DISC REVIEW
B
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□□□ feat. the band apart
前へ
名義だけ見ると音楽性が想像できないが、聴くと驚きや衝撃とともに不思議と腹落ち感のある楽曲が並ぶこのミニ・アルバム。the band apartのメンバーをひとりずつヴォーカルとしてフィーチャリングした今作は、サルサやメントのゆるいラテン・ムードで"俺は板橋のジョン・メイヤー"と荒井岳史が歌えば、木暮栄一は本気度満載のラップを聴かせるし、川崎亘一はなんとエレキ弾き語りで彼らしい佇まいを感じさせる歌を歌う。そして最も□□□のパブリック・イメージに近いサンプリングが時空と位相を切り刻みつつ、極上のポップでもあるトラックに乗せて原昌和が美声を聴かせるという具合。さらに、「Eric.W」の再演に乗せて、いとうせいこうが強烈にオリジナリティ溢れるラップを放つ「お前次第ってことさ」。バラバラなようで、この2組のダンディズムと遊び心が言わずもがなのセンスで接地していることがわかる痛快な作品だ。
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the band apart
謎のオープンワールド
駅のホームのフィールド・レコーディング音からSF的なフレーズに移行するオープニングですでに違う時空の捻じれに入り込んでしまう。音こそ涼やかだがパンク的ですらある「笑うDJ」がSF的に聴こえてしまうのだから。結構単語としてはエグいものも出てくるのに不思議なドライさが漂う「廃棄CITY」や「殺し屋がいっぱい」。エディットでループが組まれた無機的なビートが、アコギの郷愁感たっぷりなフレージングを普通に聴かせない「遊覧船」の不穏さは、ゲームっぽさとは最も遠いのに謎感は最も濃い。ラストのアーバン+フュージョン・テイストの「最終列車」から、チープな8bitサウンドが"GAME OVER"を告げるエンディングまでトータルで体感したい1枚。
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荒井岳史(the band apart)
beside
ミニ・アルバムを経ての1stフルには□□□の村田シゲがベースで、ASPARAGUS/the HIATUSの一瀬正和がドラムで参加。荒井のどこまでも伸びやかなメロディとほんの少し影のあるヴォーカルが好きな人はもれなく聴くといい。しかし本作のユニークなところはthe band apartというあらゆるジャンルを解体、再構築して新しいサウンドを作ってきた荒井ならではのSSW的なアプローチだろう。異なるアレンジャーを招いている中でも、いきものがかりなどでおなじみの江口亮が手がけた「メビウスループ」のJ-POP的なプロダクション、対照的に□□□の三浦康嗣が手がけた「マボロシ」の生音とエレクトロニクスのコラージュ感は本作の中でも最も距離がある。さりげなく挑戦作。実に荒井岳史らしいアルバムだ。
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the band apart
510×283
アルバム『街の14景』のリリース・ツアー、そのファイナルである2013年11月8日、新木場STUDIO COASTのライヴを軸に編集。日本語詞に舵を切った6thアルバムを軸にした選曲でありつつ、過去曲かつライヴでの披露がレアな「Moonlight Stepper」などのアコースティックver.のブロック辺りから、このツアーに対する意思がしみ始まる。全国各地のライヴの模様の中には機材トラブルがあった日の映像もあるし、ファンの発言までも編まれている。荒井が"聴く人の青春に食い込んで行きたい"とMCし、その発言を補完する映像に続くラストの「夜の向こうへ」では期せずして落涙。バンドを続けていくことの、ただ圧倒的な事実を作品化した稀有な映像。さらに同発の『BONGO e.p.』で前進する今を体感できるだろう。
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荒井岳史(the band apart)
sparklers
the band apartの荒井岳史(Vo/Gt)のソロのパイロット版的なミニ・アルバム。オリジナルはもちろん、バンアパ・ナンバーの日本語によるセルフ・カヴァーも大いに聴きどころ。元来、自然にキャッチーなメロディを書く彼の資質を引き出す、シンプルなアンサンブルの「駆け抜ける蒼」、アコギにリアレンジされたことと日常の心の動きをビビッドに捉えた歌詞がいいセルフ・カヴァー「写真」、サザン・ロックを想起させるシンプルなインタールードを挟んで、明度がぱっと上がる「ループ&サマー」、フォルムこそ違えど曲そのものの良さは不変であることを示唆する「Kと彼の自転車」、素朴な味わいのピアノが美しいラストの「虹」。いい意味で秦基博や大橋トリオ好きのリスナーにも響きそうな強度を備えている。
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the band apart
BONGO e.p.
『街の14景』に続くリリ-スは、メンバー各人が1曲ずつコンポーズ(歌詞も)した4曲入り。アフロ・ファンクとレア・グルーヴ感が融合した洒脱といなたさが同居した「誰も知らないカ-ニバル」は、ユ-モアさえ感じる歌詞を涼し気な荒井の声で聴けるのも楽しい。続く「The Base」は久々のファストなビ-トで緊張感溢れるリフが炸裂するロック・チューン。そして一転、ユルいダンス・ビートのテンポで最もコンガがフィーチャーされた「来世BOX」。日常の中に漂う生き死にを含む別れについて、さりげなく温かみのあるメロディで歌われる絶妙なバランス感。太いベース・ラインに導かれタイトなアンサンブルが駆動するラストの「環状の赤」。日々の中に潜む激情や諦観を少したしなめながら、でも愛するような美しい作品だ。
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THE BAND CAMINO
The Band Camino
2015年にUSテネシー州で結成、2019年のEP『Tryhard』などで早耳リスナーやメディアから注目を集めていたポップ・ロック・トリオが、満を持してのデビュー・アルバムを発表した。バンドのエッジーな部分とソフトなエレクトロを絶妙に融合したアンサンブルに乗せ、タイプの異なるふたりのヴォーカルが抜群のセンスで美しいメロディを歌い上げる楽曲はすでに高い完成度を誇っていて、Track.5やTrack.9ではライヴ・バンドとしても名を馳せる彼ららしいダイナミクスを見せている。80sのダンサブルな雰囲気をまとったTrack.4、アコースティックなバラードのTrack.7など自由度も高く、THE KILLERS、THE 1975らに続くインディー・ロック新世代の筆頭となりそうだ。
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BAND OF HORSES
Why Are You OK
シアトルの5人組フォーク・ロック・バンドによる4年ぶり5枚目のアルバム。Neil Young『On The Beach』とROXY MUSIC『Country Life』の名盤2枚を掛け合わせたような印象的なジャケットに違わず、ロック・クラシカルな質感だ。象徴的なのは「In A Drawer」、DINOSAUR JR.のJ Mascisや、バンドの初期メンバーをゲスト・ヴォーカルに迎え、キャリア総ざらいの布陣。美しいコーラスの掛け合いがカタルシスをもたらす、新たなBAND OF HORSESの代表曲となるであろう「Casual Party」を始め、序盤はいなたくも風通しの良いアッパーな楽曲が並ぶ。だが、後半になるにつれフォーク・サウンドに回帰していき、丁寧に現代アメリカーナのど真ん中に着陸していく流れがたまらなく美しい。
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BAND OF HORSES
Mirage Rock
前作では飛躍、そして覚醒を遂げたなら、本作はその貫禄を示す充実作と言える。おや?早くもキャリア最高傑作との呼び声も。アメリカの雄大な荒野を駆け巡る、気高く、美しい白馬のような男たちが帰ってきた。BAND OF HORSES、約2年振りの4thアルバム『Mirage Rock』である。本作最大のトピックはGlyn Johnsをプロデューサーに迎えたこと。この人、往年のロック・ファンなら避けては通れない存在であり、THE ROLLING STONESやLED ZEPPELIN、そしてEAGLESを成功に導いたことは有名だ。そんな背景から察すると、まさにHORSESは新たなEAGLESになるのではないか。繊細で時に大胆な、壮大なスケールで描くアメリカン・ロックを堪能あれ!
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BAND OF HORSES
Infinite Arms
03年に解散したシアトルのバンド、CARISSA'S WEIRDのメンバーだったBen BridwellとMat Brooke(現GRAND ARCHIVES)を中心に結成された、BAND OF HORSESの3枚目。SUB POPからメジャー・レーベルへの移籍が功を奏したか、さっそく米英では好調なチャート・アクションを示している。オーガニックなカントリーをルーツとしながら、ラウドな荒々しさと繊細な美しさを同居させたサウンドは前作の延長線と言える音響構築だが、どこか持ち前の魅力である"いなたさ"が洗練されてしまったように感じるのは、メジャー・プロダクションの功罪?なんてちょっと斜に構えちゃったけど、Benのエコーを活かした、まろみあるハイトーン・ヴォイスを聴くだけで最高に幸せ!サマソニでの来日も決定しているので、期待を裏切らないと評判のライヴ・パフォーマンスも必見ですよ!
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BAND OF SKULLS
Baby Darling Doll Face Honey
昨年、まったく無名の新人ながらiTunesのSINGLE OF THE WEEKに大抜擢され話題を集めたバンドだ。英国サウサンプトンの出身、BAND OF SKULLS。当時全くの新人が世界共通でSINGLE OF THE WEEKにピックアップされるのは異例ながら、アルバム完成からわずか一ヶ月未満で配信リリースされたことも大きな注目を集めた。デジタル時代ならではの俊敏性だが、そんなトピック以上の魅力として、ささくれ立った荒々しさと相反する静謐さ、艶めかしくもスリリングな緊迫感、泥臭いブルージーなリフ、衝突するような3ピース・アンサンブル......つまりはホワイト・ストライプス以降のモダニズムと土着的なルーツ志向の混成が呼び起こすロックンロールの原初のエネルギーが圧巻なのだ。CD化されるこの機会に、未体験の人は要チェックだ!
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MyGO!!!!!
迷跡波
始動から1年半をかけて放つ初のアルバムは、いい意味で期待を裏切る音楽性の幅の広さと、音楽的な懐の深さを1枚に凝縮した作品に仕上がった。王道ロックを突き詰めた「迷星叫」から始まり、痛快なパンク調の「壱雫空」、疾走感溢れる「碧天伴走」、ダンサブルな「影色舞」、洋楽ポップ・パンクを彷彿とさせる「歌いましょう鳴らしましょう」など、1曲ごとにキャッチフレーズをつけられるぐらい音楽的テーマが明確に感じられ、初のアルバムとは思えないレベルで楽曲が個々に光を放っている。アニメ放映が終わり、その締めくくりとして本作が提示されたことは、終わりを意味するわけではなく、バンドの始まりの物語とこれから始まる快進撃の"狼煙"として受け止めるべき出来事となる。
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Poppin'Party
青春 To Be Continued
Poppin'Partyのニュー・ミニ・アルバムには、"青春"がキーワードとして据えられているように思える。"永遠の青春"をテーマとした表題曲「青春 To Be Continued」ほか、ポピパの代名詞とも言えるキラキラしたポップ・ソングの数々は、青春というテーマと抜群の相性を感じさせた。そんな本作にはHoneyWorks書き下ろしのポピパなりの応援歌「最強☆ソング」や、新生活を迎えるワクワクドキドキした感情を表現する楽曲「RiNG A BELL」など、聴き手の青春をフラッシュバックさせるような楽曲が揃っている。それは青春真っ最中の誰かにも、過ぎ去りし青春の輝きを求める誰かにも、理想に描いた青春を過ごせず今なお取り返そうとしている誰かにも、きっと光を与えてくれるだろう。
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MyGO!!!!!
音一会
"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクト発、昨年始動したばかりの新バンド"MyGO!!!!!"が早くも2ndシングルをリリース。表題曲の「音一会」は、疾走感のあるツービートに乗せたメロディアスなギター・フレーズが印象的なロック・チューンだ。"独りきりで泣いてたあの夜も/きっと今日の僕に続いてたんだ"と過去の自分と向き合いながら"君が いたから/「ありがとう」"と感謝の気持ちを込めた歌詞や、迷いもそのまま抱えて未来へと進もうとする姿には共感する人も多いのではないだろうか。続く「潜在表明」ではポエトリー・リーディングによって紡がれる言葉と、サビで一気に明るくなる音の開放感に心が揺さぶられ、3曲目の「影色舞」は四つ打ちが心地よいダンサブルなナンバーで、ライヴでのキラーチューンになること間違いなし。
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MyGO!!!!!
迷星叫
"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクトから生まれた、"現実(リアル)"と"仮想(キャラクター)"が同期する新バンド、MyGO!!!!!(読み:マイゴ)の1stシングル。初のオリジナル曲である表題曲は、ストレートなロック・ナンバーに仕上がっていて、そこへヴォーカルの燈が乗せるのは"孤独"や"迷い"の感情だ。現実世界のどこにでもいそうな"独り"の人間をイメージさせる歌詞は、この時代を生きる人にとって共感性が高いだろう。カップリングの「名無声」は、MyGO!!!!!の世界観に共感した人の背中を優しく押すような1曲。メンバーのコーラスも聴き手の心を鼓舞させるのに一役買っている。まだまだ謎の多いバンドなので、今後の展開が楽しみ。
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BanG Dream!
Live Beyond!!
ポピパらしいきらめきを放つ全5曲が収録されたミニ・アルバム。スマートフォン向けゲーム"バンドリ! ガールズバンドパーティ!"のPoppin'Partyバンド・ストーリー3章に合わせて書き下ろされた表題曲は、音楽の力や夢を信じる想い、大切な人への気持ちをまっすぐに届ける楽曲で、"一秒で繋がるよ Distance"といった今の時代に当てはまる、希望に溢れた言葉にも勇気を貰える。何かが始まりそうなポジティヴなパワーが漲る"バンドリ! ガールズバンドパーティ! for Nintendo Switch"の主題歌「キミが始まる!」、かっこいいポピパを堪能できるエモーショナルなバンド・サウンドの「Moonlight Walk」など、多彩な収録曲で聴く者を魅了する1枚。
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Poppin'Party
Breakthrough!
Poppin'Partyの2ndアルバムは、颯爽と駆け抜けるようなオープニング・トラック「Breakthrough!」で開幕。「ミライトレイン」をはじめとした彼女たちらしいキラキラ眩しい印象はそのままに、普段とは違う大人びた表情で魅せる「Hello! Wink!」や、白雪の舞い降りる美しい情景が浮かぶ「White Afternoon」など、彼女たちの世界観の広がりも感じさせた。「キズナミュージック♪」から「イニシャル」までのシングル表題曲、SILENT SIRENとのコラボでも話題になった「NO GIRL NO CRY/Poppin'Party Ver.」といった、ファンにとっては馴染み深い曲も収録。Poppin'Partyの改めての入り口としてもオススメしたい1枚。
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Poppin'Party
キズナミュージック♪
メディア・ミックス・プロジェクト"BanG Dream!(バンドリ!)"発のリアル・バンド、"ポピパ"ことPoppin'Partyの12thシングル。表題曲「キズナミュージック♪」は、タイトルどおりバンドの絆を歌った曲で、センチメンタルなBメロと、とびっきりキラキラしてエモーショナルなサビとのコントラストが印象的なナンバーだ。この曲は、2019年1月より放送がスタートするTVアニメ"BanG Dream! 2nd Season"のOPテーマで、生産限定盤に付属するBlu-rayにはアニメのOP映像のノンクレジットVer.を収録。放送開始よりひと足先に、アニメの映像を楽曲とともに楽しむことができる。幸福感に包まれるようなサウンドの中でポピパらしい詞世界が繰り広げられるc/wの「Home Street」も心地よい。
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BARICANG
溶ケテ合ワサリヒトツト成ル
手売りを重ねたデモ音源は累計6千枚を超え、大阪ミナミエリアで開催された"見放題2014"では入場規制がかかるなど確固とした実力を備えたBARICANG。そんな彼らがリリースする5年ぶりの作品、『溶ケテ合ワサリヒトツト成ル』にはメンバー・チェンジを経てもなお立ち止まることなく歩き続けてきた彼らの軌跡が刻み込まれている。まず、1番印象に残ったのはタイトで安定感のあるドラム。いいバンドには得てしていいドラマーがいる、そういうものだ。そして凛として透き通るようなヴォーカルが力強く、時に優しく歌いかけ、アグレッシヴで存在感のあるギターとベースが暴れまわる。実に痛快だ。特に超攻撃的なロック・チューン「青雲」から畳みかける様にブチ込まれる「she」にかけての流れは秀逸。痺れる。
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V.A.
Kidz Rec.03
80KIDZが主宰するインディ・レーベルKIDZ REC.からのコンピレーション・アルバム第3弾。このコンピ盤シリーズの常連でもあるBAROQUEからは新曲「Hit It!」が収録されているが、これが必殺キラー・チューンに仕上がっている。フロアから大歓声が今にも聞こえてきそうだ。そしてSALMANことKIDZ REC.のニュー・カマーKIDO YOJIとDEXPISTOLSのレーベルROC TRAXの新鋭BAZZによるユニットの「North」は、KIDO YOJIの泣きのギター・サウンドが走り、憂鬱さと爽快感を合わせ持つダンス・ロック・ナンバーに仕上がっている。また80KIDZのアルバム未収録曲「Night Pulse」も収録。クラブ好きのマスト・アイテムになりそうだ。
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BAROQUE
Waste Your Time
海外と並行するように国産エレクトロ・シーンも活況を呈しているが、その中心的な存在の80kidzが主宰するKidz Rec.が放つ新鋭をご紹介。すでにレーベル・コンピに収録されたリミックスから“ネクスト80kidz”との賛辞も送られ、CSSやFIGHT LIKE APES、ユニークなところではHOUSE DISNEYなど、多岐にわたるリミックスでとめどもなく脳内イメージを放出しているSANNOMIYAのソロ・プロジェクト、BAROQUE。待望のデビューEPは斬れ味鋭いエディット感覚で描く、どこまでも扇情的なロッキン・エレクトロ。ソリッドでしなやかで、強烈にフィジカルなダンス・トラックはクセになること間違いなし!MAYU脱退からどこか先行き不明瞭な空気漂う母艦80kidzだが、そんな空気を払拭するレーベルの存在としても、シーンとフロアを大いに盛り上げてもらいたい。
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Base Ball Bear
DIARY KEY
結成20周年を迎えたBase Ball Bearの新作。この時代を深く見つめながら描かれた"人生讃歌集"だという今作だが、ここには小出祐介(Vo/Gt)の中にあるだろう様々な意図や想いを深読みせずにはいられない言葉たちが綴られている。また、近年突き詰めてきた3ピース・サウンドはさらに洗練されており、曲が複雑化したというよりは、ピュアな気持ちで生み出されたものがそのままソリッドに研ぎ澄まされて進化を遂げているような印象。長年のベボベファンは新しさと懐かしさを同時に感じる部分もあるのではないだろうか。作品をひもとく"鍵"となる1曲目の「DIARY KEY」、メンバー全員で作曲した「悪い夏」、valkneeとのコラボ曲など全11曲。一曲一曲を大切に聴きたいアルバムだ。
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Base Ball Bear
SYUUU / ドライブ
"SYUUU"(=驟雨)とは夕立のことを指す。一見哀愁を帯びたイメージを持たれかねない言葉だが、夕立はしばらくすると止むものである。「SYUUU」はそんな雨上がりの晴れた空に似合う、爽快なリズムと共に新たな一歩を踏み出す人に寄り添うナンバーだ。対して「ドライブ」は、何気ない日常にある"生きている音"をメロウなメロディに乗せて表現するミドル・バラード。シンプルな3ピースのバンド・サウンドだからこそ、磨き上げられた音と小出祐介(Vo/Gt)のしなやかに伸びる歌声が際立っている。また、3人の歌声が美しく重なるコーラスも必聴。両曲を聴き終えると、ベボベがそっと照らしてくれた光によって自然と前を向ける、そんな1枚に仕上がった。
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Base Ball Bear
C3
2010年代になぜヒップホップが覇権を握ったのかと言えば、ジャンル内ゲームから抜け出し自由に外側と接続することで、メタモルフォーゼを遂げていったからである。"ヒップホップだけど、ヒップホップじゃない"からこその面白味が、YouTube/SNS時代以降のジャンルレスな感覚とシンクロしたとも言える。そう考えると(特に日本の)ロック・バンドはいつからか、"ロック・フェス"という内々のゲームに拘泥してしまっていたように思えてならない。そして、それに対して常にラディカルな抵抗を見せてきたBase Ball Bearは、本作において"どうしようもなくロック・バンドなのに、これまでのロック・バンドとは明らかに違う"という境地に辿り着いた。新たなディケイドの幕開けに相応しい。
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Base Ball Bear
ポラリス
"3人の音"にこだわったのはライヴにおける再現性の重視が大きな理由だが、それは録音物としてトラック的な音作りと肉体性の同居を表現するための最適解でもあり、間違いなくこれまでのバンド像を更新する作品となった。関根史織(Ba/Cho)のアイディアから曲作りが行われた「試される」と「PARK」は、やはりベース・ラインが楽曲の主役で、存在感抜群のフレージングとミッド・ローの抜けの良さによって強い印象を残す。堀之内大介(Dr/Cho)も含め3人がヴォーカルやソロを担当し、徹底的に"3"にこだわったリリックが小出祐介(Vo/Gt)のナードっぷりを際立たせる「ポラリス」も最高。DISC 2には2018年10月に行った"日比谷ノンフィクションⅦ"のライヴ音源も収録している。
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Base Ball Bear
光源
本作を前にすれば、『C2』での大胆な音楽的変化は、ここへ向かうための通過点だったように思えてくる。もちろん、それは湯浅将平(Gt)の脱退によって結果的に導かれたものではあるが、国内外の音楽を対象化することによって、自分たちの独自性を獲得してきたバンドが、ここに来て音楽と本質的に向き合ったという事実はとても大きなことだ。一方で、"青春"を対象化することによって、"時間"を描き出すという、コンセプターとしての小出祐介(Gt/Vo)は、本作でもキレキレ。歌詞が青春から今へと向かうのに対して、音楽的には逆にルーツを遡り、ファンキーなカッティングからスタートしつつ、UKロックを経由して、ラストの「Darling」でブルースに辿り着くという構成もお見事。新たな扉を開いた、真の転機作。
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Base Ball Bear
ファンファーレがきこえる/senkou_hanabi
ベボベことBase Ball Bear初のダブル・タイアップによるダブルA面シングル。RHYMESTERや声優の花澤香菜と共演した『THE CUT』から一転、"締め切りも、契約もある"という一節に思わず、あれこれと想像を膨らませてしまう「ファンファーレがきこえる」と「senkou_hanabi」ともにギター・ロック・バンドとして彼らが持っている醍醐味をストレートに打ち出してきた。焦燥感いっぱいの同世代のリアルと刹那的な10代の青春。それぞれテーマに違いはあってもどこかオプティミズムが感じられるところが清々しい。疾走感で押す「ファンファーレがきこえる」、巧みなアレンジで聴かせる「senkou_hanabi」。それぞれに魅力があるが、個人的には関根史織(Ba)がハーモニーを重ねた後者に聴きごたえを感じる。
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Base Ball Bear
THE CUT
今年2月にベスト・アルバムとシングルを同時リリースし、全国ツアーと6/15の日比谷野外大音楽堂でのワンマンも大成功を収めたBase Ball Bearから、新曲3曲+64分に渡るライヴ音源を収録したミニ・アルバムがリリースされた。RHYMESTERとのコラボ曲「The Cut」はベボベがこれまでで築き上げたダンス・ビート、DJ JINのダイナミックなスクラッチ、小出祐介のソフトなヴォーカル、宇多丸とMummy-Dの切れ味鋭いフロウとライム、全ての相性がばっちり。自然と体が揺れるキャッチーな楽曲だ。関根史織(Ba)と声優の花澤香菜のツイン・ヴォーカル曲「恋する感覚」は小出のポップ・センスが炸裂したキュートなナンバー。ギターが刻む緊迫感が心地よい「ストレンジダンサー」も新たな側面を覗かせる。
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V.A.
惡の花譜
アニメ『惡の華』の主題歌を完全収録したコンセプトEP。宇宙人によるOP曲「惡の華」は、しのさきあさこ、後藤まりこ、の子(神聖かまってちゃん)、南波志帆をそれぞれヴォーカルにフィーチャーした全4種類が収録され、ED曲であるASA-CHANG & 巡礼の「花 -a last flower-」も収録。物語の不穏な空気感、歪さを表現するため、ロトスコープと呼ばれる実写を元にした映像作成も話題を呼んだアニメだけあって、音楽においてもアニメならではの世界観を生み出そうとしていることが、本作を聴けばよくわかる。出口の見えない陰鬱な青春が、それぞれの楽曲に見事に表現されている。その中でボーナス・トラックとして収録されたBase Ball Bearの「光蘇」は、暗闇の中、かすれた瞼に映る微かな光のようで、美しい。
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Base Ball Bear
CYPRESS GIRLS/DETECTIVE BOYS
「DEATHとLOVE」をテーマに作られたBase Ball Bear 初のコンセプト・アルバム。3.5thアルバムというクレジットの通り、同コンセプトのもと制作された2タイトルの同時リリースとなっている。コンセプトが"DEATH とLOVE"って...。ベタだなーと思っていたが、このベタベタ具合が、ある種J-POP 的ともいえるドラマチックなメロディ・センスと楽曲の構成力を持つ彼らとはベスト・マッチだったよう。様々なジャンルを取り入れた曲作りをしながらも、楽曲のドラマ性を最大限尊重するプロデュース力が際立っているのだ。『CYPRESS GIRLS』は男性目線の情熱的で力強い意思表示の躍動的な作品。『DETECTIVE BOYS』は女性目線の曲が多く、やわかいタッチの作品で、思わずドキドキさせられるロマンチックが溢れた作品。一つ言えることは、確実にベボベの新たな側面が見られますよ!
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Base Ball Bear
(WHAT IS THE)LOVE & POP?
Base Ball Bearというポップで可愛いバンド名から想像していたサウンドとは違い驚いた。学園祭に出演するためのバンドとして始まったのが2001年。そこからライヴ・バンドとして着実に力を付けていき2006年にメジャー・デビュー。これまでに2枚のアルバム、11枚のシングルをリリースしている。そしてこの作品は4曲のタイアップ・ソングを含む1 年9 ヶ月ぶり、3枚目のアルバムとなる。エッジーなギターとタイトなバンド・アンサンブル。言葉に気持ちをぶつけていくエモーショナルなボーカル。疾走感溢れるサウンドがとにかく気持ちがいい。今作は加速していく彼らにとっての代表的な一枚となるだろう。
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BASEMENT
Beside Myself
PARAMORE、FALL OUT BOYらを擁する"Fueled by Ramen"から、イングランド出身の5人組ロック・バンド BASEMENTがメジャー2作目となる『Beside Myself』をリリース。90年代USエモ/パンク、グランジからの影響を受けたサウンドとUKロック直系のセンシティヴで切なさを帯びた歌詞で、UK/USの折衷的な音楽性が特徴であった彼らの新作は、一聴すると軽快でポップ・パンクな趣き。全編にわたって爽快感や開放感に満ちたメロディと伸びやかなヴォーカルを展開し、作品の端々からポジティヴな印象を受ける。しかし、今作のテーマはそれとは真逆で、"不安"や"悩み"、"違和感"を反映したというんだから面白い。そういったギャップが実に人間らしくて、味わい深い。
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BATHS
Pop Music / False B-Side
昨年秋に初来日を果たし、今月にも大阪と東京での単独公演とイベント出演が決定している日本大好きビート・メイカーWill WiesenfeldことBATHSの、デジタル配信のみでリリースされていたアルバムが遂にCD化。収録されている楽曲は全てファースト・アルバム『Cerulean』以降に制作されたものだそう。優雅で瑞々しい変拍子は、朝露のように清く、心の中に染み込んでゆく。一点の曇りが無い純粋な世界。それは彼の心の投影なのではないだろうか。頭の中には自然と、楽しそうにサンプラーで曲を紡ぎ出す彼の姿が浮かぶ。「Tatami」は琴を彷彿させる和旋律と神聖なサウンド・スケープが胸を掴む。彼の日本への深い愛情を感じた。フレッシュなビートが鮮やかに飛び回る、ぬくもり溢れる作品だ。
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BATHS
Cerulean
WASHED OUTにしても、Toro Y Moiにしても、命の輝きを垣間見るような、一瞬の煌めきというものを目の前に放たれてしまうと、もうどうにもならない。涙線がどうのこうのの前に、そもそもそんなものの存在さえ忘れ、魂のみがそれに共鳴しているかのような、なんとも根源的な部分が目を覚まし、反応してしまう。そしてただただ立ちすくむのだ。本アーティストBATHSは本作発表時なんとまだ21歳。そんな、彼の描く音もまた、前述のアーティストと同様に、ただこの身の周りをたゆたうだけのアンビエント・ミュージックであるのにも関わらず、その音は官能や神秘の秘薬のように、私たちを呪縛し支配する。これは、単にその途方ない眩しさと美しさによってもたらされるオーガズムのようなものなのか…。
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batta
哀しみに唾を吐いて
曲名でもある"哀しみに唾を吐いて"という、強烈な言葉がリフレインする。それでいて、"ラララ"と一緒に歌えたり、身体を揺らせるビートがある。さらには、ホシノタツ(Vo/Gt)の感情直結型な歌声でメロディも耳に飛び込んでくる。様々な魅力がありながら、とっ散らかった印象を与えない、絶妙なバランスを誇る楽曲だと思う。他の収録曲も、パンキッシュに疾走しながらも歌詞は美しく整っている「SOS」、ポップな曲調でラヴリーな世界観を描いた「グッドモーニング」、メロディと歌詞をじっくり堪能できる「夜明けまで」......とバラエティに富んでいるが、どれも完成度は高い。枠にとらわれず、"自分たちの鳴らしたい音、歌いたい言葉"を発信していきたいという意思表明に見える1枚だ。
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batta
chase
2009年の結成後インディーズで活動、2015年秋から所属事務所を離れ、再始動した4人組ロック・バンドのメジャー1stシングル。Track.1「chase」が大人気のTVアニメ"ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない"第2期オープニング・テーマとして起用。直球のガレージ・サウンドにより歌われる内容は、ジョジョのストーリーに通底する"生きていくための戦い"を想起させるとともに、新たな一歩を踏み出したバンドの姿勢も示唆しているようで興味深い。Track.2「chase -Acoustic Version.-」ではアコギの弾き語りの上をフワフワと行き交うメロトロンとチェロの音色が、同じ曲にもかかわらずまったく違う印象を与えている。"Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-"への出演が決定しているのも注目だ。
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batta
エターナル
前作『ゲームオーバー』から1年、battaの2ndアルバム『エターナル』がリリースされる。エターナル="永遠"という意味から『ゲームオーバー』と対照的な言葉に感じ少々違和感を覚えたが、いざ再生するとそれは解消された。それは"限りあるいま"を生き抜こうという、バンドが掲げる強固なメッセージを感じられたからだ。歓楽街を駆け抜けるような軽快なロック・チューン「トレジャーランド」から、平穏な日常と幸せを問うミドル・バラッド「人間らしい暮らし」、ギター伴奏のみの冒頭が胸を打つ「eternal」まで、どんな生き様も肯定するような包容力があるロック・サウンドが詰まっているのだ。彼らがネクスト・ステージへ確実に進んでいることを証明するアルバムである。
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BATTLES
La Di Da Di
実験性の追求とハードコア・パンクの精神というバンドの核となる部分はそのままに、音楽性を深化させてきたBATTLES。彼らによる4年ぶり3作目となるアルバム『La Di Da Di』は前作『Gloss Drop』の延長線上にあることは間違いない。しかし完全なインスト作となり、過剰性から解放され精神的な軽やかさを手に入れたことから、より個々のビートやメロディは強固に。基本的な構造はテクノ的なミニマルな反復。そこに幾何学的なリフが折り重なり、屈強なビートが生むダイナミズムが作用しカタルシスを喚起する。また今作においては、覚醒を予感させるTrack.1から端を発する、地殻変動するようにうごめく巨大なエネルギーも作品を規定する大きな要素だ。Tyondai Braxton脱退以降、残されたメンバーのみで作られた初の作品が、ある種のシンプルさを志向していることも興味深い。
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BATTLES
Gloss Drop
Tyondai脱退後、3人編成となった彼らの新作は、不穏に拡がるサウンドスケープが波のように押し寄せ、ボルテージがどんどん上がっていく「Africatsle」から始まり、シングルカットされた「Iscream」を始め、ヒップホップ/ファンク要素も散りばめられている。南国的なパーカッションや、土着的な民族音楽のエッセンスも取り入れられ、非常にバラエティに富んだ内容だ。自由な音階で3連符の嵐を刻む「White Electic」を聴けばわかる通り、メンバー個々の、プレイヤーとしてのセンスと技術の高さに、改めて感服してしまう。BATTLESの中核となるハードコアなアイデンティティはそのままに、心躍らずにはいられないアッパーでポップなサウンドを新機軸として提示し、更にパワーアップした姿を我々に示してくれた。
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THE BAWDIES
Section #11
デビュー10周年、結成15周年というアニバーサリー・イヤーを締めくくるのは、新たな幕開けへの祝砲ともなるニュー・アルバム。全12曲、どの曲がシングルになってもいい、最高に踊れて笑顔になって、甘酸っぱくて、エキサイティングな、喜怒哀楽を総動員するロックンロールが次々と放たれる。彼らがルーツ・ミュージックから啓示のごとく受け取ったロックンロールの持つプリミティヴな力を継承する核は変わらず。その使命感をより強固に、ソウルフルで華のあるプレイで聴かせる。中でも、ポピュラー・ミュージックの歴史をモダンにマッシュアップしたような「THE BEAT」は面白く、またキャリアを積んだ今だからこそ歌えるバラード「STARS」も洗練された深みがある。この1枚でどんな旅もできそうなアルバムだ。
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