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DISC REVIEW

M

Cities In Search Of A Heart

THE MOVIELIFE

Cities In Search Of A Heart

2014年に再結成したニューヨーク州ロング・アイランド出身のメロディック・ハードコア・バンドが前作『Forty Hour Train Back To Penn』以来、14年ぶりとなる新作をリリース。1曲目こそ疾走感がカッコいいメロコア・ナンバーだが、ぐっとテンポを落として、リフで聴かせる2曲目以降は、例えばWEEZERを連想させるパワー・ポップや、ストリングスをフィーチャーしたアコースティック・ナンバーなど、メロコアに留まらない曲の数々でアプローチし、再結成後もバンドが進化を続けていることをアピール。終盤、再びメロコアを畳み掛け、"おぉっ"と思わせたあと、ラストを飾るのがゴス味もあるバラードというところに単なる懐古を拒否するバンドの心意気を感じ取りたい。

Waiting For The Dawn

THE MOWGLI'S

Waiting For The Dawn

キャンプファイアを連想させる合唱で大いに盛り上がる、ロサンゼルスの8人組のメジャー・デビュー・アルバム。ネオ・ヒッピー的な大所帯の編成による楽団風の賑やかさは、その先駆者とも言えるARCADE FIREやアイスランド出身ながら米英でブレイクしたOF MONSTERS AND MENを思わせるものの、こちらはロサンゼルスの青い空と燦々と降りそそぐ太陽の光をイメージさせる溌剌とした明るさが魅力だ。男女デュエット、口笛、ニュー・ウェイヴ調の煌きなど、曲ごとに趣向を凝らしたアレンジを楽しませつつ、全体のイメージとしては彼らが持っているユーフォリックなヴァイブを印象づけるものになっている。観客を巻き込み、みんなで盛り上がるに違いない彼らのライヴの光景が眼に浮かぶようだ。

ウィスキーハロウィン

Mr.FanTastiC

ウィスキーハロウィン

今年6月、結成からわずか1年でメジャー・デビューを飾った大阪の4人組が、そこから4ヶ月というハイペースで2ndシングルをリリース。MR.BIGを目標に掲げ、いつか彼らを超えるという野望をバンド名に冠しながら、実は多彩なレパートリーを持っている彼らが、さらに新しい引き出しを開けたことを印象づける2曲を収録した。スウィングする演奏がゴキゲンなロックンロールの表題曲は、パーティー・ソングと思わせるが、シリアスなメッセージにも耳を傾けたい。そして、カップリングの「それでも僕らは」は、彼らのメジャー・デビュー・シングル『絶走』の流れを汲む、アンセミックなロック・ナンバー。早口でまくしたてるような歌という新機軸が、メロディに収まりきらない熱い思いを伝える。

絶走

Mr.FanTastiC

絶走

ネット系の歌い手として活躍していたメガテラ・ゼロを中心に2018年6月に結成された4人組バンド、Mr.FanTastiCのメジャー・デビュー・シングル。表題曲は、バンドに懸ける決意、覚悟を歌ったギター・ロック・ナンバー。タイトル通り駆け抜けるような疾走感が痛快だ。その「絶走」とは打って変わって、カップリングの2曲は、ヘヴィなロックをガツンと鳴らしている。グランジ/オルタナ・メタル調の「Mr.wonderland」、そしてメタルコア調の「Liar,Liar」は、激しいスクリームを交え、バンドが持つバックグラウンドの幅広さをアピール。しかし、これは彼らのほんの一面でしかない。同時リリースのアルバム『START DASH TURBO』を聴けば、さらに驚かされるはずだ。

START DASH TURBO

Mr.FanTastiC

START DASH TURBO

4人組ロック・バンド、Mr.FanTastiCによるメジャー・デビュー・アルバム。2018年9月に自主リリースした『START DASH』に新曲2曲を加え、タイトルに"TURBO"をプラスした、ライヴで盛り上がることだけを考えながら作った全10曲。メンバー全員が大好きだというMR.BIG由来のハード・ロック/ヘヴィ・メタルの影響をバックボーンに、ファンク、グランジ/オルタナ、アニソン、ラップ、R&Bといった多彩な音楽のエッセンスを散りばめながら、どの曲もアンセミックに聴かせているところは、一見エキセントリックに思えて、実は日本のロックの王道のスタイルだ。メガテラ・ゼロが暑苦しい歌声(褒め言葉)と共に放つ力強い言葉でロック・シーンをかき回してくれそうな予感!

DREAMS

MR.Fuzzy

DREAMS

2018年結成、MR.Fuzzyの1stミニ・アルバム。ザクザクと刻まれるギター・リフに、ビッグなビートや、跳ねたり疾走感のあるビートでも曲を加速させて、キャッチーなメロディを遠くまで飛ばす曲が揃う。アグレッシヴでもフレンドリーであることは大事にし、高揚感のあるコーラスをうまいこと入れてくるあたりに、BOWLING FOR SOUPやALL TIME LOWらパワー・ポップ・バンドを思い起こさせる。最初の流通作品として小さくまとまらずに、エネルギーを迸らせて、そこまでやるかというドラマチックなギター・ソロも恐れず奏で、グッド・メロディをどんどん開花させていく躁的なアンサンブルが気持ちいい。唯一日本語詞を軸とした爽快な「Dream」などは、今後の展開も期待させる。

なみだ e.p

Mr.Nuts

なみだ e.p

札幌出身の3ピースが約2年のインターバルを経て3曲入りEPをリリース。ソングライターのヤハラシュン(Vo/Gt)が、"歌詞を大事にした楽曲を作りたい"と再確認したうえで制作にあたり、重病を抱える女性とそれを見守る男性を取り巻く1本のストーリーを、「病室の蝉」では男性視点、「手紙」では女性視点で綴っている。それぞれの視点を通して物語が構築されていく様子は、まるで映画のよう。サウンド面もストーリーを際立たせる手法が取られ、ピアノやストリングスといった煌びやかな上モノもその世界観を底上げしている。その2曲を経て聴くからこそ、最後にバンドがこれまで歌ってきた人生哲学が詰め込まれた「なみだ」も引き立つという、わずか3曲ながらに、非常に作品性の高いEPに仕上がった。

愛しき日々よ

Mr.Nuts

愛しき日々よ

"生活"をテーマに等身大のいまを歌う札幌発の3ピース・バンド Mr.Nutsが、メンバー・チェンジを経て新体制でリリースする初の全国流通盤。昨年7月にリリースした前作『20歳』では、若さゆえの衝動をエンジンにしたストレートな作風が印象的だったが、9ヶ月ぶりのリリースとなる今作『愛しき日々よ』は、出会いと別れのなかで波立つ自分自身の感情を丁寧に汲み上げる進化作になった。大切な人が遺した言葉とともに生きるいまを綴ったリード曲「いってらっしゃい」をはじめ、移りゆく心を斜めから歌う変化球「エキストラ」、アコースティックな響きに後悔の色を滲ませた「終わった」など、全6曲。平凡な日常にこそ見逃せないドラマがあることを、彼らの音楽は教えてくれる気がする。


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20歳

Mr.Nuts

20歳

"優しさも 醜さも 賢さも 不器用さもちょっと知って/僕は 20歳になりました"。何のてらいもないまっすぐな言葉でいまハタチを迎えたばかりの心情をありのままに綴ったタイトル・トラック「20歳」に代表されるように、Mr.Nutsが自身初のEPで表現するのは"ハタチといういまこの瞬間の想い"だけだ。あえて一点突破でこの1枚を完成させたことにバンドの強い意思を感じる。2015年に結成、札幌在住で活動する3ピース・バンド。メンバー全員がSUPER BEAVERに憧れているというとおり、シンプルだがパワフルなバンド・サウンドに乗せて放つ強いエネルギーを持った言葉が胸を打つ。歌詞カードを見なくとも言葉を聴き取ることのできるヤハラシュン(Vo/Gt)の歌唱と秀逸なメロディ。それらを武器に、いよいよMr.Nutsが全国区へと名乗りを上げる。

ANTENNA

Mrs. GREEN APPLE

ANTENNA

活動再開後、初となるフル・アルバムは初めてタイトルをあらかじめ決めず、感受性を信じ、自由に生み出した曲を緻密に制作で形にしていったアルバムだ。現在進行形のミセスのフル・コースであり、ドーム・ライヴへの期待が否応なく高まる完成度とスケールの大きさが実在している。ハード・ロック・ギターが響き渡る「ANTENNA」もケルト音楽を彷彿させる楽隊調の「Magic」もどちらもドーム・アンセムのスケールを持っているのが今のミセス。宇多田ヒカルにも通じるようなR&Bの先鋭的な構造を持つ「Blizzard」、藤澤涼架(Key)がストリングスとホーンのアレンジに参加している「ケセラセラ」のオーケストレーションの楽しさ、メンバー3人の演奏がメッセージでもある「BFF」など、ブラッシュアップのひと言に止まらない自由な現在地が鮮烈。

Soranji

Mrs. GREEN APPLE

Soranji

"我らは尊い。"という言葉は非常に危うい側面も持つと思うが、それが生死の境目にいる人を生の側に繋ぎ止める言葉だとしたら、と想像する。目の前の人にも遠くにいる人にも伝わるか確信がないとき、魂を振り絞って"そらんじる"ことを、壮大なようでいて勘違いをさせない控えめな品性も伴ったアレンジで仕上げたことが、「Soranji」最大の留意点だったのではないだろうか。映画"ラーゲリより愛を込めて"のどんな場面で響くのか期待が募る。2曲目は"フェーズ2"のキックオフに作られたという、Adoに提供した「私は最強」のセルフ・カバー。自身を鼓舞するニュアンスも含まれたまさにアンセムだ。3曲目はミセスがプロデュースするフレグランスが持つ"香階"にあたる音階から誕生。ポップ且つ幻想的な新たな仕上がりだ。

Unity

Mrs. GREEN APPLE

Unity

『Variety』から7年。同作と対になる部分も散見されるフェーズ2の1作目。サビへの飛翔やビート感にらしさを窺わせながら間奏で若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)共にブラッシュアップしたリフの応酬を聴かせる「ニュー・マイ・ノーマル」、ホーン・アレンジやカウンター・コーラスやギター・カッティングが鮮やかな「ダンスホール」、高速BPMでasmiとスリリングな掛け合いをする「ブルーアンビエンス」、アトモスフェリックなSEがモダンな印象を添えながら、幹になるバンド・サウンドは骨太な「君を知らない」、「インフェルノ」を洗練させたようなソリッドなマイナー・チューン「延々」、90年代的なピアノ・バラードに大森元貴(Vo/Gt)の本音が刻まれた「Part of me」。再開に相応しい6つの表明と言えそうだ。

5

Mrs. GREEN APPLE

5

日本のミレニアルズ~Z世代の不安と理想を映し出しつつ半歩先を走ってきたミセス、結成からの7年を集約。初期の高速BPM且つ情報量の多い「StaRt」や「Speaking」。人間としての成長がおおらかなサウンド・プロダクションに着地した「どこかで日は昇る」、音楽のエンターテイメント性を積載した「Love me, Love you」。ミセスがミセスたる所以とも言える、人の摂理や矛盾にフォーカスする「パブリック」と「アウフヘーベン」という一対の曲。さらに、生身の音を聴かせる新曲「アボイドノート」。初作品収録で今回再録した「スターダム」が冒頭を飾り、ラストにまったくの新曲「Theater」を配置したことにも注目。バンドという概念を更新し続けてきた、"フェーズ1"を凝縮した初ベストだ。

Attitude

Mrs. GREEN APPLE

Attitude

オーケストレーションやエレクトロ、R&Bなどウィングを前作で広げ、そもそもミセスがどんな態度=Attitudeで音楽を奏でているかを証明するかのようなアルバム。ギター・ロック成分に驚いた「インフェルノ」やエクストリームな「Ke-Mo Sah-Bee」、より素直なギター・ロック「嘘じゃないよ」、ロマ風の弦のアレンジと日本語に聴こえないAメロがユニークな「Viking」、ヴォードヴィル的な華やかさの中にQUEENを想起させる大仰な転調が盛り込まれた「lovin'」。展開の多さでは「ロマンチシズム」も共通するニュアンスが。また、大森元貴の歌と藤澤涼架のピアノのみで展開する「Circle」のシンプル故の個性。そして、ありのままを定着させた理由は楽曲「Attitude」で確かめてほしい。

ロマンチシズム

Mrs. GREEN APPLE

ロマンチシズム

2019年第2弾シングルは資生堂"SEA BREEZE"のCMへの書き下ろし。が、CMで流れるパンキッシュなブロックの次にキモになる"愛を愛し"という威風堂々としたサビが登場する。そのあともめくるめく展開を見せるあたりが『ENSEMBLE』以降の曲構成といった印象。加えてラヴ・ソングにも取れるが、根っこには倫理観がしっかり根を張っているのは大森元貴(Vo/Gt)らしい。「How-to」はアグレッシヴなエレクトロとエッジの効いたギター・リフ、トリガー的なドラム・フレーズが拮抗する仕上がりが痛快だ。そして「月とアネモネ」は2014年にすでにあった曲を今回完成させたもの。キメの複雑なポスト・ロック的なパートや大森と山中綾華(Dr)のAOR的なデュエットも聴きどころだ。

僕のこと

Mrs. GREEN APPLE

僕のこと

2019年第1弾リリースは、大森元貴(Vo/Gt)が"勝負やスポーツに対して曲を書いたことがない"なかで、彼ならではのスタンスで"第97回全国高校サッカー選手権大会"のために書き下ろしたナンバー。そのタイトルが"僕のこと"なのは、自分がどう生きているかを歌うことでしか、エールを送ることができないという意味なのではないだろうか。静かな歌い出しから、ストリングスやホーンも加わったスケールの大きなサウンドが立ち上がるアレンジは、顔を上げると仲間やライバルのいるスタジアムを想起させ、ラストは静かに閉じる。見事な構成だ。アッパーななかに切なさが溢れるミセス節と言えそうな「灯火」、サンプリング的な感覚を生で演奏し、ピアノが存在感を示す「Folktale」も新章を示唆している。

青と夏

Mrs. GREEN APPLE

青と夏

ミセスが3rdアルバム『ENSEMBLE』からわずか3ヶ月半でニュー・シングルをリリース。本作では、久々にバンド・サウンドに回帰している。映画"青夏 きみに恋した30日"の主題歌として書き下ろした表題曲は、疾走感溢れるアッパー・チューンで、同映画の挿入歌「点描の唄(feat.井上苑子)」は、しっとりとしたデュエット・ソング。3曲続けて聴くと「ア・プリオリ」だけが異色に感じられなくもないが、前2曲が体現する夏および青春特有の儚い煌きは、大森元貴(Vo/Gt)に"ア・プリオリ"な視点があるからこそ描くことができるものだ。尖った曲だけでなく、多くの人に対して開かれた曲の中でここまで彼らが裸になれたのは、今回が初めてではないだろうか。

ENSEMBLE

Mrs. GREEN APPLE

ENSEMBLE

音楽そのもので夢や希望や理想を表現すること、それがMrs. GREEN APPLEの指標だったと、そもそもの彼らの志向が実現したことに快哉を叫びたくなる。ミュージカルを思わせる「Love me, Love you」に始まり、1曲の中で楽器編成が変わり、ストリングスも含めすべての楽器が歌うような「PARTY」、ヒップホップやビートに新世代ジャズ的な面白さまである「REVERSE」、MONGOL800のキヨサク(Vo/Ba)を迎えた「はじまり feat. キヨサク from MONGOL800」など、多彩を超えて1曲ごとの強度が凄まじい。そこにこれまでのミセス節が残るシングル群やEDMナンバーも加わり、さながら音楽のアミューズメント・パークが出現。なんとも体験的だ。

Love me, Love you

Mrs. GREEN APPLE

Love me, Love you

前作『WanteD! WanteD!』、そしてデジタル・シングル「WHOO WHOO WHOO」でバンドが表現するEDMの究極まで振り切ったミセス。2018年第1弾はまた異なるベクトルに振り切ってきた。まず表題曲の「Love me, Love you」はホーンが煌びやかで、ダイナミックに展開するミュージカルのようなビッグ・バンド・サウンドに驚く。だが、大森元貴(Vo/Gt)の脳内に広がる希望の世界を表現するために、このサウンドスケープや世界観は必然なのだろう。早くライヴで自由にリアクションしたい曲だ。2曲目の「Log (feat.坂口有望)」はドラマ"僕たちがやりました"のサントラも作曲している注目のキーボーディスト/プロデューサー Kan Sanoとシンガー・ソングライター 坂口有望が参加。また「春愁」も初音源化して収録。

WanteD! WanteD!

Mrs. GREEN APPLE

WanteD! WanteD!

メジャー・デビュー2年で早くも5枚目のシングルとなる本作。タイトル・チューンの「WanteD! WanteD!」はコミック原作のドラマ・テーマならではの荒唐無稽さもありつつ、"このままでいいのか?"という10代の焦燥感はドラマ"僕たちがやりました"と自然とリンクする内容。大げさに言えばポスト・トゥルースの時代を君はどうやってサバイヴするのか? という命題をエレクトロ・ファンクやモダンなR&BなどUSのトレンドとも符合するタイトなアレンジに昇華したのが新しい。「On My MiND」は随所にデビュー当時からの代表曲「StaRt」をアップデートしたような仕上がりで、過去と今の対比が最もわかるナンバー。加えて大森元貴(Vo/Gt)が中3のときに書き、ついに音源として完成した「光のうた」の明らかな"祈り"のような優しさにも驚かされる。

どこかで日は昇る

Mrs. GREEN APPLE

どこかで日は昇る

ツアー真っ只中のミセスから早くも4作目のシングルが到着。2ndフル・アルバムから「鯨の唄」が新たなスタンダードとして脚光を浴びる今、今回のリード曲「どこかで日は昇る」もスロー・テンポでストリングスが効果的に施されたアレンジなど、"聴かせる"ミセスの真骨頂だが、名曲的なムードに収まり切れないサビでの違和感のある転調や、大森元貴(Vo/Gt)の振り切れるエモーションに彼らの個性を見る。売れない女漫才師が主役の映画"笑う招き猫"主題歌としてもしっくりくる仕上がりだ。打って変わってアッパーで踊れる「スマイロブドリーマ」は、生音とエレクトロニックのいずれもがソリッド且つポップで突き抜けた仕上がり。ビートのアプローチがユニークな「SwitCh」も含め、バンドがどんどんタフになっていく過程を体感できるシングル。

Mrs. GREEN APPLE

Mrs. GREEN APPLE

Mrs. GREEN APPLE

これまでの10代の壊れやすくて柔らかい心を誰よりも理解し、並走してきたミセスのエモーショナルな部分はもちろん残しながら、より日本のロック・シーンのトレンドに拘泥することなく、純粋にポップ・ミュージックとしての完成度を圧倒的に上げてきた2ndアルバム。プログレッシヴな展開を持つ「絶世生物」での楽器隊の成長、ストリングス・アレンジも決して大仰に聞こえない歌と演奏のダイナミズムが堪能できる「鯨の唄」や「umbrella」、エレクトロ・サウンドでヴォーカルも全編オートチューンのダンサブルな「うブ」、どこか海外ドラマのワンシーンを思わせる「Just a Friend」など、アルバムの中でピーク・ポイントが何度も訪れる。シングル曲「サママ・フェスティバル!」、「In the Morning」も絶妙な流れで配置されている。

In the Morning

Mrs. GREEN APPLE

In the Morning

シンセ・ポップの手法を勢いのあるアレンジで消化したサマー・チューン「サママ・フェスティバル!」の明るさから、硬派なメッセージを歌うバンドとしてのMrs. GREEN APPLEの第2章、そんな胸騒ぎがするのが今回の表題曲「In the Morning」だ。よりピアノ・ロック感が増した印象は、他の楽器の音数も曲に必要なものかどうかを吟味したからだろう。楽しいばかりじゃない、むしろちょっとしんどい朝の始まりに、無理矢理笑顔になることなく心を強く前向きに持てる、そんな1曲だ。Track.2の「ツキマシテハ」での思いを言い放つような強い調子の言葉や、ラストの大森元貴(Vo/Gt)の絶唱は表題曲とは対照的だが、対にして聴いてみてほしい。Track.3の「Oz」は寓話的な展開を様々な楽器の打ち込みで膨らませた音像もまさにマジカル。

サママ・フェスティバル!

Mrs. GREEN APPLE

サママ・フェスティバル!

白飛びするような夏の光と解像度の高い情景が、"サママママ・フェスティバル!"という若干突拍子もない歌い出しとともに、すごいスピードで描き出されるミセス流の夏曲が登場。シンセ・ポップ寄りのアレンジだが、スピード感は加速した印象。加えて、シングルでは各々独立した濃い意味合いを持つ楽曲を収録するというスタンスから、ピアノや弦楽四重奏が効果的に配置された「umbrella」は、大森がいつかのライヴで話していた"音楽を作らずにはいられないが、作ることによって苦しみもする"という心情がうかがえる。もう1曲はライヴでも場面転換的な曲として人気の「ノニサクウタ」が音源化。ミセスの特徴のひとつである"音楽隊"としての魅力を表現した、オーガニックなアンサンブルが楽しめる。

TWELVE

Mrs. GREEN APPLE

TWELVE

テクニカル且つ踊れるビートのTrack.1「愛情と矛先」や先行シングルのTrack.2「Speaking」で鮮やかに聴き手を受容。そしてライヴのラストなど重要な位置で演奏してきたTrack.3「パブリック」もついに音源化したことから、今のミセスの覚悟が窺える。また、スローなピアノ・バラードに明確に舵を切ったTrack.6「私」の新鮮さ、ミセス流のグランジとも言えるTrack.8「ミスカサズ」のヘヴィネスとソリッドさなど、美しさも黒い感情も振り切ったサウンド・プロダクションで表現。明るくスタートし、徐々に内面に潜り、終盤では未来を見据えるような前向きなニュアンスが訪れるという"体験型"のアルバム構成だ。テン年代ロックの未来を19歳の大森元貴という才能が描いたという意味でも記念碑的。

Speaking

Mrs. GREEN APPLE

Speaking

空気を読めるようになるとか、SNS上で尖った言葉にも傷つかないように殻を作ることは本当の強さだろうか。シンセや同期が鮮やかに弾けると同時にこれまで以上に重心の低い太いベース・ラインが心臓が脈打つような印象を残し、サビの"僕には話してよ"から繋がるラテン・テイストなコーラスも相まって、大森元貴(Vo/Gt)の"届け、気づけ"という祈りは音楽的にとてつもない情報量をまとったキャッチーさへ昇華されている。メジャー1stシングルとしてもミセスの声明としても最強だ。Track.2「恋と吟(うた)」は曲作りを始めたころの楽曲で、思いの吐き出し先が音楽にしかない苦しさと表現者の宿命すら感じさせる切実さも。Track.3「えほん」は絵本を通じて無償の愛に包まれたころの記憶と自分もそれを持ち得る微かな光が見える。

Variety

Mrs. GREEN APPLE

Variety

遊園地もしくは高速チェンバー・ポップなTrack.1「StaRt」は些細なことでも幸せと気づけないんならスタートに戻ろうという、ミセスの所信表明。続く「リスキーゲーム」は最も古い曲ながら3度目のRECで最新型に。深い海の底に沈むようなイントロが孤独という本質と"Love Person"の存在を示唆する「L.P」。"鈍感vs繊細"という単純な図式に回収できない自分の命の濃さに翻弄されるような「VIP」、ボロボロになった気持ちにそっと毛布をかけてくれるような「ゼンマイ」、そして"こんな世界を未だ憎めないのは何故か"という歌詞の一節をリスナー自身で見つけるようにラストに用意されている「道徳と皿」の平熱のポジティヴィティ。避けては通れないリアルな心情を変幻自在なポップ・ソングに結晶させた新たな世代の1枚。

Progressive

Mrs. GREEN APPLE

Progressive

家族、恋人、友人、同僚、クラスメイト、その他数え切れないほどの人、人、人。不特定多数の人との繋がりの中で傷つき、転がり、そして救われていくことで自分がやっと見えてくる。感情を共有するから喜怒哀楽が生まれる。Mrs. GREEN APPLEは、初の全国流通盤となる今作でそういった大切なことを歌った。作詞/作曲/編曲すべてを手がける18歳のフロントマン大森元貴の鋭いアンテナでキャッチされた混沌とした不安や孤独、敏感な心で感じる大切な人への願いは、5人の眩しい衝動によってすべて音に刷り込まれている。「WaLL FloWeR」で歌われる"素晴らしいと思えるように醜いと思ってみよう"という言葉の通り、肯定する強さを持った彼らの音は燦々と眩しく光っている。

音生 -onsei-

Mr.ふぉるて

音生 -onsei-

"その涙の行方を僕の親指に/託してくれないかい?"と歌う「涙の行方」で始まり、"笑わせてみせるよ"と歌う「Chaplin」、そしてインスト曲である表題曲で締めくくられる2ndフル・アルバム。コロナ禍でのデビュー、メンバーの病気療養などこのバンドには紆余曲折あったが、だからこそ、生きづらさを抱えながらも、"生きたい"という本能と共に壁をなんとか乗り越えようとする人の心に寄り添うことができる。ストレートなロックを鳴らしながら勇気あるメッセージを発したり、あえてポップなサウンドに悲哀の詞を乗せたり、寂しげなピアノ・リフと共に物思いに沈んだり......と、愛し愛されることを諦めきれない人間の性(さが)を、様々なカラーで表現するバンドの手腕は見事だ。

Operator

MSTRKRFT

Operator

2011年に突然の復活を遂げた、ベーシストとドラマーという組み合わせで爆音ロックを奏でたカナダのDEATH FROM ABOVE 1979。その片割れ、Jesse F. KeelerとプロデューサーのAl-Pによるエレクトロ・ユニットがMSTRKRFTであり、その約7年ぶりの新作が登場。インストで構成された1stから、前作ではゲスト・ヴォーカルを迎えキャッチーな作品を作り上げたが、今回もゲスト・ヴォーカルが多彩。それも、ミニマルで、変態濃度も高めのテクノ・チューンに、パンク/ハードコア系のシンガーの声を素材的にブチ込んで劇薬化していくという、かなり贅沢な使い方だ。Jacob Bannon(CONVERGE)や、Ian Svenonius(THE MAKE-UP)、Sonny Kay(THE VSS)などが参加し、90'sポスト・ハードコアや、GSLや31Gなど異端レーベルを追いかけていたハードコア・キッズには、たまらないアルバムだ。

Fist Of God

MSTRKRFT

Fist Of God

ex,DEATH FROM ABOVE1979のJESSEと、そのプロデューサーであったAL-Pによるエレクトロユニット。発音はマスタークラフト。2007年のSUMMER SONICでは力強く快楽的なビートでガンガン踊らせてくれたのが、とても強く印象に残っている。前作はインストものが中心であったが、今作ではLIL MO、THUNDERHEISTのISIS、GHOTSFACE KILLAHなど、才能溢れる様々なアーティストとコラボレーションしており、歌ものが多くなった分、より聞きやすく、初心者にもわかりやすい享楽的なサウンドなのだが、これがもう、最高!そして、完璧!!さすがはMSTRKRFT!!!アルバム全体の流れも流麗で、まるごと一枚聴いていても全く飽きが来ず、あっという間に時間が過ぎてしまう。個人的に2009年のベスト10に入ること確実。

Mt.Desolation

MT.DESOLATION

Mt.Desolation

英国の国民的バンドKEANEのメイン・コンポーザーを務めるTim Rice-Oxleyが中心となり結成されたMT.DESOLATIONのデビュー・アルバム。KEANEの持つ叙情的で美しいメロディを引き継ぎながらとても軽やかな心地よい作品だ。オープニングを飾る「Departure」が特に素晴らしい。カントリー・テイストの軽快なリズムに乗り男女のヴォーカルが絡み合うこの楽曲はアルバムの幕開けとして理想的なナンバー。THE KILLERSやNOAH & THE WHALEのメンバーも参加している事あるのだろう。アルバム全体からは一つの事に縛られない自由で穏やか雰囲気と遊び心を感じる事が出来る。KEANEとはまた違う美しさを持った素晴らしいアルバム。

Fairy Dirt No.5

Muddy Apes

Fairy Dirt No.5

ハイ・スキルのテクニックが生む凄みや迫力に、若々しい衝動的な音色が融合したらどうなるだろうか――その答えがMuddy Apesのサウンドには凝縮されている。すなわち最強だ。それぞれ日英米を拠点とするメンバー4人が、デビュー作『Crush It』から約10ヶ月というインターバルで2作目を作り上げた。限られた時間の中でのレコーディングやライヴ活動で、よりバンドとしてのグルーヴを天性のセンスで磨いた、フレッシュなロックンロールの応酬。“音を出すのが楽しい”というシンプルな衝動が所狭しと暴れ回る。8ottoの「Generation 888」をカヴァーした「Generation 555」は、8ottoへの熱いリスペクトが溢れた1曲。彼らが奏でるポジティヴなエネルギーは、国境も年齢や性別も飛び越え響くだろう。

Plastic Eternity

MUDHONEY

Plastic Eternity

グランジの先駆的存在であり、Sub Popの看板バンドのひとつでもある、MUDHONEY。そんな彼らの11枚目のアルバムは、絶好調にアングラで尖っていて、最高にアグレッシヴだ。洗練されすぎない泥臭さのあるサウンドと、メンバーそれぞれ40年近くの音楽活動歴を持つベテランならではの安定感のある演奏が、絶妙な世界観を生み出している。オルタナというジャンルが古臭く聴こえるような昨今でさえ、Mark Armの吐き捨てるようなヴォーカルやMUDHONEYの叩きつけるような演奏には、衰退したカルチャーの響きはなく、我が道を行く存在としての輝きが見える。むしろ、今作のように純粋な本能で作られた音楽こそ、怒りや感情の爆発を抑え込んでしまっている現代の若者に必要な音楽なんじゃないか。

Zyacalanda

mudy on the 昨晩

Zyacalanda

物凄く固い何かが頭にぶつかった、とっさにそう感じた。硬式野球のボールでも当たったのではないかと錯覚するほどの高密度の音の塊がアグレッシヴに乱舞するタイトル曲の「Zyacalanda」。そして、どこかオリエンタルな雰囲気で変拍子と転調をダンサブルに繰り返す「エゴ・ダンス」。一見荒々しいが、緻密に構成された轟音と共にめちゃくちゃにモッシュしまくるオーディエンスの姿が目に浮かぶ。間違いなくこれは使用上の注意ならぬ、視聴上の注意が必要だ。“ヘッドフォンを利用して電車の中などでご視聴されると大変危険です。大暴れしても怪我をしない安全な場所でご視聴ください”これが決して大げさな表現ではないことは一度聴けばわかるはず。胸を張って太鼓判を押させていただこう。

mudy in squall

mudy on the 昨晩

mudy in squall

よりストイックに、よりタイトになった、mudy on the 昨晩。インストというと、一見すると言葉少ない表現方法のように思えるのだが、このバンドは、一触即発ともいえる攻撃力と、ピンと張り詰めた精神性の高い楽曲世界を作り上げることで、その意識をひっくり返してみせる。滝に打たれる修行僧、激しい雨の中でもその足を止めないアスリートの如く、一つの主張を一環して貫くように、主義や主張を楽曲に投影させるのだ。そして彼らの最新作は、"squall=集中豪雨=困難な状況"、"一周して人生を全うしたら僕らはどうなるのか?"など、より切迫したコンセプトを設けることで、その色がさらにビルド・アップされている。ギターは嘶き、叫びまくる。情動と衝動の揺れ動きのみで楽曲の移り変わりを描く、緊張感溢れる作品だ。

pavilion

mudy on the 昨晩

pavilion

mudy on the 昨晩が初のフル・アルバムをリリース。新たにギターの梶山良太を向かえたリ・スタートと言う意味と、制作時に抱えていた怒りの感情が大きな柱になっているというこの作品。全編を激しい感情の起伏が覆う。激しいギター・リフと、楽曲の中に絶妙なズレを差し挟みながらドライヴするドラムが引っ張る楽曲は、インストでありながら、しっかりとした歌心を感じさせるメロディを持っている。誰か歌い手なりMCとのコラボをやってみても面白いんじゃないだろうかと考えていたら「Sarliban」ではバンドとして初めてコーラスを薄っすらと入れていて、驚かされた。超絶のテクニックや科学者のような実験性を突き詰めたようなインストではなく、そこに込められた感情と衝動が伝わってくる音の鳴りに突き動かされる。

YOUTH

mudy on the 昨晩

YOUTH

mudy on the 昨晩の3曲入りシングル&ライヴDVD。5人組トリプル・ギターという編成での圧倒的にプリミティヴなライヴ・パフォーマンスが評判を呼び、既に多くの海外アーティストのサポートも務めるなど、各方面から高い注目を集めるmudy on the 昨晩。このシングルでも、3本のギターが絡み合うアグレッシヴなサウンドを展開する。縦ノリでありながら、しっかりと踊れるビート、高度に構築されていながら、衝動性も詰め込まれたバンド・アンサンブル。攻撃的でありながら、爆音のカタルシスに頼ることもない展開は、全く聴いていて飽きることがない。若手のインスト・バンドの中では群を抜くそのライヴ・パフォーマンスを収めたライヴDVDも必見だ。そして、3月にはついにフル・アルバムをリリースする。

No Holiday

THE MUFFS

No Holiday

ハスキーな歌声と力強いシャウト、かき鳴らすギター、そして、ワイルドな音楽性でも隠しきれないチャーミングなパーソナリティ。今年10月、ポップ・パンク/パワー・ポップ・シーンのレジェンド、THE MUFFSのフロント・ウーマン、Kim Shattuckが亡くなった。遺作となった今作には、結成からKimが病気の進行により手足の自由が効かなくなるまでの間、彼女が書き溜めてきた楽曲が収められている。GREEN DAYをはじめ多くのバンドに影響を与えたTHE MUFFSらしい、激しくもポップでもあり、新しくてノスタルジックなこのアルバムには、ALSという難病と闘いながらも、ラスト・アルバムのプロデュースを諦めなかった彼女の、生命力や音楽に対する愛がたくさん詰まっている。

Hola, Quota!

MUGWUMPS

Hola, Quota!

インディーズ・シーンで熱烈な支持を受けるスリーピース・バンドMUGWUMPSの、1stアルバムから3年ぶりとなる2ndアルバムがようやく到着した!その間にリリースされたEPでも予兆があった様に、かつてのメロコア・パンクの雄といった印象は影を潜めている。というより、格段に音楽性の幅が広がったという方が正しいだろう。その結果、様々なアイデアが曲に彩りを与えている他、音の輪郭が際立ち、持ち前のポップネスにさらに磨きがかかっている。この様な音の変化にはプロデューサーに堀江氏(the HIATUS)とエンジニアに坂本龍一のPAも務めるZAK氏を迎えた事が強く影響していると言えるが、それ以上にバンドの持つ潜在能力が引き出された結果だろう。今後が非常に楽しみだ!