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LIVE REPORT

Japanese

FoZZtone

2012.09.15 @赤坂BLITZ

Writer 沖 さやこ

バンドからオーディエンスへの、ちょっとひねくれてるけど熱い愛情。オーディエンスからバンドへの、まっすぐ全力に飛ばされる豪快な愛情。パワーが制御できない両者の純粋な熱情が激突するその様を五感全てで感じ、精神と肉体は繋がっているからこそ人間は面白いのだと改めて心の底から痛感させられた。今年の7月にリリースされた2枚組のフル・アルバム『INNER KINGDOM(内なる王国)』を引っ提げて開催された全国ツアー初日。場内が暗転し「LOVE」のイントロのビートが流れると、自然とフロアはそれに合わせてクラップを始めた。メンバー3人とサポート・メンバーであるドラムの武並“Captain”俊明が登場すると、そのまま「LOVE」へと誘われる。4人で構成されるシンプルなステージ。渡會将士(Vo,/Gt)は“I'm glad to see you!”と歌詞を用いた英語でMC。すると竹尾典明(Gt)が奏でる「prologue」のイントロから「Discommunication Breakdown」へ。フロアは前へ押し掛け、どんどんヒート・アップしてゆく。鮮やかな様々な情景を描き出す、力強い疾走感の「Keller Water」、安定感のある菅野信昭(Ba)の低音が映える「The World Is Mine」と、80年代のロックンロールを彷彿させる太いグルーヴで感情を羽ばたかせる。


FoZZtoneの鳴らす音のひとつひとつは至ってシンプル。だがそれが全て悠然としており、何事にも屈しないのではないかと思うほど強い。ヘヴィーだけど軽やかなビートは胸の高鳴りを助長させる。そしてオーディエンスは『INNER KINGDOM』という作品を自分の肉体の一部になるほど聴き込んでいるに違いない。息を吸うように、瞬きをするように、FoZZtoneの鳴らす音と共に声を上げ、腕を振り上げ、身体を躍動させる。そのしなやかさは“人間が生きること”をそのまま物語っているようだ。緩急を入れてフロアを引き付ける「Fish, Chips, Cigarettes」、大合唱が巻き起こった「Club Rubber Soul」と、ステージとフロアが一体となって高揚感を生み出す。特に、一見大人しそうな男子たちが楽しそうに歌い、踊り狂う姿は印象的だった。“かっけーよ!”“渡會さーん”“最高!”“楽しいぞ!”など、曲間では男子たちの黄色くも野太い声が次々と巻き起こる。


「Crocodile bird reaction」「-Planaria fever-」と、音が融解してくようなディープな空間が広がる。「half myself」は繊細なコーラスと渡會のアコースティック・ギターが涙腺を刺激する。そこからの「ロードストーン」の多幸感はまさしく救いの輝きだった。「MOTHER ROCK」から渡會が“ぶっ飛びな!”と叫び「JUMPING GIRL」へなだれ込み、会場の空気はよりヒート・アップ。真っ赤な照明に染まるステージと緑のレーザー、ラップ調の早口のヴォーカルとスリリングなギターとノイズが交錯する「Tomorrow Never Knows」、力強いキラー・チューン「GENERATeR」、“ここに全部出し切ってくれ”と披露された「school」ではフロアの熱狂も頂点へ。ポップとエッジの二面性に翻弄される。“母親に捧げたいと思います”と渡會が語った「Africa」は、ハンド・マイクのアカペラを冒頭で披露。記憶にフロアを焼き付けるようにフロアに熱視線を向け、情熱を込めて歌う渡會。マイクを通さず歌ったその声も、しっかりと2階席の後ろまで届いた。


アンコールを求めるクラップから、フロアは自然と足音とクラップで「LOVE」のイントロを再現し始めた。その自発性は、大勢の人間を巻き込んだ面白いことを音楽で探求するFoZZtoneというバンドのリスナーだからこそ巻き起こるものだろう。バンドの思いがしっかりとリスナーに伝わっていることを再確認した瞬間だった。ダブル・アンコールでは再び1曲目に演奏した「LOVE」が。フロアからはより大きい声があがり、自然と隣同士の人と肩を組み出す人々も。とても理想的なバンドとリスナーのコミュニケーション。どんな純愛映画も敵わないくらい、純粋で美しい空間だった。

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