Japanese
Skream!×MUSE音楽院公開講座
2016年11月号掲載
メンバー:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ベース) 笠井 快樹(ドラム)
インタビュアー:渡邉 徹也 Photo by ミクスケ
-では続いて、事前に質問を集めているので、そこからピックアップしてお答えいただけますか?
神田:これが気になったな。"音の作り方は、ハコの大きさや形で変えていますか?"って質問ですね。どうでしょう?
秋野:音作りはライヴハウスによって多少変えてますけど、ギターに関しては1回こうって決めたらほとんど動かさないです。ほんとに微調整程度に動かすくらいですね。
-それはどうしてですか?
秋野:ギターって、マイクで音を拾うわけじゃないですか。ベースはマイクとラインで音を出す、直接卓に音を送るって方法がありますけど、ギターは完全にマイクなので、マイクでいい音を拾わせることに特化した音作りというか。その音をマイクが拾ってその音が鳴る、でいいわけですよ。自分の場所がちょっとやりづらくても、マイクに一番いい音がいく方を優先させるので。最終的にはライヴハウスで音の響きが変わりますから、それはやっぱり外で聴いてるスタッフの人たちに確認して、"もうちょっとギラついてもいいんじゃない?"とか、"もう少し低音が出てもいいんじゃない?"っていうのがあれば、バンドのアンサンブルと一緒にいじりますけど。基本、僕はずっと同じですね。
-逆に言うと、自分の作った音に自信があるということですかね。
秋野:まぁ、そうですね。"これで一番俺が出したい音が出てるはずだ!"っていうのは、長年"ああでもない、こうでもない"って、いろんなエフェクターを買ってはハズれ、買ってはハズれ......ってのを繰り返してるんで。ちなみに、ドラムは音を変えるの?
笠井:変えます。音が響きやすいところと、全然響かないところと、ライヴハウスで違いがあって。例えば、あんまり響くところだと、タムとかフロア・タムをポンと叩いたときに、自分のタムの音が"ドーン......"って消えていくんですけど、外音で出してる音もまだ響いているので、それをまたタムに付いてるマイクが拾っちゃって消えないって現象が起こるんです。そういう響きやすいハコのときは、ちょっと短めに抑えるようにはしてますね。逆のときは、自分は短いタムの音よりも長めのタムの音の方が好きなので、俺の好きなようにチューニングしちゃうんですけど、そっから現地のPAさんに"ちょっと長いですかね?"とか、そういうやりとりで決めていきます。
-ということは、プレイヤーだけじゃなく、ハコのPAさんとのコミュニケーションも大事になってくるんですね。
笠井:そうですね。"全然長い方がいいよ"って言ってくれるところもあるし、"いや、短い方がやりやすい"って言われることもあるし。
-なるほど。ありがとうございます。
神田:あと、ベースはね......。
秋野:ベースが一番やっかいというか。
神田:低音ってやっぱ難しいんですよね。それこそ、ライヴハウスに行ったときに"やたら低音がうるさいなー"って思う日もあるでしょうし、逆にでっかい野外フェスだと"ベースってか低音が全然ないじゃん!"ってことにもなるじゃないですか。低音って一番難しいと思うんですよ、うまいこと届けるのが。たぶんそういうことがあるので、スピーカーの音をマイクで拾うというよりは、エレキ・ベースの素の音をPAさんに送って、それでそのPAさんが、アンプで鳴ってるような音を卓で作るんですよ。
-そういうことなんですね。
神田:マイクで拾うと、やっぱり空気感とかいろんな音があるので、ちょっと混じり気があるんですよね。ラインだとまっさらなまま行くので、たぶんその方がPAさん的に作りやすいんだとは思うんですよ。でも僕は最近ちょっと考えが変わってきてて、"ギターはマイクで拾ってるんだから、ベースもマイクで拾えばいいじゃん"っていう派なんです(笑)。なぜなら、ここでベース・アンプから鳴ってる自分の音が、最高にカッコいいと思ってるんで、その音を取らずして、クリーンな音を送る必要がどこにあるんだっていう。なので、ここ半年くらいかな? 最近僕はライヴで外音をほとんどベースのマイクの音にしてるんですよ。それでも全然問題ないっていうか、やれちゃうので。今ちょっと、ベーシストにマイクで音を拾うっていう楽しさとか良さを伝えていきたいなと思っていて。"マイキング普及委員会"ですから(笑)。
一同:(笑)
秋野:そのうちマイクも買うんじゃないかな?
神田:そう、今ちょっと考えてるんですよ。
秋野:ギタリストとかでもいるんですよ。自分でマイクを持ち込んで、"このマイクでここ狙って出してくれ"っていう。マイクの種類、特性で周波数の強いところと弱いところがあるので。それで"この音が出したいから、こういうマイク"っていうのを持ってくる人もいます。それを、ベースでやろうと(笑)。
神田:ギターもそうなのかな? なんかやってる側の人間が聴く音ってあるじゃないですか。アンプとか生音とか。それと、外のスピーカーからお客さんに届いてる音のギャップは、結構エグいですよ。中で"これ絶対カッコいい音出してる"って思ってても、ほんとびっくりするくらい違う音が出てるんで。そこはやっぱり、自分側だけで完結しちゃいけないなって思うんですよね。僕はそのギャップをなくすためのひとつの手段として、鳴ってる音をそのまま外に出す。で、あとはPAさん側に調整してくださいって言うんだとしたら、向こうでやるんじゃなくて、こっちを調整するんですよ。そうすると、外音と自分の後ろの音の繋がりがいいんです。そこが繋がらないと、すごい気持ち悪いことになるんで。だから、やっぱりマイキング普及委員会ですよ。
-それって、ライヴハウスで経験を積んできて、技術も知識も得たうえでできることだと思うんですよ。
神田:そうかもしれないですね。いきなり"マイクだけでやって"って言ったら、"おい!"ってなりますからね。
-じゃあ、まだまだこれからって方がそこを目指したいなって思ったときに、具体的にこういうことに気をつければいいとか、こういう鍛錬を積んだ方がいいとかってありますか?
神田:ベースに関して言えば、とりあえず変な低音を出しすぎないこと。これは大事ですね。低音って音量を上げたら出るものなんで、外のスピーカーからすごい大きな音が出てるんですよ。あとは、外で聴いてくれる人やスタッフがいないなら友達でもいいので、誰かに外で聴いてもらうってのも大事ですね。