Japanese
【Skream!×MUSE音楽院特別企画】 アーティストSPECIAL講義
2015年06月号掲載
コヤマ:昔からそうで。俺は本当に単純というか、思っていることをそのまま書いてるだけというか。結構最近になって、自分の歌詞に対して客観的に思うことがあって。"俺が書いてるのは詞ではないんじゃないか?"っていうふうに思うくらい、思ってることをそのまま書いてるだけってことがあるんですよね。例えば曲作ってるときとかに、メロディを先に作る人とかいろいろいるじゃないですか。俺は曲を作りながら歌詞を考えて、メロディより先に歌詞をまず書きたいように書き殴るんですよ。思ってることをそのまま書いて、そこから言葉のニュアンスだったりイントネーションみたいなところからメロディをつけていくこととか、1小節の中にどうしても入らなかった言葉を削るとか、歌詞のほうがどっちかというと先で。だから人と話しててよく言われるのは、詩的な表現とか比喩をほとんど俺は使ってないというか、言葉そのままみたいなところがあるんで。そこはある意味楽だと思うところもあるというか。思っていることをそのまま書けばいいだけなんで。
ゆよゆっぺ:楽曲を聴いて、本当にスッて入ってくるんですよ。楽曲の中で例えば主人公がいるじゃないですか。コヤマさんの楽曲の中で。その主人公の気持ちにすごくなれるというか、"まずいぞ、これ共感させられてる"というか。共感したときにスッとはいってきていつの間にかその曲の虜になってるというか、歌詞の内容を通して自分が楽曲の中に入り込んでいるってわかって怖いなってゾッとするタイミングがあります。
森:歌詞を書くときは、どういう気持ちでとかどういう方向でとかはあまり言いたくないんですけど、(言葉の意味を)限定をしない、限定をする条件を減らしていくところから始めていきます。
コヤマ:ポンとインスピレーションで単語がでてきて"これってなんなんだろ?"ってとこから始まってるみたいな?
森:そうですね。例えば言葉との出会いっていうのは、自分の中でパッて浮かんでくることがあるじゃないですか。普段生活してても、なんか知らんけど "北千住"って浮かぶとか。そういうのほんまに運命だと解釈してて。だからほんまになんも浮かばんときは辞書をバーってめくって止めて、その単語を読んで深く理解してから違う単語を探していくとかします。
質問者:普通の企業で働くことでなく、音楽の道で生きていくことに親の反対とか不安とかありませんでしたか?
コヤマ:その話をしますか。
ゆよゆっぺ:不安ですよ。でも言ったら僕の友達、就職して何年か経った人も多いですけどだいたい辞めるし転職するし、結局"今何やっても一緒じゃないのか?説"が僕の中にあって。サラリーマンでもずっと同じ場所にいられる環境ってないと思うんです。いつクビを切られるかわからないとか、いい会社に就職しても何が起こるかわからない世の中なので、僕としてはだったら自分の好きなことやりたいなって言い聞かせてます。結構焦るんですよ、友達がいいとこ就職して結婚したとか。いや、俺はいつどうなるかわからない社会から解脱して俺なりの道を行くって言い聞かせると、これが意外に楽になったりするところがありますね。
コヤマ:俺は大反対されました。僕の両親は普通に働いてきた人たちなので、当然音楽で生活していくっていうことがまったく想像できないわけで、"じゃあどうやってお金をもらうの"って言われました。でも、それしかやりたいことがなかったんですよね。"音楽がやりたいんだ"って気持ちが学生時代からどうしてもあったので、その話をして。うちの両親が僕の活動を認めたのはここ最近のことです。それまでずっと"うちの息子は何やってるんだ"っていうような感じでした。
森:むっちゃ変な話ですけど、自分の需要が会社のための需要なのか宇宙のための需要なのか......。
一同:(笑)
森:ってことを考えたときに、人間も自然現象なんですよ。その自然現象である人間が、自分が歌うことによって涙してくれたり喜んでくれたりするってことが、俺は宇宙に対しての需要やと思ったんです。だから俺は会社に対しての需要より、宇宙に対して求められてるから大丈夫、と思ってやってます。だからそんなのは大丈夫です。
ゆよゆっぺ:それだ。僕、今気づきました。
質問者:もし無人島にじゃないですけど、1枚CDを選べって言われたら何を選びますか?
3人:うわ~。(悩む)
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昨年11月にシングル・リリースされた「パラダイムシフト」を含む5曲入りミニ・アルバム。引き続きプロデューサーに江口 亮を迎え、元来バンドが持ち合わせているポップ・センスとオルタナの成分をより効果的に響かせるサウンドメイクが実現した。フラットなバンド・アンサンブル、甘みのあるラヴ・ソング、軽快なロック・ナンバーなど5曲それぞれで異なるアプローチを見せつつ、それぞれが昨年リリースした『MEME』の文脈にあることが窺える。中でも「スローダンサー」はバンドやソングライター 森 良太(Vo/Gt)の根源を落とし込んだ楽曲。歪んだギターと重厚なリズム隊が作り出すダウナーで浮遊感のある音像、儚げなヴォーカル、感傷性の高いメロディが三位一体となって滑らかに内省へと落ちていく様が美しい。(沖 さやこ)
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2018年下半期に制作された楽曲で構成されたメジャー3rdフル・アルバムは、インタビューで白山治輝(Ba/Cho)が"今4人がやってかっこいいと思った曲だけ入れた"と言っていたとおり、バンドの核心や美学が一音一音に反映された迷いのない作品となった。とはいえシンプルな原点回帰や初期衝動というものではなく、あるのは12年のキャリアを持ったバンドが真剣に自分たちの音楽を見つめ直すという意地と決意と覚悟。グランジ、オルタナ、インディー・ロックやポップ・ロック、ヒップホップ・テイストのロック・ナンバーなど、今の彼らでないと成し得ない多彩なバンド・サウンドに、楽器ひとつひとつの艶や力強さが躍動している。彼らの鋭利な情熱は本能的でありながら冷静で、息をのむほど美しい。(沖 さやこ)
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1年ぶりのリリースは"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のオープニング・テーマを表題にしたシングル。la la larksのメンバーでありプロデューサーとしても活躍する江口 亮と初タッグを組み制作されたTrack.1は、華やか且つエッジの効いたギターと迫力のあるドラミングが高らかに鳴り響くロック・ナンバー。少年漫画らしいヒーロー感のあるサウンドと、森 良太(Vo/Gt)の声に宿る寂寥感とそこはかとない色気の相性もいい。江口と制作したことでバンドが元来持ち合わせていた本質の威力を増幅させている。結成11年を迎えた彼らが新しい手法を手にしただけでなく、新たなスタンダードになることを予感させる楽曲。Brian the Sun、新章突入だ。(沖 さやこ)
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まず、あの日あの場所で起こった出来事が、映像として残ることが心から嬉しい。そしてあの空間そのものが、ひとつの作品だったのだと改めて思う。2014年11月に渋谷TSUTAYA O-EASTにて行われたワンマン・ライヴ"ディストーテッド・アガペーの世界"を映像化したバンド初のライヴ映像作品。コヤマヒデカズ(Vo/Gt)が連載していた小説"ディストーテッド・アガペー"の世界観を映像や照明を駆使し表現したステージだ。バンドの想いが小説の世界に新たな輝きをもたらし、そこに観客の想いが重なり、さらに強く優しい光を放つ。"生まれて初めてあなたたちへ曲を書きました"――孤独の中で鳴り響いていた彼らの音楽を外へ向けたのは聴き手からの愛。彼らの姿を丁寧に切り取る画ひとつひとつからも、それが滲む。(沖 さやこ)
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