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INTERVIEW

Japanese

Lyu:Lyu

2014年10月号掲載

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Member:コヤマ ヒデカズ(Vo/Gt) 純市(Ba) 有田 清幸(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

孤独の世界でもがき、のたうち回る――Lyu:Lyuの音楽はそういうものだった。だがそれが少しずつ変化している。自分たちはどこへ向かうべきなのかが明確になったことで作り上げることができた『GLORIA QUALIA』から約4ヶ月。コヤマヒデカズが執筆する同名小説をテーマに書き下ろした「ディストーテッド・アガペー」は、彼からあなたへ向けられたメッセージ・ソングだ。生きることでたくさん傷つき、傷つくことを恐れてきた彼が"否定されても歌うべきだと思った"という"覚悟"の歌。それはとても尊く、そして物悲しく、あたたかくて優しい。

-5月にリリースなさった『GLORIA QUALIA』のリリース・ツアーは、振り返ってみてどういうものになりましたか?

コヤマ:自分たちも1番よくできたという自負がある『GLORIA QUALIA』を引っ提げて、というアルバム・ツアーでもあったので、だからこそそれをちゃんと表現して、今までで1番いいものにしようと思っていました。大きく手を挙げるお客さん......そういう楽しみかたを否定する気は全然ないんですけど、バンドとしてやりたいことはハッピーな空気というよりも、ライヴが始まってから終わるまで喜怒哀楽も全部含めて、ひとつの作品を作っているような感じというか。『GLORIA QUALIA』はそれをちゃんと出せたアルバムだったんです。だからライヴもそれに則って、今まで以上に空気感を大事にしたライヴをしていこうと思っていました。アルバムをリリースした翌日からツアーへ出発して――ここまでリリースからツアーのスパンが短かったことも初めてだったし、観ている人たちにどう届くのか?というのも実際やってみるまでわからない。......それがリリース・ツアーの醍醐味でもあるんですけど、どういう反応が返ってくるのか、というのが楽しみでもありつつ、ちゃんと伝えないといけないなという責任感が常にあって。なのでライヴをやっては話し合ってだめだったところは修正して次やって......ひたすらその繰り返しでした。最終的に、トータルとしてはいいものが作れたんじゃないかと思います。

有田:いつもツアーに臨むときは"止まらない"んですよね。要はその都度いいものを目指してやっているので、課題がでてきてそれをクリアしてを繰り返して繰り返して......そのときそのときで考えていること、感じたこと、バンドで決めたことをごくごく自然にフォーカスしていって。最後、ファイナルを迎えるころに、どんどんどんどん詰めて詰めて詰めて、埃ひとつ入らないように隙間を埋めていこうとなって、最後受け止めてくれた人たちが"ものすごく良かったです"と言ってくれるのが、何よりの報酬みたいなところがあるので。みんなそう言ってくれたので、それがすべての答えかな、みたいな感じです。

純市:『GLORIA QUALIA』ツアーをやる前まで、俺らは押せ押せな空気を出したライヴをしていたんですけど、あのアルバムができて、演奏陣からすると......もう1回ちゃんと歌を聴いてもらえるように演奏したいと心がけるようになって。そういうことを考えながらこなしていったツアーだったと思います。そういうのをお客さんも読み取ってくれたのかどうかはわからないんですけど、いつもよりちょっとお客さんもグッと聴いてくれてた感があって。俺らの意図するものは出せてるのかな?と思えた空気でした。

-そしてそのツアーを経てリリースされる生産限定シングル『ディストーテッド・アガペー』。表題曲はコヤマさんがWHAT's IN? WEBで連載中の同名小説を基に書き下ろしたものということで、まずその小説について伺いたいと思います。小説を書くに至った流れは?

コヤマ:もともと、WHAT's IN?の担当のかたが僕の書く歌詞の内容にすごく興味を持ってくださって、"こういう歌詞を書く人が長い文章を書いたらどうなるか見てみたいので、小説を書いてみませんか?"とお話を下さって。僕は1曲の歌詞以上に長いものを一切書いたことがなかったので、本当にできるんだろうかという不安は勿論あったんですけど。でも高校生のころに上遠野浩平さんの小説に出会ってから本を読むようになって、そこから村上春樹や宮部みゆきのような一般小説、太宰治や宮沢賢治のような純文学を読むようになって......本を読んだりするのは大好きなんです。そういうことをやってみたいという思いはずっとあって――やるなら今だろう! せっかくそういうお話を頂いたからにはやってみようと思ってお引き受けしました。

-実際書いてみていかがでしたか。

コヤマ:例えば、歌詞を書くときはどうしたってメロディ・ラインや音符の数があって、入る言葉の数は限られているわけですよね。だから歌詞は"この言葉だけは絶対に抜けない"というところまで削ぎ落としていったもので、その結果がLyu:Lyuの歌になっているんですけど、小説にはそういう制限がないので、歌詞を書くのとは違ったアプローチができて書いていて楽しかったです。書くごとにそういう感覚を掴んでいけたところも良かったですね。