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DISC REVIEW

S

NU BLACK

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

NU BLACK

ジャンル分け不問の変幻自在ロックで、全国のライヴハウスを席捲するスサシ。攻撃的なライヴ・アンセムに焦点を当てた前作アルバム『火花音楽匯演』から1年3ヶ月ぶりとなる新作は、"作品の統一感"という概念を一切取っ払った混然一体のキメラ的なアルバムになった。機関銃みたいな勢いで加速する「GODSPEED」を皮切りに、YUKITERO(空きっ腹に酒/Vo)やKAITO(Paledusk/Vo)と共にかのヒット曲をダーティにネタにした「ヘビーローテンション」、Creepy NutsのR-指定を招いたキャッチーな「Swinga!」に加えて、オルタナティヴR&Bまで包括。やりたい放題で駆け抜けた最後の最後に、バンドへの想いをストレートに託した「ソウルナンバー」で胸が熱くなる。

火花音楽匯演

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

火花音楽匯演

ラウドロックを軸にしながら、ヒップホップやレゲエ、ニュー・ウェーヴなど、様々なジャンルを取り入れた、ポップでハードコアなロックを鳴らす4人組 SPARK!!SOUND!!SHOW!!による初のフル・アルバム。昨年3月にキーボードのタクマが加入して以降、より精力的な活動を見せている彼らは、Creepy Nutsの最新アルバム『クリープ・ショー』で自身の楽曲がサンプリングされるなど、ジャンルレスなアプローチが大きな注目を集めている。ヘヴィなダンス・ロックがやがて盆踊りの狂騒へと発展する「OEO」、トラップ・ミュージックと民謡を融合した「無愛愛」など、予測不能な音に翻弄される全11曲だが、開放的なサウンドに乗せた「アワーミュージック」が、音楽への愛情が溢れていて素晴らしい。

DX JAPAN

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

DX JAPAN

バンド名からしてハイテンションなパリピ感がムンムンに伝わってくる大阪発の4人組バンド、SPARK!!SOUND!!SHOW!!。略して、スサシ。男女ツイン・ヴォーカルのスピーディなラップで駆け抜けるライヴ・チューン「ラクラクシット」が入り口だが、曲が進むにつれて、パンク、レゲエ、シティ・ポップ、メタルなど、次々に顔を出す雑多な音楽性は、まさにジャンルのブラックホール。都会的なサウンドにオシャレ気取りな若者をシニカルに綴った「urban kill」から、踊れるロックンロール「プールサイドスーサイド」、江戸の情緒をハイパーなパンク・チューンに仕立てた「GO YOU DIE~御用だ~」、甘いクリスマス・ソング「聖☆夜」に、電波系ファンキー・ポップ「Fat,go fast!」まで。常識外れの密度で攻める6曲は中毒性高し。

SPC ECO 3-D

SPC ECO

SPC ECO 3-D

90年代シューゲイザー・シーンにとって重要なバンドの一つであり、2004年までエレクトロ、インダストリアルなどを取り込んだ独自の世界観を構築したCURVE。そのCURVEの中心的人物Dean Garciaの新バンドがこのSPC ECO。エレクトロ・ビートの周りを漂うホワイト・ノイズと、圧倒的な存在感を放つ甘く気だるいRose Berlinの歌声。このRose Berlinは3歳(!)の頃からDeanとともにレコーディングを体験しているという、若干18歳。吸い込まれるようなRoseの歌声が、SPC ECOの音をさらに艶かしいものにしている。M83などのエレクトリックなシューゲイザーに不穏な攻撃性を持たせたようなアルバムだ。

cluster migration

speaker gain teardrop

cluster migration

1999年の結成以来17年、広島を拠点に活動し続けているspeaker gain teardropの約3年ぶり8作目となるニュー・アルバム『cluster migration』。3ピースにもかかわらず、夜の静寂に溶けるような音から、激情に駆られたような轟音まで響かせるサウンドの特徴は今作でも変わらず貫かれており、いくつもの音が重なった深淵で雄大なサウンドスケープを描くギターと、その中で交差するリズム隊のやりとりが印象的。また今作では、全6曲約50分というだけあって1曲が長いため、楽曲の展開がまるでシンフォニックな映画音楽のよう。エレクトロニカ、シューゲイザー、ポスト・ロック好きは特に必聴の1枚。聴く者を別世界へさらう、ある種、力技のような今作をあなたも堪能してみては。

NOWADAYS

Special Favorite Music

NOWADAYS

ヴァイオリン、フルートなど、多彩な楽器隊を擁する男女7人組 Special Favorite Musicが、前作から約1年ぶりにリリースするEP。今作には、現代のシティ・ポップに近づいた前作とはまた違う、柔らかく優しいポップ・ミュージック4曲が詰め込まれている。"花王リーゼ"のCMソング「ゆびさき」から始まり、華やかなサウンドと跳ねるようなリズムに、男女ツイン・ヴォーカルによるハモりが見事な「今日の日はさようなら」、ゆったりとした歌メロの奥で刻まれる16ビートが心地よい「Summer Gifted」、"君"を大切に想う気持ちを歌うバラード「SURELY」を収録。"最近"や"近頃"という意味を持つタイトルのとおり、身近な人との関係や日常の風景に寄り添うようなカラフルで温かい気持ちが詰まった1枚に仕上がっている。

Royal Blue

Special Favorite Music

Royal Blue

美しく光る極上のメロディ、耳心地のいい男女ツイン・ヴォーカル、ときめきと切なさが同居した甘酸っぱい歌詞......ポップ・ミュージックのいいとこ取りをしたうえに、それを輝かせるエッセンスをふんだんに盛り込んだ、ポップ好きには間違いなくたまらない1枚。80~90年代のJ-POPや海外インディーをルーツとして色濃く持つサウンドは、現代のシティ・ポップ・シーンと親和性が高いが、ヴァイオリン、サックスなどのパートを擁する大所帯バンドとだけあって、煌びやかなオーケストレーションを生で表現している贅沢感を考えれば無二の存在だろう。カラフルでキャッチーなTrack.1、2を入り口に、それ以降のソウル/ファンクの香り漂うナンバーへと導く流れも秀逸。これはもう、2010年代ポップ・ミュージックの決定版と言いたくなる出来栄え!

Journey

SPECIAL OTHERS

Journey

今年2月から毎月25日を"ニコニコの日"として連続リリースを敢行してきたスペアザ。アルバムとして編まれると、シーズン・グリーティングのような各々の曲が集まって、まるで感謝祭のような豊穣を味わえる。春を目して出た「Fanfare」、「Early Morning」、「Apple」(珍しい3拍子!)は寝起きや午前中の気分にピッタリだし、小休止に聴きたくなる。季節が進み、あの恐ろしく暑かった夏もキューバっぽい「Falcon」のリズムと音に浸ると存外悪くなかった気分になるし、秋の気配のマイナー・チューン「Point Nemo」は心落ち着くニュアンスだ。季節を旅して今月辿り着いたのはアルバム・タイトル曲で聴けるカントリー・ミュージックのワクワク感。さらにラストの「Thank You」の祝祭感でお互いを労う、そんな温かい人生の1枚。

Telepathy

SPECIAL OTHERS ACOUSTIC

Telepathy

もし今、忙しすぎたり、考え事で頭が爆発しそうな人がいたりしたら、小1時間このアルバムに集中してみてはどうだろうか。音楽とはいえもちろん"情報"だが、それを細やかな作業と心のこもったものに変えると脳内がリセットされる――ということをまさに実感したのが、SPECIAL OTHERS ACOUSTIC=S.O.A(読み:ソー)の2nd。複数のギターとピアニカが世界のフォークロアと都市のチルアウトを同時に感じさせる「WOLF」などの新曲と、「IDOL」、「CP」などスペアザではお馴染みナンバーのアコースティック・アレンジと呼ぶにはかなり再構築がなされたバージョンなど全10曲。ブラジル的なサウダージ感と北欧や東欧の森感が不思議と混ざり、オリジナルに着地。合奏の熱と愛情に心がほぐされる。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

スペアザがコラボ作品集を発売。本作はセルフ・タイトルではなく、"SPECIAL OTHERSにとってのSPECIAL OTHERS(特別な他人)"、コラボ参加アーティスト達のことを指しているのだ。つまり作品の主役は、招かれた6組のヴォーカリスト達なのである。しかしながら、鳴っている音は紛れもなくスペアザ。バック・バンドに徹している様子はなく、歌い人たちがバンドの音の中に放り込まれたといった印象である。生命の息吹が無数の光として溢れ返る、圧倒的な音の多幸感の中へ招かれた客人たち。やがて歌と演奏とは混然一体となり、歌声はスペアザの作る生命力の激流の中を勇ましく突き進んでいく。音に飲まれまいと、強く歌い響く歌声の逞しさは、いわば声による音の息吹。スペアザは、新たな"音"を手に入れ、新たな音色を生み出した。

THE GUIDE

SPECIAL OTHERS

THE GUIDE

1年半ぶりにリリースされた4枚目のアルバムは、ゆるゆる~と見せかけて、細かな音がたくさん散りばめられていて楽しい仕掛けが仕組まれている。そのあたりスペアザは知能犯だ。大人の音遊びといった感じ。平均して1曲が長い(なかには9分超えの大作も!)けれど間延び感がまるでない。ライヴでは以前から披露されていた「it's my house」はドラマティックに展開される耳なじみのいいナンバー。アコースティックな楽曲の「Palabora」はノスタルジックな妙に泣けちゃうメロディだったりと多彩な側面を見せる。持ち前のバンド・アンサンブルはさらに磨きをかけられて、どこまでもスペアザらしい。聴けば聴くほど味が出てくるじわじわ系。今後のスペアザを示す道しるべ的アルバムの誕生だ。

PUNK RECORDS

SpecialThanks

PUNK RECORDS

フル・アルバムとしては『SUNCTUARY』以来4年ぶりとなる5thアルバムに冠したのは、直球のタイトル。全13曲、珠玉と言うに相応しいパンク・ロックが並ぶ。昨年のEP『Sweet pea E.P.』が前体制での最後の作品になり、現在はMisaki(Vo/Gt)、よしだたかあき(Dr/Cho)の2人体制にサポート・メンバー(いやま/ex-Dizzy Sunfist等)を加え活動するSpecialThanks。形は変われどその心を掴むグッド・メロディは色褪せることなく、むしろ繊細にパワフルにと進化しながらエネルギーを放っている。これまでもモチーフとなってきた太陽のように、いつ、どんなときもそこにあって、誰かの人生と並走したり照らしてくれたりする。そんな音楽が詰まったアルバムだ。

SUNCTUARY

SpecialThanks

SUNCTUARY

新体制初アルバムは、ファストな2ビートとノイジーなギターに、Misakiの切なくも美しいヴォーカルとグッド・メロディが冴える「ムーブメント」で幕開け。"令和"という言葉を盛り込み、新たなスタートを切った今と、新メンバーで走り出す高揚感と幸福感とを詰め込んだ曲が晴れやかだ。エヴァーグリーンなメロディとジャングリーな演奏のパワー・ポップや、爽快なギター・ロックといったこれまでの流れも踏襲しつつ、今回はメロコアの魅力が際立っている。勢いのあるバンド・アンサンブルとメンバーのシンガロングも生かして、エネルギッシュに突っ走っているのが心地いい。この4人のグルーヴをリアルに感じる作品で、「Nonobaby」での男女ツイン・ヴォーカルがスペサンの世界に新風をもたらしてもいる。

HEART LIGHT

SpecialThanks

HEART LIGHT

バンドのキーマンであるMisaki(Vo/Gt)の心境の変化が反映されたフル・アルバム『Anthem』から約9ヶ月でリリースされる5曲入りミニ・アルバム。突如"ロック・スターになりたい"と思い立った彼女が、日々の生活でわくわくすることを探していった結果生まれてきた楽曲たちは、抜けが良く爽快感のあるものばかり。メロディの起伏もドラマチックで、彼女のキュートさとスパイスが混ざり合った豊かな歌声も映える。歌詞には彼女の新しい気づきが多々反映されており、モチーフも太陽、宇宙、愛、水など、人間の生活には欠かせない壮大なものが多い。特にミドル・ナンバー「ハートライト」の存在感は詞曲ともに格別。ポジティヴやネガティヴの域を超えて、ひたすらにナチュラルなサウンドを堪能できる。

Anthem

SpecialThanks

Anthem

ガールズ・メロディック・パンク・バンドの急先鋒としてシーンに衝撃を与えてから、早数年。Misaki(Vo/Gt)率いるSpecialThanksが3rdフル・アルバムを完成させた。1曲目の「singing」からゆったりと始まるので、"これがスペサン!?"と驚かされるが、驚きはそのあとも続く。なんと、歌詞は初めての全曲日本語詞。そして、どっしりと腰を落としたビートや、エモーショナルなメロディが光っている。Misakiの歌もかわいらしさや勢いに留まらない豊かさを誇っており、すべてにおいて、彼女/彼らが大人になったという事実がとても素直に反映されているのだ。とはいえ、共に歌い、共に感じられる、そしてライヴが観たくなる本来の良さは失われてはいない。音楽と人に誠実に生きるバンドの真価が発揮された1枚。

heavenly

SpecialThanks

heavenly

今年に入り、新体制でかつてないほど精力的に活動中のSpecialThanks。今作はメンバー・チェンジ前に制作された作品とのことで、バンドがこの先どうなっていくのか?というリアルな状況が綴られている。とは言ってもネガティヴな要素はほとんどなし。インタビューでMisakiが語ったように、"これからどうなるのか、わくわくが止められない"という気合いが隅々にまで通った作品だ。だからこそ今回の聴きどころはMisakiの歌声。昨年リリースされた2ndフル・アルバム『missa』でも格段にエモーショナルに進化していたが、今作はさらにギミックや情感も豊かになっている。彼女たちが目指すネクスト・ステージは一体どんなものなのか――そんな期待を煽る初期衝動的青さが眩しい作品だ。

missa

SpecialThanks

missa

2013年12月に現メンバー初作品『MOVE ON』をリリース以降、MIX MARKETとのスプリット・アルバム、初の書き下ろしタイアップ曲のシングル・リリースなど、バンドにとって新しい挑戦を続けてきたSpecialThanksが、フル・アルバムとしては4年振りとなる2ndをリリースする。紅一点ギター・ヴォーカル、Misakiの歌はこの1年半で格段にパワフルになり、メロディック・パンクを骨にしつつもそこに縛られないバンド・サウンドも華やかで太い。1曲1曲にしっかりと向き合い、心からバンドを楽しみ、自身のルーツにあるロックンロールへの敬意と自身の楽曲への愛情がダイレクトに伝わってくる、ピュアでフレッシュな作品だ。PERSONZのカバー曲、弾き語り曲など、全15曲でカラフルに魅せる。

LOVE GOOD TIME

SpecialThanks

LOVE GOOD TIME

MIX MARKETとのスプリット・アルバムを先月リリースしたばかりのSpecialThanksが、TVアニメ"オオカミ少女と黒王子"のオープニング・テーマ曲「LOVE GOOD TIME」をシングル・リリース。初のタイアップ、初の書き下ろし、初のシングル、初の日本語詞、初のカラオケ入り、初のTVサイズ作成......とバンドにとって初めて尽くしの楽曲は、スペサンらしい瑞々しいメロディックが健やかに鳴り響く。歌詞には主人公、エリカの気持ちを彩り、Misakiのヴォーカルも幸せな恋を掴もうと心に秘めた真っ直ぐな気持ちを力強く届ける。曲間のクラップのセクションなども、恋を後押しするようなポジティヴな空気感。キャッチーで華やかなメロディも、作品と相性抜群。バンドの充実感が凝縮された1曲だ。

ROCK'N'ROLL

SpecialThanks × MIX MARKET

ROCK'N'ROLL

まるでひとつのバンドの音源を聴いているようだ。それだけ両者が互いをリスペクトし、心を通わせているということだろう。KOGA RECORDSのガールズ・バンドの先駆けであるMIX MARKETと、彼女たちの音楽を聴いて育ったSpecialThanksによる"ふたつのロックが混ざり合う"今作には、共作曲1曲、各バンドの新曲3曲、それぞれのカヴァー曲が1曲ずつ収録されている。SpecialThanksは太い信念がこめられたメロディック・パンクに、少女から女性に成長しているMisakiの歌声が重なり、より曲の持つ情感を豊かに表現。デビュー17年を迎えるMIX MARKETは過去から現在までのロックを幅広く取り入れ、遊び心溢れるフレキシブルなサウンドに。両者とも瑞々しい音色で、純粋な"音を楽しむ"という心の結晶だ。

MOVE ON

SpecialThanks

MOVE ON

2013年春にHeisuke(Gt)が加入し、再び4ピース・バンドとしてスタートを切ったSpecialThanks。現在、2014年夏に向けて2ndフル・アルバムを制作中の彼女たちから放たれる、現メンバーでの初のレコーディング作品がこの5曲入りEPだ。正統派メロディック・パンク、4人のアンサンブルならではのポップ・ロック的アプローチ、優しいメロディが印象的なナンバーや哀愁漂うミディアム・テンポの楽曲など、4ピースだからこそ作ることができたサウンドの幅を、ひとつひとつしっかりと見せてくれる。3ピースで活動していた時期に"より歌を大事にすることを考えた"というMisaki(Vo/Gt)の歌声は楽曲それぞれにしっかりと向かい合い、音と共に踊るように輝く。4人の自信に満ちた作品と言えるだろう。

Voyager

THE SPELLBOUND

Voyager

約2年半ぶりとなるアルバム。新章のきっかけとなった、「すべてがそこにありますように。」や「LOTUS」で予感されたサウンドスケープを大きく上回る多彩さに、瑞々しい楽曲、現代のロック・バンドの存在意義を表明する楽曲等、グッとレンジを広げた14曲。"夢ノ結唱"とのコラボ曲やBiSへの提供曲の原曲(セルフカバー)の収録は、THE SPELLBOUNDが見据えるポップ性のエッジが際立っているし、JESSE(RIZE/The BONEZ/Vo/Gt)をラップ・パートに迎えた「2Colors」のコラボも新鮮。未だ聴いたことのない音楽をAIが精度高く作る時代にあって、人間が作り出す音楽の必然はなんなのか? そのことを体感できる作品でもある。

LOTUS

THE SPELLBOUND

LOTUS

THE SPELLBOUNDの進化のプロセスには、小林祐介の肉体性から離れているような機械的な言葉の羅列が生み出すちょっと呪術的なヴォーカル・アプローチがある。今回のシングルは"LOTUS"という大きなテーマの中で表題の「LOTUS」と、そのリアレンジ版である「ここにぼくらがいること」の2曲が双子のように存在することでしか実現しない"体験"がある。「LOTUS」では中野雅之が作る光の中、いや、光そのものになるようなシンセで構築されたサウンドスケープがあり、「ここにぼくらがいること」ではマントラのように繰り返し祈ることで生まれるトランス感がある。逆境を示唆する状況を綴る歌詞がリフレインされる先にほのかに灯る"同じ夢を見ようよ"というワード。スペルバならではの構造を持った会心のシングルだ。

すべてがそこにありますように。

THE SPELLBOUND

すべてがそこにありますように。

アニメ"ゴールデンカムイ"第4期EDテーマとしても話題の新曲。セルフ・ネームの1stアルバムで確立されたモノローグ調の地メロとリフレインされるサビや、ラップ的な小林祐介のヴォーカル表現は今回もさらに研ぎ澄まされている。ワイドな音像と突き進むビートがどこか最果てに向かう体感を聴き手に自然と共有させるのも、スペルバならではの手法だ。c/wの「約束の場所」は、AIが自動生成するポエトリー・リーディングのような言葉の羅列と、イノセントでロマンチックな内容が齟齬なく、むしろ真っ直ぐ飛び込んでくるユニークな仕上がり。シンセ・ストリングスなど、どこまでも飛翔するような空間作りも世界観を決定づける。地の果ての荒涼と、そこにさす一条の光。2曲は対になっているのかもしれない。

TWO

SPiCYSOL

TWO

2月に配信リリースした「Far Away」を含むデジタルEP。全3曲の選曲にはドライヴのBGMという裏テーマがあるそうだ。1曲目の「Playback」は、ブラック・ミュージックというルーツが如実に表れた、ファンキーなダンス・ナンバー。セクシーな歌詞とともに楽しみたい。そこから一転、「Far Away」は、'80s調のリバービーなサウンドが印象的なミッド・テンポのロック・ナンバー。遠回りすることは決して無駄じゃないというロード・トリップと人生を重ねたメッセージは、今だからこそ多くの人の胸を打つはずだ。3曲目は、彼らの代表曲のひとつである「Traffic Jam」を、覆面ユニット AmPmによるリミックスで収録。AmPmの大ファンだというメンバーのたっての願いでコラボが実現したそうだ。

From the C

SPiCYSOL

From the C

現行R&Bやサーフ・ミュージック、チルなヒップホップが、メンバーの3人が茅ヶ崎住まいになったことでよりナチュラルになりつつ、複数のサウンド・プロデューサーとタッグを組んだ曲を含むことで、完成度を上げたメジャー1stアルバム。BTSや三浦大知らを手掛けるSUNNY BOYと組んだ「So What」は、オーガニック+シンセ・ベースなど新鮮な音像を、またDef Techと作詞作曲した「THE SHOW feat. Def Tech」では、ダンスホール・レゲエのグルーヴも取り入れつつ、ぐっとモダンな仕上がりに。マーチング・リズムがピッチに似合いそうな「LIFE feat. 槙野智章」は、槙野選手のストレートなメッセージに驚くが、それもアリにしてしまうのはバンドの包容力と自然体ゆえ。

FREE - EP

SPiCYSOL

FREE - EP

"SPiCYSOL"というフィルターを通した様々なシチュエーションでの"FREE"をパッケージしたコンセプトEP。自由に生きる楽しさを歌うメロウ・ナンバー「BOHO」、遠距離恋愛を歌った先行シングル「Blue Moon」、失恋して"フリー"になってしまった切ない想いを歌う「SOLO」など全5曲を収録している。アコギの音色と優しく囁く歌声が美しい「Free -Interlude-」からの「10years vintage」の流れは、SPiCYSOLの世界観がより色濃く表現されていて圧巻。特に切なさ溢れるギター・ソロで幕を閉じるところも心地よく、音が止んだあとにも余韻を残す。メロディだけでなく、ぜひ歌詞カードを見ながら、SPiCYSOLの世界に深くまで浸ってほしい。

Tropical Girl

SPiCYSOL

Tropical Girl

新進気鋭の5人組バンド SPiCYSOLの2ndミニ・アルバムは、彼らが掲げるジャンル"Surf Beat Music"をより高めた陽気で開放的な夏にピッタリの賑やかなパーティー・アルバム。ブリブリなベース・ラインとファンキーなギターのカッティングに乗ってアゲアゲに攻めるラップの「イッチョ舞え!!!」には腰が引けそうな内気なリスナーにも「V.A.CATION」のユルくも熱い歌とサウンドには親近感を覚えるのではないだろうか。レーベル・メイトでもあるTOTALFATの楽曲「Room45」のカバーでは、ゲスト・ヴォーカルにメンバーのShunを迎え、原曲とはまったく違うレゲエ調のアレンジでカバーしているのも聴きどころ。その選曲/アレンジには明るくも尖ったビートを聴かせる彼らのスピリットを感じることができる。「Outro」で終わる聴後感も心地いい1枚。

Rising Sun

SPiCYSOL

Rising Sun

"Surf Beat Music"というジャンルを掲げて2015年にデビュー、"SUMMER SONIC 2015"、"UKFC on the Road 2015"など、大型フェスに出演して活躍している5人 組バンドの1stシングル。バンド名の通り、"SOL=太陽"をコンセプトに制作されており、Track.1の表題曲「Rising Sun」の出だしの波の音に続いて聴こえてくるパーカッシヴな乾いたアコースティック・ギター、そこにスパイスを効かせるシンセの音色は太陽燦々なビーチが目に浮かんでくる心地良さ。Track.2「Sunset Beach」では陽が落ちる様子が目に浮かぶメロウな楽曲になっており、明確なコンセプトに沿ったイメージ通りの2曲となっている。今後、野外フェスには欠かせない存在になりそうな彼らのピースフルな印象を与える作品。

Spinn

SPINN

Spinn

母国イギリスで高い評価を受け、ここ日本でも2018年10月に初ライヴを行い早耳リスナーから注目を集る、リヴァプール出身の4人組インディー・ロック・バンドが待望の1stフル・アルバムをリリース。あどけなさの残る歌声にドリーミーなシンセとコーラスを絡めた、甘酸っぱさを纏ったギター・ポップは、UKロック・ファンの琴線に触れるサウンドに仕上がっている。踊ってしまうようなビートにキャッチーなフレーズが心地よい「Bliss」や「Sunshine」、歌うようなベース・ラインの「Shallow」など、メロディ・センスの良さも垣間見えるし、アコギに乗せて"君は天からの贈り物だ"と切なく歌い上げる「Heaven Sent」も秀逸。これからの躍進に期待できそうな1枚だ。

オヒレフシメ

Split BoB

オヒレフシメ

愛知県岡崎市の高校の同級生で結成された5人組ガールズ・バンド、Split BoB(読み:スプリットボブ)のニュー・ミニ・アルバム。地元の音楽スクール"Wish Music School"でレッスンを重ねながら、楽曲制作やライヴ活動を精力的に取り組んできた彼女たちは、ハイクオリティな楽曲と高い演奏力が早くから注目される存在だ。そんなSplit BoBが新たなフェーズへと突入するための節目の1枚として完成させた『オヒレフシメ』は、これまでの衝動的なロック・ナンバーだけでなく、より多くのリスナーに届けることを意識したサウンド・アプローチにも挑戦。バンドの持ち味である歌謡ロックに磨きをかけた「なんでなんでなんで」を始め、ネガティヴでコミュ障な性格を綴った楽曲では、20代女子の等身大が見え隠れする。

夜

Split end

2017年1月にギタリストが加入し、もとの4ピース編成に戻り、1年かけてバンドを固めてきた奈良発の4人組による初の全国流通盤。メンバーがひとり増えて音が分厚くなったことにより、サウンドはシューゲイズ寄りに。全体的に迫力が増しているところが最も大きな進化のポイントだが、時折鋭さを覗かせるななみ(Vo/Gt)のハスキーなハイトーン・ヴォイスがしっかり映えてくる点、リフの使い方、ポップなメロディ・ライン(「ワンナイト」サビ突入時の急な展開には大笑いさせられた)など、従来の彼女たちの持ち味もしっかり生かされている。"過去も連れていざ未来へ"という、バンドの意志が読み取れる作品。同日より全国リリースされる2ndシングル『ロストシー』も要チェック。

Hot Thoughts

SPOON

Hot Thoughts

2015年に開催された第57回グラミー賞授賞式で、いまは亡きPRINCEは"みんな、アルバムって覚えてる?"と口にした。名門レーベルMatadorに復帰したSPOONの新作は、そんな彼の言葉への最適解のようにも受け取れる。表題曲「Hot Thoughts」のアトモスフィアなサウンドから、オールドスクールなコード進行にシンセを重ねるプロダクションなど、変化を恐れないそのスタイルは、いくら時間が経ってもルーキーだったころを思い出させる。だが、20年のキャリアで得た知見と、現在の母国アメリカのビルボードに見るブラック・ミュージックの特性がグルーヴとして見事に取り入れられているあたり、やはりベテランであることに変わりはない。バンドであり、バンド・サウンドに縛られない。まさにPRINCEが体現してきたスタンスを汲み取る、アルバムで聴き取るべき作品である。

Real Lie

S.R.S

Real Lie

2009年に若干19歳でデビューした4ピース・バンドS.R.Sの、ファースト・アルバム『ACROSS THE MINDSET』以来、1年振りのリリースとなる今作。ドラマ主題歌にもなっている表題曲「Real Lie」は、憂いのあるストリングスが特徴的な、透明感に溢れた壮大なバラード。だが歌詞はそれとは対極的に、葛藤を抱え、どうにかして現状を打ち壊そうともがく、素朴でストレートな気持ちが綴られている。山口卓也(Vo&Gt)の柔らかく浮遊感のある歌声が、やり切れない切なさとノスタルジックな空気をより深くしてゆく。c/w「太陽の絵描き歌」はあたたかいギターのアルペジオとコーラスが非常に素朴で、何気ない日常をそのまま切り取ったようだ。優しさの詰まった2曲入りシングル。

Starcrawler

STARCRAWLER

Starcrawler

ギター・バンド、ロック・バンド、ロックンロールが日本以上に存在価値を失っているような今のアメリカに、印象的なアンプの歪みだけで鳴っているようなリフでノック・アウトするティーンズ・バンドの登場は刺激的だ。時代は違うがTHE STOOGES、RAMONES、THE STROKESなど第一声でまず"カッコいい"が出てくる類のバンドに共通する存在感。Ozzy Osbourne好きというヴォーカルのArrow De Wildeは流行りのラップ・ミュージックなどには目もくれず、まるで70年代の"男性"ロック・スターのような佇まいでアンニュイ且つ幼さを残す歌を聴かせる。スタンダードすぎて誰もやらないことを、若さという危うい魅力でねじ伏せるのも才能。3月には早くもジャパン・ツアーが決定している。

Mirror Traffic

STEPHEN MALKMUS & THE JICKS

Mirror Traffic

どうしてもどうしても、PAVEMENTが離れない……!とはアーティストもファンも承知の上でしょう。だからこそ、古参ファンはかつての想いも込めてこの新境地を楽しんでもらいたいし、新参としてはここからこの男の歴史を紐解くといいだろう。きっと、奥深きロー・ファイの真髄を堪能できるから。PAVEMENT のフロントマンStephen MalkmusがSTEPHEN MALKMUS&THE JICKS名義での通算5枚目『Mirror Traffic』をリリース。このポピュラリティ高いノイズ、脱臼感あるメロディとリズム、そして鋭いウィットは、ふたつとないオリジナリティ。それはまさにメイン・ストリームと一線を画すオルタナティヴであり、ささやかに惹きつけられ、揺さぶられる。本作のプロデューサーがBECKというのは最大のトピックだが、ロー・ファイ黄金タッグというイメージを裏切らない痛快な仕上がりだ。

Wandermüde

Stephan Mathieu And David Sylvian

Wandermüde

David Sylvianが2003 年に発表した、高い評価を獲得した作品、『Blemish』を、エレクトロニカなどのシーンでは、『Endless Summer』で一躍ポピュラー・シーンでも名を馳せたChristian FenneszやFOUR TETと等しく注目すべきエレクトロ・アコースティック・ミュージシャン、Stephan Mathieuが再構築した作品。重厚なドローンで神秘的に作り上げた同作品は、決してどの音楽リスナーにも好まれるような、良い意味で敷居の低い作品ではないが、その圧倒的な音の存在感、たるや圧巻である。Track4.「The Farther Away I Am (Minus 30 Degree)」が顕著だが、たまには優しいノイズの波に身を任せてはいかがだろうか?

STEREO DIVE 02

STEREO DIVE FOUNDATION

STEREO DIVE 02

前作から2年2ヶ月ぶりとなる待望の2ndアルバムが完成。収録曲の大半をタイアップ楽曲が占めていることからも、R・O・Nというサウンド・クリエイターであり、SDFというプロジェクトへの信頼が着実に高まっていることを窺い知れる。ハードでダンサブルなロック・ナンバーから、清涼感溢れるダンス・ポップまで、多岐にわたるサウンドを繰り広げつつも、それらを繋ぐ役割で配置されている新規曲も聴き応え抜群。夜の匂いを感じさせるダンス・チューン「Neon Soda」や、ピアノ・ロック的な軽やかさのある「Carry on」、ジャジーなセクションが飛び出す「Count to three」など、アルバムのトータル・バランスを取りながら、SDFが鳴らすポップ・ソングを追求した1枚になっている。

STEREO DIVE

STEREO DIVE FOUNDATION

STEREO DIVE

2013年のデビューから約7年──楽曲提供やBGM制作など多方面で活躍しているR・O・Nによるサウンドメイキング・プロジェクトの1stアルバムがついに完成した。どの楽曲もエレクトロニックなサウンドを軸にしつつ、ワイルドなギターを轟かせる「PULSE」や、荘厳なストリングスと獰猛なシーケンスが交互に飛び出す「Blackout」といった重厚感のあるものから、エモーショナルなシンガロングを擁した爽快感のある「Coda」や、瑞々しいダンス・ナンバー「ODSD」といった軽快で心地よいものまで、実にバラエティ豊かな全12曲が収録されている。また、どの楽曲もかなりメロディアス且つ、それを歌うR・O・Nのヴォーカリゼーションもクールで、耳に残るものばかり。

Not Music

STEREOLAB

Not Music

STEREOLABは91年MCCARTHYというバンドで活動していたTim GaneとLætitia Sadierを中心にロンドンで結成された6人組のポストロック・バンド。02年にはメンバーのMary Hansen が事故で他界。悲劇を乗り越えて活動を続けていたが、09年にホームページ上で活動休止を発表。それから待望の復活を果たし約2 年振りとなる11作目のニュー・アルバム『Not Music』を発表。今作はまさに音楽+趣味+実験=STEREOLABという彼らからイメージされるバンド・イメージ通りのアルバムとなっている。ポップなリズムと心地いいテンポを味わえば、きっとSTEREOLAB(音響研究室)から抜け出せなくなるはず。

Oochya!

STEREOPHONICS

Oochya!

UKを代表するロック・バンドのひとつ、STEREOPHONICS。これまで作品ごとに様々な顔を見せてきた彼らだが、12作目のオリジナル・アルバムとなる今作は、そんな彼らのロックのすべてが盛り込まれていると言っていいかもしれない。初期のグランジ・テイストでスリリングなロックの片鱗が見えるアップテンポな楽曲、そして彼らの根底にあるブリット・ポップのグッド・メロディ、ロックンロール・リヴァイヴァルを経た英国ロックのスピリット、進化し続けてきたロック・シーンの中で揉まれ、身につけてきたタイムレスなポップ・センス。そのすべてがこの1枚に凝縮されている。デビュー・アルバムから25年、駆け抜けてきたSTEREOPHONICSというバンドの芯の強さを感じることができる作品だ。