Japanese
Brian the Sun 10th Anniversary Special 「ブライアンフェス」
Skream! マガジン 2017年11月号掲載
2017.10.09 @赤坂BLITZ
Writer 秦 理絵
Brian the Sunが、結成10周年を記念しての初の主催フェス"ブライアンフェス"の2日目となる東京編を赤坂BLITZで開催した。その前の週には地元大阪で04 Limited Sazabys、アルカラ、HAPPYを迎えて大成功を収めたバンド初の試みは、2日目となる東京でも、Brian the Sunが愛し、Brian the Sunを愛するバンドたちが集結して、それぞれの異なる個性を認め合い、進むべき道を讃え合う、とても素晴らしい一夜になった。
トップバッターは感覚ピエロだった。"ブライアンフェス始めるよ!"。横山直弘(Vo/Gt)の第一声からスケール感のある「CHALLENGER」で幕を開けると、少しエッチでポップなアップ・ナンバーを武器にフロアを感エロ・ワールドへと染めていく。バンド結成以前からブライアンとは親交がある彼らだが、特にヴォーカルの横山は北海道にいたころからブライアンの音楽に魅了されていたという。そう言われると、横山も森 良太(Brian the Sun/Vo/Gt)もピュアな捻くれ者同士似たところもある気がする。男も女も関係なく"おっぱい"と叫ぶ「O・P・P・A・I」など、10年間走り続ける盟友へのリスペクトを込めた、感エロらしいステージだった。
ブライアンのメンバーが高校のときから聴いていたというSPECIAL OTHERSは、どこか牧歌的な雰囲気を漂わせたオープニング・ナンバー「TWO JET」からスタート。芹澤 "REMI" 優真(Key)と柳下 "DAYO" 武史(Gt)が紡ぐ美しい旋律が、不規則に表情を変えていく又吉 "SEGUN" 優也(Ba)と宮原 "TOYIN" 良太(Dr)のグルーヴに乗って、会場は音楽に身を委ねる心地よいムードに包まれていった。MCでは、ブライアンと"同世代"だと言い張るメンバー。"みんな同世代って信じてないでしょ?"と真顔で言うのがおかしかったが、彼らが鳴らす芳醇な音楽が、ブライアンのバンド・サウンドに与えた影響は大きいと思う。
ブライアンとは2015年の"列伝ツアー"("スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2015 supported by uP!!!")を共に回った仲間でもあるTHE ORAL CIGARETTES(以下:オーラル)は、鈴木重伸(Gt)の妖しげなギターのフレーズが炸裂した「CATCH ME」からライヴの口火を切った。武道館ワンマンを経て激しさと妖艶さに拍車をかけたオーラルのステージ。その中盤、"お前らのセンスは間違ってない! ブライアン、お前らに歌う"と、山中拓也(Vo/Gt)が宣言して届けたのは「DIP-BAP」だった。かつてオーラルが自分たちの進む道を模索しながら完成させた楽曲を、同じように戦うブライアンに"我が道をゆけ"という意味で捧げた瞬間は、本当の意味で深い絆を持つバンドだからこその熱い魂のやりとりだった。
トリを飾ったBrian the SunはMEWの「Am I Wry? No」のSEでステージに登場した。1曲目の「Sister」を皮切りに、ソリッドに攻める田中駿汰(Dr/Cho)と白山治輝(Ba/Cho)の軽快なビートに乗せて、手数の多い小川真司のギターが縦横無尽に暴れると、"森 良太らしい"としか形容しようのない、鋭利かつセクシーなメロディが伸びやかにフロアに響きわたった。コール&レスポンスを巻き起こした「パワーポップ」、ダークな音像が二律背反な歌詞の混沌をまざまざと描き出した「シュレディンガーの猫」など、オープニングから全5曲を間髪いれずに続けて披露すると、"みんなロック・バンドはストーブとか焚火とか燃えるものだと思ってるでしょ? 俺らはアイスノンですから(笑)"、そんなふうに自らのバンドを説明した森。冗談のような口調だったが、それは静かに燃える彼らの音楽を適確に表す言葉だった。そして「Maybe」では軽やかに弾む人懐こいメロディが淡いまぼろしを描き出し、「隼」では一瞬で過ぎゆく眩しい季節の衝動がブルーの照明と美しく溶け合う。ブライアンが燃やす冷たい炎の前では、言葉など無力だ。
最後のMCでは、森が"本当のことを知りたいだけなんですよ。知らず知らずのうちに自分の中で固く決めてることがある。それを疑って疑って本当の自分は何を求めてるのかを探してます。だから音楽をやってるんです"と言っていた。他人が悩まないことに悩み、その悩みが消えてもまた悩む。面倒くさい生き方だが、そうやって生み出されるブライアンの音楽には、まったく嘘偽りがない。そんな森がストレートな言葉で笑顔を求めた「HEROES」をハイライトに、本編のラストはバンドの持ち曲の中でも、特に深く沈み込むような「13月の夜明け」。その終わり方まで、ありきたりを嫌う天邪鬼なブライアンらしかった。
アンコールでは、ステージに鍵盤が運び込まれ、森がピアノを弾きながら"愛"を紡ぐ最新シングル「カフネ」、さらに"ここが帰る場所であってほしい"と願いを込めた新曲「the Sun」で、"ブライアンフェス"を締めくくった。その歌にこんなフレーズがあった。"僕らは信じるべきさ 音楽は死なない"。それは、あらゆるものに懐疑的で、何者にも媚びることのないBrian the Sunが信じるたったひとつの真実だった。
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昨年11月にシングル・リリースされた「パラダイムシフト」を含む5曲入りミニ・アルバム。引き続きプロデューサーに江口 亮を迎え、元来バンドが持ち合わせているポップ・センスとオルタナの成分をより効果的に響かせるサウンドメイクが実現した。フラットなバンド・アンサンブル、甘みのあるラヴ・ソング、軽快なロック・ナンバーなど5曲それぞれで異なるアプローチを見せつつ、それぞれが昨年リリースした『MEME』の文脈にあることが窺える。中でも「スローダンサー」はバンドやソングライター 森 良太(Vo/Gt)の根源を落とし込んだ楽曲。歪んだギターと重厚なリズム隊が作り出すダウナーで浮遊感のある音像、儚げなヴォーカル、感傷性の高いメロディが三位一体となって滑らかに内省へと落ちていく様が美しい。(沖 さやこ)
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2018年下半期に制作された楽曲で構成されたメジャー3rdフル・アルバムは、インタビューで白山治輝(Ba/Cho)が"今4人がやってかっこいいと思った曲だけ入れた"と言っていたとおり、バンドの核心や美学が一音一音に反映された迷いのない作品となった。とはいえシンプルな原点回帰や初期衝動というものではなく、あるのは12年のキャリアを持ったバンドが真剣に自分たちの音楽を見つめ直すという意地と決意と覚悟。グランジ、オルタナ、インディー・ロックやポップ・ロック、ヒップホップ・テイストのロック・ナンバーなど、今の彼らでないと成し得ない多彩なバンド・サウンドに、楽器ひとつひとつの艶や力強さが躍動している。彼らの鋭利な情熱は本能的でありながら冷静で、息をのむほど美しい。(沖 さやこ)
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1年ぶりのリリースは"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のオープニング・テーマを表題にしたシングル。la la larksのメンバーでありプロデューサーとしても活躍する江口 亮と初タッグを組み制作されたTrack.1は、華やか且つエッジの効いたギターと迫力のあるドラミングが高らかに鳴り響くロック・ナンバー。少年漫画らしいヒーロー感のあるサウンドと、森 良太(Vo/Gt)の声に宿る寂寥感とそこはかとない色気の相性もいい。江口と制作したことでバンドが元来持ち合わせていた本質の威力を増幅させている。結成11年を迎えた彼らが新しい手法を手にしただけでなく、新たなスタンダードになることを予感させる楽曲。Brian the Sun、新章突入だ。(沖 さやこ)
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表題曲はTVアニメ"3月のライオン"エンディング・テーマの書き下ろし。ナチュラル且つソフトなヴォーカルは胸の内に潜む心の声を体現するようでもあり、大切な人と静かに語り合うときのトーンのようでもある。伸びやかな音色に優雅でセンチメンタルなダブル・カルテットが加わることで、ひとりひとりの人間の身近な存在や空気感、素朴さが丁寧に描かれた楽曲になった。Track.2は表題曲と並行する歌詞世界を綴りながらも、サウンド的にはハイ・テンポで音の隙間もほぼないという真逆のアプローチ。勢いのあるドラムと全体の音をコントロールする手堅いベースの作るコントラストにより、透明感のあるギターが映える。強がりと切なさがない交ぜになったサウンドスケープは、このバンドの真骨頂だ。(沖 さやこ)
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メジャー1stフル・アルバム『パトスとエートス』から半年弱でリリースされる5曲入りミニ・アルバム。リリースが夏というのもあり、内省的な前作とは逆ベクトルの、開放的な空気感や幸福感が似合うポップ・ソングが揃う。アート性が高かった歌詞も、今作では明快で間口も広い。前作や『シュレディンガーの猫』(2015年)で核を固めたからこそ、新しいスタートへと歩み出せたのだろう。従来どおり楽器そのものが持つ音を生かした録音方法はもちろん、シンプルでダイナミックなアプローチのTrack.3や、シミュレーターを使いギターでストリングスの音を鳴らすTrack.4など、プレイ面や音作りでのトライも多い。今後彼らの表現が広がりを見せることを予感させる、Brian the Sun第2章処女作。(沖 さやこ)
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メジャー1stアルバムはバンドの核となるフロントマン 森 良太(Vo/Gt)の思考と感情を、ソングライティング面でもサウンド面でも丁寧に汲み出した作品だ。エッジーでひりついた楽曲、疾走するギター・ロック、ジャズ・テイストのピアノが小気味いい楽曲、スケール感のあるミディアム・テンポのロック・ナンバーなど、多彩な楽曲すべてにナチュラルな色気が滲み、すべてが感傷的に響く。それらを単なる内省的な音楽にさせないのは元来持つポップ・センスゆえだろうか。だがアルバムを締めくくる、ピアノを主体にした美しいバラードは、森の精神の奥深くまで沈んでいくようでもある。彼がここまでバンドと音楽を通し、自分自身と向き合ったのは初めてでは。気迫に満ちた音像には、音楽に魂を捧げる覚悟も感じる。(沖 さやこ)
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今年6月にメジャー・デビューしたばかりのBrian the Sunが早くもメジャー2ndシングルをリリース。「Maybe」はTVアニメ"甘々と稲妻"のエンディング主題歌で、フロントマンでありソングライターの森良太の世界が全開の楽曲。アコギを基調にした穏やかで一抹の切なさを醸し出す曲調に、彼の五感が捕まえた感性をそのまま落とし込んだアートとも言うべき歌詞が重なる。彼が切り取った日常の一瞬は永遠を感じさせる半面、有限であることも受け入れているようだ。その美しい矛盾が実現できるのは音楽だからこそ。理屈を超えた感性の"海=彼らの音楽"に潜ってみてはいかがだろうか。"甘々と稲妻"のキーワードを用いた遊び心のある痛快なロック・ナンバーの「しゅがーでいず」とのコントラストもインパクト大。(沖 さやこ)
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Brian the Sun待望のメジャー・デビュー作品は、TVアニメ"僕のヒーローアカデミア"のエンディング・テーマを表題にしたシングル。「HEROES」は彼らがこれまでに作ってきた楽曲と比べても非常にシンプル且つストレートで、軽やかな爽快感が瑞々しい。その音像は、生まれつきの無個性でありながらもヒーローを夢見る主人公・デクの姿とシンクロする。バンド自身も新たなフィールドへの第一歩。自分たちがこれからどんな気持ちを抱き、どんな道を進み、どんな花を咲かせるのか ――未来に向かってひた走る4人の誠実な決意が表れている。開花する寸前のつぼみを見ているような、これから何かが始まることを予感させる期待感の高いシングル。彼らはこの先もっと強力な必殺技を生み出すはずだ。(沖 さやこ)
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今年の"スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR"出演をきっかけに、これまで以上に人気を上げているBrian the Sun、約1年ぶりのリリース作。初期曲と最新曲で構成された5曲入りミニ・アルバムだ。各プレイヤーの演奏と歌唱をほぼ補整せずに音源化させるという驚愕の録音方法ゆえに、それぞれの手癖や人間が鳴らすこそのうねりや歪み、残響や余韻がある。これが実現できたのも前作で楽曲の振れ幅を作り、各自が楽曲のためにスキル・アップを重ねたからだろう。UKテイストの燥的なマイナーなコード感から滲む、濃密な気魄と年齢を重ねたからこその色気。次のステップに向けて、元来ど真ん中に貫かれていた芯を、さらに強く太くした印象だ。心地いい緊張感と集中力から、全員の音楽への高揚と自信が感じられる。(沖 さやこ)
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もし今、忙しすぎたり、考え事で頭が爆発しそうな人がいたりしたら、小1時間このアルバムに集中してみてはどうだろうか。音楽とはいえもちろん"情報"だが、それを細やかな作業と心のこもったものに変えると脳内がリセットされる――ということをまさに実感したのが、SPECIAL OTHERS ACOUSTIC=S.O.A(読み:ソー)の2nd。複数のギターとピアニカが世界のフォークロアと都市のチルアウトを同時に感じさせる「WOLF」などの新曲と、「IDOL」、「CP」などスペアザではお馴染みナンバーのアコースティック・アレンジと呼ぶにはかなり再構築がなされたバージョンなど全10曲。ブラジル的なサウダージ感と北欧や東欧の森感が不思議と混ざり、オリジナルに着地。合奏の熱と愛情に心がほぐされる。(石角 友香)
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