Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

DISC REVIEW

L

カフェオレ

Laughing Hick

カフェオレ

昨年ベースのあかりを正式メンバーに迎え、それ以降デジタル・シングルのリリース、各地ライヴ・サーキットへの出演、リリース・ライヴなど、精力的に活動を続けてきたLaughing Hickの今年初となる作品。様々な恋愛模様をテーマに、それぞれの主人公が奔放に、それでいてまっすぐに自分を生き切る様を描いた全4曲は、このバンドならではという物語の仕上がりに。ストリングスを取り入れた表題曲「カフェオレ」から、すべてを全力で振り切ったダンサブルな「休憩と宿泊」まで、そこには楽曲に対する自信と信頼がひたすらみなぎり、そのうえで丁寧に重ねた新たな挑戦には、たくましさと頼もしさが感じられる。自らの強みを知り、その強みを迷いなく出し切ることで辿りついたバンド史上最高地点。間違いなくバンド史上最高の1枚。

女だから

Laughing Hick

女だから

あかり(Ba)を正式メンバーに迎え初の音源となる今作は、バンドの今の勢いと成長、自信が表れた1枚に。細やかなアレンジでダンサブルなロック・ナンバーに仕上げた表題曲に始まり、甘酸っぱい想いを夏らしいポップなサウンドに乗せた「ホンネ」、そして自身の気持ちをただシンプルにストレートに歌う「ランプ」。それぞれ色が異なる楽曲ではあるものの、どの曲も密度が濃く、どの曲も芯が太い。それはきっとこのバンドが何よりも大切にしている"リアル"がより"リアル"になった証拠であり、つまりは自分たちが伝えたいことがより鮮明に、より明確になったという証拠だろう。人間臭さも生々しさも、だからこそ瑞々しい。これまでを抱きしめ、これからに進み出したLaughing Hickの未来が感じられる1枚。

roman candles | 憧憬蝋燭

Laura day romance

roman candles | 憧憬蝋燭

2021年の「fever」、「東京の夜」、「happyend」の3ヶ月連続配信に続く2ndアルバム。フォーキーでいて都会的な街のざわめきも織り込まれたサウンドも、そこに風のように流れるメロディも、今作ではより洗練され、エヴァーグリーンに磨きがかっている。静かで透明感のあるギター・サウンドに物語を吹き込んでいくのは、井上花月のヴォーカルだ。柔らかく甘みのある声の中に数滴の憂いや毒っぽさが交じって、その歌にアンニュイな陰りを落とすヴォーカル、言葉を漂わせるような発語の心地よさが、現実と音楽との境界をぼやかしてしまう。揺らぐ蝋燭の炎を眺めていると、いつの間にかひとり物思いの時間や静かな記憶に触れるように、マジカルな時間に滑り込んでいく時が味わえる。そばに置いておきたいアルバムだ。

farewell your town

Laura day romance

farewell your town

大学のサークル仲間で結成し、EPやシングルをリリースしてきた4人。この1stフル・アルバムは、ひとつの街をテーマに悲喜こもごもの日常を詩的に描いた作品になっている。男女Voで紡ぐポップで切ないメロディを軸としたインディー・ロック的な作品から、今回は立体的に音で景色を描いていくようなサウンドとなった。ネオアコや芳醇な日本のポップ・ミュージックの、系譜やエッセンスを汲みながら、音の隙間にも物語を宿していて歌の奥行きを生んでいる。耳をすませばどこか懐かしい街の風景やざわめきが聞こえ、季節の香りが立ち上ってくる音楽となった。20代の彼らが決して背伸びをすることなく、ここに封じ込めたタイムレスな桃源郷。そこには時折パンキッシュなつむじ風も吹くので、油断ならず、刺激的だ。

Chance Of Rain

Laurel Halo

Chance Of Rain

ビートの反復が生み出す恍惚と表裏一体の酩酊。GRIMESと並ぶ宅録女子ムーヴメントの代表アクトとして、一躍、インディー・ダンス・シーンで注目されたブルックリンのアーティスト、Laurel Haloがこの2作目のアルバムで追求するのはまさにそれだ。この作品を完成させることは前作の成功後、ベッドルームを飛び出して、世界各国をツアーしながら吸収したものを作品に還元するという試みでもあったようだ。ヴォーカル・トラックを大胆に切り捨てたところからもストイックともアグレッシヴとも言える彼女の取り組み方が窺えるが、作品そのものはクラシックの教育を受けたというバックグラウンドを思い出させるピアノ・トラックで多彩な曲の数々を挟むという構成。自らの殻を破るような挑戦がなんとも痛快だ。

~How I'm Feeling~

LAUV

~How I'm Feeling~

LAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、LAUV。耳心地のよい優しいタッチの楽曲と、SNS世代の若者の声を代弁するようなリリックが共感を呼び、新世代ポップ・スターとも称される彼が、初のフル・アルバムをリリースする。すでにヒット・シングルをいくつもリリースしているので、もはやこれが現状のベスト盤と言ってもいいくらいの充実した内容だ。なんでもない日常の美しく煌めく刹那を拾い上げ、そして、危うい心の内を曝け出す、そのピュアな美しさがいい意味でとてつもなくしんどい。穏やかな曲調なのに、冒険心のあるリズムやセクシーなグルーヴで遊び、メロディの美しさを際立たせている。細かい音の使い方やエフェクトのひとつひとつにも神経の行き届いた完成度の高い作品。

Integration

LA VAMPIRES WITH MARIA MINERVA

Integration

かつて自身が在籍したPOCAHAUNTEDを“SADEがP・ファンクに出会った新しいTALKING HEADSのようなもの”と言っていただけあって、サウンドはパッと聴きはどこまでも逃避的かつ神秘的でありつつ、ただ流れずにオルタナティヴな筋が通っている。今回はもう1人の女性アーティスト、Maria Minervaの声が重なり、ここ最近、レーベル“100%SILK”で表現してきたサンプリング、シンセ、ピアノ、4/4ビートなど、かなり90’sハウスを彷彿させるエロティックなニュアンスが前面に出ているのがこの時代にあってユニーク。だが、USのインディー・ダンス界で活躍してきた彼女が、カリフォルニアあたりのムーヴメントと呼応しているのもSNS円熟期の2012年っぽいところ。変な表現だが、引きの美学を持った肉食系というか、強引じゃない分、妙に引っ掛かりがある。

Euler's identity

lazuli rena nicole

Euler's identity

新潟発の4人組バンド lazuli rena nicoleが、初の全国流通盤となるミニ・アルバムをリリース。ポスト・ロック、変拍子、オルタナなどの要素を取り入れたサウンドと、ストーリー性の高い歌詞、その世界観には、聴く者をグッと引き込むような強い力を感じる。今作に限らず、曲を作るうえで"生きること"を大きなテーマとして掲げ、哀情や皮肉を含みながらも、その日常に僅かな光を見いだしていく。この作品は、ラストの「prologue」がTrack.1「敗戦歌」の前奏となっていることで、それぞれ物語の異なる曲たちが、ひとつの作品として繰り返されるという仕掛けも面白い。また、今作自体がバンドの"プロローグ"となり、新たな物語の幕開けも表している。ここから一歩踏み出す彼らの決意が窺える1枚。

Riot Bulb

LAZYgunsBRISKY

Riot Bulb

LAZYgunsBRISKYが約2年ぶりとなるミニ・アルバムをリリース。本作は、ヒップホップ要素を再強化し、初の試みとしてシンセ・サウンドを大胆に取り入れ、新たなアプローチにも挑戦した意欲作となった。リード曲「Riot」は、これまでの骨太ロックは軸に残しつつも、シンセが入ることによってより洗練されたサウンドに仕上がっている印象。"食いしばった分 着飾って胸張って歩け"と、女性ならではの強さや葛藤を描いた歌詞も特徴的だ。また、音色はポップだが切ない気持ちが滲むラヴ・ソング「Lonely」や、ヒップホップ色を強く打ち出したバンド・アレンジが効いた「Saturday Moon」など、LAZYらしさはそのままに、さらに楽曲の振り幅を見せつけた全6曲が揃っている。

LAZYgunsBRISKY

LAZYgunsBRISKY

LAZYgunsBRISKY

これまでに、計3作のアルバムを発表、昨年10月には自主レーベルを発足させシングル「CHILDHOOT」をリリースしたLAZYgunsBRISKYが、ここにきてセルフ・タイトルを掲げたアルバムを発表した。これは、私たちはここからまた次の扉を開けるのだという大きな意思表示でもある。彼女達の中でのロックの再解釈・再確認を済ませたとでも言おうか......。更に力が抜けて、従来の泥臭くパワフルなナンバーはもとより、キュートなコーラスも入ってきたりと、よりポップな側面が随所に出てきている。過去2作でプロデュースを務めた、浅井健一というロックの純血種との出会い。そこから一度離れ、全てを自分たちの力で動かすことに挑戦した「CHILDHOOT」で見せた成長と変化が、本作で確実に実を結んだということだろう。そのときの"一番自由になれた"という言葉は、今尚生きていることが分かる作品だ。

26times

LAZYgunsBRISKY

26times

平均年齢20歳というガールズ・ロック・バンドLAZYgunsBRISKYが前作からおよそ半年で完成させてしまった新作ミニ・アルバム。今作でも浅井健一がプロデュースを手がけている。ソリッドでパンキッシュなロックンロールを繰り広げる彼女達だが、この新作ではグルーヴがさらに骨太になり、楽曲にうねりをもたらしている。特に「Now!」は独自の感性がいかんなく発揮された、破壊力抜群の一曲。まるで、OPERATER PLEASE「Just A Song About Ping Pong」のようなエネルギーを感じさせる。タイトな演奏の上で時にまくしたて、そして絶妙な間によってグルーヴを生み出すLucyの個性的なヴォーカル・スタイルもカッコイイ。この4人の恐るべき少女達は、とんでもない可能性を秘めている。

インターネットラブ

LBとOtowa

インターネットラブ

2011年にフリー・ダウンロードでリリースされたアルバム『FRESH BOX(β)』が1万ダウンロードを記録するなど注目を集める新世代ヒップホップ・ユニット。アー写が100枚ある等、謎に包まれた2人の経歴は華麗で、MCのLBはプロデューサーとしても評価が高く今年6月にはKREVAとシングルの付属CDで共演を果たしている。トラック・メーカーのOtowaは様々なリミックス・コンテストやトラック公募での入賞の実績を持っている。彼ら初のフィジカル・リリースとなる今作は、ヒップホップを軸としながらロックやダブステップ、アニソンまでのジャンルを横断しながらそれをスマートにまとめ上げている。とてもキャッチーで刺激的なアルバムだ。

American Dream

LCD SOUNDSYSTEM

American Dream

奇才であり秀才でもあるJames Murphy率いるLCDSOUNDSYSTEMの実に7年ぶりの新作。ダンスとパンクをマッシュアップさせ、独自のサウンドを構築させた彼らの音楽の最新形は実にバラエティに富んでいる。オープナーを飾るTrack.1にてレア・グルーヴを踏襲し、続くTrack.2ではトライバルなバッキングと世情を切り刻んだような言葉たちが並ぶ。なかには80'sディスコの源流を汲んだTrack.6まで、メッセージ性に加え、1枚を通して世代を横断できるジュークボックスのような側面も持ち合わせた作品だ。1音1曲1作、ひとつとして類似しない楽曲から職人気質な多様性まで、その随所に今作を生み出すきっかけのひとつともなった故David Bowieの言葉たちが息づいている。

This Is Happening

LCD SOUNDSYSTEM

This Is Happening

DFAのドン、James MurphyによるLCD SOUNDSYSTEMのサード・アルバム。常にシーンに対して問題提起を投げかける音を提示してきたこのプロジェクト。テクノへのアプローチを推し進めながらも、歌ものが増え、ヴォーカルの変化も印象的。例えば前作の「New York, I Love You But~」という完璧なバラードで、彼の歌の美しさは既に証明されたが、今作ではその歌を多様なアプローチで推し進める。深みを増しながらも、胸が高鳴って仕方がないほどエッジーでポップ。まさに、アイデアの宝庫の如きアルバムである。今年40歳を迎えても、彼は相変わらず都会のど真ん中で尖り続けているが、LCDとしてはこれが最後の作品だと言う。2010年を撃ち抜くこの作品、聴き倒させてもらいます。

Golden Maps

LEAGUE

Golden Maps

自主制作盤が配信のみでのリリースだったにも関わらず、アメリカの人気ドラマ「GOSSIP GIRL」で大々的に使用されたりと大きな話題になり、メジャー・レーベルの間で争奪戦が起こるなど、期待の新人として注目を集めているポルトガル人デュオLEAGUEの2枚のEPと未発表曲が収録された日本企画盤。全編にわたり色鮮やかで“ド”キャッチーなメロディとローファイなヴォーカル、アナログに近い質感の叙情的なシンセが響き渡る。冒頭で紹介したドラマで使用されたTrack.6「Strange Kind Of Love」は彼らの魅力が凝縮した甘酸っぱいメロディにミニマルなリズム、良い意味でチープなシンセ・ポップだし、Track.7の「Two Wild Hearts」は夕暮れの夏の海岸を思わせるようなメランコリックなビーチ・ポップだ。美メロなインディー・ポップ好きなあなたの、今夏のサウンドトラックに是非。

Alive And Unwell

Leah Kate

Alive And Unwell

SNSで火がつき、遅咲きのポップ・スターとして一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたLeah Kate。そんな彼女のヒット曲を収めたEPは、世界へ大きく羽ばたく彼女の名刺代わりの1枚となっている。彼女のルーツでもある2000年周辺のポップ・パンクやポップスの影響、そして音楽一家で育ったという恵まれた環境を感じさせる、幅広いジャンルから吸収されたエッセンスが独特のセンスとなって表現されている。また、リスナーが共感しやすいキャッチーなフレーズが用いられた歌詞も秀逸で、SNS文化との相性もバツグン。表舞台に出ずに創作活動を続けていた時期の長かったアーティストだからこそ、秘められた創造性が爆発したのかもしれない。Leah Kateの今後の輝きにも注目!

Love Is On The Move

LEELAND

Love Is On The Move

テキサス州出身、メイン・ソングライター兼Vo & Gtを務めるLEELAND と、兄のJackを中心メンバーとした、若干21歳の若手実力派バンドのサード・アルバム。しかしデビューから2枚連続でグラミー賞にノミネートされているのだから、既に中堅組とも言えるだろう。TRAVISや初期のKEANEを彷彿とさせる美しく壮大なメロディには更に磨きがかかり、敬虔なクリスチャンらしいピュアな優しさはキラキラとしていて、LEELANDの透き通るような声が美しく響き渡っていると同時に、強い信念を伺わせる。同じような印象の曲が多い感は否めないが、その分アルバム中盤「New Creation」の歪んだギターの音がいいアクセントとなっている。

Between The Times And The Tides

Lee Ranaldo

Between The Times And The Tides

SONIC YOUTHの活動休止の報は驚きだった。あのおしどり夫婦が何故…とも思ったが、Thurston Mooreの『Demolished Thoughts』は素晴らしい作品だったし、それに続き、満を持して届けられた、Lee Ranaldoのフルヴォーカル・アルバムである本作も、なかなかの好盤だ。Jim O’rourkeをはじめとするSONIC YOUTHと縁深い人間や、WILCOの一翼Nels Cline(Gt)も参加もあり、話題性も高い今作はSONIC YOUTHでは発揮されなかった彼の幅広い音楽性が前面に溢れ出ている。しかし、重要な点はガッチリ王道に“ロック”している事だ。個人的なハイライトは「Fire Island(phase)」。冒頭と中盤で聴かせるギターの表現力にギタリストとしての彼のプライドを見せつけられた。

Step&Step!

LEEVELLES

Step&Step!

2022年12月に渋谷Spotify O-WESTワンマン公演を成功させ、2024年に決まっているメジャー・デビューを目指して、着実に歩みを進めている4人組ロック・バンド、LEEVELLESが新曲「Step&Step!」を配信リリース。様々な音楽の要素を洗練されたバンド・サウンドに落とし込んできた彼らは今回、フューチャー・ベースをインスピレーション元に、ファンキーでダンサブルなポップ・ロック・サウンドにアプローチした。ライヴで盛り上がることは必至ながら、左右で掛け合うギターのカッティングをはじめ、緻密なスタジオ・ワークにも耳を傾けたい。輝かしい明日に繋がる挑戦をテーマに聴く者の背中を押す歌詞も、新しい生活が始まるこの季節にぴったりだ。

COLORS

LEEVELLES

COLORS

4人組ロック・バンド LEEVELLESの2ndアルバム。切れ味鋭い歌詞が光る激しいギター・ロック「killing me!~輪廻転生~」、ハイトーン・ヴォイスが爽やかに吹き抜ける「王様のメロディ」、柔らかな王道ミディアム・ロック・バラード「ふたり星」、浮遊感漂うデジタル・サウンドで構築された「呼応 (instrumental)」、流れるようなピアノが美しい「Milkyway」、疾走感溢れるシンセ・ポップ「無限未来」など、"COLORS"というタイトルに相応しい、とにかく多彩でジャンルレスな11曲が収録された。時にファンタジックで時にリアルな歌詞もまた、本作の彩りをより豊かにしている。ギター・ロックの枠にとらわれない攻めの姿勢で、新たな可能性、無限に広がる未来を切り開く進化系ロック・バンドに注目。

Conrad

THE LEGAL MATTERS

Conrad

2013年に結成されたデトロイト出身3ピース・バンド THE LEGAL MATTERSの新作。いくつかのメディアで"パワー・ポップ・バンド"と紹介されているが、チャーミングなロボットが主役のアニメーションMVも公開されているTrack.1「Anything」や、続く「I'm Sorry Love」を聴く限り、3声のコーラス・ワークを存分に活かしたアコースティック・バンドだ。もしかして髭面でかっぷくの良いメンバー3人のルックスから想像で言われているのでは!? と思ったほど。曲を聴き進めるうちに持った印象は、やはりコーラスの美しさと古き良きマージー・ビート的なアプローチのカッコ良さ。特にTrack.4「Short Term Memory」で聴ける歪んだギターには心躍る。リラックスして聴ける良作。

kolu_kokolu

LEGO BIG MORL

kolu_kokolu

先行シングル「潔癖症」が象徴的だが、他人と会う機会が"コロナで消えた"と歌う「Hello Stray Kitty」など、コロナ禍だから生まれた作品であることをあえて厭わずに作り切ったところに覚悟を感じる1枚。異なる価値観を"愛し合う"と歌う「Gradation~多様性の海~」は、おそらく制作時期には予期していなかっただろうが、ウクライナ情勢の緊迫が深まる今、時代の必然で生まれた平和への祈りのような意味も帯びる。と書くと、社会派な重たい作風に感じるかもしれないが、打ち込みとバンドを融合させたジャンルレスな曲調はどこまでも軽やか。社会に生きる意味と誰かを愛することを、身近な生活の営みとして歌詞に落とし込む手腕はキャリア15年の人間的な深みのなせる業だろう。

愛を食べた

LEGO BIG MORL

愛を食べた

まず、タイトルがいい。"愛を食べた"だ。愛するという行為を、命がけのテーマとして捉えるのではなく、あくまでも日常の一部に溶け込ませ、それでいてヒトの生業に必要不可欠な要素であるという価値観。それを生々しくポップに伝える絶妙な表現だ。バンド結成から15年。メンバーも30代半ばを過ぎたLEGO BIG MORLが、今だからこそ歌える、生活に深く根づいたラヴ・ソングであり、人生讃歌だと思う。前作アルバム『気配』に続き辻村有記(ex-HaKU/Vo/Gt)をアレンジャーに迎え、サウンドはポップに仕上げつつ、随所に散らしたギミックにロック・バンドらしい気概も光る。c/wには、歌手のこゑだに提供した「ピーポーピーポー」のセルフ・カバーを、安原兵衛のアレンジで収録。こちらはレゴらしいのひと言。

潔癖症

LEGO BIG MORL

潔癖症

バンド結成15周年の記念日である3月28日にリリースされた配信シングル。"潔癖症"というどこかレゴらしからぬ意表を突くタイトルが表すとおり、失敗が許されず、清廉潔癖が求められる今の時代に対するアンチテーゼとも言える1曲、だが、時代を揶揄するだけでは終わらず、"汚れた手と手 でも握手しよう"と締めくくるところに、歪で汚れたものこそ愛おしいという人間愛を感じた。BPM210の高速ビートに乗せた'80sなトラックが、やがて念仏のように不気味に歌詞を唱える、ドープなヒップホップ・ゾーンへと突入する予測不能の展開もユニーク。自分たちの固定概念を恐れずに壊す。それが今のLEGO BIG MORLのモードだ。アレンジは前アルバム『気配』にも参加した辻村有記(ex- HaKU/Vo/Gt)。

気配

LEGO BIG MORL

気配

3月に結成14周年を迎えたLEGO BIG MORLが、昨年のドラマー脱退後、3人体制で初めてリリースする7thアルバム。生ドラムを一切使わず、4人のアレンジャーのエッセンスをふんだんに注入し、エレクトロな要素を強めたサウンドには明らかな新しさを感じながらも、それは決して止むを得ず、あるいは突拍子もなく生じた変化ではない。クリエイティヴィティに溢れた豊潤な楽曲群の随所に、これまでのレゴの"気配"があり、14年という文脈があってこその"進化"であると感じられる。メンバーが"今が一番かっこいい"と胸を張るのも納得だ。未だかつてないほどヴォーカル表現を研究したというカナタタケヒロの剛にも柔にも変幻自在な歌声や、アルバム・タイトルから着想を得たこだわりのアートワークにも注目。

NEW WORLD

LEGO BIG MORL

NEW WORLD

タナカヒロキ(Gt)の怪我と療養・リハビリにより2013年はひたすら制作に打ち込んだLEGO BIG MORL。そして2014年1月に自主企画にて復活、また移籍を経ての第1弾シングル「RAINBOW」を発表と、前アルバムからの3年は激動の年だった。思う活動ができない辛苦をエネルギーに変えて、よりクリエイティヴにオルタナィヴに、恐いもの知らずな大胆さで新境地へと踏み込んだ。"ザ・ギター・ロック"なスタイルから、アレンジをきかせて、インディー・ロック的なマニアックな音楽志向も開陳し、好きなことやりたいことを禁じ手なしで曲にした。さなぎのように閉じこもった暗黒のときがあったからこそ、ドラスティックに変化できたのだろう。これは進化というより、変化、変革に近い。このロック・バンドとしての心意気は大歓迎だ。

Re:Union

LEGO BIG MORL

Re:Union

冒頭曲「素晴らしき世界」によって開かれた扉。そこから一斉に吹き込んでくる雄大な風は、いくつものドラマを巻き起こし、私たちの心を包み温めていく――。メロディによって風を呼び覚まし、風に乗って心ごとかっさらう求心力は、プロデューサーを務めた前田啓介(レミオロメン)の力によるところも大きいだろう。しかし、その後の展開、呼び込んだ風をさらに大きな力へと導いていくことが出来たのは、音楽で心を切り開こうとするバンドの真の強さあってこそである。誠実な言葉によって織りなされる普遍の愛によって、風力を身につけたlego big morl。作品が進むにつれその風速、風量は高まり、それは結果として言葉もメロディも豊かになり、やがては大輪の花を咲かせるように、聴く者の心に彩りを与える。"恵みの作"の完成だ。

Flowers

LEGO BIG MORL

Flowers

自分の意志で未来を開拓することと、現在をありのまま受け止めることは同等に困難だ。どちらも形は違えど痛みを伴い、それは決して軽いものではない。lego big morlは、公式サイトから無料ダウンロード・リリースされる4thシングル『Flower』でそのふたつの痛みと対峙し、新しい顔を生みだした。おそらく、その痛みは相当なものだったはずだ。常に自分の意志で時を刻んできた彼らは、"花"という強烈なまでに純粋な時間を刻む存在に、時間の重みを重ね合わせている。ひんやりと透明なヴォーカル、切々と降りそそぐ雨を思わせるギターのフレーズ、美しい螺旋を描くサウンドは、より実際的な歌詞と重なり、結びつく先が明確になっている。そして刹那的な世界に沈み込み、やがてまだ見ぬ明日へと踏み出すところで物語を閉じた。その物語は、刹那的でありつつも耽美に陥ることなく、現実的な情景の中へ力強い確固たる足取りで踏み出す。

溢れる

LEGO BIG MORL

溢れる

大阪の高校で同級生だった3人と熊本出身のドラムのアサカワが2006年に結成した4ピース・ロックバンド。大阪から全国へ活動の幅を広げ、昨年のドラマ「赤い糸」では挿入歌に大抜擢。その後の1stアルバムの全国ツアーでは軒並みソールドアウト。ここ1年で一気にスターダムを駆け上がる。今回の2ndシングル「溢れる」は爽快感あふれるストレートなロック・ナンバー。カップリングの「隣の少女と僕と始まり」は彼らの真骨頂でもある繊細なメロディーが胸を打つミディアム・バラード。彼らの魅力が凝縮された渾身のシングル。

Alone Aboard The Ark

THE LEISURE SOCIETY

Alone Aboard The Ark

FLEET FOXESやGRIZZLY BEARへのUKからの回答と称された前作『IntoThe Merky Water』と比較すると、さらに時代を超えて英国ポップ・ミュージックの至宝的な哀感と素朴さに満ちたメロディに浸されるこの新作。Ray DavisとBraian Enoの寵愛を受けるバンドと言われても若いリスナーにはピンとこないだろう。ざっくり言えば、MUMFORD & SONSが歌い手の内的リズムでバンドを引っ張るアンサンブルにも似て、人間の生身の心地よいグルーヴに則っている。大きな違いは、英国作曲家協会主催の音楽賞にノミネートされるその作曲センスは、情動や情熱よりポップのメソッドによるということ。だからといってしかつめらしい部分はなく、往時のBLURやネオアコ好きにも訴求しそう。新英国主義の一品。

花束

Lenny code fiction

花束

約5年ぶりのアルバム『ハッピーエンドを始めたい』を今年7月に発売、同作を引っ提げたリリース・ツアーを現在開催中のLenny code fictionから、早くもニュー・シングルが到着。TVアニメ"新しい上司はど天然"のEDテーマに起用されている表題曲「花束」は、前述したアルバムの世界観と地続きながらも、80'sテイストのシンセはレニーのアンサンブルに心地よい浮遊感と耳新しさを与えている。また、c/wには夜が似合う打ち込みが印象的な「チープナイト」と、ストレートなバンド・サウンドを湛えた「それぞれの青」という、表題曲とは趣向を変えた2曲を収録。片桐 航(Vo/Gt)が自身と向き合うことで生まれた2ndアルバムを経て、今作で綴られた"今贈りたい歌詞"をあなたも受け取ってみては。

ハッピーエンドを始めたい

Lenny code fiction

ハッピーエンドを始めたい

Lenny code fictionから約5年ぶりのアルバム『ハッピーエンドを始めたい』が届いた。本作には「脳内」("炎炎ノ消防隊"第2クールED主題歌)、「ビボウロク」("BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"2022年7月クールEDテーマ)、「SEIEN」("魔王学院の不適合者 Ⅱ ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~"OPテーマ)という3曲のTVアニメ・タイアップを含む全11曲を収録。片桐 航(Vo/Gt)がひたすらに自分と向き合うことで生まれたというアルバムだが、コロナ禍で思うように活動ができなかった期間を経て歌われるラスト・ナンバー「幸せとは」はバンドを続けることへの喜びと気概に満ちている。

ビボウロク

Lenny code fiction

ビボウロク

予定していたツアーが再三にわたり延期になるなど、コロナ禍で辛酸を嘗めてきたLenny code fictionだが、3年ぶりのリリースとなった6thシングル『ビボウロク』は、思うようにバンド活動が行えなかった期間も決して無駄ではなかったことを確信づける1枚だ。片桐 航(Vo/Gt)が自身の弱さと向き合ったことで生まれたという「ビボウロク」は、人生で貰った"優しさ"に励まされながら生きる心情を歌った温かくも力強さを感じさせるナンバー。c/wには反骨心と不屈の精神を滾らせるロック・チューン「Pretty Dirty」と、バンド第2章の始まりを告げる「TOKYO」が収録された。この3曲を通して聴いたとき誰もが"新生Lenny code fiction"の姿に胸を打たれることだろう。

脳内

Lenny code fiction

脳内

1stアルバム『Montage』のリリース後、ツアーをするなかでダーク調の曲や攻めた曲の評判が良かったことに応え、"ダーク調"、"ラウドロック"をキーワードに新たな魅力をアピールしたシングル。「脳内」、「ヴィランズ」共に90年代のミクスチャー・ロックのエッセンスを取り入れながら、Lenny code fictionらしさも追求したアレンジ、サウンドメイキングが聴きどころとなった。この2曲がセットリストに加わることでライヴの盛り上がり方も変わっていきそうだ。そして、持ち前の反骨精神を剥き出しにしたそんな2曲とあえて並べたことで、メロディアスな「Time goes by」の爽やかさが際立つ結果に。カップリングだけで終わらせてしまってはもったいない。

Montage

Lenny code fiction

Montage

デビューから2年3ヶ月。滋賀出身の4人組ロック・バンドがついにリリースする待望の1stアルバム。リリースするたび新たな一面を見せつけた4枚のシングルに、新曲8曲を加えた全12曲が収録されているが、本能剥き出しで畳み掛けるようにロック・ナンバーを並べた前半は、まさに痛快のひと言だ。「Enter the Void」、「欲を纏う」、「Vale tudo【MAKE MY DAY】」の3曲は中でも特にインパクト大。そこで今一度自分たちがどういうバンドなのか存分にアピールした意味はリリース後、大きな意味を持つと思うが、後半に並ぶのは、バラードの「オーロラ」を含むじっくり聴かせる曲の数々。それもまた彼らの魅力だ。メンバー全員が火花を散らしながらぶつかり合っているような演奏にも、バンドの矜持が感じられる。

Make my story

Lenny code fiction

Make my story

フィジカルとしては前作『Colors』から1年4ヶ月ぶりとなる4thシングル。TVアニメ"僕のヒーローアカデミア"のオープニング・テーマとして書き下ろした表題曲は、キャッチーなインパクトをテーマに作ったダンサブルなロック・ナンバーだ。曲の印象がポップだからと、逆にそれぞれの楽器の個性を際立たせることを意識したロッキンなアンサンブル、そして不屈の闘志を、これでもかと歌った歌詞も聴きどころとなっている。キャッチーというテーマが、持ち前のロック・バンド精神を結果的に引き出したところが面白い。華やかなルックスとは裏腹に、この4人組、気持ちはとことんロック・バンドなのだと改めて思わせる。疾走感が心地いいTrack.2「影になる」と連作バラードのTrack.3「Wonder」をカップリング。

Colors

Lenny code fiction

Colors

TVアニメ"パズドラクロス"のオープニング・テーマ「Colors」を含む3rdシングル。カップリングを含め、毎回、異なる魅力をアピールする平均年齢23歳の4人組はライヴ・チューン3曲を詰め込んだというここで、ロックな部分やハードな魅力を改めてアピールしている。ファンに対する想いを伝えたかったという表題曲は、展開の読めないドラマチックな構成からダイナミックなバンド・サウンドが浮かび上がる。また、カップリングの「Alabama」と「Romance」は共にストレートなロックンロール・ナンバーだが、若いカップルの無軌道なラヴ・ストーリーを男女それぞれの視点で歌った歌詞にも耳を傾けたい。ライヴ・チューンだからって"勢いだけで勝負!"とならないところが彼らならでは。

Flower

Lenny code fiction

Flower

"スタイリッシュ・ロック・バンド"を掲げる平均年齢23歳の4人組が前作『Key -bring it on, my Destiny-』から3ヶ月でリリースする2ndシングルは前作同様、疾走感と力強いメッセージが彼らの王道と言えるロック・ナンバー「Flower」の他、ドラマチックなバラード・ナンバーの「オリオン」、歌謡ディスコ・ロックなんて言ってみたい「KISS」というそれぞれにタイプの異なる3曲を収録。幅広い曲が自分たちの武器のひとつだと自ら言っていることを考えると、"スタイリッシュ"という言葉が表すのは単にバンドのヴィジュアルに留まらないような気もする。それぞれにスタイリッシュな3曲を聴き応えあるものにしている演奏や、サウンドのプロデュースを手掛けるakkin(ONE OK ROCK他)と作り上げたアレンジも聴きどころだ。

Key -bring it on, my Destiny-

Lenny code fiction

Key -bring it on, my Destiny-

滋賀で結成された4ピース・バンドのメジャー・デビュー・シングル。テレビ・アニメ"D.Gray-man HALLOW"のオープニング・テーマとしてオンエア中の表題曲には、今現在のバンドの姿を映すように"誰一人邪魔はさせるか/初めて自分で選んだ道だ"という決意が。王道をてらいなく進むギター・ロックの疾走感を荘厳なストリングスがさらに後押しする。そのあとには、自分を形作る過去や他者の存在をまるごと肯定するTrack.2「世界について」、アメコミ的世界観で変身前後におけるヒーローの葛藤を描いたTrack.3「Showtime!!!!」と続く。"始まり"という一貫したテーマに基づいた3曲には、平均年齢22歳、若き彼らの等身大の感情が宿った。

Black And White America

Lenny Kravitz

Black And White America

過去8作のアルバムの売り上げは合計3500万枚超え!これまでに収めてきた破格の成功ぶりからすると、色々な意味で落ち着いて守りに入ることすらもある意味自然なことかも......。そんな定番な予想は、このLenny Kravitzにとってはありえないようだ。何しろ今作は、彼の作品史上でも1、2を争うと言って良いほどバラエティに富んだ痛快な作品なのだから! カラフルなCGとともにハンド・クラップを打ち鳴らすPVが印象的な「Stand」のポップ・センス。「Rock Star City Life」で炸裂するまさにLenny節なギター・サウンド。かと思えば。ヒップ・ホップ界からは帝王JAY-Zと新鋭DRAKEを招き......。尽きることのないレニーの冒険心は、いつでも僕達リスナーの心をときめかせてくれる!