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INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2020年03月号掲載

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Member:森 良太(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

2019年はフル・アルバム『MEME』をリリースし、アメリカでのライヴも経験したBrian the Sun。今作『orbit』は、昨年秋にリリースしたシングル『パラダイムシフト』表題曲を含む計5曲で構成されている。『MEME』以降のモードがダイレクトに表れつつも、まったく装いの違う楽曲が揃った、ソングライター 森 良太の言葉を借りればまさに"フラット"な作品だ。今回のインタビューでは、その"フラット"の背景にある出来事や森の心情をじっくりと探っていった。


"作りたいものを作る"というか"作りたいように作る"


-『MEME』以降、いいモードをキープできているようお見受けします。

"自分が作りたいと思うものを正直に、いい作品として仕上げるのがいいよね"というところに行き着いては離れ、行き着いては離れ......を繰り返して戻ってきた感じがしてます。自分が頭の中で決めた正解に向かって走っていくと必ずどこかで間違いが起きるというか。予想だにしていないことが起きたときに、それを受け入れられなくなってしまうんですけど。

-あぁ、決まったゴールに向かっていく必要があるから、それ以外のものを享受するのが難しくなると。

だから、"作りたいものを作る"というか"作りたいように作る"かな。気持ちとして"やりたいな"と"やりたくないな"を自分勝手に進めていった感じ(笑)。できることとできないこと、やったほうがいいこととやらないほうがいいことを、身体でわかってきた。

-それをあえて言葉にするなら、例えば?

昔からロック・バンドである自負があるから、一発録りにこだわってきたけど、江口(亮)さんと出会って新しい方法論を得て。曲によって録り方を使い分けるようになったことで、一発録りの良さも際立ったと思うんです。今作『orbit』も基本一発で録ってあとから重ねていく形を取っているので、録りたい方法で録れてますね。江口さんとの信頼関係も築けてきてるからできてることやろうなと。

-『orbit』は江口さん色が濃く出る瞬間が、今までより多い気がしました。

お互いにとっていいことやと思いますね。時代によって使う機材とかも変わってくるから、進化もしてくると思うんです。江口さんの作品はStereo Fabrication of Youthから聴いてるけど、似たような感性を持っている人が時代の流れに乗って、新しい方法論で録音をしてくれるおかげで、僕らも学ぶことができる。だから俺としては、江口さんの色はめっちゃ出してほしくて。今は"お、これかっこいいっすね"とか"ちょっとこれはちゃうんじゃないっすか(笑)?"みたいな話ができるんで、すごくいい感じですね。

-自分にフィットした活動ができているようで。

無理はしてないですね。今年入ってライヴをたくさんやってるから、もうちょい制作の時間欲しいなーと思ったりはしますけど。

-最近の森さん、コンスタントに曲作りをなさってますものね。SNSにも"最近真面目に曲作りをしている"と書いていましたけど、その発言は"今まで真面目じゃなかった"とも捉えられるのですが(笑)。

あははは! もちろんちゃんと作ってはいたんですけど、結構時間に追われてて。やっぱり時間がないなかで作ると焦りが作品に出てくるから、時間の制約がなくできたものは自然体やなと思うんです。例えば、「Maybe」(2016年リリースのメジャー2ndシングル表題曲)はリリースするつもりもなくて、自分で好きに書いてて。あの曲の足腰しっかりした感じは、焦らずに書いたからやし。時間的な制約があるのはストレス......というか苦手なので、今年はいっぱい書いとこーって。

-言われてみると、Brian the Sunに迷いが見えた時期と、10代の頃から書いていた楽曲のストックがなくなった時期は、同じ頃だったかも。

そうっすねー......やっぱりものづくりに時間は必要ですね。

-『orbit』の曲はいかがですか?

わりと焦って書いた曲たちですね(笑)。まぁ、慌てて書くというのは熟考する時間がないぶん、普段思っていることがそのまま出るっていう話で。

-その瞬間に思っていることや、その時期の自分のモードが曲になる利点はありますよね。5曲それぞれロックとしての資質を持っているけれど、全部が別軸という印象はありました。『MEME』のその後の世界線5パターンみたいな。

うんうん。わりとポップ寄りな曲もあれば、がっつりロックな曲もあって。今回は収録曲も5曲やし、(楽曲の方向性の)コントロールはあんまりしないようにしたので、"自分からそのまま出てきたものやし、これがいいんかな"と思いながら。普通に書けば普通に作品にはなっていくし。

-その"普通"ってどういうものなんだろう。最近の森さんは、どんなものを音楽にしたくて、どんなものを伝えたいと思っているんでしょう?

んー......難しいですねぇ。"言いたいことを曲にしてしまっていいんかな?"とは思ってるかな。Brian the Sunとしてステージに立っているときは前向きなメッセージを歌ってたいから、救いのないようなことばかり歌ってても仕方がないなとは考えていて。......人になんか言いたくなるときって、あんまかっこいいときじゃないっすよね(笑)。

-あははは(笑)。たしかに。

"誰かを勇気づけてあげよう"と思っている状態をかっこいいと思えないので、あんまりしたくないんですよ。前向きなことを歌いたいというのは、曲だからこそできることでもあるし、曲だからこそ言わないほうがいいのかもしれないな......と思いながら書いてますね。どれだけポジティヴに考えても、なるようにしかならないじゃないですか。いちいち一喜一憂するのもアホらしいなと思ったりもするんですけど、その一喜一憂こそがロマンチックな世界であり、アートの世界でもあるから、それがなくなるとどんどん無機質な人間になっていきますよね。

-そうですね。

そうすると日常に小さな感動を見つけるのも大事なのかもしれないし、それをアホくさいと思うこともあるし。それがいいなと思ったときはそれを曲にするって感じの"フラット"や"普通"かな。こう思わなくてはいけないというルールみたいなものはない。

-1曲目のタイトルになっている"SOS"という言葉が出てくるのは、助けてとは言わずとも、人を求めるということなのかなと思って。

"SOS"というタイトルを付けはしたけれど、特に助けを求めてたわけではないです(笑)。タイトルはいつも、"この曲にはこの言葉がぴったりくるな"と思うものを付けてるだけなんで、特に理由はないんです。青いものを見て涼しさを感じることに理由はないじゃないですか。それと同じかな。歌詞とかタイトルとか、表面そのままで捉えられてしまうとそれ以上の奥行きは生まれないですけど、もちろん含みとかは持たせてるし、言葉に音が重なって初めて意味を成すこともたくさんあるんで、そこを論理立てて考えてないんですよね。出てきてしまったという感じです。説明するの難しいんですけど。

-そうですよね。だから、森さんは言葉で語れないところまで語れる"音楽"というものをやっていらっしゃるんでしょうし。

川端康成の"雪国"みたいに1文で誰が読んでも想像できるわかりやすいものもあるけど、俺の頭の中にあるものを表現するには100ページくらい必要かも(笑)。そもそも、俺"SOS"って言葉や行動を結構ポップに感じてるんですよ。結局"生きたい"ってことじゃないですか。それを実際行動に起こしているときの人間は、はたから見て非常に滑稽だと思うんです。

-滑稽?

"死にたくない"ってめっちゃおもろいなと思うんです。生を肯定することが大前提で語られているけれど、ほんまに生きるのがしんどい人もいるやろうし。こういうことを言うとネガティヴやと捉えられることもあるし、生き死にに言及することは失礼やと思う人もいるけど、人間は大きなものを目の前にするとなんもできなくて、ちっぽけやなと思う。そこでもがいてる様が滑稽やなー......と自分に対して思ったりするんです。"生きたい"という漠然とした本能――そもそも、本能というものがもう滑稽ですよね。本能に振り回されて生きてるのに、理性で生きているように考えてしまう様も面白い。

-本能と理性で板挟みになって翻弄されてるのが人間ですしね。

こういうことを俯瞰で見てる自分もキモいし滑稽やな~と思います。欲望に大義名分をつけて頑張る動機にする様も奇妙やなと思う。でも、そこまで言ってしまうと身も蓋もないし、ロマンチックでもなんでもなくなってしまう(笑)。言葉ひとつ取っても人によって感じ方は違うので、"SOS"という言葉を心配する人もいるわけですよね。そういうのも含めてメッセージになるのかなと。

-メッセージ、ですか。

生きてれば、語らずとも、誰かから何かを感じるじゃないですか。野菜の入った紙袋を持っている人を見かけたら、"帰って家族にごはんを作るのかな"とか想像するし。でも、その人たちはそれを発信しようと思って発信してるわけではないですよね。となるとメッセージというのは受け取り手が勝手に感じることでもあるし、わざわざ発信したとしても、その通りに受け取ってもらえるかどうかはわからない。自分の持っているメッセージがうまく相手に伝わると考えるのは思い上がりなんやろうけど、勝手に出てるものなんやろなーとも思います。