Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

LIVE REPORT

Japanese

シナリオアート

Skream! マガジン 2017年06月号掲載

2017.05.07 @EX THEATER ROPPONGI

Writer 蜂須賀 ちなみ

ハットリクミコ(Dr/Vo)――"シナリオアートっていいバンドだなって我ながら思ったんですよ。10本一緒に旅してくれてありがとう"。ハヤシコウスケ(Gt/Vo/Prog)――"こちらこそ。デビュー以来、肩肘張りすぎてたというか、今まではしっかりやらなアカンってピンと気をつけして活動してきたわけですよ。だから問題があったらまっすぐぶち当たって挫けてしまう。けどやっと、もう少し自分たちを肯定してその喜びを伝えていこうって、そういうライヴができたよね"。ヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)――"うん。だから今までで一番みんな(オーディエンス)と近づけたかなと思ってます"。
 
今年3月にリリースした2ndフル・アルバム『Faction World』を引っ提げたシナリオアートの全国ツアー、ファイナルのEX THATER ROPPONGI公演。冒頭に引用したのはアンコールでの3人のやりとりだが、最後の1日を迎えた世界を巡る旅="World Journey"と名づけられた今回のツアーは、このバンドの音楽が生み出してきたひとつひとつの世界を巡り、それらを肯定していくことを通じて、シナリオアートというバンド自身のことを肯定するためのツアーだったように思える。全21曲(アンコール含む)、どれもベクトルの振り切れた表現に進化していたのもきっとそのためだ。
 
この日のセットリストは一部を除き、基本的に『Faction World』の曲は音源収録順どおりの並び方で、各曲の間にこれまでリリースされてきた曲が挟まれているような構成。そして本編は起承転結の4つのブロックに分けることができた。まず"起"のブロックは、冒頭から7曲目「ビューティフルパーティー」まで。"踊る"というキーワードを軸にしたこのブロックでは、当日誕生日だったオーディエンスのために歌をプレゼントした「ビューティフルパーティー」など演出面の工夫もあり、ハットリの言う"シナリオアートの内側から出る優しい楽しさ/明るさ"が滲み出ていた。
続く"承"のブロックは、MC明けの8曲目「コールドプラネット」から12曲目「ナナヒツジ」まで。このブロックでは、歌詞の内容に沿ってサウンドが変化を重ねていくオペラ的構成の「コールドプラネット」、予測不能な展開をする「シニカルデトックス」、7拍子の「ナナヒツジ」など一筋縄ではいかない曲が多く、道なき道を突き進んできたこのバンドの肉体性が浮き彫りになっていた。そして"人間は100パーセント分かり合うことのできない生き物で。それゆえに奪い合ったり傷つけ合ったり、だからせめて音楽の前でだけはひとつになりたいと思っているのです"というハヤシの語り以降は"転"のブロックへ。
ハットリが和太鼓、ハヤシがタムを打ち鳴らし、力強くビートを響かせた「イージーオーマツリ」では"ひとつになろうよ"のシンガロングが起こり、「フランキーファンキー」ではそれぞれのプレイヤビリティで魅せるセッションのあと、オーディエンスとコール&レスポンスを楽しんだ。ライヴ定番曲の連打で場内のテンションをさらに引き上げたあとは、いよいよ"結"のブロックへ。
爆発音のあとの静寂、という「ラブマゲドン」の世界の終わりさながらの演出は、ステージを見つめるオーディエンスの集中力の高さを、もっと言うと自分たちの音楽を真摯に受け止めてくれていることを信じていないとできなかったことだろうし、だからこそ"いつも幸せってやつとか希望みたいなものを探し回って、気づいたらこんな感じで世界が終わっちゃってて。だけど旅の終わりでやっと気づいて。探してたものはすごく近くにあって。ただただここで歌えることが、誰ひとり欠けないで歌えていることがとても幸せです。ここにいるみんなのおかげです"と曲紹介のようでいて、いつの間にかバンドの話になっている「エポックパレード」直前のハヤシのMCもグッときた。自分たちの音楽を信じ、楽しむこと。それは自分たちの音楽を慕い、今日ライヴに来ることを選択した目の前にいるオーディエンスへの信頼と直接繋がるものなのだ。
 
アンコールでは、ハヤシが"間違えまくって辿り着いたから、こうして出会えたんやと思います。ここにいる全員を引き連れて、もう1回夢に向かって挑戦したいと思います。だからこれからもついてきてください!"と頼もしい言葉を聞かせてくれたが、そのとき言っていたように、9月にはアコースティック・ツアーを控えているほか、新曲も制作中だという。バンド自身のことを肯定できた今ならきっと大丈夫。シナリオアートの旅は、まだまだこれからだ。
 
 
[Setlist]
1. ジャーニー
2. サンライトハーモニー
3. モウモクカクメイ
4. シュッシュポップ
5. パペットダンス
6. ジンギスカンフー
7. ビューティフルパーティー
8. コールドプラネット
9. シニカルデトックス
10. レムファクション
11. ホワイトレインコートマン
12. ナナヒツジ
13. イージーオーマツリ
14. フランキーファンキー
15. トウキョウメランコリー
16. アオイコドク
17 スペイシー
18. ラブマゲドン
19. エポックパレード
en1. ハロウシンパシー
en2. ワンダーボックスⅡ

  • 1