある。たぶん、ここから彼らは一心不乱に自分たちの進むべき道を邁進することだろう。「表裏一体」と「indelible time」の2曲では、緻密なアンサンブルと3ピースで演奏する超絶テクを誇っていた彼らが、同期を使ってピアノやストリングスの音色を加えているが、その自由度が今後の創作にどう影響するかも楽しみだ。
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前作『YAMINABE』以上に曲の幅が広がった3rdミニ・アルバム。リリースはドラマーの交代を挟んで、前作から11ヶ月ぶりとなる。これまでもメタルの要素を取り入れていた、そこに鳴るが真正面からメタルに取り組んだ表題曲Track.3、Track.4「family」が大きな聴きどころと言えるが、メタルのデフォルメとしても楽しめるという意味では、ともに彼ららしいものになっている。『YAMINABE』における試みを新たなスタンダードとして磨き上げたTrack.2「新世界より」、爽やかなギター・ロック・サウンドが新境地をアピールするTrack.7「sayonara blue」も聴きどころ。より力強いものになった男女ツイン・ヴォーカルのコンビネーションとともにバンドの前進を物語る。
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最新モードも含め、彼らが持っている振り幅をアピールする全8曲が収録されているからこそ、このタイトル。メタル、プログレの影響も吸収したうえで和風のメロディが効いた哀愁ポップ・ナンバーを、アクロバティックに奏でる大阪の男女トリオ。前作発表後、Benthamと全国ツアーを行い、じわじわとその存在をシーンに知らしめてきた彼らが満を持してリリースするEP。あえて削ぎ落したストレートなサウンドと共にダンサブルなリズムを導入し、よりキャッチーに攻めたTrack.2「エメラルドグリーン」、Track.6「内緒にしててよ、醜い私のことを嫌っても」の2曲は、これまで以上に多くのリスナーから歓迎されそうだ。しかし、これは過渡期をとらえた作品にすぎない。本当の進化はここから始まりそうな予感。
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凛として時雨のコピーからスタートしてその後、オリジナルを作るようになった大阪の3人組。彼らが今、自分たちにできることをとことんやったうえで、どこからも声が掛からなかったらバンドをやめようという覚悟の上、完成させたミニ・アルバムでついに全国デビュー。アクロバティックな演奏、ギミックを駆使したミックスともに過剰さの追求を"面白がってもらってなんぼ"とメンバーたちは考えているようだが面白いというひと言だけでは表せないカタルシスがここにはある。それは過剰さの追求が何かを突破するものすごいパワーに繋がっているからだろう。和メロが印象的な「さらば浮世写し絵の如く」で聴かせる男女ツイン・ヴォーカルをもっと聴きたい他、聴きながら、もっと!もっと!と期待が膨らむ全5曲を収録。
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サポート・ギターに為川裕也(folca)と竹内亮太郎(ex-the storefront)を迎えたアルカラの10thアルバム。リリース直前のツアーでこの会心の作をいち早く堪能できたが、ライヴで様々なシーンを生む曲が揃っている作品となった。言葉や語呂、サウンドでキャッチーに遊びながらアルカラの音楽はもちろん、音楽や芸術が生まれる心震わせる瞬間を封じ込めた「瞬間 瞬間 瞬間」、同様のテーマ性をよりパーソナルに内省的に描いた「未知数²」など、力のある曲に惹きつけられる。多くの曲の根底にあるのは生きる喜びであり、なんの変哲もない日常があることの喜び。それを"ロック界の奇行師"は、聴き手の耳を驚かせると同時に、その余韻に歌心と歌の真意とをそっと置いていく。何度も聴きたくなる作品。
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初のフル・アルバム『KAGEKI』を引っ提げて開催された全国ツアーのファイナル、Zepp DiverCity TOKYO公演の模様を収めた映像作品。"ツアー前に起こったKAGEKIな出来事"により、会場に集まった人の多くが不安を抱えていたであろうこのライヴだが、1曲目「3017」の1音目でその不安を払拭してのける様が痛快。サポート・メンバー 為川裕也(Gt/folca)のサウンドメイクが原曲に寄り添っているところには、アルカラへの愛とリスペクトが感じられる。事前に出演が告知されていた9mm Parabellum Bulletの滝 善充(Gt)に加え、菅原卓郎(Vo/Gt)とHEREの武田将幸(Gt)も乱入し、カオスなお祭り騒ぎとなったアンコールも必見。アルカラというバンドがなぜこんなにも愛されているのか、その答えがここに詰まっている。
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長く親交を温めてきた cinema staffとアルカラによるスプリットEP。書き下ろしの新曲、それぞれのカバー、コラボ曲の全5曲が収録された。cinema staff新曲「first song(at the terminal)」は、ソリッドで高いテンションのドラミングと多展開のドラマチックなサウンドを、伸びやかな歌が包み込む。キャッチーで温かいメロディにただ行儀よく収まらない、アンサンブルのパッションが惹きつける。アルカラの新曲「サースティサースティサースティガール」は、爆発的なオープニングからサビでファンクに急展開するトランスフォームっぷり、先の読めなさ、オチのつけ方で唸らせる。この2バンドが互いをカバーし、コラボする曲は、もちろん技もネタも巧妙に仕掛けられていて、味わい、楽しみが尽きない。
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8枚のアルバムを発表してきたアルカラだが、全12曲というボリュームのフル・アルバムは、今回が初。バンドの脳内へと分け入っていく迷宮的なサウンドがたっぷり味わえるアルバムで、迫力がある、怒濤のアンサンブルがパッケージされた。アルカラは、予測不能なスリリングな展開とキャッチーさとを両立する稀有なバンドである。その両方の濃度と純度を上げ、音の腕力でねじ伏せるだけではない独自のポップでロックな形を作ってきた。繰り返し聴きたくなる音の隠し味、違和感を少しずつ織り交ぜてなお耳触りや発語の気持ちよさがある言葉、けれんみたっぷりなようでいて、心の急所を突く歌と、今回もその"節"がわかっちゃいるのだが、気づけば脳内の迷宮にとらわれてしまう。愉快で濃い1枚だ。
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銅羅の音と逆再生に始まり、子供のコーラスや掛け声が入ったりと、飛び道具的なアイテムのキャッチーさも曲を盛り上げているが、何よりも4人が"主題歌"というお題で存分に遊び倒しているのが「炒飯MUSIC」。Aメロからサビまでどこで切ってもクセの強いメロディと、そのメロディに負けていないワウ・ギターや印象的なリフ、また突如シンセ・ベースが間奏に飛び込んできて異次元にワープする。小さいころに観たアニメの内容や主人公の名を失念しても、"ほら、あの"と主題歌だけはソラで歌えたり、音やフレーズを覚えていたりする。そういう、異物感と気持ちいいほどの耳馴染みの良さとが同居している曲だ。そこまでやるかの悪ノリも、キャッチーに響かせてしまうのがアルカラらしい曲でもある。
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エキゾチックなギター・フレーズを肝にした、フォークロアなパンク・サウンド「消えたピエロと涙」でアルバムは幕を開ける。ピエロの哀しき性を、ほろ苦く、寓話的に仕立てた歌にまずKOされる。自己肯定と否定とを繰り返して、自分の居場所で必死に踏ん張る姿はとても不器用で、それだからこそ美しくもある。この曲を筆頭にして、今作は、批評的にシニカルに世の中や人を切っていくスタンスと、同時に泥臭くもチャーミングな、人の心の機微や性分が詰まっていて、とてもエモーショナルな内容だ。懐かしい歌謡曲の、物憂げで、湿度のあるメロディが冴えて、アルカラらしいトリッキーなサウンドと絡まっているのも面白い。毎作突き抜けたパワーがあるが、今作は抜群。キャッチーさにしれっと毒を盛り、たちまち中毒にさせていくドープな音楽がここにある。
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すべてがあった。アルカラの、今の、すべてがあった。2014年12月7日にZepp Tokyoにて行われた『CAO』リリース・ツアー"ガイコツアー2014"のファイナル・ワンマン公演。本作は当日のライヴ全編に加え、ツアー・ドキュメント映像も含めた大ボリュームのDVD作品である。突き刺すように駆け抜けたライヴ前半。ユーモアで会場を沸かせた中盤。あたたかさと感動で会場を包み込んだ終盤。アルカライダーまで登場したアンコール。そして、ツアー・ドキュメントで見られる、"バンド"と"ライヴ"への愛。シリアスな顔もおどけた顔も、必死で何かを伝えようとする顔も......12年のキャリアの中で彼らが見せてきたあらゆる"顔"が、この作品には刻まれている。この先、どれだけ先へ進もうと、きっとここに刻まれたすべての顔を、彼らは忘れない。
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アルバムの最後に、たまに"ボーナス・トラック"って入っているでしょ。CDを聴いていたら、最後の曲が終わったのに全然CDが止まらなくて、ほっといたら数分後に急に曲が始まってビクッとする、あれのことね。ああいうのって、僕はちょっと苦手なのです。だって、アルバムの余韻を損なうじゃん。でも、アルカラのアルバムのボートラは例外的に好きなのです。何故ならクオリティが高いし、音楽愛に満ちた引用が出てくるし、何より彼らは悪ふざけにもゴリゴリの本気だから。本作は、そんなアルカラの素敵なボートラたちをアルカライダーが集めて監修したもの。初期のボートラはシリアスな名曲多めだけど、キャリアを経るごとに段々と悪ふざけが悪化していくのがよーくわかる。尽きせぬ初期衝動とロック愛に乾杯。
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若い子は知っているかな。昔、"ダウンタウンのごっつええ感じ"というバラエティ番組があってね、そこに"エキセントリック少年ボウイ"というコントがあったんだよ。今はもう、あんな素晴らしい悪ふざけはテレビで見ることはできないね。このアルカライダーというバンド(肩書きは"ロック界の奇行師ヒーロー")には、あのコントに通じる悪ふざけを感じるよ。このシングルの2曲目の「ゆけ!アルカライダー ~アルカライダーのテーマ~」からは特にそれを感じるよ。アニメ"怪盗ジョーカー"の主題歌である表題曲は捻くれた展開の妙と疾走感のあるサビで聴かせるギター・ロックだよ。リミックスも入ってるよ。悪ふざけも、やるならこのぐらい全力でやらないとね。というか『CAO』からのギャップがすごいね。最高だよ。
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すべての音が切迫感と焦燥感に満ちている。かつてなく生々しい。ここには、ドラマティックな激情と奇抜な変態性を行き来するサウンド、あるいは人を食った言葉遊びで聴き手を煙に巻いてきた今までのアルカラの姿はない。ここにあるのは、時代を突き刺す鋭利な刃物としてのロックを一直線に鳴らす、素顔を剥き出しにしたアルカラの姿である。均一化されていく価値観に満たされ、正しさだけが求められるこの世界に対して怒りの表情を浮かべながら、そうした問題意識を突き詰めたが故に露になった、"すべてのものが終わりゆく"という儚い刹那と、少年の頃の自分自身に重ねられたパーソナルな心象。"どーでもいい"という言葉の切実さと説得力。12年のキャリアの果てに辿り着いた大傑作。この先の10年はアルカラの時代になるだろう。
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アルカラ、5枚目のアルバム。歌謡性の高いドラマチックなメロディと歌が、変拍子を多用したリズムを基盤とした、空気を切り裂くようなソリッドな演奏と共に繰り広げられる、まさにアルカラ節が炸裂した作品である。ロックがシリアスさだけを打ち出すことは容易いが、同時にユーモアを手なずけるのは、とても難しい。しかし、アルカラは見事にそれをやってのける。それができるのは、ある一定の音楽性だけに捉われない豊かな素養と、それを楽曲に昇華する技術、そして独特な言葉のセンスがあればこそだ。4曲目「YOKOHAMAから来た男」~6曲目「380」において自由に音楽で遊びまくった後、「防御線の果て」、「ビデオテープ」という名曲で締める後半の流れが実に素晴らしい。
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おいおい!どうなってんだ!?やはり"ロック界の奇行師"を自称するだけに、思いもよらない展開をしてくれるぜ!前作『フィクションを科学する』から約7ヶ月という驚異的なスピードでアルカラが新作『こっちを見ている』をリリースする。フロントマン稲村太佑の脳内だだ漏れ状態か?この猪突猛進がさらなる高みへの鮮やかなステップ・アップであり、激エモな楽曲の疾走感にも反映しているようだ。映画『アベックパンチ』の挿入歌にも決定した「半径30cmの中を知らない」を中心に繰り広げる大胆かつ繊細なアルカラ・ワールド。奔放すぎておかんの声からピー音(放送禁止に使うアレ)まで入るとは、ホント馬鹿だな~(褒め言葉!)。これはライヴ映えする力もハンパないから、借金してでも生を体感するべし!
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嘘か真か、インタビューで語ったように"心で歌う"姿勢がそうさせたのか。アルバムとして3枚目の今作は、これまでの圧倒的なハイテンションで突っ走るような勢いを緩め、メロディアスな世界観を強調した作風となった。9mm Parabellum BulletとSyrup 16gの中間に位置付けられそうで、疾走感を期待するとやや肩透かしを食らうかも。だがしかし、この変化で露わとなったのは、聴けば聴くほど旨みが増すような、するめいか状態の味わい深い叙情性。「大久保のおばちゃん」や「はてない」に印象的だが、メロディアスなサウンドと日常のささやかな心情を掬う文学的な詩世界が絶妙に相まり、いつかの原風景を引き出すだろう。全体をみるとストレートなロックン・ロール「キャッチーを科学する」は軽いご挨拶って感じで、ニクイね!
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神戸出身の四人組、アルカラの2ndアルバム。尚、同時に1stアルバム「そうきたか」も再プレス&リリースされている。"ロック界の奇行師"と呼ばれているだけあって、確かに変わったことしてるな~という印象。「マゾスティック檸檬爆弾」では、2ビートを久々に聴きました。そこからの展開もめちゃくちゃ面白いし。プログレッシブというんじゃないんだけど、複雑怪奇なバッキング。その割に、ヴォーカルラインは覚えやすくてフックが満載なところも、賢いというか、狡猾というか。王道的バラードもいい曲ではあるんだけど、やっぱり(いい意味で)"変"だな~っていう曲の方が輝いて聴こえてきます。普通のロックに飽きちゃったんだよねっていう気持ちがバシバシ伝わってくるだけに、今後の更なる飛躍に期待が出来そうです。
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白熱のパフォーマンスで関西のライヴ・シーンを沸かす2バンドのスプリット作。収録曲は、衝動と美しさが絶妙に入り混じるジラフポットの「Back Stab」と、歌を聴かせつつライヴ映えするLONEの「スプリットシングル」、そして共作となる「Black's ONE」。ジラフポット中野大輔(Gt/Vo)がベースとなる曲を作り、LONE山本浩之(Dr)が編曲、LONE牛首(Ba)が歌詞を作り、中野とLONE毛利翔太郎(Vo/Gt)がメロディを持ち寄って完成させた「Black's ONE」は、耳馴染みの良さと疾走感とスケール感が見事に共存し、アンセミックなコーラスを背負ったシャウトは爽快感も抜群だ。また、毛利には山本が、中野は自身でペイントとしたというジャケ写のふたりにも注目を!
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前作『The Quiet Cube』から約1年4ヶ月ぶりとなる今作は、自主企画イベント"VS. Everything"でデモ・バージョンを無料配布した「United States of Vampire」、「青を込めて」、「getaway」の3曲を含む全6曲を収録。中野大輔(Gt/Vo)のハイトーン・ヴォーカルと、豪快で爽快なスケール感のあるサウンドが心地よい「青を込めて」や、ニュー・ウェーヴっぽさのある「Sweat shop」など、音源としての聴かせどころもあれば、ダークでメタリックな質感と異様な迫力のあるコーラスによってライヴで観客を巻き込んでいく様子が目に浮かぶ「United States of Vampire」では、ライヴ・バンドとしての評価の高さを知ることができる。また、過去作も含めて洋楽名盤っぽいアートワークも興味深い。
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4月にリリースしたライヴ会場限定シングルの表題曲を含む、全8曲入りの3rdミニ・アルバム。もともと3ピースという制限にとらわれることなく音源制作をしているバンドだが、今作はさらに自分たちの音楽の質を高めることに尽力したサウンドメイクだ。曲ごとに異なる音楽性を見せるだけでなく音の質感も変化を持たせ、ギターの音色はさらに豊かでカラフルに、リズム隊の音は太く雄大に、精巧且つダイナミックになった。ファンク・テイストのミディアム・ナンバー、エモーショナルに突き抜けるロック、テクニカルなビートと不協和音的なメロディを掛け合わせた楽曲、ダンサブルなジラポ流ポップ・ソング、ブルースなどを経てから聴く、ラストの「ローリングローリング」の等身大のシンプルさが沁みる。
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バンド・サウンドといっても様々なジャンルがあるが、ジラフポットというバンドもまたひと言でいい表すのは難しい。ギター・ロックというにはハードでエモーショナルだし、パンクというにはメランコリック。多数の顔を持ちながらもどの表情も等しく輝くという確固たる個性に翻弄されてばかりだ。このアルバムの制作はロックなアルバムを作りたいという発想からスタートしているゆえ、端々に彼らのルーツが。すべての音が溢れだすように爆発していた1stミニ・アルバムに比べると音に凹凸や緩急があり、そこから浮き上がる陰影が感情の機微とリンクして鮮やかだ。ライヴ向きのアッパー・チューンから弾き語りスタートのソウルフルなミディアム・ナンバーまで、多彩な楽曲群すべてに豊潤なコーラス・ワークが映える。
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昨夏、新木場STUDIO COASTにて開催されたandropとFear, and Loathing in Las Vegasの2マン・ライヴで、オープニング・アクトを務めるなど大活躍を見せた関西発の3ピース、ジラフポット。3月に東阪で行われるワンマン・ライヴもソールド・アウトと、勢い止まぬ彼らの最新EPには、中野大輔(Gt/Vo)の痛烈な叫び声で始まる「Black designer」から、美しいファルセットが印象的なバラード・ナンバー「ラストソング」まで、変幻自在な4曲を収録。数々のライヴ経験が生きたのであろう、これまで以上にグルーヴ感が増し、前作『Hydro human』でもみせた抜群のメロディ・センスも健在。彼らの未来を期待させる、逞しくも儚い珠玉の4曲をご堪能あれ。
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2009年に大阪で結成された3ピースバンドの1stミニ・アルバム。KANA-BOONやコンテンポラリーな生活、オトワラシと共に"ゆとり"という名のイベントを行っていたようだが、このイベント名は世代感を象徴したものなのだろうか。だとしたら、このアルバム全体にたぎっている激情は、世代の叫びか。急展開するグルーヴ感の強い曲構成、ドラマティックなメロディと艶のあるヴォーカル、そのすべてがとにかく繊細でエモーショナル。Track.1「HECTOR-G」の"やってーらんねーな"という叫びに象徴される、怒りと苛立ちと後悔を投げやりにぶちまける荒くれっぷりと、Track.3「明日のない花はない」のような、聴き手に優しく手を差し伸べるスケール感の大きなメッセージ性の対比が面白い。この激情の果てにどこに行き着くのか、気になる。
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結成20周年を迎えるセックスマシーンのほぼ新録ベスト・アルバム。70年代UKロック、パンク・ロックをベースとした痛快で疾走感あるサウンドに乗せて歌う、森田剛史(Vo/Key)の歌詞やメロディはとにかく明快。"シンプルであること"を追求した楽曲たちは一度聴いたら口ずさみたくなるキャッチーさと親しみやすさを持ち、恋愛ソングから日々のぼやき、かすかな希望と、半径5mの出来事を多分なユーモアを含んで歌った歌詞は笑いと共感の嵐! 20年の想いを込めたアルバム・タイトル曲のTrack.1「バンド名変えたい」、シンプルさを極めた彼らの代表曲でもあるTrack.2「サルでもわかるラブソング」は、ある意味このバンドを象徴している。騙されたと思って、まずはこの2曲だけ聴いて!
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傷つき、打ちひしがれた男が顔を上げ、再び歩き始める姿を歌った5作目のアルバム。森田剛史(Vo/Key)の手痛い失恋が制作のきっかけになったという。彼ららしいけれんみ溢れる作品と思いきや、ひとりでも多くの人に伝えたいという思いが、いい歌とまっすぐなバンド・サウンドで勝負する潔さに結実。けれんみが薄れたことで、芸風としての暑苦しさではなく、楽曲やバンドそのものが持っている熱さを改めて印象づける、ある意味、赤裸々な作品になっている。それに加え、バンドが新境地に挑んだことで、このバンドが持っている豊かな音楽性もこれまで以上に際立ってきた。彼ららしいユーモアも交えながら、合唱曲に真正面から挑んだ「唱歌「凪」」を始め、聴けば聴くほど、味わいが増す曲ばかりだ。
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持ち前のユーモアをぐっと抑え、奇をてらわずにストレート且つシリアスに"旅立ち"という春に相応しいテーマを歌い上げた3曲を収録した5thシングルは、ライヴDVDをカップリングした2枚組。ノスタルジックなオルガンの音色をフィーチャーした表題曲を始め、3曲とも70年代のロックを思わせる演奏がライヴならシンガロング必至のメロディの魅力を際立たせている。Track.2「眠るまちから」は切ないメロディをアピールしながら、マーチ風のドラムやアンセミックなコーラスが聴く者の気持ちを高揚させる不思議な味わいが印象に残る。Track.3「地平の向こう」は3曲中、最もセクマシらしいと言える疾走感溢れるロック・ナンバー。アートワークは新進気鋭の漫画家、西村ツチカによる描き下ろしだ。
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シンガロング必至の熱い曲の数々と、ちょっとずっこけたところもあるひたむきさが歓迎され、日本各地のライヴ・シーンを賑わせている神戸の4人組、セックスマシーン。3年ぶりにリリースする4作目のフル・アルバムもユーモアとペーソスを交えながらポジティヴなメッセージを訴えかけるアンセミックなセクマシ節は健在だ。聴きながら、とりあえず大きな声で叫びたい衝動に駆られたあとは、ぜひ曲作りや演奏の妙味にも耳を傾けていただきたい。シンガロング必至の青春パンクに加え、R&B調のバラード、アコギを鳴らすフォーク、ドカドカと突っ走るハードコアと曲は思いの外、幅広いうえにライヴのうわーっとしたイメージとは裏腹に荘厳なコーラス、華麗なギター・ソロなど、演奏も聴きどころが多い。
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青春パンクを装いながら、諧謔と反骨の精神、そして意外に奥が深い音楽性がセックスマシーンの存在をユニークなものにしている。その意味では半年ぶりのリリースとなるこの4thシングルも彼ららしさは何も変わらない。その延長上で、キーボーディストの脱退をメンバー全員がキーボードを兼任することで補いながら、それぞれに趣きの違う3曲に挑み、前進をアピール。新たなスタートを自ら祝うようにキーボードの音色を高らかに鳴らしながらウェットすぎる世の中に活を入れる表題曲、アンセミックなロック賛歌の「いいよね」に加え、ピアノの音色が印象的なバラード「なくしもの」も収録。さらにボーナス・トラックとしてライヴ音源を3曲追加したことで音楽性の深さとともにライヴの熱さも伝える聴き応え満点の1枚に。
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ロックとは騙された者勝ちの音楽だ。このくだらない世界で、たった一瞬でもハイな気分を味わうために自分を騙す――それがロックの本質。その点で、テスラは泣かない。はロック・バンドとして圧倒的に正しい。自分たちを上手く騙しているし、リスナーを騙そうとする気概もある。このメジャー・デビュー・ワンコイン・シングルの表題を飾る「Lie to myself」は、彼らが標榜する"マグマロック"という言葉に相応しい1曲。緊張感のあるピアノの旋律に爆発力のあるギター、ベース、ドラムが絡み合うダイナミズムは、まるで本能が理性を凌駕する瞬間のカタルシスそのもの。この曲が鳴っている間は、今お前が身に纏っている苦悩も嘘も矛盾も、すべて解き放って忘れてしまえと言わんばかりの頼もしい吸引力。最高。プロデュースはクラムボンのミト。
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名門mini muff recordsが新たに世へ送り出す大型新人の登場である。鹿児島県出身の男女混合4ピース・ロック・バンド“テスラは泣かない。”。捻りも効いた力強いサウンドは、美しいピアノの旋律が楽曲へ軽やかで爽やかな印象を与え、良質なメロディを直球で投げかける痛快なフレッシュさに満ちている。歌詞の言葉選びは率直でありながら独特のセンスを感じられるので、そちらにも注目してもらいたい。リード・トラック「cold girl lost fiction」で、ジャズの要素をも独自のロックへと落とし込む手腕は圧巻。バンドのみならず、音楽への新たな可能性を十分に楽しめる。
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前作から約3年ぶりのフル・アルバム。和田アキ子への提供楽曲「YONA YONA DANCE」のセルフ・カバーや、須田景凪との共作「ANSWER」をはじめ、電子ドラムを導入した実験色の強い「Wake Me Up」、三原康司(Ba)がヴォーカルを務めた「YOU RAY」、昨年2021年の日本武道館公演で初披露された「名悪役」など、バラエティに富んだ全14曲が並ぶ。驚くのはこれだけジャンルレスな楽曲群をフレデリックのサウンドとして昇華させている点だ。これまでファンク、ディスコ、モータウンなど様々なダンス・ミュージックの形を、記名性の高いサウンドとフレーズをもって提示してきた彼ら。本作は、フレデリックがデビュー当時から標榜してきたそんな"フレデリズム"の堂々たる総決算と言える。
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今なお多くの制約を強いるコロナウイルスは、かえってフレデリックの闘争心に火を点けたのかもしれない。いち早くリモート制作の体制を整え、従来の音楽性を踏襲しながらもEDMに突き抜けた「されどBGM」を7月に先行配信。次いで、得意とする緻密な音遊びが光る「Wake Me Up」、ファンキーな中にポリティカルな主張も連想させる「正偽」、青春も熱狂も失ってしまった今夏に対して歌う「SENTIMENTAL SUMMER」の計4つの新曲をリモートで制作。そこには変わらず、むしろ凄みを増して滾る人間臭さがあり、且つそれらをまるっと包んでしまえるポップネスな力もある。どんな状況下でも、我らが"遊び場"を取り戻す日まで、音を鳴らすことをやめない。今作はそんな決意表明だ。
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前作『TOGENKYO』のリリースから、海外公演、初のアリーナ公演を経て、バンド史上最もエモーショナルな作品が産み落とされた。前作で彼らの"桃源郷"は完成したかのように思えたが、疾走感溢れる表題曲は、それではまだ足りず、"僕のさいはて"にリスナーを連れていきたいという貪欲なアリーナ・ロック。またライヴで披露されていた新曲「シンセンス」、三原健司(Vo/Gt)、康司(Ba)兄弟の妖艶な歌声が絶妙に溶け合う「NEON PICNIC」に加え、誰もが知っているCMソングを"フレデリック・サウンド"にリメイクした「シントウメイ」を収録。さらに、彼らの分岐点と言えるアリーナ公演の熱気、興奮を閉じ込めたライヴ音源も必聴だ。フレデリック第2章の幕開けに、聴けばきっと踊り出してしまうだろう。
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"踊る世界平和"----それぐらいフレデリックの踊るビートに対する真摯さは曲や歌詞に表れる。フックのある一見ネガティヴなワードを肯定的にひっくり返すオセロ的リリックに決意を込めた「オンリーワンダー」を皮切りに、四つ打ち以外にも力技のハイパー・ブラック・コンテンポラリーと呼べそうなグルーヴにチャレンジした「KITAKU BEATS」や「CYNICALTURE」。グッとBPMを落としたサンバ・テイストの「サービスナーバス」やサイコビリーな「バジルの宴」など、音楽ジャンルもリリックも情報量は過積載気味。だが、それが消化不良を起こさないのはフレデリックのメンタリティがある種、清潔ですらあるからじゃないだろうか。"戦わない戦い方を僕たちは知ってるはず"と歌うラスト・ナンバーの真剣さに、明らかに次のステージが見えた。
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メジャー・デビュー盤収録の「オドループ」で独特のビートと中毒性たっぷりのメロディと、ユーモアある言葉遊びでフレデリック・サウンドを確立。そしてそのサウンドを、新作を以って、アップデート。改めて"名刺代わりの1枚"と言えるフレデリック初のシングル作が届いた。"みんなちがってみんな優勝"、"オンリーワンなんだ"と、頑張る人を認めてくれるようなメッセージと三原健司のエモーショナルな歌声が背中を後押ししてくれる表題曲。さらに、CD化されていなかったライヴの定番曲「プロレスごっこのフラフープ」もようやく収録。そして、緩やかなビートを刻む「みつめるみつあみ」では、憂いを帯びたグルーヴでフレデリックの裏の顔も覗かせる。もしかしたら今作にはフレデリック"三種の神器"が揃っているのかもしれない。
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ドラマー脱退後の3人体制初となる作品は過去最高にバンドが裸だと思う。フレデリックの音源と言えばユーモアのかたまりともいうべき様々なギミックとリフレインによって中毒性を生み、リスナーを奇妙な世界へと誘うような楽曲が多かった。だが今作は歌謡曲テイストのメロディと80sライクなシンセ・ポップが融合し、カラフルなセンチメントが終始美しく花開く。そこに乗る言葉は"会いに行くよ""君と涙コミュニケーション""ハローグッバイ""だから本心に触って"など、聴き手へまっすぐ語りかけるものばかりだ。コーラス・ワークもシンボリックなミディアム・ナンバー「USO」は三原健司のヴォーカルにも含みがあり、新たな魅力が輝く。洗練された音楽性と物悲しさの作る余韻が、心を捕まえて離さない。
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フレデリックは斜めだな、と思う。斜に構えているという意味ではなく、ものすごいカーブを描いて、むしろ途中で消えたり止まったり彷徨ったりして最終的にど真ん中に入るような、抜群かつ不可思議なコントロール・センスを持つ。それが彼らにとってのストレートなのだ。メジャー・デビュー盤『oddloop』から約7ヶ月振りの新作、テーマは"終わり"と"はじまり"。進み出すために作られた作品とのことだ。リフレインする歌詞が彼らを語るうえで欠かせない"中毒性"の要素のひとつだが、今作は言葉にとても深い意味が感じられ、その奥を追求したくなる。へんてこでありながら伸びやかで陰のあるポップなサウンド、じっくりタメを用い歌い上げるヴォーカルも効果的。最後まで煙に巻かれ翻弄される感覚すらも愉快だ。
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回文のような三原康司(Ba/Cho)の書く歌詞は相変わらずメロディと同時に降りてくるのだろうし、それを歌う双子の健司(Vo/Gt)の中性的でわずかに粘着する声と歌いまわしの高度さが耳に残りまくる2ndミニ・アルバムにしてメジャー・デビュー盤。前作ではいわゆるダンス・ロック的なトレンドとは一線を画す楽曲を提示したフレデリックだが、今回はタイトル・チューン「オドループ」で彼らならではの"踊れる音楽"の更新版を回答した印象。さらにいえば去年のDAFT PUNK以降のディスコ・ファンク的な潮流に対しても、勝手に"これがひとつのジャパン・オリジナルです"と紹介したくなる(本人たちには迷惑かもしれないが)。ジャンルの背景より、物理的な面白さを直感で捉え表現できるセンスは学習だけじゃ得られない。怪作にして快作。
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なんだ、このあまりに不可思議なポップは。神戸発、双子の兄弟が中心となって結成された4ピース・バンドによる、初の全国流通盤。ジャズやヒップホップ、ファンクなどを消化したしっかりとした肉体的かつ骨太なグルーヴ感がありつつも、曲全体の印象は、まるで海底に棲む謎の軟体生物。この謎の存在感を決定づけているのは、脱臼しつつもポップなフックを外さないメロディと歌声、そして強いメッセージ性を秘めながらもそれを感じさせないシュールでナンセンスな歌詞だ。なんと言うか、70年代のノーウェーヴ・バンドが、90年代USインディーと関西ゼロ世代を主食にして、おやつにJ-POPまでいただいちゃったような感じ。ほんと不思議で唐突なアウトサイダー・ポップ。本作のプロデュースは現Polaris、元FISHMANSの柏原譲。間違いなく、大器だと思う。
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5年間の活動休止期間を経て、"CITY POP×NEW WAVE"というコンセプトを掲げてカム・バックしたプラグラムハッチによる再始動後初のアルバム『CITY WAVE』。洒脱でロマンチックな「青山Dancing物語」や、美麗なコーラスが感傷を高める「Goodbye Rainy Bay」、虚無感に包まれた「ジオラマ都市」をはじめ、コンセプトから連想される洗練されたポップスという印象はありつつも、その奥底では、人間が音を鳴らすというエモーショナルな部分が強く渦巻いている。また様々なオマージュを入れながらも、"令和の80s"、"2080年のサウンド"と謳っている通り、決して懐古趣味的なものではない、今のバンドのモードを感じ取れる1枚。
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結成10周年を記念してリリースされる初のフル・アルバム。とはいえ決して集大成的なテンションではなく、既存曲(再録)+未発表の新曲という内容でバンドの"今"を強調している印象だ。歌謡曲、ディスコ・パンク、ニュー・ウェイヴなど様々なジャンルが混ざったサウンド、独特なこぶしの効いた相澤瞬(Vo/Gt)の歌、言葉遊びの面白い歌詞など、一筋縄ではいかない要素ももちろん彼らの大きな特徴のひとつ。しかし、自分の内側を曝すこ
とによって、あなたが今抱く感情や目前に広がる景色を全肯定する強さを見逃さないで欲しい。そのまっすぐさこそが、"ヘンテコ"の皮を被ったバンドの本質であろう。それを鮮やかに暴きながら、じっくりと起承転結を描く全12曲の流れが素晴らしい。
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SEKAI NO OWARI、スネオヘアー、パスピエら様々なアーティストと共演を果たし、注目を集める紅一点4ピース、プラグラムハッチの1stミニ・アルバム。収録されている6曲ともに、レトロな雰囲気漂う懐かしいメロディが昭和の歌謡曲を思わせる。しかし古臭さを感じないのは、リヴァーブの効いたギター・サウンドにノスタルジックなキーボードの音色、メロディアスなベースと多彩なドラムが今時のポップさを醸しているからだろう。また、相澤 瞬(Vo/Gt)の芯が太く中性的な歌声も変声期前の少年のようで印象的。コミカルなMVで話題を呼んだリード・トラック「涙のレイテンシ」から、センチメンタルなラスト・ナンバー「君にうつつ」まで、彼らの世界観にどっぷり浸かってしまう1枚。
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夜の本気ダンスから1年8ヶ月ぶりのCDリリースとなるミニ・アルバムが到着。本作には、イントロからエッジの効いたギターのモンスター・リフで畳み掛ける「審美眼」をはじめ、疾走感のあるアンサンブルで駆け抜ける「STARLET」、ソリッドな質感のサウンドが癖になる「エトランゼ」など、"夜ダン流"ダンス・ロックを惜しげもなく詰め込んだ全6曲が収録されており、ミニ・アルバムと言えど聴き応えは抜群だ。昨年2021年1月にリリースされたミニ・アルバム『PHYSICAL』は初めてホーン・セクションを導入するなど自由度の高い作品となったが、本作では打ち込みが随所に散りばめられており、前作に引き続き自由度の高いモードでありながら、より深化を遂げた夜ダンのクリエイティヴに驚愕することだろう。
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前作で初のアニメ・タイアップを獲得した夜の本気ダンスが、今回はドラマ主題歌に初抜擢! TVドラマ"セシルのもくろみ"のタイアップ曲/今作の表題曲であるTrack.1「TAKE MY HAND」は、エッジを効かせたダンサブルな曲でありつつ、中盤では米田貴紀(Vo/Gt)の色気たっぷりの歌声も聴かせていて、幅広い人の心を捉え得るキャッチーな仕上がりに。そして、6曲のライヴ音源のメドレーとなるTrack.3「HONKI DANCE TIME」では、臨場感のあるサウンドや掛け声で、彼らが今も変わらず"ライヴ・バンド"として愛されるわけを証明してみせた。憂鬱な気分すらも吹っ飛ばす強力なダンス・ビートを放つ"夜ダン"は、今後邦ロック・シーンに新たな爪痕を残すだろうと、今作を聴いて改めて確信。
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Track.1「SHINY」はアニメ"境界のRINNE"第3シリーズのオープニング・テーマとして書き下ろされたもの。初のタイアップに影響されたのか、風を切るように爽やかな同曲は、ダンス・ロックというよりもスタンダードなロックンロールと呼んだ方が良い感じだ。しかしだからこそ、このバンドがずっと守り通してきた"踊れる"ビート&リフがニュートラルな温度感で活きている印象。4曲とも違うテイストだが、ここまで冒険できたのは、昨年末からの新体制に手応えや自信を感じているからだろう。聴き進めるたびにいろいろな発見があるが、個人的にはTrack.3「Blush」の歌謡ロック的サウンドがツボ。実は色気抜群のこのバンド、こういうアプローチもアリなのでは。
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本当にこのバンドのスタンスはブレない。本能を刺激するビートと執拗に繰り返すギターのフレーズ、そして米田貴紀(Vo/Gt)による独特のバネのあるメロディ。手練手管のテクニックで聴き手の心と身体を踊らせる夜ダンの本懐はここにきてますます洗練されてきた。今作はメンバー・チェンジを経た夜ダンが2016年最後にリリースする初のメジャー・シングル。バンドの大きな武器であるサビの爆発力に一層スケール感が増した「Without You」も、ポップなエッセンスが新境地となる「LIBERTY」も、いまの夜ダンだからこそ鳴らせるネクスト・ステージだ。どちらも多分に解釈の余地を残した歌詞だが、"聴く人の存在があってこそポップ・ミュージックである"という信念を表と裏から描き出したようなところも米田らしい。
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遂に本作を以ってメジャー・デビューを果たす夜の本気ダンス。とはいえ、やはりこのバンドのことだ、本人たちに浮き足立っている様子はない。たしかな実力を持つライヴ・バンドとして全国各地のイベントからオファーがある現状でも、クールに自らの現状を把握し、自分たちがやりたいことをしっかりと見据えているのだということが伝わってきた。1stアルバムに引き続きバンド名にもある"ダンス"をアルバム・タイトルに据えた本作では、ミドル・テンポの楽曲をわずかに留めながらも、ひと際シャープになったそのサウンドと多彩なアプローチで魅せてくれる。全10曲を聴き終えた感想は"相変わらず頑固だなあ"といったところだろうか。でも、この感じがやっぱり信用できたりする。
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ライヴ・バンドとしてフェスやイべントで百戦錬磨の存在感を発揮している今の夜の本気ダンスの無敵感が、見事に結晶化したシングルである。Track.1「By My Side」、これはキャッチーなリフと絶妙なファンクネスを孕んだ四つ打ちビートが絡み合う、彼らが得意とするダンス・チューンだが、今まで以上に曲そのものの"重み"が増した。各楽器の織りなすアンサンブルが、まるで重戦車の如き迫力で耳に迫ってくる1曲。とにかくヘヴィ、且つグルーヴィ。そしてTrack.2「Show down」、これも性急なダンス・チューンだが、その上に彼らの本来的に持つメロディアスな側面が強く出ている。米田の歌声も強く深くなった。もはや"勢いのある新人"のカテゴリーからは大きくはみ出すスケールの大きさを感じさせる1枚だ。
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Track.1のタイトルが「WHERE?」。素晴らしい。君は何処にいる? 僕は何処にいる? 答えは何処にある?――京都の4人組、夜の本気ダンスは、記念すべき1stアルバムの初っ端から道に迷っている。そして、"迷うこと"を大いに楽しんでいる。ダンサブルなガレージ・ロックだけでなく、メロディアスなギター・ポップや爽やかな歌モノも消化する音楽的振り幅。それは彼らが、踊ることとは身体だけでなく心も揺らすことであると本能的に理解している証だろう。そして歌詞の随所に見られる"若さ"への言及は、彼らが成熟よりも未熟を、安定よりもロマンを求めていることの証明。完成なんて求めるな。動き続けろ、変わり続けろ。この"生"というフロアで、本気でダンスし続けろ―― このアルバム、僕はそんなメッセージとして受け取った。
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京都出身の4人組による、2月にリリースされたTOWER RECORDS限定シングル『B!tch』に続くデビュー・ミニ・アルバム。音楽的にはFRANZ FERDINANDや初期ARCTIC MONKEYSといった00年代に登場したUKインディー・ロック勢からの影響を強く感じさせる、ハイテンションでグルーヴィなダンス・ロックを基調としており、まだ荒削りな部分はあるものの、1度聴いたら耳に残るキャッチーなフック満載のメロディや、収録された6曲すべてに違った方向性やアイデアを取り入れようとする音楽的野心からは、バンドの器量の大きさと、この先の飛躍を感じさせるに充分な魅力を感じ取ることができる。すべてのものには終わりがある――そんな刹那性を極めてドライに歌う、6曲中最もヘヴィでサイケデリックなラスト・トラック「愛は終わり」が特にいい。
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大阪の名物サーキット・イベント"MINAMI WHEEL"で200人キャパのライヴハウスにプラス150人が押し寄せたという、関西の雄がいよいよ1stシングルをドロップ。思えば今ほど高速BPMと4つ打ち全盛以前にはUKインディーとシンクロしたバンド、例えばSISTER JET やVeni Vidi Viciousが気を吐いてたなぁなんて思い出す(もちろん、今も健闘してるのだが)。彼ら、夜の本気ダンスもクロいフィーリングを感じさせる、4つ打ちというより16ビートを感じさせるビート、GSやサイコビリー、ひいてはUKインディーとのシンクロする洒落っ気も満載。ヴォーカルも粗野さの中に艶があるタイプで、久々に色気のあるロックンロール・バンドに出会えた印象。もっと曲も聴きたいし、何よりライヴが観たい!
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初のダブルAサイド・シングル。男性でも引きそうなひがみ、恨みは影を潜めつつ、実はそうした破壊衝動を押さえ込んで自分と戦いながらも、それこそ"いいひとどまり"と自覚する切なさは過去最強。しかしそこはメロディを磨き込んだことで、むしろ柴田隆浩(Vo/Gt)の力の限りの正直さと誠実さが違和感なく耳に入る仕上がりに。一方、相変わらず被害妄想一歩手前の自尊心で"スマートなんかなりたくない"と歌う怖がりの側面も健在。が、ドライヴする音像は案外スマートだったりして、音楽的進化を忍ばせるあたりがいかにも柴田隆浩である。そして「スマートなんかなりたくない」のCMエディションに柴田が思う"そんなことはスマートじゃない"が明確なので併せて聴いてほしい。このシングルがどこまで届くか? 節目になりそう。
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以前のグランジ・テイストのささくれた音像にも説得力があったが、柴田隆浩、梅津拓也の新体制"忘れらんねえよ"が打ち出してきたのは、意外にもハイファイで音圧もあるストロング・スタイル。しかも1曲ごとにカラーは異なり、思い込み満載の男が、吠えるだけでなくそのままの"俺よ届け"と歌う表題曲でのタフになったヴォーカルはまっすぐ刺さる。対照的に、そんな自分を俯瞰しつつ想いを寄せる人の幸せを願う「うつくしいひと」の切なさと清々しさは新しい。また、全曲でサポート・メンバーのマシータがドラムを演奏している中でも、そのスキルが光るハイパー・ラウドで重厚な「俺の中のドラゴン」のバカバカしさも忘れらんねえよならではだ。開き直りでも逆ギレでもなく、俺全開なのに暑苦しくないバランスに見事に着地。
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例えば忘れらんねえよの柴田に、クリープハイプの尾崎世界観のようなロック詩人としての才能があったら、例えばバンドにフラワーカンパニーズのような艱難辛苦を乗り越えたキャリアがあったら、それはそれで"尊敬"の対象になってしまうだろう。ドラムの酒井が脱退するバンドの節目に、新たな決意を込めたこのベスト・アルバムには、冒頭から酒井への手紙のように受け取れる「別れの歌」が淡々と、しかし熱く綴られる。他にも新曲2曲を含め、今1番新しい忘れらんねえよからスタートし『犬にしてくれ』、『あの娘のメルアド予想する』、『空を見上げても空しかねえよ』、『忘れらんねえよ』から19曲の代表曲をセレクト。バカで被害妄想で、でも誰よりあなたを笑顔にさせたい。限りなく我々の隣で戦う男たちの真実の記念碑だ。
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アルバム・タイトルが発表されたとき、いわゆるR&R往年の負けの美学や危うい内容をイメージしたのだが、違った。タイトル・チューンでその意味がわかるのだが、誰のどういう状況で犬になりたいのかは、ぜひあなたの耳で確かめて欲しい。おそらく相当意表を突かれるはずだから。サウンドは「ここじゃないけどいまなんだ」で次のフェーズを示唆した通り、ささくれだったグランジが、考えても悩んでも仕方ないのに未だ卑屈になったり嫉妬に苛まれる心情にハマりすぎていて泣ける。そして作品としての完成度の高さがキャラとしての忘れらんねえよ好き以外に十分訴求する力を持ったことで、潜在的なあらゆる切実さを抱えた誰かに届く可能性を感じる。異彩を放つシンセ・ポップも1曲だけ収録されていて、その美しさも意義深い。
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テレビ・ドラマを発端に"こじらせ男子バンド"としてバズを起こすなど、前作『あの娘のメルアド予想する』で再びダメな部分を吐露して以降、焦点が定まった今、投下されるのはタイトル通り、何度こけても好きなことに向かっていく"ばかもの"の歌ばかりだ。一聴、青春パンクみたいなシンプルさだが、その実、シンプルなサウンドで成立するだけのリアルな思いが詰まったタイトル・チューンや「俺達の日々」。この2曲には"世界を変えんのは優等生じゃない ばかみたいに泣いてコケにされて見下されたやつさ"という同じ歌詞が登場する意味も大きい。そして歌い始めたばかりの10代の如き柴田の声に心震える「今夜いますぐに」、殺伐と真実がせめぎ合う切実な「ここじゃないけどいまなんだ」。一塊の意志に満ちた強烈なシングル。
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タイトルからして痛いし怖い。しかもこのご時世に"メルアド"である。でも、肝心なのは妄想や恋そのものじゃない。リード曲「ばかばっか」では絆ソングに涙する薄っぺらいヤツらを唾棄しながら、好きな女の子は知らない男のものであり、自分は好きでもない女で童貞を捨てる。でも自暴自棄になる理由の核心には必ず恐ろしく純粋な思いが存在することは多くの人が共感するところだろう。本音しかない言葉と研ぎ澄まされた3ピースのアンサンブルが刺さりまくる。かと思えばWiennersの玉屋2060%とMAXが参加したダンス・チューン「体内ラブ~大腸と小腸の恋~」のグルーヴ感の新鮮さも伺える。そして人気曲を収めたライヴ音源の生々しい音像、これも今の彼らの意志表明だ。
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数々のフェス出演等、精力的なライヴ活動で、その名のごとく一度見れば忘れられない強烈な印象を残してきた3ピース・ロック・バンド、"忘れらんねえよ"の1年7ヶ月振りの2ndアルバム。1stの特徴であった柴田隆浩(Vo/Gt)の"可笑しくもやがて悲しき"個人的葛藤を歌う世界は若干影を潜め、より力強く包容力を見にまとったことにより、柴田自身の心情の変化とバンドの成長を感じさせる。先行シングル曲「この高鳴りをなんと呼ぶ」「僕らパンクロックで生きていくんだ」で聴かせたクオリティの高い粒揃いの楽曲たちをたっぷり堪能できる名盤だ。マイナビCM曲、アニメ「はじめの一歩 Rising」OPテーマ曲収録、BEAMSとのコラボ等タイアップの話題について柴田は"手段であって目的じゃない"とはいうものの、これまで応援してきたファンにとってこれらは忘れらんねえよからの回答であり、大きなプレゼントだ。
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映画やマンガの中みたいなことなんて起こらないけど、平凡な日々の中にも小さな幸せや、ちょっとした悲しみはいくつもある。つい置き去りにしてしまう、そういった気持ちこそ大切にしたいなと、彼らの音楽を聴いて思った。今年の2月にメジャー・デビューを果たした荒川ケンタウロスが、フル・アルバムをリリース。ノスタルジックなメロディと軽快なリズム、5人編成を活かした色とりどりのサウンドは誰の耳にもすんなり入ってくる。そして歌われるのは、眠れない夜や、故郷での思い出、淡い別れや、過ぎたあの夏のこと。大事件じゃないし、いつかは忘れちゃうような些細な出来事かもしれないけれど、そんなちょっとした毎日がキラキラして見えて、少し特別に思えて、明日がちょっと楽しみになる、そんな1枚。