Japanese
渡會将士 / コレサワ / 戸渡陽太 / Saku
Skream! マガジン 2017年08月号掲載
2017.06.27 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 石角 友香
この日は言葉と声で勝負するシンガー・ソングライター4人が結集。全員が弾き語りスタイルでのライヴだ。
1番手は5月に『KENSAKU E.P.』をリリースしたSaku。SNS社会においての女子あるあるをリアルに描いたレパートリー「検索」、「スタンプ」などを歌う際の、高音のメロディの歌い終わりで少しフラットする部分になんとも言えないアンニュイさや切なさを宿す甘くハスキーな声が印象に残った。UKやUSインディー、渋谷系もリスペクトするSakuらしさがアコギ1本でも伝わる「Silver Moon」に彼女の軸を見た思い。
続いて戸渡陽太。彼が自在にアコギを鳴らすだけで映像が立ち上がる。澄んだ声と鋼のように金属的な強い声が同時に鳴っている戸渡の声質は、アコギと混ざったとき、それだけで3つの楽器が織りなすアンサンブルを聴いているようだ。そして彼の音楽的運動能力の高さは、奇しくもPAの調子が万全でなく、いったんギターを置いて急遽始めたアカペラでそれを証明。フロアに一定のテンポのクラップを促し、そこに裏のクラップを入れたりしながらグルーヴを作る。その熱を持続させながら歌った、ラッパーも真っ青の高速トーキング風ヴォーカル曲「ギシンアンキ」の鋭さ。一転、空間ごと森や空に飛ばすような「長い長い夜を抜けるまで」など、この人の才能はどんな場所でも持ち時間が短くても爆発することを確信した。
3番手は、8月9日リリースの新作『コレカラー』でメジャー・デビューするコレサワ。「君のバンド」のイントロを弾きながら、"この曲を知らない人、手を上げて。少ないな。じゃあ手を上げなかった人はみんな知ってるということで"と、容赦なく(!?)歌わせ、声が小さいと"もっとちゃんと歌って"と、笑いを誘いながら場をひとつにしていく。痛快な中に切なさを含ませた彼女の世界観は、カバー企画で多くの女性が歌ったことでも広がりを見せた「たばこ」で深くフロアに染み入り、"男より夢をなくすほうが怖い"と歌いつつ単純な比較に終わらない「女子諸君」のリアリティは、男性にもきっと届いたんじゃないだろうか。あくまで自分の感覚や信条に正直に生きる彼女は、ちょっと前を歩く身近なヒーロー(女子なのでヒロインなのだが、語感としてヒーローがしっくりくる)だった。
トリは活動休止中のFoZZtoneのフロントマンであり、ソロやTHE YELLOW MONKEYの菊地英昭のプロジェクト brainchild'sのヴォーカルなどで活動する、"表現欲が服を着て歩いてる"渡會将士。ルーパーを駆使してハイハットとギターを重ね、ビート強めななかにもブルージィなムードの漂う即興的な演奏でbrainchild'sの「Phase 2」を大胆に再構築。MCでは"ステージ・ドリンク忘れたんで、ビールおごってくれるという人はいませんかね?"とラフな調子なのも楽しい。アイリッシュっぽいリフの「マスターオブライフ」から、男女の切ない日常を切り取る「夕立ベッドイン」はもはや映画を観ているよう。ラストに新曲「ウェザーリポート」を演奏してくれたのだが、狂ったニュースや遠いどこかの子供の死、それでも僕らは抱き合って眠るしかない――並行する世界への眼差しとほのかな悲しみ。一瞬で世界観がぶっ立つ力量に誰もが拍手を送っていた。
[Setlist]
■Saku
1. 検索
2. スタンプ
3. サークルフェイス
4. Silver Moon
5. START ME UP
■戸渡陽太
1. SHIKISAI
2. SOS
3. ギシンアンキ
4. あなたの中を旅したい
5. Sydney
6. 長い長い夜を抜けるまで
■コレサワ
1. お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな
2. 君のバンド
3. たばこ
4. 女子諸君
5. あたしを彼女にしたいなら
■渡會将士
1. Phase 2
2. Brooklyn Houze Closed
3. I'm in Mars
4. マスターオブライフ
5. 夕立ベッドイン
6. ウェザーリポート
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2017年夏に1stアルバムでメジャー・デビューした大阪出身女子SSWが、コントロールベアとコラボしたCD付きぬいぐるみ、長編アニメ"ゴーちゃん。~モコと氷の上の約束~"エンディング・テーマの配信シングルのリリースを経て制作した2ndアルバム。彼女の武器のひとつは耳心地のいいポップ・ソングに、一瞬耳を疑う歌詞が飛び込んでくるところだが、リード曲で奔放な女子の心情を生々しく綴るなど、今回もそのワード・センスは健在だ。だが彼女の真髄は、代表曲のひとつである「たばこ」のような切ないミディアム・ナンバーと、健気な女子の心情をまっすぐに等身大で歌う声にある気がしてならない。さらに洗練されたセンチメンタルな描写は、リリース時期である夏の終わりとの親和性も高い。(沖 さやこ)
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今夏メジャー・デビューすることを発表したコレサワが、インディーズ最後に配信シングルとして贈る初期曲であり代表曲。カラフルなアレンジメントで楽しませてくれる最近の曲もいいし、強気な女性像を描いた曲も魅力的。でも、ピアノやアコースティック・ギターを主軸とした素朴で切ない曲の方が、健気でかわいらしくも、時折脆く感情的で、どこか儚いコレサワの歌の真価がより発揮されると実感した。そして、前作収録「J-POP」では、恋愛において"お互いの好きなものが違っても、大事にし合っているなら大丈夫"というメッセージがあったが、「たばこ」では"すきな人の すきなものは わたしの嫌いなものでした"――そしてすれ違い、"もっとちゃんと君をみてれば"と気づいて後悔する。彼女の曲で歌われる女の子は経験を重ね、成長しているのだなと思った。(松井 恵梨菜)
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福岡を拠点に活動を続けるシンガー・ソングライターの2ndミニ・アルバム。力強いバンド・アンサンブルで固めた「世界は時々美しい」、クールに熱くなるスウィング調の「探せ」、ダンサンブルなビートが噛み合った「Y」など、未だ試行錯誤中といった感じのアレンジが楽しめるのも、揺るぎないヴォーカル・スタイルがあるからこそ。同時に、ともすれば一本調子に聴こえがちな武骨な歌声をどう活かしていくのか探っているようにも聴こえる。"だから今変わろうとしてる僕の心を誰か見てよ"と速射砲のような言葉とギターで歌う真骨頂「ギシンアンキ」が剥きだしの戸渡陽太を感じられて興味深い。観るたびに成長しているライヴをぜひ体験して欲しいアーティストだ。(岡本 貴之)
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FoZZtoneの活動休止以降3作目となるソロ作品。"どの曲も自分が日曜日に聴ける音楽にしたかった"と本人が語るとおり、フォーク、ソウル、ヒップホップなどを融合させたポップネス溢れる楽曲群は、すべて同じメンバーで録音をしたことも影響してか、非常にグルーヴィな作品に仕上がっている。音楽活動を存分に楽しんでいることが音にも歌詞にも表れているTrack.1、歌がリズムに特化した軽快なTrack.2など、明朗なポップ・ソングだけでなく、自主制作盤に収録していたものの再録であるTrack.5や、広大なイメージを与えるTrack.6など、アルバムが進むごとに深い音像を体感できる。夏も姿を消した秋の夜中に、明るくもどこかセンチメンタルなサウンドを、お酒片手に楽しんでみてはいかがだろうか。(沖 さやこ)
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