DISC REVIEW
B
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BLOC PARTY
Hymns
鋭角的なギター・ロック/ポスト・パンクをベースにした、フィジカルなサウンドを聴かせた前作『Four』でロック・シーンに帰還を果たしたBLOC PARTY。彼らの約3年半振り5作目となる今作は、シンセのサウンドが中心に据えられたバンドのイメージを刷新する仕上がりに。リズム隊を一新した新体制ということも大いに関係があるだろうが、性急なビートとアグレッシヴなギター・サウンドは鳴りを潜め、グッとレイドバックしたグルーヴのシンセ・ポップを聴かせる。インディーR&BやUSシンセ・ポップ勢に目配せしたような、ソフト且つモダンなサウンド・アプローチながらも、Kele Okerekeのヴォーカリゼーションによって確固としたBLOC PARTYの音楽として成立しているのが面白い。常に新しい風を吹かせ、変化を求めてきた彼らが辿りついた新境地と言えるアルバムだ。
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BLOC PARTY
Four
4年の沈黙を破りBLOC PARTYが帰ってきた。フィジカルで本能的なダンス・ミュージックと強靭かつモダンなロックを融合させUKのロック・シーンにおいても人気、実力共に頭1つ抜けていた彼らがフロントマンのKele(Vo&Gt)に"僕たち4人じゃなければ作れなかったサウンドだし、今まで作ったどのアルバムよりも誇りに思う"と言わしめたアルバムを持って。確かに今作は4年の月日を一気に埋めるほどのパワーを感じる。Track.3の「3×3」はライヴの新しいアンセムになり得る曲だし、メンバーが昔のBLOC PARTYっぽいと言うTrack.8「V.A.L.I.S」もアプローチが似ているからこそ今の充実ぶりを深く感じる。そしてTrack.9「Team A」は今作のハイライトになるだろう。彼らのシーンへの復帰は単なる帰還ではない、"奪冠"だ。
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BLONDE REDHEAD
Penny Sparkle
日本人女性Kazuとイタリア出身の双子SimoneとAmedeoよるベースレス・バンドBLONDE REDHEADの、3年ぶりとなる8thアルバム。VAMPIRE WEEKEND、ANIMAL COLLECTIVE 、DIRTY PROJECTORS、MGMTなどの登場で沸くニューヨーク・インディー・シーンで活躍し、地元ではインディーズにも関わらず10万枚のセールスを上げる実力を誇るベテラン・バンドである彼ら。この出来栄え、さすがです。本作は、色見を抑えたシンプルな音が作る閉鎖された空間が舞台となっている。それは、外界との一切の接触が禁止された現実味のない世界、何もない空洞に、ノイズを流し込んだような、息苦しいほどに重厚な世界。そこに滲み浮かびあがるように存在するヴォーカル。空間に反響するノイズ、それと共鳴するヴォーカルが共存するこの高貴な浮遊感は、酔わせ、夢見心地にさせる甘美な魅力で私たちを誘惑してくる。
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BLONDIE
Pollinator
歳のことは言うまいと思いつつ、このヴォーカル、このメロディやサウンド・センスの軸にあるDebbie Harry(Vo)が71歳とはにわかに信じがたい。そして同時に元祖NYパンクの女王の根本は何ら変わらないということも証明している。Dave Sitek(TV ON THE RADIO)参加のTrack.4のエレクトロ・ディスコも、クールでありつつDebbieのメロディの素晴らしさで頭ひとつ抜けた出来だし、BLOOD ORANGEとの共作曲であるTrack.2は、かの名曲「Heart Of Glass」を今の時代の質感にアップデートしたような惚れ惚れする仕上がり。他にもJohnny Marr、Sia、Nick Valensi(THE STROKES)ら、豪華な面々が参加しているが、同じ価値観を持ったメンバーと思えるほど自然。飽くまで現代の傑作だ。
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THE BLONDIE PLASTIC WAGON
WEEKENDER
“週末”という言葉は、個人的には好ましくもあり、同時に憂鬱でもある言葉だ。俗に言う“サザエさん症候群”の影響なのか、完全燃焼しきれず、月曜日からの自分にエネルギーを残してしまう。しかし、理想とする姿は、日常とは一線を画した週末旅行者なのだ。THE BLONDIE PLASTIC WAGONの描く『WEEKENDER』(=週末旅行者)は、まさに“今”という瞬間を燃え尽きようとしている。ちょっとしゃがれた、けれど甘いヴォーカル。良い意味でやや古臭い、ブルージーなロック・サウンド。アップテンポなダンス・ビート。そこに、年齢や性別の括りを見つけることは難しい。10年のキャリアの中に存在する少年のような瑞々しさと、経験ゆえの豊潤さという矛盾に、やがては自らのみ込まれにいく……。それは、今の刹那に酔いしれた後の後悔が、実はたまらなく心地が良いってこと。それを本当はみんな知っているのだ。
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BLOOD RED SHOES
Ghosts On Tape
UKブライトン出身の男女オルタナティヴ・ロック・デュオが、約3年ぶり6作目のアルバムを発表。前作『Get Tragic』ではシンセを導入し表現の幅を広げた彼らだが、本作でもその方向性を継承している。荒々しいビートにノイジーなディストーション・ギターのリフを乗せた、バンド本来のサウンドに加えて、ゴス/インダストリアルの影響も感じさせるシンセが退廃的な側面も演出し、ダークなサイケデリアを生み出している。Track.5、9のようにときに激しいシャウトも聴かせるSteven Ansellと、Track.7などで気だるく言葉を紡ぐLaura-Mary Carterという、異なる個性を発揮するヴォーカルも秀逸だ。タイトルどおり音に霊的存在を込めたかのような、緊張感の支配する1枚。
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BLOOD RED SHOES
Blood Red Shoes
ブライトン出身の男女2ピース・バンドによる4thアルバム。マグマが噴き出すというジャケットからもイメージ出来る通り、このアルバムには爆発したエモーションが詰まっている。ノイジーにも程があるディストーション・ギターは初期のJSBXのようでもあり、これぞガレージ・パンクのひとつの究極系と言ってもいいのではないか。相変わらず雄弁に奏でられているヘヴィなギターとドラムに対比するように、ヴォーカルには感情が抑制されている部分があり、そのバランスがロックンロールに必要不可欠な"隙間"を生んでいる。ポップな要素は殆どなく、負の感情を炸裂させ、打算というものを一切感じさせない直球勝負のヘヴィなグルーヴにノックアウトされること間違いなし。
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BLOOD RED SHOES
Fire Like This
彼らの持ち味でもあるストレートで荒いロック・サウンドにフォーカスされた2ndアルバム。2ndともなるともう少し音楽性を広げてくるかなと予想していたが、彼らは自分達のソリッドな部分をさらにいっそう磨き上げてきた。このソリッドなサウンドに大きく貢献したのは前作に引き続きプロデュースを担当したMike Crossey の手腕だろう。ARCTIC MONKEYSの2ndアルバムも手掛けた彼は、外部のミュージシャンをほとんど参加させず二人のギターとドラムの音にこだわった。その事により彼らのアグレッシヴな部分がフォーカスされ、楽曲の力強さもありのままに伝わってくる。ダークになったと言われることもあるようだが、僕はそうは思わない。彼らのルーツでもあるパンクの精神が伝わってくる情熱のロック・アルバム。
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BLOODY BEACH
Bloody Beach Pirate Radio Presents
BLOODY BEACHはノルウェーのドリーム・ポップ・バンド、YOUNG DREAMSのメンバーでもあるChris Holm率いる5人組。彼らが本作にも収録されている「Bonanza」を無料配信して以来、高まる評判を追い風に遂に完成させたデビュー・アルバム。自ら"トロピデリカ"と掲げる通り、エキゾチックなメロディーを奏でる60's風のサーフ~ガレージ・ロックを軸にしたサイケデリックともレイヴともいえる作品ながら、彼らのサウンドを唯一無二のものにしているのが、ディスコ・ビートのみならず、アフロ・ビートやレゲエ・ビートも使ったリズム・コンシャスなアンサンブル。ユーフォリックであると同時にキッチュなところもあるサウンドはここ日本でも、いや、日本だからこそ歓迎されるに違いない。
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BLOSSOMS
Cool Like You
マンチェスター出身で、Gallagher兄弟の双方と親交もある彼ら。2016年のデビュー・アルバム以来となる2ndアルバムは、先行配信された「I Can't Stand It」にも顕著な、80sを想起させるシンセ・サウンドがかなり前面に押し出された楽曲が並ぶ。が、そこはUSのシンセ・ポップやドリーム・ポップと少々違う彼らの個性で、良く言えばスケールが大きく、悪く言えば、シンセの使い方がかなりベタ。それでもイギリスのバンドらしいマイナー・キーとメジャー・キーが1曲で行き来する自然さや、メロディの美しさ、あどけなさとエモーショナルな力強さを兼ね備えたTom Ogden(Vo)の表現力が、ある種の平板さを忘れさせる牽引力を持っている。楽器主体のアレンジでパワーのあるTrack.8、9はバンド感があり、いいフックに。
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BLOSSOMS
Blossoms
マンチェスター出身の注目バンドのデビュー・アルバム。PEACEの来日サポート・アクトを務めるとともに単独公演も行い、2016年6月には地元マンチェスターで行われたTHE STONE ROSESのライヴでオープニング・アクトとして出演し、"SUMMER SONIC 2016"で再び来日と、大いなる期待を背に活動している彼ら。どの曲もポップなメロディと柔らかな演奏で、フロントマン Tom Ogdenの繊細そうな歌声はあどけなさも感じさせて、どこか切なく印象に残る。若いバンドには珍しく王道のシャッフルに乗せたTrack.2や、憂いのあるメロディが美しいTrack.3など強烈なアクはないものの、そのぶん歌モノのロック・バンドとして幅広い音楽ファンから支持を獲得しそうな可能性を感じさせる。
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BLUE ENCOUNT
アマリリス
TVアニメ"MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~"のために書き下ろされた表題曲「アマリリス」。爽やかながらどこか儚げなサウンドは、アニメで描かれる青春にぴったりのエモさを演出、まだまだ暑さの残るこの夏の終わりを瑞々しく彩る。またその仲間や大切な人を想う姿は、紆余曲折ありながらも肩を並べ共に歩んできたメンバー4人の姿にも重なり、美しくたくましい。そんな4人の絆を感じられるハートフルなミュージック・ビデオにも注目だ。一方カップリングの「ghosted」は全編英語詞のブルエン流メロディック・パンク。音数を絞ったシンプルな構成に、グッド・メロディと軽やかなコーラスがポップさを印象づけるが、歌詞は皮肉混じりに未練を歌う失恋ソングに仕上がっていて味わい深い。
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BLUE ENCOUNT
囮囚
前回の「バッドパラドックス」の起用に続き、日本テレビ系土曜ドラマ"ボイスⅡ 110緊急指令室"の主題歌として話題の同曲。尖りきったイントロのギター・リフが平穏を切り裂き、すべての楽器がその刃を交わすようなテンションで最後まで走り切るスリル。田邊駿一(Vo/Gt)の歌詞は誰しもが誰かを死角に追い込む可能性のある現代の悪意を鋭くえぐる。囮囚と書いて"ばけもの"と読むそれはあらゆる意味で真犯人を指すのだろう。詞曲共に振り切ったフェーズを示唆する。カップリングにはアメリカのフューチャー・ベースのトップ・アーティスト、SLUSHIIによる「ポラリス」のリミックスも収録。マイナー・キーへの変更、ヴォーカル以外はガラッとエレクトロニックな意匠に再構築。なお初回盤には4月の横浜アリーナ公演のライヴ音源10曲も。
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BLUE ENCOUNT
Q.E.D
自身初の横アリ単独公演を来年4月に控えているブルエンによる2年8ヶ月ぶり4枚目のフル・アルバム。まず1曲目「STAY HOPE」を聴いた時点で、今作が何を証明するためのものなのかがハッキリとわかる。ブルエン節炸裂の同曲は、今の時代をリアルに映し、これからの未来に立ち向かっていく、まさに歌詞通りの"希望の歌"。ポジティヴなパワーに満ちたこの曲をはじめ、現代社会に対する皮肉も込めた「VOLCANO DANCE」、"さぁ幕開ける新時代"と歌うメロディックな「HAPPY ENDING STORY」など、今必要な音楽が詰め込まれている。すでにリリースされている話題のタイアップ曲も多数収録と、"もはやベスト・アルバム"と言う理由も納得。彼らからの"容赦なき愛"を受け取ってほしい。
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BLUE ENCOUNT
ユメミグサ
ブルエン2020年3曲目の表題は、ファンにお馴染みになった、住野よる原作の映画"青くて痛くて脆い"の主題歌である"ユメミグサ"。苦味や悔しさを含んだ10代を振り返るようなサビの歌始まり、青春を彩るようなギター・リフとそれに寄り添うようなストリングスも、すべてに意味を感じるアレンジが新鮮だ。それらを支えるミドル・テンポで堂々としたリズムの骨格も、今のバンドの状態を示唆しているよう。一転、c/wは冒頭からシンガロングしたくなる明るいリアリティを溢れさせた「1%」。失敗は成功のもと的な普遍的なテーマを、BLUE ENCOUNT流の言語感覚とビートでオリジナルに昇華する。さらに、昨年11月のZepp Tokyo公演からの「ポラリス」も収録(通常盤のみ)。ライヴの現場への飢餓感と幸福感の両方に包まれる。
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BLUE ENCOUNT
ハミングバード
ブルエン初のデジタル・シングルはアニメ"あひるの空"4月クールのオープニング・テーマとしてもお馴染みの1曲。重厚さや荘厳さを纏った先端のサウンド・プロダクションで高みに到達した前2作「バッドパラドックス」と「ポラリス」から一転、青春感やバンドを始めた頃のようなイノセントなニュアンスと音像がむしろ新鮮な楽曲に。アニメのストーリーともリンクする、選んだ道が必ずしも自分にとって優位ではない事実と、そんなことにお構いなしに夢に飛び込んだ自分の勇気を並行して描くリアリティ。自分が選んだことに対する確信と、実現のプロセスにおいて積み重ねてきた事柄――大袈裟に鼓舞するわけでもなく、自然と聴き手を肯定する温かな強さ。それがアレンジやミックスにも結実したことも新章を示している。
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BLUE ENCOUNT
ポラリス
嵐や暴風の中を突っ切って進むような体感もあり、物理的にはアップテンポだが、大きな意味で"バラード"と呼びたくなる、大きなグルーヴを醸し出している新境地。"あの日「守る」と決めた/約束はこの胸に"という印象的な歌い出しから、Aメロはむしろ抑制の効いた歌唱が決意を滲ませる効果を発揮し、ラストの"消えそうな希望(ヒカリ)だとしても行け"が、実際に大会場のオーディエンスに届くイメージが湧く。世界的にも人気のアニメ"僕のヒーローアカデミア"第4期のオープニング・テーマとしても、さらに新たなファンを獲得するであろうスケール感だ。カップリングの「girl」は一転、モダン・ロックのマナーにアレンジされた淡々とした叙情を描いたスウィートなナンバー。聴くほどに愛着が増しそうな1曲だ。
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BLUE ENCOUNT
バッドパラドックス
癒えない過去を抱えた刑事と声紋分析官が、生きたいと願う"声"を頼りに事件を追う――日テレ土曜ドラマ"ボイス 110緊急指令室"のテーマにもハマりつつ、バンドとリスナーの関係も同時に表現した新たなBLUE ENCOUNTの挑戦の1曲。辻村勇太のスラップ・ベースと高村佳秀のドラミングが緊迫感を生むイントロからして、従来の16ビート・ナンバーとは異なるテンションを放ち、スリリングな感情を江口雄也のギター・リフやフレーズに託し、田邊駿一はひたひたと迫るトーンで歌う。さらにサビがファルセットなのも新鮮。隙間の多いプロダクションが臨場感も生んでいる。一方、椎名林檎の「ギブス」カバーでは、オリジナルの音像やフレーズを忠実に消化しており、愛の刹那というブルエンではあまり見せない側面に触れられる。
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BLUE ENCOUNT
SICK(S)
インディーズ時代以来のミニ・アルバムという形態にエネルギーが凝縮されている。シリアスなメッセージとラウド/エモと評していいようなサウンドの1曲目「PREDATOR」で、まず今のブルエンがトレンドより己の意思表示を尊重していることは自明だし、メディアやSNSに翻弄される現代の我々の息苦しさを切り取る「#YOLO」もなかなかシリアスでタフだ。しかし、そのシリアスさは嘆きではなく現実をひっくり返そうとするガキっぽい笑顔も秘めている。そこが結成15周年、メジャー・デビュー5周年の今、4人が獲得した強さだ。これまでのブルエン節と言えるビート感や歌詞の世界観を持つ「ハウリングダイバー」や「幻聴」、そして2019年のライヴを観るならマストな「アンコール」まで、最強の解像度だ。
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BLUE ENCOUNT
FREEDOM
TVアニメ"BANANA FISH"の公式サイトに田邊駿一(Vo/Gt)がコメントしているように、ミリタリー・マニアでハードボイルド好きである彼にとって、この原作の世界観と、言葉でもバンド・アンサンブルでもサウンド感でも、BLUE ENCOUNTが今表現したいことが見事に一致した印象だ。インディーズ時代からの個性のひとつであるソリッドなモダン・ロック感は、ここへきてさらに研ぎ澄まされた音像に着地。英詞メインであることが、最小限で挟まれる日本語詞の強度をさらに上げている。c/wの「ミュージック」はめくるめく展開と思わず笑ってしまう皮肉めいた歌詞もタフ。さらに辻村勇太(Ba)の大阪マラソン出場を応援する「それでも、君は走り続ける」が表す、積み重ねていくことの意義。すべてが強くなった4人を実感できる。
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BLUE ENCOUNT
VECTOR
BLUE ENCOUNTというバンドの音楽的な懐の広さと、プレイヤーとしてのスキルやアレンジ力の高さをようやくアルバム単位で痛快なぐらいに表明してくれた! と、思わず笑いたくなる全14曲。疾走感溢れる序盤のナンバーも、速さの質感が「灯せ」と「RUN」と「コンパス」ではそれぞれ違う。ミクスチャーを2018年的にアップデートした感のある中盤も「...FEEL ?」と「ハンプティダンプティ」ではグルーヴのタイプが異なり、1曲1曲、4人が楽しんで追求した痕跡がそのままスカッと形になっている印象なのだ。また、ブルエンの新機軸と言えるシビアな世界を描いた歌詞と、どこかインディー・ロック的なアレンジの「虹」、終盤の一連のラヴ・ソングも驚くほど新鮮。図太さの意味が更新される作品だ。
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BLUE ENCOUNT
VS
ラテンを感じるお囃子ビートから四つ打ち、サウンドの質感はラウド/エモ、そして田邊駿一のヴォーカルはR&Bシンガー・マナーやラップも飲み込んだバウンシーなもの。加えてアウトロには少々EDMのピースまで聴こえてくる。遊び心満載で、それこそ歌詞の一節のように"やんちゃに自分(おのれ)奏で"た、痛快極まりないシングル表題曲である。c/wには夏フェスでのキラー・チューンとして記憶に新しいファストなナンバー「SUMMER DIVE」、ぐっとシンプルなアンサンブルと鼓動のような3連のリフが壮大なロック・バラード「らしく」の2曲が収録され、このシングルの重要性をより際立たせている。戦うべき相手、超えていく作品は過去の自分。ブルエンの表現の深度を表す1枚だ。
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BLUE ENCOUNT
TOUR2017 break "THE END" Makuhari Messe 20170320
ブルエン初の単独幕張メッセ公演の完全映像化作品。この日、その場にいたのだが、映像にメッセージを託したシリアスな「THE END」のオープニングや、これまでと違う演出に目を凝らすファンの表情にもブルエンのニュー・フェーズを再確認して瞠目。メッセをライヴハウス化するアドレナリン大放出のアッパー・チューンはもはや鉄板として、あのキャパの観客が息を詰めて集中する「さよなら」、これまでなら田邊駿一(Vo/Gt)がMCで滔々と思いを語っていた「city」前を言葉以上に刺さる映像で表現したことなど、まさにこのツアーの目標であり真意である、過去や貼りついたイメージを"終わらせる"数々の挑戦が詳細に見られることの意義は大きい。しかも4人は終始笑顔。それも単に無邪気なだけじゃない、バンドの生き残りを賭けた意志が窺える笑顔だ。
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BLUE ENCOUNT
さよなら
ドラマ"THE LAST COP/ラストコップ"に書き下ろした「LAST HERO」とは一転して、聴かせるバラードを映画"ラストコップ THE MOVIE"の主題歌として作り上げたブルエン。出会ったすべての人は必然があり、そのことに対する感謝が飾らない言葉で記された、今、ライヴでもひとつのハイライトを形成しているのがTrack.1の「さよなら」。アコースティックなアレンジも堂々とモノにしているあたりに今の4人の胆力を感じる。カップリングのTrack.2「Wake Me Up」はメンバーのソロ回しもライヴさながらの迫力で、Track.3の「The Chicken Song」は初めて江口雄也(Gt)が作詞作曲を手掛けた理屈抜きに楽しめるストレートなポップ・パンク。曲調は違えど、BLUE ENCOUNTの素直なキャラが滲み出た3曲だ。
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BLUE ENCOUNT
THE END
灯した小さな火を守るような切々とした歌い出しから、その火を聖火台に着火するような展開で聴かせるアルバムのタイトル・チューン「THE END」で、冒頭からこの作品のモチベーションに突き動かされることになる。立て続けにキャリア最強のエモ/ラウド系な「HEART」で腹の底から揺さぶられ、2016年のシングル4作の配置の完璧さにも唸る。また、情景が浮かぶリアリティ満載のラヴ・ソング「涙」、「LOVE」や、ティーンエイジャーの気持ちに戻れる「GO!!」、「スクールクラップ」のブロックも痛快。また、紆余曲折続きの泣けるブルエン・ヒストリーをヒップホップ調のトラックに乗せた「city」は、さりげないが自然と感情が揺さぶられる。最も注目を集める今、露骨すぎるほど率直なアルバムを作ったブルエンに拍手を。
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BLUE ENCOUNT
LAST HERO
ラウド/エモ寄りの楽曲も今のBLUE ENCOUNTが鳴らせば、もはやジャンルというより曲の純粋な強度で幅広いリスナーに届くことを証明するような表題曲「LAST HERO」。世界や他人のせいじゃなく、限界を超えていくのはお前次第――まさに田邊駿一(Vo/Gt)がライヴのMCで表明する覚悟と同質のテンションが宿る曲だ。初回生産限定盤のカップリングにはまっすぐに頂上を目指せと歌う「WINNER」、知る人ぞ知るインディーズ時代からの人気曲「夢花火」のピアノ&ストリングス・バージョンも収録。通常盤のカップリングには早くも武道館公演で披露された「ANSWER」と「YOU」のライヴ音源を収録。特にストリングスとコラボした「YOU」の田邊のヴォーカルに思わず息を呑む、武道館公演のひとつのハイライトと言えるだろう。
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BLUE ENCOUNT
映像で学ぶ!はじめてのブルーエンカウント
いよいよ10月9日の日本武道館公演を目前に控え、ブルエンのライヴ未体験者にも、その本質が伝わる選りすぐりのライヴ映像集がドロップ。古くは2013年の渋谷O-WEST公演から、まだ記憶に新しい6月の新木場STUDIO COAST公演まで、主なワンマン・ライヴから現在のライヴでの代表曲がスピーディな編集でコンパイルされている。ユニークなのは時系列での並びでないこと、そしてあくまでも演奏シーンにこだわった内容ということ。つまり田邊駿一(Vo/Gt)お馴染みのロングMCは現場でしか見られないということだ。しかし、時折挟まれるファンの感極まった表情や、ステージ上のメンバー以上に熱く歌う表情などが、ブルエンのライヴを雄弁に語る。"この空間に参加したい"、そんな渇望を生むリアルな映像だ。
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BLUE ENCOUNT
だいじょうぶ
結成したばかりのバンドのような爆発力と、実はその疾走感の裏に結成からの13年分のスキルがぎっしり詰め込まれた「だいじょうぶ」。歌始まりの"あなたを待ってた/ぼくらは待ってた"から無性に走り出したくなるし、全面的にあなたの存在意義を肯定する田邊のヴォーカルも演奏も、すべてが歌い叫んでいる。2016年の今だからこそ録れた必然のテイクと言えるだろう。カップリングもスキルと熱量が見事に同居。Track.2「S.O.B」は激しいリズム・チェンジや、シーンがガラッと変わる怒涛の1曲。粘着質な歌の主人公のパラノイアックな精神状態をそのまま凝縮したような絶叫マシン級ナンバー。Track.3は笑顔でジャンプする光景が目に浮かぶショート・チューン「GO!!」。武道館ライヴの山場にセットされそうな記念碑的な曲揃い。
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BLUE ENCOUNT
Survivor
早くも4作目となるシングルは、アニメ"機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ"のオープニング・テーマ。アニメが描く、前世代の悪しき遺物を若い世代が覆していくというストーリーが、ラクな道のりではなかったバンド活動を経て、しかし共にいるファンや仲間と固い意志で結びつき、各々の毎日を戦う、そんな彼らのイメージと恐ろしくリンクする。パッと聴きはストレートなサウンドだが、16ビートの様々な解釈、Cメロに乗る"生きて生きて生きて/友を守るその手は/人類史上最強の武器だろ?"のカタルシスは圧倒的。また、対照的に生のドラムを取り込んで縦にきっちり揃えたビート感が2ビートでありつつ、クールなイメージを喚起する、カップリングの「HOPE」も、新しいチャレンジとして聴き逃せない。
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BLUE ENCOUNT
はじまり
"第94回全国高校サッカー選手権大会"の応援歌のために書き下ろした「はじまり」は"確かに僕たちはあの場所に居た"という田邊のヴォーカルから回想するスタイルを持つ、自分自身の苦い10代の思いを含んだリアルな歌だ。求心力を増してきたタイミングで大きなグルーヴを持つバラードにチャレンジしていることも聴きどころで、しかも彼らのエモい部分を損なうことのないアレンジに成功。一転、バンド活動を続ける中で受ける必ずしもポジティヴなことばかりではない言葉から生まれる感情を変幻自在なファスト・チューンに落とし込んだ「パラノイア」が好対照。加えて初回生産限定盤には「もっと光を」、「DAY×DAY」など、ここ2年のライヴ・テイクを10曲収録したDISC2が付属。
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BLUE ENCOUNT
≒
クソったれなのは世の中なのか自分なのか......悩む"みんなの隣"で歌うブルエンが、悲しみを突破する手法としてハードなマイナー・チューン以外の表現力もアップデートし、メジャー初のフル・アルバムに着地。歓喜に溢れたアルバムに仕上がった。まずは生きることを楽しもうぜと言わんばかりの痛快な「KICKASS」に始まり、おなじみの「DAY×DAY」のスリリングな展開を経て、アルバム曲「TAKEN」の高速ビート、一転してこれまでにないオーソドックスなバラード「EVE」、再び緩急のツボを押しまくる既発曲「MEMENTO」「ロストジンクス」でテンションを上げ、ポップな新曲「SMILE」を経ての「もっと光を」という山あり谷ありの11曲。あらゆる感情にコミットし得るキャラクターと真心の籠もった曲が揃う。
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BLUE ENCOUNT
DAY×DAY
ブルエンのメジャー第2弾シングルは、すでにオンエアされて話題の人気アニメ"銀魂゜"のオープニング・テーマ。TVサイズでのサビ始まりとはまた違う、孤独を抱えつつ飛び出したい衝動を抱えた主人公の心象にリンクしていくようなAメロ、Bメロ、そして目の前の光景がパッと開けるような転調するサビの突破力が快感だ。中間部には田邊のラップとミクスチャー系のアレンジも聴ける、スピーディでありながら起伏のある展開も楽しめる1曲。全編日本語詞における躊躇のなさも、さらに高まってきた印象だ。もう1曲の「AI」はライヴ・バンド、ブルエンのこれからがさらに期待できるスケール感とソリッドさを兼ね備え、ひたすら頂点に向けて全力で疾走する演奏の熱量に巻き込まれたい。
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BLUE ENCOUNT
もっと光を
爆発するサビへの最短にして最良の歌始まり。1度耳にすればほぼ自動的に"もっと光を"というサビが脳内ループする。それだけ田邊の中でごく自然に同時発生した言葉とメロディだったのだろう。光に向かってどこまでも走れそうなビートとリフのスピード感、同時に光に照らされるようなサウンドの輝度の高さも両立したギター・ロック/エモをポピュラーに昇華したこれからのブルエンのアンセムになりそうなタイトル・チューン。カップリングはおのおの異なる表情を見せ、トライヴァルでダンサブル、歌詞は過去の自らを笑える余裕を見せる「ワナビィ」、ノン・エフェクトで乾いた音像から始まりダイナミズムを増していく「LIFE」と同じ方向性はない3曲。このバンドの振り幅の広さを端的に理解できる。
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BLUE HAWAII
Untogether
BRAIDSのヴォーカリストRaphaelle Standell-Prestonとトラック・メーカーAlex Cowanによるカナダのモントリオールのエレクトロニック・ドリーム・ポップ・デュオ初のフルレングス・アルバム。2010年に8曲入りのEPをリリースして以来約2年の歳月を経てサウンドも進化しており、ビート・ミュージックのエッセンスが至るところに感じられるバリエーション豊富なリズムと、幻想的且つ神秘的なRaphaelleの歌声の融合がとても印象的だ。Pitchforkでベスト・ニュー・ミュージックを獲得した「Try To Be」は多重コーラスのループと多彩なビートの一体感が心地良く、繊細でドリーミーな楽曲。そこから組曲的な構成の「In Two」と「In Two ll」へ続く流れは必聴。一聴しただけでは拾いきれない様々な要素が組み込まれており、聴くたびに新たな発見ができる楽曲が詰まった作品だ。
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THE BLUE VAN
Man Up
デンマークのガレージ・バンド、THE BLUE VANのサード・アルバム。今作も、60’sマナーな男気溢れるR&Bロックンロールを繰り広げている。男の色気タップリのヴォーカルと切れ味鋭いギター・リフ。時にズシリと、時にねっとりと腰にまとわりつくリズム隊。一聴すると地味に感じるかもしれないが、実はキャッチーでとっつきやすいメロディもいい。KINGS OF LEONやJETと同じく、ブルース・ロックンロールのダイナミズムをしっかりと体現してみせる。土臭さ×男臭さ=セクシーというブルース・ロックの方程式(今、思いついただけだけど)がしっかりと当てはまる。スペシャルな何かがあるわけではないのだけれど、地に足の着いたソウル・ミュージックの心地よい熱量が、アルバムの最初から最後まで詰まっている。
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BLUEVINE
RAINDROP
生熊耕治(cune)、赤松芳朋(SOPHIA etc.)、AKI(Sadie/AXESSORY)という異なるフィールドで活動してきた3人によって結成されたバンドの1stミニ・アルバム。感傷的な空気が立ち込めた「RAINDROP」から、打って変わって爽快感のあるバンド・サウンドを高鳴らす「オワリノハジマリ」、幻惑的なギターを疾走させる「花弁とアガペー」に、強烈な変拍子に身も心もトリップさせられるダーティな「SHEEPLE」、ストリングスを組み込んだドラマチックな「BIRTHDAY」と、どれも歌を楽曲の中心に置きつつ、様々なサウンド・アプローチで魅せる5曲を収録した。聴き終えたあと作品に通底している"生きていくこと"というテーマが胸に深く、温かく残るものになっている。
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BLUR
The Ballad Of Darren
正直、今年の"SUMMER SONIC"の大トリが発表されたときは若干の不安があったがこのアルバムでそんなものは吹き飛んだ。すでに絶賛されているこの8年ぶりのオリジナル・アルバムの魅力は傑作『Modern Life Is Rubbish』(1993年)以来のほぼメンバーのみで作り上げたサウンドなこと。英国的な捻ったセンスはギターのGraham Coxonの個性によるところが大きいが、今回のインディー・ギター・ロック・サウンドはまさにそれだ。Track.2のニヒル且つユーモラスなギター・リフ、Track.11の少し調子っぱずれなギター・リフなど、これぞUKのギター・ロックだ。斬新さはないけれど、いいギターの音といい歌メロと悲哀とロマンはこんなにもエモーショナル。サマソニでは過去曲との親和性の高さを実証しそう。
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BLUR
The Magic Whip
九龍のスタジオでの5日間のレコーディングはまるでインディー・バンドのようだったことはインタビューで明確になったが、仕上がりのいい意味で余白の多い音像にもそれは現れている。Graham Coxonのクランチ気味でどこか神経症的なギターのTrack.1、まさに"BLUR=模糊"なニュアンスな投げやりなDamon Albarnの歌やコーラスが聴けるTrack.3や、シンセ使いがシニカル風味のポスト・パンクなTrack.6などの不変の英国的センス。かと思えばエレジックなTrack.8や、サイケデリアに彩られたブルージーなTrack.12なども。現行の若い世代のバンド......例えばPALMA VIOLETSやSAVEGESの荒削り、もしくはBELLE AND SEBASTIANの繊細......どちらが好きな人も改めてベテランの才能を知って欲しい。
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Bob is Sick
手を伸ばして
音も言葉も想いも爆発している。Bob is Sick、大躍進である。名古屋を拠点に活動中の4ピースの、全国流通盤としては2作目となるアルバムは、聴いている人間の手を無理矢理取って優雅なダンスを踊るような軽やかさや夢に溢れた作品だ。緩急のあるドラミングが楽曲にうねりを生み、ベースは楽曲に合わせて変幻自在にアプローチを変え、表情豊かなギターは楽曲に彩りを添える。ギター・ロックとひと言でまとめるにはテクニカルで癖がありすぎる楽器隊によるサウンドと、まっすぐ大きく歌うヴォーカルを聴いていると、この世には無理なことなんて何もないんじゃないかという気さえする。その理由は、感傷を乗り越えた人間の精神力と説得力。闇を光に塗り替える、彼らの音楽にはそんなパワーがあるのだ。
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Bob is Sick
sokokala
"押しつけがましかったり、痛かったりするくらいじゃないと、言葉は残しにくい"とフロントマンの久世悠喜は言う。それは人を傷つけるためではなく、人を奮い立たせるための衝撃と刺激だ。底にいた自分がスタート・ラインに立つために書いた言葉でもって、彼はリスナーを叩き起こそうとしている。SAKAE SP-RINGの主催でも知られるラジオ局、ZIP-FMが擁するレーベル"ZIP NEXT"からデビューするBob is Sick。2000年代ギター・ロックの系譜を辿る誠実なアプローチに、時折垣間見られるジャズの影響、ポスト・ロック的なドラミングが奥行きを作り出す。周りがどうこう言おうと、自分自身が動かなければ何も始まらないし変わらない。だから彼らは"いつか必ず君の夢を形にしろよ"と、あなた自身のことをあなたに委ねて歌う。
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