DISC REVIEW
L
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LOST HORIZONS
Ojalá
ex-COCTEAU TWINSのマルチ・インストゥルメンタリスト Simon RaymondeがTHE JESUS AND MARY CHAINでの活動でも知られるドラマー Richard Thomasと結成した新バンドのデビュー・アルバム。Simonのセンスは自身で設立したレーベルからBEACH HOUSEやVERONICA FALLSを輩出したことで知られるところ。本作ではSimonの弾くピアノとタイトなリズム隊によるクリアな音像が意外だが、清潔さとアンニュイさ、儚さと強さを兼ね備えた複数の女性ヴォーカルのディレクションはさすがだ。男性ではex-MIDLAKEのTim Smithがひとりでハーモニーを歌う曲の構造が美しく、Lou Reedに似たGHOSTPOETの歌もいい。寒さの中で灯火を見るような希望的作品。
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LOST IN TIME
DOORS
通算9枚目となるフル・アルバム。ひとつの命がそこにある歓びを唄う「366」を始め、やるせない気持ちを吐き捨てる「No caster」、海北のピアノが柔らかさを引き立てる「呼ぶ」と、挑戦に富んだ内容も"曲の中の感情を最も素直な形でアウトプットしたらこうなった"ぐらいの温度感である。十人十色ならぬ12曲12色。バラバラだからこそ映えるのは、LOST IN TIMEというバンドの本質。それは、目の前の君に伝えるための"歌"がいつだって中心にあるということ。そして、どんな感情も抱きしめ肯定してきたバンドで在り続けたことだ。明日を信じながら前へ進み続けるのは決してあなただけではない。この音楽はあなたの日常と共に、歩みを重ねてくれるだろう。
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LOST WEEKENDER
Rest / Sad Song
2006年福井で結成された、タイトでパワフルなバンド・アンサンブルを聴かせる3ピース・ロック・バンド。自主制作盤を今年リリースし、今回のシングルはTOWER RECORDSから限定発売され、今後更なる飛躍が期待される新人。荒削りながら、感情をそのままぶつけた様なエモーショナルなヴォーカルとストレートなギター・サウンドが印象的。ヴォーカルのマツダコウスケが描く歌詞は不安や絶望に溢れた世界を一歩引いた所から見つめる一人の少年の言葉のよう。彼らのライヴでもお馴染みのこの2曲は全国のライヴ・ハウスを回るツアーで鍛え上げられ、力強く生まれ変わっている。10月に早くも発売されるミニ・アルバムも期待だ。
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Lou Barlow
Goodnight Unknown
DINOSAUR Jr.の充実した活動ぶりの為、ソロまで準備しているとは思っていませんでした、Barlow先生。ゴメンナサイ。というわけで、THE FOLK IMPLOSIONやSEBADOHとしても、多くの傑作を作り上げているLow Barlowソロ名義での新作。朴訥としたLow Barlow独特のメロディと歌声も力強く、荒めに仕上げたローファイな音作りが臨場感を生み出している。前作に引き続きフォーキーなサウンドを基調とし、爪弾かれるギターや時にメリハリの効いたドラムが柔らかくリズムを刻んでいく。白黒写真の陰影がハッとするような表情を見せるように、このモロクロームな世界にも、凛とした緊張感とパッションが漲っている。EELS、YO LA TENGOに続き、ベテランのローファイ職人の味のある仕事に感服。
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Lou Rhodes
One Good Thing
90年代から活動するマンチェスター出身の女性アーティスト、Lou Rhodes。最近ではTHE CINEMATIC ORCHESTRAの作品やライヴにゲストとして参加し、話題を集めていた彼女の3作目は、そのTHE CINEMATIC ORCHESTRA の新レーベル「MOTION AUDIO」からリリースされる初めてのアルバム作品となる。生々しいアコースティック・ギターとLouの力強くも温かみのある歌声の組み合わせを基本に、ストリングスが空間的な奥行きを与える。オーヴァー・ダブやエディットもほとんど施されていないという本作は、素朴でありながらも生命力に満ち溢れたフォーク・ミュージックだ。2児の母という彼女が、生活の中で産み落とした、しっかりとした芯を持った歌の力強さには恐れ入る。
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LOVE AND HATES
L.A.H.
見たか男共!これが、DIY精神を掲げるガールズによる、インディ・カルチャーの底力じゃー!ソロ・ユニットHNCとしても活動するYuppaと、3ピース・バンドMIILA AND THE GEEKSのMoeによるHIP HOPユニットLOVE AND HATESが、遂に正式デビュー! 初ライヴでポップ・レジェンド・カジヒデキの心を奪ってしまったガールズの初音源ともなれば、やはりそのセンスは期待以上。ポップでローファイなサウンドは、その宅録感も相まって、女の子以外お断りのお洒落なホーム・パーティのよう。お菓子、おもちゃ、アクセサリー……ゆるーいラップにのせて素敵なものをいっぱい詰め込んで、ポップとガーリーという魔法の薬を入れてみたら、スーパー・ガールズ・ミュージックが誕生しちゃいました。
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LOVE LOVE LOVE
プラネタリウム
素朴で優しいポップ・センスを持つ3ピースLOVE LOVE LOVE のニュー・シングル。アルバム・デビュー前にして夏フェスにも出演するなど、既に高い支持を獲得している彼等。寺井孝太の透明感のある歌声が温かみのあるポップ・ソングにピッタリと合ったラヴ・ソング「プラネタリウム」。いたって真っ当で普遍的なスタイルのポップ・ソングなのだが、自然と心に入ってくる。例えば、岸田繁と草野マサムネの真ん中あたりに位置しそうな包容力のある寺井の歌声と、何気ない日常をそのまま歌にしたような歌詞世界。キラキラとしたギターも素敵だし、何よりも3 曲目「それもいいさ」のソウルフルなバンド・アンサンブルにLOVE LOVE LOVEのポップ偏差値の高さが現れていて、ドキリとさせられる。
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LOVE LOVE LOVE
空想パドル
「ブルー3部作」最終章と題されたミニ・アルバム『空想パドル』をリリースするLOVE LOVE LOVEは2008年4月に上京し全国的な活動をスタートさせた3ピース・バンド。2009年2月にメジャー・デビューを果たし、今年の夏には「ROKIN’ ON JAPAN FESTIVAL09」にも出演と駆け足でポップ・シーンの階段を登って来た。“ブルー”という言葉そのままに爽やかなギター・ポップ・ナンバーが並ぶ今作はどの曲も完成度が高く歌詞もよく作り込まれている。ポップに疾走する「パートタイムビリーバー」という楽曲では冴えない若者がくじけそうになりながらも必死に夢に向かって頑張る姿を歌いあげる。既出の2枚のミニ・アルバムから今作『空想パドル』まで、思春期という誰もが通る普遍のテーマを一貫して鮮やかに描き出している。
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LOVES.
JM
2005 年に結成された日暮愛葉率いるスーパー・バンドLOVES.。downy、KARENなどで活躍する秋山隆彦や元NUMBER GIRL の中尾憲太郎をメンバーに圧倒的な存在感と異彩を放ってきた。今作は百戦錬磨のリズム隊が作り出すヘヴィなビートとニューウェーブ然としたサックスの音色が印象的なとても力強い作品だ。もちろん日暮愛葉の存在感も抜群で楽曲に絡み合うような艶やかな歌声も素晴らしい。ライヴやセッションをこなしながら産まれてきた楽曲群であるため日暮愛葉のプロジェクトというより各メンバーの立ち居ちもより明確でLOVES.というバンドとしての一体感が今まで以上にある。ライヴ感のある非常に痛快な作品だ。
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the LOW-ATUS
旅鳥小唄 / Songbirds of Passage
東日本大震災の支援活動の中から生まれ、ライヴ活動を続けてきた細美武士(the HIATUS/MONOEYES/ELLEGARDEN)とTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)のバンド、the LOW-ATUSによる初アルバムは書き下ろしの11曲を収録。ライヴでは反戦歌を含む様々なプロテスト・ソングをカバーしてきたふたりが、ここでは自分たちの言葉(全曲が日本語)とメロディでコロナ禍の日本の社会に訴え掛けている。直接的なメッセージのみならず、「ダンシングクイーン」では巧みなストーリーテリングで聴く者の心臓を鷲掴みにする。その直後に、歌っている本人たちも思わず吹き出してしまう、演歌のパロディ(?)「みかん」を持ってくるバランス感覚が素晴らしい。そこには人生の喜怒哀楽が感じられる。
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LOW FREQUENCY CLUB
West Coast
生粋の遊び人気質がブチかます悪ノリか!?それとも80Kidzに殴り込みをかけるアウトロー!?イタリアから“パンツェッタ・ジローラモよろしく”ご機嫌な種馬3人組、LOW FREQUENCY CLUBがはしゃいでおります!アゲろ!アゲろ!とオープニングからラストまで超アッパーな怒濤のエレクトロファンクチューンに心躍りっ放し!08年1stアルバムをリリース後、SQUAREPUSHER、TUNNG、ATARI TEENAGE RIOT等さまざまなバンドと共演しながら持ち前のパーティー精神を研ぎ澄まし、この2ndアルバムで満を持しての日本デビューです。クラシックなファンク嗜好をルーツに持ちながら、VAN SHEやCUT COPYなどの80年代再考/最高なサウンドを咀嚼し、さらにキャッチーかつ“ちょいワル”な匂い醸すアダルティーなヴォーカル・ラインまでも披露。こいつはクセになること間違いなし!
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LOW IQ 01
a room with a view
言わずと知れた音楽界のエンターテイナーLOW IQ 01のニュー・シングル。今作はなんとソロとしては初の日本語詞での楽曲を含んだ作品。Track.1の「き(正式な表記は漢字の七が3つ)」からキレッキレのギター・サウンドと違和感がないどころか前からそうだったっけ?と思わせるほど日本語詞を巧みに操る。リード・トラックとしての位置づけのTrack.2の「a room with a view」は"イッチャン"のメロディ・センスが存分に活かされたミドル・チューン、そしてTrack.3の「KI-KI-SU-GO-SU」では日本語で韻を踏んだ言葉遊びを見せる。リラックスした大人の遊びに少しのセンチメントを加えたメロディと言葉が非常に際立ったシングルだ。
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LOW IQ 01
HELLO! LOW IQ 01!
今年ソロ活動10 周年を迎えたLOW IQ 01。記念すべきこの年を祝うように、豪華アーティストによるトリビュート・アルバムが発売される。メロコア、パンク、スカ、トロピカルなラテンなど、様々なジャンルを混在させる特異な音楽性を持つLOW IQ 01。盟友とも言えるKEN YOKOYAMA やDACK DROP BOMB 、BRAH MAN から、THE BAWDIES、MO'SOME TONEBENDER、SPECIAL OTHERS といったちょっと意外なバンドまで、それぞれが独自の解釈で彼の楽曲をカヴァーしている。どんなアレンジにおいても消えることの無い原曲の良さと、各バンドの個性が光る。何よりも、各アーティストのLOW IQ 01 という自由な表現者に対するリスペクトが詰め込まれている。
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LOWLY
Coal
NannaとSoffieのふたりによる幻想的なヴォーカルと、やわらかなノイズを活かしたシンセとギター・サウンドとが溶け合って、桃源郷の音楽として響きわたる。変則的なドラム・ビートを活かした「Daydreamers」や、ノイジーなギターやムーグ、リヴァーブのかかったビートで不思議な世界が描かれた「Stones In The Water」など、キャッチーなサウンドの輪郭がある曲もいいが、実験音楽的な空間にヴォーカルをのせた曲や神聖な空気をまとった曲も美しい。デンマークの王立音大で結成された男女5人組による本EPは日本オリジナル企画盤。海外ではBjorkやAsgeirが所属するUKのONE LITTLE INDIANRECORDS内のレーベルWin-Win Recordsと契約しシングルを発表したところなので、これからこの美しい万華鏡的音世界がどう広がるのか楽しみ。
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LP(Laura Pergolizzi)
Churches
RihannaやChristina Aguileraなどへの曲提供でも知られるイタリア系のシンガー・ソング・ライターの6thアルバム。ストリーミングで20億回再生を超える彼女の魅力は、ティーンエイジャーのような甘さと繊細さを兼ね備えた耳に残る声と、一気に高音に駆け上がる圧倒的な歌唱力。エレクトロ・ポップな「Goodbye」もあれば、ピアノ・リフで押していくスタンダードなミディアム・ナンバー「Angels」、荘厳なストリングスとスパニッシュ・テイストの生ギターがドラマチックな、EDMをアップデートする「One Last Time」、フォークとオペラが融合したタイトル・チューンなど、凄まじい振り幅も渾身の祈りのごとき歌で束ねきる。ルックスとのギャップにも驚くこと必至。
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LUCCI
1Kより愛をこめて
ちょうど1年前にリリースした前作『あの日の僕へ』にある、誰もが共感できる歌詞、キャッチーなメロディでリスナーのハートを掴んだ名古屋のギター・ロック・バンド、LUCCI。そんな彼らが、これまでのイメージである正統派な歌モノ的ノリもありつつ、少し捻くれた遊び心満載の楽曲の数々を詰め込み、三浦 弦太(Vo/Gt)の圧倒的歌唱力とメンバー個々の技量もさらにパワー・アップしたことを印象づける新作をリリース。目の前にある愛や怒りや、実生活からヒントを得た諸々を、等身大のリリックに込めた正直な歌も、共感できたり面白かったり......そんな天然な部分と、"この人たち一生懸命音楽に向き合ってるんだろうな"と感じる、努力に裏打ちされた実力派な部分が、独特の人間臭い魅力になっていて、好感が持てる。
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Lucie,Too
CHIME
待望の全国流通盤は、ポップでキュートな"片想い盤"デビュー・ミニ・アルバム『LUCKY』と、ダウナーな面を押し出し大人な魅力も見せた前作『exlover』の、両方の旨みを絶妙に昇華した、また新たな一面を見せるものになった。リリース時期となる冷たい風が吹き始める季節に似合う、爽やかさと切なさが詰まった今作。2分台の楽曲が続き、55秒のショート・チューンで締めくくる作品には、粒立ちのいい音が詰まっていて耳に心地よい。また、カナダやアジアでのライヴやアメリカでのCMタイアップ、海外バンドの来日公演のサポート・アクトも務めてきた彼女たち。リード曲「あなたの光」のMVには海外からのコメントも多く、その活動ひとつひとつでしっかりファンを獲得していることが窺える。
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Lucie,Too
exlover
バンドのイメージを覆すダウナーな部分を前面に押し出した「最後の日」を初っ端に据えたところに、飛躍の2018年を経た3人の"まだこんなもんじゃない"という意志が窺えるEP。同曲では、淡々とした歌声がメランコリックな気持ちを印象づける。"もらったギターを返しに/一人で車を走らせて"という一節で、彼の存在の大きさや、つらい決意、都会から少し外れた景色を想像させるのもさすが。また、表題曲にも"サヨナラしたあの日"が出てきており、愛しい傷跡を守りながら走り出す様子が、今度は攻撃的でスピード感のある楽曲に映し出される。独特のメロディやアレンジが味わい深い他2曲含め、割りきれない想いをどこか連続的に描き、キュートなだけじゃないLucie,Tooを見せる1枚。
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Lucie,Too
LUCKY
宇都宮発、平均年齢20歳のガールズ・バンド Lucie,Tooの初の全国流通盤。ソングライティングを手掛けるヴォーカル Chisaのポップなメロディと、恋する女の子の一途な気持ちを等身大で綴る歌詞が印象的だが、そのサウンドは海外のインディー・ポップ、エモ、ポスト・ロックからの影響をさらりと盛り込んだ、一筋縄ではいかないユニークなアプローチだ。リード曲「Lucky」は"婚姻届けを出しに行くカップル"をテーマに、大好きな人と添い遂げようとする女性のピュアな心情を描かれているほか、ほぼ全曲が"あなたを独り占めしたい"女の子の気持ちにフィーチャーした今作は、メンバー曰く"片想い盤"。どの楽曲にも"音楽が大好き! バンドが大好き!"という気持ちが溢れたフレッシュな1枚。
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Luck Stokes
be all one / その日がくるまで
元Rootlessのメンバー O-tsubo(Dr)とJun(Gt)を中心に結成された4人組バンド、Luck Stokesの初シングル。生粋のライヴ・バンドでありながら、今作はほぼ全編を打ち込みで完成させるという異例のレコーディング・スタイルで完成させた。「be all one」はタイトルのとおり、ライヴハウスに集まったお客さんと"ひとつになろう"という想いを込めたEDMナンバー。随所にライヴで一体感を感じられる仕掛けを散りばめた1曲に仕上げた。一方、「その日がくるまで」はShogou(Vo)の温かくスウィートな歌声が映えるミディアム・バラード。ソングライティングを手掛けるJunが、バンドに夢を抱き、挫折しながらも新たな場所(=Luck Stokes)で走り続けようとする決意が刻まれている。
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Lucky Kilimanjaro
Soul Friendly
ラッキリのニューEPがとにかく優しい。フィジカルを熱く躍らせた7月発表の『Dancers Friendly』とは別のアプローチで、今度は私たちの"ソウル"を温かく躍らせるのだ。低音を抑え、隙間のあるサウンドでぬくもりのあるギターが際立つ新境地「LIGHTHOUSE」、「いつもの魔法」。遊び心やサプライズも楽しい「フロリアス」。今回はお酒ではなくホットコーヒーで、まさにほっとする本作を彩る「コーヒー・セイブス・ミー」。そしてリスナーへのシンプルなメッセージを、伝えたいことはそれだけと言うかの如く繰り返す「メロディライン」をラストに。抱擁するような音像で疲れた心を鎮め、また明日へと向かわせてくれる、1日の終わりに傍にいてほしい好盤。
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Lucky Kilimanjaro
Dancers Friendly
"君がシャイだって関係ない"の歌通り、灼熱の夏を問答無用で腰から踊らせるパワー・チューン「Dancers Friendly」で幕を開ける本作。ファンを公言するやす子出演MVも微笑ましい「かけおち」は、フルートとダンス・ビートの新鮮な掛け合わせに身体のみならず心も躍る。かと思えば感傷的な「Find you in the dark」で暗中模索のリスナーに寄り添う姿勢も明示。ラッキリの"何も考えずに踊ろう"というのは、纏わり付く思いが本当は0ではないのを知っているからこそのメッセージ。だから心を掴んで離さないのだ。フレーズのループや熊木幸丸(Vo)以外のメンバーの声も効果的に取り入れる等、持ち味も遺憾なく発揮し、幕張メッセへ向けギアを上げていく。
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Lucky Kilimanjaro
実感
今年結成10周年を迎えるLucky Kilimanjaroから、"次の10年"を踊るためのニュー・シングルが到着した。表題曲の「実感」は、熊木幸丸(Vo)がバンドが活動10年目を迎えたことを受けて、バンドを継続させる情熱をテーマに書いた曲。メロディは憂いを、BPMは焦燥感をたたえている一方、"100年の愛を咲かせて"と悠久の時に想いを馳せている。常に"今"の音楽を書いてはリリースしてきたこのバンドの生きる速度、"永遠なんてない"という前提に対する解、半永久的に遺るものを作る音楽家のロマンが1曲に凝縮されているようで、シンプルながら深みのある曲だ。2曲目の「次の朝」は、問いが尽きないこの世界で生きる術としてダンス・ミュージックを提案してきたバンドの哲学のど真ん中を突くナンバー。
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Lucky Kilimanjaro
無限さ
"楽しい"ばかりがダンス・ミュージックではない。日々の生活から生まれる明るいだけではない感情と、どうにか手を取り合おうとすることが"踊る"ことだ。そう発信し続けてきたLucky Kilimanjaroらしい秋の配信シングル。表題曲「無限さ」は静かなところから始まり、じわじわと盛り上がってから、再び静かな場所に還るという山型の構成。孤独に寄り添い、イマジネーションの世界へ連れ出してくれる音楽は温かく、熊木幸丸(Vo)の"悲しみと並走する"という言葉も、まさにといった感じ。"狭い部屋だって宇宙になる"という歌詞に共感を覚えるリスナーも少なくないだろう。2曲目の「靄晴らす」は、モヤモヤした気持ちをひたすらに歌うことで踊るという、非常に人間的な楽曲。
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Lucky Kilimanjaro
後光
今年もLucky Kilimanjaroの夏がやってきた。そう思いながら、気づけばこの2曲をエンドレス・リピートしているリスナーも少なくないだろう。なんてったって今年のシングルも超踊れる。表題曲「後光」はどこか涼しげで、しかし聴けば聴くほど熱量が感じられるフィルター・ハウス。ファルセットがメインのヴォーカルは"歌う"というよりもサウンドと一体化していて、楽曲の雰囲気作りに貢献している。ダンス・ミュージックの主人公はこの音に揺れるあなた自身だと伝えるうえで、"後光"をモチーフとする歌詞もユニークだ。カップリングの「でんでん」は浮遊感のあるサウンドも、ニロ抜き音階のメロも、歌詞も、とにかく中毒性が高い。声だけで成立している箇所も意外と多く、実験的な楽曲だ。
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Lucky Kilimanjaro
Kimochy Season
アルバム・リリースを重ねるたびに曲ごとのサウンドのテクスチャーが明確になってきた、その最新形がこのメジャー4thアルバム。ハウス/テクノ・ビートが多めだが、そこに乗る日本語の新たな用い方もユニークだ。"一筋差す"という感覚的なフレーズをリフのようにビルドしていく「一筋差す」に始まり、「Heat」も歌詞がビートになっている印象。"掃除の機運"というなんともユニークなタイトルを持つ曲では、ブラスのサンプリングがグルーヴを作り、「地獄の踊り場」はドラムンベースに現行の海外シーンも90年代UK感も漂う。そんなダンサブルなアルバムの中で、オーセンティックなリズム・アンド・ブルースのスウィートネスを現代にアップデートしたような「咲まう」や、シティ・ポップ寄りの「山粧う」が実に新鮮なフックに。
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Lucky Kilimanjaro
TOUGH PLAY
1曲目から隙間の多さとドゥーワップなのかハウスなのか? 不思議な気分にアゲてくれる「I'm NOT Dead」に驚かされる。曲の前半をあえてビートレスにする「ZUBUZUBULOVE」や「果てることないダンス」もユニーク且つ、現行の海外シーンと共振する音像だ。先行配信されていた「踊りの合図」ではグッと生感のあるボサノヴァ~サルサ・テイストが飛び出し、「無敵」のアフロ・リズムによって、さらに身体が反応する。ラッキリには珍しい一夜限りの経験を思わせる「足りない夜にまかせて」に漂う、深夜のフロア感もリアルだし、同時にまだ部屋でひとりモヤモヤを抱える今の心情に重ならなくもない。逡巡もありながら、リスナーを外へと解放する「人生踊れば丸儲け」などなど、アクションを促す痛快なアルバムだ。(石角 友香)
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Lucky Kilimanjaro
踊りの合図
Lucky Kilimanjaroの夏がまたやってきた。タイトル・トラック「踊りの合図」はサンバのリズムを取り入れ、私たちの本能に訴え掛けて、制約だらけの日々に凝り固まり萎縮した心と身体を開放する。南米の情熱的な部分だけでなく、涼しいギターとシンセの音色、そこに時代劇"七人の侍"の登場人物や、"苦しいでござんす"なんて歌詞が出てくる彼らならではのミックス感が趣深く楽しい。そして、"わずらいは踊りの合図"という言葉には、今日を共に生きる人へ寄り添う想いも感じずにいられない。c/wの「あついきもち」はメロウなサウンドの中で、"愛とは?"を描くナンバーだが、恋人や家族の範囲に収まらない、スケールの大きな繋がりを篤実に歌うラヴ・ソングに目頭が熱くなる。
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Lucky Kilimanjaro
DAILY BOP
「太陽」や「夜とシンセサイザー」などの直近シングルや、先行公開された「MOONLIGHT」の時点で、そのサウンドの幅広さに再生するたび驚かされていたが、本作『DAILY BOP』はその音への探究心や、チャレンジの賜物と言えるアメイジングなアルバムとなった。新曲では、シンセ以上にギターが効いたトラックや、チルなムードを湛えた曲も新鮮でいいし、サウンドの多彩さ以外の面では、言葉遊びとメッセージが絶妙に入り交じる「ペペロンチーノ」が個人的にはお気に入り。とあるヒップホップ・ナンバーのフロウの引用にもときめいた。この意気軒昂な1枚のリリースから4日後に、自身最大キャパの有観客ワンマンとなる野音公演を開催すると思うと、鼓動はますます高まるばかりだ。
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Lucky Kilimanjaro
夜とシンセサイザー
前作『太陽』と対照的な"夜"がテーマのナンバー。これまでも彼らが夜を描いた曲はあったが、この曲はいろいろ考え込んでしまう夜半、先が見えない漠然とした不安も孕んだ夜を鮮明に映し出す。そして、それを半ば強引に、願いにも近い形で励ますのがシンセサイザー=ラッキリ、ひいては音楽の存在。過去最高に強勢でビリビリくるサビのサウンドと、"あなたのかわりに泣けないけど"と甘すぎない正しい姿勢を貫きつつも、しっかり背中を押す熊木幸丸の歌に奮い立たされるパワーチューンだ。c/wはDISH//に熊木個人で提供した「SAUNA SONG」のセルフ・カバー。DISH//Ver.よりテンポを落とし、サウナのまったり感がありつつも、水風呂で締めるようなキリッとしたメリハリも感じられ、聴き比べるのも楽しい。
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Lucky Kilimanjaro
太陽
結成以来、一貫して"踊ろう"と打ち出してきた彼らだが、ダンスはダンスでもこう来たか! という「太陽」。南米の部族的なビートから始まりつつ、サビでは"さぁ踊らにゃ損!/踊れや!ほいやっさ!"と神輿の掛け声のような言葉を乗せる展開には驚きだ。注目を集め始めたバンドだが、都会的、洒脱なといった決まった枠には収まらないし、もっと根本的な部分で踊りたいという意志の表れなのかも。ヴォーカル 熊木幸丸以外のメンバーも参加した自由な掛け声も相まってなんとも愉快で、歌詞中の遊び心も粋だ。一方の「Deadline Dancer」は、実際に熊木がRECの締め切りに追われるなかで書いた曲ということで、夏休みの宿題を終わりのほうにバタバタとするタイプの人には、耳が痛いながらも楽しい曲のはず。
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Lucky Kilimanjaro
エモめの夏
"エモめの夏"。真っ向から掲げたこのタイトルでまず興味を惹かれたラッキリの2曲入りシングル。表題曲は、イントロからクラップ音と清涼感のあるシンセがプールの水面のようなきらめきを感じさせる、まさにサマー・チューンだが、ベースも効いていて、サビで縦ノリにもなれるというのが彼らとしてはちょっと新鮮だ。そして、歌詞の面では、恋をして今までの自分ではいられない心もとなさも孕みつつ、"誰がなんと言おうと うるせぇで片がつく"と、自分本位になってしまうくらい舞い上がる気持ちが描かれている。もう一方の曲「新しい夏を駆けて」もまた夏を歌うナンバーだが、こちらは浮遊感たっぷり。熊木幸丸の歌声も含めて涼しげなのに、怒濤のサビが畳み掛けるラストは至極のメロディに胸が高鳴ってしまう。やられた。
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Lucky Kilimanjaro
!magination
"!magination"と冠された今作は"想像力を持った人が、力を発揮できるような世の中になれば"という本誌インタビューでの熊木幸丸(Vo)の言葉が形になったような作品だ。彼らの真骨頂であるシンセ・サウンドを改めてより鋭くした「Drawing!」、Bメロがない淡々としたスピード感が心地いい「RUN」などだけでなく、ゆったりした曲が続く部分があり、彼らとしては新鮮。曲調が多彩なぶん、様々な気持ちに寄り添ってくれる仕上がりに。また、缶を開ける音やため息など日常の音が随所に織り交ぜられており、遊び心と共に親しみやすさも感じられていい。5月のLIQUIDROOMワンマンは即完で追加公演が決定したラッキリ。ターゲットを絞らない彼らのメッセージは、今作でより広く染み渡っていく。
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Lucky Kilimanjaro
FRESH
2019年6月から4ヶ月連続でリリースしたシングル表題曲4曲に新曲「FRESH」を加えた、メジャーからの2nd EP。これまでのイメージにあるハウス/ディスコに接近した「風になる」と「HOUSE」、UK発の2ステップと日本の風情を感じる歌が融合した「初恋」、トラップのプロダクションをルーツにしたポップの進化と共鳴する「Do Do Do」、その線上にありながら、コーラスの強いアタックが印象的な、"新しい物事との出会い"によって開かれる感性の大切さを歌った「FRESH」と、それぞれの色を持った4曲と共に、Lucky Kilimanjaroがこの1年で獲得したポップ・ミュージックとしての強度を、まとめて味わえる1枚だ。
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Lucky Kilimanjaro
初恋
4作連続リリースの最終章は、"初恋"というタイトルから甘いメロウ・チューンか、爽やかでキラキラしたナンバーを想像したが、そんな予想を超えてきた、90年代後半~2000年前後に流行した2ステップを前面に押し出した、少し揚力のある曲。しかし、そこに淡々としつつも存在感のある熊木幸丸の声色が乗ることで、懐かしいというより、むしろ新鮮な空気を醸成するのが面白い。また、"初恋のような傷"という言葉に象徴されるように、恋の最中のときめきではなく、恋が終わった瞬間を丁寧に描いた詞のひとつひとつも多くの人に沁みるだろう。一方c/wでは、すべての人に平等に訪れる朝に対し、"君はどう迎えたい?"とリスナーの生活の底上げを図る、静かなるメッセージ・ソングを響かせている。
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Lucky Kilimanjaro
Do Do Do
4ヶ月連続リリースの第3弾となるシングル『Do Do Do』。表題曲は、ゆるく肩の力が抜けた第2弾の「HOUSE」とはまた違い、自身を奮い立たせるような強いメッセージが込められたミドル・チューンとなっている。"今自分が何者かなんて自分自身で決めなよ"、"自分の意思を決めたら/それを信じるまでだ"など、そのひとつひとつのワードに背中を押されるリスナーも多いのではないだろうか。また、メロウで風通しのいいエレクトロ・サウンドも心地よく、場面ごとで変わるビートの音色も聴きどころだ。c/w「愛してる」は、タイトル通りストレートに愛を伝えるナンバーとなっているが、情熱的すぎるように思える"愛してる"という言葉も涼しく、穏やかでスッと胸に入ってくるところがいい。
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Lucky Kilimanjaro
HOUSE
表題曲「HOUSE」は、BPMが125前後のハウス・ミュージックであり、家で自由に踊ろうと歌っているという意味でも"ハウス"ミュージックだ。清涼感溢れる「風になる」に続く4ヶ月連続リリース企画第2弾は、そんなスピード感と脱力感を持ち合わせるユニークな1曲となった。他人の目なんて考えずに好きなことをしようというメッセージを、"やろうぜ!"と強く促すのではなく、"家の中だったら何も気にしなくて大丈夫でしょ?"と優しく提案する感じが、なんともラッキリらしい。加えて、カップリングの「車のかげでキスを」では、海の中を漂うようなサウンドにピュアなフルートの音色を重ねて青い夏のひと幕を描き、バンドの多彩さも印象づける。
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Lucky Kilimanjaro
風になる
4ヶ月連続シングル第1弾は、ストリングスのピチカートのワンフレーズが、冒頭からラストまで3分間同じリズムで鳴りっぱなし。その中を変化していくメロディとシンセサイザーや効果音が楽しい曲だ。繰り返すコードはフラットな感覚ながらも、とびっきりの清涼感があるのは、楽器隊の音作りとクラップなどのアクセントがあるからだろう。熊木幸丸(Vo)のメッセージもより伝わりやすいまっすぐなものとなっており、"どこへでもゆける勇気をあげる"と歌うように、1日の始まりや、気分を切り替えたいとき、何か新しいことをするときなどに心と身体を軽くしてくれる。カップリングの「君が踊り出すのを待ってる」ではローを出しつつ、横揺れできるムーディなグルーヴ感が味わえて、ひたすら心地いい。
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Lucky Kilimanjaro
HUG
リスナーの心を躍らせることを目的とした6人組エレポップ・バンドが、メジャー1st EPを完成させた。一聴してまず耳に飛び込んでくるのは、2台のシンセサイザーが飛びっきり鮮やかに彩る洒脱なダンス・ミュージック。だがそこに乗るのは、熊木幸丸(Vo/Sampler)による、時には怒りも孕むほど強い意志を持った日本語のメッセージだ。そして"色あせたユニットバス"、"謎に高いカマンベール"など、なんとも生活感のある等身大のフレーズも盛り込まれており、この絶妙な融合が実にユニークだ。ステップを踏んで踊りたくなるような彼らの代名詞的な曲も存分に楽しめるが、約6分あるメロウでロマンチックなナンバー「Purple Dancer」では泣きのギターも聴かせ、軽やかな面以外も見せてくれる。
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LUCKY SOUL
A Coming Of Age
2007年のデビュー作でTHE PIPETTES と共に60’S ガールズ・ポップ・サウンドを現代に蘇らせたグループとして注目を集めたLUCKY SOUL の3年振りの2ndアルバム。THE PIPETTES が大幅なメンバー変更を経て不安定な状況にある中、そのポッカリと空いた穴を埋める様にポップで素晴らしいアルバムをLUCKY SOULが届けてくれた。レトロでポップな路線は変わらないが、ストリングスを多用したサウンドは前作よりも深みがあり少し大人になった印象。2 年かけて作られたという楽曲もまたまた甘酸っぱくてスイート。レゲエやカントリーを取り入れるなど音楽的な広がりもあってまさに理想的な2nd アルバムと言えるだろう。日本盤にはTHE CLASH「Rock The Casbah」のカヴァーも収録。
LIVE INFO
- 2025.07.02
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