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DISC REVIEW

M

creep

Maki

creep

Makiが"第2章"幕開けを謳う1st EP『creep』をリリース。昨年発表したフル・アルバム『RINNE』が彼らの初期衝動や勢いを押し出した作品であるとしたら、今作はそういった要素だけではなく、サウンドやメロディ、言葉のひとつひとつから情景や心象を緻密に構築していったことがわかる、これまで以上にこだわりの詰まった作品に仕上がっていると感じる。1曲通してリード・ギターのフレーズが耳を惹きつける「Soon」、ノスタルジックな空気を纏った2ビートが彼らならではの味を出す「fall」、ツアーの移動中に書いたというバラード「車窓から」、シンガロングのパートがエモーショナルな「朝焼け」、彼らにとって大切な場所への想いが表れた「from」。進化は窺えるが芯は変わらない、そんな1枚だ。

RINNE

Maki

RINNE

自主企画は軒並みソールド、名古屋発の3ピース Makiによる1stフル・アルバム。彼らがライヴハウスで培ってきたバンド・サウンドはこれまで以上に鋭く磨き上げられており、ライヴハウスで観たい欲がかき立てられる。バンドの進化が明らかに感じられる「フタリ」、今この時代だからこそより心に刺さる「日常」、"僕たちが歌い繋いでいく"のシンガロングに強い意志が窺える「火垂る」、答えのない葛藤を歌う「虎」など全12曲。一曲一曲にはそれぞれの風景があるが、それを1枚のCDとして通して聴いたとき、ハッと気づかされるものがある。ラストの「RINNE」までを聴き終えてからもう一度、1曲目の「フタリ」を聴いてみてほしい。このアルバムが"RINNE"と名付けられた意味がわかると思う。

うらはら

MAMADRIVE

うらはら

言ってしまえば、愛情が狂気へと変化するギリギリのところをMAMADRIVEは表現しているのかもしれない。愛情はもちろん、友情でもそう捉えられると思う。"裏と表"、"光と闇"、"朝と夜"といった対比を持ったストーリーで1曲1曲が表現されている今作は、彼女たちが活動を始めて10年という節目に生み出した初のフル・アルバム。Track.1「マッドサイエンティスト」とラストに収録しているTrack.9「愛の果て」は音楽性かけ離れているようだが、"この愛の幸せと終わりはどこにあるのか"という同じテーマで表現。まさに表裏一体となっている楽曲だ。そして、映画"女の穴"の主題歌となったTrack.8「女の穴」は、MAMADRIVEの十八番とも言える生々しいエログロな歌詞が規則正しいビートに乗るだけで脳天に直撃する。馬鹿がつくほど正直なMAMADRIVEが放つ10年目のベスト・アルバムだ。

女の穴

MAMADRIVE

女の穴

神戸出身の女2人男1人からなる3ピース・バンド、MAMADRIVEのニュー・シングル。表題曲は、ふみふみこ原作の映画"女の穴"主題歌。その湿っぽくて吸引力のあるタイトルから、どんなアクの強い情念系のガールズ・ロックが飛び出すのかと思ったが、ここで歌われるのはドロドロとした女の情念ではなく、むしろ女心の奥底にある凛とした哀しみだ。ソリッドで疾走感抜群なギター・サウンドの力強さとは裏腹に、歌詞においては繊細な女性の心理が、その光も暗闇も開陳するかのように描写されている。聴けば、気丈に振舞いながらも胸の内にある弱さを隠し切れない、そんな心の涙を流しながらも強く生きる女の姿を思い起こさせる。なんというか、凄く"いい女"を感じさせるロックだ。女心と女の穴は海より深い、のだ。

Routes To Riches

MAMAS GUN

Routes To Riches

高性能でグルーヴィンなソウル・ミュージックを鳴らすUKソウル期待の新人MAMAS GUN。軽快に跳ねるリズムの上を、バンドを仕切るA.P.のソウルフルなヴォーカルが駆け抜ける。Michael Jacksonとの仕事でも知られる作曲家Rod Tempertonとともに楽曲制作を行ったというこのデビュー・アルバム。シングル「Let’s Find A Way」に代表されるように、ソウル・クラシックを現代的なサウンド・プロダクションで再定義するようなハイ・クオリティな楽曲が並ぶ。随所にこだわりが伺えるが、その感触はどこまでも軽やか。70年代から続くソウル、R&Bの変遷をしっかりと踏まえながら、JAMIROQUAIやMAROON 5のようなポップネスも備えた風通しの良さが魅力的。

Back in the Past

MANAKO

Back in the Past

毎年1億回超えの再生回数を誇る"YouTube Rewind"への出演歴を持ち、女優やタレント業も行うまなこを中心に始動したMANAKO。KO-01(Ba/GLORY HILL/MIRA)を迎えて新体制となってから初のリリースとなる2nd EPが到着した。前作ではピアノとストリングスを主軸としたセンチなアレンジが光ったが、今作はグロッケンを取り入れるなどアレンジの幅が拡大。加えて「バッドエンド」の"幸せになる為 望んだこの絶望"など、過去の記憶と現在を繋ぐようなフレーズがまなこの甘美な歌声で表現され、よりドラマチックで泣ける楽曲が多く揃った印象だ。「旅人の詩」から始まり"旅した記録/ゆっくり1から聞かせてよね"と歌う「END」で幕を下ろす、まるで映画のような構成は秀逸。

Teatro D'Ira Vol. I

MÅNESKIN

Teatro D'Ira Vol. I

ABBA、Celine Dionを生んだ欧州最大の音楽の祭典"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021"で優勝を果たし、サブスクを中心に一大センセーションを起こしている、平均年齢20歳のイタリアのロック・バンド MÅNESKIN。彼らがブレイク前夜に発表した2ndアルバムが、このたび国内盤でもリリースの運びとなった。優勝への決定打となったロック・アンセムのTrack.1に始まり、ラウドなリフに早口のイタリア語詞でまくし立てるTrack.3、ミニマルな展開から爆発するトラックに官能的な英語詞を乗せたTrack.4などを収録。往年のレジェンドに比肩する華々しさとどこか危険な香り、そしてエネルギーに満ちたサウンドは、まさに時代が求めた新たなロック・スターと言えるだろう。

Rosanjin

Manhole New World

Rosanjin

5人組のインストゥルメンタル・バンド、Manhole New World初のフル・アルバム。踊るようなマリンバの音色が聴ける「AFRICA」から「Mountaineers」に繋がる流れや「kokage」は、リゾート的な景色が浮かんでくるような開放感に溢れており、輝く陽の光を感じることができる。幾何学的なリズムとギターのリフから広がっていく「goodbye girl」や「Hero」のポスト・ロック的なアプローチも面白いし、ホーンが入る「1990」から怒涛の展開でラストを締める「DUST」まで、バンド一体となって音楽を楽しんでいる姿が浮かんでくるようだ。タイトルは、バンドが掲げるテーマだという"衣・食・住"の中から今回は"食"を表しており、美食家の北大路魯山人にちなみ"Rosanjin"とつけられている。

S,M,L,XL

Manhole New World

S,M,L,XL

5人組インストゥルメンタル・バンド Manhole New Worldの2ndミニ・アルバム『S,M,L,XL』(読み:サイズ)。トライバルなリズムがひとつの軸となり、トロピカルなサウンドが散りばめられた今作からは、溢れる"喜び"を感じ取ることができる。一方で全体的な質感は北欧産のサウンドに近く、オーガニックなぬくもりも感じられる作品に仕上がった。インストという形態上、文字からの情報はタイトルのみであるが、ドラマチック且つエネルギーに満ちた楽曲には、どこか遠くの風景やかつて目にした情景を思い起こさせるノスタルジックな響きがある。そして何より、SAKEROCKやSPECIAL OTHERSといった偉大なる先人たちと同じように、徹底してインストという音楽を追求するその姿がとても頼もしい。

Resistance Is Futile

MANIC STREET PREACHERS

Resistance Is Futile

『Everything Must Go』の20周年アニバーサリー・ツアーで一昨年来日を果たしたMANIC STREET PREACHERS。結成32年目を迎えたベテランはこれからどこに向かうのか?という懸念は杞憂だった。「International Blue」の着想は芸術家Yves Kleinが"宇宙の神秘を表現する青"として自分だけの青を作ったことと、地中海の青色が繋がったことで生まれた曲。また「Dylan & Caitlin」は詩人のDylan Marlais Thomas夫妻の陶酔的な関係がインスピレーション源だという。さすが英国バンドの知の巨人。混沌と醜悪さに満ちた世界に対抗するには、深い思考とポップなアウトプットのバランスこそが大事なんだと言われているような心強いアルバム。ギター・バンドである必然、今も新鮮な動機。心揺さぶる快作だ。

Rewind The Film

MANIC STREET PREACHERS

Rewind The Film

2010年にリリースされた前作『Postcards From A Young Man』以来、約3年ぶりとなる11作目のスタジオ・アルバム。昨年デビュー20周年を迎えた彼らがこのアルバムで"どうしてもやっておきたかったこと"は幼い頃の無垢な日々や、かつて栄えた故郷、東京への憧憬などを切々と綴ることだった。"Rewind The Film"=フィルムを巻き戻すというタイトルや各曲のタイトルからも分かるように、このアルバムは音も言葉も非常に内省的だ。記憶に眠っている映像や心情を回想させるような歌詞は常に憂鬱を抱えており、"ずっと黙っていたけど、実はこう思っていたんだ"というカミングアウトのようにも思える。MANICSの心の中を旅するような、非常にシンプルで繊細な音像も生々しい。

Generation Terrorists 20th Anniversary Edition

MANIC STREET PREACHERS

Generation Terrorists 20th Anniversary Edition

昨年アジカン主催のNANO-MUGEN FESで来日するなど日本での人気も抜群の、英国の国民的ロック・バンドMANIC STREET PREACHERS。1992年にリリースされたデビュー作『Generation Terrorists』の20周年を祝して、リマスター、デモ音源や未発表音源、ドキュメンタリーDVDなどがひとつのセットになった記念盤が登場。“デビュー作を世界中でNO.1にして解散する”と宣言し世に送り出された歴史的1枚とも言える。今よりハード・ロック・テイストなサウンドと胸に突き刺さるメロディは圧倒的な熱量を放つ。ラフだがクールなデモ音源も魅力的だ。そしてDVDは貴重なドキュメンタリー映像とMVがトータルで3時間収録されている。バンドの初期衝動が再確認できる1枚だろう。

National Treasures

MANIC STREET PREACHERS

National Treasures

20年以上のキャリアを持つ、イギリスの国民的スリー・ピース・バンドMANIC STREET PREACHERSのコンプリート・シングル集が日本で先行発売。ベスト盤としては2作品目となるが、今作は全シングル37曲に加え、THE THE「This Is The Day」のカヴァーと、日本盤のみ新曲「Rock‘n’Roll Genius」を収録する大ヴォリューム盤だ。オルタナティヴ・ロックをハード・ロックやパンク・テイストなどに彩る、マニックスの華々しいサウンドの軌跡を辿ることが出来る。39曲を通して聴いてとにかく感心するのは、いつの時代も彼らの音楽がひたすらに瑞々しいということ。流行や時代の壁なんて吹っ飛ばすほどのパワーとテンションが漲っている。改めてこのバンドの実力を思い知った。

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2011

V.A.

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2011

アジカン企画&主催の夏フェス"NANO-MUGEN FES."も今回で9回目(ツアー形式だった「NANO-MUGEN CIRCUIT2010」を含めると10回目)。WEEZERやMANIC STREET PREACHERSをヘッドライナーに、BOOM BOOM SATELLITES、the HIATUS、若手注目バンドねごと、モーモールルギャバンなど、洋邦共に相変わらずの豪華ラインナップ。出演バンドの楽曲が1曲ずつ収録されているコンピレーション・アルバムは、今作で5作目。そして、今回収録されているアジカンの新曲は2曲。チャットモンチーの橋本絵莉子(Vo&Gt)を迎えた「All right part2」は、後藤と橋本の気だるい歌い方と熱が迸る歌詞のコントラストが鮮やかで、高揚感に溢れたギター・リフとメロディも力強く鳴り響く。ユーモラスなあいうえお作文、男性の言葉で歌う橋本の艶とレア感も思わずニヤついてしまう。東日本大震災時の東京を描いた「ひかり」は、人間の醜い部分や絶望感にも目を逸らさず、物語が淡々と綴られている。言葉をなぞる後藤の歌に込められた優しさと強さは、当時の東京を克明に呼び起こしてゆく。生きることが困難な時もあるだろう。だが"オーライ"と口ずさめば、ほんの少し救われる気がする。音楽の持つ力を信じたい――改めて強くそう思った。

絆ノ奇跡 / コイコガレ

MAN WITH A MISSION × milet

絆ノ奇跡 / コイコガレ

アニメ"「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編"のOP主題歌として、MAN WITH A MISSIONとmiletという異色タッグが実現した「絆ノ奇跡」。「コイコガレ」は同アニメのED主題歌であり、こちらは"鬼滅の刃"で「炎」(LiSA)や劇判などを手掛けてきた梶浦由記が作詞作曲を手掛け、マンウィズと共に編曲をしたスペシャルなタッグになっている。アニメの世界観を意識し和楽器のエッセンスを用いるなど、miletのヴォーカルとの掛け合いがドラマチックな「絆ノ奇跡」が迸るバンド・サウンドが軸になっているのに対して、「コイコガレ」の梶浦×マンウィズ×miletの掛け算は新鮮。ストリングスが先頭を走り、そこにギターやそれぞれのヴォーカルが有機的に絡む。エモーショナルでいて、先の読めない緊張感も並走するヒリヒリする爆発感が妙味だ。

Break and Cross the Walls Ⅱ

MAN WITH A MISSION

Break and Cross the Walls Ⅱ

昨年の『Break and Cross the Walls Ⅰ』と連作となる今回。この2作で、"対立"や"衝突"から"融和"、"調和"へという普遍的とも言えるテーマを音楽で表現し、スケール感のあるハイブリッドなロック・サウンドで打ち鳴らした。世界や社会を映した大きなものとしても、またひとりの人間が成長、成熟していく過程でも響く、様々な場面でしっかりと地に足をつけて歩んでいくことやその実感を味わわせてくれる内容だ。布袋寅泰とのコラボによる「Rock Kingdom」や映画主題歌「More Than Words」、アニメ主題歌「Blaze」他タイアップ曲もあるが、一貫して底通するものがある。バンドのこのブレなさが、曲やサウンドの底力にもなっている。そのスピリットを形にしたアルバムだ。

Wolf Complete Works Ⅶ ~Merry-Go-Round Tour 2021~

MAN WITH A MISSION

Wolf Complete Works Ⅶ ~Merry-Go-Round Tour 2021~

2021年12月に横浜、名古屋、大阪の3都市で開催された、約2年ぶりとなるアリーナ・ツアーより、横浜アリーナ公演2日間を収録した映像集がこちら。初日と2日目、それぞれ17曲が収められ、大ボリュームで、初期の楽曲が中心となった初日と2013年から最新楽曲までが披露された2日目と、マンウィズのこれまでの歴史を振り返るような内容となっている。気合の入ったパフォーマンスや迫力のある演出だけでなく、ユーモアたっぷりの面白動画もしっかり収録。メンバーそれぞれを絶妙なアングル(笑)でとらえたカメラ・ワークで、様々な視点から楽しめるのは映像作品ならではだが、メンバーの高揚感からは再び動き出す世界へのポジティヴな感情も伝わるし、フロアの熱量も臨場感満載だ。

Break and Cross the Walls I

MAN WITH A MISSION

Break and Cross the Walls I

約3年半ぶりのオリジナル・アルバムとなる今作は、2作連続リリースの第1弾。「Remember Me」や「Change the World」などの重厚感があってドラマチックな、これぞマンウィズという曲から、「yoake」やタイトル曲など新たな扉を開いてバンドのスケール感を広げていく曲など全14曲が収録された。そのサウンドスケープの原点にあるのは、初めてロックに触れたときの痺れるような感覚だろう。その身体を貫いた興奮や恍惚感を何度でも味わうように、音楽の探求や自己の探求がより深く続いている。爆裂なサウンドから、緻密なディテールを重ね描きこんだ小宇宙的サウンドなど、手法はそれぞれだが、音楽の中心にある衝動感や熱量に心を掴まれる内容になっている。続く作品への期待も高まる。

Merry-Go-Round

MAN WITH A MISSION

Merry-Go-Round

士気が上がるような、あるいは唱えることで自分にエンジンをかけるようなポジティヴなシンガロングで始まる表題曲。Kamikaze Boy(Ba/Cho)とJean-Ken Johnny(Gt/Vo/Raps)による曲で、骨太なビートにベースが暴れまわるダイナミックなバンド・アンサンブルに、ストリングスがさらなる厚みを加えるサウンドが強力だ。メリーゴーランドから湧くのはポップなイメージだが、曲が進むごとにうねりを帯びて、そのパワーとグルーヴの遠心力で、途方もない場所に連れていくような曲になっている。昨年の3ヶ月連続シングルからのEP、そして6月にリリースしたシングルとハイペースで、良質な曲を作り上げてきている現在。その充実度に、先に見据えるだろう作品への期待が急角度で上がってくる。

INTO THE DEEP

MAN WITH A MISSION

INTO THE DEEP

タイトル曲は、これまで何度かタッグを組んだ中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と共同アレンジ。バンド・サウンドとテクノ、エレクトロ・ミュージックのミックスはマンウィズにとって新しいものではないが、今回はより有機的な融合を果たしていて、互いが衝突した爆発感をパッケージしたというより、継ぎ目なくシームレスで、新たな生き物の鼓動がある。五感を研ぎ澄ませた臨戦態勢で機を狙うような、スリリングな曲となっており、そのゾクゾクする緊張感が彼らのロック・ミュージックの地平をさらに切り拓く曲になりそうだ。全曲にタイアップがあり、ドラマチックな映画挿入歌「Perfect Clarity」、NHK「みんなのうた」に決定している「小さきものたち」とバンドの枠も広げるシングルになった。

MAN WITH A "BEST" MISSION

MAN WITH A MISSION

MAN WITH A "BEST" MISSION

結成10周年を記念した、メンバー選出によるベスト盤は、代表曲や、最新シングルから「Change the World」と「Rock Kingdom feat. 布袋寅泰」の全17曲を収録。2011年に発表されブレイクスルーのきっかけとなった「FLY AGAIN」や、ドラマ主題歌として広くリスナーを獲得した「Remember Me」、TAKUMA(10-FEET)をフィーチャーした「database」や中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)プロデュース曲「Hey Now」、その他ライヴでのキラーチューンが揃う。力のあるロック・バンドだと証明してきた10年。そして様々なジャンルを内包し、繊細さとダイナミズムを兼ね備えた王道たるロック・ミュージックを更新し続ける彼らの歩みが凝縮された1枚だ。

MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION

MAN WITH A MISSION

MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION

ドキュメンタリー映画の公開に始まり、アニバーサリー・イヤーの企画が目白押しのMAN WITH A MISSION。リリース3部作第1弾は、B面曲とカバー作品集。自身の映画主題歌で、大合唱に士気高まる新曲「The Victors」が1曲目を飾り、MR. BIGカバーや10-FEETのコラボ・アルバム収録曲、和田アキ子カバーなどと、シングルのカップリングならではのコアで、狼のバックボーンがより垣間見える曲が一堂に集まった。「ワビ・サビ・ワサビ」は哀愁が練りこまれた直球のパンクであり、FARのギタリスト Shaun Lopezとの「Mr. Bad Mouth」、「The Anthem」は鋭いエッジをモダンに昇華したポスト・ハードコアの香りが濃い。バンドの奥行きを知る1枚だ。

MAN WITH A "REMIX" MISSION

MAN WITH A MISSION

MAN WITH A "REMIX" MISSION

結成10周年を記念した3部作第2弾のリミックス・アルバム。Jagz KoonerやSLUSHII、Ken Ishii、石野卓球らが手掛けた全12曲を収録。新たな曲としては、上田剛士(AA=)による「Take Me Under」と、"Hero's Anthem"と題した「FLY AGAIN」のニュー・リミックスが加わった。前者は、これぞAA=というアプローチでのっけからミニマルで攻撃的なデジタル・ノイズが鳴り響き、メロディを生かしながらも新次元の曲へ。また後者はコーラスやシンガロングをまとってライヴのボルテージを封じ込めたようなミックスに。キャッチーで、印象的なリフやフレーズ感といった武器が多い原曲だからこそ、素材としてのポテンシャルも高い。マンウィズの強みを再確認するリミックスだ。

Remember Me

MAN WITH A MISSION

Remember Me

5thアルバムから1年を経た6月現在も、同作を引っ提げ国内外を巡るロング・ツアー中であるマンウィズ。後半は初のアリーナ・ツアーであり、地道に活動すること9年で本人たちも予想だにしなかった光景を目にしているという。そして今作「Remember Me」はフジテレビ月9ドラマの主題歌に決定である。いったいどこまで行くのだろう。希望に満ちて、高揚感とエネルギーに溢れたこのロック・チューンを聴けば、突き進む彼らの道になんの迷いもないことが伝わってくる。好きな音楽、マニアックな志向は変えることなく、そのスケールを大きくしていく気概が詰まった曲だ。先行配信された「Left Alive」、「FLY AGAIN 2019」なども収録され、アルバム以降の晴れやかな第一声となった。

Chasing the Horizon

MAN WITH A MISSION

Chasing the Horizon

前作『The World's On Fire』からの深化を見せ、さらなる境地へと踏み込んだ5thアルバム。1曲目は、人間と人工知能の能力が逆転するシンギュラリティ(技術的特異点)を歌う「2045」。パワフルなビートで、新次元に恐れることなく自分の可能性を信じることが歌われる曲でアルバムは幕を開け、不穏なトーンのリフが印象的な「Broken People」へ雪崩れ込む。キッチュなガレージ・パンクと相反するインダストリアル・サウンドが衝突したようなこの曲があるかと思えば、美メロのバラード「Please Forgive Me」、そしてMWAMの王道をアップデートした「Break the Contradictions」など、音楽性は幅広く、その挑戦をしなやかなバンド感で昇華している。既発曲も作品の彩りとなっており、音の地平はどこまでも広い。

WELCOME TO THE NEWWORLD

MAN WITH A MISSION

WELCOME TO THE NEWWORLD

轟音ギターリフを中心に、ダンサブルなサウンドがグルーヴ! オープニングナンバーの「DON'T LOSE YOURSELF」からいきなり、高揚感がヤバいです。ロックテイストありパンキッシュあり、ポップなメロディーも聴かせるニクいワザも駆使しつつ、さらにデジタルサウンドも効果的に導入、etc......。様々な音楽性を旺盛に消化・吸収しているそのスタイルは、インタビューで本人も語っている"AIR JAM世代"が拓いた日本のロックシーンの新たな流れを受け継ぎ、それをさらに洗練させた形で表現しているかのよう。狼フェイスとおフザケ感満載な言動に、"オマエら何者やねん!?"とうさんくさげな視線を向けている方々も多いのではと思われますが......(笑)。相当ハイレベルな音楽知能がなければ、こんな作品は絶対に生み出せないはず! ヤバいです!

Snowbud / BIGHOUSE

MAPA

Snowbud / BIGHOUSE

MAPAの現体制ラスト・シングル。その1曲目「Snowbud」は、ポエトリーと歌唱が行き来するバラード・ナンバーだ。これまでMAPAの音楽プロデュースを務めてきた大森靖子に加えて、グループを率いる古正寺恵巳が制作に参加した歌詞と、メンバーのシリアスな歌唱、そして楽曲を支える四天王バンドが織りなすサウンドスケープは、厳しくも美しい雪景色を思わせ、聴いていて胸をギュッと締めつけられる。もう1曲はジェットコースター的な曲展開が楽しい「BIGHOUSE」。彼女たちのホームであるライヴハウスをテーマにしたハートフルな楽曲で、ところどころでクスッと笑える歌詞と、ハイテンションで楽しそうな4人の歌声が心を解してくれる。冬の魅力、ライヴハウスの魅力を再認識させてくれたシングルだ。

いちご完全犯罪/猫の国

METAMUSEMAPA

いちご完全犯罪/猫の国

大森靖子率いるTOKYO PINKに所属するアイドル・グループ、METAMUSEとMAPAの総勢10名による超強力スプリット作品。METAMUSEの発起人且つメンバーであり、MAPAのプロデューサーである大森靖子がヴィジュアル面から作詞作曲まで手掛けた今作。アッパーなダンス・ビートに乗せたキュートな歌声で"アイドルだってうそっぱちの歌じゃ/救えない"とリアルを突きつける「いちご完全犯罪」、にゃあにゃあとかわいい猫の手を借りたメッセージ・ソング「猫の国」と、10人の個性や魅力を最大限に生かしつつ、圧倒的なかわいさやたくましさや狂気やエロスといった女の子の魅力も存分に引き出した楽曲に、大森の高いプロデュース能力とセンスがキラリ光る。10人揃っての生パフォーマンスが観たい、切に!

Perch Patchwork

MAPS & ATLASES

Perch Patchwork

シカゴのインディー・ロック・4ピース・バンドMAPS & ATLASESの1stフル・アルバム。以前リリースされたEP盤では作り込まれた変拍子が特徴的なマス・ロック色が非常に強かったが、今作は一転、ヴァイオリンやフルート、サックス、パーカッションなどの生楽器も多様されており、フォーキーでサイケな色味が強い。その中にちらほら香るマス・ロック・テイストが非常にハイソ。アレンジの幅もグッと広がり、彼らの本領発揮といったところ。フロントマンDave Davidsonが独特なファルセットで紡ぐ伸びやかなメロディと軽やかでポップなサウンドは、雨の中お気に入りの傘と長靴でくるくると踊るような童心に返らせる懐かしさも携えている。春の幕開けにピッタリの軽やかさ。

Horses And High Heels

MARIANNE FAITHFULL

Horses And High Heels

往年のアイドル、Mick Jaguarの元恋人、そして映画女優の顔を持つMARIANNE FAITHFULLの新作。やはりこのハスキーで説得力のある歌声には聴き入ってしまう。この独特の枯れた歌声は、中々出会えるものではないだろう。けして上手いとは言えないが、ヒリヒリとした緊張感があり、しっかり曲調とマッチしている。前作のカヴァー・アルバムに続き今作も13曲中9曲がカヴァー・ソング。Dusty Springfieldなどを始め、ソウルフルな楽曲が多めだがしっとりと歌い上げる。シンプルながら美しいアレンジも彼女の妖艶な世界感をさらに際立たせている。前作はANTONYやRufus Wainwrightなどが参加していたが、今作はLou Reedがギターで参加している。

I'm Not Your Man

Marika Hackman

I'm Not Your Man

UKのシンガー・ソングライター Marika Hackmanが、新レーベルに移籍して初めてリリースする2ndアルバム。前作のフォーキーでメロウな方向性から、よりロックに重心を落とした仕上がりだ。ALT-Jなどを手掛けるCharlie Andrewをプロデューサーに起用し、4人組ガールズ・バンドのTHE BIG MOONと共にレコーディング。こういった布陣の影響もあるのだろう。荒々しくダウナー、且つストロングなガールズ・ロックが、全編にわたって轟いている。そのなかで、甘さが滲み出たような歌声や、繊細で優し気なコーラス・ワークがキラキラと顔を覗かせており、結果的に彼女が新しく作り上げた意欲的な面も、これまで内に秘めてきた面も堪能できる1枚になっている。

アンビュランスを呼ばないで

MARKET SHOP STORE

アンビュランスを呼ばないで

フェミニズムだのなんだの、ジェンダー論のほとんどは現実に即していない不毛なものが圧倒的に多いが、MARKET SHOP STOREの提示する"男に負けてたまるか!"という激しいアティテュードは、そのまま彼女たちが生み出す音の力強さへと直結している。かといって、女性としての感性を不自然にすべて放棄しているというわけでもなく、彼女たちはただ純粋に、リアルタイムで自分たちに表現できることのすべてを、作品に対して容赦なくまっすぐぶつけているだけなのではなかろうか。時にはかわいさを振りかざし、また時には逞しさを振りかざし、夢を叶えるための強かさをも身に着けたMARKET SHOP STORE。そのバンド名にちなみ、"大繁盛"という目標へ向けた新たな一歩がここにある。

Rembrandt Rays

Marmalade butcher / ATLANTIS AIRPORT

Rembrandt Rays

リーダーのにえぬによる宅録音源をベースに、超絶テクニックで立体化した音楽を聴かせるインスト・バンドMarmalade butcherと、リーダーのy0denを中心に実験的音楽をキャッチーなポップスに変換して表現するバンドATLANTIS AIRPORTによるスプリットCD。他アーティストと交わることがなさそうな孤高な印象のコンポーザーふたりによる、相手のバンドをビンビンに意識しているような研ぎ澄まされた楽曲は、1曲1曲がお互いへのメッセージであり、挑戦状。「降下する都市」ではATLANTIS AIRPORTのsonezaki(Vo)がマ肉サウンドの中で普段と違う歌声を聴かせている。ただ単に両バンドの曲を持ち寄っただけではないクオリティで表現されたこの1枚は、結果的に異才同士の邂逅へと繋がったようだ。

Uteruchesis

Marmalade butcher

Uteruchesis

"モテるインスト"をモットーにした通称"マ肉"ことMarmalade butcherの1stフル・アルバム。バンド形態は、にえぬ(Gt)、J氏(Gt)、大谷明久(Ba)の3人にサポート・ドラマーを加えた4人と一般的であるが、アルバムの制作過程は独特のもので、にえぬが音源のほとんどを制作しておりギターも自らプレイ。そこに生ベースを加えることで作品ができあがっている。一瞬たりとも気が抜けないスリリングな楽曲が続き"ライヴで再現できるのか?"と思ってしまうが、それを実現できてしまうのがこのバンドのすごいところ。打ち込みでここまで緻密なアレンジを施していながら"肉体的なアルバムにしたかった"という一種アンビバレンツなテーマがバンドの性格をそのまま表している。

Marnie Stern

MARNIE STERN

Marnie Stern

DEERHOOOFやXIU XIUなど、ひとクセもふたクセもある手練ミュージシャンを数多く輩出するレーベル“Kill Rock Stars”から、またしても強烈な作品が登場!プロデューサーも務めたZach Hill(Hella)の人間業とは思えない怒涛のドラミングに真っ向から応戦するのは、USインディーロック界の才女Marnie Stern。2年ぶりのニューアルバムになる今作でも、持ち前の超高速&超絶テクなギタープレイはもちろん健在。その圧巻のテンションで攻めるニュースタイルなロックンロールナンバーとともに、「Female Guiter Players Are The New」などで見られるキャッチーなメロディが今回はとても印象的。アバンギャルドなサウンド・アプローチとポップセンスの絶妙なブレンド具合に、彼女の確実な進化ぶりを見た。

Jordi

MAROON 5

Jordi

2017年の前作『Red Pill Blues』リリース後に亡くなった、バンドのマネージャーでAdam Levine(Vo)の幼馴染でもあったジョーダン・フェルドスタインに捧げられ、彼のニックネームを冠したアルバム。ヒット曲「Memories」を中心に、全体的に哀しみを湛えたムードの本作は、トラップ・ビートや温度感の低いエレクトロ・サウンドも相まって、落ち着いた音像に。誰もが不安や喪失感を抱えた時代にそっと寄り添い、包み込んで癒すような優しさが伝わってくる。巧みなフロウを聴かせるMEGAN THEE STALLION、Adamとのデュエットを響かせるH.E.R.、そしてStevie Nicks(FLEETWOOD MAC/Vo)や故JUICE WRLDなど、客演も豪華だ。

Red Pill Blues

MAROON 5

Red Pill Blues

エレクトロニックなファンク、バンドで構築するモダンなR&Bを軸とするMAROON 5が、ここ数年USでドラスティックに音楽シーンのトップを奪取したという事実に欠かせなかったもの、それは間違いなくラップ・ミュージックだ。2016年にリリースしたKendrick Lamarをフィーチャリングした「Don't Wanna Know」での驚きと、それを飲み込んででも彼らのサウンドとして確立できるのか? という疑問を、今となっては抱く余地はないだろう。音数を絞り込み、今のビートでトラックを構築したうえでMAROON 5らしさが滲み出るのは、Adam Levineのスムーズでエモーショナルなヴォーカルの強さとバンドらしいグルーヴがあるからに違いない。親しみやすい形でジャンルやカテゴリを横断した快作。

V

MAROON 5

V

すでに全米チャート1位に輝き、バンドにとって7年ぶりのナンバーワン・ヒットとなった本作。デビュー時のなんとしてでもソウルやファンクのグルーヴをロック・バンドのメカニズムで表現しようとする衝動と、それを牽引したAdam Levineのホワイトソウルなヴォーカルにどうしてもパワーとポップスの挑戦を感じていた身には、今回のアルバムもR&BやEDM、トラディショナル・ミュージックを思いっきりポップに消化し、万人受けするチャート・ミュージックに濾過された印象は否めない。先行シングル「Maps」がメイン・ストリームの洗練されたR&Bになんとか彼ららしい生音のジャシーなギターやピアノをアレンジしていた熱量が本編でも反映されたら......。Adamのメロディ・センス好きにはいい作品ではある。

Flavor

MARQUEE BEACH CLUB

Flavor

彼らの存在に一躍スポットが当たるきっかけになった「eye」のリテイクを1曲目に配置。享楽的なシンセ・ポップとはひと味もふた味も違う、シンセとギターの重層的な音使いや肉体的なリズムにまず惹きつけられる。また、バンドで表現するハウス的なTrack.3「cups」、トライバル・ビートが印象的なTrack.5「understand」、彼らの地元・水戸から見た東京を思わせる歌詞を持つTrack.7「city」、サカナクションやフジファブリックにも通じる、日本人ならではの琴線に触れるメロディが美しいTrack.9「white」、そしてバンドの筋力がなければ形にならないであろうスロー・チューンのTrack.10「dive」など、ポップ・ミュージックの親しみやすさの中にいかに新鮮なサウンドを融合するかが、すでに身についているバンドならではの仕上がりだ。

Come Home To Mama

Martha Wainwright

Come Home To Mama

シンガー・ソングライター、Martha Wainwright。彼女は70年代にフォーク・シンガーとして活躍したLoudon Wainwright III とKate McGarrigleの娘であり、あのRufus Wainwrightの妹である。生粋の音楽サラブレットはこれまでもその才能を見事に表現してきたが、まだまだ底知れぬ存在と言いたい。通算4枚目となる今作。高低から強弱の巧みなヴォーカリゼーションで魅せるハスキー・ヴォイスは、やはり圧倒的で不変的な声の力。その魅力を支える豪華なゲスト陣も毎回話題となるが、本作はCIBO MATTOの本田ゆかプロデュース。加えてギタリストはWILCOのNels Cline、ベースは夫でありプロデューサーとしても活動するBrad Albetta。さらにドラムはDIRTY THREEのJim Whiteというから驚きだ。インディー・ファンは無視することなかれ。