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INTERVIEW

Japanese

 

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Member:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ウキウキベース) 笠井“どん”快樹(ドラム)

Interviewer:岡本 貴之

ネット検索にかけると鳥のツルよりも上位に出てくるバンド、鶴。それもこれも結成以来ノンストップでバンドマン街道を走り抜けてきたからこそ。2018年にいよいよ結成15周年を迎える彼らは、その企画第1弾として、最新アルバム『僕ナリ』を2017年10月25日にリリース、そして"鶴 15th Anniversary 「好きなバンドが出来ました」 ~東西大感謝祭~"として、2018年3月31日にマイナビBLITZ赤坂、4月7日には大阪 心斎橋BIGCATにてワンマン・ライヴを行う。プロデューサーに磯貝サイモンを迎えた『僕ナリ』について、そしてワンマン・ライヴについて。また、2017年で閉店になる鶴と所縁のあるライヴハウス、新宿JAMについても語ってもらった。

-『僕ナリ』リリース後のリスナーからの反響はいかがですか?

秋野:反響は、いいですね! いろんな人に"すごくいいです"ってストレートに意見を貰っています。プロモーションで全国のラジオ局とかを回ったんですけど、以前から鶴を知っていてくれるパーソナリティの方や関係者の方たちにも、こっちから言う前に今回のコンセプトが伝わっているようなところがあって。実際自分らも力を抜いて作ることができた作品なんですけど、こちらから言うより先に"いつもより力が抜けて自然体ですね"って言われたりしたので、伝わっているんだなって思いました。

笠井:本当にメンバーそれぞれが自然体だし、秋野君の言葉がスルッと伝わってくるというか。このアルバムを10年前に出していたとしたら、説得力は半分くらいなんじゃないかと思うんですよ。今だから、この説得力で、脱力して自然にまっすぐに伝えられているんだなっていう感じがしますね。

神田:伝わっている気がしますね。やっぱり、聴いた印象は今までと違う感じに聴こえているんですかね?

-アルバム中盤くらいが特にすごく柔らかい感じを受けました。狙って作ったというよりも、今の鶴のモードがこういう感じなんだろうなっていう。

神田:みんなそういう感想を言ってくれるので、結構解釈が共通しているというか。なので、今回やりたかったことが伝わってるなと思います。

-そのやりたいことっていうのはどんなことだったんでしょう。

秋野:曲の作り方とかコンセプトっていうのはそんなに今までと変えてないんですけど、ここまで自主レーベルでセルフ・プロデュースでやってきたことで、ひとつの"鶴が鳴らす3ピースの音"は完成したかなっていう気がしていて。それと同時に自分たちの引き出しの限界というか、外側のものを取り入れないと俺たちはいつまでもここから出れないかもね、っていう思いもあったので、"風を吹かせてくれる人を入れよう"ということで第三者のプロデューサー(磯貝サイモン)を入れることにしたんです。何を目指すかというのは、最初は特に決めていなくて、サイモン君が鶴をどう料理してくれるかを楽しもうっていうモードで作品を作ったんですけど、その考え方ができたのは、自分たちで鶴っていうバンドをここまで作り上げてこれたからだと思っていて。若いときだったら完全に第三者の色に持っていかれちゃうところを、ここまでやってきたおかげで、誰が入ってきても鶴の色は持っていかれないっていう自信もあったので、結構任せましたね。

-サイモンさんとはこれまで交流があったんですか?

秋野:いや、全然なかったんですけど、僕らの『我がまま』(2012年リリースの3rdアルバム)をプロデュースしてくれた橋口(靖正)君がちょうど1年前に亡くなって、そのトリビュート・ライヴ(2017年4月21日に青山月見ル君想フで開催された"HGYM感謝祭 東京編~Hほんとに Gぐっちゃん Yやせたら Mもてたのに")でサイモン君と初めて会ったんです。お互い名前くらいは知ってた感じだったんですけど、ちょうど僕らも次のアルバムには誰か(プロデューサーを)入れたいっていう話をしていたときだったし、橋口君と生前に飲みに行ってたときに、"そのうちサイモン君紹介するから、いつか鶴とやってみたら"っていう話もしていたので、変なきっかけですけど、お願いすることにしたんです。これも橋口君が最後に繋いでくれたご縁かなって。

-プロデューサーとしての関わり方って人それぞれですけど、具体的にどんな関わり方だったのでしょうか。プレイヤーとしても参加しているんですか?

秋野:ほぼほぼプレイヤーとしては参加していなくて、アイディアマンというか、プリプロから一緒に入ってもらって、最初のワンコーラスしかないデモを聴いてそこから一緒に曲の展開を構築してもらう作業をしてもらったり、僕が作るのは歌とギターしか入っていないデモなので、例えばドラム・パターンは俺らだけだったら決まってきているんですが、今までやったことのないパターンにサイモン君がトライさせてくれたり。かなりいい風が吹きましたね。鶴としてまったくやったことがない空気ではないんだけど、"そのコースまだ突いたことがないよね"っていうコースをちゃんと突いてくれて。ちゃんと鶴らしさを尊重してくれたのかなって思います。サイモン君はアレンジもすごいですけど、バンドがバンドとしてあるべき姿に重きを置いてくれた気がして。僕らもキャリアのあるバンドなので、"これはどこまでやっていい?"っていうのは、(サイモン君から)レコーディング中にちゃんと聞いてくれたんです。俺らはちゃんとライヴでやりたいので、あんまりゴージャスになりすぎても、っていうことは事前に伝えていたので、ギリギリのラインを突いてくれましたね。前作(2017年7月リリースのTOWER RECORDS限定EP『グッドデイ バッドデイ どんとこい』)や前々作(2016年リリースの8thアルバム『ニューカマー』)みたいに3人だけで全部作り上げるっていうところに執着はしていなかったので、必要な場所に必要なだけ、いらないところは3人だけっていう幅がすごく持てたかなと。

-特にこの曲はサイモンさんがいたからこそできた、という曲を挙げるとすると?

秋野:「低気圧ボーイ」、「バカな夢を見ようぜ」、「真夜中のベイベー」もそうだし......サイモン君は5曲プロデュースしてくれたんですけど、その全部で俺らじゃ成し得なかったことをやってくれていて。特に「低気圧ボーイ」は、歌い出しの"恋の始まりは"っていう部分は、僕がデモを持っていった時点だと歌い出しじゃなかったんですけど、サイモン君がパッと聴いて"ここから歌い出したら絶対カッコいいから"って歌い出しにしたんですよ。そういう判断がすごく効いてるなって思います。サビのドラム・パターンも、"ドンタンドンタン"っていうふうにシンプルで、俺らだったらこんなにシンプルなパターンをチョイスしないだろうなって。もうちょっと細々してディスコチックにしてしまいそうなところを、こういう大きなビートのノリにすることによって、この曲の勢いをつけるっていうか、いろんなことが理にかなった感じでやってくれたというか。アレンジャーってやっぱりすごいなって思いましたね。見るところや聴くところが違うなって。それを望んでプロデューサーを立てたので、結果すごくいいものになりました。

笠井:「バカな夢を見ようぜ」も、3ピースでやるんだったら自分なら絶対チョイスしないフレーズなんですよね。でも、結構目からウロコのフレーズをぶっこんできて、せっかくだからやってみようって叩いてみたらすごく面白くて。でも、未だにライヴでやると不思議な感覚なんですよね。自分の引き出しにないものだから。新しい風がブンブン吹きましたね。

秋野:俺らだったらきれいに波をつけてしまいそうな感じを、サイモン君のやり方は、少しずつはみ出させるような感じなんですよね。だから難しいことをやっていなくても、全員が立つんです。

神田:広げてくれた感じですね。磯貝サイモンという人間はアレンジャーだしプロデュースもやるし自分で曲も書くっていうタイプなんですけど、そういう人ってドラム、ベースが大好きな人が多いんですよ。レコーディングしながら、"もっとぶっ込んでいいよ"、とかもあったし、逆に"ここは全然何もしなくていいよ"みたいな、自分だったら振り切りもしないし、すごい引き算もしないさじ加減をドーンと広げてくれたというか。ベースって、自分の判断で歌に引っ掛かるようなフレーズを弾いたりするのはちょっと勇気がいるんですよね。"大丈夫かな、これ?"みたいな。ある程度支えないといけないというのもあるので。サイモン君は、そのチョイスの後押しをしてくれたというか。それと、自分では引き算をしているつもりだけど、やっぱりクセなのか、あとは何もしなさすぎる不安感で余計なことをしがちなんですけど、そういうときに"そこはひたすらルートをひたすら弾いてくれ"って言われたりとかして。でもそれも、その曲の中では意味があるっていうことを気づかせるために言ってくれた感じで。そうやって作ると、ライヴのときも迷いなくやれるんですよね。"ここはこれが一番カッコいいんだ"って思ってシンプルに弾いて、振り切るときは振り切るっていう。ライヴだと3人しかいないですけど、そういうツボを押さえて曲を作っておくことで、ライヴでも音の寂しさみたいな隙間はあるかもしれないけど結果、音楽としては寂しくないんですよ。