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INTERVIEW

Japanese

シナリオアート

2019年06月号掲載

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Member:ハヤシコウスケ(Gt/Vo) ハットリクミコ(Dr/Vo) ヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)

Interviewer:石角 友香

昨年8月、これまでの世界を飛び出して独立し、フリーランスとなったシナリオアート。久々に会ったメンバーは、より曲作りや新しい音楽に積極的にコミットするハヤシコウスケとヤマシタタカヒサ、バンドの実務を精力的にこなすハットリクミコと、明るい表情で、こちらが嬉しくなるほどだ。自主企画フェスなどを経て本日5月18日には独立後初の3曲入りシングルを配信&会場先行リリース。そして本日からバンド結成10周年に伴う全国10都市対バン・ツアーもスタートした。音楽が、バンドが好きだからこそ彼らが選んだ方法論と現状報告、シングルに込められた思い。ミュージシャンにもファンにも3人の勇気が伝われば幸いだ。

-独立から約1年。1年前の自分に今だったらなんて声を掛けますか?

ハットリ:え~。なんやろ? "良かったね"。

ヤマシタ:めっちゃ他人事やな(笑)。

ハットリ:(笑)すごく難しいし、大変な決断やったけど、結果的にやって良かったなと思える充実感みたいなものがすごくあるので、"良かったね"と声を掛けたいです。

ハヤシ:僕はあんまりここ1年はやってることが変わってないなというのがあって、変わらずできてるなというのが嬉しいなと思いますね。業務的なことはクミコさんがすごく頑張ってやってくれてるので。

-社会性が問われる仕事は任せて(笑)。

ハヤシ:はい(笑)。僕は家にこもって曲を作ってっていうものも全然変わってないので、変わらずできてて嬉しいなと思いますね。めちゃめちゃ楽しくやれてます。

-じゃあハヤシさん、ヤマシタさんは1年前の自分にはどう声を掛けますか?

ハヤシ:う~ん、"それでいいよ"って声を掛けますね。

ヤマシタ:なんやろ? "頑張れよ~"って感じです。

-独立後は今までやってなかったことをたくさんやってるように見受けるんですよ。特に対バンとか"ツインボーカルフェス"とか、新たな試みが多いなと。

ハットリ:やっぱ会社とやってると"それはダメ"って言われることもあるんですけど、独立してからとりあえず思いついたことはやってみようってなるものが多くて。"ツインボーカルフェス"も、もともとは東京カランコロンのいちろー(Vo/Gt)さんが言ってらっしゃったことを私が拾って、今やったという流れなんです。結果、全体的に赤字寸前ぐらいになっちゃったんですけど。自分たち的に挑戦して、"面白い"と思ってもらえることができている感じがすごくあります。

ハヤシ:ソールド・アウトしても赤字寸前ぐらいのイベントって、会社としては事情的にあんまりやりたくないじゃないですか(笑)。でも自分たちが主体となってこんなことをやってるんだよというのを世間に見せることの方が重要やなと考えたので、この1年間、そういう事情を気にしない試みはこれまでで一番できたのかなと思いますね。

-話が逸れますけど、今海外だとデジタル・プロモーション会社が存在してて、契約するチャレンジャーも日本からも出てきてるし。

ハヤシ:そうですね。今の時代的に、海外だとマネージャーを自ら雇うとか、自分たちでなんでもできるようになろうとしてる人が多くなってきてると思うので、自分たちも新しい感じでどんどんやっていけてるということがいいかなと。なんかそういう関係性の方がうまくやっていけるなというか。どこかに所属して育てられるという関係やと、そもそも根元にあるパワーみたいなものが出しにくいと思うので、何事も対等に1対1でやれる方がいいなと思いますね。

-バンドの組織の話をすると、例えば、音源を形にするためのエンジニアさんを含むチームもガラッと変わったんですか?

ヤマシタ:もともとも作品を作ってきたエンジニアさんがひとりじゃなくて、作品ごとに変わったりしてたので、エンジニアさんが変わることにそんなに抵抗はなかったんです。今までと同じようにお金を使ってとかはできないんですけど、自分らでやるようになったら"曲が好きやし、音楽が好きやから"って協力してくれる人もすごく増えて。よりお互いに"好きやからやろう"って関係の人が残ってくれたかなって気はしてるんです。新しい人もいれば、MVとかの制作をもともとやってくれてた人が、"また一緒にやりたい"って言ってくれたりもしたので、変わったところも前に戻ったところもあって、いろんな人が思ってくれるんやなっていうのはわかりました。

-バンドの方向性によってやり方はいろいろでいいと思うんですが、自分たちでやるケースが最近増えたのは確実ですね。

ハヤシ:デビューしたバンドが全部売れるわけじゃないんで。だからひとつの道として自分たちが希望になりたいなっていうのはありますね。独立してすぐぐらいのときに新宿LOFTに誘ってもらったとき、"希望になってほしい"みたいなことを言ってもらって、たしかにそやなと。他のバンドの道筋ができるような活動をしなければなっていうのはありますね。

-仕事とバンド活動を並行してる人もいるし、作家として曲提供の比重が高い人もいるし。

ハヤシ:いろんな形がありますよね。ここ1年間、今までで一番曲を作ってるんです。名前を出してない案件もいろいろやらせてもらったし。たぶんバンドの収入よりそっちの収入の方が多いんですよ。3人とも曲を作るから、シナリオアートはバンドだけど、楽曲制作のグループ的なこともできるんじゃないか? ってここ1年で思いました。

-それ大事ですよね。シンガーとのコライト文化ももっと浸透してくるだろうし。

ハヤシ:そうですね。変わってないって言ったんですけど、変わった部分は、バンド1本で夢を見るというよりは、バンドで作りたい世界を表現していくのもありやなと思うようになったことです。例えば去年は舞台(※シナリオアートの楽曲をもとに構成するダンス舞台"恋ノ水")をやらせてもらったときに、自分たちはこういう世界を表現するのは得意やなっていうのは実感としてありましたし。そういう本来自分たちが得意な世界を、これから表現できていけそうやなってワクワク感はあります。

-そしていよいよCDというフィジカル作品が完成しました。フィジカルでもリリースするというのはファンの人の要望も大きいですか? それよりもみなさんの意志?

ハヤシ:私たちの意志ですね。

ハットリ:お客さんがフィジカルで欲しいかどうかは自分たちもわからなくて。デジタルとどっちが便利かとか、物が欲しいのかは正直まだわからんけど、自分たちなりに形にして届けるっていうのでCDにしたいなっていうので作ったんです。

-「アダハダエイリアン」を聴いたときにいい意味で驚いたというか、展開が多くて、サウンド・プロダクションも変わりましたね。

ヤマシタ:自分らでも異色やな。

ハヤシ:なんで異色になったのか......。俺が結構作ったんかな。

ヤマシタ:うん。わりと作り込んで持ってきたから。

ハヤシ:改めてドラム&ヴォーカルをサビの一番目立つとこで見せたいって考えて。すごく手数を打ちながら歌うというのはいろいろやったので、違う感じないかな? と思ったんです。少しEDMっぽいものを織り交ぜて、歌いながらやってみたらどんな感じになるかな? って。まずサビを作って、それにいろんな要素をどんどん足していく作り方ですね。イントロのところはちょっとインディーっぽい感じをイメージして、ギターの絡み方とかは、少しAMERICAN FOOTBALLみたいなのを意識しながら入っていって、いろんな要素を組み合わせていきました。自分の好きなものを結構詰め込んだ感はあります。