Japanese
Skream!×MUSE音楽院公開講座
2016年11月号掲載
メンバー:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ベース) 笠井 快樹(ドラム)
インタビュアー:渡邉 徹也 Photo by ミクスケ
ロックに特化した音楽媒体"Skream!"が、各方面で活躍する音楽業界のプロを育成する"MUSE音楽院"とタッグを組み不定期開催する、Skream!×MUSE音楽院公開講座。今回は、全国47都道府県ツアーを1年間で2周するという前代未聞の経験を持つライヴ・バンド"鶴"をゲストに招き、公開インタビューを実施。その豊富な経験から、明日より使えるライヴでのノウハウ、アドバイス、エピソードなどを語ってもらった。
-今や全国47都道府県を2周した実績を持つライヴ・バンドになっていますが(※2015年3月~2016年2月まで"鶴94都道府県TOUR「Live&Soul」~もう、寂しい想いはさせたくない~"を開催した)、なぜこういうことに挑戦しようと思ったのでしょうか?
秋野:鶴はもともと、結成したときからライヴに重きを置いてたんですよ。音源を聴いてもらいたいっていうよりも、いいライヴがしたいとか、ライヴを観に来てもらいたいって気持ちでずっとやってきたので。最初のころからいろんな人に"(ライヴが)楽しい"って言ってもらえたこともあって、結構いろんなイベントに出てたんですよね。それでデビューして、そのあと独立して(※2013年に自主レーベル"Soul Mate Record"を立ち上げた)。その当時、すでに40くらいの都道府県には行ってたんです。残り7県くらい残してる状態だったので、最初は"じゃあ、行ったことない県ツアーでもやってみようか"って話になったんですよ。
-なるほど。今まで行ったことのないところでライヴをやろうと思ったわけですね。
秋野:それで、"そういうツアーも面白いね"って言ってたんですけど、"だったら47都道府県じゃないの?"って話になって。3年前に自主レーベルを始めてから、"何か面白いことないだろうか? 俺たちにとっても新鮮で、みんなにも面白いと思ってもらえることは何だろう?"って考えたときに、"じゃあ、今までやってないから、47都道府県ツアーをやってみようかな"って。でも、いろんなバンドのチラシで"47都道府県"って文字をよく見掛けてたから、"47都道府県って結構普通なんじゃないの?"ってなって、"どうせやるなら、もっと面白いもの、もっと面白いもの......"って考えていったら、"2周じゃない? これは誰もやってないでしょ!"って話に行き着いて(笑)。
-そうですね(笑)。聞いたことがないです。
秋野:さらに、"ただ2周やりますって告知じゃ面白くないから、行く先々で次のライヴを発表していこう"ってことになって。"結果、2周でした(笑)!"っていう茶番劇にしようっていう。そういうところから始まったんですけど、気づいたら、あっという間に2周終わってしまって。
神田:ちょうど1年かけて2周しましたね。
-まずブッキングからして大変だったんじゃないかと思うんですが、ツアーの準備期間はどれくらいだったんですか?
秋野:ツアーのスタートが3月だから、その前の年の秋にはブッキングを始めてましたね。予定を組まないといけないから、とりあえずライヴハウスを押さえるところからでした。
神田:10ヶ所くらいのツアーだったら、どこか1ヶ所くらい無茶な移動があってもなんとかなるんですけど、全都道府県回るとなると、ちょっとでも無駄があるといろんなところに影響してくるんで。それこそ、金銭的な話もそうですし。なので、本当に無駄のない行程を組みましたね。
秋野:それは、うちに敏腕マネージャーがいるからできたんですよね。もともと、僕らが結成してからすごくお世話になった新宿JAMというライヴハウスのブッキング・マンで、後に店長にまでなったんですけど。結成間もないころから、ずっと鶴を見てきてくれてる心強いマネージャーで、ライヴのスケジューリングもすごくしっかりやってくれて。
-そして実際にスタートして、2回に分けて合計1年間、さらに大変なことも多かったと思うんですが、一番印象に残っていることを、それぞれおうかがいしたいなと。
秋野:1回家を空けると帰らない日々が結構続いてたんで、2週間行って帰ってきて、ちょっと休んだら今度は3週間で、今度は1ヶ月ってやってたんですけど。さすがに1ヶ月近い旅は初めてだったので、きっと疲れるだろうと思ってやってたんですけど、意外と最後まで緊張の糸が途切れずにやれましたね。ただ、その旅の最後の最後は、全員ホントに最小限の動きしかしないっていう(笑)。もちろん、ステージ以外の場所ですよ。無駄な動きも無駄な会話も一切なくて。"みんな疲れ溜まってんだなー"って(笑)。
-なるほど、ストイックですね(笑)。
笠井:なんか、先輩バンドたちに"47都道府県やって、仲悪くなって解散すんなよ"って言われてたんですよ。
-ずっと一緒にいるから?
笠井:そうですね。その意味がちょっとわかったかなっていうか(笑)。ナーバスになる瞬間がちょいちょいあって。もちろんライヴや曲に関することなので、ぶつけていかなきゃいけないことなんですけど、それが連日続いたんです。特に僕は今回、言われるシーンが多かったので、結構しんどいツアーでした。何か良くないところがあって、自分でも直したいんですけど、もう次の日もライヴだから何も変えられないし、みたいな。で、また良くなかったら言われるっていうのが続いて。"なるほど。これ、解散しちゃう気持ちわかるな"って思ったんですけど、うちのバンドはもともと同級生なんで仲はいいんですよ。もしこれがちょっと仲悪いギスギスした感じのバンドでスタートしてたら、俺はたぶん辞めてたと思います(笑)。
秋野:ギスギスした状態でバンドはスタートしないと思うぞ(笑)。
一同:(笑)
神田:ツアーで印象に残ってること、ですよね? やっぱり、体調管理って大事じゃないですか。もうエンドレスなので、ちょっとでも崩すわけにはいかないんですよね。だから、そこは気を張っているんですが、やっぱり47都道府県2周目の中盤以降くらいですかね、気合とかで頑張ってても、"あれ、ちょっと身体だるいなー"とか"なんか熱っぽいな"ってことがあるんですよね。そういうときに乗り越える方法っていうか、秘訣みたいなものは、ステージに上がることですね。そうすると、治るんですよ。秘訣ではないですが(笑)。
一同:(笑)
神田:実際、体調を崩してた時期があったんですよ、後半に。でもライヴをやって、ホテルに戻るとちょっと良くなってるんですよね。なので、全力でライヴをして汗かいて、あったかくして寝る。これですね、秘訣は(笑)。ちょっと熱っぽいときのライヴって、若干意識が朦朧としてるところがあるんですけど、そのぶん邪念っていうか、今こう見られてるとか、ちょっと恥ずかしいとかっていうリミッターが全部外れるんですよ。だから、ライヴのあとに振り返ってみると、意外とその日をきっかけにひとつ殻を破れたりして。そういうことが僕は何回もあったから、良くはないんですけど、せっかく体調崩したんだったら何か持って帰ってこようかな、みたいな(笑)。
一同:(笑)