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DISC REVIEW

cocoon

鎌野 愛

cocoon

実験的な1st、初めて言葉のある歌に挑んだ2ndアルバムを経てどちらの要素も現在進行形で曲ごとに落とし込んだEP。アブストラクトな側面とポップスの要素が並行する彼女らしいTrack.1はösterreichの高橋國光との共作詞も聴きどころだ。cinema staffの三島想平やGOTO(礼賛/DALLJUB STEP CLUB etc.)等辣腕が複雑なリズムと構成に挑むTrack.2のバンド・サウンドのダイナミズム、NHK連続テレビ小説"虎に翼"でも知られる波多野敦子ストリングスが参加したポストクラシカルなTrack.3、ダーク・ポップにも通じるエレクトロニックな音作りと世界観のTrack.4、ポエトリーと奥で聴こえるバンド・サウンドの妙が味わえるTrack.5等、想像力が拡張される作品集。

HUMAN

鎌野 愛

HUMAN

ヴォイス・アートと言えそうな前作から意味のわかる歌が増えた今作。それでいてミニマル・ミュージックや音のインスタレーション的な「霧と砂」や「解憶」もあれば、三島想平(cinema staff/Ba)のポスト・ロック感やGOTO(DALLJUB STEP CLUB/礼賛 etc./Dr)のロック/ジャズ/ファンクを基盤に持つビート、悲鳴のような須原 杏のヴァイオリンが印象的なソリッドな「螺旋の塔」もあり、八ヶ岳で生活する者にしか知り得ない驚異的な自然のサイクルを思わせる歌詞とサウンドスケープを持つ「贄の賛歌」や、自然の美しさを高解像度で捉えた「緑さす」までかなり多彩だ。だがそれはポスト・ロック、マス・ロックやエレクトロ、アンビエントからミニマルまで彼女の表現活動に基づいていて、00年代から現在までを確実に接続する音楽でもある。

20XX

神様、僕は気づいてしまった

20XX

センセーショナルなシーンへの登場から2年半。神様、僕は気づいてしまったが満を持して完成させた1stフル・アルバム『20XX』。アグレッシヴなロック・サウンドに乗せて、孤独からの救済を求めるような刹那的な楽曲の世界観はそのままに、和泉りゅーしん(Ba)が手掛けた「沈黙」、どこのだれか(Vo/Gt)による「破滅のオレンジ」など、メイン・ソングライター 東野へいと(Gt)以外のメンバーも作詞作曲に参加したことで、芳醇なサウンド・アプローチへと踏み込んだ全13曲が収録された。辣腕のプレイヤーによる確かな演奏力と音楽センス、ヴォーカル どこのだれかの圧倒的な表現力が全開放された渾身のロック・アルバムは、正義を振りかざして優しさを失った人間の愚かさに静かに問い掛ける。

ストレイシープ/匿名

神様、僕は気づいてしまった

ストレイシープ/匿名

フィジカル盤としては、昨年7月にリリースした1stミニ・アルバム『神様、僕は気づいてしまった』以来およそ1年ぶりとなるニュー・シングル。映画"オズランド 笑顔の魔法おしえます。"の挿入歌として、東野へいと(Gt)が作詞作曲をした「ストレイシープ」と、どこのだれか(Vo/Gt)が作詞作曲をした「匿名」が収録される。どちらも"自分の居場所を探す"という映画のテーマにリンクしながらも、田舎の遊園地を復興するというヒューマン・ドラマの世界観に似合うサウンドを目指したことによって、神僕の新たな魅力を引き出した。和泉りゅーしん(Ba)と東野が作曲を手掛けたポスト・ロック的な新機軸「52Hz」も収録するなど、全編に新たな挑戦を盛り込み、バンドの可能性を押し広げた充実の1枚。

神様、僕は気づいてしまった

神様、僕は気づいてしまった

神様、僕は気づいてしまった

"全曲リード曲のよう"という言葉はこのアルバムのためにあるのでは、と思うほど、どの楽曲も常に120パーセントのパワーで襲い掛かる。デビュー・シングル『CQCQ』がTVドラマ主題歌に抜擢されたことをきっかけにさらに注目を集める4人組が7曲入りのミニ・アルバムをリリース。金属音的なギターが破壊力満載の疾走感のあるギター・ロックだけでなく、歌謡ジャズ・ロック、フォーク・ソング的なミディアム・ナンバー、メタル・テイストのドラムがアクセントになった楽曲など、バンドの許容の広さを見せつける作品になった。彼らのサウンドのなかで特筆すべき点は、メロディアスなベース・ラインとそれ以外が作るアグレッシヴなサウンドによるコントラスト。葛藤と繊細さがない交ぜになった人間の心の中をそのまま音にしたようだ。

CQCQ

神様、僕は気づいてしまった

CQCQ

昨年11月にYouTubeにアップされた1st MV「だから僕は不幸に縋っていました」が大きな話題になったことに始まり、今作の表題曲「CQCQ」がTBS系 火曜ドラマ"あなたのことはそれほど"の主題歌になったことで爆発的に知名度を上げている4人組ロック・バンド、"神様、僕は気づいてしまった"の1stシングル。ヴォーカル"どこのだれか"のハイトーン・ヴォーカルが紡ぐキャッチーなメロディと、一聴して高いスキルを持った音楽集団であることがわかるハイクオリティ且つエネルギッシュな楽曲からは、このバンドが2017年下半期の音楽シーンにおいて台風の目になりそうな予感がした。曲名、バンド名からもわかるとおり、社会で生きる私たちのネガティヴな感情と向き合った歌詞は、救いようのない絶望を描きだすことで、不思議と誰かを救うパワーを秘めている。

note

上白石萌音

note

女優としてのみならず、歌手としても活躍している上白石萌音の初オリジナル・フル・アルバム。橋本絵莉子、YUKI、n-buna(ヨルシカ/Composer)、GLIM SPANKY、内澤崇仁 (androp/Vo/Gt)、水野良樹 (いきものがかり/Gt)、野田洋次郎(RADWIMPS/Vo/Gt/Pf)ら豪華な顔ぶれが楽曲を提供していることも話題だが、そこに加えられたある意味尖った個性とウェルメイドなポップスが絶妙に交わる全10曲は、ギター・ロックからバラードまでと実に多彩だ。中にはジャズ・ポップまで。その振り幅の広さを、曲ごとに声の高低や発声方法を使い分け見事に表現しきったヴォーカリストとしての力量。それがあるからこそ作りえた1枚は、J-POPとロック・バンド両方のファンにとって聴き応えあるものに。

出来るやってみたい

神頼みレコード

出来るやってみたい

大阪のレーベル"TOUGH&GUY RECORDS"所属アーティスト第2弾(第1弾は愛はズボーン)としてリリースされる、2010年に結成された大阪発4人組青春パンク・バンドの1stフル・アルバム。歌い出しから10秒で共感する表題曲、Track.1「出来るやってみたい」を始め、まさに青春パンクまっしぐらな曲が次から次へと飛び出してくる。泣き叫ぶように歌うセリフ入りのTrack.3「僕のカノン」には、大阪発のバンドならではの泥臭さを感じつつ、夜中に目覚めて起き上がったような気分で聴き入ってしまった。縦ノリの楽曲の中にあってTrack.9「アリとキリギリス」、Track.10「ずっと友達でいる事はなんて難しいんだろう」ではさりげなく加わる鍵盤の余韻が鮮烈に耳に残る。

Xgate

カミツキ

Xgate

ヘヴィ・ロックmeetsポップ・サウンド×エレクトロという基本路線は変わらない。しかし、四つ打ちのリズムも大胆に使いながらストレートでポップな魅力を打ち出した今回は、覚醒をテーマにした前作以上にカミツキの覚醒が感じられる。目の前に立ちふさがる門をこじ開け、前進することをテーマにした全5曲。物語は前3作からの続きではあるものの、歌詞からは、等身大のMiZUKi(Vo)が感じられる。そんなところもストレートでポップ。これまで以上に多くのリスナーに歓迎されるに違いない。新加入のHAGI(Gt)がアコースティック・ギターを軽快に鳴らす「Shine In the Darkness」には、ラテン・テイストという新機軸も。カミツキの活動はここからさらに加速していきそうだ。

Secret Whisper

カミツキ

Secret Whisper

前作『REAR SIDES HERO』は4曲入りのシングルだったとはいえ、そこからわずか5ヶ月でリリースというところに前進を続けるバンドの勢いが感じられる。1stミニ・アルバム『Five Days After Infection of Vampire』からの連作となるこの3rdミニ・アルバムでは、五感が研ぎ澄まされ、第六感が覚醒した物語の主人公と同様に、8月の初ワンマン・ライヴを経てバンド自身も覚醒したことをアピール。前作では、エレクトロとラウドなサウンドが入り混じるカミツキの王道に和のテイストを加えていたが、ダンス・ビートやメタリックなギター・リフの導入をはじめ、本来のロック・サウンドのなかで新境地と言えるアレンジにアプローチしている。それぞれに耳に残るキャッチーなフレーズを持った全5曲がライヴ映えすることは必至だ。

REAR SIDES HERO

カミツキ

REAR SIDES HERO

前2作同様コンセプチュアルな作品ではあるものの、シングルという性質上フットワークは軽く、それぞれに異なる魅力を持った4曲を収録。前2作で追求した"前進"というテーマは、津軽三味線と琴の音色も使って、和のテイストを打ち出したリード曲の「月華の奏」の新境地からしっかりと感じられる。その一方で「3 Words」と「from Day to Day」では、エレクトロとラウドなサウンドが入り混じるカミツキの王道を追求。その「3 Words」と同様に結成時からありながら、前2作のストーリーには合わないという理由で未発表だった「Eternal Sunshine」は、穏やかなピアノ・ナンバーだ。新たな挑戦に加え、今回、バンドが隠し持っていた魅力が楽曲の幅を広げたことに、何やら大きな意味があるようにも感じられる。

CLOCKWISE HERO

カミツキ

CLOCKWISE HERO

ミステリアスな魅力を持った美少女ヴォーカリスト MiZUKiを、それぞれに活動歴のあるメンバーがバックアップするカミツキが前作からわずか7ヶ月で2ndミニ・アルバムをリリース。前作リリース以降、バンドはツアーやパリでの"Japan Expo"出演と精力的に活動を続けてきた。前作の続編という位置づけゆえ、自ら掲げる"ヘヴィ・ロック meets ポップ・サウンド"をエレクトロニックな音色やゴシック風のピアノで装飾したダーク・ロマンチックな世界観に大きな変化はないものの、ひとりひとりが前作以上にポテンシャルを追求したことで、バンド感が劇的にアップ。その意味では、"深化"という表現が相応しい1枚になっている。バラードで終わるラストは、次回作の布石。さらなる続編を期待させる。

Five Days After Infection of Vampire

カミツキ

Five Days After Infection of Vampire

ミステリアスな魅力を持った美少女ヴォーカリスト MiZUKiを、それぞれに活動歴のあるメンバーがバックアップするカミツキが結成から1年足らずで全国デビュー。便宜上、"ヘヴィ・ロック meets ポップ・サウンド"を掲げてはいるが、鏡トナリの青木"kevin"進也がプロデュースした計5曲は、そんな表現に収まりきらない魅力を、エレクトロニックな音色も使いながら独特の美意識と哀愁と共にアピール。ヴァンパイアに噛まれた主人公の5日間(5曲)にわたる変化/進化を物語るというコンセプトのもと、主人公の気持ちをドラマチック且つエモーショナルに歌い上げるMiZUKiの歌声が、最後の「Fair Wind」でどんなふうに変化しているかは、世界観の広がりと共に、ぜひ実際に聴いて、確かめていただきたい。

続きのブランクペーパー

カミナリグモ

続きのブランクペーパー

そもそも、上野啓示というソングライターの気質とは、等身大の心と日々の風景をスケッチする繊細さ、そして、それをカラフルに染め上げる想像力豊かなストーリーテリングにこそある。だからこそ、カミナリグモの楽曲とは、どこまでもパーソナル、且つ、どこまでもブッ飛んでいる――という両義性を持ってこそ最高の形に仕上がる。その点で、この2年4ヶ月ぶりの新作、かなり最高。これまでのバンド編成から上野とghomaの2人編成に立ち返ったことで、完全にタガが外れたサウンド・メイク。フォーク・ロックにエレクトロ・パンクにオーケストラ・ポップにと、かなり自由。でも、その根幹で綴られる上野の独白を昇華した孤独と勇気の物語が、この音楽を聴き手に対して極めて親密なものにしている。とっても理想的な復活作。

MY DROWSY COCKPIT

カミナリグモ

MY DROWSY COCKPIT

上野啓示、成瀬篤志のふたりに、the pillowsのサポートも努める鈴木 淳、そして元くるりの森 信行を加えた4人体制が定着したからだろう、カミナリグモの音楽性は、年々、その肉体感を増している。90年代USインディーの雄・GRANDADDYを思わせる叙情的な鍵盤の響きと、骨太なバンド・サウンド。ギターのざらついた質感を残し、時にチープでローファイなアレンジを意図的に加えるなど、今のカミナリグモの音楽は、どこか掴みどころのない柔らかな質感を全体的に宿していた初期とは違い、生々しさや臨場感を聴き手にダイレクトに与えるものへと進化している。メジャー3作目となる本作は、その変化に更なる磨きがかかった上に、表情豊かなそれぞれの楽曲の描く物語も楽しめる、作品性の高いアルバムに仕上がっている。

心海

神はサイコロを振らない

心海

心の海と書いて"心海"。凪、さざ波、荒波と表情を変えていく海のごとく、様々な心情が多彩なサウンド・アプローチで描かれた。自分の思いを音楽で伝えていく葛藤を清涼感あるポップ・サウンドに乗せた「What's a Pop?」や、"言葉一つ"ですべてを失いかねないこのSNS時代に警鐘を鳴らすロック・ナンバー「Division」、バンド全体でグルーヴィ且つ感情的に歌い上げるYaffle編曲の神サイ流ネオ・ソウル「スピリタス・レイク」、夏のきらめきが弾けるポップに振り切ったダンス・チューン「Popcorn 'n' Magic!」、そして最後は静かに孤独と愛を歌う「告白」で温かく包み込む。平和への願いやファンへの思いは切実ながら、大衆に届くようポップに昇華。Rin音やasmiとのコラボ曲も収録した充実の1枚だ。

カラー・リリィの恋文

神はサイコロを振らない

カラー・リリィの恋文

ここ2年、ファンク寄りのグルーヴやエレクトロニックな踊れる楽曲など音楽性の幅を拡張してきた神はサイコロを振らないが、バンドの根幹にあるポストロックの音響や構築美をアップデートさせたのがこの「カラー・リリィの恋文」だろう。ボトムを支える厚みのあるベースの音、シンプルなビートだからこそ、吹く風や一瞬の光のようなギター・サウンドが映え、人の脆さや生々しさを残す柳田のヴォーカル表現も際立つ。青春を描くアニメ"アオアシ"のEDテーマの歴代ナンバーの中でも最も繊細で、ただそこにある思いや祈りの温かさに触れられる一遍なのでは。メジャー・デビュー以降、「泡沫花火」、「初恋」と毎年夏のシングルでは瑞々しく、リリカルで聴かせる楽曲を届ける彼らの新たなスタンダード。

事象の地平線

神はサイコロを振らない

事象の地平線

荒々しく衝動的なロック・ナンバーから荘厳なバラード、心踊るポップ・ソングまで。どんなジャンルの楽曲でも自分たちの色に染め上げる神サイ。そんな彼らがメジャー・デビューを果たした2020年以降の集大成となる1枚が完成した。2枚組全20曲。その半分がドラマやアニメ、CMソングに書き下した楽曲であり、バンドの知名度を上げたバラード曲「夜永唄」のリアレンジや、昨年n-buna(ヨルシカ/Gt/Composer)やアユニ・D(BiSH/PEDRO)、キタニタツヤを迎えたコラボ作まで、セールス・ポイントは枚挙にいとまがない。そんななか、必聴はラスト・ソングの新録曲「僕だけが失敗作みたいで」だろう。原点回帰となるポスト・ロック・サウンドに乗せ、柳田周作(Vo)が弱さを吐露する歌詞に、神サイの根底にある泥臭い人間味を感じる。

愛のけだもの

神はサイコロを振らない × キタニタツヤ

愛のけだもの

7月にリリースされたn-buna(ヨルシカ/Gt/Composer)とアユニ・D(BiSH/PEDRO)を迎えたコラボ曲「初恋」に続き、フィーチャリング第2弾として、神サイがキタニタツヤとタッグを組んだ配信シングル。ファンキー且つポップなサウンドに乗せて、恋愛における醜くも美しい感情を生々しく描いた今作は、まさに2組の"らしさ"が溶け合ったコラボレーションになった。優しく包容力のある柳田周作とまろやかで鋭いキタニタツヤという、声質の異なるふたりのヴォーカリストの味が際立つほか、全プレイヤーが主役になるアレンジの展開も痛快。神サイに新たなグルーヴをもたらした今作の経験を血肉にしてゆくことで、このフィーチャリングはバンドにとってより意義深いものになっていくはず。

初恋

神はサイコロを振らない

初恋

今年3月のメジャー1stシングル『エーテルの正体』以降、ハイペースな楽曲リリースが続く神はサイコロを振らない、初のコラボレーション楽曲。作曲にヨルシカのコンポーザー n-buna、ヴォーカリストにBiSHのメンバーであり、PEDRO名義の活動も展開するアユニ・Dを迎えるという、2021年代の音楽シーンを象徴するような3組が集結する豪華コラボになった。n-bunaの真骨頂とも言える、ピアノを中心にした清涼感あふれるバンド・サウンドに乗せた楽曲のテーマは、あの夏の日に置き忘れてきた切ない想い。柳田周作とアユニ・Dの男女ヴォーカルが優しく交錯するメロディには、懐かしい匂いが漂う。神サイの楽曲として、初めて柳田以外のコンポーザーが介入した点もバンドとして意義深い。

エーテルの正体

神はサイコロを振らない

エーテルの正体

2021年第1弾フィジカル・シングルは全4曲中3曲がタイアップの書き下ろし。その事実が注目度の高さを物語る。懐かしい景色を描くミディアム・テンポ「未来永劫」(アニメ"ワールドトリガー"EDテーマ)、アッパーなライヴ・アンセム「クロノグラフ彗星」(ドラマ"星になりたかった君と"主題歌)、エレクトロなダンス・ナンバー「1on1」(ドラマ"ヒミツのアイちゃん"主題歌)に加え、伊澤一葉(東京事変/the HIATUS etc.)をプロデュースに迎えた「夜永唄」のアフター・ストーリー「プラトニック・ラブ」と、すべて異なるサウンド・アプローチに挑戦した濃厚な1枚。メジャー以降タイアップが増えたが、全曲に自身の偽りない感情を歌に込める、柳田周作(Vo)のブレないソングライティングの姿勢もいい。

理 -kotowari-

神はサイコロを振らない

理 -kotowari-

なぜ彼/彼女は、そんなに生きづらいのか――テーマやメッセージは全5曲それぞれに違っても、聴き終わったときに残る強烈な印象は、それ。そこに共感が生まれるからこそ、15年結成の福岡出身の4人組ロック・バンドは、こうしてめきめきと頭角を現してきた。9ヶ月ぶりにリリースするミニ・アルバム。いわゆるギター・ロックをアンサンブルの核にしながら、8ビートやギター・サウンドだけに頼っているわけではないことを物語る、多彩なアレンジで差をつける。シンセ・オリエンテッドなバラードとグランジ・サウンド。あるいは、女と男が求めるものの乖離といった、作品の中に仕掛けた大胆なコントラストも聴きどころだ。「揺らめいて候」では四つ打ちに加えファンキーなリズムにもアプローチしている。

ラムダに対する見解

神はサイコロを振らない

ラムダに対する見解

アルベルト・アインシュタインの名言をバンド名とする、神はサイコロを振らないが、約2年ぶりの新作『ラムダに対する見解』をリリース。これまで以上に時間をかけ、丁寧に作り上げたという本作では、今までにないアプローチにも挑んでおり、新たな神サイの表情を垣間見ることができる。特に、MVも公開されている「アノニマス」でのソリッドなギター・リフ、冷たく吐き捨てるようなポエトリー・リーディングには意表をつかれた。また、ピアノやストリングスを使用し、よりドラマチックなサウンドに仕上げたバラード「夜永唄」も秀逸。弱い自分を受け入れながら、僅かな希望を見いだしていくような「No Matter What」など、全5曲収録の神サイ新章突入を強く打ち出した勝負作。

ナスタチウムの花

神はサイコロを振らない

ナスタチウムの花

"神はサイコロを振らない"というバンドが鳴らすのは、暗闇から見る光であり、是が非でも生きるのだという咆哮のロック・ナンバーだ。今年7月にリリースされた初の全国流通盤『anfang』が大きな話題を呼んでいる福岡発の4人組が早くもリリースするニュー・シングル。"俺は何故、誰の為/この声を枯らし叫ぶのか/その意味を今ここに記す"。まるでバンドの決意表明のように力強く歌い上げる表題曲「ナスタチウムの花」は、繊細なギターの旋律と唸るようなベース・ライン、躍動するドラムがひとつの意志となって響き合う。ナスタチウムの花言葉は"困難に打ち克つ"。その燃えるような暖色の花に、彼らはこの必然に支配された世の中で、それでも自らの手で運命を掴むという意志を託したのだと思う。

anfang

神はサイコロを振らない

anfang

最初に耳に飛び込んできたのは、今にも消えてしまいそうな光を灯すアルペジオと、それに溶けるようなウィスパー・ヴォイスだった。が、Track.1のタイトルどおり"静寂の空を裂いて"、抱えきれないほどの音のシャワーが降り注ぐ――ドイツ語で"始まり"を意味する"anfang"と名づけられた今作は、そんな神秘的な展開で幕を開ける。心理学者 アインシュタインが残した名言をその名に掲げ、2015年8月、福岡にて始動した4ピース・バンドによる初の全国流通盤。暗い影を纏った感傷的な詞やメロディが、複雑且つドラマチックに構成された楽曲によって次々と吐き出されていく。しかしクライマックスは、高らかなギターに導かれるように希望に手を伸ばす「煌々と輝く」。鮮烈な光と影のコントラストが作り上げた残像が、アルバムを聴き終えてからもしばらく消えない。

minority lounge

カミヒカルス

minority lounge

カネモリタナカ(Vo&Gt)を中心に函館にて結成されたロック・バンド、カミヒカルス。今作『minority lounge』で全国デビューを果たす。“身を削って作り上げたアルバム” と語るように、カネモリタナカが今まで生きてきて経験したことが、この作品には刻みこまれている。ライヴでアンセムとなっているアップテンポなナンバー「シャラリラ」、切ない歌詞が印象的な「7月20 日」など今までリリースされてきたシングル曲も収録されている。カミヒカルスが放つ音を聞くと、どこか懐かしいような感覚、そして物悲しさを感じてしまう。悲しさを知っているからこそ、本当の喜びが感じられるんだ。そんなことを教えられた気がする。

GHOST AID

神谷志龍

GHOST AID

令和元年に始動したシンガー・ソングライター、神谷志龍。いわゆるネット発のアーティストの中でも、リアルでダークでヒリヒリとした世界観で注目を集めているのが彼だ。そんな神谷が初めて投稿した曲「独白」から、ここまでの歩みをパッケージングした1stアルバム。社会とうまく付き合っていくために精一杯やっているのにどこか孤独を感じてしまったり、つらいと言えずに平気なふりをしてしまったり......そんな想いをぽつりぽつりと吐露するようにダウナーに、はたまたモヤモヤをぶつけるようにぶっきらぼうに、繊細なロック・サウンドに乗せ歌う。言葉遊びも巧みに詰め込まれた歌詞の一文字一文字からは、憂いと共に"それでも本当は生きていきたい"という切実すぎる想いが伝わってくる。共に今を生きる私たちの心を揺さぶる1枚。

Endroll

神山羊

Endroll

アルバム『CLOSET』以来となるフィジカル・リリースは、すでにTVアニメ"BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-"EDテーマとして話題集中の「Endroll」。ヒトリエのメンバーを迎え、打ち込みと生演奏両方のブレイクビーツが交差するアイディアが、人間の生身のパワーを拡張するイメージに接続し痛快だ。歌詞も演じることや仲間の存在を想起させ、原作とのさり気ないリンクを実現している。カップリングは"Qoo10"の新TV-CM"メガ割ナイトルーティン"篇に書き下ろした「ナイトスイミー」。淡いエレクトロニック・サウンドと泡の効果音などで作り出す浮遊感いっぱいの音像はまるでバスルーム。本当の自分を探しながらも、押し寄せる情報も無視できないガールズ・ライフに寄り添ってくれるような優しい1曲だ。

CLOSET

神山羊

CLOSET

創作の発端が生まれる場所としてのクローゼットを起点として、ポップスに昇華された楽曲を短編集のように編み、ラストのタイトル・チューンで再び起点の場所に戻ってくるような、パーソナルを極限までキャッチーにアンプリファイしたニュアンスが刺激的な、記念すべき1stフル・アルバムだ。神山の名前を一躍世に知らしめたインディーズ時代の「YELLOW」は、現在のバージョンにリテイク。10代へのメッセージである「セブンティーン」のロックとトラップ双方の尖った部分の融合、インディーR&Bとネオ・ソウルがハイパーに混交した「Girl.」などから、原風景を表現したインストを経て、グッと生音のアレンジが立った「仮面」で意外性を感じつつ、再びダーク・ポップな内面を覗くような展開へ。エッジと共感性の見事な結合。

色香水

神山羊

色香水

自身2作目のアニメ・タイアップとなった表題曲「色香水」は、前作のギター・ロックっぽさから一転、ファンタジックでどこか物悲しげなミディアム・ナンバー。歌メロが美しく聴きやすいからか、さらりと聴いても十分胸に迫る切なさがあり、そういう点ではアニメのオープニングにもってこいと言える。しかし、よくよく聴き込めば聴き込むほどにトラックの作り込みが繊細で楽しく、その奥の深さはまるで角度を変えるたびに違った色の光を放つステンドグラスのよう。哀愁漂う旋律はカップリングの「生絲」にも共通しているが、当然ながらこちらもまったく違った表情だ。この2曲を聴くだけでも、神山羊というアーティストのレンジの広さ、そしてジャンルにとらわれない自由さと懐の深さを存分に感じられる。

群青

神山羊

群青

ヒップホップのトラックメイク的なニュアンスのあった1stミニ・アルバム『しあわせなおとな』、ギター・サウンドなど生音のエッジも見受けられた2ndミニ・アルバム『ゆめみるこども』を経て、よりバンド・アンサンブルを感じさせる音楽的なレンジの広さが際立つのがこの「群青」。印象的なピアノ・リフとエモーショナルになったヴォーカル、J-POPマナーに則ったメロディ・ラインと、ダンス・チューンとしても成立するボトムの太さがステージアップを予感させる。アニメ"空挺ドラゴンズ"の全体像をこの曲が描くとすれば、「スタンドバイミー」は旅の途中の1日や、登場人物の誰か=聴き手にフォーカスしたイメージ。いずれも人の奏でる有機的な音像が今後のライヴ・パフォーマンスを期待させる仕上がりだ。

Orange

カメレオン・ライム・ウーピーパイ

Orange

Chi-によるソロ・ユニット、カメレオン・ライム・ウーピーパイから1stフル・アルバム『Orange』が届いた。本作には、中毒性抜群のトラックにキャッチーなフレーズが散りばめられた、"らしさ全開"のリード・トラック「Stand Out Chameleon」をはじめ、EAST ENDを彷彿とさせるオールド・スクールなヒップホップ・ナンバー「LaLaLa」、パンキッシュなビートを放つ「Love You!!!!!!」、チルいウエディング・ソング「Skeleton Wedding」、トラックメーカー PARKGOLFとのコラボ曲「Indie Slime」など全17曲を収録。ポップ・ミュージックというフィールドを遊び倒した、実にカオティックなポップ・アルバムに仕上がっている。

Zirconium Meconium

FEVER THE GHOST

Zirconium Meconium

THE FLAMING LIPSのWayne Coyneが"現実世界のものとは思えない"という趣旨の発言を以って賞賛したLA出身の4人組サイケ・ポップ・バンドの1stアルバム。そのサウンドは、キッチュなサイケ感とフューチャリスティックなアート性が同居し、どこかデジャヴ感があるような、一方でまったく未知なる音楽体験をしているかのような奇妙な聴き心地。一発キメたかのような幸福感に満ちた音像は、軽薄なまでに軽やか。個々の楽曲は抜群のポップ性を誇り、それはANIMAL COLLECTIVEやMGMTを始めとする00年代以降のUSインディーのサイケデリアとフォーキーさをその血に宿すがゆえと言える。チルで牧歌的なTrack.4、イーヴルなガレージ感を持ち込んだTrack.8、60sライクなポップネスを湛えたTrack.13など聴きどころは多く、聴く者を別世界へ誘うトリップ感のある作品。

紫陽花

カヨ

紫陽花

2018年9月に初の全国流通盤1stミニ・アルバムをリリースした名古屋発の男女混合5人組ロック・バンド、カヨが初の配信シングルをリリース。ポップでキャッチーなものからヘヴィでダークなものまで幅広いサウンドと、色気とかわいさを兼ね備えた歌声が魅力で、バンド編成だけではなく、音楽性も混合的な彼女たち。今作はそのユニークな音楽性にさらに拍車がかかっている。表題曲「紫陽花」は、複雑な心情が綴られた歌詞とソウルフルな歌声が光るロック・ナンバーだ。c/wには骨太なベースとパワフルなドラムが印象的で、"好き嫌い好き嫌い"、"恋のABC ABC !!"と連呼される中毒性抜群の「アイドル番長」を収録。この対照的な2曲にまだまだ底知れぬポテンシャルを感じる。

天使と悪魔

天使と悪魔

約1年半ぶりとなる鴉の2ndアルバム。彼らの真骨頂である感情を振り絞るかのようなエモーショナルなヴォーカルとギター・ロック・サウンドを更に昇華させ、独りよがりではないクリアな衝動として描かれた『天使と悪魔』。「演者の憂鬱」では完成度の高い大人の妖艶さを感じさせ、「児童公園前」では突き抜けた爽快なメロディとヒリヒリとした焦燥感を感じさせる歌詞とのギャップが面白い。少なからず走らされているかのような蒼い衝動を常に感じさせていて、それもまた彼らの大きな魅力ではあった。しかし今作を通じて描かれた陰と陽は決して衝動だけではないロック・バンドとしての芯の強さ、確信的な感情描写を深く感じる。新たな彼らの大いなる幕開けと言える1枚だろう。

蒼き日々

蒼き日々

10代の頃にこれをやっときゃよかった、あれをやっときゃよかった......なんて、後悔とはいかなくとも、大人になってからそんな風にぼんやり思うことは誰しもあるのではないだろうか。鴉2012年の幕開けとなるシングルは、非常に明快で鮮やかな衝動が迸る10代の若者たちへのメッセージ・ソング。だが鴉の描く"蒼"は、10代という枠組みだけではなく、大人たちの心にも衝動を巻き起こす力強さを持っている。歳を重ねると無意識のうちに守りに入り、そつなくこなすことも増えて来る。でもまだまだ未完成。果敢にバンドを高く巻き上げようとする3人のパワーが漲る音像に、まだまだここで止まってられないなと奮起した。10代に限らず、この困難の多い世の中に生きる人々全てに響く、鴉ならではの応援歌。

未知標

未知標

鴉—なんとも人間臭さのにじみ出たバンドだ。一歩一歩足取りを確かめるように、時に息を飲む程の速度で成長し続けている。単なる激情型ロックと呼んでしまうには惜しい。哀愁漂う言葉。テンポよいリズム感。近野淳一(Vo&Gt)の描く世界は、日常的でありながら、文学的な非日常性がある。そして、力強くも緻密に言葉を紡ぐことで、熱量とのコントラストがより一層の情感を盛り上げる。“鴉”というバンドの歴史を通して、選りすぐりの楽曲たちが盛り込まれた本作。前シングル「黒髪ストレンジャー」で垣間見せた艶のある一面が、SOIL &“PIMP”SESSIONSとのセッションなど明確な表情として随所に表れている。丁寧に音を追うことで得られる、楽曲としての成熟。過去と現在の融点となった『未知標』もまた、鴉とともに消えることのない熱を持ち続けるのだ。

巣立ち

巣立ち

"秋田発"の素朴さからくる泣きのメロディ、しかと受け止めました。真っ黒な容姿で孤高の存在感を放つ生き物"鴉"。演歌のこぶしのような、哀愁を帯びた響きを持つ名前のこのバンドは、それに見合う歌、とことん突き進む強さを持った、猪突猛進の歌を歌う。その真っ直ぐな意志をはっきりと投影した、切なくも同時に切迫感のあるドラマティックなメロディこそ、このバンドの最大の武器だ。きっと、鴉が好きだという人は『ROOKIES』とかも好きだと思う。不良たちが甲子園を目指す姿を描いた青春ドラマで一世を風靡したあれです。なぜって、努力・友情・青春の物語こそ、最も直球のドラマであり、その直球さこそ鴉であるから。追い詰められて苦しくなったら、共に猛進し、迷いもかき消すこの音を聴け。頑張りすぎて陰で一人で泣くくらいなら、鴉を聴け。熱唱しながら泣いちまえ!

黒髪ストレンジャー

黒髪ストレンジャー

古いアナログレコードに針を落とし、チリチリとノイズが響く。そこへ加わるのは、ジャジーなスウィングビート。レトロなムード漂う幕開けから、これまでの鴉のどの作品とも異なる作品だということが色濃く伝わってくる。そして、いきなり響くサビのメロディーが、楽曲のテンションを冒頭からピークに持っていく。ファルセット、ささやきくようなか細い声、そして、激情を乗せた叫び......。1 曲の中で様々な表情を見せる今野のボーカルも、今作の大きな注目ポイントだ。表現力をさらに増したその歌声は、"黒髪" に惹かれる主人公の心の動きを繊細に描き出す。楽曲のストーリーをよりドラマチックに、より躍動的なグルーヴとともに表現する音物語――。艶やかで激しい、鴉の新たな魅力を体現する新境地作の完成だ。

風のメロディ

風のメロディ

デビュー・シングル『夢』がテレビの主題歌に抜擢されるなど、高い注目を集めた秋田発のエモーショナルなロック・バンド鴉のニュー・シングル。様々な表情を見せたデビュー・シングル『夢』とは異なり、疾走感を前面に出した「風のメロディ」「ココニナク」「向かい風」の全3曲が収録されている。今回はライヴを意識したというだけに、タイトで力強さに満ちた演奏からは、この一年間数多くのライヴを経験し、鴉が着実にバンドとして前進していることをうかがい知ることができる。過去の曲を掘り起こす形でのリリースということだが、ライヴで観ても、今の鴉の持ち味を伝えることができる作品になっていると言える。