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DISC REVIEW

M

選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ

The Mirraz

選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ

メジャー・デビューの発表から2枚のシングルを経てリリースとなった待望のフル・アルバム。シングルの時点でメジャーに行ったら彼らの持ち味である牙が取れてしまうのではないか?という心配を取り去るどころかインディーの時以上に牙をむき出していたが、本作はThe Mirrazらしさがすべて凝縮されて、なおかつダブステップの要素を取り込むなど“今”の音にしっかりとアップ・デートされている。リード曲となっている「スーパーフレア」は1stから聴き続けているファンにも受け入れられるであろうARCTIC MONKEYSよろしくなザクザクと畳み掛けるギター・サウンドだが、確実にThe Mirrazの音としてアウト・プットされている。メジャーで頂点でを目指すのではなく、頂点を取りにきた彼らの気迫を感じる作品だ。

傷名/うるせー

The Mirraz

傷名/うるせー

10月に1stシングル『僕らは/気持ち悪りぃ』でメジャー・デビューしたThe Mirrazが早くも2ndシングルをリリース。「傷名」では、“絆”と“傷”を掛けて大切な人たちとの信頼関係を独特の解釈で歌い上げる。リスナーの心に爪を立てるように刻み込まれる強いメッセージ性が溢れる歌詞だが、それをより熱く深く伝えてくれるのはソリッドに研ぎ澄まされたバンド・サウンドだろう。「僕らは」に続くThe Mirrazなりの素直な感情表現を感じられる楽曲だ。コミカルでシニカルな爽快感のあるアッパー・チューン「うるせー」、ポップで煌びやかな「I don't know」と、3つの表情を楽しめるシングルだ。Track.4には前作から引き続き7月の代官山UNITのライヴ音源の後編を収録している。

僕らは/気持ち悪りぃ

The Mirraz

僕らは/気持ち悪りぃ

この秋、ついに4トラック総収録時間50分超えのシングルでメジャー・デビューするThe Mirraz。Track.1「僕らは」は"もっとでかいところへ行きたい"と宣言した彼らの決意と気合が炸裂する、キャッチーでありながら攻め続ける楽曲だ。畠山承平が早口で刻む言葉と気迫溢れる強靭なギター・ストロークは心の中にまっすぐ染み込んでいく。メジャーであろうとインディーズであろうとThe MirrazはThe Mirrazだということを体現しながらも、その新たなスタートに賭ける純粋な情熱が美しく鳴り響く。これまでのThe Mirrazの音の中で一番強く"素直な思い"を感じた。Track.4には7月16日の代官山UNITライヴ音源(前編)がメジャー・デビュー発表のMCを含め全11曲収録。

言いたいことはなくなった

The Mirraz

言いたいことはなくなった

The Mirrazは言う、"ただ音を楽しもう"。そう、生きている限り、僕らには、音を楽しむ権利がある。いや、それに限らず、なんだって出来る、僕らは自由なのだ。それは、"音楽"にとっても同じはずだろう?僕らは少しばかり音楽に重荷を背負わせすぎた。"心の支え"という枷を外して、もっと自由にしてやろう。――例え、その頭に"疑"という文字が隠されていようとも、世界を、人を、愛し愛そうとする限り、自問自答と、自己と世界を糾弾することを止めなかったThe Mirraz。だが、彼らは遂に止まった。次なる革新の一手を繰り出すために、攻撃の手を、前進する足を、そして、最後には口を閉ざした。そうして、生み落されたのは、愛する理由も理屈も並べない、ただシンプルに愛と希望だけを歌った、ストレートなロックンロール。3.11、震災、原発問題...。"そんな時代でも楽しく生きれるような音楽を作りたかった"と畠山が言うように、今作は、こんな状況下に取り残された者の生きることへの漫然とした不安すらも払拭する、ただ純粋な楽しさと喜びに溢れている。これは、希代のヒールが繰り出す一世一代のアプローチ、これまでのバンドのやり方を投げ出して完成させた、音楽への愛と希望の形である。

RECOLLECTION

MIRROR

RECOLLECTION

真夜中のハイウェイを猛スピードで駆けるような。または、サンライズに照らされた波間ではしゃぐような。性急に、穏やかに、とかく“走る”情景が浮かび上がった。それは硬質のアンサンブルの中で瑞々しくも輝くメロディ・ラインの仕業。その疾走感が気分をどこまでもアゲてくれる。聴き終えた後は、どこか走り切った達成感の心地よい余韻に浸っていた。誤解を恐れず言うと、このバンドのオリジナリティはポスト・ロックとフュージョンの中間を射抜いたようなセンスと表現したい。1stアルバム以来、約3年ぶりにインスト・バンドMIRRORが帰還。セルフ・プロデュースで制作されたこのEPを聴けば、飛躍のセカンド・ステップとなるであろうアルバムが待ち遠しくなるはず。サウンドが伝える饒舌なエモーショナルは最高だ。


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MIRAISM 03

Mirror,Mirror

MIRAISM 03

自分らしく突き進む個性派ピアノコア・アイドルが7~9月に3作連続配信リリースした「Chewing Star」、「REM」、「ココロマリアージュ」を含む、全6曲を収めたミニ・アルバム。5月に開催した3rdワンマンをソールド・アウトできなかった悔しさをバネに、4thワンマンに向けて死ぬ気で頑張った彼女らを支えた楽曲が並んだ今夏の総集編であり、メンバーにとって思い入れの強い作品になった。ポップでキュートな曲からクールでカッコいい曲、ライヴ映え必至の疾走感ある曲と、ミラミラの魅力が様々な角度から見えるカラフルな1枚。また、壮大にドラマチックに軽快にと、曲ごとに表情の異なるピアノの響きが華やかに楽曲を彩る"ピアノコア・サウンド"も聴き応え抜群だ。今作をしっかり聴き込んで、ライヴに挑もう。

Another Lost Night

MISOPHONE

Another Lost Night

作詞とヴォーカルを担当し、作家でもあるM.A Welshと、作曲と様々な楽器を演奏するというS.Herbertの2人からなるUKのデュオMISOPHONE。彼らのプロフィールは基本的にそれ以外公表されておらず謎に包まれている。日本で言えばトクマルシューゴや蓮沼執太に近いアナログの質感を感じるが、そのどちらとも異なる世界をヴァイオリンやオカリナ等なんと30種類にも及ぶ楽器と、儚げな歌とハーモニーで描く。まるで映画のサウンドトラックのように非常に静かで美しい楽曲が並び、自身の音楽を“キッチン・シンク・フォーク”と自称するように、過去にタイム・スリップしたような感覚の、ノスタルジックなポップさに満ちた普遍的な温もりを感じさせてくれる作品。

mind

Mississippi Duck Festival

mind

Track.1「Time Machine」を聴いてみると、ビックリするくらいシンプルな8ビートを全員がただひたすら刻んでいる姿が浮かんできた。タイトルどおり"mind"をコンセプトとして、志向や意識などをイメージして作られたという本作は、"これまでとは違うアプローチの仕方でバンド自身が回想したり思いを馳せたりする中でより多くの人たちと繋がりたいという強い気持ちが芽生えた"のだという。それは言葉や音のループで全員が一体化するという、昨今のクラブ・ミュージック寄りの手法と似ているようでいて、まったく違う。彼らの音楽から生まれる"繋がり"がバンド対個人の関係になるからだ。どんどん装飾を脱ぎ捨てて、3人の感性で針の穴くらいまで先鋭化されたバンド・サウンドを極めていってほしい。

scene

Mississippi Duck Festival

scene

昨年、バンド初のワンマン・ライヴを成功させた群馬出身3ピース・オルタナ・ロック・バンドの通算3枚目となるEP。大須賀拓哉(Vo/Gt)が生み出す言葉とメロディがより芸術的に深化した印象で、アレンジに凝っていながら音数が少なく良い意味でスカスカした空気を醸し出す演奏が、より一層言葉への興味を掻き立てる。ポップなメロディと演奏に"ラヴァンピース"なサイケ感を絶妙に混ぜてくるTrack.3「ジョンL」、ゆったりしたリズムのTrack.4「口笛を吹きながら」など、1曲ごとの音作りが楽しめることで、4曲を聴いただけとは思えない長い時間が流れた気持ちになる。Track.2「clock」の"clock 歌詞の期限 過ぎてんだ"と、行き詰まった状況をそのまま歌にしている描写が面白い。

step

Mississippi Duck Festival

step

3ピース・バンド、Mississippi Duck Festivalの2ndミニ・アルバム。2015年を"攻め"の年と位置付けているというだけあって精力的に楽曲を発表しており、今年2作目のリリースとなる。Track.1「stranger」からTrack.7「so call」までをひとつの曲と捉えたコンセプトを元に紡がれる大須賀拓哉(Vo/Gt)の歌は、とことん突き詰めて言葉を生み出しているような内省的で抽象的な印象もあるが、その歌声は澄んでいて力強く耳に残る。また、「speaker」、「/」、「springhead」と続く中盤は多彩なサウンド・アプローチが楽しめる聴きどころとなっている。ラストの「so call」までの感情の盛り上がりを聴くと、アルバム1枚を作品として構築していこうという強い意志が伝わってくる。いったん最後まで聴いてから、再度頭から聴いてみることをオススメしたい。

From Nightfall till Dawn

Mississippi Khaki Hair

From Nightfall till Dawn

"出れんの!?サマソニ!? 2017"で、このバンドのために新設されたという"SONIC MANIA賞"を受賞するという輝かしい経歴を持つMississippi Khaki Hairが、満を持しての1stフル・アルバムをリリースする。本作のプロデューサーは、No Buses、Johnnivanなどを手掛ける岩本岳士(QUATTRO/Vo/Gt/Key)。THE HORRORS、ARCTIC MONKEYS、THE KILLERSなどの影響を受けていることも納得の洋楽アーティスト然とした彼らのサウンドは、岩本の手によってさらなる磨きが掛かった印象だ。一貫したダークな世界観と、全曲で作詞作曲を担当しているTaito Kimura(Vo/Gt)の艶っぽいヴォーカリゼーションとの相乗効果によって、深度のある作品に仕上がった。

空想カブリオレ

MISS ME

空想カブリオレ

"ライヴハウスから野外フェスへ"を目標に結成された8人組の音楽ユニット、MISS MEの1stシングル。表題曲「空想カブリオレ」は、つらい現実から逃れつつもまた現実に立ち向かえるようにと、そっと背中を押してくれるような応援歌。耳なじみのいいメロディは、幅広い層に支持されるポテンシャルを秘めている。A、B、Cの形態に応じて異なるカップリングは、MISS MEと怪盗との戦いを描いたストーリー性の高い「怪盗グレイ」、失恋ソングを大人っぽく歌い上げた「終電トラブル」、ソロ・パートが多く個々の歌唱を堪能することができる「Kite」と、いずれも個性的で粒ぞろいだ。表題曲を含め、ロック・サウンドという1本の芯が通っていることからも、これからの可能性を感じた作品。

GLEANING/LET IT DIE

MISTY

GLEANING/LET IT DIE

愛知県安城市出身の4ピース・メロディック・バンドMISTYが、古巣である"WE LOVE RECORDS"に移籍しての第1弾として、両A面シングルと、これまでの全作品から9曲を再録したベスト・アルバム『BESTY』を同時リリース。シングルは、英語詞による「GLEANING」と、日本語詞による「LET IT DIE」という両面で、MISTYというバンドを見せる作品になっている。SHINJI(Vo/Gt)の柔らかなファルセットや、ヴォーカルが活きたしなやかで昂揚感のあるメロディで響かせる「GLEANING」は、疾走感もアグレッシヴさもあるサウンドながら、爆発感だけでない深みを帯びた曲になっている。グッド・メロディを鋭く力強く聴かせる、引き締まったアンサンブルだ。一方で「LET IT DIE」はエモさ全開で、切なくも爽やかな曲。2曲のコントラストが絶妙。

Truly Alive

MITZI

Truly Alive

オースラリア出身のポスト・パンク・バンドMITZIの1stアルバムがリリース。オーストラリアと言えばCUT COPY等が在籍するレーベルModularや昨年のNME誌で年間ベストに輝いたTAME IMPALAなど良質なインディー・ダンス・バンドを輩出しているが、彼らもそれに続く期待の新人と言えるだろう。きらびやかなディスコ・サウンドもありながらRAPTURE等を彷彿とさせるようなポスト・パンクの要素もあり多彩でとても楽しい。今作のエンジニアにはKLAXONSやMETRONOMY等を手掛けたAsh Workmanが参加しバンド・サウンドを取り入れたグルーヴィー且つダンスフルなサウンドが展開される。美しいメロディとハーモニーがありそして踊れる1枚だ。

7th

miwa

7th

miwaにとって通算7枚目となるオリジナル・アルバムのタイトルは、シンプル且つストレートに"7th"。そんな本作のコンセプトは"誰にも染まらない"とのことで、随所に"7"を連想させる要素を散りばめながら、力強いマインドを軸に据えた作品に。LE SSERAFIMを彷彿とさせるK-POPテイストの「GIRL CRUSH」をオープナーに、日韓英3ヶ国語をミックスさせた「BUZZ!!!」、オーセンティックなラヴ・ソング「ハルノオト」、「2月14日 feat. 川崎鷹也」、ラッパー Rude-α(Bubble Baby/Vo)を作詞作曲に迎えた「7days」など、色彩豊かな全17曲を収録。デビュー15年目を迎え、"誰だって主人公 ど真ん中を歩こう"(「GIRL CRUSH」)と高らかに歌う姿は実にクールだ。

RED LION

MIX MARKET

RED LION

スカ・パンクをベースにダンス・ロックやカントリー・テイスト、ニュー・ウェーヴなどをハイブリッドしてきたガールズ・ヴォーカル・バンドが、デビュー20周年を機にとんでもなくフレッシュな新作をリリースする。masasucks(the HIATUS/FULLSCRATCH etc)をプロデューサーに迎え、ルーツのスカやポップ・パンクを下敷きにナイス・メロディが耳に残る8曲。ポップスとして成立する美メロとサビのニュー・ウェーヴ的なビート感が新鮮なTrack.1、ギター・サウンドで表現する90年代UNDERWORLD的なダンス・チューンのTrack.3、モータウン・ソウルのキャッチーさにも似た16ビート・ナンバーのTrack.5など、サウンドもクリアで、聴きやすく完成度の高い1枚だ。

ROCK'N'ROLL

SpecialThanks × MIX MARKET

ROCK'N'ROLL

まるでひとつのバンドの音源を聴いているようだ。それだけ両者が互いをリスペクトし、心を通わせているということだろう。KOGA RECORDSのガールズ・バンドの先駆けであるMIX MARKETと、彼女たちの音楽を聴いて育ったSpecialThanksによる"ふたつのロックが混ざり合う"今作には、共作曲1曲、各バンドの新曲3曲、それぞれのカヴァー曲が1曲ずつ収録されている。SpecialThanksは太い信念がこめられたメロディック・パンクに、少女から女性に成長しているMisakiの歌声が重なり、より曲の持つ情感を豊かに表現。デビュー17年を迎えるMIX MARKETは過去から現在までのロックを幅広く取り入れ、遊び心溢れるフレキシブルなサウンドに。両者とも瑞々しい音色で、純粋な"音を楽しむ"という心の結晶だ。

Strike It Out

MIYAVI

Strike It Out

自らの才覚と手腕で音楽人としての成功を果たしたうえに、俳優や声優としての活動も行っているほか、最近ではモデルとしてグッチのグローバル・キャンペーンにも起用されているMIYAVI。その経歴は実に華やかである一方、彼はUNHCR親善大使として難民問題に対し献身的アプローチを続けている賢者でもある。それだけの広い視野と多くの経験を経てきているMIYAVIが作詞を手掛け、Jeff Miyaharaが作曲したこの表題曲はアニメ"トライブナイン"OPに起用されているが、すべてを凌駕していくような力強さをもって放たれるこの歌に込められたポジティヴなメッセージには、綺麗事とは違う説得力が濃厚に漂うのだ。なお、通称 サムライ・ギタリストとしての彼のプレイはカップリング曲のほうでもお楽しみあれ。

LA LA RAINBOW

Miyuu

LA LA RAINBOW

オーガニックなサーフ・ロック・テイストに、印象的なエレクトロニック・サウンドなども導入し、映像喚起力が格段にアップした作品。音像やアレンジの深みは、プロデューサーにMichael Kanekoを迎えたことが功を奏している模様。ブレスが多めの歌唱が海辺のマジックアワーに合う「Love you in blue」、ピアノがジャジーでNorah Jonesを想起させる「yellow light tonight」、音像が"近い"「indigo night」、裏拍のリズムとホーンが海の匂いさえ想起させる「summer together」、ミニマムで屋内に場所を移したような「shine on you」など、聴感で場所を擬似体験できる。過ぎた恋や言えなかった言葉、会えない誰かの心の平和を祈る歌など、今に寄り添う歌詞もいい。

BLUE・S・LOWLY

Miyuu

BLUE・S・LOWLY

洋楽の弾き語りカバーで注目され、2016年にデビューしたSSWの1stフル・アルバム。Xmasシーズンから配信されている「very merry Xmas」や、映画"新卒ポモドーロ"主題歌の「Restart」をはじめ、グッとオーガニックでゆったりしたサウンド・プロダクションに乗せて、今の心情を素直に歌ったナンバーが揃う。いわゆるサーフ・ロック・テイストだが、憧れを追っても結局自分は自分でしかないと歌う「no one」、表現する人の苦悩、言葉を書く人の葛藤を窺わせる「someone's tune」など、チルアウトできるだけではない、20代女性の赤裸々な心情も。そのうえで、アルバム全体には海の上に昇っていく朝日をイメージしたという穏やかさが通底しており、じっくり聴きたい仕上がりに。

Mmoths

MMOTHS

Mmoths

アイルランドのウィッチハウス/チルウェイヴの新星ビート・メイカー、MMOTHSのデビューEP にボーナス・トラックを加えた日本企画盤。MMOTHは若干18歳のプロデューサー、Jack Colleran によるソロ・プロジェクト。全体的に荘厳で深遠なアンビエンスに支配され、神々しいまでの深みと、そこをたゆたうメランコリックなメロディが彩を加える。ヴォーカルをフィーチャーしたTrack.2の「Summer」、Track.4の「Heart」は声の輪郭がはっきりしすぎて個人的には好みではないが、トラック・メイクのセンスは雰囲気でごまかされがちなアンビエント・エレクトロニカのシーンにおいて異彩を放っている。今後どういった方向にこの恐るべき才能が転んでいくのか楽しみだ。

Innocents

MOBY

Innocents

『Play』や『18』などのアルバムをヒットさせ、2000万枚ものトータル・セールスを記録しているMOBY。これまでセルフ・プロデュースを貫いていた彼が、今作では初めて自分以外のプロデューサーを起用している。『Innocents』というタイトルの通り、今作では“すべての人が共鳴できる純粋さを追求した”とのことで、ノスタルジックでメランコリックな雰囲気を醸し出しながらも非常にリラックスした音が印象的だ。シンセが導く浮遊感は異次元へと誘われるような美しさで、THE FLAMING LIPS のWayne Coyne を招いた「The Perfect Life」の多幸感はアルバム中盤のハイライトと言える。後半には色気や毒気を感じさせるアプローチも。相変わらずジャンルというものを感じさせない彼の音楽性に舌を巻く。

Destroyed

MOBY

Destroyed

ギーク? ナード? いやいや、エレクトロ界のメガネ・プリンスMOBYが帰ってきました!デビュー以降、プロデュースやリミックス作品含めコンスタントな活動が目立つが、オリジナル・アルバムとしては約2年振りである。ツアー先のホテルの部屋で書き綴ったという本作のコンセプトは、MOBYいわく"午前2時に誰もいない街で流れているような、メロディックでエレクトロニックな音楽"らしいが、オープニング・ナンバー「The Broken Places」のチル・アウトな空気感はまさにそれだ。昨今の作品同様、全体的に内省的なアンビエント・ワークスの色合いを強く感じるものの、持ち前の渋い歌声、そして美しくダンサブルな楽曲もあるからご安心を。両極のサウンドを変幻自在に操る腕前は、さすがテッパン!ご機嫌で極上の午前2時である。

ナイスルーム

Moccobond

ナイスルーム

あなたはこの"Moccobond"という名前に、どのようなイメージを抱くだろうか? おそらく多くのかたは、素朴さや温かみ、懐かしさといったようなイメージを抱かれることだろう、なんたって"木工ボンド"だもんなあ。そんな彼らの初の全国流通作品『ナイスルーム』。ニシケケ夏ノコ(Gt/Vo)とサトウケイスケ(Ba/Vo)による男女ツイン・ヴォーカルを軸にしたサウンドは、やはりどこか人懐っこく温もりのあるものになっているが、楽曲の端々に静かな狂気の存在を感じてどうにも耳から離れない。日常の何気ない瞬間に、ふと口ずさんでいる自分に気づき、震えた。収録曲はどれも個性的だが、特にシンプルなアレンジと演奏のTrack.4「さよなら幽霊」やTrack.5「ナイスルーム」の完成度には大器の片鱗を感じる。

Kin: Original Motion Picture Soundtrack

MOGWAI

Kin: Original Motion Picture Soundtrack

8月に全米で公開されたSFアクション・スリラー映画"Kin"のサウンドトラックをグラスゴーのポスト・ロック・バンド、MOGWAIが書き下ろした。これまでにドキュメンタリーなどの劇伴を幾度となくリリースしている彼らだが、長編映画の音楽を手掛けるのは今回が初。ピアノを主軸にした情緒的なサウンドに無機質なシーケンスが絡み徐々に緊張感を増す前半、「Funeral Pyre」、「Donuts」でエモーショナルなトレモロ・ギターが鳴り響く中盤、轟音ギターがカタルシスを生む後半と、情景描写を得意とする彼ららしいドラマチックな展開が続き、ポップながらどこか寂しさを感じさせる歌モノ「We're Not Done (End Title)」で、美しい余韻を残しながら幕を閉じる。"Kin"の日本公開は未定のようだが、ぜひ映画館の音響で聴いてみたい。

Every Country's Sun

MOGWAI

Every Country's Sun

ポスト・ロック・シーンで不動の地位を誇るバンド、UKはグラスゴー出身のMOGWAIの3年ぶり、通算9枚目となるアルバム。彼ららしい、混沌から光へと連れていくようなドラマチックな展開や、インストゥルメンタル中心とは思えないほど雄弁に響く緻密な構成に惚れ惚れとさせられる。その一方で、軽やかさや柔らかさ、抜けのいい聴き心地も印象的だ。特にTrack.2「Party In The Dark」は、きらきらとしたポップ・センスが発揮されている。1999年に発表された傑作『Come On Die Young』のプロデュースを務めたDave Fridmann(MERCURY REV)と再びタッグを組み、Daveの所有する"Tarbox RoadStudios"でレコーディングしたことも、大いに関わっているのだろう。

Atomic

MOGWAI

Atomic

この新作はそもそも昨年8月にBBCで放送されたドキュメンタリー"Atomic: Living In Dread and Promise"のサントラをリワークしたもの。もちろん、そこには彼らが過去、来日した際に広島平和記念公園を訪れた経験も反映されている。アルバム・タイトル通り、核に対するシンプルな恐怖心に始まり政治利用としての側面、そしてチェルノブイリや福島で起こった原発の悲劇、もちろん広島・長崎に投下された原爆も下敷きになっている。と同時にレントゲンやMRIスキャンなど医学面での貢献というネガ/ポジ両面の性質を持つ。良くも悪しくも人間自身が自分の手に負えないものを作ってきた現実。錯綜する感情と一歩引いた視点が混在する、彼らの中でも透徹した美しさを持つ音像の理由は、テーマを思うと腑に落ちる。

Central Belters

MOGWAI

Central Belters

結成20周年を迎えたグラスゴーの至宝、MOGWAIのCD3枚組ベスト・アルバム。ハードコアの延長上で、さまざまな実験を繰り返してきた孤高のポスト・ロック・バンドの軌跡を全34曲に凝縮。8枚のオリジナル・アルバムからの楽曲のみならず、サイケデリック・ロックの生きる伝説、Roky Ericksonのヴォーカルをフィーチャーした「DevilRides」を始め、EPのみの収録曲やサウンドトラック提供曲など、あちこちに散らばっていたいわゆるレア・トラックも網羅。彼らの音楽が過去20年どんな変遷を辿ってきたか、とりあえず概要を掴むには便利なアンソロジーになっている。代表曲中の代表曲だけを1枚にまとめるという潔い作り方もあるかもしれないが、壮大な曲が多いMOGWAIにはこのボリュームが相応しい。

Rave Tapes

MOGWAI

Rave Tapes

タイトルにある"Rave"という言葉から連想する熱狂、あるいは恍惚はここからは感じられない。今月、来日するグラスゴーの5人組、MOGWAIによる8作目のアルバム。かつてはハードコアとも謳われた彼らがここで描き出すのは、目の前に広がる荒涼とした心象景色。淡々とループするピアノ、不気味に唸るシンセを大々的に導入したサウンドはポスト・ロックと言うよりもむしろアンビエント。静寂の中にヒリヒリとした緊張感を作り出した前作、そしてゾンビをテーマにしたテレビ・ドラマのサントラを経て、彼らが辿りついたポスト・ロックの極北。John Carpenterの映画のサントラを思い出させるような曲が連続する中、ポスト・クラシカルなTrack.8「Blues Hour」の美しさが強烈な印象を焼きつける。

Les Revenants

MOGWAI

Les Revenants

MOGWAIの緊張感と内省的な世界観を愛するファンにとっては、今回の轟音ギターこそ鳴り響いていないこの作品もバンドのDNAをより集中して堪能できるという意味で味わい深いのではないだろうか。SONIC YOUTHがサントラを手がけた映画「Simon Werner A Disparu」の監督が脚本を手がけるフランスのTVドラマのために書き下ろした新曲からなる本作の特徴は、生ピアノ、エレピ、キーボードをメインに据え、曲によっては精査され尽くした単音のギター・フレーズや控えめなドラムが配置されている点で、中にはチェロとギターのアンサンブルも。また、逝去したJack Roseへのトリビュートとして録音した「What Are They Doing In Heaven」のカヴァーでのシンプルなフォーク・テイストも慈愛に満ちて美しい。

Hardcore Will Never Die, But You Will

MOGWAI

Hardcore Will Never Die, But You Will

MOGWAI約2年半振り7枚目のオリジナル・アルバム。アルコールの購入を拒否されたティーンエイジャーが言い放った台詞をそのまま使ったという過去最高にハードで攻撃的なアルバム・タイトルとは裏腹に、過去最高に柔らかく美しい作品に仕上がっている。心地良いメジャー・コードが奏でる、凍てつくような鋭さは、広大な大地一面に広がる白雪のようだ。極限にまで削られた言葉。だが彼らは言葉では表し切れない淡い感情を、音だけで繊細かつ明確に表現する。彼らの音は、5人全員が同じ気持ちと言うより、5人全員の気持ちが重なった時、5人だからこそ創り出すことが出来る“新たなる形”なのではないだろうか。滑らかに鮮やかな刺繍を施す細い針のようだ。心に様々な模様を打ち付けられてゆくのを感じた。

Special Moves / Burning

MOGWAI

Special Moves / Burning

ライヴに非常に定評がある彼らが満を持して単独ライヴCD+DVDを初リリース。2009年にニューヨークのブルックリンにあるMusic Hall Of Williamsburgで行なわれた3公演から厳選された楽曲と映像を収録している。MOGWAIを語る上で必要不可欠な"轟音"と"静寂"。MOGWAIが創り出す静と動に浸れば浸るほど、音に取りつかれて何も出来なくなってしまった。人は本当に美しいものに触れると、意識も力もどんどん抜けてゆくことを痛感した。極限まで洗練された硬質で繊細な音像のスケール感は、まさしくポスト・ロック第一人者の風格だ。フランスの気鋭映像監督Vincent MoonとNathanaël Le Scouarnecが手掛ける臨場感溢れるライヴDVD も必見。

BUILD THE LIGHT

moke(s)

BUILD THE LIGHT

様々なタイプの"歌モノ"と呼ばれるバンドをやってきた3人ながら、今作には爆音ロックが響きわたっている。歌詞もメロディも美しいのだが、それを伴ったサウンドそのものが、ぶっといトライアングルになっているのだ。ここでこのフレーズがくる!? このアンサンブルにこのメロディが乗る!? という驚きが散りばめられながらも、奇を衒ったようなイヤらしさはない「ログアウト」。3人とも世代的に通ってきている道だろうけれど、なかなかそれぞれの音楽に反映されなかったUSパワー・ポップ感(WEEZER的な)がキャッチーに開花している「THORNS&PAINS」。他にも、収録されている7曲すべてが、衝動の塊になっている。現役中高生、そして永遠の中高生に届け。

Φ

mol-74

Φ

2022年に自主レーベル"11.7"を立ち上げて以降初となるフル・アルバム。mol-74の代名詞とも言える武市和希(Vo/Gt/Key)の透明感に満ち満ちたヴォーカルの、ファルセットをあえて抑え気味にして挑んだ「BACKLIT」をリード・トラックとして先出ししていることからも、結成15年目を迎えてなお現状に甘んじることのない探求心が窺える。またアルバム名の"Φ"は"光束"(光の明るさを表す物質量)の量記号、プロローグとして置いたTrack.1のタイトル"Φ12"は人間の瞳の直径を意味し、そこから始まる全11曲を見つめる光がテーマの作品ということで、1枚を通した物語も重視されており、楽曲同士のリンクする部分、巧みな描写で綴られる景色のグラデーションなど、作り込まれた魅力のあるアルバムだ。

Teenager

mol-74

Teenager

今年4月にリリースされたメジャー・デビュー作『mol-74』が、既存曲の再録を含むアルバムだったのに対し、本作は収録曲のすべてがメジャー・デビュー後に制作された新曲だ。上モノのきらびやかなサウンドが開放感を演出する表題曲「Teenager」。8分の6拍子で滑らかに円を描く「Couverture」。偶数拍にアクセントをつけるスネアのリズムが特徴的な「Playback」。ループするコードを主軸とした「約束」。4曲が共通して描くのは、いかなるときも時間は平等に流れゆくものだということ。その事実は人によって希望にも絶望にもなりえるが、雪解け水のような武市和希のヴォーカルは聴き手の背を叩きも、腕を引きもしない。その温度感が心地よい。

mol-74

mol-74

mol-74

mol-74が、バンド名を冠した初のフル・アルバムで待望のメジャー・デビューを果たす。モルカルの楽曲は静謐でひんやりした空気感を持つものが多いイメージがあったが、インディーズ時代の代表曲が多数再録されたこのアルバムからは、既存のファンも引き連れて一緒に"夢見た場所へ"(「Morning Is Coming」)行きたいという温かい想いを受け取ることができる。名曲「エイプリル」が4月に改めてリリースされるというのにも、なんだか運命的なものを感じて嬉しくなってしまう。新曲にはこれまでより温もりのある音が響いているように感じるし、再録曲は繊細なサウンドにさらに磨きがかかり、耳の奥がゾクゾクするような臨場感に包まれる。まさに私たちが"待ちわびた音色"がここに鳴っているのだ。

▷ (Saisei)

mol-74

▷ (Saisei)

髙橋涼馬(Ba)の正式加入後、初となるリリース。"鮮やかな僕らの未来が溢れだす"という冒頭のフレーズも新たな始まりを予感させてくれるが、このタイミングで"冬の夜"という原点回帰的なテーマを掲げていることも興味深い。『kanki』や『colors』のような作品を制作することで表現の幅を押し広げたこと、また、ギターのボウイング奏法を取り入れるなど今作においても新たなアプローチに臨んでいることなどが影響し、全体的にアレンジの妙に唸らせられる場面が多い。真価を見つめ深化を続けるこのバンドの成長を垣間見ることのできる作品だ。全6曲で描くグラデーションは、美しく、深みのあるものに。時間の経過とともに光の方へ導かれる感覚がじんわりと温かく心地よい。

colors

mol-74

colors

心を真っ白にしてひとつずつ聴き進めていくと何もないキャンパスが色づいていく、そんな"色"がコンセプトの6thミニ・アルバム。繊細なピアノの音色で始まるTrack.1「hazel」。美しくも儚い武市和希(Vo/Gt/Key)のファルセットがまるで音の一環のように耳に入り、序盤からグッと惹き込まれる。Track.4は補色を意味するタイトルの「complementary colors」。徐々に音が重なる幻想的な音色は、まさにmol-74の世界観そのもの。ラストを飾るのは「tears」。"同じ涙を流せないんだ"というフレーズは、透明な涙にはいろんな感情がこもっていて、それは人と一緒にはできない。あなたにしかない"色"があると伝えてくれる。そんな今作『colors』も、あなた色に染めてみてほしい。

kanki

mol-74

kanki

これまで、季節に喩えるならば一貫して"冬"を鳴らしてきたmol-74。この全国流通盤3作目においても、「プラスチックワード」、「ゆらぎ」を筆頭に従来の冷たく繊細な音を研ぎ澄ませつつ、「アンチドート」では目に見えない温もりを歌い、"君の手をひいて連れ出すような歌を歌うよ"と宣言する。そしてその先に用意されていたのは、雪解け、芽吹きを知らせる「開花」。今作はあらゆる解釈ができる"kanki"と名づけられているが、この曲が見せる目がくらむほどの光が溢れるサウンドスケープ、歌詞のとおり"魔法の声"のような幸福に満ちたコーラスが告げる新しい季節の訪れは、"歓喜"と呼ぶほかなかった。小気味よいリズムと今までにない疾走感で駆け抜ける「%」も、新境地を開こうとする彼らの決意表明のように感じる。

まるで幻の月をみていたような

mol-74

まるで幻の月をみていたような

"昨日見た夢を上手く思い出せないように、僕らは大切なことを忘れていく"というテーマを、水面に揺れる幻の月という情景描写に託した2作目の全国流通盤。音と音の隙間を大切にしたサウンド作りにも、多くは語らずに行間を読ませる歌詞にも、聴き手が想像力を膨らませるための余白がある。柔らかなハイトーン・ヴォイスはときに日の光を乱反射させながらあたたかみを放ち、ときにどこまでも澄み渡る世界を冷たく提示する。この"どちらにも受け取れる"感じ、mol-74を色に喩えると白だなあと思う。広がり続けるこの白さが、彼らの大きな特徴だ。人混みに何となく疲れたとき、私はmol-74と一緒に独りになる。お気に入りの本のページを開くみたいに、このアルバムの1曲目を再生する。