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LIVE REPORT

Japanese

HAMMER EGG vol.5

Skream! マガジン 2017年03月号掲載

2017.02.16 @渋谷eggman

Writer 秦 理絵

フリーマガジン&WEBにて展開するクロスメディア"Skream!"とCDショップ"TOWER RECORDS"、新人・インディーズ活動の支援を行う音楽プラットフォームEggsがタッグを組み、次世代のアーティストをサポートするイベント"HAMMER EGG"。その第5回が渋谷eggmanにて開催された。3公演連続でチケットがソールド・アウトになるなど、少しずつイベントの知名度も上がってきた今回の出演は、Halo at 四畳半、カフカ、Benthamの3組。このイベントの前にSkream!で行った3組の代表者対談では、"ステージを降りたらイケてない自分たちだけど、だからこその足掻きを見てほしい"というような発言もあったが、この日、全身にスポットライトを浴びた彼らは、互いの存在に刺激を受けながら、それぞれが自分たちだけの闘い方で、集まったオーディエンスの心に"明日への光"を残す、素晴らしいパフォーマンスを繰り広げた。

スノーマン

オープニング・アクトは女性ヴォーカル 幹葉を擁する奈良の4人組バンド、スノーマンだった。音楽コンテスト"eo Music Try 2015"で準グランプリを獲得するなど、関西を拠点に活動を繰り広げている彼らは、3月15日にリリースするニュー・アルバム『乗り越える』でもオープニングを飾る「新しい私になれ」でライヴをスタートさせた。全身から振り絞るように放たれる幹葉の透明感のある歌声がとても印象的だ。寺西裕二(Gt)、ますだ(Ba)、やまと(Dr)というメンズの楽器隊が鳴らす、一筋縄ではいかないバンド・サウンドが軽やかに弾んだ「想い描いたら」に続けて、"大人になっても夢を見ることを忘れないで"と言って届けた「マーメイドリーミン」へ。歌の世界観を大切にしながら、よく練り込まれたアレンジに惹き込まれていく。ラストは激しさと穏やかさを激しく行き来する、結成当時から演奏しているアップ・ナンバー「good for nothing」で締めくくったスノーマン。初見のお客さんも多かったと思うが、丁寧に音楽を届ける真摯なステージでHalo at 四畳半へと繋いだ。

Halo at 四畳半

トクマルシューゴの「Rum Hee」がSEとして流れるなかステージに現れると、メンバーが静かに楽器をスタンバイしたHalo at 四畳半。泥臭くてストレートな渡井翔汰(Vo/Gt)の歌唱に、ドラマチックな色をつけるエモーショナルな演奏で「春が終わる前に」からライヴをスタートさせた。オレンジ色の照明がステージを染めた「カイライ旅団と海辺の街」では、齋木孝平(Gt/Cho)が一歩前に歩み出ると、フロアからは一斉に腕が上がった。片山 僚(Dr/Cho)の軽快なドラムロール、白井將人(Ba)の躍動感のあるベース、そこに強い意志を宿した渡井のヴォーカルが熱を帯びて響き渡った。MCでは"僕らは3年ぐらい前まではeggmanによく出ていた"と話した白井。ハロがインディーズ・デビューしたころのことだ。"だから、こんな景色をeggmanで見れることに感激してます"と、満員の会場に嬉しそうな笑顔を見せた。フロアの雰囲気をシリアスに変えたのは「ペイパームーン」だった。激しく重なり合うサウンドに乗せて歌われる"救世主のいない物語で/なあ 君を救い出せるだろうか"という切実なフレーズ。音楽を通じて誰かの光になることがHalo at 四畳半というバンドの願いだ。そして、"心に何か伝わるものがあれば。それを信じてやっていきたいと思う"という渡井の言葉からライヴを締めくくったのは、シンガロングを誘った「モールス」。まだ見ぬ明日へ、手を取り合い、生きるための救済の歌は、Halo at 四畳半らしい締めくくりだった。

カフカ

ステージの転換の時間にはDJタイムとして、クリープハイプやKANA-BOONなどの邦ロックが次々に流され、待ち時間の退屈をワクワクに変えてくれた。そんななか登場したのがカフカだ。このイベントの直前にはカネココウタ(Vo/Gt)がインフルエンザでライヴができない期間もあったが、この日は完全復活。メンバー4人が気持ちをひとつにするように中央に向き合ってから鳴らされたのは「Ice Candy」だった。ステージをカラフルに染める照明がポップなサウンドにもぴったりだ。ヨシミナオヤ(Ba)が繰り出す黒いグルーヴに乗せて"自分を信じられない"と歌う「ニンゲンフシン」。そのサウンドは陽性のポップスだが、歌詞は葛藤そのもの。この生きづらい世の中で矛盾を抱えながら、いかに生きるか――それが、カフカが歌う大きなテーマだ。MCでは、"日々いろんな生活があって、何かつらいことがあって、心に欠けたものがあって、ここにいると思う。僕たちの音楽がそういう人たちの救いになってくれればと思います"と、カネコ。ブルーの光に包まれて、緩やかな3拍子を刻むバラード曲「あいなきせかい」では、そのタイトルとは裏腹に愛に溢れた優しいメロディがフロアに響き渡った。そして、eggmanをダンス・フロアに変えた「City Boy City Girl」と「LOVESICK」の昂揚のあと、運命の残酷さを打ち破るように駆け抜ける衝動的なナンバー「線香花火が落ちるとき」でライヴを締めくくったカフカ。ステージ以外に生きる場所がないとでも言うようなカフカの刹那的なステージは、いつも胸に迫るものがある。

Bentham

"イケてるか、イケてないかは、あなたらが決めることだ!"と、小関竜矢(Vo/Gt)の言葉でスタートを切ったBenthamは初っ端からエネルギーが漲る全開のステージだった。小関にしか出せない痛快なハイトーンが響き渡った「手の鳴る方へ」から、複雑に4人の演奏が絡み合うハイブリッドなギター・ロックが会場を震わせていく。鈴木 敬(Dr/Cho)の堅実で手数の多いドラム、辻 怜次(Ba)の暴れ馬のようなベースに、須田原生(Gt/Cho)が繰り出す"これぞギタリスト!"と思わせる華やかなフレーズ。イベントを締めくくるトリのステージに4人の気合も十分だ。軽快なリズムに乗せてキャッチーなメロディが弾む「HEY!!」へ。Benthamのライヴは曲を知ってるとか、知らないとかは関係ない。誰でも一瞬にして巻き込んでしまうキャッチーな音楽で、彼らは全国のライヴハウスで味方を増やしてきた。MCでは4月12日にメジャー・デビューをすることに触れて、"「おめでとう」をもらってもいいですか?"と、小関。それに辻が"自己満だ!"と、すかさず突っ込む。そして、"夢は止まらない、激しい雨のように"という小関の前振りから披露されたメジャー・デビュー曲「激しい雨」。夢に向かうバンドの意志が込められた決意の1曲からライヴの終盤にかけて、バンドはさらに勢いを増していく。Halo at 四畳半やカフカが内なる衝動を静かに燃やす青い炎だとしたら、Benthamは真っ赤に燃え盛る炎だ。お客さんのガソリンを力にして、その火はどんどん激しくなる。「KIDS」から「クレイジーガール」へと、最後まで容赦なくフロアを踊らせたBentham。アンコールでは、"みんなにとってここは逃げる場所じゃなくて、パーンと自分を解放できる場所であってほしい"と、小関。"こういう日があって救われるんじゃない? これからも頑張っていこうよ。自分を愛していこうぜ!"と言うと、「僕から君へ」へと繋ぐ。小関は髪の毛から汗をぶわっと飛び散らせて、渾身の力で届けたその歌の合間にも"何があっても大丈夫! 俺らにはあんたらがいるし、あんたらには俺らがいるから"と叫んだ。心からそう思っていることを疑う余地もない力強い言葉は、それぞれに信念を貫いて音楽を鳴らす3組が集結したイベントの締めくくりに相応しかった。


表現の仕方もライヴのスタンスもまったく違う3組の共演となった"HAMMER EGG vol.5"。そこには共通して"この場所で受け取った、かけがえのないものをちゃんと日々に持ち帰ってほしい"という熱い想いが込められていた。その想いは互いに共鳴し合うことで、より大きく増幅されて、このイベントを特別な意味のあるものにしたと思う。"HAMMER EGG"は、まだ若いイベントだ。ここから回数を重ねていくその歴史の中でも、この日の3組が繰り広げた意義深いライヴは多くの人の記憶に残り続けるだろう。

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