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LIVE REPORT

Japanese

Soul Mate Record fes 2016

Skream! マガジン 2016年12月号掲載

2016.11.09 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 岡本 貴之

いやぁ~楽しかった! この日のライヴを観たお客さんは、口を揃えてそう言いながら会場をあとにしたはず。なにしろバンド名だけでもおめでたい鶴が中心となったフェスである。楽しくないはずがないのはわかっていたが、こうもライヴ達者な3組が一堂に会すると、さすがにこちらの想像を超えたイベントになるものだ。11月9日の下北沢LIVEHOLICで Soul Mate Recordに所属するアーティスト3組、シンガロンパレード、市川セカイ、鶴が勢揃いしたレーベル初のイベント"Soul Mate Record fes 2016"は、アーティスト、ファンが"ソウルメイト"として一体になる最高に楽しいイベントとなった。

開場すると、フロアではいきなり鶴のベーシスト、神田雄一朗がDJでお出迎えのサプライズ。知らずに入ってきたファンは"いらっしゃい!"と声を掛けられてビックリしていた。鶴、シンガロンパレード、市川セカイのナンバーがプレイされるなか、お客さんが続々と入場してきた。開演時間になると、鶴の秋野 温(うたギター)がステージに上がり、"最後までワイワイ楽しんでくれー!"と"Soul Mate Record fes 2016"開催を宣言して、京都からやってきたシンガロンパレードを呼び込んだ。Stevie Wonderの「Sir Duke」をSEに登場したド派手な3人は、自らの出自をアピールすべく1曲目に「KYOTO-JIN PEOPLE!!」をチョイス。途中、みっちー(Vo/Gt)が"鶴につきまとって3年、レーベルメイトになれました"と憧れの先輩のレーベルに入れた喜びを告白してから、"京都人のご飯事情"をコール&レスポンスして東京のファンにレクチャー(?)。笑わせながらもその三声のコーラス・ワークはお見事。最新アルバム『素敵な不摂生』のタイトル曲「ステキな不摂生」ではラップ調のAメロからディスコ調のサビの展開に一気にノせられた。しかも途中から鶴の「ソウルメイト今夜」のサビを挟み込んでから「ステキな不摂生」のサビに戻るマッシュアップも聴かせて、"兄貴の曲で媚を売るぜ~"と叫んで観客爆笑。ファンキーな跳ねたリズムから地を這うようなボトムまで、多彩な晨(Ba/Cho)とジョン=エブリバディ(Dr/Cho)のリズム隊とみっちーのギターの瑞々しい音色、芯の強いヴォーカルが映え、曲ごとに趣向を凝らしたライヴで楽しませる。「路地裏サスペンス」を終えてステージを降りると秋野がステージに上がり、再びシンガロンパレードを呼び込む。すると、現れた3人はアフロ時代の鶴ルックでアンコールに登場(みっちーはアフロリーゼント)。となると、当然アンコールは鶴の曲しかない。「小さくても世界は変わってる」を見事な歌唱と演奏でカバーして生粋の鶴ファンぶりを見せ、鶴ファンからも手拍子が起きていた。

続いてひとりでステージに上がったのは市川セカイ。アコースティック・ギターによる弾き語りだ。おもむろに歌い出したのは、「I LOVE YOU」。その乾いたギターの音色と伸びやかな歌声に惹きつけられる観客たち。なんだかほっこりとあたたかい歌声だ。MCでは"Soul Mate Recordの清涼剤として2番目を任されました(笑)"と第一声。Soul Mate Recordへの感謝を伝え、レーベルから初めてリリースしたアルバム『ベルトコンベアから流れてくるもの』から表題曲を披露。シャリッとしたギターと、圧倒的な歌唱力にソロ・アーティストとしての芯の強さを垣間見せた。ここでパーカッションに、市川セカイBANDでドラムを叩いているサクラメリーメンの森西亮太がカホンで参加して、「あした予報」へ。歌う前にはサビに合わせたフリの指導あり。それにしても、シンガロンパレードも市川セカイも、みんなMCが上手い。歌、演奏の実力派なのはもちろんのことながら、観る者を惹きつけるライヴ力がSoul Mate Recordのアーティストの共通点だ。「今日はPARTY」で軽快にギターをストロークしながら観客をノせていく様子にも、連日ライヴを行っている市川ならではの卓越したステージングが感じられた。"Soul Mateファミリーになれたことが本当に嬉しい!"と市川。最後は、市川セカイBANDの1stシングル「月をめざして」を歌った。"カタンコトンカターン"のリフレインと明瞭に歌われる歌詞が胸に沁み込んで、歌の主人公の心情や、あたりの情景が浮かんでくるような1曲だった。一度ステージを降りると、サングラス姿の神田が市川と、さらに(鶴のドラマー)笠井快樹を呼び込みアンコールへ。笠井が作詞作曲した鶴の「てるてる坊主」を市川と笠井のふたりで演奏。穏やかながらピンと張り詰めた空気のなかで聴かせた歌は研ぎ澄まされた素晴らしいもので、この日ならではのスペシャルなコラボに大きな拍手が贈られていた。

フロア後方から観客をかき分けて大トリの鶴がステージに上がる。オープニング曲は「ラビゾバ」。Soul Mate Recordを立ち上げて初めてリリースしたアルバム『SOULMATE』からの曲だ。ちなみにこの日のセットリストはすべてSoul Mate Record立ち上げ後に発表された曲で統一されていた。どっしりしたリズムのこの曲から始まり、いつもより大人っぽいような(十分大人なのだが)、貫禄を感じさせるオープニングから、フロアいっぱいに鶴ポーズが広がるお馴染みの"こんばんは鶴です"へと進むいつもの流れへ。この日はレーベル祭りということもあり鶴のライヴ経験者が多いようで、最初から全員バッチリとポーズが揃っている。秋野も"今日はなんでもできそうだ"と、先ほどの市川セカイの「月をめざして」のコーラス"カタンコトンカターン"を取り入れると、早速反応する観客たち。会場のソウルメイト率100パーセントだ。続けて、寒空に合う切なさが沁みる1曲「夜道」から、久々に歌うという「足跡」へ。シンガロンパレードのコーラスとステージング、市川セカイの叙情的な歌の世界、両方を鶴に感じることができる。

自主レーベルを自分たちがやるとは思わなかった、という秋野。"人生何があるかわからない、でも少なくともみんなのおかげで楽しい方向に転がっている"とのMCから、熱いメッセージがこもったソウル・ナンバー「ローリングストーン」とパンキッシュな「乾杯」の演奏で会場は一体化。曲の最後は社長挨拶風に秋野が乾杯のご発声で締めくくって鶴はステージを降りたものの、入れ替わりで"Soul Mate Record社員一同です"とシンガロンパレード、アフロ・スタイルの市川セカイがステージに上がる。鶴を呼び込むと、アンコールではSoul Mate Recordの社歌として全員で「ソウルメイト今夜」を歌うことに。鶴プラス4人のコーラス、さらに観客のコーラスが加わり曲が厚みを増している。2番はみっちーが歌って観客からは大喝采だ。メンバー紹介、コール&レスポンスを繰り返しながら、秋野は"終わりたくない!"と何度も何度もサビのコーラスを観客に促し繰り返すサービスぶり。本当に終わらないでほしいくらいの盛り上がりで、いつまで続いても良いくらいの空気感があった。それは熱狂的なカオス空間というよりは、良い音楽を発信していこうという自主レーベルとアーティスト、アーティストと観客の関係の良さが如実に表れた気持ちの良い空間だった。このフェスがまた開催されることを大いに期待したい。"ウィーアーソウルメイト!"

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