Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

LIVE REPORT

Japanese

シナリオアート / Bentham

Skream! マガジン 2017年07月号掲載

2017.06.09 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 石角 友香

2015年6月9日のオープンから丸2年。恒例となったLIVEHOLIC周年シリーズのオープナーは、下北沢発のネクスト・ブレイカーズ筆頭で、去年に続いての登場となるBenthamと、ライヴ・サーキットでは過去、頻繁に対バンしていたというシナリオアート。各々の音楽性が際立つライヴ巧者の共演と相成った。




先攻はBentham。すでに7月26日に1stフル・アルバム『Re: Wonder』のリリースもアナウンスされ、さらなるジャンプアップのタイミングを迎えているからこそなのか、逆に肩に力の入っていないテンションで、「サテライト」からスタート。R&Bテイストのあるメロディを歌いこなす小関竜矢(Vo/Gt)の力量が冴える「クレイジーガール」、須田原生(Gt/Cho)のジャジーでテクニカルなリフも飛び出す「アイマイミーマイン」と、畳み掛けるように演奏を繰り出す。それでいて、1曲1曲の輪郭が鮮明なBenthamのレパートリーは、ライヴでもいい意味で流れていかない。小関が記念すべきアニバーサリー・シリーズの初日を祝う喜びを述べたあとも、彼らの音楽的な引き出しの多さを実感するナンバーが続く。カウパンクなリズムの「HEY!!」は、同時に須田と小関のツイン・ギターが大きな聴かせどころでもあるし、定番曲の「TONIGHT」と、比較的近作の「僕から君へ」に共通する、リアルな青年像や切なさの表現、日本語ロックとしての強度も再認識。かと思えば、ギター・ポップやアーバン・シティ・ポップのニュアンス、そして間奏部分でのアンサンブルの強度を見せた「After party」。そして「恋は白黒」での辻 怜次(Ba)のイマジネーションに富むプレイには刮目した。ニュー・アルバムから早速「Chicago」もプレイしてくれたのだが、日本語ロック王道なメロディと、リフを主体に曲全体がどこかサイレンを思わせるアレンジが面白い。そしてドラムの鈴木 敬は、この場所が以前、都内一価格が安いスタジオで、ドラムの個人練習に頻繁に入っていたことや、当時、小田急線下北沢駅の工事をスタジオの窓から眺めていたことを話す。そこからの「激しい雨」の流れがやけにリアル。ポップなのにどこか内側に向かいがちで、軋轢を起こしながら自分なりの答えを出す――「手の鳴る方へ」、「パブリック」で締めくくった流れは、ある種、"ここから始まった"Benthamのランドマーク的なライヴだったのかもしれない。





後攻のシナリオアート。複雑なセッティングも比較的短時間で行われ、メンバーもセッティングからそのままオンステージ。しかも、「ハロウシンパシー」、「アオイコドク」といった、自分自身の存在意義への問い掛け、そして"僕が世界を救うんだ"(「アオイコドク」)が、この日のライヴの後半に向けての布石になることが後々鮮明になるのだ。と、同時にこれほど近い距離で観る彼らのライヴが久々なこともあって、ハヤシコウスケ(Gt/Vo/Prog)がここまでアグレッシヴにジャンプしたり、フロアのリアクションを素直に受け取り笑顔になっている状態そのものにもまた感銘を受けた。加えて、チューニング以外はほぼシームレスに曲を繋いでいく3人のミュージシャンというか、人間としてのパワーにも静かにふつふつと滾るものがあり、ライヴという一編のリアルなファンタジーを見せる覚悟もまた、日に日に強くなっていることを実感した。ハットリクミコ(Dr/Vo)のジャズやフュージョン的なフィル、シュアな四つ打ちのリズム・キープ以上に驚きの「ジンギスカンフー」。深い混沌に叩き落とされるような「シニカルデトックス」や「レムファクション」を生々しく確実な演奏で構築していく3人のひとり当たりの想像力の凄まじさ。ラウドな音像を引き締めるヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)の覚悟の決まったプレイ。そして「イージーオーマツリ」では、ハットリの和太鼓とハヤシのフロアタムが即座にセットされた、その意気込みも素晴らしいなと思いながら、フィジカル的には素直に音頭のリズムに乗っていく自分に気づいたり。締めは再びテクニカルでソリッドな「ナナヒツジ」。ぐいぐい展開していく構成のこのナンバーを鳴らしきった3人。さらにアンコールでは、今、シナリオアートが音楽の旅の渦中にいることを示す、楽団的な「ジャーニー」を披露。この曲では、世界を救いたいんじゃなくて、死にたくなる世界がクソだ、だけど君だけは笑っていてほしいと歌う。漠然とした恐怖から、今自分ができること、やりたいことへ確実に前進したシナリオアートというバンドの軌跡を描いて見せるような素晴らしいライヴだったのだ。そういう意味では、器用じゃないけど誠実な2組のフットプリントが共振していた。




[Setlist]
■Bentham
1. サテライト
2. クレイジーガール
3. アイマイミーマイン
4. HEY!!
5. TONIGHT
6. 僕から君へ
7. After party
8. ハイルーフ
9. 恋は白黒
10. Chicago
11. 激しい雨
12. 手の鳴る方へ
13. パブリック

■シナリオアート
1. ハロウシンパシー
2. アオイコドク
3. シュッシュポップ
4. ジンギスカンフー
5. スペイシー
6. ホワイトレインコートマン
7. シニカルデトックス
8. レムファクション
9. サヨナラコウコツ
10. イージーオーマツリ
11. トウキョウメランコリー
12. プライドモンスター
13. ナナヒツジ
en1. ジャーニー

  • 1