Japanese
Don't Stop Music Fes.TOCHIGI
Skream! マガジン 2017年05月号掲載
2017.04.15 @栃木市総合体育館
Writer 秦 理絵
MAGIC OF LiFEが主催する"Don't Stop Music Fes.TOCHIGI"、通称"栃フェス"が栃木市総合体育館で行われた。開演前、フード・ブースが用意された会場周辺は、まずは栃木名物で腹ごしらえをしてから会場入りしようとするお客さんで賑わっていた。
オープニング・アクトとして登場した覆面のサンタクロース集団=GIFT MENによる熱いパフォーマンスのあと、高津戸信幸(Vo/Gt)による"栃フェスを開催したいと思います!"という開会宣言。そして、栃木市長の鈴木俊美氏からも激励の挨拶が送られると、7時間にわたり、その名のとおり音楽の鳴り止まない至福の1日が幕を開けた。
トップバッターのLEGO BIG MORLは、バラード曲「end-end」からゆっくりとフロアをあたためていった。主催者であるマジック(MAGIC OF LiFE)とはキャリアがほぼ同じ。カナタタケヒロ(Vo/Gt)が、長く続けたバンド同士という理解者として、マジックへの敬意を捧げる姿が印象的だった。リハの「ダイナソー」でお客さんの心を掴んだCzecho No Republicは、賑やかなアンサンブルの上を男女ツイン・ヴォーカルが軽やかに弾み、会場をカラフルに彩った。"街を音楽で溢れさせるのは健全でハッピーなことだと思う!"と、武井優心(Vo/Ba)がマジックへの賛辞を送ると、「Oh Yeah!!!!!!!」でハッピーな空間をその場所に作り上げてくれた。
集まったお客さんを根こそぎ踊らせたのはphatmans after school。「東京少年」を皮切りに弾丸のようなスピードと破壊力を兼ね備えたヘヴィなバンド・サウンドをフロアに浴びせると、"今日は知り合いばっかりです。人間としてはクズ......もいるけど(笑)、音楽人としては最高の人間です!"という愛のある言葉が、ヨシダタクミ(Vo/Gt)らしかった。マジックと同じく栃木県出身のpollyは、美しい旋律とダークな音像が渦巻くバンド・サウンドで会場の空気をガラリと変えた。危うい衝動が滲み出た「沈めてくれたら」まで、聴き手を強く惹き込むステージを見せると、前半のラストはココロオークション。「ヘッドフォントリガー」の歌詞の一部を"栃フェス"に変える愛嬌も、"ずっと出たかった。音楽と言葉に誇りを持った人たちが集まる場所に呼ばれて光栄です"という粟子真行(Vo/Gt)のまっすぐな挨拶も、先輩であるマジックへの憧憬が隅々まで溢れていた。
ブレイクタイムを挟んで、後半の一発目はBrian the Sun。どう転んでもロック・バンドにしかならない鋭く研ぎ澄まされた演奏で「アレカラ」を届けると、"予定と違う曲をやりたくなってしまいました"と、森 良太(Vo/Gt)。急遽、演奏されたバラード「白い部屋」がとても素晴らしかった。3ピースながらも骨太の演奏を届けたCIVILIANは、"呼んでくれたMAGIC OF LiFEに恩を返しに来ました"というコヤマヒデカズ(Vo/Gt)の熱い言葉とともに、マジックのメンバーが好きだという「メシア」をドラマチックに歌い上げた。大阪発のピアノ・ロック・バンド SHE'Sは、「Un-science」から圧倒的な多幸感で会場を満たしてくれた。初出演ということで、のどかな栃木の土地柄に触れて、"来年も出たい!"と井上竜馬(Key/Gt/Vo)。「遠くまで」ではドラマチックなミディアム・テンポでシンガロングを巻き起こしながら、共に未来へ進んで行こう、というメッセージを伝えてくれた。
クライマックスを彩るのは栃フェス3回連続出演の皆勤賞2バンド。事前の対談でも"もう主催側の気持ちになる"と言っていたとおり、すっかり会場は彼らのホームだった。リハで「色恋狂詩曲」を披露してから本編へとなだれ込んだ空想委員会は、瑞々しいメロディで会場をひとつにする。『デフォルメの青写真』の楽曲を中心としたセットリストは3年目にして最新のバンドの今を提示する攻めのステージだった。同じく3年連続のRhythmic Toy Worldは「かごめかごめ」からステージ狭しと暴れながら、強引なまでに聴き手と繋がっていく。マジックと親交の深い内田直孝(Vo/Gt)が、"(高津戸が)同じ世代のバンドがいねぇんだよって寂しそうに言うんだよ。俺たちはおまえらの前から一生消えないから!"と言っていた。バンドマン主催フェスだからこそ垣間見られる絆に胸が熱くなる瞬間だった。
1日かけて出演者が繋いできたバトンを最後に受け取ったMAGIC OF LiFEは、その想いに全力で応えるステージを見せた。"音楽を通して出会ったすべてのものに感謝します"(高津戸)。自らの鳴らす音楽に誇りを持って放つ高津戸の言葉とともに、いつも以上に熱を帯びて「弱虫な炎」や「はじまりの日々」といったナンバーを届けた。アンコールは「夜空のBGM」。"終わったはずの花火に願ってる/もう一度空に打ち上がったなら/会えるかな?"。それは、4回目の栃フェスでもまた会おう、と再会を約束する歌のようだった。
いま全国にたくさんのフェスがある。最近はアーティストが作るフェスも増えてきた。そういうなかで栃フェスは、言葉と歌で想いを伝える、それを懸命に受け取る、そんな意識の強いフェスだ。それはMAGIC OF LiFEというバンドの映し鏡だと思った。"奇跡なんて簡単に言いたくないけど、これは奇跡だよ"と、最後に言った高津戸の言葉が印象的だった。
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orbit
昨年11月にシングル・リリースされた「パラダイムシフト」を含む5曲入りミニ・アルバム。引き続きプロデューサーに江口 亮を迎え、元来バンドが持ち合わせているポップ・センスとオルタナの成分をより効果的に響かせるサウンドメイクが実現した。フラットなバンド・アンサンブル、甘みのあるラヴ・ソング、軽快なロック・ナンバーなど5曲それぞれで異なるアプローチを見せつつ、それぞれが昨年リリースした『MEME』の文脈にあることが窺える。中でも「スローダンサー」はバンドやソングライター 森 良太(Vo/Gt)の根源を落とし込んだ楽曲。歪んだギターと重厚なリズム隊が作り出すダウナーで浮遊感のある音像、儚げなヴォーカル、感傷性の高いメロディが三位一体となって滑らかに内省へと落ちていく様が美しい。
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パラダイムシフト
5thシングルとなる本作はTVアニメ"真・中華一番!"ED主題歌。チャイニーズ感のあるイントロのギター・リフ、Aメロのファンク感を保ちつつ、シンコペーションのリズムで進む、サビで開放的になる展開はキャッチーだ。それでいて、バンド・サウンドの真骨頂を表現したアルバム『MEME』の延長線上にある、存在感の大きな音像が2019年の彼ららしい。c/wの「still fish」は、より自由に暴れている印象で、森 良太(Vo/Gt)と小川真司(Gt/Cho)の異なる個性のギターが堪能できる。なお、DVD付初回生産限定盤にはアメリカダラスでのライヴのドキュメント映像も付帯。ライヴの模様はもちろん積極的に海外のリスナーとコミュニケーションをとるシーンなど、短くも濃い内容だ。
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MEME
2018年下半期に制作された楽曲で構成されたメジャー3rdフル・アルバムは、インタビューで白山治輝(Ba/Cho)が"今4人がやってかっこいいと思った曲だけ入れた"と言っていたとおり、バンドの核心や美学が一音一音に反映された迷いのない作品となった。とはいえシンプルな原点回帰や初期衝動というものではなく、あるのは12年のキャリアを持ったバンドが真剣に自分たちの音楽を見つめ直すという意地と決意と覚悟。グランジ、オルタナ、インディー・ロックやポップ・ロック、ヒップホップ・テイストのロック・ナンバーなど、今の彼らでないと成し得ない多彩なバンド・サウンドに、楽器ひとつひとつの艶や力強さが躍動している。彼らの鋭利な情熱は本能的でありながら冷静で、息をのむほど美しい。
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Lonely Go!
1年ぶりのリリースは"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のオープニング・テーマを表題にしたシングル。la la larksのメンバーでありプロデューサーとしても活躍する江口 亮と初タッグを組み制作されたTrack.1は、華やか且つエッジの効いたギターと迫力のあるドラミングが高らかに鳴り響くロック・ナンバー。少年漫画らしいヒーロー感のあるサウンドと、森 良太(Vo/Gt)の声に宿る寂寥感とそこはかとない色気の相性もいい。江口と制作したことでバンドが元来持ち合わせていた本質の威力を増幅させている。結成11年を迎えた彼らが新しい手法を手にしただけでなく、新たなスタンダードになることを予感させる楽曲。Brian the Sun、新章突入だ。
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the Sun
『SUNNY SIDE UP』収録のタイアップ曲2曲と、シングル『カフネ』表題曲を含む、"ポップでオーバーグラウンドなもの"をテーマにお茶の間層を意識して制作されたメジャー2ndフル・アルバム。プレイヤー個々のカラーを出す音作りというよりは、ポップな楽曲を際立たせるアレンジやフレーズ作りに注力されている。これまではアート性の高かった歌詞も今作ではわかりやすく受け取りやすいものが多く、"夜"や"星"、"朝"といった単語が、"the Sun"という言葉を際立たせる。自分たちの音楽の世界に引きずり込む刺激性の強い音楽というよりは、聴き手の日常空間の背景として佇むようなサウンドスケープ。バリエーション豊かなものが多いなか、ここまでカラーが統一された作品も珍しい。
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カフネ
表題曲はTVアニメ"3月のライオン"エンディング・テーマの書き下ろし。ナチュラル且つソフトなヴォーカルは胸の内に潜む心の声を体現するようでもあり、大切な人と静かに語り合うときのトーンのようでもある。伸びやかな音色に優雅でセンチメンタルなダブル・カルテットが加わることで、ひとりひとりの人間の身近な存在や空気感、素朴さが丁寧に描かれた楽曲になった。Track.2は表題曲と並行する歌詞世界を綴りながらも、サウンド的にはハイ・テンポで音の隙間もほぼないという真逆のアプローチ。勢いのあるドラムと全体の音をコントロールする手堅いベースの作るコントラストにより、透明感のあるギターが映える。強がりと切なさがない交ぜになったサウンドスケープは、このバンドの真骨頂だ。
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SUNNY SIDE UP
メジャー1stフル・アルバム『パトスとエートス』から半年弱でリリースされる5曲入りミニ・アルバム。リリースが夏というのもあり、内省的な前作とは逆ベクトルの、開放的な空気感や幸福感が似合うポップ・ソングが揃う。アート性が高かった歌詞も、今作では明快で間口も広い。前作や『シュレディンガーの猫』(2015年)で核を固めたからこそ、新しいスタートへと歩み出せたのだろう。従来どおり楽器そのものが持つ音を生かした録音方法はもちろん、シンプルでダイナミックなアプローチのTrack.3や、シミュレーターを使いギターでストリングスの音を鳴らすTrack.4など、プレイ面や音作りでのトライも多い。今後彼らの表現が広がりを見せることを予感させる、Brian the Sun第2章処女作。
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パトスとエートス
メジャー1stアルバムはバンドの核となるフロントマン 森 良太(Vo/Gt)の思考と感情を、ソングライティング面でもサウンド面でも丁寧に汲み出した作品だ。エッジーでひりついた楽曲、疾走するギター・ロック、ジャズ・テイストのピアノが小気味いい楽曲、スケール感のあるミディアム・テンポのロック・ナンバーなど、多彩な楽曲すべてにナチュラルな色気が滲み、すべてが感傷的に響く。それらを単なる内省的な音楽にさせないのは元来持つポップ・センスゆえだろうか。だがアルバムを締めくくる、ピアノを主体にした美しいバラードは、森の精神の奥深くまで沈んでいくようでもある。彼がここまでバンドと音楽を通し、自分自身と向き合ったのは初めてでは。気迫に満ちた音像には、音楽に魂を捧げる覚悟も感じる。
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Maybe
今年6月にメジャー・デビューしたばかりのBrian the Sunが早くもメジャー2ndシングルをリリース。「Maybe」はTVアニメ"甘々と稲妻"のエンディング主題歌で、フロントマンでありソングライターの森良太の世界が全開の楽曲。アコギを基調にした穏やかで一抹の切なさを醸し出す曲調に、彼の五感が捕まえた感性をそのまま落とし込んだアートとも言うべき歌詞が重なる。彼が切り取った日常の一瞬は永遠を感じさせる半面、有限であることも受け入れているようだ。その美しい矛盾が実現できるのは音楽だからこそ。理屈を超えた感性の"海=彼らの音楽"に潜ってみてはいかがだろうか。"甘々と稲妻"のキーワードを用いた遊び心のある痛快なロック・ナンバーの「しゅがーでいず」とのコントラストもインパクト大。
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HEROES
Brian the Sun待望のメジャー・デビュー作品は、TVアニメ"僕のヒーローアカデミア"のエンディング・テーマを表題にしたシングル。「HEROES」は彼らがこれまでに作ってきた楽曲と比べても非常にシンプル且つストレートで、軽やかな爽快感が瑞々しい。その音像は、生まれつきの無個性でありながらもヒーローを夢見る主人公・デクの姿とシンクロする。バンド自身も新たなフィールドへの第一歩。自分たちがこれからどんな気持ちを抱き、どんな道を進み、どんな花を咲かせるのか ――未来に向かってひた走る4人の誠実な決意が表れている。開花する寸前のつぼみを見ているような、これから何かが始まることを予感させる期待感の高いシングル。彼らはこの先もっと強力な必殺技を生み出すはずだ。
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シュレディンガーの猫
今年の"スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR"出演をきっかけに、これまで以上に人気を上げているBrian the Sun、約1年ぶりのリリース作。初期曲と最新曲で構成された5曲入りミニ・アルバムだ。各プレイヤーの演奏と歌唱をほぼ補整せずに音源化させるという驚愕の録音方法ゆえに、それぞれの手癖や人間が鳴らすこそのうねりや歪み、残響や余韻がある。これが実現できたのも前作で楽曲の振れ幅を作り、各自が楽曲のためにスキル・アップを重ねたからだろう。UKテイストの燥的なマイナーなコード感から滲む、濃密な気魄と年齢を重ねたからこその色気。次のステップに向けて、元来ど真ん中に貫かれていた芯を、さらに強く太くした印象だ。心地いい緊張感と集中力から、全員の音楽への高揚と自信が感じられる。
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Brian the Sun
Brian the Sun
各楽器の情感溢れるアプローチやアンサンブルも、歌詞の描写の広がりも、ヴォーカルのふくよかさも、すべてが新しいステップへと格上げされている。フロントマンでありメイン・ソングライターである森 良太の歌をバンド一丸となり最上の状態で届けるために、4人は自身のプレイヤヴィリティを磨いた結果、Brian the Sun史上最も心地よいビートが生まれた。細部まで突き詰められた透明感のある音像は時にやわらかく、時に鋭く突き抜け、ダンス・ビートでなくとも踊れる軽やかなリズムもまた、音楽というものをシンプルに楽しむ心のピュアな部分へとはたらきかける。自分たちから生まれる歌に素直に向き合い、それを極上の状態で届けようとする、非常に風通しのいいアルバム。聴けば聴くほど味わい深い。
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Brian the Sun
彼女はゼロフィリア
閃光ライオット2008の準グランプリとしても知られるBrian the Sun。その後メンバー・チェンジを繰り返すも、折れることなく健やかに成長しているのは、オリジナル・メンバーの森 良太と白山治輝がひたむきに自分たちの音楽と向かい合い続けた証だろう。結果彼らは強い信頼を置いた現在の仲間を見つけ、着実に、より力強く邁進している。『彼女はゼロフィリア』はライヴハウスから派生した、愛にまつわる5つの物語によるコンセプト・アルバム。メジャー・キーとマイナー・キーの間を貫く、キャッチーで遊び心がありつつもほのかにひりついた空気と色気を感じさせるギター・ロックには、人生経験や感情がダイレクトに表れる。素直さとスパイスの絶妙な味わい。このバンド、間違いなくまだまだ大きくなる。
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MAGIC OF LiFE
MAGIC
悲しいときにはその涙を拭うための優しい歌を、苦しいときにはそれすらも笑い飛ばす陽気な歌を。それがMAGIC OF LiFEというバンドの流儀であることを感じるミニ・アルバム。新しい生活への期待とお節介な"間違い探し"への苛立ちを歌った「陰日向」をはじめ、コロナ禍に制作されたことが伝わる切実な楽曲が並ぶ。ホーリーなハーモニーとダンス・ミュージックが溶け合う「What a Relief」や、バンド史上最速と言える妄想ソング「コーラ」、"生きている"と力強く歌い上げる「未来を追いかけて」など、様々なシーンを描いた全8曲は、あらゆる矛盾を抱えて日々を奔走する私たちの心の温度にとても近い。珠玉はバラード曲「記念日」。彼らの音楽は、"命の残りの日数"を豊かに彩ってくれる。
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MAGIC OF LiFE
Wanderer
約11ヶ月ぶりのリリースは、2019とちぎテレビ高校野球応援ソング「応援歌」、栃木市マスコット・キャラクター"とち介"イメージ・ソング「大福」を含む、8曲入りミニ・アルバム。前々より取り入れていたストリングスやエレクトロ、EDM要素といったバンド外の音との親和性を高め、より包容力のあるサウンドスケープが実現している。人を愛する意味の大きさをまっすぐと歌うバラード「素晴らしくて」、繊細な音使いで爽やかに駆け抜ける「Four Seasons」、バンド・サウンドが前面に表れたエモーショナルな「Anniversary Ring」など、それぞれ趣向の違う楽曲でありながらも、ひたむきに前を見ている姿勢は一貫。美学に向かって邁進していく生き様が、混じり気なく昇華された楽曲が揃った。
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MAGIC OF LiFE
FOR YOU
約1年ぶりのリリースとなるミニ・アルバムは、8曲入りのラヴ・ソング集。悲しさだけでなく感謝の気持ちが添えられた温もりのある失恋ソング「朝焼けとからっぽ」や、恋が芽生える瞬間を魔法に例えた「魔法にかかる」、闇の中に見えたひと筋の光を歌う荒々しいサウンドが印象的な「QUICK DRAW」など、表情豊かな楽曲が揃う。"FOR YOU"というアルバム・タイトルに相応しく、様々なシチュエーションでの甘酸っぱく切ない"君"への想いが綴られている。恋の終わりや始まり、日常に溢れる小さな幸せばかりではなく、どこにぶつけたらいいのかわからない葛藤も包み隠さず描かれ、まるでひとつの恋の物語のよう。そして最後には一緒に前を向いてくれるところが、実にMAGIC OF LiFEらしい。
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MAGIC OF LiFE
線香花火/乱舞ランデブー
2017年初作品となる両A面シングル。agehasprings 玉井健二と約5年ぶりにタッグを組み制作されたTrack.1は、当たり前のようで当たり前ではない命に感謝することをテーマにした楽曲で、眩しすぎるくらいの愛が綴られている。彼らの武器とも言えるストリングスの効いたバラードに、ノリの良さをプラスした壮大なサウンドは新境地。一瞬の光の美しさを讃える心と、いつか輝きを失うことを憂う心の双方を感じさせる高津戸信幸のヴォーカルを十二分に堪能できる。Track.2はダンサブルなビートと12弦ギターなどによる豊かな響きにより異国情緒を感じさせる楽曲。Track.3にはDIRTY OLD MEN時代に制作された楽曲のアコースティック・バージョンを収録している。
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MAGIC OF LiFE
X-1A
自身の制作活動以外にも、地元で自主企画フェスを開催したり、Rhythmic Toy Worldとともに世界中の子供たちにおもちゃを届けるプロジェクト・バンド"GIFT MEN"を結成するなど、精力的に活動するバンドの姿がそのまま音楽になっているのでは。テクニカルに疾走するギター・ロック、温もりを感じさせるミディアム・ナンバー、スカのテイストを取り入れたものやファンキーでハッピーな楽曲、ポスト・ロック風のリズムを取り入れた壮大な楽曲など、様々なチャレンジや煌きに満ちた楽曲ばかりだ。特に象徴的なのはTrack.1。EDM、ポエトリー・リーディングやラップ・テイストのヴォーカル、シンガロングできるサビなど、これだけ大胆に取り入れてしまう度量や勇気には舌を巻くばかり。
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MAGIC OF LiFE
「はじまりの日々」 / 「スキルフラワー」
劇場版アニメ"弱虫ペダル SPARE BIKE"の主題歌である「はじまりの日々」と、TVドラマ"弱虫ペダル"の主題歌である「スキルフラワー」を収録した豪華ダブル主題歌シングル。どちらの曲もスピード感のあるバンド・サウンドという似た趣を持つ。「はじまりの日々」は煌びやかなシンセなどのウワモノと、ダイナミックなドラムが炸裂。歌詞には登場人物の感情の起伏が丁寧に描かれている。「スキルフラワー」はギター・リフが先導して音を作る、まさしく火花をまき散らすような肉体的な楽曲。そのサウンドのモードと同じく、歌詞に並ぶ言葉も強気で男らしい。近しいカラーを持たせつつ、作品を各曲で別の角度から捉えている。この2曲は9月7日にリリースされるフル・アルバム『X-1A』には収録されないので、チェックはマストで。
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MAGIC OF LiFE
風花ノ雫
Rhythmic Toy WorldとともにGIFT MENを結成し、10月には改名1周年記念ツアーを行うなど精力的な活動を続けるMAGIC OF LiFEが7月30日にリリースした配信限定シングル『音無き言葉』に続き新曲を発表。ピアノとシンセが煌びやかな疾走感のあるサウンドに、繊細なハイトーン・ヴォイスが映えるロック・ナンバーだ。高津戸信幸(Vo/Gt)はこの楽曲に"近くにある愛情や幸せの大切さに気づいて欲しい""近くにいる人に自分の気持ちをたくさん伝えて欲しい"と想いを込めたという。歌詞に綴られているのは大事な人との別れと後悔、悲壮感。アップ・テンポ且つダンサブルなサウンドには、そんなやりきれない心情を解き放つポジティヴなパワーがある。彼らのニュー・アンセムに成り得るのでは。
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MAGIC OF LiFE
栄光への一秒
昨年10月にDIRTY OLD MENから改名したときは驚いたが、"MAGIC OF LiFE"というバンド名の方が彼らの音楽には合っていると思う。高津戸信幸(Vo/Gt)の紡ぐ、物語のような歌詞はキラキラと輝いていて、まるで魔法みたいだから。TVアニメ"弱虫ペダル GRANDE ROAD"のエンディング・テーマに起用されている「栄光への一秒」も、前へ進めと背中を押してくれる魔法のような楽曲。アニメの世界観とマッチした歌詞で、"弱虫ペダル"ファンの心も掴むであろう。カップリングの「古ぼけた季節に」は、懐かしく暖かいバラード・ナンバー。優しいギターの音色に、ささやくような高津戸の歌声が重なり、なんだか涙がこぼれそうになる。MAGIC OF LiFEの静と動、両方の魅力を味わえる1枚。
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Storyteller
Track.1のイントロから、4人の作る世界が優しくダイナミックに聴き手を包み込む。バンド名の"命の魔法"という奇跡は、現実に起こすことができるものだと、音のひとつひとつが正面から訴えかけてくるようだ。すべてから漲る生命力、それはいつか来る"終わり"から逃げずに、受け入れた人間だからこそ出すことができる。この11曲は嘘偽りのない、このバンドが11年で感じてきた想いと痛みそのものだ。ラウドロックにも負けず劣らずの骨太ロック・ナンバー、民族楽器的な音色が懐かしさを呼び起こす楽曲、ポップなギター・ロック、アコースティック色の強い楽曲やミディアム・ナンバー、触れ幅の広いすべてにファンタジーとリアリティが美しく混ざり合う。まさしく"MAGIC OF LiFE"だ。
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SHE'Sが1年7ヶ月ぶり、6枚目のフル・アルバム『Shepherd』をリリース。本アルバムには、バンドにとって初のアニメーション映画への書き下ろしとなった楽曲「Blue Thermal」をはじめ、TBS系"王様のブランチ"テーマ・ソング(2022年4~9月)「Grow Old With Me」、軽快なカントリー調に仕上げたリード曲「Boat on a Lake」、打ち込みと生音が絡み合うアグレッシヴなピアノ・ロック「Raided」など、全11曲が収録される。また本作に収められた新曲は、全楽曲のソングライティングを担う井上竜馬(Vo/Key)がパウロ・コエーリョによる小説"アルケミスト 夢を旅した少年"から着想を得て制作されたようで、コンセプト・アルバムの趣もある意欲作になっている。
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SHE'S in BUDOKAN
'22年2月の日本武道館公演の模様を収めた、SHE'S初のライヴ映像作品。SHE'S 10年の軌跡と言うべき音楽的に豊かな楽曲群を表現する心のこもったバンドの演奏、そしてメンバーに"声を出してないはずやのに一緒に歌っているような感覚です。聞こえてくる。そんな感じがする"と言わしめた観客がともに作り上げたあの日の温かな空気が、純度高くパッケージングされている。メンバーが終始いい表情をしているのがたまらない。弦楽カルテット+ホーン隊含む11名編成で届けた22曲をMC含めノーカットで収録。結成10周年の集大成と呼ぶに相応しいライヴの模様をしっかりと記録したファン必携のアイテムだ。完全数量限定盤にはドキュメンタリー映像や全31曲のMVも収録。
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"ブルーサーマル"とは上昇気流の意味。航空部をテーマにしたアニメ映画"ブルーサーマル"の主題歌&挿入歌を収録した、2022年第1弾シングルだ。主題歌「Blue Thermal」は、まさに青く澄み切る大空が似合うブラス・バンドに乗せて、痛みを抱えながらも夢に向かう熱い想いが綴られる。"パーフェクトブルー"、"雲"、"気流"などアニメの世界観に寄り添ったワードを散りばめながら、そこにはバンド自身の在り方もくっきりと重なる。一方、挿入歌「Beautiful Bird」はホーリーなハーモニーで紡ぐ静謐なバラード。"君"の存在が"僕"を未来へと導くという歌詞は、これまでSHE'Sが多くの楽曲で歌ってきたテーマにも通じる。初の武道館ワンマンを経たSHE'Sの11周年の幕開けとなる1枚。
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4thアルバム『Tragicomedy』に引き続き、傑作アルバムの到着だ。バンドの10年が詰まった「追い風」を発端に彩り豊かに展開する構成は、未来への広がりを感じさせるもの。ジャンルレスでいたいという考えを持つバンドだけに幅広いアプローチには納得だが、加えて、どんな人も完璧じゃない、しかしそれこそが個性だと謳う「Imperfect」でゴスペルを取り入れるなど、音と言葉がさらに密接な関係を結ぶようになった。ひとりでいる人に語り掛けるようなピアノの独奏から始まり、誰しもが抱える欠落を肯定する今作のタイトルは、"Amulet"=お守り。海外インディー・ポップ・シーンと共鳴する軽やかな音像、真摯な目線から綴られた言葉は、日々の灯となってくれる。
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"生きていく者だけに吹く 追い風"。そんな力強いフレーズが、痛みを背負いながらも懸命に生きる私たちの背中を押すSHE'Sのニュー・シングル。寂寥感を孕んだエレクトロな音の粒が、やがて華やかに開放されていく美しいサウンド・アプローチは、今年結成10周年を迎えるバンドがこれまで積み重ねてきたものが凝縮された1曲になった。ドラマ"青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-"の主題歌の書き下ろしだが、"いかに生きるか"を主軸にしたテーマはバンドとの親和性も高い。カップリングの新機軸となった味わい深いバラード「Mirai」、ステイホーム期間にファンと共に完成させたカントリー・ソング「In Your Room」も含めて、先の見えない未来に優しく光を照らすような3曲。
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ソングライターの井上竜馬(Key/Gt/Vo)が"心"そのものと向き合うなかで生まれた楽曲を収録し、"悲喜劇"の意味を持つタイトルを冠した4thアルバム。井上が直感的に制作したという楽曲たちは、これまでバンドが続けてきたジャンルレスなサウンド・アプローチにおける挑戦がさらに磨き上げた精鋭揃いだ。バンドの生演奏にプログラミングとストリングスを巧みに取り入れた楽曲や、ブラック・ミュージックの匂いをブレンドさせた楽曲などの2020年代的ミクスチャー・サウンド、トラックメーカー的アプローチなど自由でユーモアに富んだ音楽たちは、4人の感情や人間性と深く密接な関係にある。キャリアを重ねたことで得た成熟と純粋さを兼ね揃えた作品。来年の10周年を目前に、バンドの未来を切り開く気概に溢れている。
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3ヶ月連続リリースのデジタル・シングル3曲を含む全4曲収録のシングル。ヴァイオリン、ギター、リズムで作り出すラテン感のあるサウンドが特徴的な挑戦性の高い「Masquerade」、SHE'Sの真骨頂とも言うべきピアノ・ロックの中でもぬくもりと優しさに満ちた「Letter」、力強さと気品を持ち合わせたスケール感のあるエモーショナル・ナンバー「Your Song」と、SHE'Sがこれまで追求してきた大きな3つの特色を明確に示した楽曲が揃っている。3曲共通して生き方や人との向き合い方にフォーカスしたメッセージ性の強い言葉が並んだことで、より歌の力も増した。バンドの核心を感じられる組曲的作品に仕上がっている。
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2枚のシングルを経て完成させた"Now(=今)"と"Then(=あの時)"がテーマの3rdフル・アルバム。本作では、これまで彼らがチャレンジしてきたバラエティ豊かなピアノ・ロックに加え、「歓びの陽」とは異なる解釈でプログラミングやエレクトロ・テイストを取り入れた楽曲、アコギのリフを効果的に生かしたソウル・ナンバー、アルバム・アレンジが施された「月は美しく」など、様々なジャンルが持つポップネスを十二分に生かしている。インディーズ時代からスケールの大きな音作りを続け、メジャー・デビュー以降は様々な音楽性を積極的に取り入れながら、自分たちの音楽の可能性を広げ続けてきたSHE'Sの、ひとつの金字塔的作品と言っていい。より高みを目指す4人の健やかな音色を体感できる。
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約3ヶ月ぶりにリリースされるシングルは、挑戦的な楽曲が多かった前作と打って変わり、バンドの原点をパワーアップさせた3曲が揃った。表題曲はバンドの特色のひとつであるピアノとストリングスが描く華やかさと、バンドの力強さを掛け合わせた、ピアノ・ロックの進化版。サビのメッセージや湧き上がる想いを丁寧にサウンドにも落とし込んでいる。c/wの「Come Back」はソングライター、井上竜馬(Key/Gt/Vo)の憧れの存在であるELLEGARDENへのリスペクトを込めた楽曲で、「月は美しく」はジャズ・テイストのアプローチが新しい。3曲に共通しているのは堂々としつつもどこか肩の力が抜けたような軽やかさがあること。聴いたあとに残る幸福感もまた、「The Everglow」が歌う"永遠の輝き"なのかもしれない。
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SHE'S
歓びの陽
昨年、フル・アルバム2枚とミニ・アルバム1枚という脅威のペースでリリースを続けてきたSHE'Sが、約2年ぶりとなるシングルを完成。agehaspringsの百田留衣がプロデュースしたTrack.1は、打ち込みのトラックを大胆に取り入れ、"哀しみも傷跡もそのままでいい、無駄じゃない"と過去を肯定したうえで寄り添ってくれる、大きな温もりが感じられる1曲だ。Track.2はTVアニメ"アンゴルモア元寇合戦記"のEDテーマ。闘志を奮い立たせるような力強いビートとドラマチックなストリングスから幕を開け、サビでパッと開けるような明るいコード感が気持ちいい。Track.3は井上竜馬の歌唱とピアノ、そしてコーラスのみというシンプルな構成。優しくしなやかでのびのびとした歌声が、心地いい余韻を残してくれる。
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SHE'S
Wandering
今年2作目となるメジャー2ndフル・アルバムは、初の外部プロデューサーとして片寄明人(GREAT3/Vo/Gt)を、ゲスト・ミュージシャンとしてストリングス隊とホーン隊を招くだけでなく、マスタリングはBob DylanやBon Iverなどを手掛け、グラミー賞ノミネート経験もあるエンジニア Greg Calbiが担当という、ロック且つスタイリッシュな音像を作るには完璧と言っていいほどの布陣で制作された。もともと大きなスケールを持つ楽曲を作ることに長けているバンドだが、今回は勢いで突き抜けると言うよりはどっしりと構えたうえでパワーを発揮するサウンドスケープが際立つ。歌詞世界も過去2作と比較しても格段に視野が広がった。特に最後を飾る「Home」は、追い風が吹く彼らに最適な華やかさだ。
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SHE'S
Awakening
1stフル・アルバム『プルーストと花束』から5ヶ月という驚異のスピードでリリースされる7曲入りミニ・アルバム。初夏を意識して作ったという楽曲はどれも軽快なニュアンスが強く、太陽の光が似合うものが多い。エモーショナルな音像に横ノリのリズムを入れた楽曲や、軽やかなミディアム・ナンバーなどからもバンドも新しい季節を迎えていることがわかる。歌詞もTrack.2を筆頭に強い決意に加え大いなる自信が刻まれ、もっと前に進んでいくという意志がこれまで以上に強く表れたものになった。今回は珍しくコンセプトありきでの制作ではなかったらしいが、だからこそワンマン・ツアーで確かな手応えを感じ、上京し環境が変化したというリアルタイムのSHE'Sが太い軸になったアルバムを作ることができたのだろう。
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SHE'S
プルーストと花束
バンド史上初のフル・アルバム。タイトルにある"プルースト"とは"プルースト効果"のことで、とあるきっかけで無意識下の記憶が蘇ることを言う。コンセプチュアルな制作を得意とするソングライター/フロントマンの井上竜馬(Key/Gt/Vo)だが、今作はメロディの断片や歌詞の中の一言に導かれながら、記憶の中に眠っていた光景を蘇らせてひとつの曲にする、という試みの制作だったそうだ。シンセ、ホーンなどを入れた楽曲も見られ、ポップ・パンク×ピアノ・ロックという音楽性はさらに拡張。もちろん元来の音楽性を追求した楽曲もあり、Track.8はポジティヴなメッセージを堂々とまっすぐ届け、Track.10は美しく雄大な音像が眩しい。すべての曲にもっと大きく羽ばたこうとする意志を感じさせる。
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SHE'S
Tonight / Stars
6月にメジャー・デビューした大阪の4人組ピアノ・ロック・バンドが早くも2ndシングルをリリース。Track.1は"どれだけつらい過去も悲しい現実も、生きていないとそれを癒す歓びは待っていない。小さくなってしまったロウソクの灯りをどうか今夜も灯したままでいてほしい"という願いが宿る、静かでありながら確かな強さやポジティヴィティを感じさせるミディアム・ナンバー。煌びやかなピアノも夜空を彷彿とさせる。Track.2は初の書き下ろしドラマ主題歌。メジャー・デビューをしてさらなる高みを果敢に目指すバンドの姿が重なる、まさしくピアノ・ロック・バンドを体現する楽曲だ。ハードな側面を見せるTrack.3もピアノだけでなくオルガンを用いるなど、音色豊かで力強い。
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SHE'S
Morning Glow
メンバー全員1992年生まれの次世代ピアノ・ロック・バンド、SHE'Sのメジャー・デビュー・シングル。コンセプトは"過去、現在、未来"で、実体験をもとに綴られている。彼らのピアノ・ロックはポップ・パンクの音像とキャッチーなメロディと、クラシック・ピアノの融合。Track.1はそこに優雅なストリングスが入り、雄大な日の出のイメージを豊かに描いている。詞世界に重きを置いた音作りゆえに、すべての曲に情景が浮かび、ドラマ性も高い。海外のボーイズ・グループを彷彿とさせるTrack.2は都会的なポップスで、未来へ向かって飛び込んでいくという気持ちを歌ったTrack.3はライヴ映えすること間違いなしのパンク・ナンバー。これまでのリスナーも新しいリスナーも虜にする新章のプロローグだ。
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SHE'S
She'll be fine
井上竜馬(Key/Vo)をセンターに据えた大阪出身のピアノ・ロック・バンド、SHE'Sの3rdミニ・アルバム。エッジの効いたロック・サウンドとピアノの繊細且つ煌びやかな音色、そしてそれぞれの高い演奏力と表現力が相まって、壮大なファンタジーの幕開けのようなワクワク感を与えてくれる今作。Track.1の重厚なストリングスとメロディのキャッチ―さや、Track.3の増幅していくバンドのグルーヴ感、Track.6の突き抜けるサビの痛快さなど、サウンド面だけでも伝えたいことは山ほどあるが、何といってもTrack.7に込められた強い想いを感じで欲しい。彼らがここまで辿り着いた理由、そして彼らがこれからも奏でる理由。ひと言ひと言を大切に歌う井上の真っ直ぐな思いは、届かないわけがない。間違いなく次世代のシーンを担う彼らの渾身の1枚は、一聴の価値あり。
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saji(ex-phatmans after school)
ツバサ
phatmans after schoolというバンド名をsajiに改めて、再び歩き始めた彼らの改名後、初の音源。表題曲の「ツバサ」は、TVアニメ"あひるの空"のエンディング・テーマに起用されているが、ヴォーカルでありメイン・コンポーザーのヨシダがかねてより愛読していた作品なこともあり、原作の世界観をしっかりと楽曲に落とし込んでいる。それだけでなく、澄み切った青空が目に浮かぶ爽快感溢れるバンド・サウンドであり、そこに綴られている言葉は、新たな名前で走り出した今の彼らの姿を彷彿とさせるものに。また、甘酸っぱさのある「猫と花火」も、ビッグ・バンドな「まだ何者でもない君へ」も"夢"をテーマに掲げていて、心機一転の第一声に相応しい内容に仕上がっている。
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phatmans after school
キミノバアイハ
直近の2枚のミニ・アルバムではアグレッシヴな作品を立て続けにリリースしてきたphatmans after schoolだったが、この最新アルバム『キミノバアイハ』はバンドの中核にある"歌"の魅力をフィーチャーした原点回帰の1枚となった。タイトルには2011年にリリースされたメジャー・デビュー作『ボクノバアイハ』のアンサーとしての意味合いを持たせているとおり、出会いや別れを繰り返す活動のなかで、変わってゆくこと、変わらないことのすべてを肯定するような曲たちが力強く鳴らされている。中でも、8曲目に収録された温かいミディアム・テンポ「kakemeguru」の"怖がらないで 一歩ずつ/君らしくいけばいいさ"というメッセージは、いまの彼らだからこそ歌える優しいエール・ソングだ。
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phatmans after school
アンクロニクル
陽気なブラスがハピネスを運んでくる、ファンファーレのような「シリアル」で幕開ける2ndアルバム。"生命(僕たち)の年代記"を意味する造語をタイトルに掲げた今作のテーマは"原点回帰"で、住んでいる場所や年齢が違ってもみんな同じように抱える、同時代を生きる人々の葛藤や孤独など複雑な思いを繋ぐべく描かれた架空の物語が並ぶ。くよくよ悩む人を鼓舞するように、モヤモヤを蹴散らしていくパーティー・ナンバー「party holic」、ユーロビートを取り入れながら"倫理と本能の葛藤"というリアルな視点を綴った「FR/DAY NIGHT」、強力なフックを持った歌メロで主人公の心の声を叫ぶ「正常性バイアス」など、濃い味つけの楽曲が出し惜しみなく収められている。全13曲をキャッチーに仕上げるメロディ・センスもさすが。
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phatmans after school
FR/DAY NIGHT/7日間.
2015年第1弾リリースとなる両A面シングル。「FR/DANIGHT」はユーロビートを軸にしたアップテンポのダンス・チューン。対して「7日間.」はアコースティック・ギターの音が効いたあたたかなミディアム・ナンバーだ。ライヴで観客が盛り上がる姿が目に浮かぶ前者と、聴き手ひとりひとりに寄り添うような後者。どちらも誰かに受け取られることを考えて作られた、表現のベクトルが外側を向いているからこそ生まれたであろう楽曲。にも関わらず、共通して人間の内側の葛藤――理性と本能、理想と現実の狭間で揺れる姿――を描いているのが面白い。秋には全国ツアー、さらに多くの人と対面することとなる日々のあとにはどんな曲が生まれるのだろうか。気が早いがそれも気になるところ。
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phatmans after school
セカイノコトハ
2014年春、拠点を北海道から東京へ移し本格的にライヴを始動させた4ピース、phatmans after school。ミニ・アルバムやシングルで、キャッチーでキラキラとしたギター・サウンドを披露してきた彼らの1stアルバムは、四つ打ちチューン、ギターとシンセの音のシャワーが歌に降り注ぐフレッシュな曲から、打ち込み、じっくりと歌を聴かせる曲などやりたいことを詰め込んだエネルギッシュな1枚。そんな1stアルバムらしい天真爛漫なパワーがあるが、1曲1曲を紐解くと、細やかなディテールが積み重ねられたアレンジの妙がある。各々好みの音楽が幅広く、またJ-POPを聴きながら育ってきたゆえの、心地よい歌心とつい癖になって繰り返してしまうフックが織り込まれている。確信犯的なのか、天然なのか、これからが楽しみになる。
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phatmans after school
メディアリテラシー
札幌在住、平均21歳の4人組バンドphatmans after school。2011年秋にメジャー・デビュー。メジャー1stミニ・アルバム『ボクノバアイハ』以来約1年5ヶ月振りのリリースとなる。若者特有の衝動と物憂げな空気が交錯するギター・ロック・ナンバー「メディアリテラシー」と、ティーンのモラトリアムな心情を綴ったキャッチーな「1○歳」、どちらも共通して歌われているのは"夢"だ。何が正しいかもわからなくなる現代。"それでも夢を追いたい"という彼らの純粋な思いはリスナーの心にまっすぐ飛び込んでくるだろう。インターネットを拠点に活動するy0c1eによる「無重力少年」のリミックスは、楽曲のサイバー感と憂いを抽出したソリッドなアレンジになっているのでこちらも必聴だ。
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ココロオークション
CANVAS
関西を中心に活動している正統派の歌ものバンド、ココロオークションが遂にメジャー・デビュー。嬉しさの反面、怖さもあるけど"終わりの来ない旅を続けよう"と突き進むことを決めたTrack.1からスタートする今作。"はじまりのうた"を奏でるTrack.2や、夢の世界へ連れて行ってほしいと歌うTrack.3、そして、自分が選んだ道は間違いないんだと訴えるTrack.5など全体を通して、メジャー・デビューをきっかけにバンドが決意した思いを表しているように聴こえる。プロデューサーにBUMP OF CHICKENやTRICERATOPSなどを手掛けた木崎賢治を迎え制作されたメジャー1作目。今後の活躍が楽しみで仕方がない。
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ココロオークション
Relight
今年5月にリリースされた生産限定盤シングルが好評の、大阪発の3人組。"Relight(=再び点火する)"というタイトルの通り、光を思わせるワードや、それを表現するに不可欠な闇を表す言葉が歌詞に並び、サウンドもまた楽曲ごとにタイプの違う輝きを表現している。ほのかにハスキーな粟子真行(Vo/Gt)のヴォーカルもより強いパワーを放つようになった。それは歌い方のギミックの影響もあるが、自身のメンタリティも大きい。彼は今作で"なぜ音楽を続けているのかがわかった"という。彼の歌は人を求め、そのために人の心に寄り添おうと努める。なくしてから大切さに気づくという後悔が、彼をそこに動かしているのだ。耳馴染みのいいバラエティに富んだ音楽。ここに圧倒的な個性が加わればさらに強くなる。
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チェコノーリパブリック×SKY-HI
タイムトラベリング
チェコとSKY-HIのコライトには驚いたと同時に、チェコの武井優心(Vo/Ba)も日高光啓(SKY-HI)も根っこに常識をひっくり返すパンク魂を持ち、ワールド・ピースを願う部分で、出会うべくして出会った印象を持った。そして肝心の楽曲は駆け出したくなるような日常のアンセムに。異種混交感というより、エバーグリーンなポップ・チューンなのが頼もしい。カップリングはメロディの良さ、メッセージの普遍性を再認識させるセルフ・カバー。ピアノとアコギのシンプルなアレンジがタカハシマイ(Cho/Syn/Gt/Per)の歌を際立たせる「For You(AcousticArrangement)」、盟友が参加した「MUSIC(チェコと12人の仲間たち)」も曲と存在の愛され度合いに心が震える。
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チェコノーリパブリック
DREAMS
躍動するパーカッション、選び抜かれたシンセやシーケンス。圧倒的な抜けの良さと同時にチェコらしい不敵感漂う「Dream Beach Sunset」、近いサウンド・プロダクションの「BB」、武井のトーキング風ヴォーカルが聴ける「Dreamer」。いつもどおりロックのヒストリカルな部分をベースに真新しいアンサンブルを聴かせる八木類作品「ゴッホとジョン」、待望の初収録となるタカハシマイ作詞作曲の「Shiny Girl」は、彼女が内在させている牧歌的な部分とスペイシーな部分が融合したメロディ・ラインがユニーク。波の音から始まる青い恋をイメージさせるチェコらしい甘酸っぱい「Blue Holiday」もパーカッションがこれまでにない聴感を生んでいて新鮮。白飛びするような夏感の眩しさ、生命力、儚さが詰まっている。
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チェコノーリパブリック
Forever Dreaming
躍動感のあるシンセのメロディとアコースティック・ギターのカッティング、そして"これぞチェコ!"なシンガロングがイントロから上昇感たっぷりなタイトル・チューン「Forever Dreaming」。サウンド的にはこれまでの延長線上にありつつ、"まだ終わりたくない やり遂げたいよ"、"手に入れたいんだ あの日見た夢を"という、武井優心にしては珍しく熱い歌詞にも注目。カップリングには八木類らしいスラップスティックな「24 Factory」と、タイトル・チューンの英語詞バージョンを収録。そして2種類あるうちの"チェコVer."盤には名曲「ダイナソー」のエレクトロニックなバージョンを、"ドラゴンボール超Ver."には懐かしい「ロマンティックあげるよ」のカバーをそれぞれ収録している。
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チェコノーリパブリック
Santa Fe
武井優心という人は美メロ・メーカーでありサウンド・プロダクションを見通せるセンスとを持つとともに、世界に対する諦念とそれでも何かに美を見出そうとする心意気がおしゃれなサウンドからこぼれ落ちるところがあると思う。それをアンビバレンツで歪なものじゃなく鳴らすことに最も成功したのがこの『Santa Fe』なんじゃないだろうか。選りすぐりのシンセ・サウンドだからこそ感じることのできる切なさと上昇感の同居はTrack.1の「Firework」で冒頭からダイレクトに刺さり、神聖さとニッチさが相まった鍵盤のサウンドと匿名的なヴォーカル処理が印象的なTrack.4「Beautiful Days」、おとぎ話とサイケデリアが大展開するTrack.7「クワーキーワールド」など、稀有な体験ができる逸品。
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チェコノーリパブリック
For You
チェンバー・ポップとゲーム・ミュージック風のシンセが融合したイントロからウキウキさせて、跳ねるビートとホーンがミュージカルを思わせるアレンジでさらに開放的な気持ちを誘う「For You」。透明で突き抜けるタカハシマイのヴォーカルのいいところも満載されている。が、よくよく聴くと"美しい日々は過去のもの"......と最後の最後で分かる歌詞の構造は、武井優心の作家性か。カップリングはかのSEX PISTOLSの「ANARCHY IN THE U.K.」をチェコらしいエッジの効いたシンセ・ポップに大幅アレンジ。八木もタカハシも相当、好き放題のシンセを乗せているのが痛快だ。原曲を知らない人は、この曲そのもののかっこよさを知るのにもいい機会かも。彼らのセンスが凝縮されたシングルに仕上がっている。
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チェコノーリパブリック
Oh Yeah!!!!!!!
イントロのシンセ・ベースに一瞬、ドラゴンボールの登場感とのシンクロを聴きとるのは聴き手の勝手な想像か。そこから一気に上昇するような歌メロ、シンセ、リズムが一体になるカタルシス、お得意のリズム・チェンジ、"Yeah!"の掛け声がこれまで以上にインディー・ロック感を漂わせる痛快なタイトル・チューン。リヴィングのキッズ(文字通りの子どもという意味)のドラゴンボール原体験になるかと思うと、ますます痛快だ。カップリングの「Come On」は軽快で隙間も多い音像に笑いながらエゲつない一言を投入。八木類作詞作曲の「Sunday Juggler」は彼らしい諧謔性を牧歌的な曲調に乗せたスパイシーな1曲。ラストの「Yeah Oh!!!!!!!」はライヴの入場SEとしてファンにはおなじみの小品。短いが切なくも美しい。
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チェコノーリパブリック
MANTLE
ファストなビートにキラキラしたメロディやコーラス、だけどパレードの中にいて虚無を感じてるようなオープニングの「Amazing Parade」からして、音楽的にもメッセージ的にも今のチェコはポップでエクストリーム。打ち込みの気だるいダンス・チューン「Clap Your Hands」はUSインディーと昨今のディスコ・ファンクを彼ら流に消化した印象だし、コラージュ的に配置されるタカハシマイの声も魅力的。また、THE STROKES meets MGMTなセンス溢れる「Hello, My Friend Sophie」、アルバム全体のテーマというか、武井優心の本音が窺える「Changing My Life」など、どこを切っても新しい音楽の海に勇敢に漕ぎ出すこのバンドの心意気が鳴っている。楽しさの中に彼らの切実な思いを見出した時、このアルバムは身近なものになる。
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チェコノーリパブリック
Dinosaur
昨年10月にリリースされた1stフル・アルバムも好評なCzecho No Republicから早くも届いた2ndミニ・アルバム。The Mirrazのオープニング・アクトに抜擢されたことで注目を集めた彼らだが、遊び心たっぷりなポップなサウンドと同世代のUSインディとも共振するポジティヴなヴァイブに溢れた音楽性で人気を集めている。今作も勢いそのままにエネルギッシュでキュートな作品だ。シンセが印象的でパワフルなタイトル・トラック「ダイナソー」から楽曲も粒揃い。多彩なリズムの変化もさることながら、巧みなコーラス・ワーク、そしてソングライティングもさらに磨きがかかった印象。より多くの音楽ファンに聴いてもらいたい作品だ。
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空想委員会
世渡り下手の愛し方
2年間の活動休止を経て、21年4月、活動を再開した空想委員会が『恋愛下手の作り方』で全国デビューしてから10周年という節目にリリースした、全12曲書き下ろしのフル・アルバム。日々の暮らしで感じる生きづらさと、そこに潜む希望の欠片を探す3人組ギター・ロック・バンドと自ら掲げる彼らがここで歌うのは、自分たちも含む"世渡り下手"への愛......ではなく、叱咤激励だ。彼らには不似合いかもしれない叱咤激励という言葉を使いたくなるほど力強くなったメッセージと、ファンクを含めダンサブルなリズムを強化したアレンジに、バンドの成長を感じずにいられない。かつて身上としていた恋愛下手をテーマにした曲は、Track.10「ラブソングゾンビ」のみ。そんなところからも再出発にかけるバンドの思いが窺える。
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三浦隆一
空集合
空想委員会が活動休止をして2年、三浦隆一(Vo/Gt)のソロ・デビュー・アルバムが完成。もともとは昨年春の発売を予定していたが、コロナ禍や三浦の体調不良もあり、1年の時を経ての発売となる。Kenji Smith(Gt/ex-ウソツキ)、出口博之(Ba/モノブライト)、渡辺拓郎(Dr/藍坊主)といった盟友と作り上げたのは、三浦の心の内に触れる作品だ。ソロという新たな道を歩んでいく、そこでふと襲われる不安や正解を求める焦燥感は、自分の足元が不安になる出来事が多かった昨今の日常にも重なりそう。その音楽は、どうにもならない悩ましさを抱えながらも、一歩を踏み出す確かで軽やかな躍動がある。彼が自身に問い掛け、自分の声に耳を傾け続け聞こえてきたこの音楽は、誰かにとっての道しるべになりそうだ。
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空想委員会
何色の何
1年3ヶ月ぶりの新作は、クラウドファンディングにより制作された、フロントマン 三浦隆一(Vo/Gt)が原作を手掛ける同名アニメと連動したEP。これまで三浦の実体験や心情に焦点を当てた楽曲制作を行ってきた彼らだが、今作では登場人物ふたりのそれぞれからの視点で綴られたもの、三浦から主人公に向けて宛てられたものと、歌詞表現の幅が広がった。リスナーからメッセージを募って制作されたという「エール」、アニメの主題歌であり歌を最大限に生かしたサウンドスケープの「マイヒーロー」など、着火性は高くないかもしれないが一過性ではない、バンドの核心となるエモーショナルな温度感をじっくりと伝える楽曲がひと際存在感を放つ。楽器隊のシンプルでありながら細やかな音使いも聴きどころだ。
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空想委員会
デフォルメの青写真
"作った人間によってデフォルメされた音楽を、聴き手にも好きなようにデフォルメしてほしい"という意味のアルバム・タイトルを冠した約1年2ヶ月ぶりのフル・アルバム。これまでの人生経験を綴った三浦隆一(Vo/Gt)の歌詞も題材が多岐に渡り、岡田典之(Ba)も自らが作曲した楽曲はアレンジのイニシアチブを取るようになるなど、これまでで最もそれぞれのメンバーのカラーが出た作品になった。その結果3人の化学反応の生みだす調和によって、バンドとしての鋭さや楽曲のバリエーションが生まれている。佐々木直也(Gt)による全収録楽曲のフレーズを織り交ぜたインスト・ナンバーももちろん収録。3rdフル・アルバムが原点も成長も存分に含んだ作品になったことは、バンドにとっても大きな自信になったのでは。
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空想委員会
色恋沙汰の音沙汰
TVアニメEDテーマや映画の主題歌などを収録した両A面シングルから約8ヶ月ぶりのリリースとなるEPは、初期空想委員会の代名詞ともいえる恋愛ソングを主軸にした作品。とはいえリスナーに懐古の念を起こさせないのは、アレンジや歌詞に新しいアプローチがあるからだ。特にアレンジは目覚ましく、通常盤に収録されている「波動砲ガールフレンド」のアコースティック・バージョンは、アップ・テンポの原曲を落ち着いたタッチでリアレンジ。テンポ・チェンジを用いたTrack.1、曲名のとおりトランス要素を取り込んだTrack.2を筆頭に、らしさを残しつつ斬新な印象を与える。非常に理想的なアップデートでは。ラストに"その先"を匂わせる歌詞も、タイトでクールな音のなかで力強く響く。
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空想委員会
ダウトの行進
世の中には嘘が多く存在する。それは自分自身を優位に立たせるものであったり、自己防衛のものであることも多く、穿った見方をしてしまうこともある。だが音楽を含めた芸術に関して嘘は天敵である。空想委員会は、そういった狡猾なことは一切せず、努力を欠かさず生身の自分自身で音楽を作り鳴らすバンドだ。フロントマンの三浦隆一の人間性はメジャー・デビュー以降さらに楽曲に明け透けになり、心境の変化が新たな色彩をもたらす。楽器隊もそこに突き動かされるように、楽曲の奥行きを作るため以前以上に細部まで音色を追求。これまでの持ち味をブラッシュアップさせながら、新たなチャレンジを要所要所で取り込んだ精度の高い楽曲が揃っている。彼らの音楽愛と好奇心はこれからも我々の心を刺激し続けるだろう。
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空想委員会
僕が雪を嫌うわけ/私が雪を待つ理由
男性目線と女性目線の2曲で、ひとつの冬の恋の終わりを描くことをコンセプトに制作された完全限定生産の両A面シングル。Track.1はシンプルで疾走感のあるギター・ロック。冬の冷たい空気の中を疾走していくような力強さもあれば、触れたらすぐに溶けてしまう雪のような繊細さや感傷性も持ち合わせた空想委員会らしい楽曲だ。Track.2は舞い落ちる可憐な雪を彷彿とさせる、ストリングスを用いた軽やかなナンバー。"終わった恋の続きを始められたら"と願う女性の切なくささやかな希望が綴られた歌詞とサウンドの親和性が、冬が終わると春が来ることを伝えてくれるようだ。2015年は制作面でも活動面でも彼らにとって大きな過渡期と言っていい。来年の活躍に期待を寄せざるを得ない完成度である。
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空想委員会
GPS
初めて"自分"と"あなた"のことを歌いたくて曲を書いた――三浦隆一(Vo/Gt)に訪れた転機(※詳細はインタビュー記事にて)から生まれたこのミニ・アルバムは、間違いなくバンドの、そして三浦の新境地だ。元来、彼は自分の心情を嘘偽りなく歌詞にしているが、今作にはその心境の変化や新たな意志が克明に記されている。聴き手を誘うTrack.1、自分自身の変化とメッセージを投げかけるTrack.2、作曲者である岡田典之(Ba)を詞に投影したTrack.7など、これまでにはなかったカラフルな表現が揃った。歌の芯が強くなった分、佐々木直也(Gt)の作る遊び心のあるアレンジやギター・ソロもより際立ち、3人のプレイヤーとしての個性が見られるところも面白い。空想委員会、劇的革命の真っ最中だ。
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空想委員会
空想片恋枕草子
精力的な活動を行い続ける空想委員会からわずか約3ヶ月で届けられた新作は、枕草子をモチーフに、四季折々の恋模様を描いた4曲入りEP。「春恋、覚醒」は5拍子の上に、6拍子のギター・リフが乗るイントロから、疾走感のあるセクションへと移る様が桜吹雪のように鮮やかで、バンドに新たなモードをもたらす攻勢的な楽曲。メジャー・デビュー以降、サウンドのギミックがさらに洗練されており、よりロック・バンドとしての腕を強化する意思表示と言ってもいい。男子からの共感性抜群であろう生々しい歌詞の描写とダンス・ビートのコントラストもクールな「作戦コード:夏祭り」、夕日に染まる教室が浮かぶ穏やかな「秋暮れタイムカプセル」、現在の空想委員会の原点である「マフラー少女」と、4曲それぞれ異なった趣を楽しめる。
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空想委員会
純愛、故に性悪説
バンドの中心人物である三浦隆一は不思議な人だ。冷静で淡々としつつも人当たりは良いし、よく笑うしジョークも言う。だが心の奥底に何か大きなものを抱えているような、深い目をしている。そんな彼の内面が出た"THE三浦隆一"とも言えるのが今回のメジャー1stシングル。表題曲は自分を振った相手を恨む気持ちを歌ったもので、本人は"自分の鬱憤晴らしだ"と言っていた。だがその中でも自然とリスナーを導いたり夢やエンタテインメント性を与える楽曲に昇華されているところは、バンド・メンバーが元来持つ人間力が大きい。三浦が自分をさらけ出した楽曲に対して、ふたりは"歌を聴かせたい"と真摯に向き合い、楽曲制作を経て彼らはさらに絆を深めた。この先バンドの自由度がさらに広がることを予感させる。
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空想委員会
種の起源
淡々としているのか、それとも情熱的なのか。突き飛ばしても倒れない、そんな強さを持つ声が紡ぐのは、恋愛にまつわる不平不満と恐怖に、憧れ――。インディーズ時代から学校と紐付けされたユーモア溢れる活動と、完成度の高い楽曲で10代のリスナーを中心に話題を集めていた空想委員会がメジャー・デビューを果たす。正統派ギター・ロックとひねくれた恋愛観、遠くから憧れの人を見つめる切なくひとりぼっちの音楽。そこに美しく華やかなギターの音色と安定感のあるベースが加わることで、委員長・三浦隆一ひとりだけの世界だったものがドラマティックに変貌し、空想委員会の世界となる。ひとつひとつの音があたたかいのは、このCDの向こうにいるリスナーへ宛てる想いだろう。そう、彼らの音楽は優しいのだ。
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空想委員会
空の罠(下)
皆様は雨というものにどのようなイメージをお持ちだろうか。濡れる、髪が広がる、傘が邪魔、頭痛に悩まされる......ネガティヴなことがたくさん思い浮かぶが、本当にそれだけ?少し見方を変えるといろんな世界が広がっているのでは? ――そんなことを教えてくれるのが、春にメジャー・デビューが決定している空想委員会の『空の罠』だ。2013年11月にライヴ会場限定でリリースした2nd EPの後編となる3rd EP。雨をコンセプトにした作品を作ることになった発端は、ライヴの日は大抵雨、ワンマン・ツアー初日に台風直撃等、雨バンドと称されることが多くなったからとのこと。そんな自虐を巧妙にエンタテインする手腕がニクい。ちょっぴり切ないムードの漂う音色と文学的な言葉遊びの罠にかかってみては。
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