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DISC REVIEW

S

Neon Future Part.1

Steve Aoki

Neon Future Part.1

昨年のSUMMER SONICで共演したLINKIN PARKに続き、今回、FALL OUT BOYをフィーチュアしたことで、彼の名前はロック・ファンの間でさらに知られることになるだろう。エレクトロ・ハウスのDJ/プロデューサーとしてのみならず、Dim Mak Recordsのオーナーとしてもその音楽センスを発揮しているSteve Aoki。メジャー・デビューとなるこの2作目のアルバムも前作同様、FOBに加え、EMPIRE OF THE SUNのLuke Steele、BLACK EYED PEASのwill.i.am、Katy Perryへの楽曲提供で知られるBonnie Mckeeら多彩且つ豪華なゲストを迎え、全曲にヴォーカル/ラップをフィーチュア。彼一流の研ぎ澄まされた感覚をより多くのリスナーにアピールするAoki流EDMをひっさげ、ポップ・フィールドに殴りこむ。

Wonderland

Steve Aoki

Wonderland

Dim Mak Recordsのレーベル・オーナーでありながら、自身もDJとして活躍するSteve Aoki初のオリジナル・フル・アルバム。彼の幅広い人脈がジャンルを越えた様々なアーティストを集め、その成果は楽曲に余すことなく詰め込まれている。Track.4の「Come With Me (Deadmeat)」やTrack.7の「Control Freak」はポップ・リスナーにも十分アプローチできるキャッチーさを備えつつも、ダンス・フロアで踊らずにはいられないナンバーに仕上がっている。一方、Track.3の「Dangerous」のゴリゴリとした癖のある攻撃的なサウンドは従来のリスナーの大好物に違いない。更にはTrack.6の「Livin My Love」のようにキュートなサウンドで遊ばせるのも忘れない。何が飛び出してくるか予測できないおもちゃ箱のようなアルバムを是非楽しんでいただきたい。

To The Bone

Steven Wilson

To The Bone

90年代、それまで影を潜めていたプログレッシヴ・ロックに再び光をもたらしたバンド PORCUPINE TREEの中心人物でもあるSteven Wilsonによるソロ5作目。今作にはPeter Gabriel、TALK TALKといったプログレからニューロマンティックまでを巡るポップネスが織り込まれた楽曲が並んでおり、その華やかな音像とラウドなアンサンブルから紡がれる音楽絵巻を広げれば、プレイヤー、シンガーとしての非凡な才能に触れることができるはずだ。イスラエルの女性シンガー Ninet Tayebを迎えたTrack.3「Pariah」での覚醒や、9分を超える大曲Track.10「Detonation」など、新たな可能性と類稀なる技術が絶妙にミックスされている。2017年以降のプログレを語るうえでマストな1枚。

Creatures Of An Hour

STILL CORNERS

Creatures Of An Hour

ロンドンの紅一点のバンドのファースト・フル・アルバム。これまでにEPやシングルを数枚リリースしてきたが、それまでの路線を継続した彼らの現在の集大成といえる一枚。儚げなウィスパー・ヴォイスに官能的且つ退廃的な音が絡み合って、時にサイケデリックに時にドリーミーな世界観を醸し出している。どこか懐かしくも新しいサウンドで、古い青春映画のサウンドトラックを聴いているような気分にもなる。似たような曲が多いのが少し気になるが、それは同時にこれからまだ進化を遂げる可能性を秘めているということでもあり、ファースト・アルバムとしては満点の出来じゃないだろうか。精力的にツアーも行っているようなので、この世界観をどうライヴで表現するのかぜひ観てみたい。

Perdida

STONE TEMPLE PILOTS

Perdida

新ヴォーカリスト Jeff Guttを迎え復活を果たし、2018年にはバンドとして2度目のセルフ・タイトル・アルバムをリリースしたSTONE TEMPLE PILOTS。彼らが現体制2作目のオリジナル・アルバムにして、バンド初となる全編アコースティックの作品を作り上げた。アコースティック・ギターをはじめ、フルートやアルト・サックス、マーキソフォンなどの楽器も取り入れられた、ブルージーな枯れた味わいのサウンドは、スペイン語で"喪失"を意味するタイトルも相まって、バンドが辿ってきた歴史と思わず重ね合わせてしまうような哀愁を帯びている。一方で、温もりのあるJeffの歌声からは希望も感じさせる。過去を受け入れながらも、着実に前へ進んでいくというバンドの意志が窺える作品だ。

Stone Temple Pilots(2018)

STONE TEMPLE PILOTS

Stone Temple Pilots(2018)

90年代のグランジ・ブームに乗り、デビュー時から大ヒットを飛ばした彼らは周囲の目を気にせずに快進撃を続けた。しかし、そんな彼らも10年代に再結成を遂げ、Scott Weiland解雇により、LINKIN PARKのChester Benningtonを迎えて5曲入りEPを発表するなど、紆余曲折の道のりを辿る。そして、ご存知のとおりScottとChesterの両名はすでにこの世にいない。それでもバンドは不撓不屈の精神で、前作に続き2度目のセルフ・タイトルを冠した新作を完成。新たにJeff Gutt(Vo)を招き、「Meadow」を筆頭に腰の据わった芯の太いサウンドとキャッチーな歌メロが見事に共存している。また、グルーヴィなオルタナ・ロックを爆発させた「Roll Me Under」と充実の楽曲群で復活の狼煙を上げている。

High Rise

STONE TEMPLE PILOTS

High Rise

フロントマンScott Weilandの解雇と、新ヴォーカルにChester Bennington(LINKIN PARK)を迎えたことを発表したストテン。セルフ・タイトルの前作(2010年)がバンド復活の狼煙を上げる好作だっただけに、ここにきての交代劇は残念だが(ファンにはまたかという思いもあるか)、その状況を打破するようにChesterを交えすぐに新たな曲作りをはじめた。最初のシングルとしてTrack.1「Out Of Time」をリリースしたが、これまでの味を守りつつエネルギッシュに進化をするという――老舗の誰にも暖簾は渡さないぜというべき心意気が曲に封じ込められている。Chesterの強く伸びやかな歌声が新鮮だが、ドープなメロディや陰影のあるコード感やサイケ感を洗練して、シャープに"今"を切り取った内容になっている。

Stone Temple Pilots

STONE TEMPLE PILOTS

Stone Temple Pilots

お久しぶりですね。お元気ですか。9年なんてそんな言葉じゃ間に合わない時間のはずだけれど、9年ぶりのこのアルバムを聴くと、お変わりないですねと声を掛けたくなるような出来映えである。90年代、クラシカルなロックとオルタナをバランスよく配合した、ポップなメロディ・ラインでスターダムに君臨した彼ら。2008年に再結成後、初のフル・アルバムとなる本作でも、彼らの持ち味は健在だ。キャッチーなメロディと後期THE BEATLESのようなコーラス・ワークがポップな彩を与える。足取り軽く、重すぎないサイケデリック感も彼ららしい。オールド・スクールなロックンロールが持つポップネスを見事に抽出した貫禄のアルバム。久しぶりに、何にも動じないカラッとしたアメリカン・ロックを聴いた気がする。

MIDNIGHT

STOROBOY

MIDNIGHT

音源発売を前にSUMMER SONICのステージに立ち、昨年デビュー・アルバム『STOROBOY』を発表するや、イベント、フェスに引っ張りだことなった5ピース、STOROBOY。2ndミニ・アルバムとなる今作は、本領発揮の1枚。80'Sポップスの、きらきらと瀟洒にとんがってる感やいきってる感じを、うまいこと手玉にとってロックに昇華している、遊び心ふんだんな内容。といっても、80'Sエッセンスを使ってシニカルに遊んでみたという斜めな視点じゃなく、グラマラスさや、がっちり肩に力の入った背伸びをする美、貪欲に最先端を狙っていくスピリットや瞬間を謳歌するバイタリティを愛し、憧れるエネルギーをサウンドへと落とし込んでいる。まとう雰囲気はクールなんだけれど、力づくで吠えている気持ちよさがいい。

Storoboy

STOROBOY

Storoboy

SUMMER SONIC 2012のオープニング・アクトとして大抜擢され、今最も勢いに乗るダンス・ロック・バンドSTOROBOYが放つデビュー・アルバム。2011年7月結成直後から話題を集め、ラジオ局での優秀楽曲賞を受賞やファッション・ブランドDIESELが手掛ける音楽サイトDESEL U MUSICでのフリー・ダウンロード・リリースなど話題に事欠かず、異例の早さでここまで駆け上がってきた。満を持して発表された今作は80'sディスコやエレクトロやロックを吸収しポップかつスタイリッシュにまとめ上げられており、その独自センスとバランス感覚はお見事。一発で耳に残るセクシーなメロディ・ラインも彼らの強み。華やかさと鋭さを併せ持った期待の大型新人だ。

strange world's end

strange world's end

strange world's end

対世間だけなら、怒りのベクトルも外を向くだろうが、人間の矛盾や虚しさに誠実に対峙した音楽を聴くと、ジャンルを越えてあらゆる人に刺さる表現が立ち上がる。活動約16年にしてついにセルフ・タイトルの3rdアルバムとなった本作。ドラムのフルカワリュウイチが正式メンバーとしてレコーディングに参加したことで、3ピースの骨格は安定し、且つ3リズム以外にパーカッションやシンセ、シンセ・ストリングスなどを導入しても揺らがないトライアングルが組み上がった印象だ。「暴発」でサイレンのように聴こえるギターや、助けを求める"メーデー"のリフレインは苦しくもリアルだし、いわゆる誹謗中傷や冷笑系に対する徹底した断罪を歌う「逆エヴォリューション」の、震えるような怒りなど、目を背けられない全10曲。

やっぱり、お前が死ねばいい。

strange world's end

やっぱり、お前が死ねばいい。

1stアルバム以来3年ぶり、ドラマーの脱退を経て完成した2ndアルバムは、前作のアンサーともいえる強烈なタイトルがつけられている。内省的な人間が外向きの言葉を発しているというポジティヴな意味合いをタイトルに持たせているという今作は、"叫んでいた胸の奥では 助けてくれ愛してくれと"(「敗北」)、"本当はずっと愛されたくて存在理由が欲しかっただけ"(「接触」)など、たしかに何かを求めて外に手を伸ばしもがいている印象を受ける。それゆえに、もがき苦しんだ末に光明に行き着いたかのようなラスト「フロンティア」(名曲!)は感動的で、アルバムを聴き終わったあとの余韻は意外なほどに清々しい。

君が死んでも、世界は別に変わらない。

strange world's end

君が死んでも、世界は別に変わらない。

自分のくだらなさを知ることは大事なことだ。俺は自分を特別だなんて思わない。ただ、自分の人生をかけがえのないものだとは思っている。でも、それは君には関係のないことだ。だから"生きろ"なんて言うな。"頑張れ"なんて言うな。勝手にやるから。君も勝手にしろよ。I need to be myself. 俺は俺でしかあれないし、君は君でしかあれないのだから。――strange world's endの音楽には、そんな他者への期待を捨て、等身大の自分を見つめ続けた果てにある"個"の強さがある。グランジ直系のギター・サウンドは感情を抉り出すような生々しさに満ち、言葉はどこまでも辛らつ。憎しみと哀しみと自己嫌悪が渦巻いている。だが、この1stアルバムは最後、どこまでもピュアな祈りに行き着く。汚れた瞳にしか見れない景色もあるのだ。

Comedown Machine

THE STROKES

Comedown Machine

2000年を境に明らかに"THE STROKES以前・以降"のシーンを形成した当の本人たちは、この5作目でもすこぶるクール。象徴的なのがリヴァーブ感のない音像や、それがもたらす低体温感。1stや2nd時から続くシンプルかつ緻密に組み上げられたリフをさらに客観視し、まるで自分たちの特徴をエディットするような洗練を随所に感じる。そこに乗る、鬼の高低差を誇るJulianのヴォーカルの艶たるや......。「Slow Animals」でのウィスパーと地声のダブルなんてもう、声そのものがアートである。アルバム・タイトルの世界観に近いと思しき「80's Comedown Machine」も80's的なプラスティックなサイケデリアを表現。具体的な熱量ではなく、ロックンロールに潜むフェティシズムでエモーションを喚起する見事な手さばき。

Angles

THE STROKES

Angles

まさに"多アングル"な作品である。それは1曲ごとの個性の強さのことでもあるし、アルバム全体の与える印象からも言える。最初と最後とでまるで違った手応えとでもいおうか、まるで万華鏡のように、華やかに次々と表情を変えていく。1曲目「Machu Picchu」のレゲエ調の始まりには思わず"TOM TOM CLUB!?"と叫びそうになった。そして驚きのイントロに乗って聴こえてくるJulianのハイトーン・ヴォイスがクソかっこいい。全アングルにおいて、成長と音楽的意欲と挑戦に満ちた本作は、本人たちも言っているとおりTHE STROKESの新章を告げるものであり、それだけのパワーが漲っている。そもそも5年振りの本格始動ともなれば、あれやこれやと前置きをしたかったのだが、全部吹っ飛んでしまった。そんなん言う前に、有無を言わさず最高を見せ付けられた気分なのだ。"まぁかっけーから聴けよ"ってさ。

Phrzes For The Young

Julian Casablancas

Phrzes For The Young

THE STROKESのメンバーそれぞれが本隊とは別に素晴らしい作品を発表する中、沈黙を守ってきたフロントマン、Julian Casablancasが遂にソロ・アルバムを発表した。ソング・ライティングはTHE STROKESのそれなのだが、ドラム・マシーンやキーボードを多用した洗練されたトラックに乗ると、楽曲がまた違った輝きを放つ。Julianの声も穏やかでありながら色気があり、気張っている様子など微塵もない。フォーキーな楽曲もメロウな曲も挟みながら、憎らしいほどに洗練されたロックンロールを鳴らす。Julian Casablancasの才能に改めて感服させられる、極上のポップ・ミュージック。こんな作品を聴かされると、THE STROKESの新作が待ち遠しくなる。

Strange Days

THE STRUTS

Strange Days

コロナ禍の中、プロデューサー Jon Levineの家に泊まり込み10日で10曲RECしたバンドの勢いと調子の良さが反映されたパッシヴなR&Rアルバム。ゲストも話題で、THE BEATLES的なメロディを持つ有機的なミディアム・チューンの表題曲にはRobbie Williamsが、電話口の会話から始まるアイディアも楽しいナンバーにはDEF LEPPARDのJoe ElliottとPhil Collenが切れ味鋭いギターで参加。ヘヴィな曲をブラッシュアップしたのはTom Morello(RAGE AGAINST THE MACHINE etc.)、軽快な8ビート・ナンバーにはTHE STROKESのAlbert Hammond Jr(Gt)が客演。ゲストの資質が様々でも仕上がりは抜けが良くドライヴするR&R。先の見えない状況で不可能を可能にしたバンドの痛快さが作品化した印象だ。

Everybody Wants

THE STRUTS

Everybody Wants

去年のサマソニに続き、先日、単独来日を果たしソールド・アウトさせたUK出身、現在はLA拠点で活動するTHE STRUTS。80年代メタル風なルックスやMÖTLEY CRÜEからの高評価で先入観を持つリスナーもいるだろうが、ぶっちゃけヴォーカル Luke Spillerの破格の存在感――Freddie Mercuryばりの表現力、巻き舌、エンターテイナーっぷりは笑っちゃうほど強力だ。そしてOASISやTHE LIBERTINES好きだったバンドのアンサンブルはシンプル且つモダン。THE ROLLING STONESをいい意味でもっとインスタントで呑み込みやすくしたような16ビート・ナンバーや、モータウン・ポップに、Noel Gallagherが書きそうな歌メロが乗るナンバーなどなど、親しみやすいったらない。ファッションはいったん横に置いて聴く価値大アリ。

Everybody Wants

THE STRUTS

Everybody Wants

グラム・ロックというからにはもちろん見た目も含め、70年代の前半、時代の徒花として狂い咲いたポップ且つワイルドなロックンロールを現代に蘇らせる4人組、THE STRUTS。もちろん、伊達や酔狂でやっているわけじゃない。そこに本気の思いが感じられるからこそ、イングランド中部の工業都市、ダービーからやってきた彼らはじわじわと注目され、THE ROLLING STONESやMÖTLEY CRÜEといったビッグ・ネームが2012年結成の新進バンドをサポート・アクトに起用したのだ。今作は精力的なツアーが認められ、アメリカでついに火がついた人気に応えるように新曲を加え、出し直したデビュー・アルバムの新装盤。シンガロング必至のロックンロールが満載。Luke Spillerの強烈な巻き舌のヴォーカルにシビれる。

Spitting Image

THE STRYPES

Spitting Image

50'sブルーズの香りを放つバリ渋・ティーンだったTHE STRYPESも、もう20歳。もともと、ティーンエイジャーらしからぬサウンドで世界を驚愕させた彼らだが、いろいろと吸収しやすい年頃の2年間というのはバンドを大きく成長させるには十分な時間だ。3枚目のアルバムとなる今作では、持ち味でもあるブルージーなアプローチはもちろん、彼らと親交の深いPaul Wellerの影響も感じさせるニュー・ウェーヴの雰囲気も盛り込まれた、ある意味、時代がワンステップ進んだ感じの作品となった。さらに、これまでのどこか危うさを感じさせるような背伸びした表現と比べると、瑞々しく輝くメロディやコーラスに等身大の若々しさが感じられて、好印象。ライヴ・バンドとしても定評のある彼らのフジロックでの来日公演も楽しみ。

Live In Tokyo 2015

THE STRYPES

Live In Tokyo 2015

平均年齢19歳ながらデビュー前からドサ回り的にライヴ経験を積んできた生粋のライヴ・バンドなんだから、そのライヴを収めたライヴ・アルバムを待っていたファンは多いんじゃないか。そんな待望のライヴ・アルバムが"Live In Tokyo"なんだから日本のファンとしてはなおさら嬉しいはず。今年7月16日、2ndアルバム『Little Victories』を引っ提げ、アイルランドの若き4人組が行った一夜限りの渋谷CLUB QUATTRO公演からカバーを除く10曲を収録。いかにも70年代風の図太いサウンドは、スタジオ・アルバムとはまた違う魅力がある。渋谷CLUBQUATTRO公演を含む4曲のライヴ映像を収録したカップリングのDVDとともに彼らのライヴのエネルギーを感じるには持ってこいの来日記念盤だ。

Little Victories

THE STRYPES

Little Victories

2年前、R&Bの影響が色濃い、いわゆるビート・ロックを演奏していた4人組がここではグルーヴィなロックを奏で始めている。それはメンバーが最近聴き始めたヒップホップの影響に加え、この2年間、さまざまな経験をしながら受けてきたいろいろな刺激を、曲作りや演奏に反映させた結果に他ならない。それがオリジナリティのアピールに繋がった。アイルランドの若き4人組、THE STRYPESによる2作目のアルバム。アルバムからの1stシングル「Get Into It」を始め、ダンサブルになったサウンドは、より多くのリスナーに訴えかけるに違いない。メンバーたちはまだ平均年齢18歳。ここで見せつけた成長を考えると、本当に楽しみなのはここからだ! 思わず、そんなことまで期待させる充実の新作だ。

汚れた愛

STUPID GUYS

汚れた愛

それぞれに音楽系YouTuberとして活躍していた堂村璃羽と、たかやんが19年6月に結成したユニット、STUPID GUYSによるメジャー第1弾アルバム。生きづらい時代を生きる若者の気持ちを代弁することで、フォロワーを増やしてきたふたりだが、支持される理由は、きれいごとや安っぽい応援歌の対極にあるとも言える、場合によっては残酷なまでのリアリズムとそこから生まれる希望の光だ。まずは、ラップともスポークン・ワードともステートメント・スピーチとも言える「絶命志願者」を聴いて、「drive on night」のアンセミックなシンガロングの裏にある覚悟を、感じ取っていただきたい。R&B/ヒップホップをJ-POPに昇華したトラックは洋楽の影響もありそう。ふたりのハーモニーも聴きどころだ。

All Born Screaming

ST. VINCENT

All Born Screaming

美しさとしなやかな強さを併せ持つ、女性シンガー・ソングライター ST. VINCENTことAnnie Clark。彼女の最新作は、これまでよりももっとダイレクトに自身の自然体な姿に肉薄する作品となった。セルフ・プロデュースで制作されたこともあってか、自由に湧き上がってくるサウンドをそのまま具現化したかのように、カラフルでダイナミックな表現に満ちている。さらに、Dave Grohl(FOO FIGHTERS/ex-NIRVANA)をはじめ、Cate Le BonやJustin Meldal-Johnsenなど、ジャンルを問わず才能豊かなアーティストたちがゲスト参加。激しいロックにもディスコ・ポップにもファンキーにもシアトリカルにもアンビエントにも、変幻自在にメタモルフォーゼするST. VINCENTのサウンドに花を添えている。

Masseduction

ST. VINCENT

Masseduction

女性を全面に打ち出しながら、同時に強烈過ぎて笑ってしまうし、アートにすら見えるジャケットが示唆しているとおり、この5枚目のアルバムでアヴァンギャルドとポップの境界線を完全に溶かしてしまった。タイトル・チューンは、女の子の声による日本語の"政権の腐敗!"というリフレインから始まり、ストリングスも入ったいわゆるビッグ・ソングと内面的な印象のミニマルなパートを行き来するし、ピアノがSSW的なニュアンスの「New York」、その曲のモチーフの一部でもあるDavid Bowieの面影は、「Pills」でのロック然としたハードさとファンキーさを兼ね備え、今の彼女が示すポップ・スター像へ焦点を結ぶ。価値観が多様化する時代にあってもあらゆるリスナーに新しさを感じさせる稀有な作品。

St.Vincent

ST. VINCENT

St.Vincent

ブルックリンを拠点に活動し、2012年にはTALKING HEADSのDavid Byrneとのコラボレーション作品もリリース。USインディー界隈で常に注目を浴び、高い評価を得ているST.VINCENTの4thアルバム。妖艶かつ透明感のある歌声は、甘さと刺々しさがうねるように入り混じり、決して聴き心地が良いだけではない。ポスト・ロック特有のヒリヒリした緊迫感と浮遊感、幾重にも重ねられたエレクトリックなトラック作りは相変わらず情報量が多く、1フレーズひとつをとってもここまでヒネるか!とうならされるのだが、アルバムを通して聴くと、アート性だけではなく、ストレートなロックンロール感があるという不思議な作品。WARPAINTの新作と一緒に手に取っていただきたい。

Strange Mercy

ST. VINCENT

Strange Mercy

余談から始めますが、来年1月に決定した一夜限りの来日公演は何が何でも観に行ったほうがいいですよ!妖艶な歌声もさることながら、超絶的なギター・プレイに度胆を抜かれるはず!手帳を新しく買い換えたら、まずは"ST. VINCENT"とチェックしておきましょう。さて、現在海外メディアで絶賛の嵐となっている新作がついに到着!約2年振りの3rdアルバムである。過去2作によってすでにインディ・ファンから絶大な支持を受けているが、本作はよりメジャーなフィールドに舞い上がる出世作となるに違いない。これまでにないディストーション・ギターに彩られロック色を強めた世界観だが、独創的なメロディ・ラインが才能の裏打ち。それはDIRTY PROJECTORSのDave Longstrethに匹敵するものと確証された。スイーツな歌モノ集とナメたらやられちゃうよ!

Finest Hour

SUBMOTION ORCHESTRA

Finest Hour

教会とダブステップ――この2つが結び付くなど誰が想像し得たであろうか。ゴスペルなどソウルフルなサウンドと宗教の結び付きはあったものの、ダブステップとなると話は別だ。しかし、SUBMOTION ORCHESTRAは、“教会での生演奏によるダブステップ”という異色な依頼を受けたことをきっかけに活動をスタートさせた。Nitin Sawhney、Little Dragonらのようにダークでチル・アウトな空気を展開しながらも、より濃厚でアンビエントな空間を作り出す。オーケストラほど飾り過ぎず、ジャズよりも肩の力が抜け、ダンス・ミュージックよりも落ち着いた、実に都会的な色気が満ちているのだ。トランペットを含む7人構成のもと、繊細でありながら、奥が深く厚みのある壮大な、サウンドスケープにまとめ上げられた1作。この幾重にも重なった美しさは、新たなステップへと聴き手を解放してくれるだろう。

Money And Celebrity

THE SUBWAYS

Money And Celebrity

05年のシングル「Rock & Roll Queen」で華々しくロック・シーンに登場したTHE SUBWAYSの3年振り、3枚目に当たる作品。オープニング・ナンバーである「It's A Party」が象徴する様に1stアルバムを思わせるストレートでポップなサウンドが見事に復活している。更には08年リリースの2ndアルバムを彷彿とさせるラウドなギター・サウンドも健在。もちろんTHE SUBWAYSを語る上で外せない魅力の一つであるBillyとCharlotteのコーラス・ワークにも磨きがかけられている。そう!彼らの魅力をすべて詰め込んだ理想的な3rdアルバムとなっている。この素晴らしいアルバムが現在の寂しいUKロック・シーンの起爆剤になることを期待したい。

THE ASHTRAY

Suchmos

THE ASHTRAY

NHKサッカー・テーマ曲「VOLT-AGE」の図太いファンク/ロックに90年代マンチェやあの時代のタフなハイブリッド感を想起し、Suchmosの戦い方の自由度に大いに勇気づけられた。さらに本作はTHE BEATLESから初期UKパンク、時にBob Marleyに至るレベル・ミュージックのメンタリティを軸に持つYONCE(Vo)と、ジャズ、ファンク、ロックのエレメントを高いスキルで各々アレンジして演奏できるメンバーの本領が全曲主役級の楽曲で証明された印象だ。普遍性と現代性を突き詰めたソングライティングが今作では特に際立つ。AORとレゲエ、新世代ジャズを取り合うような「FRUITS」、愛しさが溢れるラヴ・ソング「FUNNY GOLD」、孤独感に背筋が伸びる「ONE DAY IN AVENUE」など、リアル且つドラマチック。

THE KIDS

Suchmos

THE KIDS

2015年7月リリースの『THE BAY』以来1年6ヶ月ぶりにリリースされるフル・アルバムには、その間にリリースされたEP盤収録曲の他、新曲もパッケージ。シティ・ポップ隆盛の流れから台頭したバンドのひとつではあるが、このバンドはもうその遥か先を見ている。そういうことがよく伝わってくる作品だ。特に、Track.1「A.G.I.T.」の冒頭は、渋いギターの旋律とともに悠々と伸びるヴォーカルを聴いただけで、アリーナ級の広いステージの上でスポットライトを浴びるYONCE(Vo)の姿が目に浮かぶほど。バンドとして小さく留まるつもりはないことを常々公言してきた彼らだが、より自由になったサウンドに、いよいよその意志が鮮やかに反映されてきたところだ。

MINT CONDITION

Suchmos

MINT CONDITION

湘南界隈のストリート文化を纏いながら、アシッド・ジャズ、ヒップホップ、シティ・ポップなどを折衷したサウンドで登場した彼ら。"FUJI ROCK FESTIVAL '16"のWHITE STAGE出演決定、リーバイス®とのコラボなど最近の動きはまるで"今ここが日本のロックの一番熱い場所だ"と宣言するような快進撃だ。その勢いは本作3rd EPでも強く感じる。「MINT」は、有機的な音作りでファンクに振られたグルーヴとYONCE(Vo)の色気に磨きがかかった声も相まって、初期からの重要曲「Life Easy」の空気感を引き継ぎつつビルドアップさせたメロウネスが光る。スタジアム級の会場も見据えた仕上がりだ。「DUMBO」では"アマチュアもプロも変わんないね"と自信を携えたキラー・フレーズも飛び出し、全体を通して一段ステージが上がったことを確信させる。

LOVE&VICE

Suchmos

LOVE&VICE

初のフル・アルバム『THE BAY』が話題を呼んだSuchmosが約半年ぶりにEPをリリース。タイトルの"LOVE&VICE"を曲名に冠したいわゆる表題曲がないことからも、EP1枚でひとつの流れとして聴いて欲しいというメッセージが読み取れるが、全4曲に共通するテーマは大きく言うと"愛"。とはいえ、彼らにかかればスウィートなラヴ・ソング集に収まることはなく、むしろそこに絡まる欲望と毒がメインだ。それこそ『THE BAY』を聴いたときから感じていたが、洗練されたサウンドの下に隠れた本性がやはり気になる。ポーカーフェイスのようでいて様々な感情が複雑に絡みついているような、計算高さと泥臭さとが危ういバランスで共存しているようなこの感じに、何だか引き寄せられてしまうのだ。

Bloodsports

SUEDE

Bloodsports

90年代、UKブリット・ポップを彩った輝きは現在も色褪せず。Brett Anderson率いるSUEDE、実に11年振りの新作である。まさにSUEDE節としか形容できないゴージャス&アップリフティングに美しいギター・メロディ、ドラマティックなスケール、そしてアンセミックなヴォーカルに身を委ねると、あの狂乱の時代が甦ってくるようだ。それもそのはず、プロデューサーはバンドの初期3作を手掛けたEd Buller。このSUEDE節に大きく貢献した人物であり、新作は原点回帰の意味合いもあるという。まるで彼らの時間が止まっていたかのような瑞々しさを痛感するが、Brettの容姿も当時とあまり変わっていないことにも驚く。"UKロックLive Forever"な存在だ。

Bagatelle

SUEMITSU & THE SUEMITH

Bagatelle

SUEMITSU & THE SUEMITH名義では、細美武士を迎えた「Appassionata feat. 細美武士」(本作にも収録)で活動再開して以降、約8年ぶりとなるフル・アルバム。とはいえ、やはり末光 篤の作品と言えば木村カエラの「Butterfly」のイメージが強いはず。この新作でもクラシックと90'sのJ-POPなどが彼らしいピアノ・ロックのマナーで交差するのが一番の醍醐味になっている。自身のヴォーカル曲の変わらぬ瑞々しさはもちろん、大橋トリオや橋本絵莉子(チャットモンチー)ら、ゲストが末光の作詞作曲で歌う曲も魅力的。シンガー・ソングライターとして直系の先輩にあたる大江千里が歌詞を書き、プログラムとアレンジをtofubeatsが手掛けたナンバーはまさに"今"。柏倉隆史とミトの参加もポップの更新にひと役買っている。

The Age Of Adz

Sufjan Stevens

The Age Of Adz

アメリカ合衆国の全50州をテーマに50枚のアルバムを作るぞ宣言をしたりするユーモア精神、最高ですよね!そんな遊び心とともに、他の誰にも真似できない音世界を表現する才人の、“歌もの”アルバムとしては5年ぶりの新作。ギターのアルペジオと鍵盤がリフレインしたかと思えばノイジーに急転、打ち込みのビートの上でやわらかなメロディが響き、交響楽風のサウンドが勇ましくアンサンブル、etc……。この多種多様な音楽のスタイルをきっちりジャンル分け出来るという人がいたら、ぜひともお目にかかってみたいたい(笑)。その中でも、波間を漂う泡の粒のごとく響く、「Bad Communication」の浮遊感たっぷりな音色は個人的には特にたまらない!この夢見心地なムードにいつまでも酔っていたい……。

Sunshine Kids

SUGAR CRISIS

Sunshine Kids

“男女ポップ・デュオ”というと、THE TING TINGSの姿が真っ先に浮かぶのだが「We Are Here To Save You」でデビューしたSUGAR CRISISは、よりポジティヴなサウンドが跳ねまわる。SKYE SWEETNAMらガールズ・パンクやHILARY DUFFのような甘いポップスを連想させつつ、エレクトロを基軸にした爽快なダンス・ミュージックに持ちこんだ。耳をくすぐるようなヴォーカルが心地よく、遊び心に溢れる。アニメなど現代的カルチャーの影響を受けているようで、電子音が随所に散りばめられた、非常にキャッチーで足取り軽くステップを踏むサウンドは、まさに“SUGAR CRISIS”。とびきりカラフルな情景を見せてくれるのだ。おまけに、MY CHEMICAL ROMANCEの「Welcome To The Black Parade」をキュートにカヴァーしてしまう奔放さはダンス・フロアが甘く爽やかになるはずだ。

Greatest Hits

SUGAR RAY

Greatest Hits

00年代前半にロック・シーン最前線で活躍したSUGAR RAYの数々の楽曲の中から14曲を厳選。レイドバックしたサーフ・ロックというイメージが強い彼らだが、音楽性はハードコアからパワー・ポップ、そしてJoe Jacksonのカバーまで、ミクスチャー・バンドの呼び名に恥じない多彩さを誇る。そんな振り幅の広さをポップに打ち出したところが彼らの真骨頂。レア・トラックは収録されていないものの、彼らの代表曲を知るには便利な1枚だ。フロントマンのMark McGrath(Vo/Gt)がテレビの司会業も楽しみながらマイペースな活動を続けている彼らだが、10-FEETのTAKUMA(Vo/Gt)との共演を含む『Music For Cougars ~復活の常夏番長~』(2010年)以来となる新作をそろそろ聴きたい。

ママゴト

Sugar's Campaign

ママゴト

両耳からスッと入り込んでは体内に違和感を注ぎ込み、チグハグ混じりの音楽をいつしかあなたにとってのスタンダードに変えてしまう。Sugar's Campaignはそういうポップ・ソングばかり生み出してきたユニットだが、1年半ぶりの新作でも魔力は健在。Track.1「ポテサラ」からして超確信犯なのだが、90年代サウンドを謳歌するTrack.2「ママゴト」にそのままなだれ込めばあとはなすがまま。全11曲、抗いようのないビートとメロの快楽に呑まれるだけだ。ゲスト・ヴォーカルを招くスタイルや時代も国籍もクロスさせるサウンドも相まって、"家族"がテーマの本作はまるでオムニバス・ドラマのよう。捕らわれたら最後、なかなか飽きさせてくれないのでご注意を。

Reverse

SUIREN

Reverse

TVアニメ"キングダム"第4シリーズOPテーマに「黎-ray-」を書き下ろし、脚光を浴びたSUIRENがメジャー1st EPを完成。モダン・ヘヴィ・ロックやマスロック的な構築美で聴かせつつ、このユニットの本質はSuiの歌とRenのピアノで成立するメロディと骨格の強さにあることを思い知る。ゲーム"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"メイン・テーマでもある代表曲「stella」の高音ロング・トーンで際立つSuiのジェンダーレスなヴォーカルが虚無や宇宙を感じる空間をギター、ピアノ、ストリングスの洪水のようなアンサンブルの中でも鮮明に聴こえるカタルシス。インストの「白雨」からラストの「Squalling」に接続する物語性も聴き応え十分。ひとりで物事を真剣に考えるときの脳内を映すような言葉と音像も見事だ。