DISC REVIEW
P
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PIGGS
HALLO PIGGS
元BiSのプー・ルイが会社を立ち上げ社長となり、プロデューサー兼メンバーとしてオーディションで選んだメンバーと共に始動したアイドル・グループ、PIGGS。その気になるデビュー・アルバムは、グラム・ロック、ニュー・ウェーヴ、オルタナティヴ的なバンド・サウンドを軸とした全12曲入り。メンバー5人の個性豊かな歌声、メランコリックで時にミステリアスな雰囲気を醸し出す歌詞、歌謡曲の色も見えるポップなメロディ、エレクトロニクスな音色が混ざり合い、レトロでありつつ新しさも感じられる。また、コロナ禍の最中での活動スタートとなり、お披露目ライヴも見送られるなかだが、リード曲「KICKS」のドライヴ感はまだ見ぬ白熱のステージの様子が浮かんでくるほど。ライヴへの期待も高まる。
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PIGGY BANKS
ドゥ シュビドゥバイン
yoko(Vo)、akko(Ba)、keme(Gt)の3人によるガールズ・ロック・バンドの約1年2ヶ月ぶり2作目となるアルバムは、「アナボリック リアクション!?」、「PVPHS」など、前作のゴリゴリしたパワフルなロック・サウンドとはかなり印象の違う、ブラック・ミュージックからの影響を窺わせる跳ねたリズムが際立った作品となった。yokoが表現力豊かな歌声を発揮しているノスタルジックなバラード「Sweet Dreams」にも顕著な、音を詰め込むことなく鍵盤を効果的に使い空間を生かしたアレンジも特徴的だ。akkoの産休中に完成した作品ということもあり今回は不参加だが、そうした時期だからこその様々な音作りをスタジオで試みているところが面白い。「シュビドゥバイン」に出てくる歌詞"パパのタオル投げて"は、yokoの遊び心とサービス精神かも?
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PIGGY BANKS
タイムスリラー
2015年から本格始動したPIGGY BANKSの1stアルバム。yoko、keme、akkoがこれまでの音楽活動で培ったスキルが融合したバンドになりつつも、それぞれの個性も明確になっているところが面白い。Track.3「タイムスリラー」のユーモラスな歌詞やミディアム・テンポの絶妙にルーズなサウンド、Track.6「ゾンビーボーイ」のファンキー且つパンキッシュなビートなど、今の音楽シーンでこういう音を聴かせるガールズ・バンドはいないのではないだろうか。大御所エンジニア 山口州治による録音も聴き応えがあり、叙情的なTrack.5「らんらんらん」やバラードのTrack.10「Oct.」も耳に残る。そして、ミッキー・カーチスの参加や曲名も気になるTrack.7「Funky Monkey Ladies」も日本のロックを語るうえで重要なトピックだ。
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the pillows
エネルギヤ
過去の思い出を並べた楽曲は、得てして安っぽくなりがちだ。本人にとって大切な過去であればあるほど、熟考した言葉と思いの重さの間に乖離が生じる。物語として美化してしまうのだろう。しかし、the pillowsの山中さわおは、飾ることなくさらけ出す。"キミ"との些細な日常を振り返り、"キミ"の存在、思い出が自らを永久に動かすエネルギーだと明かす。かつての自分は臆病だったと、さらりと歌う。いくつもの葛藤があったはずだ。しかし、傷ついた記憶と向き合ったからこそ、並べられた思い出は、聴く者にも体温をもったリアルな記憶として再生される。 "キミは誰かのものになったけど 今も僕を動かすエネルギー"――10年を超えるキャリアのバンドがたどり着いた愛の形だ。
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the pillows
Lightning Runaway ~NO MUSIC, NO LIFE ~
今年結成20周年を迎えるTHE PILLOWSが、アメリカで良質なポップ・ソングを生み出し続けているSSW、Ben Kwellerとともに作り上げたシングル。タワーレコード30周年記念企画として実現したこの太平洋を跨ぐコラボレーション。軽快に弾むドラムが刻むリズムの上を、キャッチーなギターと颯爽と駆け抜けるキャッチーなメロディが足取りを軽くしてくれる。コーラス・ワークも見事に決まった、ポップ・ソングだ。同時発売された20周年記念シングル『雨上がりに見た幻』とともに、初の2 曲同時トップ10 入りを果たしたこの楽曲。互いのソングライティング能力が十二分に発揮された軽やかなポップ・ソングからは、この企画を楽しむ二組の様子が伝わってくる。
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PILLS EMPIRE
Mirrored Flag
大きな話題を集めたイベント、KINGSにも参加し、結成わずか1年程度ながらも急速に注目を集めているPILLS EMPIREのデビュー・アルバムが完成した。PRIMAL SCREAM『Xtrmntr』やKASABIANのファーストから、THESE NEW PURITANSやKLAXONS、LATE OF THE PIERといった最新のビートまで、凶暴で革新的なビート・ミュージックを想起させる彼ら。不穏なビートが暴れまわる前半、さらに多彩な表情の楽曲が並ぶ後半まで、ニューウェーヴを土台にしたエレクトロ・パンクが詰まっている。そして、彼ら自身が自分達はあくまで「ポップ」をやっていると語るスタンスも面白い。PILLS EMPIREがこれから世の中にどういう評価をされるのかも、個人的に注目している。
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THE PINBALLS
Primal Three
メジャー・デビューをきっかけに、結成以来続けてきた精力的な活動が一気に加速し始めたTHE PINBALLSが、光の三原色をテーマに異なる魅力を持った3曲を収録したメジャー1stシングルをリリース。1曲目の「Lightning strikes」は、メンバー全員が暴れまわるTHE PINBALLSらしいロックンロール・ナンバー。その他、ダンサブル且つパンク・ディスコな「Voo Doo」、ギターの歪みがエグいスロー・バラードの「花いづる森」を収録している。その2曲のようなタイプの曲もまた彼らの得意技だ。タイトルには今一番自信のある3曲という意味も込められているという。ともあれ、メジャー1stシングルにアグレッシヴな魅力を改めて印象づける3曲を選んだところに、バンドの決意と覚悟が窺える。
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THE PINBALLS
NUMBER SEVEN
メジャー・デビュー作品となる7曲入りのミニ・アルバム。『PLANET GO ROUND』以来およそ1年ぶりとなる今作は、ガレージ・ロックやブルージーなサウンドに独特の物語性をまぶした美学を強く感じさせる。攻撃的で切れ味の鋭いギター・リフで突っ走る「蝙蝠と聖レオンハルト」で幕を開けたあとは、「七転八倒のブルース」、「that girl」とタメの効いた泥臭い楽曲が続き、「ひとりぼっちのジョージ」ではメロディアスでどこか切ないサウンドに心を掴まれた。一貫したロック・マナーで緊張と緩和を聴かせる曲が揃う中、ラストの「ワンダーソング」はかなりポップな曲調。演奏も優しく他の曲と色合いが少し異なり、その前の「重さのない虹」が2ビートで迫ってくるぶん不思議な違和感を感じた。
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THE PINBALLS
THE PINBALLS
今年1月、初の東名阪ワンマン・ツアーを成功させ、波に乗る4人組、THE PINBALLSがついにリリースする1stフル・アルバム。BLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTに衝撃を受けたのち、60年代のブリティッシュ・ビートに遡っていったんじゃないかと連想させるロックンロールを身上としながらも、本作収録の12曲からは、たとえばガレージ・ロックの一言に収まりきらない魅力が感じられる。ある意味、多彩な曲を作りながら、いかにロックンロールを貫き通すかそのせめぎあいが本作における挑戦であると同時に聴きどころと言えるが、彼らの挑戦は大きな成功を収めている。冬から始まる四季の流れを意識した歌詞にもぜひ注目を! その言葉のセンスもこのバンドの大きな魅力だ。
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THE PINBALLS
ONE EYED WILLY
4ピース・ガレージ・ロック・バンドTHE PINBALLSのミニ・アルバム。エッジの効いたグルーヴで聴かせる「friendly gently ghost」から、何かスイッチを押してくれるように熱い気分にさせてくれる。毒の効いたギター・フレーズは、渋さが前面に出ていながらも爽やかに気持ちよく鳴り、4つ打ちのビートと絡み合っている。なかでも10月16日に数量限定リリースされるLPにも収録されている「蛇の目のブルース」は、ファズのかかったギター・リフといい、古川(Vo)のハスキーな歌声といい、彼らが武器とする王道ロック・スタイルを存分に生かしたバラッドだ。ライヴで派手に盛り上がることが想像できる、熱を感じられる7曲。ぜひ、出来る限りの爆音で聴いてほしい。
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THE PINBALLS
ten bear(s)
キレッキレのギターでぶっ飛ぶ疾走感にハイ・トーンで少しハスキーなヴォーカル、衝動に満ちたサウンド......。タワーレコードのアーティスト発掘オーディション『Knockin'on TOWER's Door』で応募総数1006組の中から1位になったツワモノなだけある。しかし荒々しくノリのいい楽曲だけでなく、ラストに収録されているミドル・ナンバー「ニューイングランドの王たち」ではロックンロールを愛して止まない気持ちをダイレクトに吐露し、しっとりと沁みる歌声を聴かせてくれる。ライヴでもツイスト・ダンスが止まらないようなストレートなロックンロールに酔いしれたい。王道っちゃ王道だが、それをここまでカッコ良く体現するTHE PINBALLS、ガレージ・ロックの未来は君たちに任せた!
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P!NK
Trustfall
世界中の女性を励まし続けるディーヴァ、P!NKが9枚目のフル・アルバムをリリースした。今作でも、自身の身を切るようなファイト・スタイルもとい、音楽スタイルで心揺さぶる人生賛歌をぶつけてきたP!NK姐さん。特にシングル・カットされた「Never Gonna Not Dance Again」は本当にもう、サイコーのひと言だ。"何を奪われてもかまわないけど、ダンス・シューズを手放すのだけは絶対にイヤ!"という彼女らしい、強烈な"いたしません"ムーヴが最高に痛快でスカッとする。もちろんポップ・ミュージックの煌びやかさとP!NK節の超パワフルなヴォーカルがあってこその、強さと自由のポジティヴな表現になっているわけなので、ほかの誰かがマネできるものではない。元気になりたい人、必聴。
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PIN ME DOWN
Pin Me Down
長かった…。ついに活動休止から約8ヶ月、UKロック・バンド、BLOCK PARTYのギタリストのRussell Lissackが沈黙を破り、キュートな女性シンガー・Milena Meprisを迎えて男女2人組のデュオ、Pin Me Downを始動させた。メロディアスなギターが刺さる疾走感あふれるサウンドにのせて、ダンスビートが最大限に絡み合う極上の踊れるダンス・ロックを世に放つ。「Time Crisis」ではクセになりそうなメロディ・ラインが印象的に響く。そして、なんと言っても注目したいのはMilenaのヴォーカル。「Curious」では幅を持たせた高音の歌声、ささやくようなヴォーカルは小悪魔的魅力が大爆発している。『Kitsune Maison Compilation 5』に収録され、話題を呼んだ「Cryptic」も完全収録。
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PISSED JEANS
Honeys
ノイズ・ロック/ハードコア・パンク・バンドPISSED JEANESの約4年ぶりとなる通算4枚目のスタジオ・アルバムが完成。80年代のハードコアやポスト・ハードコアに多大な影響を受けており、本作でもそれがはっきり感じ取れる。先行曲「Bathroom Laughter」からノイジーでハードコアの象徴のような曲のオン・パレード。速い曲はもちろん、「Cafeteria Food」のようなスローでヘビーな曲も魅力的。ヴォーカルを含めて各楽器の自己主張が強すぎてとにかく熱い。ぐいぐい勢いで押していく、聴き終わった後に体温がぐっと上がったように感じられるほどで、尚且つこんなに爽快な気分になれる作品も久しぶりだ。ライヴの評判もとても良いようなのでぜひ体感したい!
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PIXIES
Head Carrier
2年前の『Indie Cindy』以降、ベースにPaz Lenchantinが正式メンバーとして加入。そして、ROYAL BLOODのブレイクに貢献したプロデューサー、Tom Dalgetyを迎えたこの新作。もはやBlack Francis(Vo)ぐらいしか"オルタナ"のオリジンを名乗ってはいけないのでは? というほど人生と化したノイズ・ギターと美メロの極限まで高められたアンサンブルが全編を貫いている。と同時に、ひと回りも年下のPazのコーラスはキュート且つ素朴な味わいもあり、剛腕ベーシストの側面といいギャップを生んでいて、このベテラン・バンドのある種カレッジ・バンド的なイノセンスにも胸が締めつけられる。死に体の"オルタナ"というタグの本当の意味は、ここにあるギター・サウンドが蘇らせるのでは。
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PIXIES
Indie Cindy
奇跡の再結成から実に10年。Black Francis(Vo/Gt)率いるボストンの4人組、PIXIESが前作から23年ぶりとなる新作をついにリリース!NIRVANA、WEEZER、そして日本のNUMBER GIRLら、数えきれないほど多くのバンドに影響を与え、90年代オルタナ・ロックを決定づけたロック界のレジェンド。もちろん、90年代とそっくり同じというわけにはいかないが、それでも激情を迸らせながら追求する轟音、歪み、軋みとポップの融合はPIXIES以外の何物でもない。再結成後、世界中をツアーし続けていただけあって演奏の切れ味も抜群だ。Paz Lenchantin(Ba/Vo)を含むラインナップでSUMMER SONIC出演も決定。名前は知っているけどという若い読者もこの機会に、ぜひ!伝説として語るには早すぎる。
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PJ HARVEY
The Hope Six Demolition Projec
英国・アイルランド最高峰のマーキュリー賞を獲得した2011年の『Let England Shake』以来となる新作は、彼女がコソボ、アフガニスタン、ワシントンD.C.への旅をドキュメントし、しかもレコーディングのプロセスを一般公開するという、タイトル通り"プロジェクト"でもある作品だ。先行配信されたTrack.10「The Wheel」が最も、いわゆるバンド・サウンドであり(クラップが特徴的ではあるが)、統一されたプロダクションとしては、ネオ・クラシカルほどテクニカルではないにせよ、ブラスとストリングスが作品のニュアンスを強く印象づけていること、そしてコーラスというよりは"市民による合唱"的な混声がユニーク。ドキュメントでもありアートでもあるという手法に見る聡明さ、変わらぬ声の力のバランスも無二。
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PJJ
ever gold
今年になって"プラズマ JAP JET"から改名した、関西を拠点に活動する4人組バンド、PJJの1stフル・アルバム。愛はズボーン、神頼みレコードが所属することで知られるTOUGH&GUY RECORDSから初めてのリリースだが、タイプは両者とは異なり、ブルース、R&Bをルーツに持ったバンドであることがダイレクトに伝わってくる。その楽曲たちは泥臭さを感じさせながらも、「Orange」、「Let's Get Lost」に代表されるような心地よいスカスカ感や空気感を活かしたものとなっており、とても洒落ている。そして何よりも音がいい。決してマニアックなことではなく、冒頭の「Wait It!」が鳴った瞬間、どんな人にもそれはわかるはず。
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PK shampoo
輝くもの天より堕ち
メジャー進出作から約半年というスパンでリリースとなったメジャー2nd EP。夢か現か、おぼろな記憶と空想が交錯する「天使になるかもしれない」、瞬く命の儚さをポエティックに映した「夏に思い出すことのすべて」、ノイジーさは残しながらも生まれ変わった初期楽曲「翼もください」の再録、衝動的に書き殴られた日記のごとく感情剥き出しの「ひとつの曲ができるまで」と、ヤマトパンクス(Vo/Gt)の命を削り紡ぐような歌がライヴ・バンド然とした熱量とともに収めれた。無骨で破天荒な現実の描写と、星や空、宇宙といった幻想的なワードたち。この歪さが生むロック・バンドの恍惚とした危うさは、メジャー・シーンに身を置く今も変わらず、彼らのまばゆい魅力として光っている。
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PK shampoo
再定義 E.P
圧倒的な熱量で鳴らすバンド・サウンドと荒々しくも繊細なヴォーカル、綴られた言葉に滲む物語と心揺さぶるグッド・メロディ。2018年の結成以来、各地のライヴハウスを沸かせてきたPK shampooがついにメジャー進出した。過去曲「君の秘密になりたい」から引用された歌詞がロマンチックに響く「死がふたりを分かつまで」、メロコア要素を盛り込んだファスト・チューン「あきらめのすべて」、ヤマトパンクス(Vo/Gt)のソロ曲がよりエモーショナルに生まれ変わった「第三種接近遭遇」、曲の持つエネルギーは残しつつ洗練された名曲「神崎川」の再録と、バンドを"再定義"するための4曲。さらに初回盤には大阪城音楽堂をライヴハウスに変えたあの熱狂のワンマンも収録、メジャー・シーンにその名を轟かしていくであろう彼らの名刺代わりの1枚だ。
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PLAGUES
CLOUD CUTTER
2010年に活動を再開したPLAGUESの11年ぶりのニュー・アルバム。新録音でベスト・アルバムをリリースし、ライヴも数多くこなし、沈黙の8年間の鬱憤をはらすかのように精力的に活動をしている彼らだが、復活後の楽曲が収録されたアルバムは今回が初というファン待望の1枚だ。メロディアスなギター・ソロと力強い安定したヴォーカルは健在。ポップやキャッチーという言葉は全くもって似合わないが、ライヴで聴いたら拳を振り上げて一緒に歌いたくなる抜群のメロディ・センスは更に磨きがかかっている。90年代ロック界の前線を駆け抜けたバンドの底力は計り知れない。また、今作にはサポート・メンバーとして堀江博久(Key)とTRICERATOPSの林幸治(Ba)が参加しているのもリスナーには嬉しい特典だ。
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PLAGUE VENDOR
By Night
パンク・シーンの名門 Epitaph Recordsから、正統派パンクと名高いPLAGUEVENDORのニュー・アルバムがリリース。衝動的で攻撃的なスタイルで人気の彼らだが、今作はそんな彼ららしさがよく表現されている。ST. VINCENTの作品も手掛けたJohn Congletonをプロデューサーに迎え、外部を遮断したスタジオにこもってレコーディングした今作。ノイズの生々しい質感や轟音の荒々しさまで見事に生きた音作りが実現した。そして、なんと言ってもフロントマン、Brandon Blaineの存在感がすごい! アンダーグラウンドな香りのするサウンドはもちろん魅力的だが、こういう危うい雰囲気を纏ったパンク・ロック・スターは今、絶滅危惧種なので今後も要注目だ。
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PLAIN WHITE T'S
Plain White T's
2000年代エモ・シーンの重要バンド、PLAIN WHITE T'S。結成25年を超え、コンスタントにリリースも続ける彼らが、満を持してセルフ・タイトルのアルバムをリリースした。ポップ・パンク/エモ界隈からデビューしたバンドの中でも早い段階から、音楽性をそこまで変えないままポップ・シーンに順応したロックに上手くシフト・チェンジし、息の長い活動を続けてきた彼ら。今作は、そんなバンドの芯の部分が綺麗に磨かれた粒揃いのポップな楽曲が詰まったアルバムだ。エモのキュンとする切なさや、ソフト・ロックの温かなタッチ、ところどころに散りばめられたダンス・ロックの軽やかさ、それらがバランス良く作品としてまとまった、派手さはなくとも飽きが来ないという彼らの強みがとても良くわかる良作。
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The Plashments
Kicks and Rush
2008年の結成以来、下北沢を拠点に活動してきた4人組、The PlashmentsがSEXY STONES RECORDSの新レーベル、FICK FILLYに見初められ、デビュー・アルバムをリリース。ヴォーカルの声質も大きいと思うが、まずTHE CLASHを思い出した。しかし、曲を聴き進むにつれ、曲ごとにイマジネーションが広がっていった。THE CLASHをはじめとするロンドン・パンクを起点に表現の幅を広げていったという印象だが、Track.8「Manstra's Hand」、Track.10「Lover」といった曲を聴いていると、いまだ試行錯誤も思わせる多彩な表現はやがて、でっかい歌で――たとえばオアシスの曲がそうだったように大勢の人の心を1つにするアンセムに収斂していくんじゃないか。そんな予感と伸びしろに心が躍る1枚だ。
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PLASTIC GIRL IN CLOSET
eye cue rew see
透明感溢れる音はまるで朝焼けの海のような希望と輝きに満ちている。岩手在住の3ピース・バンドPLASTIC GIRL IN CLOSETによる"あいくるしい"5枚目のアルバムは光に満ちた作品だ。彼らの特徴である轟音ギターやフィードバック・ノイズはますます洗練され、須貝彩子の透き通る歌声で歌われるセンチメンタルでメロウなメロディは心地良い。さらに絶妙なバランスで取り入れられているエレクトロ要素がより彼らの世界観を広く、深く魅せてくれる。メロディに合った言葉をぴったりと当てはめている歌詞は、完璧なバランスで成り立った楽曲を邪魔することなく優しく囁く。"現時点での集大成とも言える傑作"と言われるだけあって非の打ちどころがない作品だ。
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PLASTIC OPERATOR
Before The Day Is Out
4年振りにPLASTIC OPERATORが帰ってきた! 前作『Different Places』がUKでは“POSTAL SERVICEの『Give Up』以来の衝撃”と評され、日本でも耳の肥えたリスナーがこぞって踊りだすほどの支持を得ていた彼ら。非常に緻密な音の配列、滲み出るインテリジェンス、何より鳥肌が立つくらい耳触りの良いメロディ、UNITED STATE OF ELECTRONICAのような全力で突き抜けたポップさとは違った少しローファイな心地よいビート……。近年チラホラ見かける、過剰なまでの装飾が施された人工的に煌びやかな作品とは確実に一線を画す。非常に職人気質な温もりを感じる良質なエレポップだ。
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Plastic Tree
Plastic Tree
2024年現在、これほど要素としてはオーソドックスなロック・バンドが未だに新しい聴感を開いてくれることに少し驚愕してしまう。結成30周年を迎え、ライヴ・メインの活動を経て約4年ぶりに完成したアルバムをセルフネームにするのも納得のオリジナリティである。メンバーが各々2曲ずつ作詞作曲の両方を手掛け、オルタナティヴ~モダン・ロックの髄をバランス良く配置しているのもいい。Track.1とTrack.10にピアノやチェロが聴こえる程度でほぼ全編4リズムのバンド・アンサンブルであるにもかかわらず、アレンジのアイディアの豊富さに舌を巻く。Track.4でのサウダージなアコギとセンシュアルなエレキの絡みや、インディー・ポップ調のコード感でありつつ音はソリッドなTrack.7などファン以外にこそ聴いてほしい曲が揃う。
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有村竜太朗
≒demo
Plastic Treeの有村竜太朗(Vo/Gt)がソロ名義で発表してきたミニ・アルバム『個人作品集1996-2013「デも/demo」』(2016年)、『個人作品集 1992-2017「デも/demo #2」』(2018年)、シングル『円劇 / engeki』収録曲のリアレンジ・アルバム。各々、アレンジャー&ギタリストとして悠介(lynch./健康/Gt)、小林祐介(THE NOVEMBERS/THE SPELLBOUND/Vo/Gt)、生熊耕治(cune/BLUEVINE/Vo/Gt)を迎えているが、原曲やアコースティック・アレンジとは一転、ライヴ感満載のハードコア・パンクやガレージ、オルタナティヴ・ロック色を濃くしている。オリジナルでも小林が参加していた「19罪/jukyusai」のリアレンジ「≒jukyusai」の初期パンク的な破壊性、悠介がギターを弾いた「≒sikirei」はよりザラついたグランジテイストとエレジーを感じる仕上がりに、楽曲が孕む二面性が、有村の意志とそれを嗅ぎ取った今回のメンバーにより炙り出された感じだ。
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Plastic Tree
インサイドアウト
Plastic Treeの通算41枚目となるニュー・シングルは、収録された2曲ともにPlayStation®Vitaゲーム"Collar×Malice -Unlimited-"とのタイアップ楽曲となっている。表題曲「インサイドアウト」は同ゲームの主題歌で、疾走感溢れるロック・ナンバーに有村竜太朗の艶のあるヴォーカルが映える。シンプルな曲構成ながらも、随所に散りばめられたテクニカルなギター・フレーズがアクセントとなり、聴き手を惹きつけていく。ゲームのエンディング・テーマであるカップリングの「灯火」は、鍵盤とストリングスが厳かで幻想的な雰囲気を醸し出す1曲。有村がしっとりと歌い上げるメロディはタイトルのとおり"灯火"のように儚げで、息を呑むほどに美しいバラードに仕上がっている。
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Plastic Tree
doorAdore
Plastic Treeには一度たりとも裏切られたことがない。この20年余り、どのアルバムもすべてが傑作だったと断言できるのだが、いよいよ今作の秀逸さにはいつも以上に唸らされることとなってしまった。メンバー4人全員がそれぞれに作詞作曲を担えるだけのクリエイティヴィティを持っている点がいかんなく発揮された、各楽曲の高いクオリティしかり。時に感情過多なほど、濃厚な音像がこれでもかと溢れ出す圧倒的な叩きっぷり弾きっぷり歌いっぷりしかり。聴き始めたが最後、受け手である我々にはPlastic Treeというバンドの持つ懐の深さにただただ魅了される選択肢しか残されていないのだ。Plastic Treeの新たなる局面へと向けた、渾身の1枚。ここにきて、彼らはまた不朽の名盤を仕上げてくれたと確信する。
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Plastic Tree
雨中遊泳
1月に発売したシングル『念力』に続く、メジャー・デビュー20周年"樹念"の第2弾シングル『雨中遊泳』。「念力」は、インダストリアル・ロック的なずっしりとしたヘヴィさと、電子的なソリッドさが冴えたスタイリッシュな曲だったが、今回の「雨中遊泳」は、これぞPlastic Treeという陰影のある曲となった。微妙に揺らぐ空気、誰かの気配が消え、空気の密度や温度、肌触りが変わるその"雰囲気"を、アンニュイでひんやりとしたサウンドと歌で綴る。前作のような重量感はない音のように聴こえるが、"雨中"のノイズ感がギターやベース、ドラムなどで表現されたシューゲイザー・サウンドが、甘美で狂気的な美しさを放つ。カップリングで「ユートピアベリーブルー」の突き抜けたエレクトロ・ダンスが並ぶのもまた狂気。
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Plastic Tree
念力
メジャー・デビュー20周年を迎えた2017年第1弾となるシングル。"ノリやすい曲を作りたかった"という作曲者・長谷川 正(Ba)の言葉どおりに、表題曲は歪んだベースにエレクトロ・サウンドが絡むダンス・チューン。Plastic Treeの進化形を見せつつも、妖艶で浮遊感漂うヴォーカルとトリッキーなギター・フレーズがフィーチャーされ、デビュー20周年を経てもなお変わらぬ、彼らのサウンドの機軸もしっかりと聴かせてくれる。カップリングには、ナカヤマアキラ(Gt)作曲/佐藤ケンケン(Dr)作詞というコンビもすっかり定着した感のある「creep」。さらに通常盤には、バンドの20年を見守ってきた曲とも言える「サーカス」のライヴ・アレンジ・バージョンも収録。彼らのライヴで感じさせる、息を呑むような空気をもパッケージされていて、その20年を知る最高の作品に仕上がっている。
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Plastic Tree
サイレントノイズ
オープニング・テーマとなる「サイレントノイズ」、そして2パターンのエンディング・テーマとして作られた「静かの海」と「シンクロ」という、いずれもゲームのために書き下ろされた3曲からなるニュー・シングル。とはいえ、いずれもPlastic Treeが色濃く出た曲が揃っている。ダークでいて、何層にも折り重なって匂い立つようなグラマラスな雰囲気のあるギター・サウンドと、ストイックさの光るタイトなビート、そこに有村竜太朗のヴォーカルが乗る。気だるげで、同時にヒリヒリとした緊張感も滲んでいる、どこか触れがたいような魅力がある歌声は、"サイレント"と"ノイズ"という相反するワードが結びついたこのタイトルにも重なる。リリカルな「静かの海」と、USエモの香り漂う「シンクロ」もカップリングながらキラー・チューンだ。
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PLASTICZOOMS
CRITICAL FACTOR
前作『STARBOW』から、ライヴ会場限定シングル3枚と、7インチ・シングルのリリースを経て約1年10ヶ月振りにリリースされるフル・アルバム。インタビューでSHO ASAKAWAが語ってくれたように、今作は彼の精神面の変化が大きく影響している。バンド・メンバーを慮り制作された楽曲の音像はよりふくよかかつ耽美的に。自身が愛する80'sミュージックへのリスペクトなどを込めた「MANIAC」のカヴァーなど、より自由度を増したサウンドは包容感に溢れる。ダークで先鋭的なサウンドの中に浮かび上がる煌びやかな色味のコントラストも心地よい。夢の中にいるような感覚と同時に、痛烈なリアリティを突きつけられているような緊張感もある。新たな領域に踏み込んだ彼らの鮮やかな音色に触れてほしい。
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plenty
傾いた空 / 能天気日和 / ひとつ、さよなら
3曲通して聴き終えたあと、何とも言えぬ喪失感に襲われる。それはまるでひとりぼっちになって目の前が真っ暗になるような感覚で、動揺が隠しきれなかった。plentyの音楽はストレートなギター・ロック。だがその真っ直ぐな音色には妙な中毒性があり、音世界にどっぷり浸かるというよりはその音が体にも思考にも寄生されてゆくようだ。それだけ、彼らの歌と音は“人”に向かって鳴らされているものなのだろう。無意識のうちに、手紙を読み進めるように、歌、メロディ、音色を辿っていた。じんわり滲んだギターが印象的なミディアム・ナンバー「傾いた空」、軽やかに世間へ警鐘を鳴らす「能天気日和」、切なく素朴なバラード「ひとつ、さよなら」、3曲それぞれに強い想いが込められている。
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PLOT SCRAPS
FLAWLESS YOUTH
東京を拠点に活動する3ピース・ロック・バンド、Plot Scrapsの2ndミニ・アルバムが完成した。ヴォーカル 陶山良太の少年性を感じさせるような澄んだ声で歌われるのは、彼が苦難していたという10代の頃の経験をもとに描かれた歌詞の数々。少し鬱屈としていて危うさもありながら、"誰かの希望になり得る作品を作りたい"という陶山の思いのとおり、様々なかたちの希望が見いだされる歌詞世界が展開されていく。さらにそれを彩るのは、複雑に構築されているのに親しみやすい、洗練されたアンサンブルだ。今作について、名だたるアーティストや関係者からのコメントが多数集まっていることからも、彼らへの注目度の高さが窺える。青く瑞々しい衝動が迸る、ギター・ロック・ファン必聴盤。
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plums
episode
北海道は小樽の4人組、plumsの2ndミニ・アルバム『episode』。今作は、シューゲイザー/ドリーム・ポップを軸とするバンド・サウンドをこれまで以上に深化させつつも、より幅広いリスナーに届くような開けた作品となった印象だ。さりげなく光るフレーズを絶妙に絡めてくるギターとベース、シンプルながらも音の強弱で表現を深めるドラム、そこに乗る優しく透明感のある吉田涼花の歌声、幻想的なコーラスによって描かれるサウンドスケープは、どこか懐かしくも新しい空気を纏っている。また、幻想的であり体温も感じられる歌詞も秀逸で、特に「ナンバー」の"制服の中は透明だ"という表現にはグッと心を掴まれる感覚があった。メンバー一同"渾身の1枚"と謳う今作でぜひplumsの世界に浸ってほしい。
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pocketlife
Empty
バンドの根幹とも言えるドラムの二度にわたる交代。そんな状況を経てもなお、pocketlifeは轟音の叫びを上げ続ける。破壊力のある圧倒的なヴォーカルに、周囲をなぎ倒さんばかりの重量感あるサウンドが鳴り響く。パンクも、ロックも、エモもあらゆるジャンルを飲み込んだ音は、ヒリヒリとしたうだる熱を放っている。『Empty』は、メンバーたっての希望で全パート同時に録音したというだけあり、その臨場感溢れるライヴ感はとてつもない。Hoobastankに通ずるキャッチーさとエモさが同居したサウンドの中、根底には日々の自分と向き合い、地を這うような泥臭い力強さがずっしりと構えている。シングルという3曲でありながら、三者三様の様相を呈した楽曲たち。「抑圧」という日常の障害に対抗するため模索している姿は、情けなくも男気に溢れている。
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POETASTER
The Gift of Sound e.p.
誰に、なんのために、この音楽を届けるのか。それが明確に浮かびあがる作品だ。八王子発のギター・ロック・バンド POETASTERが、ふたり体制で初めて完成させた1st EP。これまで恋愛の歌が多かった高橋大樹(Vo/Gt)のソングライティングが一転、君を泣かせる奴は許さない、とストレートに歌う「君に話があるんだ」に代表されるように、聴き手の人生に寄り添う全5曲が収録されている。バラエティ豊かな作風となった前作に比べると、シンプルにまとめ上げた今作は、歌と言葉が鋭く心に突き刺さる。彼らが届けるべき"誰に"とはリスナーであり、"なんのために"とはその人生を肯定してあげるために、だ。まさに"The Gift of Sound=音楽の贈り物"というタイトルがぴったりな、強くて優しい1枚。
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POETASTER
Imagination World
今、こういう音楽を求めていた。オリジナル・メンバーの脱退を乗り越え、新メンバーを迎えたPOETASTER。彼らはこのニュー・ミニ・アルバムで、逆境を追い風に変えるという自信と、吹っ切れた強さを手に入れている。パワフルなクラップが響く1曲目「DANCE DANCE DANCE」の"いつか その傷に意味があること"、"僕が わからせてやる"という言葉、全身全霊のコーラスからその気概が滲み出ていて沁みる。情報が多すぎる現代を一緒に進む術を、説得力をもって高らかに歌い上げる表題曲「イマジネーションワールド」もいい。そんな自分たちの決意や信念と、音楽を聴いてくれる"君"のことだけを想った全7曲。音像も言葉も、ストレートだからこそ飛びっきりグッとくる。それが今一番味わえる1枚だ。
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