DISC REVIEW
B
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BIFFY CLYRO
Only Revolutions
前作『Puzzle』で全英2位を獲得し、スターダムにのし上がったスコットランドのBIFFY CLYRO通算5枚目のアルバムとなる本作。力強いメロディとアグレッシヴなオルタナティヴ・サウンドには、ダイナミックなロマンが感じられる。細分化の流れが加速する現代のシーンは、面白い音が次から次へと登場する反面、小粒な印象は否めない。それはそれで僕は楽しいし、皆も楽しんでいるだろう。だが、ロックという言葉自体が、もっと普遍的でドラマチックな輝きを失っていくようにも映る。僕が彼等の音にその輝きを感じるのは、90年代オルタナへの懐古趣味なのかもしれないが、このアルバムが持つ輝きはそんなものではないはずだ。ここには、男のロマンが鳴っている。特にM-3「Bubbles」には目頭が熱くなる。
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BIGMAMA
Strawberry Feels
待望のメジャー1stシングル。3曲すべてのタイトルに食べ物の名前を使ったBIGMAMAらしいコンセプチュアルというか、遊び心が感じられる1枚だが、楽曲はライヴ・シーンを沸かせてきた彼ららしいアッパーなロック・ナンバーの3連打。2ビートで突き進む......と思わせ、ハード・ロッキン且つプログレ的な展開に意表を突かれる表題曲。あっという間に駆け抜けるメロディック・パンクのTrack.2「POPCORN STAR」。そしてグラッジなリフと言葉を投げ掛けるようなヴォーカルが印象的なTrack.3「Donuts killed Bradford」。緊張感に満ちたヴァイオリンのフレーズをはじめ、BIGMAMAらしさの中に巧みに新境地も溶け込ませ、単純にライヴ映えするというひと言では収まりきらないものに仕上げている。
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BIGMAMA
Fabula Fibula
2月10日の恵比寿LIQUIDROOM公演で初披露した「ファビュラ・フィビュラ」で幕を開ける7thアルバム。ライヴ・アンセムとしてすっかり定着しているTrack.2「MUTOPIA」など、お馴染みの曲も含む全14曲を収録。それぞれの曲に(架空の)街の物語とテーマが込められ、アルバム1枚でひとつの地図ができあがるというコンセプトのもと、多彩な曲が散りばめられているが、ハード・ロッキンな「ファビュラ・フィビュラ」を始め、大人っぽい曲がグッと増えてきたという印象だ。ファンキーな演奏と哀愁のメロディが絶妙に入り混じるTrack.5「BLINKSTONEの真実を」、しっとりと聴かせるバラードのTrack.10「レインコートになれたなら」に今年、10周年イヤーを迎えるBIGMAMAの成熟を聴き取りたい。
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BIGMAMA
SPECIALS
昨年のツアーに密着したドキュメンタリーとツアー・ファイナルとなったZepp東京公演を収録した映像作品と同時リリースするニュー・シングル。すでにライヴで披露され、新たなライヴ・アンセムの誕生を印象づけている表題曲は、EDMにアプローチした「MUTOPIA」から一転、メンバー5人だけで演奏したエモーショナルなロック・ナンバー。昔からのファンは彼らがYELLOWCARDに憧れてスタートしたバンドであることを思い出すに違いない。カップリングの「A Chocolate Ghost」は1ヶ月遅れのバレンタイン・ソング(?)。歌詞、アレンジともに彼ららしい遊び心が感じられるダンサンブルなポップ・ナンバー。前述のツアーの追加公演から「最後の一口」と「MUTOPIA」のライヴ音源が加えられている。
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BIGMAMA
MUTOPIA
今回のシングル『MUTOPIA』は、地域ごとに歌詞が違うご当地限定曲を収録という試みのある盤。タイトル曲とTrack.2の「SKYFALL」は共通で、Track.3に全国を7地区に分けてそれぞれの土地の光景や空気が盛り込まれた「MUTOPIA」のご当地版を収録。"MUSIC=音楽"、"UTOPIA=楽園"とを掛け合わせ、音楽の力でどんな場所も楽園にという思いが形となった。アルバム『The VanishingBride』でサウンド・スケープや曲が持つ昂揚感やエネルギーを最大限まで高め、バンドとしての創造性や、フィジカルなバンド力においても豊穣の時を更新している現在。BIGMAMAならではのスウィートなサウンドに、エレクトロの煌びやかさと躁的なエネルギーを注入した「MUTOPIA」の晴れやかなパンチは、これからの活動の新たなカンフル剤となりそうだ。
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BIGMAMA
君想う、故に我在り
BIGMAMAの通算5作目となるアルバム。コンセプトは"最低で最高な愛"。リリースを重ねる度にこのバンドの音は確実に洗練され、限りなく繊細な音の束は今作でとうとう空気を創り出す。昨年リリースされた各シングル曲に共通して感じた気配が形になった。プレイヤーの再生ボタンを押した途端、どこまでも広い青空と爽やかな風の中に浮かんでいるような錯覚に陥る。どのあたりが"最低"なのだろうと首をかしげてしまうのは私の未熟さゆえだろうか。まるでステップを踏むように軽やかに"愛"が奏でられる。清々しく、幸せに溢れた空気が"最高"に気持ち良くて、思わず深呼吸がしたくなる。春の穏やかな日差しと暖かいそよ風を感じたら、今作をプレイヤーに入れて出かけよう。
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BIGMAMA
Jeffrey Campbellのスケートシューズで
大切な人の誕生日って自分の誕生日より大切で特別なもの。いつもより少し背伸びしたお洒落な渾身のバースデイ・プレゼントを用意して、それを受け取って喜んでくれる大切な人の笑顔を想像して、さあ今から会いに行こう。そんなワクワクした足取りを思わず連想させるようなBIGMAMA流バースデイ・ソング。BIGMAMAならではのヴァイオリンの華やかな音色がバースデイに相応しい彩りを添える。ファンにとってはBIGMAMAからのクリスマス・プレゼントだ。Track.2の「負け犬と勝ち猫」はギターのワウが"負け犬"、撫でたヴァイオリンの旋律が"勝ち猫"というコミカルな1曲。そして、負け犬にならないように必死に猫を被る姿の描写はなんともシニカル。さて、貴方は"負け犬"と"勝ち猫"、どちらだろうか。
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BIGMAMA
風船夫婦の俯瞰show
BIGMAMAの今年2枚目のシングルはダブルA面。Track.1はドイツ産天然炭酸水"GEROLSTEINER(ゲロルシュタイナー)"の音楽プロジェクト"GEROCK(ゲロック) "タイアップ曲だ。炭酸水の気泡を風船に例えた爽快感溢れるこの曲はまさに夏フェス向き。爽快な曲が多いBIGMAMAの曲の中でもまさに"キング・オブ・爽快感"。きっと今年の夏も各地で盛り上がったに違いない。そしてTrack.2は"俯瞰"をテーマにした異色のナンバー。コンプレックスを歌っているのだから当然ネガティヴな言葉が連なるのだが、それでも尚ポジティヴに仕上がっている秀逸な歌詞に舌を巻く。そして、"不感"と掛けた言葉遊びと軽快なリズムが、歌詞の内容とは裏腹に妙にお洒落なロックである。
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BIGMAMA
君がまたブラウスのボタンを留めるまで
“僕にとっては音楽というのは1対1のコミュニケーション・ツールだということ。直接言えないことや照れくさいことも、音楽にすると一歩踏み込んで話せる”これは紙資料に書いてある金井政人(Vo&Gt)の言葉だ。世間に絶望しようと喪失感に苛まれようと、愛に溢れた、等身大の人間の姿がありのままに描かれた歌詞。スピード感溢れるエネルギッシュなバンドとヴァイオリンの情緒的な音。気になるアルバム・タイトルもさることながら、音と言葉が相まって、彼らでしか鳴らせない世界を生み出し、心を躍動させ涙腺を刺激していく。「秘密」や「#DIV/0!」といったシングル曲やライヴでおなじみのナンバーも収録。聴いた各々が様々な感情を抱く、音楽ってやっぱりコミュニケーションだ。
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BIGMAMA
秘密とルーシー
昨年はロックとクラシックを融合させたコンセプト・アルバム『Roclassick』などで話題を集めたBIGMAMA。2011年初リリース作品となる今作は「秘密」と「Lucy」の両A面シングルだ。滲むように広がるギターと流線形を描くように繊細なバイオリンのイントロが印象的な「秘密」は、天国へと旅立ってしまった恩人との約束について歌われている。切なさと物悲しさを含みながらも、そんな涙を吹き飛ばすような爽やかさと力強さ。5人のどこまでも真摯でポジティヴなエネルギーを真っ向から受け、忘れかけていた純粋な感情と熱い思いが込み上げてきた。「Lucy」は、炸裂するドラムが軽快な、疾走感溢れる全英語詞のポップ・ナンバー。BIGMAMAの無邪気さが凝縮された非常に瑞々しい1曲だ。
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BIGMAMA
and yet,it moves~正しい地球の廻し方~
2001年に東京で結成された、女性ヴァイオリンを含む5人組ロックバンド。一度彼らのライヴを観たことがあるのだが、メンバーの確かな演奏力と、モッシュやダイヴで応戦するキッズの熱狂が強く印象に残っている。昨年12月にセカンド・アルバム『Dowsing For The Future』をリリースし、一年を待たずにこのサード・アルバムが発表されるわけだが、今作もBIGMAMAらしいパワフルでエモーショナルな曲が満載で、時に全体のメロディーを牽引するヴァイオリンの音色と、透き通った歌声とのコントラストが大きな魅力となっている。"全曲を通して、一つのストーリーで繋がるコンセプシャルな小説的アルバム"ということで、特に曲と曲との繋がりや歌詞に注目して、自分なりの解釈を楽しもう。
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THE BIG MOON
Here Is Everything
UKロンドンの4人組女性ロック・バンド、THE BIG MOONが3rdアルバムを発表。ヴォーカルのJuliette Jacksonの出産を経てリリースされる本作は、パンデミックやロックダウンによる重圧や、母親となり感じた興奮や不安といった様々な感情が反映されたものに。美しいハーモニーで奏でられるインディー・ロック・サウンドを軸に、叙情的な調べが胸を打つ「Wide Eyes」、ドリーミーな世界へと誘う「Daydreaming」、軽快なビートを鳴らす「Trouble」など、今だからこそのピュアな優しさを湛えた楽曲群で聴く者を包み込んでくれる。エモーショナルなコーラスが映える「High & Low」、素朴なラスト・トラック「Satellites」も秀逸で、物思いにふける秋にぴったりな作品だ。
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THE BIG MOON
Walking Like We Do
各地で絶賛された前作から約3年。ロンドンを拠点に活動する、4人組ガールズ・インディー・ロック・バンド THE BIG MOONが、2作目となるニュー・アルバムをリリースした。今作はKAISER CHIEFSやDEERHUNTER、M.I.A.など幅広いアーティストを手掛けるBen H. Allenをプロデューサーに迎え、より丸みのあるポップなサウンドへと進化。独特の気だるい雰囲気とノスタルジックな印象はそのままにサウンドの厚みが増して、さらに全方位的に楽しめる作品となった。目の前に情景が広がるような物語性のある楽曲の数々は、まるで青春映画のサウンドトラックのようだ。ワールド・ツアーを経て彼女たちが歩んできた濃密な音楽体験が凝縮されている。
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THE BIG MOON
Love In The 4th Dimension
ロンドンを拠点に活動する4人組ガールズ・ロック・バンド、THE BIG MOON。彼女たちが、CRYSTAL CASTLESやKAISER CHIEFSも所属するUK老舗レーベル"Fiction"と契約し、デビュー・アルバムをリリース。PIXIESを彷彿とさせる穏やかさとノイジーさのコントラスト、そしてJuliette(Vo)の美しく哀愁漂うハーモニーと軋むギター・サウンドのミックスが、なんともクセになる。そして、とにかく曲の展開が読めない。Track.3「Cupid」のようにノスタルジックで穏やかな曲かと思えば、サビにかけて静寂を破るダイナミックな展開にいい意味で何度も裏切られる。飾り立てないサウンドに彼女たちの底知れぬポテンシャルを感じる1枚だ。
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THE BIG PINK
Future This
悲しみに満ちた痛々しくも美しい愛の物語を散りばめた『A Brief History Of Love』で、UKシーンに大きな衝撃を与えたTHE BIG PINK。そんな鮮烈デビューから早2年……第2章となる本作は、前作同様Phil Spectorの“ウォール・オブ・サウンド”を彷彿とさせる完成度の高いポップ・アルバムに仕上がった。前作は彼らの失恋直後に作られた作品ということもあり、ポップでありながらも大きく影を落とした悲哀の色を滲ませていた。だが今作は違う。前に突き進もうとするポジティヴなエネルギーが詰まっているのだ。「Stay Gold」や「Hit The Ground」で聴けるアンセム級のフックが何よりもそれを強く感じさせる。2012年、輝かしい未来の幕開けにふさわしい、多幸感に満ちたアルバムだ。
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THE BIG PINK
This Is Our Time
近年のUKインディ・ロックにおいて重要な役割を担ったレーベルMerokを主宰するMilo Cordellと、Robbie FurzeによるユニットTHE BIG PINK。エレクトロ・ビートと乱反射するノイズ、引き込まれるようなメロディがかけ合わさって生まれる耽美的な音像の中で、憂いを帯びた声で彼らは絶対的な美や愛とそれ以外について歌う。当然ながら、世の中はそれ以外のことばかり。どうせ心は唯一絶対の愛しか求めていないから、誰と寝ても同じだと。唯一絶対のことだけを信じようとすることの憂鬱や空虚感。彼らは、そうした人間の感情に仄かにスポットライトを当てる。このメランコリックな世界観をライヴではどのように再現するのか。初来日となるSUMMER SONICを楽しみに待ちたい。
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Bill Wells
Lemondale
奇跡を操るとまで形容されるスコットランドの奇才Bill Wellsがかねてから親交のあったテニスコーツ、二階堂和美、Jim O'Rourke、青柳拓次ら日本人のミュージシャンと作り上げた今作。彼の音楽は圧倒的に美しい。勿論今作のベースになっているのもジャズなのだが、わずか1日という限られた時間で、彼の描く華美な装飾の施されていない美しい世界を、日本を代表するミュージシャンたちが自由に紡ぎあげていった様子が窺い知れる。そしてアルバムの半分を占める二階堂和美とテニスコーツのさやがヴォーカルを務める楽曲では、彼女たちの新たな側面を引き出し、アルバムに色を添えている。Jim O'Rourkeが参加しているから持ち出すわけではないが、まるでGASTR DEL SOLのような、甘美な完成されたポップ・ミュージックだ。
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BILLY BOY ON POISON
Drama Junkie Queen
LA出身、平均年齢18歳のBILLY BOY ON POISON。・・・こいつら、本当に18歳か?年齢詐称してないだろうな。まあ、そんなことしてもしょうがないけど。DAVID BOWIEやT- REXのようにグラマラスで、NY DOLLSのようにゴージャス。煌びやかなロック・スター達が持っていた雰囲気のおいしいところが詰まっている。NY DOLLSがハード・ロックにもNYパンクにも影響を与えたように、彼等の音楽もどこにでもいける要素が詰まっている。「On My Way」や「Drive Me Insane」などは、JET「Are You Gonna Be My Girl」のようにキャッチーだ。最近、こういう派手で分かりやすいロックはあまり出てこないから、逆に新鮮。それにしても、18歳か。
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BimBamBoom
PILI PILI
16ビートのグルーヴィなファンク・ナンバーが軸にありつつタイトなリズム、ガレージ系やポスト・パンクの匂いも感じるギターがオルタナティヴな、BimBamBoomならではのインストが詰まった4作目のアルバム。今回は2021年からスタートしたコラボ楽曲のバンドでのリミックス6曲と新曲4曲から構成されているが、xiangyuとコラボした「そぼろ弁当」での、新世代ハウス・ミュージックであるGqom(ゴム)へのチャレンジは、インストでさらに際立つ印象だ。アルバム・リード曲の「THE WOMAN」は、幕開けに相応しいテーマ曲的なムードを、ハードなギターをはじめとするアンサンブルで表現している。シンプルなワードが乗ることでジャズ・ファンクに軽妙な痛快さが加味される「AKKAN BEE」、ダビーな音像の「RollerCoaster」など、一気に聴ける全10曲。
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BimBamBoom
Tokyo Aventure
中国ツアーも大成功となったBimBamBoomが、"東京"の看板を背負い世界に向けて放つ3rdアルバム。表題曲では"雷門"、"スカイツリー"と東京の名所が登場、ラスト・トラックのタイトルには日本の象徴"富士山"も。TVCMタイアップ曲も収録され、インストながら親しみやすいキャッチーさを持ち合わせつつ、そのファンキーなサウンドは攻めに攻めまくっている。ドラムの張りきったスネアが甲高くパリッとしたビートを刻み、いきいきと躍動する小気味よいベース。新メンバー 矢元美沙樹(T.Sax)がもたらす新たな色はもちろん、より音色の幅を広げたキーボードやギター、キュートさにクールさも加わったコーラスなど、厚みを増したバンドの進化が随所に。ジャンルの壁も国境も痛快に越えていく彼女たちに注目。
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BimBamBoom
Shinzo BakuBaku
ユニークなオルタナ・ファンクを鳴らすインスト・バンドの2ndアルバムは、ご機嫌な雰囲気はそのままに、前作に比べより骨太な印象に仕上がった。どっしりと地面を揺らすようなベースとドラムの上で、ハードなギターと歌い叫ぶようなサックスが暴れ回り、さらにその上を軽やかに浮遊するシンセサイザー。初っ端からガツンと鳴らす「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」では、エッジィなサウンドと人懐っこいコーラスのコントラストがメリハリを効かせている。ゴリゴリなサウンドを響かせたかと思えば、「Keeping It Hustle」ではグルーヴィ且つトリッキーなドラムとメロディアスなサックスが小洒落たムードを醸す。カバー曲も収録され、遊び心満載のバラエティ豊かな9曲に心躍る。
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BimBamBoom
TIGER ROLL
山口美代子(Dr)を中心に結成され、"フジロック"への出演も話題となった女性5人組インスト・バンドのデビュー・アルバムは、いい意味で肩の力が抜けた独自のオルタナ・ファンクを軽やかに鳴らしている。洒落が効いたタイトルのオープニング曲「O.E.C. Tiger roll」で鍵盤、ギター、ドラム、ベース、サックスと軽妙なソロ回しを披露しさらっと自己紹介を済ませると、「ChinPunKanPunBimBamBoom」の一緒に口ずさみたくなる語感のいいコーラスが生む親しみやすさでリスナーを虜に。そしてアメリカのファンク・バンド PEOPLE'S CHOICEやTHE METERSのカバーをメドレーで収録するなど、やりたいことを詰め込んだ奔放さと自由さ。純粋な"音楽の楽しさ"にワクワクが止まらない。
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BIN
Melt
山上(Vo)、トマト(illustration)、T(music)からなる音楽ユニットによる、約3年ぶりのアルバムであり、2ndアルバム。ジャジーな大人っぽいムード、シティ・ポップな懐かしさ、オリエンタルな情緒など、様々な舞台を行き来するトラックの上で、凛と澄んだ山上の歌声が響き渡る。全員が"ここでしかできない"、"今しかできない"ことに挑戦していると伝わってくる、実験的な表現の数々。イラストのトーンが象徴的だけれど、ほとんどの楽曲に共通しているのは、ひんやりと鋭利な質感だ。様々なジャンルや音色を包括する"なんでもあり"なカオスの中に、刹那や孤独が"当たり前にある"と感じられる世界観は、現代の写し鏡のよう。ラストの「Sybil」のアコースティックな温かさが、救いのような余韻を残す。
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BIN
COLONY
3人組音楽ユニット BINによる待望の1stアルバムが完成した。代表曲とも言える「チルドレン」は大人への"猜疑心"をハスキーな歌声に乗せて訴えており、聴き手の年代に問わず心にグサリと刺さるものがあるだろう。さらに、悲劇をジャジーに奏でる「インスタント」、ダークネスと和テイストを融合させた音を鳴らす「灰燼」、退廃的な歌詞とエレクトリックなサウンドが印象的な「シニカル」など、どことなくメランコリックな雰囲気を漂わせる。全面的に鬱屈な感情を曝け出しもがく姿は、絶望を表しているのではなく、理不尽な世界であっても強く生きていく決意表明のようにも感じる。そんな3人が生み出す、冷たくも孤独にさせないような独特の世界観にいつまでも浸っていたいと思ってしまう。
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The Birthday
LEMON
ただ生身の自分でいることで繰り出せるパワーやその状態の清々しさをバンド・アンサンブルで表現した前回のシングル「さよなら最終兵器」も屈指の名曲だったが、その精神状態と地続きな"こんな思いひとつで、いつでもどんな時でもまっさらな自分に戻れるかもしれない"、そんな一筋の希望を感じさせるナンバーの登場だ。夜明け前のいちばん蒼が濃い時間、夜明けに向かって覚醒していくような、淡々としたミドルのテンポと少ない音数が少しずつ熱を帯びていく。チバユウスケは具体的に鼓舞する言葉は何も綴っていないが、寒風の中でこそ感じる温かさのようなものや自分の鼓動を感じる。カップリングはちょっとダルでワイルド。"ロックンロール以上に楽しいものなんてあるのかい?"、しかも割と真顔で言い放ってるフシがある。
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BiS
Hey boy hey girl
表題曲は90~00年代のポップ・ロックが香り立つ「Hey boy hey girl」。カラっとしたギター・サウンドに乗せて"今"の大切さをひたむきに歌い続ける10代女子の歌声が眩しすぎる。"今"を全力で生きている人にも、"今"まさに一歩を踏み出そうか迷っている人にも届いてほしい、BiSからのメッセージ・ソングだ。c/wの「ONCE AGAiN」は、感情の起伏を表現するかのように緩急を効かせた1曲。溜め込んだエネルギーを爆発させるサビメロがとにかくエモーショナルで、音源だけでも目頭を熱くしながら拳を握りしめそうになるほど。なお本作は、温度でジャケットが浮き出るサーモクロミック仕様。隠されたジャケットは全5種類ということで、何が浮き出るかはCDを手に取ってからのお楽しみ。
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BiS
DA DA DA DANCE SONG
約2年ぶりの新メンバー ナノ3が加入したBiSの新体制初シングル。その表題曲「DA DA DA DANCE SONG」は、過激な単語が散りばめられたBiS流の攻撃的なダンス・ロック・チューンだ。BiSのライヴの魅力のひとつに研究員(※BiSファン)と一緒に踊り狂うことがあるとすれば、"なぜ今までなかったんだ?"と感じてしまうくらいにジャンルとの相性の良さを感じさせる。c/wは、表題曲とは対照的にミドル・テンポでゆったりと歌う「とまらない歌」。自分らしさや夢に思い悩む人の背中を押す歌詞にも捉えられるし、視点を変えると全然違うことを歌っている歌詞にも見えるのは、作詞家の妙技だろうか。2曲共に、ナノ3のまっすぐな歌声により先輩メンバー4人の個性もより映えている。今後が楽しみだ。
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BiS
BiS DiVE into ROCKS
BiSが90年代後半~00年代前半の日本ロック史に名を刻む名曲の数々をカバーした。「MAGIC」(HAWAIIAN6)、「BASIS」(BRAHMAN)ほか、どの曲をピックアップしていいかわからない超豪華ラインナップだが、ニヤリとさせられるジャケットとMVを制作し、気合の入れようを感じさせるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「スモーキン・ビリー」で、女性アイドル4人が堂々と、狂気を孕んで歌い上げる様は痛快のひと言だ。カバーによって、4人の歌唱の個性が逆に際立っているように感じられる点も興味深い。当時ロック・キッズだった方はあの日の熱気と匂いを思い起こすだろうし、リアルタイムで体験していない10~20代のリスナーは、ぜひオリジナルと聴き比べてほしい。
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BiS×ZOC
割礼GIRL/BEGGiNG
タワレコ渋谷店でダブル・ブッキングが発生し、急遽合同イベントを行ったBiSとZOCがスプリット・シングルをリリース。ZOCからは大森靖子がBiSへ、BiSサイドからはサウンド・プロデューサー 松隈ケンタとマネージャー 渡辺淳之介の黄金タッグがZOCへ楽曲を提供した。前者の「割礼GIRL」は、愛のあるディスを大森靖子節のメロディに乗せて歌い上げるBiSメンバーの歌唱が聴きどころ。後者の「BEGGiNG」は松隈ケンタらしいエモーショナルなロック・ナンバーで、ZOCメンバーの新たな魅力を引き出した。"もしWACKに入っていたら?"なんて想像しながら聴くと楽しいかも。さらにはお互いの代表曲に大胆なアレンジを施したカバーも収録。奇妙な縁から始まった、ワクワク、ゾクゾクする1枚だ。
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BiS
KiLLiNG IDOLS
プライベート・レーベル"ULTRA STUPiD RECORDS"を設立しての初フィジカル作品。本作には、クールなラップ風パートからエモーショナルなサビメロへ急旋回する「COLD CAKE」のように新機軸で魅せる曲もあれば、90年代メロコアを想起させ、シンガロング・パートが熱い「GOiNG ON」のように、彼女たちの十八番とも言うべきナンバーも収録された。強い生命力を感じさせる歌詞が多く、2020年を生き抜き、これからもBiSとして研究員(※ファン)と生きていこうとする気概が窺える。初回生産限定盤には、2020年のラスト・ライヴとして開催した"The DANGER OF MiXiNG BiS"のライヴ映像を収録。EPとライヴ映像で、BiSの新境地と真骨頂の両方を感じ取れる作品だ。
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BiS
"プロパガンダ"と"PROPAGANDA"
研究員(※BiSファンの総称)によるファン・セレクト・アルバムが完成した。本作は2枚組のアルバムで、1枚目"プロパガンダ"には研究員がセレクトした上位10曲に新曲を加えた計11曲を収録。ファン・セレクト上位10曲のみが収録されている2枚目の"PROPAGANDA"は、CD購入者がBiSの良さを伝える、いわゆる"布教"用のディスクになっている。新曲は「HiDE iN SEW」。全英詞で綴られた歌詞を歌い上げる4人のエモーショナルな歌唱、情感を増幅させるピアノの旋律、これらを支えるロック・サウンドが一体となった音像は聴き手の心をぐっと掴み、涙を誘う仕上がりに。BiSあっての研究員、研究員あってのBiS、両者の組体操で築かれたタワーが夢の舞台である日本武道館へ届くことを願う。
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BiS
ANTi CONFORMiST SUPERSTAR
即完したゲリラ・リリース作品を含む第3期BiSのメジャー1st EP。開幕の「DESTROY」は、"敷かれたレール壊し/ギャンギャンならそう/うわべだけなら死んで欲しいです"と歌う攻撃的な歌詞が痛快だ。スカのビートで心躍るAメロ、Bメロから疾走感のあるサビメロへの流れもいい。衝撃的なMVが公開されている「CURTAiN CALL」は、タイトル通りにライヴのフィナーレで最大威力を発揮しそうな1曲。"死ぬまで歌わせてよ"と、BiSとして歌い続ける気概に胸が熱くなる。個人的な推し曲はパンク・ロック調の「DiRTY and BEAUTY」。大枠としては恋愛をテーマにしている曲と捉えられるが、心の中に美醜が共存する人間臭い歌詞がとにかく突き刺さった。ライヴで聴ける日が待ち遠しい......!
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BiS
LOOKiE
モザイクの掛かったインパクト大のジャケット(とタイトル)が目を引くが、その衝撃度にまったく見劣りしない傑作が誕生した。そんな2ndアルバムの随所から感じられるのは、90年代ミュージックの香りだ。リード曲は「BASKET BOX」。90年代パンク・ロックの匂いを醸し出すサウンドに乗せて"教えてください/ひとをぶつのは悪いことですか?"とまっすぐに問い掛ける言葉を聴いて、自然と自分自身を見つめ直してしまうリスナーもいるのでは? さらに90年代ポップスを想起させる「LOVELY LOVELY」のような曲もあれば、BiSらしいアグレッシヴなロック・チューンもあり。その時代をリアルタイムで生きた、かつてのキッズたちはもちろん、当時を知らないリスナーにもレコメンドしたい1枚。
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BiS
DEAD or A LiME
何かと話題に事欠かない破天荒アイドル 第3期BiSが、メジャー・デビュー・アルバムに続きメジャー1stシングルをドロップ。アグレッシヴなロック・チューン「DEAD or A LiME」では、ジャケット写真から伝わってくる獰猛で攻撃的なイメージの通り、強烈に歪ませたギター・サウンドが洪水のように襲ってくる。そんな音像に負けない、燃え滾るようなエネルギーの感じられるリリックと、それを吐き捨てるように歌い上げるメンバーのヴォーカル・ワークによる凶悪な三位一体は、デビューしたばかりとはいえ、すでにシーンにおいて唯一無二と言える。c/wは、疾走感のあるバンド・サウンドの「テレフォン」。フロアが揉みくちゃになっている画が容易に想像できるライヴ映え間違いなしの1曲だ。
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BiS
Brand-new idol Society
新メンバー5人で結成され、第3期として始動したBiSの再々デビュー作。既存曲一切なし、全13曲を新曲で構成した本作では、オープニングの「STUPiD」でこれまでのBiSの系譜を継ぐストレートなギター・ロックを鳴らし、続くリード曲「BiS-どうやらゾンビのおでまし-」で、BiSを体現する言葉"行かなくちゃ"を感情が溢れんばかりに歌い上げる。BiSらしい作品でありつつ、ポップでちょいエロ(※作詞者いわく非エロとのこと)な「teacher teacher teacher」、爽やかな自己紹介曲「LET'S GO どうも」と、第3期としての新境地も感じられる1枚に。個性が光る各々の歌声にも注目したい。果たして"三度目の正直"として念願の日本武道館に立ち伝説の5人となるか。
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The Biscats
Teddy Boy feat. TeddyLoid
日本のロカビリー・シーンのレジェンド、久米浩司(ex-BLACK CATS/MAGIC etc.)のDNAを受け継いだシンガー、Misaki擁する4人組の初EP。彼らが掲げる"ハイブリッド・ロカビリー"=現代に相応しい新しいロカビリーは、DJ/プロデューサーとして活躍中のTeddyLoidとのコラボによってさらなる進化を遂げている。王道ロカビリー「Teddy Boy」、ロックンロールの「Hot and Cool」共に、"feat. TeddyLoid"バージョンとエネルギッシュなバンド・バージョンを収録。聴き比べることで彼らがやりたいことがより明らかに。「magic hour」はオールディーズ風のバラード。スライド・ギターやベースのサスティンを交えた繊細なプレイも聴きどころだ。
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BiSH
UP to ME
BiSHの12ヶ月連続リリース第9弾シングル。表題曲「UP to ME」は、国立科学博物館 特別展"毒"のタイアップ・ソングということで、歪んだ歌とサウンドで毒をまき散らすような印象を受ける仕上がりに。もがき続け、足掻き続けながら前へ前へと進んでいく意志を感じさせる言葉の節々が、彼女たちがこれまで歩んできた道を想起させる。カップリングの「YOUTH」は、メンバーのセントチヒロ・チッチが作詞だけでなく作曲まで手掛けた王道のメロコア・ナンバー。"スピーカーの中生きている/僕等の命たち"という歌詞は、解散を控えた彼女たちが歌うからこそグッと来るものがある。チッチの中にある熱さ、優しさを、隣で一緒に歩いてきたメンバーがそれぞれの個性を発揮しつつ歌う様もエモーショナルだ。
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青虫
103号
楽器を持たないパンク・バンド BiSHのメンバー、そしてロック・バンド PEDROのフロントマンとしての顔を持つアユニ・Dが、また新たな表現の場に歩みだした。それがこの歌い手プロジェクト"青虫"だ。昨年末から名前を伏せて"歌ってみた"動画をアップしてきた彼女が、いよいよボカロP くじらのサウンド・プロデュースによるデビューEP『103号』をリリース。オープニングの「ケーキみたいだ」で、メロウなサウンドに寄り添ったアユニ・Dの新たな歌の表情を見せられて早速驚かされる。そのほか、落ち着きながらも自然と小さくリズムを刻んでしまうアーバンなナンバー「ゆぶね」など全4曲を収録。曲ごとに彼女の知られざる魅力を発見できる驚きと、全体的な聴感の心地よさがたまらない作品に仕上がった。
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BiSH
GOiNG TO DESTRUCTiON
ケースにヒビ割れの特殊加工を施した"破壊盤"でも話題の、メジャー4thアルバム。"GOiNG TO DESTRUCTiON"のタイトルにも表れている通り、本作のキーワードは"破壊"。ひと言で"破壊"と言っても、迷いや焦燥感に立ち向かって内外の壁を壊して進んでいく意志だったり、新たな創造のための破壊だったり、様々な解釈で捉えられた"破壊"が本作に潜んでいるように思えてならない。BiSH節全開の「CAN WE STiLL BE??」から始まり、アユニ・Dが作詞した、人肌のような温かみを持つ「STAR」で締めくくるまで、全14曲の重厚な1枚に仕上がった。メンバーの個性を生かしたソロ活動も増え、たくさんの刺激を貰ってアーティストとして成長をしていった個々の表現力にも注目。
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BiSH
REBOOT BiSH
BiSHと清掃員(※ファンの総称)の再会。332日ぶりの有観客ライヴが映像作品化された。開幕でメンバーひとりひとりから届けられた"ただいま"の声に、このライヴへ懸けた想いが滲み出る。コロナ禍で制作されたBiSHから清掃員への手紙「LETTERS」を感情たっぷりに届けてからは、これまでの鬱憤を晴らすように、一転してアグレッシヴな攻めのセットリストへ。そのパフォーマンスは、BiSHの魅力をこれでもかと凝縮して封じ込めたかのようだ。BiSHがメインの映像なのは言うまでもないが、感極まる清掃員の表情、涙も切り取られ、彼らがもうひとりの主役にも思えた。生バンドによるゴージャスでクリアな伴奏も聴きどころだ。BiSH史に残る特別な一夜を収めた本作は、ファン必携だろう。
LIVE INFO
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