DISC REVIEW
L
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Leo-Wonder
journey
anne、nene、rinの新たな3人体制で始動した第2期Leo-Wonderが、新体制初シングルをリリースした。本作では、第1期から引き続き空想委員会の岡田典之(Ba)がすべての楽曲を手掛け、さらに同じく空想委員会の佐々木直也らがギターに参加したことで、グルーヴ感が一段と向上。そこへ3人の爆発する個性が絡み合い、Leo-Wonderワールドを形作る。新曲は第2期にとっての始まりの1曲であり、新たな旅立ちに相応しい加速感がある「journey」と、縦ノリで飛び跳ねたくなる「world dive」の2曲。第1期のシングルから再録された「アルゴリズム」は、サウンド面も含めてさらなる深化を遂げた。CDは会場限定発売だが、配信リリースもされているので、バンド好きもアイドル好きも、一聴の価値あり。
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LEO今井
Made From Nothing
LEO今井名義としては4年振りとなるフル・アルバムは初の完全セルフ・プロデュース作。“自分の音楽を一度解体して、ゼロにリセットしたつもりになってこのアルバムを作った”と彼が語るように、巧妙に変化する拍子、ポスト・ロックやプログレやメタルの要素、はたまたカントリー、東洋的なメロディ、民族的なビート、冷ややかなシンセの音色などが混在しつつも違和感なく共存する、これぞオルタナティヴと言える巧妙さである。どこか俯瞰で投下されるその音色は冷静なようで、触れると火傷をしそうな熱を孕んでいる。常に漂う危険な匂いは聴き手に世の中への疑問を突きつけるようで、その緊張感に背筋がひやりとする。時代やジャンルという概念とは違う次元で繰り広げられる同作。改めて彼の才能に脱帽である。
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Lewis Capaldi
Divinely Uninspired To A Hellish Extent
2019年に最も売れたSSWと言えばこの人、Lewis Capaldiだろう。スコットランド人アーティストとして38年ぶりの全米シングル・チャート1位獲得も、大きな話題となった。それにしても、このぽっちゃりした地味な青年がこんな奇跡の歌声を発するなんて。若さに見合わぬ激渋ヴォイスと自虐も交えたユーモア溢れるSNSでの振る舞いという、ギャップ萌えキャラにハマってしまう方も多いのでは。フォーク・ロックをベースとした素朴なメロディと語り掛けるような歌唱。そこにスケール感のあるアレンジが加わり、テンションが上がっていくハスキーで力強い歌声もグッとくる。良曲の教科書のような聴いても歌っても気持ちのいいバラードが詰まった今作は、きっと多くの人の記憶に残るだろう。
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LIA ICES
Grown Unknown
NYブルックリンを拠点に活動している女性シンガー・ソング・ライター、LIA ICES。本作では、力強さと透明感を併せ持つ彼女の美しい歌声が強調されつつ、ピアノ/ギター/オルガン/ストリングス/ホーンなど、様々な楽器の音色がヴォーカルと混ざり合い、幻想的な世界へと導いてくれる。Track.2「Daphne」には、Kanye Westとの共演で話題となったBON IVERことJustin Vernonがゲスト・ヴォーカルで参加。2人の歌声が静かにそして自然に、耳から体へと浸み込んで、居心地の良い空間に連れて行ってくれる。CAT POWERやSharon Van Ettenなどのフォーキーな女性ヴォーカルが好きな方におすすめ。
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Liam Finn
Fomo
本国ニュージーランドのMusic AwardsではTop New Actを受賞したバンドBETCHADUPAのフロントマンLiam Finnのソロ最新作がこちら。冒頭曲「Neurotic World」の静かで流麗な始まり、続く「Don't Even Know Your Name」で徐々にグルーヴィに波打ち、はじけ飛んでいく展開は思わず体を揺らしてしまったが、そのまま少しずつ呼吸を整えるように更にテンポを落とし、物憂げな表情へと転じていくのがとてもセクシー。そして、囁きが幾重にも重なり合ったような、全てがコーラス・ラインのごとく耳に優しいヴォーカルが、そのままふわりと抱き上げ、ベッドルームへと運んでいく。それはもう、メロディは勿論のこと、全ての音の主軸にもなる、音響的にも作用するヴォーカルの美しさ故の甘い展開であること言うまでもない。
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Liam Gallagher & John Squire
Liam Gallagher & John Squire
元OASISのヴォーカリストと元THE STONE ROSESのギタリストというUKロック好きならずともロック・レジェンドふたりのコラボにときめきを禁じ得ない音楽ファンは多いだろう。が、それ以上にやはりティーンエイジャーの頃、THE STONE ROSESの音楽に刺激を受けたLiamがJohnのソングライトを自分なりに解釈して歌っている原点回帰のムードがいい。仕上がりもラフなセッション・レコーディングっぽいし、且つ音数を絞ったモダンな聴感で、どこか時代を超越している。サイケデリックで中期のTHE BEATLESを彷彿させる「Just Another Rainbow」、コードやリフはどブルースでありつつ、削ぎ落とした音像の「I'm A Wheel」、ブギーなギター・リフや音色にJohnの色気が自ずと漏れる「Mars To Liverpool」など、聴くほどに味わいを増す1枚。
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Liam Gallagher
Knebworth 22
ロック史に名を遺したOASISの伝説的野外ライヴ"Knebworth 1996"。その会場であるネブワース・パークを舞台に2022年に開催されたLiam Gallagherのライヴが"Knebworth 22"だ。今作は、その2日間にわたるライヴの音源をまとめた作品。昨年リリースした新作の楽曲やソロでの人気曲を中心に、OASISの名曲も織り交ぜた豪華なセットリストには、往年のファンでなくとも感動を覚えたはず。そんなオーディエンスの熱狂の歓声や大合唱が収録されているのもライヴ・アルバムである今作の楽しみのひとつ。Liamの独特な立ち姿が伝わってくるタイトル・コールや、ちょっとした煽りのセリフなど、ライヴの追体験ができるので、"サマソニ"関連の来日公演を逃した方にもおすすめ。
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Liam Gallagher
C'mon You Know
OASISで歴史的ライヴを行ったネブワースにて、ソロとして過去最大規模となる2デイズ公演を2022年6月3日、4日に控えている、Liam Gallagherの3作目となるアルバム。クラシック・ロックへのオマージュを下地にしながらもサウンドの幅をこれまで以上に広げた印象で、Dave Grohl(FOO FIGHTERS)とコライトし、彼もドラムで参加したオルタナ・チューンのTrack.7をはじめ、そっと背中を押すようなバラードのTrack.5、レゲエを取り込んだTrack.10、ブレイクビーツが軽快なTrack.11など、モダンな音像も絡めたバリエーション豊かな内容に。自然体でありながらロックンロール・スターの超然とした風格を感じさせる、ソロ・キャリアの存在感をさらに高める1枚だ。
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Liaroid Cinema
inletPAGE
なりふりかまわずに突っ走って、その先にあるはずの何かをつかまえようとする。ここではそんな演奏が展開されている。ドラマーが打ち出すシャープなリズムの上をベースが滑り、2本のギターは絡み合いながら勢いよく駆け抜ける。ヴォーカルは見えるようで見えない、遠くにいる誰かに思いを届けるかのように声を張り上げている。Liaroid Cinemaは2008年9月に大阪で結成された、5人組のロック・バンド。2010年には年間100本を越える数のライヴを行ったという。このバンドの音楽は小手先のテクニックで聴かせるものではない。走った先に何があるのかは分からない。それでも全力で走っていく。そういう光景が見えてくるかのような、迷いのないアグレッシヴなサウンドを聴かせてくれる。
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LIARS
Mess
2012年の『WIXIW』以来となる通算7作目のオリジナル・アルバム。どこか聴いていてイヤな汗をかく不穏な音の配置も含め、現代最強のエクスペリメンタル・ロック・バンドと称された近年の作品に比べると、強迫観念めいたビートやサウンド・デザインは後退。最初に思い浮かべるのはKRAFTWERKなど、テクノの先人たちのセンス。しかもダーク・テクノ、ブリープ・テクノなどからダンスするための機能を抜き取ったような印象で、しかも彼らの場合、投げやりなヴォーカルが乗った瞬間、登場当時からの不埒なポスト・パンク感も同時に呼び起こすのが独特だ。それでいて音像はハイファイ、コードがマイナーでもポップさが漂うのが面白い。カラフルなコードがこんがらがったアートワークはアルバムの中身を"言い得て妙"。
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THE LIBERTINES
All Quiet On The Eastern Esplanade
THE STROKESやTHE WHITE STRIPESらと共に2000年代初頭のガレージ・ロック・リヴァイヴァル・ムーヴメントを支えた最重要バンドのひとつであり、2000年代UKロックのアイコンとしてロック史に名を残してきたTHE LIBERTINES。デビュー当時はかなり尖った印象だった彼らも20年の歳月を経て"なんだか少し丸くなったなぁ"と感慨深くなる作品だ。壊れそうな何かを内包した危うい魅力は落ち着いてしまったが、やはりこのバンドには他にないカリスマ性がある。王道なギター・ロックでありながら詩的で繊細なサウンドで、Peter DohertyとCarl Barâtふたりのフロントマンによるヴォーカルも楽曲ごとに違った顔を覗かせ、ファンを喜ばせてくれる。彼らがまだまだやれると証明した作品。
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THE LIBERTINES
Anthems For Doomed Youth
2010年に実現した奇跡の再結成から5年。THE LIBERTINESが遂に3作目のアルバムを完成させた。前作から実に11年。彼らがいなければ、現在のUKロック・シーンの盛り上がりはまた違ったものになっていたかもしれない。しかし、ここにかつてのTHE LIBERTINESを過度に期待しちゃいけない。Gary Powell(Dr)も言っている。俺たちは新たなアプローチで新しいサウンドに挑戦した、と。その発言を踏まえるなら、新作の聴きどころはロックンロール・ナンバーよりもむしろ11年分の成熟が滲み出たメランコリックなピアノ・バラードや酔いどれジャズなんて言えそうな曲の方だ。ロックンロール詩人なんて言ってみたい、このロマンチシズムも、思えば、以前からの彼らの魅力のひとつだったはず。
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lical
filmeld filament
大阪は北摂の仲間同士が、中学を卒業したタイミングで結成したlicalが、第2章を謳い20代最初の作品をリリース。cinema staffやthe cabsら残響レコード勢の洗礼を受けたというドラムの嘉一を中心に奏でられる変則的な曲の展開力は、熱き初期衝動はそのままに、よりオリジナルな進化を遂げた。海外でめまぐるしい発展を遂げているR&Bやダンス・ミュージックのビートを取り入れた「漂白」は、その最たる例だろう。また、そのサウンドをまっすぐ貫く璃菜(Vo/Gt)が紡ぐメロディと歌詞も強度を増した。なぜか若い女性に求められがちな健全性や処女性をぶち壊す生々しい言葉は、俗に言う"闇深さ"を超えて、聴く者を奮い立たせる。リアルを突き詰め磨くことこそ、オリジナルなポップの源だと思わせる1枚。
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LIFESHOP
FREE MODERN INFORMATION
メンバーの脱退とその後の解散の危機が結果的にバンドの可能性を押し広げるきっかけになったと考えれば、前作と本作の間の2年は決してムダではなかった。90~00年代のオルタナ・ロックをバックボーンに持ちながら、洋・邦ロック両方の影響を絶妙のバランスで取り入れ、簡単に誰それのフォロワーとはいえないギター・ロック・サウンドを奏でている4人組による2ndミニ・アルバム。多彩な音色、リズムを追求しつつ、ポスト・パンクを思わせるエッジー且つアグレッシヴなロック・ナンバーから耽美的なメロディアス・ナンバー、そしてライヴで盛り上がること必至のダンサブルなポップ・ナンバーまで、それぞれに趣向を凝らした7曲がバンドの新たなスタートを印象づける。ここからのさらなる変化も含め、今後が楽しみなバンドだ。
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THE LIGHT ASSEMBLY
Parade In Picture Perfect
デジタル・シングルがロンドンのインディー・シーンで話題を呼び、THE HEARTBREAKSが所属するレーベルがその才能に惚れ込んだという4ピース・バンドのデビュー・アルバムが、本国イギリスよりも大先行で日本リリース。今日はSWIM DEEPやTHE 1975などの若手の台頭が目立つUKロック・シーン。THE LIGHT ASSEMBLYの楽曲群もその流れに位置するブリット・ポップ的なテイストが光る。リフレインするフレーズと人懐こいメロディがキュートで甘美だ。それに加え、THE CUREを彷彿させる内省的なセンシティヴさ、ネオアコ風のアプローチ、力強いビートにダンスの要素......と自身が感銘を受けた音楽のニュアンスを多分に取り込み、遊び心溢れるポップ・ソングへと昇華している。
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LIGHTSPEED CHAMPION
Life Is Sweet Nice to Meet You
元祖ニュー・レイヴ・バンドとして颯爽と表れすぐに解散してしまったTEST ICICLESのメンバーだったLIGHTSPEED CHAMPION。解散して間もなく届けられた1stアルバムはニュー・レイヴとはかけ離れたカントリー調の作品だった。それだけにこの人はとてつもないセンスで沢山の音楽を吸収してコロコロと表現を変えていく人なんだろうと思っていた。その期待通り今作は前作を基本とした抜群のメロディがたっぷり詰まった傑作となった。ストリングスやピアノを多用した壮大な曲が収録されているが、彼の作り出す楽曲にはシンプルながら聴く者の胸を打つメロディに溢れている。なおプロデューサーにはANIMAL COLLECTIVEなどを手掛けるBen Allenを迎えている。
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LILI LIMIT
LIB EP
これまでのポップなLILI LIMITのイメージをいい意味で思い切り裏切り、バンドの新たな一面を打ち出す挑戦的な曲の数々に驚いた。そしてそれらの完成度が高く、ことごとく彼らの雰囲気にハマっていることにも。今作では今まで内に秘めていたものを"解放"するかの如く、彼らのエレクトロな武器を引っ提げ、ダークでクールな方向へ突き進む。要所要所に挟まれる新たに構築されたサウンドにはとことんこだわりが感じられ、1曲の中で劇的に空気感を変える展開にもドキッとさせられる。牧野純平(Vo)による、優しく囁いたり、開放的且つ伸びやかに歌ったり、怒りの感情を漂わせ闘うように叫んだりといった豊かな声色、また洒落を利かせた詞も、今作で描く現実の儚さをドラマチックに演出している。
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LILI LIMIT
LAST SUPPER EP
LILI LIMITの楽曲の持つダンサブルな一面がフィーチャーされた今作。その表題曲となる「LAST SUPPER」は、"最後の晩餐"をテーマに別れの歌をリズミカルなメロディに乗せたアップ・チューンとなっている。コーラス・ワークがとてつもなく麗しく、なんといっても別れをポップに歌い上げているから潔い。さらに、"未来はあのドレスで朝食を"と女の子の憧れや希望をエレクトロなサウンドに乗せた「LIKE A HEPBURN」、重低音なイントロで幕を開ける「ERAION」はナイフとフォークを食器に置くサウンドを取り入れるなど、まさに今作のタイトル"最後の晩餐"らしい音作り。全4曲を聴き終えると、まるで素敵なディナーを終えたような感覚になる。別れを惜しむよりもこの先の光が見えてくる最高の1品に仕上がっているので、じっくり味わってほしい。
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LILI LIMIT
a.k.a
今年7月にリリースした『LIVING ROOM EP』の延長で、キャッチーであることを意識したバンドの最新モードをスケールアップした形で印象づける1stフル・アルバム。スタジオにおけるギミックとメンバーによる演奏のダイナミクスを際立たせることで、未来を先取りした感覚で取り組んだニュー・ウェーヴ・サウンドは、さらに聴き応えあるものに。その一方で、牧野純平(Vo)による歌詞は物語性が増したことで、J-POPとしての精度がアップ。しかし、"優しさと狂気が唄い合う無重力ポップ"とはよく言ったもので、どこにでもいるような男女の日常を牧歌的に描きながら、不意に不気味なトーンを漂わせる言葉のマジックもより巧妙に。キャッチーになっても失われない"狂気"は、このバンドの真骨頂だ。
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LILI LIMIT
LIVING ROOM EP
山口県宇部市で結成。その後、福岡時代を経て、2014年に上京してきた男女混成の5人組がいよいよメジャー・デビュー。"優しさと狂気が唄い合う"というキャッチフレーズどおり二面性がこのバンドの大きな魅力だが、メジャー第1弾となるこの4曲入りのEPは、"ブレイク必至"という呼び声に応えるように1組の男女の日常を綴るというコンセプトも含め、持ち前のポップ・センスを、わかりやすい形で届けることに成功している。もちろんその一方で、ダンス・ミュージック、エレクトロ、ヒップホップなど、様々な要素が入り混じるバンド・サウンドは磨き上げられ、これまで以上に尖ったものになっているわけだが、歌詞、サウンド面に対するこだわりは作品のポップな印象とは裏腹に凄みさえ感じられる。
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LILI LIMIT
#apieceofcake
2015年夏にリリースした『Etudes』に続く、2ndミニ・アルバム。そのオープニング曲となる「Festa」は、コーラスとハンドクラップで彩られ、多幸感たっぷりのスペーシーなポップ・チューンとなっている。歌詞はハッピー一辺倒ではなく、むしろ真逆の感情で、閉塞感から抜け出そうとため込んだエネルギーを爆発させる。それがクラッカーを鳴らすような勢いとキラキラとした華やかさを生んだ曲だ。他にも、5人のアレンジとアンサンブルのポップネスと、毒の絶妙なさじ加減が効いた曲が並ぶ。都会的で洗練さを見せつつも、一方でそういったスノッブさを自分で笑いにしてしまう感覚がある。それがキャッチーさにも繋がっていて、緻密に組み立てられたサウンドや歌をやわらかく解きほぐしていく。洒落っ気たっぷりな音であり、心が動く。そんなニクい作品だ。
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LILI LIMIT
modular
今年1月にリリースされた残響shop labelのコンピレーション『Blind Compilation Vol.1』の1曲目に収録されたLILI LIMIT。ジャケット等に収録アーティストや曲名を載せない、まさにBlindな状態で新しい音楽に触れてもらおうというコンピの冒頭曲という重要な役割を担っただけあり、心を掴む速度は抜群だ。幾何学模様を描く変拍子での構成や、様々な音楽エッセンスが盛り込まれたポスト・ロック的アプローチ、または実験的なポスト・パンクの匂いも持つ。多彩な切り口で見せるひとりコンピ状態のサウンドであり、それでいて耳に飛び込んでくるメロディはとてもキャッチーで鮮やか。アンサンブルやサウンド同様に試みはあるも、心に寄りそって、また想像力を喚起させる。心と体とを動かしてくれるパワーを持っている。
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LILY
Gene
"Cocoon=サナギ"をタイトルに冠した初の全国流通盤のリリースから1年。いよいよ羽化し、羽ばたこうとするも、その先には数々の困難が待ち構えていた――。今作は、それでも諦めず幾度となくトライ&エラーを繰り返したLILYが辿り着いた、同じように痛みを抱える誰かに向けた"頑張れと言わない応援歌集"。1曲1曲で異なる主人公のドラマがリアルに描かれており、"あなたの1曲"が見つけられるアルバムとなっている。さらに、J-POPシーンに匹敵する普遍的なメロディに磨きがかかっているのも聴きどころ。中でも特筆したいのは、ファンのエネルギーに満ちたコーラスが、スポットライトとなって彼らの夢へと続く舞台を照らす「スパイラル」。まばゆい未来を可視化するような力強さを湛えたこの曲に、彼らはきっと大空へ飛び立てると賭けてみたい。
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LILY
Cocoon
確実にひとつのシーンを形成しつつある群馬出身の2人組LILY が、まさに満を持してリリースする初の全国流通作品『Cocoon』。Track.1「遠く」を一聴した瞬間にそのメロディの強度や丁寧に編み込まれたサウンドに度肝を抜かれた。LILYには、今なお日本のポップ・シーンの頂点に君臨するスピッツやMr.Children、近年でいうとback numberやいきものがかりといったアーティストに共通する非常にシンプルな魅力がある。そしてそれは幾多の困難を乗り越えた彼らだからこそ紡ぐことができた、普遍性のあるメロディと綴られる言葉の誠実さで以って聴き手の胸に迫る。メロウな歌謡テイストのTrack.2、ポップのど真ん中を描くTrack.4とTrack.6など純粋な楽曲のクオリティは非常に高い。老若男女あらゆる人に訴求するだけの歌心が込められた1枚。
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LILY ALLEN
It’s Not Me, It’s You
今やセレブ・アイコンとして必要以上に注目されてしまっているLILY ALLEN。彼女の書くリリックは、あまりにも正直。バカ正直と言っていいほどだ。だから私は共感を覚えるし、ギターをジャーンとかき鳴らして少し攻撃的な目線を向けてりゃロックだと思ってるニセ女ロッカーが充満している今だからこそ、正直なポップソングを書き続ける彼女に必要以上に肩入れもしたくなる。今作もLILY節はもちろん健在。「誰でもドラッグやってる」「あんたイカせてくれた事なんかない」そして、「ファック・ユー」(この曲最高!)と、惜しげもなく歌っています。曲そのものの全体的なアンセム感は前作より薄れたものの、LILYは最高。そこに変わりはありません。
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lines
INDEX
2003年に東京で結成された四人組ポップグループ。2006年に自主音源『PACK』をリリースしているが、今作はこれまでのlinesの足跡をまとめた自己紹介的ミニアルバムだ。Vo.の栄田祥子はキュートな声が特徴的で、同性の女の子にも人気が出そう。発音がしっかりしているので、歌詞が伝わりやすいのも好感触だ。マイナー・コードが主体で、UKバラード・ロックを彷彿とさせるギターのラインがメロディに切なさを増幅させている。少し大人の人までが楽しめるポップスではないだろうか。M3「Feed」のイントロはNEW ORDERの「Blue Monday」のドラムのリズムのまんまだったりして微笑ましかったりするのだが、トラック全体的に凝ったアレンジが施されていて完成度が高い。
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LINE wanna be Anchors
Braille
全国流通こそ約1年4ヶ月ぶりだが、季節ごとに会場限定シングルのリリースとツアーを行うなど、止まることなく活動していたLINE wanna be Anchors。器用さよりも泥臭さ、生々しさの方が立っているのは、全6曲(シングルから3曲+初収録3曲)がバンドのこれまでとこれからを映しているからだろう。"性,酒,音"と書いて"欲望麻薬"と読ませる「欲望麻薬」、「人生」のストレートな響きが特に象徴的だが、音楽に魅せられ表現に身を賭す自らの性(さが)を描くことによって、彼らは、混沌を抱えながら進むバンドの姿勢を改めて提示したのだ。自らターニング・ポイントを作りにいったような気合いが感じられる作品。ここから快進撃が始まることを期待したい。
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LINE wanna be Anchors
Almost Famous
初の全国流通盤だった前作『Anchors Is Mine』ではまるでバンドの自己紹介をするかのように様々な表情を持つ曲を収録していたが、今作は自身のバックボーンだという歌謡色の濃い曲が中心となっている。アコースティック・ギターの音色がよく聴こえる曲が多いのも印象的だ。その結果、音の隙間を味わわせてくれるような引き算のアンサンブルが冴えているし、そういうバンド・サウンドによって、阿部将也(Vo/Gt)の艶やかな歌声や節回し、どこか捻れた性格をしている歌詞などが正しく活かされている。この1年間で、バンドの長所や短所をしっかりと自覚することができたのだろう。このバンドにしか歌えない歌は、もう彼らの手の中にある。そのまま突き進んでほしい。
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LINE wanna be Anchors
Anchors Is Mine
職業柄"今気になっているバンド"を訊かれることが多いが、この長ったらしい名前を今後は答えないといけないようだ。切り口鮮やかなサウンド。緻密な曲構成&アンサンブル。纏うのは、鈍く光る刃物のように灰色の空気。"君"という二人称が多く登場するにもかかわらず、常に焦燥と孤独を抱えている歌詞。ヴォーカリストがGRAPEVINE好きを公言していると知り少し腑に落ちたが、それでもやはり、年相応の青さと妙な老成感がギリギリのバランスで共存するこのバンドが、どうしても気になるのだ。京都発のLINE wanna be Anchors、本作が初の全国流通盤。現在アンビバレントなバランスで立っているこのバンドが、今後どのように歳を重ねていくのかを見てみたい。
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LINE wanna be Anchors
アンチヒーロー
京都の4人組ギター・ロック・バンドLINE wanna be Anchorsが、初の流通音源としてTOWER RECORDS限定100円シングルをリリースする。正統派ギター・ロックというには少し捻くれているように感じるのは、阿部将也(Gt/Vo)のソングライティングの成す技だろう。一見、決して難しくはない単語の羅列が、哀愁を漂わせるソリッドなメロディ・ラインに乗った途端にドラマティックに加速していく。歌詞がもたらす4分弱のストーリーの起伏に合わせて展開されていくフレーズの構成が実に緻密で、曲が生み出す情景の見たさに何度も再生ボタンを押してしまう中毒性をはらんでいる。静寂と激情を叙情的に表現するスキルは、おそらく今後もさらに磨かれていくであろう。彼らの将来に大きく期待できる、希望的作品。
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LioneL
NOBODY HERE
アスト・フラテリ(Vo/Gt)やユーヤメイヤー(Ba)など、各自が好きなバンド名やアーティストをもじったようなニックネームを持つ、八王子出身の4人組LioneL(読み:ライオネル)。THE BEATLESに始まりUKロックから、ブラック・ミュージック、そしてBUMP OF CHICKENなどのギター・ロックをルーツにした彼らのサウンドは、キャッチーでポップな中にも、ブルージーな節が効いていたり、いなたく青白い炎を揺らすガレージ・ロックの緊張感もあり。洋楽的なメロディにひねりを加えた日本語詞がのった曲、音楽好きの両親の影響でTHE BEATLESからチューリップまで聴くどんとやました(Gt)作曲による、どこかフォークの風情をも感じる曲、そこにファンク好きのSHOHEI(Dr)が軽快なグルーヴを加えていくLioneLサウンドが詰まったアルバムになっている。
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LiSA
LEO-NiNE
アニメ"鬼滅の刃"OPテーマ「紅蓮華」や、シングル曲「unlasting」、「ADAMAS」、初ドラマ・タイアップ「愛錠」など収録のアルバム。ドラマチックな「愛錠」のようなバラードから、ライヴでバンドを率いるPABLO(PTP etc.)と共に作り上げる「play the world!」や、「cancellation」の硬質なロック・サウンド、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)とのメロディとサウンドの掛け合いがスリリングな「赤い罠(who loves it?)」など、幅広い内容だ。「わがままケット・シー」はBIGMAMAの金井政人(Vo/Gt)が作編曲を手掛け、アコギを基調に弦楽器や打ち込みのビートが絡み幻想的な音色を生む。クールに抑えた歌声が映える曲で、ヴォーカルの豊かな表現が味わえるのはアルバムならでは。
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LiSA
unlasting
今年、初の紅白出場も決定したLiSAが、16枚目のシングルをリリース。表題曲は、彼女がメジャー・デビューして間もないころよりタイアップしているアニメ"ソードアート・オンライン"の世界観と再びひとつになったEDテーマだ。前作シングル「紅蓮華」と同じく、LiSAの楽曲を多く手掛ける草野華余子が作曲を担当しているが、ロックなカッコ良さが前面に出た前作とは対照的に、浮遊感のあるゆったりした曲調とR&Bのようなグルーヴ感、東洋的な音色の和洋折衷による不思議な響きが印象的。c/wの軽やかなポップ・ソング「ハウル」、ひねくれたダンス・チューン「Chill-Chill-Dal-Da」(期間生産限定盤のみ収録)も、それぞれに彼女の表現の幅広さを存分に生かした楽曲として聴きごたえあり。
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LiSA
紅蓮華
表題曲はTVアニメ"鬼滅の刃"のOP曲でLiSAが作詞。いわゆるタイアップ曲だが、挑み続ける心について歌う歌詞はLiSAというアーティストのあり方ともぴったり重なる。ここ数年で彼女はそのあたりのバランスを取るのがうまくなったというか、ソングライターとしての腕を着実に上げている。カップリング曲はいずれも新境地。ラウドなTrack.2は日本語詞の部分すらも英語のように発音するヴォーカルが新しいし、オートチューンの使い方もこれまでにないパターンだ。Track.3は作詞作曲がおなじみの田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN/Ba)である一方、江口 亮によるアレンジが新鮮。軽やかでお洒落なサウンドに合わせてLiSAの歌い方もナチュラルになっている。
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LiSA
赤い罠(who loves it?) / ADAMAS
TVアニメ"ソードアート・オンライン アリシゼーション"OP曲を収録した両A面シングル。田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)と堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)を作家陣に迎えたTrack.1は歌謡ジャズ感を入れたロック・ナンバー。LiSAの色と作家の個性がせめぎ合うスリル、展開が多いアレンジ、恋に溺れていく主人公の心象風景の交錯が、渦巻く罠にハマっていく様子をキャッチーに表現している。屈しない覚悟と誓いが込められたTrack.2とともに、歌詞の持つ世界観を刺激的に描いていくサウンドメイクはLiSAの楽曲の特色と言っていいだろう。期間生産限定盤には"Sony Music presents 全国作曲コンクール"にて入選を果たしたgoodtimesによる「1/f」も収録。
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LiSA
LiSA BEST -Way-
『LiSA BEST -Day-』と共にリリースされる、LiSAのベスト・アルバム。ソロ・デビューから7年間の楽曲でも後期のものが多く収録されているが、アニメ"Fate"シリーズのタイアップ曲を並べて収録するなど、時系列にとらわれずに楽曲の意味を重んじた構成になっている。ライヴ・アンセム「ROCK-mode」はPABLOによるリアレンジでリレコーディング。新曲2曲には現在の彼女の素直な気持ちやモードが色濃く表れている。ベスト・アルバムでありながら、過去の振り返りや節目ではなく強く未来を感じさせる作品だ。2013年にリリースされた彼女にとって初のノンタイアップ・シングル曲「best day, best way」はこのアルバムのラストを飾るために生まれたのではと思うほど意味深い。
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LiSA
LiSA BEST -Day-
2011年4月にソロ・デビューをしたLiSAが、初のベスト・アルバムを2タイトル同時リリース。これまでに彼女が担当した12曲のアニメ・テーマ・ソングと2曲のゲーム主題歌を2枚ですべて網羅し、彼女がライヴで観客と共に育ててきたアルバム曲なども収録している。まさしく彼女の7年間の歌手活動を象徴する内容だ。"Day"盤はデビューから初期の楽曲を中心に構成されている。彼女がヴォーカリストの道を志したきっかけとなったSPEEDのプロデューサーである伊秩弘将が作曲を担当した新曲「WiLL~無色透明~」は、デビュー・アルバムに収録された「無色透明」の続編。日々を積み重ねたうえで今の彼女が存在することを楽曲でもって証明する、完璧なベスト・アルバムである。
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LiSA
ASH
表題曲はTVアニメ"Fate/Apocrypha"2ndクールOPテーマ。LiSAの歌唱も闇を抱えながらも力を振り絞り邁進する女性像を体現し、アグレッシヴなサウンドとゆとりのあるメロディのコントラストに妖艶さが光り、また彼女の強みでもある作家陣やタイアップ作品などとのコラボレーション力が発揮された楽曲だ。海外ライクなエモに乗せ女の情念を歌い上げるTrack.2は、女優さながらの鬼気迫るヴォーカルが聴け、ピアノとアコギの優しい音色が特徴的なTrack.3では、彼女の周囲への愛と感謝が混じり気なく響きわたる。LiSAというアーティストの多面性は、彼女が関わるすべての人や作品と真摯に向かい合い、相手の想いを汲みとること――すなわち愛情を持って接するからこそ生まれるのだと痛感した。
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LiSA
LiTTLE DEViL PARADE
デビュー5周年を終えたタイミングでリリースされたフル・アルバム。ドラムロールをバックにして始まる表題曲「LiTTLE DEViL PARADE」からして新章の訪れを感じさせてくれる本作を聴き進めていると、音楽越しにLiSAと未来の話を交わしているような感覚に陥るが、その中心にあるのは、彼女がたびたびライヴで口にしていた"自分の好きなことは自分で守る"という部分。東京スカパラダイスオーケストラ編曲の「そしてパレードは続く」などこれまでにない挑戦も垣間見えるが、同時に原点回帰感もあるのは、おそらくその本質がブレていないからだろう。過去と未来をひとつなぎにする本作は、彼女のバイオグラフィにおけるマイルストーン的な役割を担うこととなるだろう。
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LiSA
Catch the Moment
デビュー以降アニメ・タイアップ曲を多く歌い続けている彼女が、自分自身が持っている色を出せるようになって久しいが、ここまでディープに彼女個人の精神性が表れながらもアニメの世界観にも準じた楽曲はなかったかもしれない。UNISON SQUARE GARDENの田淵智也が作る力強くキャッチーながらも一抹の感傷性を感じさせるメロディ・ラインは、LiSAの人間性そのもののよう。純粋で切実な願いを訴える彼女の歌詞と歌声含め、彼女から"ソードアート・オンライン"とリスナーへの感謝と愛を綴った、まさしく彼女の言うとおり"ラヴ・レター"だ。「みんなのうた」に起用されたTrack.2、八重歯を覗かせて目を細める彼女の笑顔をそのまま音楽にしたようなTrack.3と、全曲に経験と年齢を重ねた彼女の魅力が凝縮されている。
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