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DISC REVIEW

ガタカ

ユプシロン

ガタカ

少年のような少女のような、独特の歌声を持つユプシロン。さらに、その歌声を歌詞にリンクさせた繊細な表現にもこだわっている。そして、その歌詞にも様々な学問や芸術、時代からの影響が覗く。ギュッと歌詞を詰め込んで忙しなく疾走するユプシロン節が光る中で、ドラマチックで壮大な「祭壇」や、"今日は きっと記憶にも残らない/よくある一日だね"と素朴な今を慈しむような「ユビキタス」といった、違った魅力も乱反射している。トラックもバラエティに富んでおり、様々なルーツが見えてくる。バーチャル・シンガーでありながら、誰よりもリアルなシンガー・ソングライターであることを世に知らしめる1枚。

後光

Lucky Kilimanjaro

後光

今年もLucky Kilimanjaroの夏がやってきた。そう思いながら、気づけばこの2曲をエンドレス・リピートしているリスナーも少なくないだろう。なんてったって今年のシングルも超踊れる。表題曲「後光」はどこか涼しげで、しかし聴けば聴くほど熱量が感じられるフィルター・ハウス。ファルセットがメインのヴォーカルは"歌う"というよりもサウンドと一体化していて、楽曲の雰囲気作りに貢献している。ダンス・ミュージックの主人公はこの音に揺れるあなた自身だと伝えるうえで、"後光"をモチーフとする歌詞もユニークだ。カップリングの「でんでん」は浮遊感のあるサウンドも、ニロ抜き音階のメロも、歌詞も、とにかく中毒性が高い。声だけで成立している箇所も意外と多く、実験的な楽曲だ。

ニューサンス

sajou no hana

ニューサンス

渡辺 翔、キタニタツヤ、sanaの3人で結成されたバンド sajou no hanaから約半年ぶりとなるニュー・シングルが届いた。迷惑事/厄介事を意味する"ニューサンス"(nuisance)をタイトルに据えた表題曲は"TVアニメ「スパイ教室」2nd season"EDテーマ。渡辺 翔が手掛けた歌詞は、欺瞞に満ちた現代における生きづらさが"見れない消えない汚れた生"、"ご立派に生きられて良かったね 優しさレイズ/幸せの強要今更苦しいだけ"などアイロニックな視点で綴られており、それを情感たっぷりに歌い上げるsanaのヴォーカルに終始圧倒される。曲調が二転三転するスリリングな展開、ダークな世界観を鮮烈に表現するソングライティングが痛快極まりない。

LOTUS

THE SPELLBOUND

LOTUS

THE SPELLBOUNDの進化のプロセスには、小林祐介の肉体性から離れているような機械的な言葉の羅列が生み出すちょっと呪術的なヴォーカル・アプローチがある。今回のシングルは"LOTUS"という大きなテーマの中で表題の「LOTUS」と、そのリアレンジ版である「ここにぼくらがいること」の2曲が双子のように存在することでしか実現しない"体験"がある。「LOTUS」では中野雅之が作る光の中、いや、光そのものになるようなシンセで構築されたサウンドスケープがあり、「ここにぼくらがいること」ではマントラのように繰り返し祈ることで生まれるトランス感がある。逆境を示唆する状況を綴る歌詞がリフレインされる先にほのかに灯る"同じ夢を見ようよ"というワード。スペルバならではの構造を持った会心のシングルだ。

ファンファーレ

BRADIO

ファンファーレ

BRADIOが、TVアニメ"自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う"OPテーマ「ファンファーレ」を表題に据えた新シングルをリリース。自然と身体が動いてしまうファンクネス溢れる表題曲は、ホーン・セクションと軽快なカッティング・ギター、コーラスで彩られた"これぞBRADIO"な1曲に。またc/wには5月にSHIBUYA CLUB QUATTROにて行われた[DANCEHALL MAGIC Celebration Party "TOKYO"]よりライヴ音源3曲を収録。"どうせ倒れるなら後ろより前向きに 僕らの行く道がファンファーレな"(「ファンファーレ」)――華やかなサウンドと自身を鼓舞する歌詞、レーベル移籍後第1弾シングルに相応しいポジティヴィティが詰まっている。

人類滅亡ワンダーランド

ブランデー戦記

人類滅亡ワンダーランド

2022年8月結成の3ピース・バンド、ブランデー戦記。初のミュージック・ビデオ「Musica」が300万回再生を突破するなど話題のルーキーが、1st EPをリリース。同曲で一気に注目を集め期待値が高まるなか、その期待を優に超えてくる本作で、すでに確立されたバンドの個性と確かな将来性を見せつけた。TikTokなど若い世代の間で昭和の名曲がリバイバル・ヒットするなか、そんな昭和歌謡ブームとも共鳴する歌謡曲テイストなメロディが粗削りなロック・サウンドの上に乗り、懐かしさと新しさが共存する絶妙な空気感を醸す。J-POPの中にフォークのエッセンスを感じさせるあいみょんの楽曲が若者から親世代までの心を掴んだように、ブランデー戦記の哀愁漂うサウンドもきっと全世代に刺さるはず。

終活大布教盤

終活クラブ

終活大布教盤

目を引く意味深なバンド名にポップなキャラクター、少年あああああ(Vo/Gt)の個性的な脱力系ヴォーカルに少しひねくれた歌詞。それでいて夏フェス映えしそうなJ-ROCKを鳴らし、独自の世界観を構築している5人組バンド 終活クラブ。"終活"という一見重たく映る言葉に"悔いを残さないように音楽を最後までやり切る"という熱い思いを込めるひねりの効いたワード・センスは、歌の中でもいいスパイスになっている。チャイナ感漂うサウンドが耳に残るミディアム・チューン「嘘マフィア大暴走」、手拍子や合いの手を盛り込んだキャッチーなダンス・ロック・ナンバー「ハチェットダンス」、ライヴでの大合唱が浮かぶアグレッシヴな1曲「感情とマキシマイザー」に、最後のメロウな横ノリ曲「環状線」では新たな一面も覗かせた1st EP。

飛んでゆけ

PEDRO

飛んでゆけ

アユニ・D(ex-BiSH)のバンド・プロジェクト PEDROが再始動。ドラムにゆーまお(ヒトリエ)を迎え、新生PEDROとして活動再開第1弾シングルを完成させた。表題曲「飛んでゆけ」は、サウンドも歌詞も歌声も、そのすべてが温かいチルなロック・ナンバー。聴いているだけで日々のストレスからくる心の肩こりを優しくほぐしてくれるような感覚になった。ギタリストとしてプロジェクトを初期から支える田渕ひさ子が書き下ろしたカップリングの「手紙」は、表題曲とは対照的に疾走感のある1曲。味のあるサウンドで鳴らすギター・リフが先導し、一気に駆け抜ける様が心地よい。いずれの楽曲からも、音楽性が活動休止前からの地続きであることがわかるし、その一方で新体制の新鮮さも感じられる仕上がりだ。

PER→CENT→AGE

CENT

PER→CENT→AGE

セントチヒロ・チッチ(ex-BiSH)がソロ・プロジェクト CENTとして1stアルバムをリリース。文字数の都合ですべて記載ができないのが悔やまれるが、本作には真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、富澤タク(グループ魂/Number the.)、おかもとえみ(フレンズ)ら豪華アーティストが多数参加しており、"セントチヒロ・チッチの「好き」が詰まった作品"と謳われていることにも納得の内容だ。ジャンルを飛び越えたバラエティに富む楽曲に乗せて、時には優しく丸みを帯びた歌声で、時にはストレートな歌声でと、様々な表情を見せる彼女の歌唱の引き出しの数には驚かされた。元清掃員(※BiSHファン)にはもちろんこと、広い音楽リスナーにおすすめしたい。

ExWHYZ LIVE at BUDOKAN the FIRST STEP

ExWHYZ(ex-EMPiRE)

ExWHYZ LIVE at BUDOKAN the FIRST STEP

"EMPiREを解散したこと、そしてExWHYZを結成したことは正解だったのか?"――そんな問いに対する答えを証明する、グループにとっての記念碑的な日本武道館公演を記録した映像作品。バチバチの照明とVJ映像、そして極上のダンス・ミュージックを軸にした音楽で"クラブ武道館"を作り上げたライヴの模様は、映像作品として視聴しているだけでもオープニングからアドレナリン全開になるはず。ファンが歓喜したアンコールでのあのサプライズには今観ても胸が高まった。彼女たちの歌とダンスのクオリティと、顔面偏差値の高いヴィジュアルから繰り出される表情、それらを様々なアングルと距離で堪能できる珠玉の90分は、まさに眼福のひと言だ。ファン必携なのはもちろん、入門編としても推薦したい1枚。

DA・DA・DA・ダイスキ!!

chuLa

DA・DA・DA・ダイスキ!!

超ハイテンポなアッパーチューンで元気を届けるchuLaのメジャー4thシングルは、昨年5月に新体制をスタートさせ、今年7月にTOKYO DOME CITY HALLでのワンマンを大成功に収めたこともあり、その成長と自信が見事に反映されたエネルギッシュな1枚に仕上がった。メンバー全員のキュートな魅力を惜しみなく前面に出した表題曲をはじめ、カッコかわいいラップが堪らない「プールサイドサマー」(Type-Aのみ)、ファンへの想いを個性豊かな歌声で歌う「cross road」(Type-Bのみ)、ハードなロックをクールにキメた「Pump it up!!」(Type-Cのみ)と、ただかわいいだけではなく、すべての力を味方につけ、個性や才能を存分に発揮したというところに彼女たちのこのユニットにかける想いが窺える。8人のこの先の未来に期待が高まる。

OZ two

MIGMA SHELTER

OZ two

新メンバー3名が加入し、さらなる新体制となったMIGMA SHELTERによる"オズの魔法使い"を題材にした3部作シングルの第2弾『OZ two』。壮大でファンタジックな世界観から幕を開ける1曲目の「Be alive」は、主人公のドロシーと、カカシ、ブリキの木こり、ライオンの旅路を想起させる楽曲だ。曲が進行していくにつれて、徐々に雲行きが怪しく不穏になっていく展開は中毒性が高い。2曲目は「A land switched by a witch」。こちらは魔女によって変えられてしまったオズの国に佇むカカシに焦点を当てたと思われる1曲で、ミシェルらしい踊れるサウンドと共に歌詞の言葉遊びも堪能できた。次作でミシェルなりの"オズの魔法使い"がどう完結するのか、期待が高まる。

One Room Adventure

MADKID

One Room Adventure

『Change The World』に続く8枚目のシングル。綿密に作り込まれたサウンドと爽やかなメロディが印象的な表題曲は、TVアニメ"Lv1魔王とワンルーム勇者"のOPテーマとしてオンエア中なので、すでに耳に馴染んでいるオーディエンスも多いのでは。これまでにない趣の楽曲と前向きなメッセージからは、グループの新たな意思も感じられたりして、妙にわくわくする。FLOWのメンバーが手掛けたカップリングの「Future Notes」は、バンド・サウンドを軸にアッパーなラップ、泣きのメロ、美しいハーモニーが絶妙のバランスで絡み合い、最高にクールな仕上がりに。キャッチーだけど力強く、揺るぎない勇気を与えてくれる。彼らの想いはもちろんのこと、その人柄までも凝縮したかのような2曲。爽快でついつい何度もリピートしてしまう。

カノン

古墳シスターズ

カノン

結成10周年の記念すべき年にリリースされた最新アルバムは7曲の完全新曲に加え、2021年5月にリリースしたミニ・アルバム『ハブ・ア・グッドバイ』以降に配信リリースされた楽曲、会場限定シングル『ハブ・ア・グッドナイト/サマーゴースト』のみに収録された楽曲を含む、全13曲入り。"シンプル且つ、心に響く強靭なサビ"を意識しながら、今まで以上に多彩なアプローチを取り入れ、1曲の中にも心の揺れ動きや感情の機微が見える楽曲たちは、古墳シスターズの最新型。心象風景を丁寧に描き、"報われなければ嘘だよな"との歌詞が胸に迫る「季節を待って」は、古墳らしさと10周年ならではの表現力や説得力を併せ持つ、今作のリード曲でありクライマックス。大丈夫、きっとその季節はすぐそこに迫ってきてるはずだから。

ROCK'N ROLL Recording Session at Victor Studio 301

斉藤和義

ROCK'N ROLL Recording Session at Victor Studio 301

デビュー30周年のアニバーサリーにバンド・メンバーとの一発レコーディング作品を制作するのがなんとも斉藤和義らしい。マメにライヴに足を運ぶファン以外はおそらく今の彼らの演奏がこれほどソリッドで、時にカオスなロックンロールであることを知る人は少ないのではないか。冒頭、斉藤と真壁陽平のゾクゾクするようなツイン・ギターにKO。真剣勝負の抜き差しの美学、時代を超えるバンド演奏のすごみ、ラテンやダンス・ビートも消化する貪欲さにハマるとあっという間にラストに辿り着く。まっすぐ放たれる斉藤の歌はいい意味で不変。やめたいのに自分と人を比べてしまう「ジレンマ」の歌詞が四半世紀を経ても刺さり、不安はあるけれど群れの中にいられない心情が「歩いて帰ろう」で肯定されるように受け止めてしまった。

ハッピーエンドを始めたい

Lenny code fiction

ハッピーエンドを始めたい

Lenny code fictionから約5年ぶりのアルバム『ハッピーエンドを始めたい』が届いた。本作には「脳内」("炎炎ノ消防隊"第2クールED主題歌)、「ビボウロク」("BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"2022年7月クールEDテーマ)、「SEIEN」("魔王学院の不適合者 Ⅱ ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~"OPテーマ)という3曲のTVアニメ・タイアップを含む全11曲を収録。片桐 航(Vo/Gt)がひたすらに自分と向き合うことで生まれたというアルバムだが、コロナ禍で思うように活動ができなかった期間を経て歌われるラスト・ナンバー「幸せとは」はバンドを続けることへの喜びと気概に満ちている。

いい気分さ

インナージャーニー

いい気分さ

ギミックなしの4ピース・バンドの大らかさはそのままに、様々な時代のロックのエッセンスを曲作りやアレンジに投影した新章を感じさせる3rd EP。ソウルフルなギターカッティングやビートにモータウン・ポップを感じさせる「PIP」は面倒なことから目を背ける"君"は自分でもあるのでは? という歌詞の鋭さとの掛け合わせが新鮮。本多 秀(Gt)初作曲楽曲「ステップ」ではカモシタサラ(Vo/Gt)の第三者目線の歌詞も楽しめる。代表曲「グッバイ来世でまた会おう」にカモシタ自ら異議もしくは違う視点で生きる姿勢を書いた「手の鳴る方へ」も興味深い。大きなグルーヴで進んでいく旅の匂いのある「夜が明けたら私たち」、UKロック的なメロディも聴こえてくる「ラストソング」と多彩な全5曲。1曲ごとに異なる情景が立ち上がる歌唱もじっくり聴きたい。

ANTENNA

Mrs. GREEN APPLE

ANTENNA

活動再開後、初となるフル・アルバムは初めてタイトルをあらかじめ決めず、感受性を信じ、自由に生み出した曲を緻密に制作で形にしていったアルバムだ。現在進行形のミセスのフル・コースであり、ドーム・ライヴへの期待が否応なく高まる完成度とスケールの大きさが実在している。ハード・ロック・ギターが響き渡る「ANTENNA」もケルト音楽を彷彿させる楽隊調の「Magic」もどちらもドーム・アンセムのスケールを持っているのが今のミセス。宇多田ヒカルにも通じるようなR&Bの先鋭的な構造を持つ「Blizzard」、藤澤涼架(Key)がストリングスとホーンのアレンジに参加している「ケセラセラ」のオーケストレーションの楽しさ、メンバー3人の演奏がメッセージでもある「BFF」など、ブラッシュアップのひと言に止まらない自由な現在地が鮮烈。

踊れ!ランバダ

ネクライトーキー

踊れ!ランバダ

1年2ヶ月ぶりのリリースとなる新作は、ミラーボールの下でエフェクターをフロアに踊るジャケットに象徴されるように、ポップとロックを独自の配合で織り交ぜていくネクライトーキーらしさが詰まったEP『踊れ!ランバダ』。耳に残るシンセサイザーのリフから始まり、解放感のあるサビに、"シャバダバ"と歌うコーラス隊、静寂を切り裂く泣きのギター・ソロに、しっとりと歌い上げる落ちサビと、凝った構成で中毒性抜群の「ランバダ・ワンダラン」を筆頭に全4曲が収録された。哀愁漂うレトロなミドル・チューン「今日はカレーの日」は本作の中で異彩を放っているが、ラストに向けて感情を高めていく熱量をしっかりと秘めている。ワンダーランドのような楽しい世界観と、作り込まれた読めない展開にワクワクする快作。

青のすみか

キタニタツヤ

青のすみか

SSWとしてはもちろん、他アーティストのサポートや楽曲制作/提供などマルチに活躍するキタニタツヤが、EP『青のすみか』をリリース。TVアニメ"『呪術廻戦』「懐玉・玉折」"のOP主題歌として書き下ろされた表題曲は、物語でフォーカスされる五条と夏油の姿が頭に浮かぶ。戻れない過去を彷彿とさせる歌詞や学校のチャイムの旋律を用いたスキャットなどで彩られる儚い青春ナンバーとなっており、"呪術廻戦"ファンのみならず青春時代を通ってきた人たちも唸らせるに違いない。Mizoreと共同編曲した「素敵なしゅうまつを!」、コラボEP『LOVE: AMPLIFIED』より「ラブソング feat. Eve」のセルフ・カバーも収録。キタニの真骨頂と言えるオルタナティヴ・ロック・サウンドにも注目してほしい。

ENIGMASIS

UVERworld

ENIGMASIS

豊沃だ。持ち前の才覚に、長いキャリアに裏打ちされた経験値、そして何よりも各メンバーが徹底する求道的なスタンス。それらを兼ね備えたUVERworldは、ここに来て今まで以上に音楽に対して貪欲な姿勢を示した作品を完成するに至ったのだと思われる。鮮烈なコラボが実現している「ENCORE AGAIN (feat.SHUNTO from BE:FIRST)」や「FINALIST (feat.ANARCHY)」も興味深いが、「Don't Think.Sing」から溢れ出すハイエナジーにしてソリッドなリアリティにはただただ圧倒され、「THEORY」から伝わってくる熱き想いは聴き手の胸を強く打つ。ライヴを想定して作られたというこの収録曲たちは、7月末に開催される日産スタジアム公演でも豊沃にして眩しいほどの輝きを見せてくれるに違いない。 

音響レジリエンス

アンダーグラフ

音響レジリエンス

ミニ・アルバム『音楽の盾』以来、1年1ヶ月ぶりのリリース。コロナ禍で戦い続けてきた彼ら、そして私たちを"音響"でレジリエンス(回復)させてくれる1枚。音楽的なチャレンジと、"遺していく ただ遺していく"という強い決意に満ちた歌詞の「蘇生法」を1曲目に持ってきたところからも、ただならぬ意気込みを感じる。とはいえ、シリアスなムードだけではなく、言葉遊びやダブル・ミーニングを盛り込んだ「レレレラララ」、アコースティックでも似合いそうな温かみのある曲調の「アイかわらず」など、音楽の"楽"を表現した楽曲も。曲名にもあるけれど、今作は私たちが"薄明"から光に向かう"これからを"描いた"航跡"そのものだと思うし、ノンフィクションを見ているような感覚になる。

ハードロマンチッカー

ジュウ

ハードロマンチッカー

社会に"銃"口を向け、反骨精神を燃料に"自由"を追い求める。そんな無骨な生き様を曝け出すロック・バンド"ジュウ"の2nd EP。遠藤貴義(Dr)を正式メンバーに迎え勢いづくバンドの"今"の熱量をぶつける「暴力」で幕を開ける本作は、HOTVOXのRIKによるラップをフィーチャーするなど、新たな挑戦が見て取れる。中でも特筆したいのは、ジュウ流のラヴ・ソングとも言える「luv」や「110」。持ち味のグッド・メロディが映える爽やかなサウンドはまさに新境地だが、そこに乗せられたのは時に無様なリアルも映す彼らならではのリリック。"貧乏バンド"と揶揄し赤裸々に綴られた葛藤や、それでも"君がいないとダメだ"と歌うまっすぐな思い。"尖ってて優しい"バンドマンの生き様にグッとくる。

YOU KNOW ME

PIGGS

YOU KNOW ME

"全身全霊アイドル"をテーマに掲げ、各地のライヴハウスを歩いて回るという前代未聞の徒歩ツアーを敢行したり、ノンストップで109回歌って踊るMVを撮影(時間にして5時間超え!)するなど、まさに全力でその"全身全霊"を体現し続けるPIGGSのメジャー3rdシングル。表題曲は、繰り返される"君でなけりゃ"という言葉が印象的なギター・ロックで、"君"がいることと"君"でいることの大切さをエモーショナルに歌い、ポップで軽快なカップリングでは、これまで歩んできたグループの道のりを辿りそれを讃え、さらにはこれからの決意を歌う。4人の人生がそのまま重なるかのような飾り気のないサウンドとメッセージ。彼女たち同様もがきながらも全身全霊で生きている人たちに届いてほしい2曲。