Japanese
渡會将士
2018年10月号掲載
活動休止中のFoZZtoneのフロントマンであり、菊地英昭(THE YELLOW MONKEY/ex-KILLER MAY)がプロデュースするバンド・プロジェクト brainchild'sでヴォーカリストを務める渡會将士が、3作目のソロ作となる2ndアルバム『PEOPLE』を完成させた。フォーク、ソウル、ヒップホップなどをブレンドしたポップ・ソングはFoZZtoneやbrainchild'sとは一線を画すアプローチ。そこには彼のこれまでの音楽活動が影響していた。様々な人生経験を重ねてきた彼は今どんなことを思い、考えながらソロ活動をしているのか。新作について探りながらその真相をひもといた。
-FoZZtoneが休止して3年半。なかなかの年月ですがいかがお過ごしでしたか?
学生時代に、全然楽器を弾けない子たちがバンドを組んで秋の文化祭でライヴをやるために夏休みから練習をするじゃないですか。ああいうテンション感で毎日を過ごしています(笑)。マインド的には長い夏休みですね。
-今作の1曲目のタイトルどおり、"Every Day is Summer Vacation"であると(笑)。
FoZZtoneの活動休止を決めたあたりに音楽を楽しめなくなってしまっていたのもあって、ソロでは楽しく音楽活動することを心掛けていて。文化祭をやっては"次の文化祭を始めるか!"という感じで3年半過ごしてきましたね。「Every Day is Summer Vacation」はライヴでもやっていくうちに"ヤケになって楽しもうとしすぎてないか? これは恥ずかしいな!?"と思って大人感を足していって(笑)、その結果このかたちになりました。この曲が作品の向かう方向を決めたところもありますね。
-大人感と少年感の絶妙な折衷だと思いました。ソロ活動において渡會さんのマインドはシンガー・ソングライターなのでしょうか? それともバンドマン?
1stアルバムの『マスターオブライフ』(2016年リリース)はほとんどのパートを全部打ち込みで作って、それをサポート・メンバーとレコーディングして――それはとてもシンガー・ソングライター的な曲作りだなと思って。でも録り終わったものを聴いたら、"イメージどおりにできあがりすぎていて面白味に欠けてるな"という気がしたんです。だから次に出したミニ・アルバム『After Fork in the Road』(2017年リリース)はバンド・サウンドに寄せたんですよね。今回のアルバムはさらに、サポート・メンバーを全曲固定して、メンバーにコード進行を伝えて"あとは好きにやって"とお願いをして。だから3作品で一番予想だにしていなかった作品になって、僕としてはすごく楽しいんです。
-では『PEOPLE』は100パーセント、バンドマンのマインドで作られたと。
そうですね。一緒にプレイしてくれるということだけで感謝なので、僕はもうメンバーに"いいねいいね! 最高だね!"しか言ってない(笑)。だからこそみんなのびのびやってくれているのではないのかなと。人とのコミュニケーションの仕方も変わりましたね。
-とはいえ"今のあんまり良くなかったからやり直したいな"という場面もあるのでは?
"あんまり良くなかった"ではなく、"もっとやればもっといいフレーズが出てくる"と思っていますね。一緒にやっているメンバーもみんな大人なので、良かったのかそうではないのかは一番本人がわかっているとも思うんです。気づいていないなと思ったときだけ、"今のフレーズ面白かったね! もう1回やってみてよ!"と言ってみたりして。気持ち良く楽しく活動をしたいなと思っているので、自然とそういう振る舞いになっていきました。サポートの3人は僕の"楽しくやりたい"という気持ちを汲んでくれて、陽気で、技術もある。何より酒の飲み方が合うんです(笑)。
-気持ち良くお酒を飲めるのは大事ですね(笑)。その空気感が『PEOPLE』のグルーヴにも繋がっていると思います。楽曲としてはソウルやヒップホップ、フォークなどの要素を融合させた、カラフルなポップ・ソングが揃いました。
僕がヴォーカルをさせてもらっているbrainchild'sが基本的にロックなので、自分のソロ作品を作るとなると"こっちでもロックをやる必要はないかな"とも思って、こういう作風になりましたね。brainchild'sはエマさん(THE YELLOW MONKEY/ex-KILLER MAYの菊地英昭)が作曲をなさっているので、そこに歌詞を書いていくことも、歌を乗せていくこともすごく勉強になっていて。brainchild'sという柱が立ったことで自分の振れ幅も作ってもらえたかなと思っています。
-『PEOPLE』は渡會さんの3年半の音楽活動が導いた作品なんですね。歌のリズムに特化した楽曲、歌詞を際立たせた楽曲など、曲の性質を生かしたアプローチになっていると思いました。
今回は完全にノリだけで作った曲もありますね(笑)。「Night Surf」はサビと繰り返しのコード進行だけが決まっていて。モダン・ジャズとかにドラムやピアノのリズム、和音が難しすぎて普通の人間にはどう刻まれているのかわからないシーンがあるじゃないですか? メンバーにあの感じをもっとエセにやってほしいと頼んだら、"しょうがねぇな、どうなっても知らねえぞ!"と言われてやってみて――そしたらすげぇいい感じになりました。この曲に限らず、自分が日曜日に聴ける音楽にしたい、聴きながら"いいアルバム録ったな~!"と言いながら美味しくお酒を飲みたい、という気持ちのもと作っていって。それはソロのときから一貫していることではあるんですけど。
-FoZZtoneの楽曲よりはフラットというか、ナチュラルというか。
FoZZtoneでは陰の自分に負の出来事が起こって"なにくそ!"という気持ちから陽に反転させる、マイナスとマイナスの掛け算みたいなことをしていたなと思うんです。でもライヴをやると必ず晴れたりして、音楽を楽しもうとしていくうちに"自分はもともと陽のタイプなのでは?"と刷り込まれていく感覚もあって。だから明るい気持ちで作品作りができていますね。今回は第一に気持ち良く揺れられるものにしたかったので、ヒップホップ感を入れてみたりして。ビートを作り上げて、そこにコードを乗せていくところから始めました。「Ride on Tide」も全部リズムが食っていて、メンバーからも"すぐ食うよね!"と言われたりして(笑)。でもそれも自分が1グルーヴで繋がっていく曲が好きだから、気持ち良くビートに乗りたいからなんですよね。
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