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DISC REVIEW

P

Petals For Armor

Hayley Williams

Petals For Armor

PARAMOREのシンガー Hayley Williamsの初となるソロ・アルバムは、メンバーも制作に関わっているものの、PARAMOREで築いたオルタナ・ロックの歌姫というパブリック・イメージを覆すような作品となった。アルバムは3部構成で、RADIOHEADやBjörkを髣髴させるダークでウェットな楽曲が並ぶ第1章、80sエレクトロ・ポップを軸に徐々に前向きさを取り戻していく第2章(Track.9には若手女性SSWのスーパー・グループ BOYGENIUSがコーラスで参加)、エレポップ/ファンクに乗せて再び前進していく第3章と、感情の移り変わりとともに多彩なサウンドを展開。Hayleyの歌唱も実に表情豊かで、パーソナルな歌詞と併せて、彼女の新たな側面に触れることができるだろう。

POP MUSIC

paranoid void

POP MUSIC

キャッチコピーは"代替不可能性"。大阪発の3ピース・ガールズ・バンド paranoid voidが、他の誰かとは代えることのできない存在になりたいという想いを込めて完成させた、初の全国流通盤となるミニ・アルバム『POP MUSIC』。バンド名は"妄想の"を意味する"パラノイド"と、"宇宙の何もない空間"を意味する"ボイド"を合わせた造語だが、このバンドの掴みどころのない正体を端的に表している。変拍子を駆使しながら、あくまで透明感のある歌声がサウンドの一部として溶け合う独特の世界観。その歌詞はとても抽象的だが、闇の中から見える光を見逃さないという意志が伝わってくる。これでタイトルに"POP MUSIC"と名づける皮肉が痛快。最高に面白いバンドが現れた。

証鳴

PARKLIFE

証鳴

2015年に結成し、新宿ACB HALLを拠点に全国で活動中の3ピース PARKLIFEが、新レーベル HIGH BEAM RECORDSより初の全国流通盤をリリース。彼らの楽曲はまさに直球勝負。パワフルで飾り気のないサウンドと、一聴しただけで口ずさめるほどキャッチーなメロディが、聴く者の心に気持ちいいくらいまっすぐ飛び込んでくる。どの楽曲にも共通してポジティヴなムードが感じられるが、歌詞にもしっかりと耳を傾けてほしい。特にラストの「みらいのうた」では、彼らが抱いている未来への希望のみならず、恐怖や不安までもがありのままに綴られている。いまの3人を象徴する1枚がこの曲で締めくくられる意味は大きい。不安と向き合える人間は、それを強さへと変えられる力を持っているのだ。

The Golden Age Of Bullshit

PARTYBABY

The Golden Age Of Bullshit

PORTUGAL. THE MANのギタリストだったNoah Gershと、THIRTY SECONDS TO MARSのエンジニアをしていたJamie Schefmanを中心に、カリフォルニアで結成したPARTYBABY。それぞれに豊富なキャリアを持っているが、ガレージに集まって大音量でギターをかき鳴らすような衝動感で、爆発している。その勢いを心に、ハジけた曲からメロウな曲まで、90年代オルタナのエッセンスや、THE SMASHING PUMPKINSの持つキラキラとしたメランコリーやサイケ感を織り交ぜながら、3分間の曲を作り上げている。キャッチーで、グッド・メロディで、コンパクトななかに巧みなアレンジやフレンドリーな仕掛けが施されたサウンドの中毒性は、ポップ偏差値の高さがあればこそのものだろう。いつの間にか気になって、いつの間にか好きになっている。さりげなくもズルいテクニックを潜ませているバンドだ。

MANNERS

PASSION PIT

MANNERS

最初にこのアルバムを聴き始めた時女性ボーカルだと思ったし、この圧倒的なエネルギーというか、インパクトに面食らってしまった。もうこの子にはついていけないという様な感覚、しかし聴き進めて行くうちに目が離せなくなっている。耳の早いあなたなら2008年にリリースされたEP「Chunk Of Change」でもうPASSION PITの虜になっているはず。そしてこの2nd アルバムで世界中が恋に落ちた。すべての曲をシングル・カット出来そうなほどの楽曲の良さとクオリティー、HOT CHIPでさえ霞んでしまいそうな眩さと儚さを持ち合わせ、くたびれた僕等を包み込む。各国でヒット・シングルが違うというのも彼ららしい。「Chunk Of Change」の楽曲も収録されたこの日本盤を手に取って、来年2月についに決まった来日公演を待とう。

Wooden Arms

PATRICK WATSON

Wooden Arms

2006年にリリースされたデビュー・アルバム『Close To Paradise』で、ポラリス・アワード最優秀アーティストに選ばれ、フロント・マンのPatrick WatsonがCINEMATIC ORCHESTRAの楽曲にゲスト参加するなど、北米では既に高い評価を得ているカナダの4人組、PATRIC WATSON。繊細かつダイナミックなサウンド・スケープの中、Patrick Watsonのピアノが物語の時を進めるように響いていく。SIGUR ROSをクラシカルにしたような本作は、聴く者を壮大な物語へと引き込んでしまう美しさがある。ここではない幻想的な別世界を漂う、シネマティックなアルバムだ。

McCartney III Imagined

Paul McCartney(V.A.)

McCartney III Imagined

Paul McCartneyが2020年に発表した『McCartney III』は、(RockとLockdownをかけた)"Rockdown"のなかで彼がひとり生み出した作品だった。その収録曲を、Damon Albarn、BECK、Josh Homme、Ed O'BrienといったPaul自ら選んだ錚々たるアーティストたちがカバー/リミックスしたのが本アルバムだ。自らのカラーを存分に発揮したアレンジや、意表を突くトラックもあれば、キャリアへリスペクトを込めたようなカバーまで、楽曲はまさに十人十色。『McCartney III』が内なる世界への探求だとすれば、本作は人と人の繋がりで生まれる無限の化学反応を示しているかのよう。それぞれ聴き比べるのも面白い。

Margins

PAUL SMITH

Margins

イギリスの老舗レーベルWARPからの初のギター・ロック・バンドとして注目を集めたMAXIMO PARK。そのフロントマンであるPAUL SMITHの初のソロ作品。MAXIMO PARKとしては昨年にサード・アルバムを発表したばかりだが、その時にあったエネルギッシュなポスト・パンク・サウンドとは違い今作は、PAUL SMITHの作るメロディに焦点が当てられたシンプルでとてもしなやかなレコードだ。自主レーベルそして交流の深いアーティストと制作されたという今作はとてもパーソナルな作品で、バンドでのコミカルな側面とは違う彼の新たな魅力が浮かび上がってくる。本人も今までで一番と認めるように、今作にはとても美しく胸を突くポップな楽曲が詰まっている。

The Best Of Pavement

PAVEMENT

The Best Of Pavement

VAMPIRE WEEKENDや春に新作が決定したMGMTなどに大きな影響を与えた伝説的なオルタナティヴ・バンドPAVEMENTが昨年に、2010年限定の再結成を発表し来日目前のタイミングでベスト盤を発表。グランジと呼ばれるシーンの中でローファイと呼ばれるサウンドを生み出した彼らの再評価が高まる中、1年限りではあるが彼らが復帰を遂げたことは今年の大きな出来事の一つだろう。ひねくれ者と言われていた彼らはこのベスト盤でも代表曲をリリース順に並べるということはせずに、年代もバラバラに並べており比較的初期の曲が多い。個人的によく聴いていた6枚目の「Terror Twilight」から一曲というのはちょっと寂しい気もするけれど、一つの流れがあってこれは愛聴しそうだ。

それでも僕らの呼吸は止まない

Payrin's

それでも僕らの呼吸は止まない

抜群の楽曲を武器にオーディエンスを踊らせる3人組アイドル・グループ、Payrin'sの1stアルバム。ボカロPを起用し制作された"神曲"揃いの本作には、極上の四つ打ちギター・ロック・ナンバー「それでも僕らの呼吸は止まない」、桜木もち子がアイドルとして生きていくなかで感じたリアルを歌詞に落とし込んだ「さよなら、夢と虚構の狭間にて」、オルタナ要素の強い新機軸の「いつか口にした言葉は」と彼女たちの進化、新境地を感じさせる楽曲が揃う。それでいて、グループ初期を思わせるポジティヴなサウンドで、彼女たちの新たなアンセムになること間違いなしの"沸き曲"「共同戦線」がアルバムを締めるあたりもニクい。いずれもハイクオリティの楽曲が揃った本作は、アイドルだからといって食わず嫌いではもったいない、ロック・ファンにこそ聴いてほしい1枚。

dim

Payrin's

dim

東京を中心に活動している3人組アイドル・グループの初の全国流通盤シングル。四つ打ちギター・ロックの楽曲をコンセプトに掲げているとのことだが、今作に関してかなりハードなギター・サウンドが印象的。「dim」ではex-MOHAMEADのOmar里吉(Gt)が編曲を、「Paranoia」ではRYO-P(As/Central 2nd Sick)が作編曲を手掛けていることにも注目。押し出しの強い硬質なギター・サウンドの音圧と戦うように歌う3人のヴォーカルは見えない何かを求めて叫んでいるかのようで切実に響く。「dim」ではメンバーの桜木もち子が作詞を手掛け、心の底にある想いを赤裸々な言葉で綴っている。そんなダークな作品でありながら、ダンサンブルな楽曲になっているのがこのグループの特徴なのだろう。

Kindness Is The New Rock And Roll

PEACE

Kindness Is The New Rock And Roll

イギリスの4人組ロック・バンド PEACEが、アメリカに渡って、ウッドストックにある森に囲まれたスタジオでレコーディングした3rdアルバム。ソウル・ミュージックやゴスペルの影響を絶妙のさじ加減で取り入れたことで、UKギター・ロック然とした前2作とは違うバンド像を打ち出している。ちょっと後期のTHE BEATLESを思わせるところもある。プロデューサーは米英でNo.1になったTHE LUMINEERSの『Cleopatra』を手掛け、プロデューサーとして名を上げたシンガー・ソングライター、Simone Felice。サウンド面もさることながら、スピリチュアルな面で彼が与えた影響は大きかったようだ。"慈愛こそが新しいロックンロール"というSimoneらしいメッセージは、バンドと彼の魂の交歓の賜物だ。

Happy People

PEACE

Happy People

B-TOWNと呼ばれるバーミンガムのインディー・ロック・シーンの急先鋒として2012年にデビューした4人組。彼らが2年ぶりにリリースする2ndアルバムには精力的にツアーを続けながら遂げてきた成長がしっかりと反映されている。80年代のネオ・サイケ、90年代のマンチェスター・サウンドの影響を、自分たちの個性としてよりはっきりと意識したうえで、それをどう聴かせるか。そこで試した様々なアイディアが成長を印象づける変化として表れている。因みに日本盤は海外のデラックス盤にライヴ・バージョン3曲を加えた計21曲を収録。1番の成長はツアーを続けながらこれだけたくさんの曲を書き上げたことだ。中には原点回帰を思わせる曲もあるが、それが今後、どう彼らの音楽に反映されるかも楽しみだ。

In Love

PEACE

In Love

UKを揺るがす話題の新人だが、ハイプと侮るなかれ!バーミンガム出身の4人組、PEACEのデビュー・アルバム『In Love』。キャッチーなメロディにトライバルなリズムを駆使し、まるでFOALSとHAPPYMONDAYSが融合しかつてのマッドチェスターを再燃するかのようなグルーヴが持ち味だが、THE BEATLESにTHE SMITH、さらに90’sブリット・ポップ勢のエッセンスを感じ、英国伝統的なギター・サウンドの潮流を軽やかに渡っているようなおもしろさがある。現代っ子ならではのジャンルに囚われない雑食性とクラブ・シーンで感化されたという身体性には、ありそうで他にはマネできない、唯一のオリジナリティとして成立している。今夏SUMMER SONICでその真相を窺おう。

Lightning Bolt

PEARL JAM

Lightning Bolt

NIRVANAと共に90年代のオルタナティヴ/グランジ・シーンを牽引し、その後は世界の第一線で活躍するロックンロール・バンドとして多くのリスペクトを集めるPEARL JAMの約4年ぶり、通算10枚目となるオリジナル・アルバム。プロデュースはBrendan O'Brienが担当している。今作は実にPEARL JAMらしい作品で、グランジはもちろん、ハード・ロック、パンク・テイストの楽曲から、ミディアム・バラード、やわらかいアコギの音と美しいコーラスが心地よいナンバーまでバラエティに富んだ内容。安定感のあるアメリカン・ロックはこちらも安心して身を任せられるし、フレッシュな音色を保っているところも嬉しい。特に表題曲「Lightning Bolt」はピアノを導入した力強く開けた楽曲で、ひたすら鮮やかに輝く。

意地と光

PEDRO

意地と光

フル・アルバム『赴くままに、胃の向くままに』以来約1年ぶりのPEDROの最新作『意地と光』は、ベース・ヴォーカルのアユニ・Dの中にある"意地"の側面と"光"の側面をありのままに描いたミニ・アルバムだ。BiSHの解散後、迷走しながらも自分探しを続ける長い旅の中で気付いた自身の二面性を受け入れることで、これまでの作品の中で最も人間"アユニ・D"が現れて、表れた作品に思える。だからこそ、彼女との心の距離が近づいたというか、すぐそばで歌ってくれているような感覚になったことが印象的だ。疾走感のあるサウンドやポップス要素を感じさせる耳馴染みのいいメロディは、ライヴでも日常生活でも存在感を放ちそう。音楽性だけでなく、人間性にまで惹かれる稀有な作品だと言える。

PEDRO TOUR 2023 FINAL 「洗心」

PEDRO

PEDRO TOUR 2023 FINAL 「洗心」

BiSHの解散、そしてPEDRO再始動後で初のツアーを回った時期は、アユニ・D本人いわく"人生大革命期"だったという。そんな旅の終着点として開催された"PEDRO TOUR 2023 FINAL「洗心」"日本武道館公演の模様が映像作品に収められた。自分探しを続け、答えを見つけたアユニ・Dないしバンドのムードは最高潮。公演タイトルの通り、音楽で観客の心を洗う映像にはグッとくるものがある。さらに初回生産限定盤には、翌日11月27日に同じく日本武道館にてチケット代100円(!?)で開催された公演"赴くままに、胃の向くままに"のライヴ映像も収録。こちらは公演後にサプライズ・リリースされた同名アルバムを全曲披露しているので、個人的にはぜひそちらをお薦めしたい。

飛んでゆけ

PEDRO

飛んでゆけ

アユニ・D(ex-BiSH)のバンド・プロジェクト PEDROが再始動。ドラムにゆーまお(ヒトリエ)を迎え、新生PEDROとして活動再開第1弾シングルを完成させた。表題曲「飛んでゆけ」は、サウンドも歌詞も歌声も、そのすべてが温かいチルなロック・ナンバー。聴いているだけで日々のストレスからくる心の肩こりを優しくほぐしてくれるような感覚になった。ギタリストとしてプロジェクトを初期から支える田渕ひさ子が書き下ろしたカップリングの「手紙」は、表題曲とは対照的に疾走感のある1曲。味のあるサウンドで鳴らすギター・リフが先導し、一気に駆け抜ける様が心地よい。いずれの楽曲からも、音楽性が活動休止前からの地続きであることがわかるし、その一方で新体制の新鮮さも感じられる仕上がりだ。

さすらひ

PEDRO

さすらひ

BiSHのアユニ・Dによるソロ・バンド・プロジェクト、PEDROの活動休止前ラスト・ライヴ。本作は、前半でPEDROの"これまで"を辿るような楽曲が並び、後半には活動休止の発表後にリリースされたアルバム『後日改めて伺います』収録曲を全曲披露していくなかで、PEDROの"これから"を感じさせるという、実質的には2部制で構成されている。ツアーを回ったあとの公演だけあって、歌唱、演奏、3人のモードに至るまで、ロック・バンドとして万全のパフォーマンスで駆け抜ける2時間は見どころを挙げたらキリがないが、バンドとしていったんの区切りを迎えていくラスト3曲は格別。彼女がどんな想いでこの日を迎えたのかは、同時リリースされたドキュメント作品に描かれているので、そちらも併せてチェックしたい。

Document of PEDRO 2021 「LOVE FOR PEDRO」

PEDRO

Document of PEDRO 2021 「LOVE FOR PEDRO」

活動休止を迎えるまでの半年間を追ったドキュメンタリー作品。本作を視聴していると、このロック・バンドがスタッフ、ファン、そしてメンバー自身から、どれだけ大きな愛を貰って活動していたのかが伝わってきた。タイトルに"LOVE"を掲げたことにも納得だ。アユニ・Dが活休に対して、そしてファンに対して葛藤しつつ向き合い成長していく姿がツアーやオフショットを通して描かれており、PEDROは彼女にとっての青春なのだとつくづく感じさせる。だが、アユニ・Dの青春はまだ終わっていない。彼女は、田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)、毛利匠太と共に、PEDROを愛してくれた人に会うために戻ってくるはずだ。本作は、PEDROと"あなた"が笑顔で再会するその時を迎えるまでの、お守りのような存在。

後日改めて伺います

PEDRO

後日改めて伺います

横浜アリーナ単独公演"さすらひ"をもって無期限活動休止することを発表した、PEDROの3rdアルバム。本作のポイントは、なんと言ってもアユニ・Dが全曲で作詞作曲を手掛けたことだろう。作品としての一貫性が増し、これまでの活動で築き上げてきたバンドのグルーヴも合わさることで、PEDRO史上最高にロック・バンドとしての純度が高い1枚に仕上がった。プロジェクトを通じて人間として、アーティストとして成長してきたアユニ・Dの自然体を感じさせる全10曲。中でも、故郷とそこにいる大切な人たちを想いながら書いたであろう「雪の街」は、その歌声と情景によって自然と涙がこぼれそうになる珠玉の名曲だと言っていい。"後日改めて伺います"。そのタイトルに込められた想いを受け取り、信じて待とう。

103号

青虫

103号

楽器を持たないパンク・バンド BiSHのメンバー、そしてロック・バンド PEDROのフロントマンとしての顔を持つアユニ・Dが、また新たな表現の場に歩みだした。それがこの歌い手プロジェクト"青虫"だ。昨年末から名前を伏せて"歌ってみた"動画をアップしてきた彼女が、いよいよボカロP くじらのサウンド・プロデュースによるデビューEP『103号』をリリース。オープニングの「ケーキみたいだ」で、メロウなサウンドに寄り添ったアユニ・Dの新たな歌の表情を見せられて早速驚かされる。そのほか、落ち着きながらも自然と小さくリズムを刻んでしまうアーバンなナンバー「ゆぶね」など全4曲を収録。曲ごとに彼女の知られざる魅力を発見できる驚きと、全体的な聴感の心地よさがたまらない作品に仕上がった。

生活と記憶

PEDRO

生活と記憶

ベースを始めた少女が、わずか3年で日本武道館に立つ――快挙とも伝説とも言える、3ピース・ロック・バンド PEDROの日本武道館単独公演が映像作品化された。前週までツアーを回っていたこともあり、1曲目からアンコールまでの全25曲、最高のグルーヴ感で極上のガレージ・ロック、オルタナティヴ・ロックを360°の客席へぶつける本作。怪獣が咆哮を上げるかのような田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)のギター、パワフルな毛利匠太のドラミングも見どころ且つ聴きどころだが、ベース、歌唱、表情、すべてで魅せられるほどに成長したバンドのフロントマン アユニ・Dの姿は、どこを切り取っても絵になる。幸運にも会場へ足を運べた人も、そうでなかった人も、本作で記録を記憶として残してほしい。

浪漫

PEDRO

浪漫

"人生は不条理で溢れてるけど、意外とロマンチックなんだよ"。そんな言葉を伝えたかったという、PEDROの2ndフル・アルバム。全編通してガレージ、オルタナを軸にしたロック・サウンドがカッコいいなかで、とりわけ注目すべき点は、「浪漫」と「へなちょこ」でアユニ自身が作詞作曲を行っていることだろう。前者は、日常のふとした幸せを感じながらも夢を見るような歌詞と、優しいサウンドが相まって温かい聴き心地に。後者は青春パンクのエッセンスをPEDROのサウンドに取り入れた1曲。"泣きたい夜は泣いていいですか"と問い掛けるサビが、最後に"泣きたい夜に泣けばいいよ"と変化するあたりが、PEDROの活動を経て変化した現在のアユニを反映しているようで感慨深い。

来ないでワールドエンド

PEDRO

来ないでワールドエンド

BiSHのアユニ・Dによるソロ・バンド・プロジェクト PEDROの1stシングル。表題曲は、アユニ・Dのベース、田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)のギター、毛利匠太のドラムが三位一体となった、今やPEDRO節とも言えるガレージ・ロック、オルタナ・ロック調のサウンドがカッコ良すぎてイントロから痺れた。生きる意味を求め続けながらも、そんな旅の途中での出会いによって得た幸せを歌った歌詞は、叙情的であり物語的だ。c/wは「pistol in my hand」。サビがすべて英語詞になっているのは、PEDROの活動を通じて触れる機会の増えた洋楽の影響だろう。新たな扉を開き、常に進化を続けるPEDROは、我々の想像を超える景色を見せてくれる、そんな未来を思い描いた1枚。

衝動人間倶楽部

PEDRO

衝動人間倶楽部

"衝動的に動いてる人間"へ憧れを抱くようになったというアユニ・Dが"衝動"をテーマに制作した1st EPには、前作『THUMB SUCKER』で確立したガレージ・サウンド感は残しつつも、表情の異なる4曲が収められた。全曲リード曲だけあって粒ぞろいだが、あえてひとつ挙げるとしたら、冒頭で衝動に任せたように音を鳴らしまくるノイズ・パートが感情を高ぶらせる「WORLD IS PAIN」は珠玉の1曲。これまでは意識的にパワー・ワードを入れていた歌詞が、本作ではより伝えることを意識してストレートな表現になっていることにも注目だ。PEDROとしては3作品目となる本作。キャリアを重ねるごとにロック・スターとして覚醒していくようなアユニ・DとPEDROの可能性が、なんとも末恐ろしい。

THUMB SUCKER

PEDRO

THUMB SUCKER

前作での経験を経て広がったというアユニ・Dの音楽の幅がダイレクトに反映され、オルタナティヴ・ロックやガレージ・ロックのエッセンスを随所に感じられる1stフル・アルバムが完成した。本作には、キャッチーなリード曲「猫背矯正中」、「NIGHT NIGHT」をはじめ、粒揃いの新曲13曲を収録。中でも、アユニ・Dが衝動に任せて生み出したメロディを、音程を気にせず感情のままに歌った様が文句なしにカッコいい「EDGE OF NINETEEN」は、個人的にグッときた。さらに特筆すべき点は、初回生産限定盤に収録の再録曲含む全20曲に田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)が参加していること。田渕節とも言うべきギターが加わったPEDROの音楽、とにかく一度聴いてみてほしい。

zoozoosea

PEDRO

zoozoosea

"楽器を持たないパンクバンド"BiSHのアユニ・Dがソロ・バンド・プロジェクト"PEDRO"を始動し、ゲリラ・リリースした1stミニ・アルバム。全7曲の作詞をアユニ自身が手掛けた本作には、BiSHでは書いたことがない恋愛ソング「ゴミ屑ロンリネス」、狂気の入り混じったダンス・ロック「MAD DANCE」など中毒性の高い曲が揃う。等身大の彼女の生々しい感情を、特異なワード・センスによって表現した独特すぎる世界観には終始圧倒される。リード曲「自律神経出張中」は日常的に批評に晒されている彼女自身の気持ちを歌った1曲。この曲のミュージック・ビデオには田渕ひさ子(ex-ナンバーガール/bloodthirsty butchers)が出演しており、新人バンドマンとは思えないほど堂々としたパフォーマンスを見せるアユニとの共演シーンも必見だ。

ハイライト・ハイライト

the peggies

ハイライト・ハイライト

TVアニメ"くノ一ツバキの胸の内"のオープニング・テーマを表題に据えた本作。「ハイライト・ハイライト」は、自らの手で未来を切り開いていくガールズ・パワー全開のポジティヴな歌詞が光る1曲だ。"私が私を輝かせる"という"ハイライト"になぞらえたメッセージは、ガールズ・バンドにしか出せない説得力を持って全女子の背中を押す。そんな歌詞を乗せた疾走感溢れる歌とアップテンポなビートで駆け抜け、次々に転調していく推進力が楽曲をさらに勢いづけている。また、形態ごとに異なるライヴ音源も収録。ライヴとは思えないほど安定した演奏で、メジャー・デビュー5周年を迎えるthe peggiesの積み上げてきた確かな実力を証明している。キュートなだけじゃない、彼女たちの強さが存分に発揮された1枚。

Hell like Heaven

the peggies

Hell like Heaven

とにかくキュートでポップ、健康的で爽やかな3ピース・ガールズ・バンド、the peggies。彼女たちが、満を持してメジャー1stフル・アルバムをリリースする。今作は、インディーズからここまで怒濤の勢いで突っ走ってきた彼女たちのリアルな"今"が詰め込まれた作品だ。弾けるようなノリのいいギター・ロックを軸に、青春全開のストレートな詞世界を乗せて、聴いているだけでウキウキとした気分になれる楽曲が満載。楽曲ごとに手拍子やシンセなどカラフルなアレンジを加え、ダンサブルな楽曲やパンキッシュな楽曲、エモーショナルな楽曲と、フル・アルバムならではの遊び心とこだわりが随所に生きている。これから大人の女性へと成長を遂げていくのであろう彼女たちの、今しか描けない貴重なアルバムだ。

super boy ! super girl !!

the peggies

super boy ! super girl !!

昨年5月にメジャー・デビューした3人組ガールズ・バンドがミニ・アルバムをリリース。本作のテーマは大きく言うと"青春"で、恋や夢にときめく瞬間に焦点を当てた曲がほとんど。そんな中でも、疾走感溢れる王道サウンドの「GLORY」、ダンス・ポップ寄りのアプローチである「恋の呪い」、バラードながらも密かな高揚を表す各楽器のアプローチが印象に残る「遠距離恋愛」など、アプローチが多彩なあたりがさすが。作品タイトルや歌詞における一人称の使い分けなどからも、性別問わず、自分たちの音楽を幅広い層に届けたいんだという姿勢を読み取ることができるが、それが正しくサウンドにも反映されている印象だ。視界をクリアに保ちながら、健全に成長するバンドの姿がここに。

goodmorning in TOKYO

the peggies

goodmorning in TOKYO

まったく恐れることなく、ひたすらまっすぐ素直にフレッシュでポップなロックを鳴らす。その地に足がついている感には貫録すら漂うのだから恐れ入る。2012年2月、当時高校1年生でありながらEMI ROCKSにてさいたまスーパーアリーナのステージに立ったという経験を持つ女子3ピースによる待望の初の全国流通盤は、結成から高校卒業時の間に制作された作品から厳選された楽曲と、新曲の中でも特に人気の高い楽曲で構成されたベスト的内容になった。"あの人のことが好きで好きで仕方がない!"というどきどきをそのまましたためたラヴ・ソングなど、全力で恋と青春を楽しみ、きらめきやときめきを求め、生活の中で成長していく少女の姿がそのまま封じ込められている。その姿はとても可憐で、逞しい。

Who are you? / 星座して二人

PELICAN FANCLUB

Who are you? / 星座して二人

エンドウアンリ(Gt/Vo)のひとつの夢だったというアニメ"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のテーマ曲となった、サビの開放感が印象的な「Who are you?」と、yonigeの牛丸ありさ(Vo/Gt)を迎えた、ダークな雰囲気を醸す「星座して二人」のダブルAサイド・シングル。期間限定盤に収録されたKANA-BOONの楽曲「シルエット」のカバーは、リスペクトを込め原曲を再現しつつ、彼ららしい浮遊感のあるサウンドに仕上がっている。前身アニメ"NARUTO-ナルト- 疾風伝"のテーマ曲ということもあり、夢の実現に花を添える1曲となった。また通常盤には、Kabanaguによる「星座して二人」のリミックスを収録。彼ら独自の繋がりが窺える1枚だ。

ディザイア

PELICAN FANCLUB

ディザイア

表題曲がTVアニメ"炎炎ノ消防隊 弐ノ章"ED主題歌、さらに谷口 鮪(KANA-BOON/Vo/Gt)によるプロデュースという話題性抜群のシングルだが、それを差し引いても十二分な求心力を放つ1枚。むしろそれらの贅沢なほどの付加価値を、どこまでも自分たちのものにすることができるというバンドの底力を見せつけられたような気さえしてくる。疾走感がありながらも様式美すら感じられるギター・ライン、流麗なメロディ、そして包容力を湛えたエンドウアンリの歌声。それらが見せてくれるのは轟々と燃え上がる真っ赤な火ではなく、静かに、しなやかに、堂々と燃え上がる青い炎だ。カップリング含め、突き抜けるような爽快感と優しさを兼ね備えた、これぞ新境地にして王道。

三原色

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三原色

メジャー1stシングルの表題曲は彼らにとって初のタイアップで、TVアニメ"Dr.STONE"OPテーマへの書き下ろしだ。彼らの強みは、エンドウアンリ(Vo/Gt)の独特のワーディングや脳内世界を共有し、人間の肉体を構成する細胞や筋肉のようにアンサンブルを編み上げる、意思疎通のスムーズさにあるとこの曲のアレンジを聴くと痛感する。三原色の理論を詩的な比喩に置き換えた歌と相まって、細胞がドライヴする。パーソナルな歌詞でありつつ、息の合ったアンサンブルで時代を超える、インディー・ポップ「Dayload_Run_Letter」、インディーズ時代からの代表曲「記憶について」の2019年バージョンも収録。コンパクトだが、彼らの特徴を改めて知るには絶好のシングルと言えるだろう。

Whitenoise e.p.

PELICAN FANCLUB

Whitenoise e.p.

1曲目の「ベートーヴェンのホワイトノイズ」を聴いた。これぞキラーチューン。19年を激震させる音とメロディが鳴っていた。前作『Boys just want to be culture』についてエンドウアンリ(Gt/Vo)は、自らのルーツを80年代や90年代のインディー・ミュージックにあるとしたうえで、そういった背景はもはや意識せずとも出ることだと言い、描きたい世界を感覚的に音にしていったと話してくれた。それに対して今作は"ホワイトノイズ"という、明確な音楽ジャンルである"シューゲイザー"と繋がる言葉をタイトルに。その意図は単なる"原点回帰"ではない。むしろまるで人間そのもののようなホワイトノイズの持つ幻想的な揺らぎとメロディが、熱の高いビートに乗って未来へと向かう作品である。

Boys just want to be culture

PELICAN FANCLUB

Boys just want to be culture

PELICAN FANCLUBが劇的な進化を遂げた。これまでの作品は80年代のニュー・ウェーヴやポスト・パンク、インディー・ポップやオルタナティヴ・ロックといった海外の音楽や、BUMP OF CHICKENのような日本語詞のバンドといった、自らが影響を受けた音楽やカルチャーへの敬意を軸にオリジナリティを追求していた。しかし本作は、音楽的なリファレンスという意味ではこれまで積み重ねてきたことの延長線上にあるのだが、とにかく誰にも真似できないサウンドの展開が、ここにしかないエモーションが大爆発。ルーツを真摯に習得してきたからこそルーツと向き合うことを止めて、感情の向くまま作って溢れる圧倒的な強さ。彼らの今が最高。そしてこの先が楽しみで仕方ない、可能性の塊のような1枚だ。

Home Electronics

PELICAN FANCLUB

Home Electronics

天体系を比喩的に使うなど、エンドウ アンリ(Gt/Vo)流のロマンたっぷりの詞世界。それをバーチャルに体験できる感覚すら覚えてしまうくらい、曲ごとに異なるシチュエーションを最大限に演出するアレンジが素晴らしい。演奏のダイナミクスやさりげない環境音によって奥行きを増し、飛躍的進化を遂げたサウンドに終始、胸が高鳴りっぱなしだった。キャッチーながらもシューゲイズ・サウンドが彼ららしい「Night Diver」、エンドウのヴォーカリストとしての表現力に感服する狂気に満ちた「Black Beauty」、Avec Avecがシンセ・アドバイザーとして関わった壮大なスケール感と情熱的な合唱が感動を呼ぶ「Trash Trace」など......初のフル・アルバムにしてこの完成度! と思わず感嘆の声を上げたくなる仕上がりだ。今、バンドの制作活動が最高に充実していることを感じずにはいられない。

OK BALLADE

PELICAN FANCLUB

OK BALLADE

UK.PROJECT主催のイベント"UKFC on the Road"や、"タワレコメン"に選出されたセルフ・タイトルの前作でこのバンドに出会った方も多いだろう。今作は、きっとそのときの印象を凌駕するクオリティだと宣告しておく。"謎"がテーマだった前作とは切り口を変え、"今この瞬間を大事にしてほしい"という思いを込めた今作。"帰る場所があるから帰りたくなる"と当たり前の中にある大切さを歌った「記憶について」に始まり、エンドウアンリ(Gt/Vo)が"今"歌で伝えたいことを全部詰め込んだかのようなバラード「今歌うこの声が」で終わるメッセージ性の高い1枚だ。そんなアルバムに散りばめられたアートのようなサウンドスケープと、バンド史上かつてない破壊力と叫びが襲う「for elite」、「説明」での豹変っぷりとのコントラストも痛快すぎて最高。

PELICAN FANCLUB

PELICAN FANCLUB

PELICAN FANCLUB

PELICAN FANCLUBの正式には初めての全国流通音源がUK.PROJECT内のDAIZAWA RECORDSからリリース。数多くの偉大なアーティストを輩出する名門レーベルからのリリースということで周囲の期待も並々ならないものがあったであろうが、結論から言うと彼らはそのハードルをあっさり越えてきた。今作では、いわゆる4AD的な血を引きつつ、80年代より脈々と受け継がれる耽美なサウンドを現行のインディー・マナーでアウトプットする。さらに"自分達らしさ"、"謎"をテーマに掲げ鳴らされる4人の音は、圧倒的に説得力を増し、立体的で奥行きのある音像からは格段に洗練されたという印象を受ける。仄かに残る青いきらめきと内なる獣が牙を光らせる彼らの現在を克明に刻みつけた1枚。