DISC REVIEW
S
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SKATERS
Manhattan
NYブルックリン出身の4ピース・バンドで、既に海外メディアではTHE STROKESの名前と比較されて紹介されているらしいが、それもまぁ納得の、00年代ロックンロールと70年代パンクのエッセンスを吸収したガレージ・ロック。ただ、デビュー時のTHE STROKESほどスタイリッシュで完璧なわけじゃない。ギタリストはTHE PADDINGTONSやDIRTY PRETTY THINGSのようなUKバンドでプレイしていた経歴を持っているようだが、むしろそんなバンドたちのラッディズムを継承した、パワフルで、でも情けなくて、笑えて、最後はそのメロディに涙してしまいそうな、そんなロマンティシズムに満ちたデビュー・アルバムだ。曲によってはエレクトロやレゲエにも手を出していて、こういう雑食性にバンドの無邪気さと生真面目さが表れている。
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skillkills
DOPE THIS WAY
図らずもイビツなビートを生み出すGuruConnectによるトラックとラップで独特な存在感を発揮しているアヴァン・ヒップホップ・バンド初の4曲入りEP。3人編成になってから初めての音源であり、決意表明の1枚となっている。表題曲の「Dope This Way」のつんのめるような不思議なリズムは、妙な後味が耳に残り繰り返し聴いてしまう。ラーメン屋でふと思いついたという、CD盤とケース以外は自由に購入して組み合わせることができる"トッピング方式"でリリースするなど、自由な発想が活動に活かされている。アニメ"ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン"のエンディング・テーマ曲「Neo Cyber Madness」はB級映画風なMVと共に楽しむことを強く推奨したい。エンターテイナーとしての彼らの姿勢が存分に伝わってくるはずだ。
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THE SKIPPERS
Lookin' Back
ヒトクセもフタクセもある個性派バンドがひしめく関西のライヴ・シーンにおいて頭角を表している彼ら。真っすぐにしか突き進めない不器用さ(もちろんいい意味で)に魂が揺さぶられる。あーだこうだと、頭で変換する前に体が動きだして、ライヴ行きてー!と心底思わずにはいられないはず。眠っていたパンク・スピリッツも暴れだす起爆剤的な1枚。決して新しいタイプの音楽ではないかもしれない。でも、そんなことはどうでもいい! と言わんばかりに畳み掛ける轟音がハッピーにさせる。今の時代こそ底抜けに明るいパンクが必要でしょ。それにしてもメンバーのみなさん、関西ノリというか、ブログ等でも垣間見えるハイテンションぶりがおもしろすぎです!
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SKRILLEX
Scary Monsters & Nice Sprites
非常に太いベース音と、リバーブのかかったドラム、細切れにされたサンプル音。まさにダブステップの特徴そのものなのだ。だが、時折入るキャッチーなフレーズがリスナーに重度の中毒を引き起こす。他のダブステップのアーティストと彼が一線を画していると感じられるのはそれゆえだろう。特にTrack.1、3の女性ヴォーカルは非常にポップでリズミカル、可愛らしくすら感じる。また、どこか懐かしさを覚えるTrack.2のイントロの浮遊感のあるフレーズは曲中で何度もループされ、どこかへトリップしそうな感覚を生み出している。全米ビルボード、Top Heatseekersにて34週以上もの間ランク・インし続けた実績は伊達ではない。ダブステップ・ファン以外にも愛される彼の音楽を聴かずして、音楽ファンは語れないだろう。
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SLEATER-KINNEY
No Cities To Love
"Lollapalooza 2006"でのライヴをもって活動を休止していたSLEATER-KINNEY。Corin TuckerはTHE CORIN TUCKER BAND名義でアルバムを発表、Carrie BrownsteinとJanet WeissはWILD FLAGを結成、さらにJanetはQUASIのドラマーとしても活躍するなど、おのおのの活動を経てリリースされる新作だけに、10年前とはまったく違うスタイルになっているのでは?と思ったが、突き抜けるような高揚感は相変わらず。変化といえば、ベースレスのスカスカしたサウンドに、どこか哀愁が漂うようになった。90年代半ば、闘争的な"ライオット・ガール"だった彼女たちは今、ブルージーなロックをかき鳴らしている。
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SLEEPER AGENT
About Last Night
前作をパーティの喧騒と考えるなら、SLEEPER AGENTが2年半ぶりにリリースするこの新作はタイトルが物語るとおり、どんちゃん騒ぎの翌朝、感じるほろ苦さとなるのだろう。2011年、シーンに突如現れ、ロックの救世主と注目されたケンタッキー出身の6人組。ニュー・ウェイヴ風味もあるガレージ・ロックという意味では前作の延長だが、1年かけて作っただけあって、曲作りには思慮深さが感じられる。男女ツイン・ヴォーカルを改め、大半の曲を紅一点メンバーが歌っている。賑やかさは減ったものの、むしろそこが今回の聴きどころ。近年のインディー・フォーク・ブームに共鳴するTrack.5「Lorena」やせつなすぎるバラードのTrack.8「Shut」他、バンドの成長を物語るメロウネスをじっくりと味わいたい。
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SLEEPER AGENT
Celabrasion
2008年にアメリカのケンタッキー州で結成された、まだ10代のメンバーも在籍しているという6人組ガレージ・ロック・バンドのデビュー・アルバム。60’sや70’sのガールズ・ポップを髣髴とさせる甘いメロディを、青さを隠し切れないラフなガレージ・サウンドに乗せて走り抜けていく。近年のバンドだとTRIBES辺りとリンクするのは間違いないが、この若きバンドのメロディ・センスはTHE CRIBSすら凌いじゃうんじゃないの!?ってくらい突き抜けたキャッチーさを持っている。クソ生意気そうにクールに歌うAlex嬢と、頼りないJack Whiteみたいなヴォーカルを披露するTonyのツイン・ヴォーカルのバランスも最高。是非邦楽ファンにも聴いていただきたいバンドだ。
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SLEEPTALK
Sleeptalk
"Space Rock"を掲げるロサンゼルスの5人組がCrystal Lakeらを擁するレーベルからデビュー。もともと、LIKE GIANTSというポップ・パンク・バンドをやっていたメンバーたちが自分たちの成長を楽曲にするため新たに結成したそうだ。ANGELS & AIRWAVES、THE 1975、Drake、THE WEEKNDをインスピレーションに掲げ、シンセ・サウンドやダンサブルなビートを導入。1stアルバムということで、アンビエント且つ壮大なスケールを意識したものから、R&B/ヒップホップを含む現在のメインストリームのポップ・サウンドを意識したものまで、様々な可能性を試しているが、シンガロングしながら踊れるTrack.8~10の流れは、これからこのバンドの大きな武器になっていきそうだ。
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sleepy.ab
LIVE@Gloria Chapel
sleepy.abのアコースティック編成"sleepy.ac"が、2013年11月27日に品川教会グローリア・チャペルで行ったライヴの模様を収録したアルバムをリリース。"ストリングス・ダブル・カルテットを迎えた神聖かつ荘厳な、安眠導入盤"と公式サイトにも書いてある通り、スリーピー作品のなかでも心地よさのそれならば極上の域だ。透き通る音色と歌声はスピーカー大音量でも耳に優しい。チャペルならではの反響がパッケージングされ、あの日のライヴの空気をそのまま落とし込んでいる。オフィシャル・ウェブ・ショップとライヴ会場限定盤にはライヴ映像を収めたDVDが付属。山内憲介が次から次へ用いる様々な楽器や、鈴木浩之のパーカッションさばきなど目を見張るステージングが堪能できる。
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sleepy.ab
neuron
計り知れないものとしての“脳内宇宙”に進んで迷い込むことがこんなに楽しいとは! 山内憲介の手工芸的なインストで幕を開け、ビートがグッとタフになりダンスもOKな「euphoria」、サイケなサビとダビーな展開の「undo」、RADIOHEAD的なストイシズムや空間の広がりに加え、どこかA.O.R寄りの洒脱さえ感じさせる(ベースの音色とアレンジに拠るところ大と見た)ミラクルな楽曲「アンドロメダ」などは曲の骨格の変化が顕著。また「ハーメルン」や「around」や「Lost」などメロディの美しさが際立つ楽曲では、楽器ひとつひとつの音を選び抜き、微妙な不安定さや奥行きを作り出しているのも聴きどころのひとつだろう。言葉の意味を飛び越えて、音楽そのものがメッセージ足りえている体験的な全14曲。
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sleepy.ab
アンドロメダ / Lost
夜空に輝くアンドロメダを探す。見頃は秋から冬だ。雪で覆われてシンとした世界で夜空を見上げ、カシオペヤとペガサスの間にその姿を探す。sleepy.abのバンド名の“ab”が示す通り、サウンドは確かにabstract=抽象的で曖昧という言葉がしっくりくるのだが、今作では歌詞が合わさった途端、その世界は急速に形を成す。彼らの音楽と歌詞がまるで映画のように世界を組み立て、リスナーの頭の中に投影する。冬に聴きたいバンドとしても名前が挙がる北海道在住の4ピース・バンドが冬の終わりに放つニュー・シングル。去りゆくアンドロメダをモチーフにつづられる切なくて甘い気持ちをぎゅっと詰め込んだロマンティックな1曲を、貴方の冬のセット・リストの1番最後に加えてはいかがだろうか。
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sleepy.ab
Mother Goose Live +
アリスは兎を追いかけた。そして穴へと飛び込み、不思議の国へと迷い込む…とはならない。アリスは穴へと落ちる前に兎に追いつき、声をかけてしまったのだ。sleepy.abのライヴが、細部に渡り至近距離で見れてしまうということは、嬉しくもあるが、ナンセンスでもある。音響バンドでありながら、メロウで美しい“うた”も兼ね備えるからこそ、彼らのライヴは、視覚と聴覚から得るものは元より、感受性と想像力とで、その音を更に芳醇なものへと膨らませていく。個々の想像力によって際限なき空間演出がなされることによって、その画は無限の広がりをみせるのだ。だが、兎のガイド付きで不思議の国を訪問したら、その“不思議”は消えてしまうし、物語は広がりを見せない。まずは、実際にライヴに行ってから見て欲しい作品。
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sleepy.ab
Mother Goose
昨年リリースされた初のシングル『君と背景』と『かくれんぼ』。本人もそう言葉にしているように、アルバム・アーティストという認識が強いからこそ、ただ一曲を届けるという行為は大変な挑戦だったようだ。だが、そこを越えた今、sleepy.abはとても開けている。作品作りという面おいては"開いて閉じて"を繰り返し、毎回試行錯誤しているわけだが、バンド自体はとても開けているのだ。もっと陽の光をあびようと、その花弁をより大きく開こうとする花のように全方位に前向きだ。だからこそ『マザーグース』は優しい。誰も貴方を追いたてることもないし、日常のレールなんてふとした思いつきで外れてしまえるのだと、優しく手を伸ばしてくれる。もの言わずとも、その目に見える情景と触れた温度で伝わることだってあるのだろう。
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sleepy.ab
かくれんぼ
突如滲んだ柔らかいギターの不協和音。その瞬間動けなくなり、曲が終わるまで鳥肌は止まらず、気付けば目には涙が溢れていた。札幌在住の4 ピース・バンドsleepy.ab、セカンド・シングルのタイトル曲は、柔らかなストリングスが4 人の奏でる音と美しく溶け合うスケール感溢れるナンバー。素直になれないがゆえに孤独を選び、殻に閉じこもってしまう人間の弱さ。成山 剛の歌声はその弱さを否定せず、ただ優しく寄り添う。彼が歌う"明日へおやすみ" という言葉で何もかもが救われた気がした。元々バンド名の表す通り夢の中のような抽象的な音楽を紡ぎ出すバンドであったが、その世界観は作品を経るごとにますます高まり、立体的になっていることを今作で痛感。今日も彼らは、我々をあたたかな眠りへ誘う。
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sleepy.ab
sleepy.ac LIVE @Sapporo Kitara 20100710
吐く息は白い。まだ誰にも踏まれていない、柔らかい純白の雪原が広がるsleepy.abのライヴ。彼らのアコースティック・セット“sleepy.ac”としてのライヴを収録した本作は、バンド・セットと比べ、より暖かな手触りで、よりゆるやかに時間が経過していく。特に、「メトロノーム」以降が素晴らしくて、暖かな日の光でゆっくりと雪解けしていくような、静かな解放感で包み込んでくれる展開は、目の前の景色が一気に広がっていったその先に、眩しく穏やかな幸福を見せてくれる。そしてその幸福は「ねむろ」でせきを切ったように溢れ出す。一切の喧騒と汚れを排除した真っ白な美しさと、思わずまどろんでしまう温もり。彼らのライヴの純度がまったく損なわれていないことに感動すらしてしまう。ただのライヴ・アルバムとしてカテゴライズするにはもったいない良質な作品だ。
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sleepyhead
センチメンタルワールズエンド
3rd EP『endroll』のリリース時から、その存在について語っていた2ndフル・アルバムがついに完成。心地よい浮遊感のある「酸欠都市」や、メランコリック且つ優麗なギターと弾む3拍子が絡み合う「rain one step feat.Ichika Nito」、闇の奥に手招きする「白痴美 prod.Mantra」、躍動的なビートが哀傷を増幅していく「死んでも良い」など、美しくも儚い空気がアルバム全体に満ち満ちている。歌詞においては、武瑠というアーティストはもとより、ひとりの人間の根底にある思想や美学が詰め込まれた点では集大成的な一面もあるが、コロナ禍で吹き出した人間の業や社会の混乱を見つめ、向き合うことで生まれた言葉たちは、今を生きる人たちの胸に強い衝撃と余韻を残す。
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sleepyhead
endroll
前作から約半年で早くも到着の3rd EP。表題曲は、sleepyheadを始動するに至ったきっかけの一端を担ったTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/Gt)を作曲者に招聘。ひとつの終わりとその向こう側を描く武瑠らしい歌詞と、山中が手掛けたメロディ・ラインや、シューゲイザー的な意匠が施された幻想的且つ甘美なギター・サウンドが絡み合う意欲作に仕上がっている。また、表題曲や、ウィスパー・ヴォイスで繰り広げるラップが耳に残るダークな「dark side beach」では、UKを中心に活動の幅を広げているIttiがトラックメイキングを担当。チルアウトな「bedside」を含め、全編通して武瑠のフェイバリットが色濃く表れた音像になった。
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sleepyhead
meltbeat
昨年の始動以降、精力的に活動を続けている武瑠の3D音楽プロジェクト sleepyheadは、早くもネクスト・フェーズに突入した。緊迫感のあるストリングスとダンス・ビートが打ち鳴らされる「phase 2」を幕開けに、「meltbeat feat.DURAN」はトランシーなシンセが高揚感を煽りつつも、その旋律は切なくて儚げ。その音像であり、綴られている言葉には激動の1年を経て彼の中で芽生えた変化が表れている。他にもダークな雰囲気を纏ったドラムンベースが狂騒へ誘う「heartbreaker」と、フロアライクな曲を揃えてきたが、まどろみ感が心地よいチルアウト・ナンバー「akubi_girl」は、サブスクあたりで火がつきそうな雰囲気も。次への期待が高まる2nd EPだ。
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sleepyhead
NIGHTMARE SWAP
"豪華メンバー"という月並みな表現では追いつかないほどの布陣でドロップされた、武瑠の3D音楽プロジェクト sleepyheadのニューEP。のっけからリリックとビートが冴えわたり、悪意と遊び心のバランスが絶妙なカオティック・ナンバー「1 2 3 for hype sex heaven feat.SKY-HI,TeddyLoid,Katsuma(coldrain)」でアッパーカットを食らったかと思えば、ロマンチックに破滅的な世界観に浸る「INSIDE OUT KISS feat.MOMIKEN(SPYAIR)」、切ないポップス「BACK TO FIRST DAY feat.SHIROSE(WHITE JAM)」、ソウルフルな歌声とのバランスが新鮮なロック・チューン「DON'T YOU LET ME GO feat. AISHA」と、ラストの「Neverending Dream feat.SHO ASAKAWA(PLASTICZOOMS)」まで、まるで遊び慣れた恋人のように、心地よくリスナーを翻弄してくれる。
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SLEIGH BELLS
Jessica Rabbit
メタルコア・バンド出身の男性ギタリストと子役~ガールズ・グループという経歴を持つ女性シンガーが結成したニューヨークの男女デュオによる4作目のアルバム。ふたりのバックグラウンドをストレートに反映させたエレクトロ・パンク・サウンドは、これまで以上にソング・オリエンテッドなものになると同時に豪快に鳴るパンク/メタル・ギターもTrack.4「I Can't Stand You Anymore」が象徴するようにアリーナで轟かせることを意識したダイナミックなものに。ドリーミーなトラックも含め、王道のポップ感を増したことを考えると、サウンドのエッジはともあれ、パンクという言葉はもう彼らには相応しくないかも。自主レーベルからの第1弾にふたりが込めた情熱はオープン・マインドな作風に結実したようだ。
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SLOWDIVE
Everything Is Alive
90年代にシューゲイザー・シーンの最盛期を牽引したSLOWDIVEが、再結成後2作目となるアルバムをリリース。復活でファンを歓喜させた前作『Slowdive』(2017年)に引き続き今作も、様々な音楽経験と共に人生経験も積んだメンバーの、しっかりとした音楽観を受け取ることができる良作となっている。シューゲイザーというジャンルの中でも特に、激しい感情を伏せた繊細な音の蓄積が印象的。浮遊感のあるヴォーカルは、薄いヴェールを幾重にもレイヤードしたような、優しい透明感と重厚感が共存している。"FUJI ROCK FESTIVAL '23"での来日も記憶に新しいSLOWDIVEだが、派手さよりも素直な美しさで世界を表現する彼らのサウンドが、今後も途絶えないことを祈る。
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SMALL BLACK
Small Black EP
ドリーミーでサイケデリックな音像に包まれた新たな刺客がブルックリンから登場。シングル「Despicable Dogs」はPitchforkで絶賛され、『KITSUNE MAISON』の最新作に大きくフューチャーされた同レーベルのWASHED OUTのスプリット・シングルでも大きな注目を集めた彼ら。重なり合うシンセ・サウンドとロウファイなサウンド・プロダクションはMGMT 以降のそれを引き継いでおり、そこに絶妙なビートをブレンドしている。“心を揺さぶる” と評されたメロディはレイドバックしながらも、聴く人々の心をグッと押し上げる様な多幸感に満ちたものだ。秋にはフル・アルバムがリリースされるそうだが、捨て曲無しのこのEP をまず手に入れて欲しい。
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SMALLPOOLS
Lovetap!
シンセ・ポップがUSインディーのひとつの代名詞だった時代は遠くになったもんだと思わせるほど、今、その要素はエンターテイメントとしてすっかり定着したことをこのSMALLPOOLSのあまりに的確なビート感や掴みまくりなメロディ・センスに実感することしきり。いい意味でレジャー・ミュージックと言いたくなるとっつきやすさ、ヴォーカルの強さ、シンセ・ポップでありつつバンド・サウンドもなかなか屈強な彼らは、今夏出演するサマソニも大いに沸かせそう。先駆的存在であるPASSION PITや、大きく成長したFOSTER THE PEOPLEに共通するサウンドや楽曲構造を持ちつつ、曲によってはMTV世代さえ巻き込むようなポピュラリティも。邦楽ダンス・ロック好きもすんなり入れるはず!
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THE SMASHING PUMPKINS
Cyr
オリジナル・メンバーのBilly Corgan(Vo/Gt)、James Iha(Gt)、Jimmy Chamberlin(Dr)での復活作から2年、今回はさらに、長きにわたりギタリストを務めるJeff Schroederも制作に合流。しかし、Track.1からどちらかと言えばBillyのソロに近いシンセ・ポップや、トラック的なナンバーが続き、現行のR&Bアーティストが80'sに接近した音像を作っている印象にも近いものが。アコギと電子パッドの組み合わせがユニークなTrack.4や、ラウドな音の壁が立ち上がるTrack.11といった曲もあるが、誰もが想起するグランジ色の強いスマパンはここにはない。本作はダークでメランコリックなスマパンの、コンテンポラリー・サイドのアウトプットというのが妥当な見方かも。
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THE SMASHING PUMPKINS
Monuments To An Elegy
"ティア・ガーデン・バイ・カレイドスコープ"という大きな括りの連作の2枚目にあたる本作。"哀歌の記念碑"を意味するタイトルはスマパンという存在を今、Billy Corgan(Vo)のひとりプロジェクトになってなお、バンドのメランコリックでエモーショナルな核心を美しく閉じる儀式のようにも思える。が、2007年以降加入したギターのJeff Schroeder、そして意外にもドラムはTommy Lee(MOTLEY CRUE!)という、互いに激しさと優雅さを併せ持つミュージシャンの個性を活かしたサウンド・プロダクションはシンプルで、無駄な厚みがない。その代わりに心象の色をさすのはシンセやピアノ。そのせいで重くなりがちなテーマをポップに聴かせている。それにしてもBillyの少年性さえ携えた歌の不変に驚く。
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THE SMASHING PUMPKINS
Oceania
90年代、"オルタナティヴ"の象徴のひとつとしてシーンを席巻したバンド、THE SMASHING PUMPKINS。そんな彼らに夢を見た人なら、この新作をどう受け取るだろうか?5年振り通算7枚目の新作『Oceania』は、まさにスマパンらしい王道から未開の地を切り開くような実験まで詰め込まれた、果敢な意欲作となっている。Track.1「Quasar」やTrack.2「Panopticon」はヘヴィでアグレッシヴなギター・リフが炸裂すれば、Track.6「One Diamond, One Heart」ではエレクトロの打ち込み主体で繊細な叙情詩を奏でる。そして圧巻はタイトル・トラックとなった「Oceania」の約9分間に及ぶ壮大なロックンロールだ。これまでのスマパンを裏切りながらも、新たな領域へ踏み込んだ世界が拡がっている。スマパン......というかBilly Corganは紆余曲折を繰り返しながらもチャレンジ精神を失っていない。感動的だ。
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SMASH MOUTH
Magic
米カリフォルニア州北部にあるサンノゼ出身のポップ・ロック・バンドSMASH MOUTHが、約6年振りにオリジナル・アルバムをリリース。今作は様々なソングライターを招き制作されたとのことで、多種多様なナンバーが聴き手を楽しませてくれる。どの曲もキャッチーなメロディが印象的で、思わず口ずさんで手拍子したくなってしまうほどハッピーだ。美しいピアノをフィーチャーした壮大なミディアム・ナンバー「Out Of Love」はSteve Harwell (Vo)のしゃがれ声が放つ包容力に胸が熱くなる。バンドのメイン・ソングライターだったGreg Campが昨年脱退し、心配していたファンも少なくないだろう。だが今作は変わらぬSMASH MOUTHらしさが貫かれた、夏にピッタリのマジカルなアルバムだ。
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吉岡聖恵
凸凹
吉岡聖恵のソロとしては初のTVアニメ作品のオープニング・テーマとなった「凸凹」。吉河美希原作のアニメ"カッコウの許嫁"のための書き下ろしは、吉岡と親交の深い緑黄色社会の長屋晴子(Vo/Gt)が担当した。アレンジと演奏は緑黄色社会というバンドとのタッグが新鮮だ。軽快なピアノ・リフが誘い、スピード感のある王道のポップ・チューンはまさに、カラフルでチアフルなリョクシャカワールドと吉岡の相性の良さを実感させる仕上がり。パワフルな地声が生きるメロディも新たな発見だ。CDにはtofubeatsとAiobahnのリミックスも収録。さらにDVDにはリョクシャカとのレコーディングの様子や、ユニークなMVのメイキング映像も。次々に新しいチャレンジを行う今の吉岡聖恵のヴィヴィッドな姿が確認できる。
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SMITH WESTERNS
Dye It Blonde
シカゴのティーンネイジャー、Cullen&Cameron Omori兄弟、Max Kakacekの3人は、温かい空気の中で自由気ままな感性を育む。ガレージ・ロックを基軸とした骨組みの中に、ブリット・ポップ的な装飾を施し、キラキラとしながらも少年らしさの残るサウンドを完成させた。MGMTやGILRSのように遠くから鳴り響いてくるような軽快なサウンドと、若干のチープさを残した荒削りな音が心地よい。そのサウンドに虜になったMGMTのオープニングに抜擢され、すでに実力を見せつけた。日本デビューを飾る『Dye It Blonde』は、「Weekend」に始まり「Dye The World」に終わる。実に若者らしい感覚と自己の存在の位置づけに、力強ささえ伺える。今夏のSUMMER SONICで初来日が決定しているSMITH WESTERNS。極めて限定的な空間である“週末”の中、溺れていく感覚は甘く気だるいのだ。
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SNARE COVER
Birth
まずは"劇場版総集編 メイドインアビス【後編】放浪する黄昏"のED「reBirth」のセルフ・カバー「Birth」で、造語によるイマジネーションが拡張されるヴォーカルを堪能してほしい。高音域と低音域を自由に行き来する歌唱は性別を意識させないもので、シリアスなテーマの「戦火のシンガー」や、スケールの大きな「朝焼け」などでも大げさに聴こえない。また、FINLANDSの塩入冬湖(Vo/Gt)をコーラスに迎えた「サイクル」は、声で作るレイヤーが美しく心地よい。ミニマルに削ぎ落としたトラックは、現行のR&Bやエレクトロニックな音楽が好きなリスナーにも自然に受け入れられることだろう。しかし軸にあるのは斎藤 洸の天性の声。器楽的でありつつ懐かしさも感じるその魅力を堪能したい。
TOWERamazon
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snooty
センターライン / ガール・インザ・スペースルーム / 心音
snootyの今を切り取り、3つの夏サウンドに乗せた3ヶ月連続シングルが到着。その第1弾にしてバンド第2章の幕開けを飾る「センターライン」は、爽やかな日差しを受けて走り出すような清々しいギター・ロックに、深原ぽた(Gt/Vo)がユトリミサ(Ba)、しおり(Dr)と肩を組んで進もうとする想いも織り交ぜた、強くなりたいすべての人の背中を押す応援歌だ。一転、「ガール・インザ・スペースルーム」では初のヒップホップ/R&B調に挑戦。蒸し暑い午後に部屋の中で悶々とした気持ちを巡らせる場面をリアルに浮かばせる。そして、それらを締めくくる「心音」は、夜更けの町でかけがえのない仲間と過ごした時間を思い起こすノスタルジックなナンバー。snooty印のひずんだギターが感情をかき立て、じんわりと沁みる。
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snooty
たゆたう
結成からの4年間で経験してきた揺れ動く感情を込めた1stフル・アルバム。初全国流通盤にして自らバンド第1章のベスト盤と位置づける本作だが、リード曲「一閃」を筆頭にここから前進していく意志が表れた新曲たちを、ピュアに、アグレッシヴに奏でる。その前のめりな想いが先行したような泥臭いサウンドにも彼女たちの意志が感じられた。地元福岡で名を広めるきっかけとなった切実なナンバー「会いたい」、ライヴでのキラーチューンでもある「哀」、深原ぽた(Gt/Vo)のライヴハウス愛を詰め込んだ「マイライフ」、温かい風景がありありと浮かぶポップな「吉祥寺とオレンジ」、snooty流シューゲイズ「青と足跡」など3人が挑戦し、葛藤し、生きてきた軌跡が等身大で凝縮された1枚はリスナーにも寄り添ってくれるはず。
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snooty
空白 / 世界が終わるまで / 線香花火
日常を切り取った描写を得意とするsnootyが、今まで以上に強い想いを乗せた新曲を3ヶ月連続発表。第1弾「空白」は、言葉によって深く傷ついた人間の悲痛な気持ちを歌うダウナーなロック・チューンだ。恨みを攻撃的に叫んだり、ヒステリックに嘆いたりするのではなく、深手を負った心の内をぽつぽつと吐露するまっすぐな詞と歌唱は新機軸で、だからこそ、"死"をも過ぎる差し迫った情感を帯びている。そして、「世界が終わるまで」では"あなたと生きていたい"と歌い作品の連続性を窺わせ、深みも与える。そんな2曲に続く「線香花火」はシンプル且つ美しいメロディで、火が消えてしまいそうな恋心を、疾走感をもって歌うナンバー。磨かれた感性が表れた3曲は、手放しに明るくはいられない今でも、挫けず生きる強さをくれる。
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snooty
こぼれた
福岡を拠点に活動する3ピース・バンド snootyの1stミニ・アルバム。去っていった"君"を想う感情を繊細に歌い上げたり、猫になって自由に生きたい気持ちを率直な言葉で綴るかわいらしい楽曲もあったりと、その世界観はバリエーション豊か。楽曲によってコロコロと表情を変えるサウンドも相まって、引き出しの多さに胸を掴まれる。しかし、どの曲を聴いてもすんなりと感情の中に染み込んでくる気がするのは、深原ぽたの透明感と切なさの隣り合った歌声と、日常の中からこぼれたやるせなさや脱力感を見て見ぬふりせずに優しく拾い上げる素朴なまなざしが、楽曲たちの真ん中を常に貫いているからだろう。現時点の代表曲「友達になろう」も収録された、snootyからの挨拶状のような全5曲。
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SNOW PATROL
Wildness
もはやUKロックの正統派と言える英グラスゴーの5人組が『Greatest Hits』(2013年)を挟んで、前作『Fallen Empires』から約6年半ぶりにリリースした7thアルバム。大きな聴きどころはふたつ。まずは、ほぼ全曲で力強いリズムとともにアコースティック・ギターを軽やかに鳴らしたバンド・アンサンブル。シンセやストリングスといった装飾も使いながら、結果、バンドが持つ骨っぽさをアピールしている。そして、もうひとつはピアノ・バラードの「What If This Is All The Love You Ever Get?」に顕著なR&Bの影響だ。中でも、モダンなR&Bをバンド・サウンドで表現したような「A Youth Written In Fire」は、そんなアプローチの大きな成果と言ってもいい。結成から25年目で、バンドはまだまだ前進し続けている。
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SNOW PATROL
Up To Now
98年にデビューし、バンド結成からは15年というキャリアを持つ、UKベルファスト出身の5人組、SNOW PATROLの二枚組ベスト・アルバム。現在までに4枚のオリジナル・アルバムをリリースしており、3rdアルバム『Final Straw』はプラチナ・アルバムを獲得。以後U2 のツアーのオープニング・アクトを務めるなど、確実に地位を確立してきた。このベスト・アルバムには、SNOW PATROLのヒット・シングルはもちろんのこと、JEESPER時代の曲なども含まれている。新曲「Just Say Yes」は、暖かいシンセサイザーの音と、ゆっくりとリズム、低く包み込むような歌声と、女性のバック・コーラスが美しく響いている。憂いを帯びたメロディではあるが、希望に満ち溢れたナンバーだ。果たして彼らの5thアルバムがどういうものになるのかということも、楽しみにしていよう。
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THE SNUTS
Millennials
今最も勢いのあるUKロック・バンドのひとつ、THE SNUTS。昨年の"サマソニ"での来日公演も好評だった彼らが、再び帰ってくる。この3rdアルバムを引っ提げての単独来日公演は、チケット発売から間もなく東京公演が即ソールド・アウトというのだから、ほんとに強い。本作は、そんなTHE SNUTSの人気を裏づける、彼らの魅力がギュッと凝縮されたようなアルバムだ。ほんのりノスタルジックな響きを持ったポップ・サウンドは、タイトル通りまさに"ミレニアル世代"を象徴する、ローテクとデジタル・ネイティヴの中間を浮遊する絶妙なセンスの良さを見せつけてくれる。そして、これまでよりも青春のキラキラした部分だけを掬い取ったように甘酸っぱく、不可侵な純粋さをリスナーに味わわせてくれる作品となった。
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THE SNUTS
W.L.
2015年の結成以来、ライヴ活動やシングル・リリースなどで徐々にファン・ベースを拡大してきたスコットランド出身の4人組、THE SNUTSが待望の1stアルバムを発表。すでにUKチャートでは1位を獲得している本作だが、その注目度の高さにも納得の楽曲がひしめく1枚だ。たおやかなオープニングから始まり、耳に残るフレーズが印象的なTrack.2、エネルギッシュなリフを鳴らすTrack.6、荒々しく弾けるパンク・チューンのTrack.10、壮大なラスト・ナンバーのTrack.13と、インディー・ロックやダンス・ミュージックを俯瞰で解釈したような、踊れるロック・サウンドを展開。デビュー作ながら、今後のUKロックを背負って立つほどの存在となるポテンシャルを感じさせる。
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SODA KIT
SODA POPS
"文化祭"というテーマや"SODA POPS"というタイトル、さらにヴィジュアルも含めて、コンセプチュアルに統一された3rdミニ・アルバム。とはいえ曲調はバラエティに富んでいる。はじける片思い(もしくは推し活)ソング「ドキドキサレンダー」、実力派シャッフル・チューン「イデア」、わちゃわちゃ感が眩しい「無礼講サマー」、ヘヴィなラップ・ソング「シニシズム」、一緒に口ずさみたい「思い込みの魔法」。文化祭のいろんな部屋を覗けるような、楽しい一枚だ。5曲全てのインストゥルメンタルや、2ndミニ・アルバム『ロングラン』に収録されていた4曲の、一人一人のソロ・バージョンも聴くことができる。(高橋 美穂)
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SODA KIT
ロングラン
"群像劇"というテーマによって、メンバー全員の個性が炸裂し、さらに新たなる挑戦もちりばめられた2ndミニ・アルバム。メンバーひとりひとりが喜怒哀楽、ひとつひとつの感情を表現した楽曲の主人公となっており、「ナッチャッタ!」はYupsilonが主人公として喜を表現したキャッチーなナンバー。「徒然論怒」はMugeiが主人公として怒を表現した、攻撃的なラップ・ソング。「カゲボウシ」はFigaroが主人公として哀を表現した、切なすぎるラヴ・バラード。「一刀両断」はRasetsuが主人公として楽を表現した、ライヴ映え必至のパーティー・チューン。そして、喜怒哀楽すべての感情を集約させた表題曲「ロングラン」は、FAKE TYPE.が楽曲提供! SODA KITの声の力、グループの可能性が発揮されている。
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