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DISC REVIEW

M

pavilion

mudy on the 昨晩

pavilion

mudy on the 昨晩が初のフル・アルバムをリリース。新たにギターの梶山良太を向かえたリ・スタートと言う意味と、制作時に抱えていた怒りの感情が大きな柱になっているというこの作品。全編を激しい感情の起伏が覆う。激しいギター・リフと、楽曲の中に絶妙なズレを差し挟みながらドライヴするドラムが引っ張る楽曲は、インストでありながら、しっかりとした歌心を感じさせるメロディを持っている。誰か歌い手なりMCとのコラボをやってみても面白いんじゃないだろうかと考えていたら「Sarliban」ではバンドとして初めてコーラスを薄っすらと入れていて、驚かされた。超絶のテクニックや科学者のような実験性を突き詰めたようなインストではなく、そこに込められた感情と衝動が伝わってくる音の鳴りに突き動かされる。

YOUTH

mudy on the 昨晩

YOUTH

mudy on the 昨晩の3曲入りシングル&ライヴDVD。5人組トリプル・ギターという編成での圧倒的にプリミティヴなライヴ・パフォーマンスが評判を呼び、既に多くの海外アーティストのサポートも務めるなど、各方面から高い注目を集めるmudy on the 昨晩。このシングルでも、3本のギターが絡み合うアグレッシヴなサウンドを展開する。縦ノリでありながら、しっかりと踊れるビート、高度に構築されていながら、衝動性も詰め込まれたバンド・アンサンブル。攻撃的でありながら、爆音のカタルシスに頼ることもない展開は、全く聴いていて飽きることがない。若手のインスト・バンドの中では群を抜くそのライヴ・パフォーマンスを収めたライヴDVDも必見だ。そして、3月にはついにフル・アルバムをリリースする。

No Holiday

THE MUFFS

No Holiday

ハスキーな歌声と力強いシャウト、かき鳴らすギター、そして、ワイルドな音楽性でも隠しきれないチャーミングなパーソナリティ。今年10月、ポップ・パンク/パワー・ポップ・シーンのレジェンド、THE MUFFSのフロント・ウーマン、Kim Shattuckが亡くなった。遺作となった今作には、結成からKimが病気の進行により手足の自由が効かなくなるまでの間、彼女が書き溜めてきた楽曲が収められている。GREEN DAYをはじめ多くのバンドに影響を与えたTHE MUFFSらしい、激しくもポップでもあり、新しくてノスタルジックなこのアルバムには、ALSという難病と闘いながらも、ラスト・アルバムのプロデュースを諦めなかった彼女の、生命力や音楽に対する愛がたくさん詰まっている。

Hola, Quota!

MUGWUMPS

Hola, Quota!

インディーズ・シーンで熱烈な支持を受けるスリーピース・バンドMUGWUMPSの、1stアルバムから3年ぶりとなる2ndアルバムがようやく到着した!その間にリリースされたEPでも予兆があった様に、かつてのメロコア・パンクの雄といった印象は影を潜めている。というより、格段に音楽性の幅が広がったという方が正しいだろう。その結果、様々なアイデアが曲に彩りを与えている他、音の輪郭が際立ち、持ち前のポップネスにさらに磨きがかかっている。この様な音の変化にはプロデューサーに堀江氏(the HIATUS)とエンジニアに坂本龍一のPAも務めるZAK氏を迎えた事が強く影響していると言えるが、それ以上にバンドの持つ潜在能力が引き出された結果だろう。今後が非常に楽しみだ!

Early Birds

MUM

Early Birds

アイスランドの雄MUMが、01年のデビュー作をリリースする以前、98年~00年の間に録り溜めていた未発表曲や入手困難なデモ・トラックなどを収めたレア音源集。本作を聴けばこのバンドの出発点も、BECKが体現したサンプリングという自由、もしくはPAVEMENTらが表現した価値観としてのローファイなど、90年代のポップ・ミュージックにおける音楽的革新なのだということがよくわかる。打ち込みのビートやサンプリング音、フルートやアコーディオンといった可愛らしい生楽器の音色など、あらゆる音が無邪気に飛び交っている初期楽曲たちの完成度はまだまだ高いとは言えない。だが、すべての楽曲から滲み出る音と戯れることに対する喜びと、メロディの端々から零れ落ちるメランコリーは、今と決して変わらない。

Sing Along To Song You Don’t Know

MUM

Sing Along To Song You Don’t Know

母国アイスランドのみならず世界中で人気を博すドリーミー・ポップ・バンド「MUM」から素敵なアルバムが届けられた。今作で5枚目とは思えないほど伸びやかで開放感があり、喜びに溢れている。1stアルバム『Yesterday Was Dramatic Today is OK』のリリース時は世界的にハンド・メイドなエレクトロニカが注目されていた時期でもあり、当時は僕も夢中になった一人だった。ただその後はロックンロール・リバイバルもありこの手のサウンドをあまり聴かなくなってしまったのも事実。そして今はそれを激しく後悔している。メンバーの脱退、加入があり7人編成になってもMUM はMUM だった。生楽器の音色とささやかなエレクトロニクスが調和した理想的なポップ・ワールド。

Sigh No More

MUMFORD & SONS

Sigh No More

ロンドンを拠点に活動する4ピース・バンドMUMFORD & SONSのデビュー作。発売から丸1年間全英トップ・チャートのトップ40に君臨したという超話題作である本作は、自然の造形美のごとき壮大な美しさと、わずかな哀調を帯びた、温かな作品だ。そして、ふと浮かび上がるように始まり、気付かぬうちに終わっていた...そんな手触りが印象的。それは、浮かび上がったものが、徐々に空気と馴染んでいき、やがては消えてなくなっていくような...。何度も心は荒れ、何度も泣いたはずなのに、朝日が昇るとなんだか全てが嘘のような気持ちになる...まるで一夜の間に起きた、ひとつのドラマを見たような出来事だった。幾度も押しよせる音による激情という波、バンジョーを筆頭としたストリングスは、嵐のように吹き荒れたが、終わってみれば、全てが夢だったように穏やかだ。

Will Of The People

MUSE

Will Of The People

2000年代以降のロック史に燦然と輝く3ピース・バンド、MUSE。そんな彼らの9作目のアルバムとなる今作は、パンデミックや環境問題、不安定な世界情勢といった暗いニュースにフォーカスした重いテーマを扱いながらも、非常にエンターテイメント性の高い作品となった。メタリックなギター・プレイと、'80sのキラキラ感があるキーボード、ミュージカルのように語り掛けるメロディ。スケール感のあるサウンドで、ダンサブルにもヘヴィにも感情揺さぶるバラードにも振り切った楽曲の数々には、それぞれドラマ性があり、その世界観へとグイグイ引き込まれていく。そんなテクニックだけでは描けない、生命力溢れるストーリーは、MUSEというバンドの持つ音楽への情熱を象徴しているようだ。

Simulation Theory

MUSE

Simulation Theory

MUSEの通算8作目となるアルバムは、ロック路線の前作『Drones』とはガラリと変わって、某SF映画を思わせるアートワークが示すとおり、80年代風のシンセを大胆に取り入れた異色作となった。TIMBALANDがプロデュースを手掛け、マッシヴなベースとR&B調の歌メロを融合させたTrack.4や、トラップとロックを掛け合わせたTrack.7など、全体的にはこれまでになくポップに。一方で3rd、4thアルバムのヘヴィなギター・サウンドに回帰したようなTrack.8、9も配されており、ロックもポップもエレクトロもすべて呑み込み、ダイナミックで劇的なMUSEらしいサウンドに昇華しようとする新たな試みが感じられる。彼らの真骨頂であるライヴでどう披露されるか楽しみだ。

ABNORMAL

MUTANT MONSTER

ABNORMAL

MEANA(Gt/Vo)、BE(Ba/Vo)の姉妹とCHAD(Dr/Cho)による3ピース・バンドの自主レーベル初リリース作品。ツイン・ヴォーカル・スタイルをとっており、1曲の中で交互に歌声が行き来してサビでひとつに重なるスリリングな展開を活かした楽曲が特徴的。特に表題曲「ABNORMAL」ではこみあげるようなマイナーなメロディ、現代の病理をズバリ突いたメッセージ性の強い歌詞の緊張感も相まって強烈に脳裏に焼きつく。ひとつひとつのシンコペーションにも感じさせる一体感は、ツアー中も常に寝食を共にするという3人の結束力、ライヴへの自信から来るもの。様式美メタル調の「RAY OF LIGHT」などもあるが、彼女たちが音楽に向かう姿勢は間違いなくパンクだ。

Play Dead

MUTEMATH

Play Dead

ドラマーのDarren Kingが脱退を発表しているMUTEMATHの5作目のスタジオ・アルバム。前作『Vitals』では煌びやかでダンサブルなインディー・ロックに傾倒していたが、今作はこれまでの自分たちのアルバムを振り返り、各アルバムの魅力的な部分を取り入れて制作したという。シンセやコーラスによる壮大でゴージャスなサウンドから、バンド・アンサンブルとリズムがスリリングなグルーヴを生む楽曲、ノイジーなロック・サウンド、エモーショナルでドラマチックな展開を見せる楽曲など、この多面性は彼らのキャリアの賜物だ。全曲に宿る高い感傷性も艶やかで美しい。だからこそバンドの核であるDarrenの脱退は心痛い。Track.10のタイトル"Marching To The End"とは、そういうことなのか。

VOICES IN MY HEAD

Muvidat

VOICES IN MY HEAD

"悲しみのない世界はないって知ってるんだ/だから皆 歌い叫ぶのでしょう"。タイトル曲のこのフレーズで、アルバムは始まる。Uquiの歌声は手を取って語り掛ける親密さで響き、また憂いの気持ちを包んで溶かすようなおおらかなギター・サウンドで、一気にこの音楽に飛び込ませるパワーがある始まりだ。そこからは、音に身を委ねれば想像の世界も心の深いところまでも旅をする感覚を味わえる。Muvidatとしては2作目、コロナ禍でライヴも限られたなかでの制作となったこのアルバムは、リアルな世界のシビアな空気も感じさせつつ、たくさんの人の気配があって、顔を上げて歩いている高揚感で満ちている。誰かと会って、語り合って、共に歌いたい。そんなファンファーレみたいな音楽がたっぷりと詰まっている。

熱帯的シンドローム

Muvidat

熱帯的シンドローム

爪痕を残す気満々の仲間たちによるフレーズはひとつひとつが個性的で、飛び出す絵本並みの立体感でギッチギチに詰まっている。展開するごとに目の前の景色をくるりと変えてみせるアンサンブルが楽しくて、バンド以上に強固なバンド・サウンドと、残像感漂う謎のコーラスがビュービューと熱風を吹かせてみせる。その真ん中で軽やかに踊るUquiの歌声は鮮やかで伸びやかで爽快だ。海に良し、山に良し、もちろん車でも家でもヘッドフォンで爆音でも! 他では絶対聴けない、Muvidatにしか鳴らせない、心と身体を思いきり躍らせるサマー・ソングが完成した。SPARKA + BISTRO FUNKによるリミックスはもはやMuvidatの音楽の一部。期待を裏切らない豪快な裏切りっぷりでしっかりと聴きどころになっている。

Fog Lights

Muvidat

Fog Lights

"何者でもなく/ただ唯一のメロディになる/そばにいる"というラインで締めくくられるOPナンバー「Fog Lights」から滲む音楽愛に、胸が熱くなる。アンサンブルがアクロバティックに展開したかと思えば、奥の方にしまい込んでいた痛みにUquiの歌声がそっと寄り添う、感涙必至のミドル・ナンバーがあり、東京ヴェルディ女子ホッケー・チームの公式ソング「Focus」の、スポーティな爽快感もたまらない。2枚目にして唯一無二のムビ・サウンドの豊かさを悠然と伝える曲ばかりなのだ。ミニ・アルバムと言いつつ2枚組。Disc2は昨年末のツアー・ファイナルから9曲収録。どこでだって仲間と共にふたりが響かせる音は光="Fog Lights"となり、聴き手の心のモヤモヤを全力で晴らしてくれる。

Muvidat

Muvidat

Muvidat

ふたり組ではあるが、信頼の置ける音楽仲間と奏でた曲たちは、しなやかで鮮やかで、恐ろしく強靭なバンド・サウンド。"やりたいことを形にしていったらSHAKALABBITSの続きになった"と話すUqui(Vo)の言葉通りというか。やりたいことが詰まったカラフルな新曲に、シャカ時代に作った曲をブラッシュアップさせたというロック・ナンバー、盟友 REI MASTROGIOVANNIが書き下ろした心躍るスカもあって、鋭い嗅覚と抜群のセンスを駆使しつつ完成したアルバムは、実にフラットで潔い、一番憎たらしいやつです。全曲に貫かれたシャカを愛してくれた人への感謝。右往左往しつつ、見上げた月に手を伸ばして前だけを見て突っ走るMuvidatの姿。すべてが愛おしい。めちゃくちゃかっこいい。

A Wasteland Companion

M. Ward

A Wasteland Companion

多彩なフォークの音色が紡ぐグッド・メロディ集は、暖かくも優しく、そして輝かしい小さな幸福の結晶のようで、聴き終えた後の心は感動的な想いで満ち足りているだろう。現代アメリカの良心や至宝と呼んで過言ではないSSW、M.Wardがソロ名義としては約3年振りの新作をリリースする。その歌心は古き良きノスタルジーであり、まったりとした叙情的変化を感じるが、世界観のテーマは音楽旅行記だという。地元ポートランドからNY、イギリスのブリストルなど世界各地でレコーディングされた楽曲は、まさしく吟遊詩人のような空気に情景、ストーリーを想像する。多岐に渡る活動で知られるが、SHE&HIMの相方Zooey Deschanel、SONIC YOUTHのSteve ShelleyにBRIGHT EYESのMike Mogisなど豪華なゲストもトピックだ。この季節だけに、桜道のBGMとして本作はどうだろうか?

In Ghostlike Fading

MY BEST FIEND

In Ghostlike Fading

名門レーベルWarpが送りだす新バンドMY BEST FIEND。怪演で知られるKlaus Kinskiの狂気を描いたドキュメンタリー映画“My Best Fiend”から冠したという。なるほど、そのサウンドには恍惚と鬱屈の間をゆらゆらと彷徨う危うさが潜んでいる。怪奇変態サウンドもなければ、実験的音楽でもない。かと言って流行りのベッドルーム・サウンドに留まるわけでもなく、緻密に練られた美的空間を作り上げる。MGMTのAndrew VanWyngarden、YOUTH LAGOONのTrevor Powerと共通する少年性ある物憂げなヴォーカルが、浮遊感漂うドリーミー・サイケな世界を構築。そこにふと挿入されるギターが古き良きアメリカン・ポップ・サウンドを匂わせる。私たちは予想不可能な広大な空間に迷い込み、“奥に潜むものを知りたい”という不安を超越した好奇心に駆りたてられるのだ。

myeahns

myeahns

myeahns

4人編成のテクマクマヤーンズからメンバー脱退を経てmyeahnsとして再始動した3ピース・バンドの1stミニ・アルバム。サーフ・ロック的なギターが印象的なTrack.1「デッカバンド」では、ショー・ビジネスの中でも失われない音楽へのピュアな気持ちや興奮を歌い、彼らがバンドを続ける情熱が伝わってくる。ハツラツとしていながらうるさすぎない演奏と儚げな逸見亮太(Vo/Gt)の声は一度耳にしたら気になってしまう魅力があり、繰り返し聴いて歌の内容を確かめたくなる。日本のロック・バンドらしさが爆発するTrack.7「バカは休み休みYeah」、どこか悲しい夢の中で歌っているようなTrack.2「U.F.O.み.た.」やTrack.5「フェスティバル」の憂いのあるメロディがすごくイイ。

迷跡波

MyGO!!!!!

迷跡波

始動から1年半をかけて放つ初のアルバムは、いい意味で期待を裏切る音楽性の幅の広さと、音楽的な懐の深さを1枚に凝縮した作品に仕上がった。王道ロックを突き詰めた「迷星叫」から始まり、痛快なパンク調の「壱雫空」、疾走感溢れる「碧天伴走」、ダンサブルな「影色舞」、洋楽ポップ・パンクを彷彿とさせる「歌いましょう鳴らしましょう」など、1曲ごとにキャッチフレーズをつけられるぐらい音楽的テーマが明確に感じられ、初のアルバムとは思えないレベルで楽曲が個々に光を放っている。アニメ放映が終わり、その締めくくりとして本作が提示されたことは、終わりを意味するわけではなく、バンドの始まりの物語とこれから始まる快進撃の"狼煙"として受け止めるべき出来事となる。

音一会

MyGO!!!!!

音一会

"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクト発、昨年始動したばかりの新バンド"MyGO!!!!!"が早くも2ndシングルをリリース。表題曲の「音一会」は、疾走感のあるツービートに乗せたメロディアスなギター・フレーズが印象的なロック・チューンだ。"独りきりで泣いてたあの夜も/きっと今日の僕に続いてたんだ"と過去の自分と向き合いながら"君が いたから/「ありがとう」"と感謝の気持ちを込めた歌詞や、迷いもそのまま抱えて未来へと進もうとする姿には共感する人も多いのではないだろうか。続く「潜在表明」ではポエトリー・リーディングによって紡がれる言葉と、サビで一気に明るくなる音の開放感に心が揺さぶられ、3曲目の「影色舞」は四つ打ちが心地よいダンサブルなナンバーで、ライヴでのキラーチューンになること間違いなし。

迷星叫

MyGO!!!!!

迷星叫

"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクトから生まれた、"現実(リアル)"と"仮想(キャラクター)"が同期する新バンド、MyGO!!!!!(読み:マイゴ)の1stシングル。初のオリジナル曲である表題曲は、ストレートなロック・ナンバーに仕上がっていて、そこへヴォーカルの燈が乗せるのは"孤独"や"迷い"の感情だ。現実世界のどこにでもいそうな"独り"の人間をイメージさせる歌詞は、この時代を生きる人にとって共感性が高いだろう。カップリングの「名無声」は、MyGO!!!!!の世界観に共感した人の背中を優しく押すような1曲。メンバーのコーラスも聴き手の心を鼓舞させるのに一役買っている。まだまだ謎の多いバンドなので、今後の展開が楽しみ。

narimi

My Hair is Bad

narimi

ウソをついて嫌われるより、本音を言って煙たがられる方が悲しい。だから作り笑いで予防線を張って、行き場のない"ホント"を内側に積もらせる。ギターとベースとドラムと歌のみの粗さの残るサウンド。そして人間の情けない部分をそのまま描いた歌詞。その12曲には、誰かの憂いを吹き飛ばす底抜けの明るさはない。誰かの悩みを丸ごと受け止めてみせる懐の深さもない。でも彼らは、多くの人がしまい込むような"ホント"の感情をまっすぐ鳴らす。そんなバンドがMy Hair is Badであり、初のフル・アルバムがこの『narimi』だ。結局、生身の人間の心を最短距離で共鳴させるのは、生身の音楽ではなかろうか。そう信じて止まない私は、彼らに1票投じたい。

昨日になりたくて

My Hair is Bad

昨日になりたくて

新潟上越から登場した3ピース日本語ロック・バンド。ギター・ヴォーカルの椎木知仁を中心に結成され平均年齢20歳の彼らは、高校生の頃から新潟にてクリープハイプやグットモーニングアメリカ等数々のバンドのツアー・サポートを務め評価を高めていく。そして満を持して発表された今作は、エモーショナルなメロディとリアルな歌詞が印象的なとてもクオリティの高い日本語ロックを奏でる。冒頭の「最近のこと」は6分を超える楽曲だが、飾らない歌詞とヴォーカル椎木知仁の真っ直ぐな歌声と美しいメロディに、一気に彼らの世界に引き込まれていく。個人的には攻撃的なナンバーよりもスローなバラードにグッと心を揺さぶられた。若さとそのキラキラした感情と美しいメロディが詰まったアルバム。今後が期待の日本語ロック・バンドの登場だ。

Circuital

MY MORNING JACKET

Circuital

現在のアメリカを代表すると言っても良い人気バンドとなったMY MORNING JACKET、3年振り6枚目のフル・アルバムがついに登場。地元のケンタッキー州に戻り、ほとんど一発録りで作られたというセルフ・プロデュース作品だ。レコーディングには古い教会を利用し、鳥や風の音などもそのまま収録しているが、それはまさしく自然との共作と言って良いだろう。木漏れ日のようにきらめくキーボード、鳥が翼を広げる様なしなやかさのギター、動物の歩みを感じさせるドラムス......。天然の環境は彼らの奏でる音を、軽やかに美しく、クリアに響かせてゆく。壮大なバラード、王道ロック、心あたたまるアコースティック・ナンバーなど、MY MORNING JACKETが歩んできた軌跡が凝縮。滲むような柔らかいハーモニーは聴く者をゆったりと眠りに誘う。

Curve Of The Earth

MYSTERY JETS

Curve Of The Earth

2000年代半ば、イギリスで起こった空前のインディー・ロック・ブーム のさなかに世に見出された MYSTERY JETS。今年で デビューから10年を迎える彼らが、バンドの成熟を印象づけた前作『Radlands』を最後に古巣"Rough Trade"から離れ、DIYの精神で5作目となるアルバム『Curve OfThe Earth』を完成させた。今作は、ジャケットやそのタイトルから窺わせる通り、70~80年代のプログレッシヴ・ロックの妙味を感じさせるスケールの大きな楽曲が中核を成している。中でも神秘的なムードを纏った「Bombay Blue」、そしてYESやPINK FLOYDの名曲にも比肩するコズミックなメロウさを湛えた「BloodRed Balloon」は今作の白眉と言える。10年のときを経て、頼もしく成長したバンド像を提示する野心作。

Radlands

MYSTERY JETS

Radlands

日本でも熱狂的な支持を得ているMYSTERY JETSの約2年ぶり通算4枚目となるフル・アルバム。まず冒頭を飾るタイトル曲「Radlands」から漂う80'sの空気感に溶け込む美しいメロディと洗練されたバンド・サウンドに今作の完成度の高さが伺える。そしてホーム・ページにて先行公開された「Someone Purer」のポップなコーラスはライヴで大合唱間違いなしだろうし、ドリーミーな浮遊感が心地よい「The Nothing」やオーガニックな要素と女性ゲスト・ヴォーカルを取り入れた「Roses」など新境地への挑戦も垣間見える。ガレージ、サイケデリック、プログレッシヴなど、様々なジャンルを独自の世界へと変えてしまう確固たるオリジナリティで貫かれた名作。

Serotonin

MYSTERY JETS

Serotonin

2006年のデビュー以来独自の感性としなやかさを持ち、異端児とも言われながらその絶妙なバランス感覚でシーンに強烈な世界感を提示して来たMYSTERY JETS。彼らの魅力は魔法にかけられた様にキラキラ輝くメロディと自らの原点と語る80'sロックのエッセンスをたっぷり取り入れ洗練されたサウンド・プロダクション。傑作の2nd『Twenty One』に続いて3年振りにリリースされた今作は、まだ発表してない新曲しか演奏しないというツアーを行ったりしながらバンドとしてまっさらな状態に戻ってから作り始めたという。ソフト・ロック的展開や、サイケデリック色の強いナンバーなど新機軸はあるものの、彼らの持ち味である瑞々しさはさらに研ぎすまされた印象。期待を裏切らない傑作。

One Of Us

MYSTERY SKULLS

One Of Us

70~80年代のポップス、ソウル、R&Bなどのダンス・サウンドをベースに、近未来的なフレーバーを取り入れたサウンドで人気を博しているエレクトロ・アーティスト/プロデューサー/シンガー、MYSTERY SKULLS。約2年ぶりの新作となる2ndアルバム『One Of Us』は、そのマルチな才能を生かし、よりスケール感を増した仕上がりになっている。ディストピアの世界に生きる、アンダーグラウンドなふたりのならず者が、社会を牛耳る影の存在から脱出するために逃走するというストーリーのサウンドトラックをテーマとして描かれた今作。エンターテイメントに昇華されているが、根底に鳴っているのは生々しい現実だ。ストーリーを踏まえて聴くと、また違った味わいが楽しめる。

VERDE

MYTH & ROID

VERDE

"彫刻をめぐる物語"を展開する連作コンセプト・ミニ・アルバムの後編。ひとつの島が海に沈んだ前編から、後編では画家の少女を中心にストーリーが進んでいく。絵を描きたいというピュアな衝動を、ダークながらもダンサブルなサウンドに乗せて炸裂させる「Palette of Passion」や、理不尽な規則に湧き上がる葛藤や怒りを叫ぶ「DiLeMMa」、柔らかな手触りの中にも悲しみや儚さが漂う「Dizzy, Giddy」に、透明感のある美しいコーラスを湛えたホーリーな「Whiter-than-white」など、現実世界の出来事を自ずと想起させながらも、MYTH & ROIDらしいスタイリッシュなサウンドで繰り広げられる音物語は、とにかく凄まじい没入感。聴き終えたあと、温かな光が胸に宿るような感覚を覚える。

MYTH & ROID Concept mini album 〈Episode 1〉『AZUL』

MYTH & ROID

MYTH & ROID Concept mini album 〈Episode 1〉『AZUL』

メジャー・デビュー以降、数々の大ヒット・アニメの主題歌を手掛け、海外からの人気も高いMYTH & ROIDの初のコンセプト・ミニ・アルバム。"彫刻をめぐる物語"をテーマにオリジナルのストーリーを展開、幕開けの朗読(<Episode of AZUL>)から一気にその世界へと誘う。アヴァンギャルドな「RAISON D'ETRE」、モダンな「MOBIUS∞CRISIS」と魅力を存分に発揮するサウンドで物語は続き、そのセンスとヴォーカルに圧倒される。そして祈りのようにも聴こえる歌声とピアノが印象的な「...And REMNANT」でいったん物語は幕を閉じる。実はこの物語、2枚のミニ・アルバムを通して完結ということで、2024年春に後編をリリース予定。"海"と"街"を舞台に描かれたこの物語がたどり着く場所とは――それがわかる日がくるまで、この世界をたっぷり味わい尽くしてほしい。

Arcana

Myuk

Arcana

ブレス多めで甘さと芯の強さを併せ持つ声が魅力のMyukの名刺代わりとなる1stアルバム。ネット・ミュージックのクリエイションとの親和性を証明したEve作の「魔法」、ポップなソウルやシティ・ポップのニュアンスで冴えを見せる作曲家 大久保友裕によるスウィートな「Snow」、tofubeats作のピアノ・リフが印象的なテクノ・ポップ「Gift」など、タイトル"Arcana"の"Arca"=容れ物/方舟が象徴するように、どんなジャンルでも消化する彼女の器の大きさを実感。中でも若手クリエーター Guianoによる「Arcana」のソリッドなファンタジーや漢字多めの歌詞の押韻、同じく彼作の「愛の唄」の鋭いトラック、ササノマリイ(ねこぼーろ)による「encore bremen」のエレクトロとジャズの邂逅に乗る歌唱はかなりの中毒性の高さ。

Phantasm

熊川みゆ

Phantasm

昨年の"FUJI ROCK FESTIVAL"出演や、この1stアルバムにも収録している「sixteen」など、5曲の連続配信などですでにその歌と音楽性に触れている人もいるであろう、19歳のシンガー・ソングライター。アコギ弾き語り+打ち込みやシンプルな生楽器が奏でる風通しのいいアンサンブルは洋楽とJ-POP、英語と日本語をシームレスに吸収/消化してきた世代ならでは。言葉数が多く、ユニークなメロディに乗せる感性と技術はヒップホップとフォーキーな音楽の両面が血肉化していて聴きごたえ十分。子供でも大人でもない年齢にあり、人に何かを伝えていくとき、決して忘れたくない思いを綴る「sixteen」、ラテン+R&Bテイストで洒脱な「夜の舞踏会」など、言葉も歌もサウンドもこれまでのSSWにない新鮮な表現だ。

現在地未明

mzsrz

現在地未明

エイベックス×テレ東によるオーディション"ヨルヤン"を勝ち抜いた女性ヴォーカリスト5人からなるmzsrzの1stアルバム。エレクトロニカを採り入れたバンド・サウンドを得意とするボカロP、DECO*27が全曲プロデュースし、曲によってはTeddyLoidやRockwell、ポリスピカデリーと気鋭のトラックメイカーやアレンジャーを迎え、シティ・ポップ的ナンバーからラウドロックまで幅広いジャンルを横断している。そのどれもを力むことなく自然に乗りこなす歌唱力は、まさに歌/声に照準を絞って実施されたオーディションの賜物。既発曲でもそれは感じられるが、本作に収められた新曲たちでさらに壮大であったりトリッキーであったりとサウンドや歌唱のレンジを広げ、驚かせてくれる。今後への期待も高める1枚だ。