DISC REVIEW
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SHE'S
Amulet
4thアルバム『Tragicomedy』に引き続き、傑作アルバムの到着だ。バンドの10年が詰まった「追い風」を発端に彩り豊かに展開する構成は、未来への広がりを感じさせるもの。ジャンルレスでいたいという考えを持つバンドだけに幅広いアプローチには納得だが、加えて、どんな人も完璧じゃない、しかしそれこそが個性だと謳う「Imperfect」でゴスペルを取り入れるなど、音と言葉がさらに密接な関係を結ぶようになった。ひとりでいる人に語り掛けるようなピアノの独奏から始まり、誰しもが抱える欠落を肯定する今作のタイトルは、"Amulet"=お守り。海外インディー・ポップ・シーンと共鳴する軽やかな音像、真摯な目線から綴られた言葉は、日々の灯となってくれる。
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SHE'S
追い風
"生きていく者だけに吹く 追い風"。そんな力強いフレーズが、痛みを背負いながらも懸命に生きる私たちの背中を押すSHE'Sのニュー・シングル。寂寥感を孕んだエレクトロな音の粒が、やがて華やかに開放されていく美しいサウンド・アプローチは、今年結成10周年を迎えるバンドがこれまで積み重ねてきたものが凝縮された1曲になった。ドラマ"青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-"の主題歌の書き下ろしだが、"いかに生きるか"を主軸にしたテーマはバンドとの親和性も高い。カップリングの新機軸となった味わい深いバラード「Mirai」、ステイホーム期間にファンと共に完成させたカントリー・ソング「In Your Room」も含めて、先の見えない未来に優しく光を照らすような3曲。
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SHE'S
Tragicomedy
ソングライターの井上竜馬(Key/Gt/Vo)が"心"そのものと向き合うなかで生まれた楽曲を収録し、"悲喜劇"の意味を持つタイトルを冠した4thアルバム。井上が直感的に制作したという楽曲たちは、これまでバンドが続けてきたジャンルレスなサウンド・アプローチにおける挑戦がさらに磨き上げた精鋭揃いだ。バンドの生演奏にプログラミングとストリングスを巧みに取り入れた楽曲や、ブラック・ミュージックの匂いをブレンドさせた楽曲などの2020年代的ミクスチャー・サウンド、トラックメーカー的アプローチなど自由でユーモアに富んだ音楽たちは、4人の感情や人間性と深く密接な関係にある。キャリアを重ねたことで得た成熟と純粋さを兼ね揃えた作品。来年の10周年を目前に、バンドの未来を切り開く気概に溢れている。
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SHE'S
Tricolor EP
3ヶ月連続リリースのデジタル・シングル3曲を含む全4曲収録のシングル。ヴァイオリン、ギター、リズムで作り出すラテン感のあるサウンドが特徴的な挑戦性の高い「Masquerade」、SHE'Sの真骨頂とも言うべきピアノ・ロックの中でもぬくもりと優しさに満ちた「Letter」、力強さと気品を持ち合わせたスケール感のあるエモーショナル・ナンバー「Your Song」と、SHE'Sがこれまで追求してきた大きな3つの特色を明確に示した楽曲が揃っている。3曲共通して生き方や人との向き合い方にフォーカスしたメッセージ性の強い言葉が並んだことで、より歌の力も増した。バンドの核心を感じられる組曲的作品に仕上がっている。
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SHE'S
Now & Then
2枚のシングルを経て完成させた"Now(=今)"と"Then(=あの時)"がテーマの3rdフル・アルバム。本作では、これまで彼らがチャレンジしてきたバラエティ豊かなピアノ・ロックに加え、「歓びの陽」とは異なる解釈でプログラミングやエレクトロ・テイストを取り入れた楽曲、アコギのリフを効果的に生かしたソウル・ナンバー、アルバム・アレンジが施された「月は美しく」など、様々なジャンルが持つポップネスを十二分に生かしている。インディーズ時代からスケールの大きな音作りを続け、メジャー・デビュー以降は様々な音楽性を積極的に取り入れながら、自分たちの音楽の可能性を広げ続けてきたSHE'Sの、ひとつの金字塔的作品と言っていい。より高みを目指す4人の健やかな音色を体感できる。
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SHE'S
The Everglow
約3ヶ月ぶりにリリースされるシングルは、挑戦的な楽曲が多かった前作と打って変わり、バンドの原点をパワーアップさせた3曲が揃った。表題曲はバンドの特色のひとつであるピアノとストリングスが描く華やかさと、バンドの力強さを掛け合わせた、ピアノ・ロックの進化版。サビのメッセージや湧き上がる想いを丁寧にサウンドにも落とし込んでいる。c/wの「Come Back」はソングライター、井上竜馬(Key/Gt/Vo)の憧れの存在であるELLEGARDENへのリスペクトを込めた楽曲で、「月は美しく」はジャズ・テイストのアプローチが新しい。3曲に共通しているのは堂々としつつもどこか肩の力が抜けたような軽やかさがあること。聴いたあとに残る幸福感もまた、「The Everglow」が歌う"永遠の輝き"なのかもしれない。
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SHE'S
歓びの陽
昨年、フル・アルバム2枚とミニ・アルバム1枚という脅威のペースでリリースを続けてきたSHE'Sが、約2年ぶりとなるシングルを完成。agehaspringsの百田留衣がプロデュースしたTrack.1は、打ち込みのトラックを大胆に取り入れ、"哀しみも傷跡もそのままでいい、無駄じゃない"と過去を肯定したうえで寄り添ってくれる、大きな温もりが感じられる1曲だ。Track.2はTVアニメ"アンゴルモア元寇合戦記"のEDテーマ。闘志を奮い立たせるような力強いビートとドラマチックなストリングスから幕を開け、サビでパッと開けるような明るいコード感が気持ちいい。Track.3は井上竜馬の歌唱とピアノ、そしてコーラスのみというシンプルな構成。優しくしなやかでのびのびとした歌声が、心地いい余韻を残してくれる。
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SHE'S
Wandering
今年2作目となるメジャー2ndフル・アルバムは、初の外部プロデューサーとして片寄明人(GREAT3/Vo/Gt)を、ゲスト・ミュージシャンとしてストリングス隊とホーン隊を招くだけでなく、マスタリングはBob DylanやBon Iverなどを手掛け、グラミー賞ノミネート経験もあるエンジニア Greg Calbiが担当という、ロック且つスタイリッシュな音像を作るには完璧と言っていいほどの布陣で制作された。もともと大きなスケールを持つ楽曲を作ることに長けているバンドだが、今回は勢いで突き抜けると言うよりはどっしりと構えたうえでパワーを発揮するサウンドスケープが際立つ。歌詞世界も過去2作と比較しても格段に視野が広がった。特に最後を飾る「Home」は、追い風が吹く彼らに最適な華やかさだ。
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SHE'S
Awakening
1stフル・アルバム『プルーストと花束』から5ヶ月という驚異のスピードでリリースされる7曲入りミニ・アルバム。初夏を意識して作ったという楽曲はどれも軽快なニュアンスが強く、太陽の光が似合うものが多い。エモーショナルな音像に横ノリのリズムを入れた楽曲や、軽やかなミディアム・ナンバーなどからもバンドも新しい季節を迎えていることがわかる。歌詞もTrack.2を筆頭に強い決意に加え大いなる自信が刻まれ、もっと前に進んでいくという意志がこれまで以上に強く表れたものになった。今回は珍しくコンセプトありきでの制作ではなかったらしいが、だからこそワンマン・ツアーで確かな手応えを感じ、上京し環境が変化したというリアルタイムのSHE'Sが太い軸になったアルバムを作ることができたのだろう。
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SHE'S
プルーストと花束
バンド史上初のフル・アルバム。タイトルにある"プルースト"とは"プルースト効果"のことで、とあるきっかけで無意識下の記憶が蘇ることを言う。コンセプチュアルな制作を得意とするソングライター/フロントマンの井上竜馬(Key/Gt/Vo)だが、今作はメロディの断片や歌詞の中の一言に導かれながら、記憶の中に眠っていた光景を蘇らせてひとつの曲にする、という試みの制作だったそうだ。シンセ、ホーンなどを入れた楽曲も見られ、ポップ・パンク×ピアノ・ロックという音楽性はさらに拡張。もちろん元来の音楽性を追求した楽曲もあり、Track.8はポジティヴなメッセージを堂々とまっすぐ届け、Track.10は美しく雄大な音像が眩しい。すべての曲にもっと大きく羽ばたこうとする意志を感じさせる。
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SHE'S
Tonight / Stars
6月にメジャー・デビューした大阪の4人組ピアノ・ロック・バンドが早くも2ndシングルをリリース。Track.1は"どれだけつらい過去も悲しい現実も、生きていないとそれを癒す歓びは待っていない。小さくなってしまったロウソクの灯りをどうか今夜も灯したままでいてほしい"という願いが宿る、静かでありながら確かな強さやポジティヴィティを感じさせるミディアム・ナンバー。煌びやかなピアノも夜空を彷彿とさせる。Track.2は初の書き下ろしドラマ主題歌。メジャー・デビューをしてさらなる高みを果敢に目指すバンドの姿が重なる、まさしくピアノ・ロック・バンドを体現する楽曲だ。ハードな側面を見せるTrack.3もピアノだけでなくオルガンを用いるなど、音色豊かで力強い。
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SHE'S
Morning Glow
メンバー全員1992年生まれの次世代ピアノ・ロック・バンド、SHE'Sのメジャー・デビュー・シングル。コンセプトは"過去、現在、未来"で、実体験をもとに綴られている。彼らのピアノ・ロックはポップ・パンクの音像とキャッチーなメロディと、クラシック・ピアノの融合。Track.1はそこに優雅なストリングスが入り、雄大な日の出のイメージを豊かに描いている。詞世界に重きを置いた音作りゆえに、すべての曲に情景が浮かび、ドラマ性も高い。海外のボーイズ・グループを彷彿とさせるTrack.2は都会的なポップスで、未来へ向かって飛び込んでいくという気持ちを歌ったTrack.3はライヴ映えすること間違いなしのパンク・ナンバー。これまでのリスナーも新しいリスナーも虜にする新章のプロローグだ。
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SHE'S
She'll be fine
井上竜馬(Key/Vo)をセンターに据えた大阪出身のピアノ・ロック・バンド、SHE'Sの3rdミニ・アルバム。エッジの効いたロック・サウンドとピアノの繊細且つ煌びやかな音色、そしてそれぞれの高い演奏力と表現力が相まって、壮大なファンタジーの幕開けのようなワクワク感を与えてくれる今作。Track.1の重厚なストリングスとメロディのキャッチ―さや、Track.3の増幅していくバンドのグルーヴ感、Track.6の突き抜けるサビの痛快さなど、サウンド面だけでも伝えたいことは山ほどあるが、何といってもTrack.7に込められた強い想いを感じで欲しい。彼らがここまで辿り着いた理由、そして彼らがこれからも奏でる理由。ひと言ひと言を大切に歌う井上の真っ直ぐな思いは、届かないわけがない。間違いなく次世代のシーンを担う彼らの渾身の1枚は、一聴の価値あり。
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the shes gone
FACE
the shes goneの1年ぶりとなるミニ・アルバム。今作には、どこか季節の巡りが感じられる色とりどりな5曲が収録されており、全曲で異なるサウンドスケープが鮮やかに描かれている。そして、なんと言っても彼らの強みでもあるメロディ・ワークが素晴らしい。不思議な温度感を持つ兼丸の歌声を乗せた"シズゴ節"とも言えそうなそのメロディは、聴き手の日常にスッと溶け込む唯一のものだろう。希望と不安の狭間でぐらついた気持ちに優しく触れる「春の中に」、飲みの席で感じる不甲斐なさを軽快なリズムの中で歌う「alcohol」、すれ違い沈んでいく想いの行先を綴る「Orange」。どれだけ季節が過ぎようと人それぞれ悩みや葛藤は絶えないけれど、今作はそんな心を少しだけ、楽にしてくれる気がする。
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She Talks Silence
SOME SMALL GIFTS
VIVIAN GIRLSとの共演などでインディー・シーンで注目を集めているガールズデュオ・She Talks Silence。もともと山口美波のソロ・プロジェクトとしてスタートし、ドラムのAmiが加入。音楽制作を手探りで開始し、自宅の寝室で制作のすべてを行っていたが今作は寝室を飛び出してスタジオで制作された楽曲をパッケージ。空気を多く含んだ儚なく甘いヴォーカルと歪んだギター、ノイズまじりのサウンド。そのコントラストはスイートだけれど一筋縄ではいかないキュートさがある。キラキラまぶしいけれど、若さが故の焦燥感も持ち合わせていている、消え入りそうな世界が詰まっている。ジャケットも羽が付いていたり特別感アリ。眠りを誘うベットタイム導入時間にも、街を歩くときのBGMにも、あらゆるシーンで鳴っていてほしい音楽だ。
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新世紀えぴっくすたぁネ申
超ウイルスバスターズ ヒーロー盤
実にエモい。これだけ音楽的に雑多且つクオリティの高いアルバムを、メンドル好きな女子たちだけのものにしておくのはあまりにもったいないと思うのだ。様々なアーティストたちの面影が多々見え隠れするだけではおさまらず、シャンパン・コールまで詰め込んだ情報量がパないTrack.3「フェス絶対盛り上げるマン」。疾走感溢れるビートと切ないメロディを背景に、このようなご時世にあって"ここで終わるわけにはいかない"と未来への希望を歌ったTrack.13「MONSTER」。Sxunの生み出すその純然たるロック・チューンぶりに、聴いていると血湧き肉躍る感覚に襲われるTrack.10「MOTHER」などなど。アイドルだからこその身軽さで、自由奔放に攻めまくってくる侮れない1枚。好き。
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SHIFT_CONTROL
inVisible
岐阜発のギター・ロック・バンド SHIFT_CONTROLの3rdミニ・アルバム。ハイトーンが冴え渡り、世界が開けていくような展開のオープニング・トラック「Actor」で、しょっぱなからシフコンというバンドの"らしさ"が全開のロック・サウンドを響かせる。また、ほぼ英詞で構成された表題曲「inVisible」の持つ憂いは、アルバムの核でありながら異彩を放ち、それでいて王道ギター・ロックのど真ん中を攻める絶妙さ。"いまだ歌っていたい"、"夢を見ていたい"、そう歌う「ハイファイナイト」は、踊れるビートでありながら切なさが押し寄せるさまがエモい。"激情系"を掲げ感情が迸るフレーズも相まって、目には見えなくとも(=invisible)バンドの音の存在感を確かなものとして印象づける傑作。
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Shiggy Jr.
DANCE TO THE MUSIC
古今東西のダンス・ミュージックを、J-POP的な展開のわかりやすい音楽に転換するセンスとスキルが20代後半世代の中でも突出しているShiggy Jr.が本領発揮。1曲目はTVドラマ"僕らは奇跡でできている"オープニング曲でもある「ピュアなソルジャー」。ポップスとしてど真ん中なこの曲以降は、ダンス・ミュージックにおけるストリングスの洒脱とスリルが前面に打ち出された「TUNE IN!!」、2018年版のNile Rodgers的な「シャンパンになりきれない私を」や、EDM以降のエレクトロニックなアプローチが踊るというフィジカルの高揚感をさらに押し上げる「DANCE DANCE DANCE」と、自然に身体がムーヴする曲が勢ぞろい。80'sフレーバー漂うバラード「looking for you」も新鮮な仕上がりで、一気に聴ける1枚に。
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Shiggy Jr.
KICK UP!! E.P.
バンドの第2章が深化中であることを実感させるEP。TVアニメのOP曲でもあり、若干アニメのお題に寄っているとはいえ、高速ミクスチャーな「お手上げサイキクス」の破天荒さに驚き、不安定な心象を不思議なコード感のあるエレピが彩る「Sun is coming up」では大人になる手前の感覚がリアルに感じられたり、叶わぬ恋でも一途に人を想い続ける「ずっと君のもの」のオールドスクールな音像にグッときたり。さらにベース&ドラムのビートに思わずステップを踏まずにいられない「Do you remember」はShiggy Jr.節でありつつ、より洗練されている。ラストの「Beat goes on」は止まることなく歩むバンドの今とシンクロして聴こえるテーマを持ったチアフルな讃歌。現代性とキャッチーさの両立はShiggy Jr.最強の武器だ。
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THE SHINS
Port Of Morrow
現在に至る過熱したUSインディの口火となったのは、前作『Wincing The Night Away』が全米初登場2位を記録した要因が大きかっただろう。まさにエポック・メイキングな出来事。それから約5年、首を長~くして待っていた新作がついに到着した。今回はDANGER MOUSEとの課外活動も注目されるフロントマン、James Mercerがほぼすべての楽器を演奏しレコーディングを行なったという。アルバム・タイトルは"明日の港"だが、THE SHINSとして未来を見据えたリスタートの意味合いもありそうだ。派手さのないシンプルで牧歌的なサウンドだが、エモーショナルな歌声が優しく抱きしめるように響き渡る。やはり彼らのポップ・マジックは5年の空白を経ても色褪せない。日本ではやや地味なポジションに甘んじているので、本作でさらなるブレイクを祈る!
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SHISHAMO
宿題が終わらない
神奈川県出身の軽音楽部の女子3ピース・バンド。現役女子高生のバンドというだけで、なんだか甘酸っぱい気分になってしまうし、「宿題が終わらない」はそんなイメージを裏切らない。シンプルだが王道ロックなギター・リフ、口ずさみやすいメジャーなメロディ。そして何よりヴォーカルの声がいい。透明度の高い伸びやかな声が楽曲にこれ以上ない華を添える。だが、それだけでは勿論終わらない。素直だからこその残酷さ。「君に告白した理由」の第一声を聴いた感想は"あ......言っちゃったよ......(笑)"である。優しいからとか、性格がいいから、といった上っ面の理由を蹴り飛ばし、"実は顔で選んだんだ"とあっけらかんと言い放つ。誰もが身に覚えのある本音をさらけ出した歌詞は耳に残るに違いない。
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SHIT HAPPENING
Stargazer
前作『Landmark』から2年半、活動休止期間を挟んでのアルバムは、SHIT HAPPENINGの武器を研ぎ、得意技を磨き上げた作品となった。心を揺さぶった一瞬の光景、記憶に残る感覚、香り、空気感から広がる叙情的なストーリーを音で描く曲は、より繊細に。そしてなし得なかったことや、言えなかった想いの痛みや切なさがループし、涙や憂いを振り払うようにビートはスピードを上げ、メロディは願いのようにきらめく。丁寧に音のディテールを積み上げたサウンドスケープは広く、エモさやカタルシスがより堪能できる濃さがある。活動休止期間中、それぞれがバンドについて思い巡らし、楽器のスキルを高め、再びピュアに音を重ね合わせる楽しみを知った。そんな4人のシルエットが浮かぶアルバムだ。
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SHIT HAPPENING
Landmark
フレンドリーですぐに口ずさめるメロディも、フックのあるギター・フレーズやリフも、さらに心を惹き、心の奥にしまわれた思い出の何かと共鳴するような強さを増している。今回はより4人で意見を交わしあいながら作ったというが、それ以上に、バンドが今とてもいい状態で突き進んでいることがグルーヴに表れている。ちなみにTrack.1の「Howling」を逆回転するとこの曲を作っていたときの、岩瀬 晃二郎(Gt/Cho)と梅田 貴之(Dr/Cho)のやりとりが入っているのだが、ふたりの会話は擬音ばかり。あまりの面白さに小野﨑 建太(Vo/Gt)がこっそり録っていたものだが、豪快すぎる擬音のやりとりだけで合点して、そしてこの曲の抜群にダイナミックなイントロが生まれたという、その背景だけでもバンド感がわかるというもの。ここまでの4人の物語も透けて見えるアルバムだ。
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SHIT HAPPENING
透明人間e.p.
跳ねたビートとノイジーなギターで怒涛の如くスタートする「Ripple」から、ノン・ストップで駆け抜ける4曲入りEP。4人のスピード感をエネルギッシュに捕えたアンサンブルは、まさにライヴに向いたものだけれど、一方コンセプチュアルに歌詞を作り上げたり試みも多い1枚だ。移籍後のアルバム『GO WITH ME』や『Ironic』で、SHIT HAPPENINGとは何ぞやという形を再構築していく中で、今大事にしたいことを丁寧に音にしている。前作から3ヶ月という短いスパンでのリリースながら、それぞれの曲の色はより明解に、キャッチーでいて、しっかり心に刺さるものへとシャープに磨きがかっていて、バンドがタフに成長しているのがよくわかる。「透明人間」のようなユーモアのある曲は、彼らの1つの強みとしてこれからもっと聴いてみたい。
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SHIT HAPPENING
Ironic
昨年レーベルを移籍してミニ・アルバム『GO WITH ME』をリリース、バンドの新たな始まりをサウンドに託したSHIT HAPPENING。新天地での2作目のミニ・アルバムは、加速感や突破するエネルギーをその音に封じ込めている。キャッチーで、シンガロングできるメロディ、高揚感のあるギター・サウンド、力強いビートといった側面をクローズ・アップした。これからのフェスや、イベントなどでのステージでも映えるような、即効性の高いアグレッシヴさと、それでいてフレンドリーで、口ずさめるような歌が肝。どこからともなく沸々とわいてくる不安や焦りや、日々感じるどうしようもない思いをぎゅっと丸めて、蹴り飛ばす勢い。うつむく自分を笑い飛ばしてやる潔さ。そういう気概みたいなものが込められたアルバムだ。
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Shleeps
mimesis
bonobosのドラマー辻凡人のソロ・プロジェクトShleepsの1stアルバム。実験的サウンドともいえるが、そうは言い切りたくない。Bonobosとは大きく異なるものではあるが、完全に違うとも言い切りたくない。うーん、この感じなんだろう…。その答えはですね、元気いっぱいに“今日も音楽と一緒にお外で遊んできたよ!”と泥まみれになって帰ってくる子供がbonobos。Shleepsは部屋で寝そべって、クレヨンやマーカーで絵を描いたり、画用紙やおりがみで好き勝手に貼り絵をしたりしてる感じだということ。つまり、アプローチやスタンスは違えども、共に子供のように無邪気に音楽と戯れているということが同じなんです。そして子供に、実験的サウンドなんて言葉は相応しくないからこそ、“自分の部屋で一人遊びする”なんていう画をあてはめたくなるんだな、きっと。
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THE SHOES
Scandal
今年の6月にリリースされたPRIMARY ONEとのコラボレート・シングル「Oh Lord」から早くも5ヶ月いよいよTHE SHOESのフル・アルバムが届けられた。新たなフレンチ・エレクトロの刺客として注目を集めた彼らだが、ニュー・エレクトロ以降のアーティストと足並みを揃える様に、クールなヒップ・ホップ・トラックで始まり、ゲスト・シンガーを迎えたドラマティックで幻想的な「7 AM」など懐の広さを見せつける。もちろんファットなビートも健在で、この振り幅の広さがリミキサーとしても名を馳せる彼らの強みだろう。ダンスとロックそしてヒップ・ホップを独自のアイデアでポップにまとめ上げた渾身の1stアルバム。ここにもう少しTHE SHOESなりの色が見えたらと思うのは贅沢な話か。
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V.A.
Kidz Rec.02
今や日本を代表するエレクトロ・ユニットである80Kidz。彼らが主宰するレーベルである「KIDZ REC」から早くも二枚目のコンピが届けられた。彼らの1stアルバムはもちろん、数々のリミックス・ワークに関しても、彼らが飛びぬけた存在であることを証明していると思う。今回の目玉はやはりTHE SHOESのヴォーカルの掛け合いが楽しいディスコ・トラックと、メキシコのガールズ・バンドQUIERO CLUBによるエレポップ・チューン。それにしても、エレクトロのコンピという括りにしては、様々な音色やリズムが収められている。本人達は多分もうその気などさらさらないんだろう。
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THE SHOES
Let's Go EP
今年の「FUJI ROCK FESTIVAL '09」に出演が決定しているTHE SHOESの日本独占2nd EPが登場。JUSTICE、DIGITALISMに続くエレクトロ・シーンの担い手として期待される新人ユニット。80kidzが主催するレーベル・コンピにも収録され日本での認知度もこれから確実に上がっていくであろう。一曲目である「Let's Go」は、ビートでグイグイ引っ張る特大パーティー・チューン。JUSTICE、DIGITALISMと大きく異なる点はメロディとソングライティングに趣をおいており、またホーンが使用されていたりと実に多彩なところか。80kids同様、エレクトロのその先を見つめているという事だろう。FUJIROCKでの来日はもちろん、これから発表されるであろうフル・アルバムに期待。
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SHOKO
When the sun will rise
沁みる……とにかく沁みる。透徹ながらも、仄かな微熱を孕んだ歌声がどこまでも沁み込む。抵抗不能な内省的空間の誘い。その深遠さ、瞬く間に溺れてしまう。愛らしさもあり、まるでハニー・トラップだ。ロンドンを拠点に、イラスト/ドローイング/写真/インスタレーション/ポエトリー・リーディング等、マルチに活動する女性クリエイター、SHOKO。本作は初の音楽作品集である。コンセプトは1960年代のフランス文化、そして現代にある自分との距離感だという。サウンド・プロデューサーのカジヒデキはそんな心象風景を、レトロなフレンチ・ポップスからモダンなインディ・ロックの繊細なタッチで紡いでいる。彼女自身のデザインによるアートブックやポストカードを収めたBOX仕様なので、そちらも堪能してください。
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SHORTSTRAW
You’re Underfed, I’m Wonderful
SHORTSTRAWは2008年にギター&ドラムの2ピースから始まり、徐々に様々な音楽性を取り入れ、現在は5人編成となった南アフリカ出身のインディ・バンド。アコースティック・ギターを主軸としながら、軽快なリズムと共に展開してゆくサウンド。ブルースやファンクといったジャンルを横断したG.LOVEを引き合いに出したくなるほどに、爽快で屈託のない明るさがある。某大物俳優の名前を連呼するキャッチー&バカで楽しい曲もあって、ノリはZEBRAHEADにも通じるかも? これぞトロピカルな南アフリカの地域性も影響するところなのだろうか。とにかく興味を持った方は、リード曲である「Underfed」を聴いてみるといい。ペシミストたちの音楽ばかりじゃあ踊れないだろう?
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Shout it Out
また今夜も眠れない僕らは
解散の報を聞いたとき、伝説を残すほど歴史を重ねていないし、まだ何も始まっていないじゃないか、と憤る気持ちが強かった。山内彰馬(Vo/Gt)の20歳の誕生日直前にメジャー・デビューして約2年。成人したからと言ってなかなか変われない自分と葛藤し、世間に揉まれながら人は少しずつ熟していく――それこそ青年期の青春というものだ。山内がこのバンドでそれを遂げることを選択しなかったということは、彼にとってShout it Outは青春の象徴ではなく、10代の象徴だったということ。すなわちこの作品は、「髪を切って」で歌われているように、10代の自分を終わらすことを意味するのだろう。青春のすべてを終わらせて彼に残るものはいったいどんなものなのか? はたまたこれで本当に終わらせることはできるのか。
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Shout it Out
青年の主張
リリースが3月なのは、未成年からの卒業という意味合いもあるのだろうか。バンド史上初のフル・アルバムはインディーズ時代の再録曲、メジャーでリリースしたシングル曲、そして新録曲という、17歳から20歳で制作された楽曲が揃う。それゆえ少年から青年へと変化するうえでの成長の軌跡とも言うべき作品になった。特に直近に制作された新曲は青年としてのスタートを切ったばかりの心情吐露と初々しさが眩しい。"手の中には未来なんてなかった"と気づいた彼らがこの先どんな人生を歩むのか。そんな期待を煽り、聴き手の心を焚きつけるパワフルなサウンドも真っ青な空と海のように雄大だ。ふたりの青年による青春物語は始まったばかり。彼らの情熱は、あなたの心に潜むそれをも巻き込んでいくだろう。
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Shout it Out
これからと夢
このバンドは以前から"そのときそのときの今でしか歌えない歌"を大事にしているが、メジャー2ndシングルであり新体制初作品となるこのEPはそのポリシーが過去最高に強い意味を持っているのでは。TVアニメ"DAYS"のEDテーマであるTrack.1は、タイアップ作品の世界観に自分たちの現況を重ね合わせ、傷を負いながらも"夢"に向かって進み続けるという決意を表現する。シンプルな音像ゆえに彼らの想いが音に十二分に込められたロック・バラードのTrack.2、エッジーでアグレッシヴ、男気溢れるギター・ソロも印象的なTrack.3と、全曲でバンドの表現方法が広がっている。レコーディング・ゲスト、プロデューサーを始め、仲間やリスナーの愛を以前以上に受け取った彼らの音楽は強く優しい。
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Shout it Out
青春のすべて
"未確認フェスティバル2015"グランプリを獲得して以降、TOWER RECORDS限定ミニ・アルバム、初の全国流通盤となるEPと、短いインターバルながらリリースを重ねるごとに急成長を遂げているShout it Out。メジャー・デビュー・シングルはプロデューサーにSUPER BEAVERの柳沢亮太を迎えたことも影響し、メンバーの持っているイメージを細部まで音で表現した楽曲が揃った。Track.1は青春の煌びやかな部分から焦燥感までも網羅した疾走感のあるギター・ロック。Track.2はダンサブルなアプローチが光り、Track.3は高い熱量を封じ込めた力強い演奏と感傷的なコード進行のコントラストが絶妙。アコースティック・アレンジのボーナス・トラックも演奏の表現力の成長を感じる。
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Shout it Out
僕たちが歌う明日のこと
ミニ・アルバム『Teenage』から約3ヶ月で届けられる4曲入りEPは、"聴く人の背中を押したい"というバンドの方針が強固になった作品。"未確認フェスティバル2016"公式応援ソングに認定されたTrack.1は緩急を効かせて疾走する演奏が新境地。テクニカルにドライヴするドラムはバンドに新たなダイナミズムをもたらしている。TVドラマ"ニーチェ先生"の主題歌であるTrack.2はミディアム・テンポに挑戦し、過去と未来を歌う歌詞にも切なさが丁寧に書かれたことで説得力が生まれた。歌詞の着眼点も楽器隊のアプローチも多彩で、前作以上にバンド自身のことが楽曲に反映されている。"未確認フェスティバル 2015"でグランプリを獲得してからの追い風よりも先を行くほどの急成長に感服。このバンド、まだまだ秘めている。
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Shout it Out
Teenage
等身大の自分自身で音楽をするロック・バンドは多い。だがそれを意識的に自分たちの武器にしていくという気概に溢れているのが、Shout it Outというバンドだ。10代限定の夏フェス"未確認フェスティバル"の初代グランプリに輝いた大阪府堺市を拠点に活動中の4ピースによる初の流通盤。大人と子供の狭間とも言える19歳特有の若さで真っ向から体当たりするようなギター・ロックが6曲並ぶ。弱味を見せずにひたすら力強く堂々と突き進む音像は、強がりながら一瞬一瞬を懸命に生きる少年の姿そのものだ。ドラマティックなギター、表情豊かなドラムス、土台を作るベースも一心に歌を引き上げる。今は大人に噛みつく彼らが将来大人になったときにどうなるのか? 隅々にまで溢れる青さの未来の行方を追いたい。
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shuly to 104kz
infinite4ce
日本アンダー・グラウンド・シーンの猛者たちで結成された4人組オルタナティヴ・ハードコア・バンド、shuly to 104kz(シュライトューテンフォーケージー)の1stフル・アルバム。力強く詞を刻み続けるヴォーカルと百戦錬磨の経験値に裏付けられた演奏力で表現される唯一無二の世界感は、もはやメンバーが持つ人間力そのものから沸き上がる魂の音楽といえるだろう。日常から政治情勢までに及ぶフラストレーションに対して真正面から向かい合い問題提唱するにはバンドが持つ説得力が鍵になるが、それは十分過ぎるぐらい作品から溢れ出している。優雅なヴァイオリンの旋律と音響系ともいえる歪んだギターで疾走する壮大なサウンド、そして時に絶叫で訴えかける現実。心に火が灯る感覚を是非。
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SIA
Music - Songs From And Inspired By The Motion Picture
ミステリアスなウィッグがトレードマークの歌姫、SIA。RIHANNAやBEYONCE、Katy Perryなどへの楽曲提供でも知られ、多くの作品でグラミー賞にノミネートされている彼女が、約3年ぶりとなるニュー・アルバムをリリースした。今作はタイトルが示す通り、自身が初めてメガホンをとった映画"Music"のサウンドトラックであり、そのストーリーからインスパイアされた楽曲を収録したもの。そのためアルバム全体を通してドラマチックな空気感を楽しめるし、ノリのいいダンス・チューンやストリングスを用いた壮大な楽曲など、個々の楽曲を聴いてみてもそのひとつひとつが完成された物語のようでもある。シンガー、ソングライター、プロデューサーとして、多角的な才能を持つ彼女を象徴するような作品。
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(sic)boy
vanitas
やりたい音楽はヒップホップなのかロックなのか。そんな問いを投げ掛けることはおそらく愚問だ。トラップ、オルタナティヴ・ロック、ハードコア、R&B。あらゆる音楽を垣根なく咀嚼する新世代ラッパー、(sic)boyの音楽は自由だ。"ジャンル東京"と称された衝撃のデビュー・アルバムから1年ぶりとなる今作は、"空虚"を意味するタイトルの通り、そのカオティックな世界観がさらに耽美且つ退廃的に拡張された。米国のエモ・ラップのパイオニア、LIL AARONやオルタナティヴ・ポップ・シンガー、PHEMといった海外アーティストと共に制作された楽曲に加え、AAAMYYY(Tempalay)やGottz(KANDYTOWN)、釈迦坊主らを客演に迎えた全10曲は、前作以上に彼が紡ぐメロディの美しさが際立つ。
LIVE INFO
- 2025.01.15
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