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INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2017年11月号掲載

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Member:森 良太(Vo/Gt) 白山 治輝(Ba/Cho) 小川 真司(Gt/Cho) 田中 駿汰(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

今年1月にフル・アルバム、7月にミニ・アルバムをリリースしたばかりのBrian the Sunが早くもシングル『カフネ』をリリース。表題曲は羽海野チカ原作のTVアニメ"3月のライオン"第2シリーズのエンディング・テーマの書き下ろしである。初めて外部プロデューサーとしてスピッツなどを手掛ける笹路正徳を招き、自分たちの音楽をより深く探ることとなった。今回のインタビューは特にサウンドへの強いポリシーに話が弾む。そこには音楽家としての意地やプライドが燃え盛っていた。

-今回のシングル表題曲「カフネ」は羽海野チカさん原作のTVアニメ"3月のライオン"のエンディング・テーマの書き下ろし曲。Brian the Sunとも相性のいい作品ではないでしょうか。

白山:羽海野さんの作品は僕ら世代やと"ハチミツとクローバー"がど真ん中で。女の子の漫画やと思ってたけど、僕は"ハチクロ(ハチミツとクローバー)"の実写映画を観て、それをきっかけに漫画を読みましたね。

小川:それで今回の話が決まって、全員でイチから"3月のライオン"の原作を読んで。

森:羽海野さんは(漫画で)難しいことを表現しようとしてるけど、その難しさを感じさせない。キャラクターに心情を語らせず、絵の構図で表したり、モチーフで空気感を伝えたり......表現の技術がすごい人やなと思いました。天才やなと。

-良太さんは"ブライアンフェス"の東京編(2017年10月9日に赤坂BLITZにて開催)のMCで"羽海野さんの作品は深すぎて自分のことを歌うしか方法がなかった"とおっしゃっていました。

森:作品を読んでいて"作品の内容を説明するような曲であってほしいとはあまり思ってない人なんやろな"と感じて。"3月のライオン"という作品を理解しようとしても、さらにその奥がありそうで......作品を代弁するような気持ちで書くと間違えそうやから"自分の中にあるもので、ちゃんと身の丈で書こう。勝手に解釈しすぎないようにしよう"と思った。ちゃんと感触として"羽海野さんはこう描きたいんやろな"とわかるところしか拾っていけへんなと思ったんです。"自分が理解できること"は作品からしっかりもらってきて歌わないとなー......という感じでしたね。

-刺激になる部分も多かった?

森:めっちゃありましたね。漫画や小説を読むうえで"作者はどんなこと考えてこの作品を描いてるんやろ"とは、あまり思わないじゃないですか。

-そうですね。ストーリーの続きがどうなるのかが気になるな、とか。

森:このとき登場人物はどういう気持ちなんやろ......とか考えたり。でも出てくるキャラクターは、ひとりの人間から生まれているわけで。それぞれのキャラクターが違う思考を持ってストーリーが進んでいるように見えても、根底にあるものは作者に繋がっているというか。作者の"このキャラクターにはこういうふうに動いてほしい"とか"このキャラクターはこうなるやろな"っていう思いとか考えが作品に落とし込まれてる。そう考えながら読むと、どんどん深いところまで辿ることができる。その根っこの部分は見えるような見えへんような......。その"なんとなく見えるような見えないようなもの"を曲にするのは難しかった。

-それがさっきおっしゃっていた"作品を代弁するような気持ちで書くと間違えそう"ということですね。

森:だからモチーフとして作品の要素をもらって。例えば歌詞にある"マーマレード"は、作品中にお菓子の描写があったから入れた言葉で。そういうところをしっかり拾って、同時に(作品の中で)自分と一致しているところを拾いながら書いていきました。たくさんの人が関わっているアニメなので"もう少し違うアプローチはありませんか?"と提案してもらうことが多くて、珍しく歌詞を何回もリライトしたんですよ。

-そうなんですか。それでもちゃんと良太さんらしい詞になっていると思いますが。

森:さっき"説明くさくしたくない"と言ったとおり、最初は結構受け手に委ねるような、ぼかした歌詞を書いてたんですよ。

-良太さんの歌詞にはよくある手法ですね。

森:そうですね。受け取り方は人それぞれやし、モードとか時期とかによって異なる主観がはたらくから、印象に残るものは自分で勝手に選んでいくと思う。曲は"印象に残るような言葉を置いておくもの"でいいかなと思って書くことが多いんです。でもリライトの要望を受けるたびに、誰かから"ちゃんとしなさい、逃げないでちゃんと向き合いなさい"と言われているような感覚もあって。何回もリライトしていくうちに"あ、俺、こういうことが歌いたかったんやな"というのがわかってきて――ピントがどんどん合っていく感じがしました。書き直しをさせられたという気持ちはまったくないです。リライトするのも悪くないなぁと思いました。自分の偏った視点を外していくような作業になったと思います。